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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】付加硬化型シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20240304BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240304BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240304BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/098
C08K5/5419
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020210158
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096904
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明田 隆
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203090(JP,A)
【文献】特開2019-089912(JP,A)
【文献】C-25B安全データシート,06版,信越化学工業株式会社,2022年04月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
(D)(メタ)アクリル酸金属塩、
並びに
(E)アセチレンアルコール化合物及び該化合物のアルコール性水酸基がシランまたはシロキサンにより変性された化合物から選ばれる1種以上
を含有する付加硬化型シリコーン組成物(但し、主鎖であるジオルガノシロキシ単位が、ジメチルシロキサン単位99.980モル%、及びメチルビニルシロキサン単位0.020モル%からなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された、重合度8,000を有するオルガノポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位90.0モル%、及びメチルビニルシロキサン単位10.0モル%からなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された重合度8,000を有するオルガノポリシロキサン、アクリル酸亜鉛、及び付加型ゴム加硫剤を含み、前記付加型ゴム加硫剤はオルガノハイドロジェンポリシロキサン、白金触媒及びアセチレンアルコールを含む、シリコーンゴム組成物を除く。)。
【請求項2】
前記(D)(メタ)アクリル酸金属塩が、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムのうち1種以上を含む請求項1に記載の付加硬化型シリコーン組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加硬化型シリコーン組成物及びその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
付加硬化型シリコーン組成物は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを白金触媒下でヒドロシリル反応させることによって硬化する。白金触媒は非常に活性が高いため、組成物の保存安定性および使用可能時間を確保する目的で、一般的にアセチレンアルコール等の付加反応制御剤が使用される。
付加反応制御剤を用いる場合の付加硬化型シリコーン組成物の安定性(使用可能時間)と硬化性とは相反する関係にあり、安定性を保ちつつ硬化性を高める手段として、アセチレンアルコール化合物と(メタ)アクリル酸エステル化合物とを併用した付加硬化型シリコーンゴム組成物が開示されている(特許文献1)。しかし、該(メタ)アクリル酸エステル化合物は製造が困難であり、使用する原材料も高価であるため、より安価で同等の性能を有する付加硬化型シリコーン組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-265067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用しない場合においても、実用上十分な安定性を有し、かつ、硬化性に優れる付加硬化型シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、アセチレンアルコール化合物と(メタ)アクリル酸金属塩とを含有する付加硬化型シリコーン組成物が、安定性および硬化性に優れることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記の付加硬化型シリコーン組成物を提供するものである。
【0006】
[1]
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(B)ケイ素原子に結合する水素原子を1分子中に2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応触媒、
(D)(メタ)アクリル酸金属塩、
並びに
(E)アセチレンアルコール化合物及び該化合物のアルコール性水酸基がシランまたはシロキサンにより変性された化合物から選ばれる1種以上
を含有する付加硬化型シリコーン組成物。

[2]
前記(D)(メタ)アクリル酸金属塩が、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムのうち1種以上を含む[1]に記載の付加硬化型シリコーン組成物。

[3]
[1]又は[2]に記載の付加硬化型シリコーン組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、実用上十分な安定性を有し、かつ、(メタ)アクリル酸エステル化合物を使用しない場合においても硬化性に優れる。したがって、安価で作業性に優れる付加硬化型シリコーン組成物を提供することができる。よって、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、電子部品のシール材、接着剤、ポッティング等の用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0009】
(A)オルガノポリシロキサン
(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。このオルガノポリシロキサンの分子構造については特に制限はなく、直鎖状、分岐状、環状及び三次元網状構造のうち、いずれであってもよい。
【0010】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基等が挙げられ、特に、ビニル基であることが好ましい。また、分子中のアルケニル基は分子主鎖末端のケイ素原子及び分子鎖途中のケイ素原子のいずれに結合したものであってもよいし、この両方に結合したものであってもよい。
【0011】
アルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、ブロピル基、プチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基が挙げられ、特に、メチル基、フェニル基であることが好ましい。
【0012】
このような(A)成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフエニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、式:R1 3SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 22SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 2SiOで示される単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R1 3SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 22SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R1 22SiO0.5で示されるシロキサン単位と式:R1 2SiOで示されるシロキサン単位と式:SiO2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、式:R12SiOで示されるシロキサン単位と式:R1SiO1.5で示されるシロキサン単位もしくは式:R2SiO1.5で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン共重合体、および、これらのオルガノポリシロキサンの2種以上からなる混合物が挙げられる。上記式中のR1はアルケニル基以外の有機基であり、R2はアルケニル基であり、それぞれ前記例示されたものが挙げられる。
【0013】
(A)成分の25℃における動粘度は、得られる硬化物の物理的特性及び組成物の作業性の観点から、100~500,000mm2/sの範囲内であることが好ましく、特に、300~100,000mm2/sの範囲内であることが好ましい。なお、本明細書において、動粘度は25℃でキャノンフェンスケ型粘度計により測定した値である。
【0014】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分は、1分子中に2個以上、好ましくは3~100個のケイ素原子に結合する水素原子(即ち、Si-H基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造については特に制限はなく、直鎖状、分岐状、環状及び三次元網状構造のうち、いずれであってもよい。
【0015】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)で表されるものを用いることができる。
a3 bSiO(4-a-b)/2 (2)
【0016】
式(2)中、R3は、独立に脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、a及びbは、0<a<2、0.8≦b≦2かつ0.8<a+b≦3となる数であり、好ましくは0.05≦a≦1、1.5≦b≦2かつ1.8≦a+b≦2.7となる数である。
3の脂肪族不飽和結合を有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、前記成分(A)においてアルケニル基以外のケイ素原子に結合する有機基として例示したものと同様のものが挙げられ、代表的なものは炭素原子数が1~10、特に炭素原子数が1~7のものであり、好ましくはメチル基等の炭素原子数1~3のアルキル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基である。
【0017】
(B)成分の例としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチルテトラシクロシロキサン、1,3,5,7,8-ペンタメチルペンタシクロシロキサン等のシロキサンオリゴマー;分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等;R3(H)SiO1/2単位とSiO4/2単位からなり、任意にR3SiO1/2単位、R3 2SiO2/2単位、R3(H)SiO2/2単位、(H)SiO3/2単位又はR3SiO3/2単位を含み得るシリコーンレジン(式中、R3は前記と同じである)等が挙げられる。
【0018】
(B)成分の使用量は、(B)成分由来のSi-H基が(A)成分由来のアルケニル基1個に対して好ましくは0.1~5.0個となる量、より好ましくは0.1~2.0個となる量である。
本発明の組成物中、(A)成分及び(B)成分の含有量は、50~99質量%以上が好ましく、60~95質量%以上がより好ましく、70~93質量%以上がさらに好ましい。
【0019】
(C)ヒドロシリル化反応触媒
(C)成分は、(A)成分由来のアルケニル基と、(B)成分由来のヒドロシリル基(Si-H基)との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒を用いることができる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KaHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0~6の整数であり、好ましくは0又は6である)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書参照);塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス(米国特許第3,159,601号明細書、同第3,159,662号明細書、同第3,775,452号明細書参照);白金黒、パラジウム等の白金族金属を酸化アルミニウム、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム-オレフィンコンプレックス;クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン、特にビニル基含有環状シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。
【0020】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、本発明の組成物を均一に硬化させるためには、塩化白金酸や上記錯体及び上記化合物を、例えば、トルエンやエタノール等の適切な溶剤に溶解させて使用することが好ましい。
【0021】
(C)成分の使用量は、所謂触媒量でよく、(A)成分に対する白金族金属元素の質量換算で、0.1~500ppmが好ましく、0.5~200ppm程度がより好ましい。
【0022】
(D)(メタ)アクリル酸金属塩
(D)成分は、(メタ)アクリル酸金属塩であり、ヒドロシリル化反応をより速く進行させるための成分である。(メタ)アクリル酸金属塩としては、一般式(CH2=CR4COO)mMで表されるものが挙げられる(式中、R4は水素原子又はメチル基であり、Mは金属原子を表し、mは該金属の価数を表す)。
なかでも、硬化性と保存性との両立の観点から、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛、メタクリル酸マグネシウムが好ましい。これらの化合物は、安価で製造容易で入手しやすいという利点を有する。
【0023】
(D)成分は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。その配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.0001~5質量部、より好ましくは0.001~3質量部、更に好ましくは0.01~1質量部である。
【0024】
(E)アセチレンアルコール化合物又はその誘導体
(E)成分は、アセチレンアルコール化合物及び該化合物のアルコール性水酸基がシランまたはシロキサンにより変性された化合物から選ばれる1種以上であり、付加硬化型シリコーン組成物において付加反応制御剤として作用する。
【0025】
アセチレンアルコール化合物としては、エチニル基と水酸基が同一分子内に存在するものであればよいが、エチニル基と水酸基は同一炭素原子に結合しているものが好ましい。その具体例としては下記構造式で表される化合物等が挙げられる。
【化1】
【0026】
また、アセチレンアルコール化合物のアルコール性水酸基がシランまたはシロキサンにより変性された化合物とは、アセチレンアルコールの水酸基の水素原子がSi-O-C結合に置換された形でシランもしくはシロキサン部分と結合したものである。その具体例としては下記構造式で表される化合物等が挙げられる。
【化2】
(式中、pは0~50の整数であり、qは1~50、好ましくは3~50の整数である。括弧が付されたシロキサン単位の配列順は任意であってよい。)
【0027】
(E)成分は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。その配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.0001~5質量部、より好ましくは0.001~3質量部、更に好ましくは0.01~1質量部である。
【0028】
(F)補強性シリカ
本発明の付加硬化型シリコーン組成物には、必要に応じて、機械的強度を補強するために、補強性シリカを配合してもよい。補強性シリカとしては、例えば煙霧質シリカ、沈降シリカ、焼成シリカ、石英粉末、珪藻土などが挙げられる。また、BET法による比表面積が50m2/g以上、特に50~500m2/gの微粉末シリカが好ましく、このような微粉末シリカはそのまま使用してもよいが、組成物に流動性を付与させるため、メチルクロロシラン類、ジメチルポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザンなどの有機ケイ素化合物で処理した微粉末シリカを使用することが好ましい。
【0029】
(F)成分は、1種単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。(F)成分を使用する場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは0.1~200質量部、より好ましくは1~100質量部である。
【0030】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、上記した成分の他、本発明の目的を損なわない範囲で、更に、補強性のシリコーンレジン;ケイ酸カルシウム、二酸化チタン、酸化第二鉄、カーボンブラック等の(F)成分以外の無機充填剤;エポキシ基やアルコキシ基含有の有機ケイ素化合物、ベンゼン環にエステル基が結合した化合物等の接着性向上剤等を配合してもよい。
【0031】
本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、前記各成分を均一に混合することにより製造される。混合方法は、従来公知の方法に従えばよく、混合する装置としては、プラネタリーミキサー等が挙げられる。また、配合する全成分を一度に混合しても、1種又は2種以上の成分を数段階に分けて混合してもよく、直前に混合してから用いる2成分系とすることもできる。
【0032】
本発明の製造方法により得られる付加硬化型シリコーン組成物は、公知の硬化型シリコーンゴム組成物と同様の方法、条件で硬化し得、例えば常温でも十分硬化し得るが、必要に応じて加熱してもよい。加熱する場合、通常加熱温度60~200℃、特に80~170℃で硬化させることが好ましい。硬化時間は、硬化温度や成形方法等により異なるが、通常1分~24時間程度である。
【0033】
アルファテクノロジー社製レオメーターMDR2000を用いて、各組成物を100℃で1時間加熱し、加熱終了時と比較して10%のトルクに到達した時間(T10)を測定し、組成物の硬化性を評価する。T10は、実用上十分な安定性及び硬化性の観点から、1~40分であることが好ましく、3~35分であることがより好ましく、10~30分であることがさらに好ましい。
【実施例
【0034】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0035】
[実施例1~11、比較例1~7]
表1及び表2に示す配合量(質量部)で下記(A)~(F)成分を用い、以下の手順で付加硬化型シリコーン組成物を製造した。
(A)成分及び(F)成分を混合し、次いで、(C)成分、(E)成分、(B)成分、(D)成分の順で添加し、混合を行った後、減圧脱泡処理を行い組成物を得た。
【0036】
(A)成分:分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン(25℃における動粘度10,000mm2/s)

(B)成分:下記式で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化3】
(式中、括弧が付されたシロキサン単位の配列順は不定である。)

(C)成分:白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金元素含有量0.5質量%)

(D)成分:
(D-1)アクリル酸亜鉛(CH2=CHCOO)2Zn
(D-2)アクリル酸マグネシウム(CH2=CHCOO)2Mg
(D-3)メタクリル酸亜鉛(CH2=C(CH3)COO)2Zn
(D-4)メタクリル酸マグネシウム(CH2=C(CH3)COO)2Mg

(E)成分:
(E-1)エチニルシクロヘキサノール
(E-2)下記構造式で表される化合物
【化4】
(E-3)2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(比較例用)

(F)成分:ヘキサメチルジシラザンで表面処理された煙霧質シリカ(BET比表面積300m2/g)
【0037】
[硬化性の評価]
アルファテクノロジー社製レオメーターMDR2000を用いて、各組成物を100℃で1時間加熱し、加熱終了時と比較して10%のトルクに到達した時間(T10)を測定し、組成物の硬化性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表1に示されるように、本発明の付加硬化型シリコーン組成物は、100℃という比較的温和な条件において硬化促進することが確認された。一方、表2に示されるように、(D)成分を添加しない比較例1、2では硬化性に劣り、本発明の(E)成分に代えて、付加反応制御剤として2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサンを使用した比較例3~7では硬化性が高すぎて安定性および作業性に劣るものとなった。