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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20240304BHJP
   B24B 45/00 20060101ALI20240304BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20240304BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240304BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B45/00 Z
B24B49/18
B24B53/00 A
H01L21/304 631
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019092178
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020185646
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弘樹
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192572(JP,A)
【文献】特開2008-122273(JP,A)
【文献】特開2008-155292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/12
B24B 45/00
B24B 49/18
B24B 53/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルが回転可能に配置されたターンテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、から少なくとも構成された研削装置であって、
該ターンテーブルに配置されて該ターンテーブルと共に回転移動すると共に該研削砥石において研削加工の実施によって欠けや目詰まりが生じる面を撮像するカメラと、制御手段と、を備え、
該制御手段は、研削砥石の欠け状態及び目詰まり状態を判断する際の基準となる基準画像を記憶する第一の画像記憶部と、該カメラが撮像した研削砥石の画像を記憶する第二の画像記憶部と、該第一の画像記憶部に記憶された該基準画像と該第二の画像記憶部に記憶された該画像とを比較して該第二の画像記憶部に記憶された画像の研削砥石における欠け状態及び目詰まり状態を検出する状態検出部と、該状態検出部が検出した該欠け状態が許容値内であるか否かを判断する欠け判断部と、該状態検出部が検出した該目詰まり状態が許容値内であるか否かを判断する目詰まり判断部と、を備え
該欠け判断部において、研削砥石の欠け状態が許容値を超えると判断された場合、作業者に対して該研削砥石が配設された研削ホイールの交換を指示し、
該目詰まり判断部において、研削砥石の目詰まり状態が許容値を超えると判断された場合、作業者に対して該研削砥石のドレッシングを指示する研削装置。
【請求項2】
該欠け判断部は、該研削砥石の欠け状態が許容値を超えていると判断した場合に、該研削ホイールの交換を指示する請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
該目詰まり判断部は、該研削砥石の目詰まり状態が許容値を超えていると判断した場合に、該研削砥石のドレッシングを指示する請求項1、又は2に記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に備えた研削手段を有する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され、表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削され、所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
研削装置は、被加工物であるウエーハを保持する保持面を有するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、を含み構成されていて、該ウエーハを所望の厚みに加工することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-153090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研削手段によってウエーハを研削すると、研削手段を構成する研削ホイールに配設された研削砥石に欠けが生じたり、ウエーハを研削することにより生じる研削屑等が研削砥石の表面に付着して目詰まりを起こしたりする場合がある。欠け状態が悪化した研削砥石によって研削加工を実施すると、ウエーハが良好に研削されずに破損し、また、目詰まり状態が悪化した研削砥石によって研削加工を実施すると、ウエーハの研削面に面焼けが生じることによりウエーハの品質が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、適正な時期に研削ホイールを交換したり、研削砥石の表面を再生すべくドレッシングを行ったりすることを可能にして、研削加工においてウエーハに破損が生じたり、品質を低下したりするという問題が生じない研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルが回転可能に配置されたターンテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研削する研削砥石が環状に配設された研削ホイールを回転可能に備えた研削手段と、から少なくとも構成された研削装置であって、該ターンテーブルに配置されて該ターンテーブルと共に回転移動すると共に該研削砥石において研削加工の実施によって欠けや目詰まりが生じる面を撮像するカメラと、制御手段と、を備え、該制御手段は、研削砥石の欠け状態及び目詰まり状態を判断する際の基準となる基準画像を記憶する第一の画像記憶部と、該カメラが撮像した研削砥石の画像を記憶する第二の画像記憶部と、該第一の画像記憶部に記憶された該基準画像と該第二の画像記憶部に記憶された該画像とを比較して該第二の画像記憶部に記憶された画像の研削砥石における欠け状態及び目詰まり状態を検出する状態検出部と、該状態検出部が検出した該欠け状態が許容値内であるか否かを判断する欠け判断部と、該状態検出部が検出した該目詰まり状態が許容値内であるか否かを判断する目詰まり判断部と、を備え、該欠け判断部において、研削砥石の欠け状態が許容値を超えると判断された場合、作業者に対して該研削砥石が配設された研削ホイールの交換を指示し、該目詰まり判断部において、研削砥石の目詰まり状態が許容値を超えると判断された場合、作業者に対して該研削砥石のドレッシングを指示する研削装置が提供される。
【0008】
該欠け判断部は、該研削砥石の欠け状態が許容値を超えていると判断した場合に、該研削ホイールの交換を指示することが好ましい。また、該目詰まり判断部は、該研削砥石の目詰まり状態が許容値を超えていると判断した場合に、該研削砥石のドレッシングを指示することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研削装置は、ターンテーブルに配置されて該ターンテーブルと共に回転移動すると共に研削砥石において研削加工の実施によって欠けや目詰まりが生じる面を撮像するカメラと、制御手段と、を備え、該制御手段は、研削砥石の欠け状態及び目詰まり状態を判断する際の基準となる基準画像を記憶する第一の画像記憶部と、該カメラが撮像した研削砥石の画像を記憶する第二の画像記憶部と、該第一の画像記憶部に記憶された該基準画像と該第二の画像記憶部に記憶された該画像とを比較して該第二の画像記憶部に記憶された画像の研削砥石における欠け状態及び目詰まり状態を検出する状態検出部と、該状態検出部が検出した該欠け状態が許容値内であるか否かを判断する欠け判断部と、該状態検出部が検出した該目詰まり状態が許容値内であるか否かを判断する目詰まり判断部と、を備え、該欠け判断部において、研削砥石の欠け状態が許容値を超えると判断された場合、作業者に対して該研削砥石が配設された研削ホイールの交換を指示し、該目詰まり判断部において、研削砥石の目詰まり状態が許容値を超えると判断された場合、作業者に対して該研削砥石のドレッシングを指示することにより、適正な時期に研削ホイールの交換を実施したり、研削砥石のドレッシングを行うことができ、ウエーハが破損したり、ウエーハの表面に面焼けが生じてウエーハの品質が低下したりするという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】研削装置の全体斜視図である。
図2図1に示す研削装置に配設されたカメラによって研削砥石を撮像する態様を示す斜視図である。
図3】第一の画像記憶部に記憶された基準画像を示す図である。
図4図1に示す研削装置の制御手段によって実施される制御のフローチャートである。
図5】カメラによって撮像され、第二の画像記憶部に記憶された研削砥石の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に基づいて構成される研削装置に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0012】
図1には、本実施形態に係る研削装置1の斜視図が示されている。研削装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を備えている。図1において、装置ハウジング2の右側の上端には、直立壁21が立設されている。この直立壁21の手前側の面には、上下方向に延びる2対の案内レール22、22及び23、23が設けられている。一方の案内レール22、22には、被加工物を粗研削する研削手段としての粗研削手段Z1が上下方向に移動可能に装着されており、他方の案内レール23、23には、被加工物に対して仕上げ研削する研削手段としての仕上げ研削手段Z2が上下方向に移動可能に装着されている。
【0013】
粗研削手段Z1は、スピンドルハウジング31と、スピンドルハウジング31に回転自在に支持されたスピンドル31aと、スピンドル31aの下端に装着されたホイールマウント32に装着され下面に環状に複数の粗研削用の研削砥石33aが配設された粗研削ホイール33と、該スピンドルハウジング31の上端に装着されホイールマウント32を矢印R1で示す方向に回転させる電動モータ34と、スピンドルハウジング31を装着した移動基台35とを備えている。移動基台35には上記した直立壁21に設けられた案内レール22、22に摺動可能に係合する被案内溝が設けられていることにより、粗研削手段Z1が上下方向に移動可能に支持される。図示の実施形態における研削装置1は、粗研削手段Z1の移動基台35を案内レール22、22に沿って移動して研削送りする研削送り機構36を備えている。研削送り機構36は、直立壁21に案内レール22、22と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド361と、雄ねじロッド361を回転駆動するためのパルスモータ362と、移動基台35に装着され雄ねじロッド361と螺合する図示しない雌ねじ部を備えており、パルスモータ362によって雄ねじロッド361を正転及び逆転駆動することにより、粗研削手段Z1を上下方向(後述するチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動させる。
【0014】
仕上げ研削手段Z2も上記粗研削手段Z1と略同様に構成されており、スピンドルハウジング41と、スピンドルハウジング41に回転自在に支持されたスピンドル41aと、スピンドル41aの下端に装着されたホイールマウント42に装着され下面に環状に複数の仕上げ研削用の研削砥石43aが配設された仕上げ研削ホイール43と、スピンドルハウジング41の上端に装着されホイールマウント42を矢印R2で示す方向に回転させる電動モータ44と、スピンドルハウジング41を装着した移動基台45とを備えている。移動基台45には上記した直立壁21に設けられた案内レール23、23に摺動可能に係合する被案内溝が設けられていることにより、仕上げ研削手段Z2が上下方向に移動可能に支持される。図示の実施形態における研削装置1は、仕上げ研削手段Z2の移動基台45を案内レール23、23に沿って移動する研削送り機構46を備えている。研削送り機構46は、上記直立壁21に案内レール23、23と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド461と、雄ねじロッド461を回転駆動するためのパルスモータ462と、移動基台45に装着され雄ねじロッド461と螺合する図示しない雌ねじ部を備えており、パルスモータ462によって雄ねじロッド461を正転及び逆転駆動することにより、仕上げ研削手段Z2を上下方向に移動させる。
【0015】
電動モータ34及び電動モータ44によって回転させられるスピンドル31a、スピンドル41aのスピンドル端31b、41bには、図示しない研削水供給手段が接続され、研削水を、スピンドル31a、及びスピンドル41aの内部に形成された図示しない貫通孔を介して供給し、粗研削ホイール33、及び仕上げ研削ホイール43の下端面からチャックテーブル6に向けて噴射する。
【0016】
図示の実施形態における研削装置1は、上記直立壁21の手前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル5を備えている。このターンテーブル5は、比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印R3で示す方向に適宜回転させられる。ターンテーブル5には、図示の実施形態の場合、それぞれ120度の間隔をもって3個のチャックテーブル6が水平面内で回転可能に配置されている。このチャックテーブル6の保持面は、ポーラスセラミックスによって形成され、被加工物(ウエーハ)を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。このように構成されたチャックテーブル6は、研削加工を施す際に、図示しない回転駆動機構によって矢印R4で示す方向に任意の回転速度で回転させられる。ターンテーブル5に配設された3個のチャックテーブル6は、ターンテーブル5が矢印R3で示す方向に回転させられることにより、被加工物搬入・搬出域A-粗研削加工域B-仕上げ研削加工域C-被加工物搬入・搬出域Aの順で移動させられる。
【0017】
図示のターンテーブル5には、さらに、カメラ50が配設されている。カメラ50は、ターンテーブル5上において、隣接するチャックテーブル6、6の中間点に配設されており、ターンテーブル5側から、上方を撮像するように構成されている。カメラ50は、ターンテーブル5と共に回転し、粗研削ホイール33、仕上げ研削ホイール43の直下に位置付けられることにより、粗研削ホイール33に配設された研削砥石33a、及び仕上げ研削ホイール43に配設された研削砥石43aを撮像可能に構成されている。
【0018】
図示の研削装置1は、研削加工前のウエーハを複数枚収容可能な第1のカセット7と、研削加工後のウエーハを複数枚収容可能な第2のカセット8と、第1のカセット7と被加工物搬入・搬出域Aとの間に配設されウエーハの中心合わせを行う仮置き手段9と、被加工物搬入・搬出域Aと第2のカセット8との間に配設された洗浄手段11と、第1のカセット7内に収納された被加工物であるウエーハを仮置き手段9に搬出するとともに洗浄手段11で洗浄されたウエーハを第2のカセット8に搬送する被加工物搬送手段12と、仮置き手段9上に載置され中心合わせされたウエーハを被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送する第1の搬送手段13と、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研削加工後のウエーハを洗浄手段11に搬送する第2の搬送手段14とを備えている。
【0019】
被加工物搬送手段12が配置された装置ハウジング2の手前側には、手入力により研削作業を指示したり、加工条件を入力したりするための操作パネル15と、研削加工時の加工状況やカメラ50によって撮像した画像を表示したり、タッチパネル機能により入力作業を実施したりする表示モニタ16と、が配設されている。
【0020】
上記した構成の他、図示の研削装置1には、粗研削加工域B及び仕上げ研削加工域Cにそれぞれ隣接して配設され、研削加工中のウエーハの厚みを計測する図示しない厚み計測手段等が備えられる。
【0021】
上記した操作パネル15、表示手段16、カメラ50、及び研削装置1を構成する各作動部は、制御手段100に接続されている。制御手段100は、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)と、研削装置1の各作動部を制御するための制御プログラム等を格納するリードオンリーメモリ(ROM)と、加工条件、撮像画像、演算結果等を一時的に記憶する記憶手段としての読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)と、入力インターフェース及び出力インターフェースと、を備えている(いずれも図示は省略する)。また、制御手段100には、追って詳述する制御プログラムによって実現された画像記憶部110、状態検出部120、判断部130が格納されている(図2を参照)。なお、図では、説明の都合上、制御手段100を、研削装置1の外部に示しているが、実際は、研削装置1の内部に収容されている。
【0022】
図示の研削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、本実施形態の研削装置1の機能、作用ついて、以下に説明する。
【0023】
本実施形態の研削装置1においては、被加工物であるウエーハに対して研削加工を実施するに先立ち、制御手段100に構成された画像記憶部110に対して、研削砥石33a、43aの基準画像を記憶する。該基準画像を画像記憶部110に記憶する手順について、以下に、より具体的に説明する。
【0024】
図2に示すように、カメラ50が接続された制御手段100の画像記憶部110は、第一の画像記憶部112と、第二の画像記憶部114とを備える。スピンドル31a(又はスピンドル41a)の下端に配設されたホイールマウント32(又は42)に対し、研削加工に使用していない新品状態の粗研削ホイール33(又は仕上げ研削ホイール43)を装着したならば、ターンテーブル5を回転して、カメラ50を粗研削ホイール33(又は仕上げ研削ホイール43)の直下に位置付ける。次いで、粗研削ホイール33(又は仕上げ研削ホイール43)の位置を回転して調整し、カメラ50によって、新品状態の研削砥石33a0(又は研削砥石43a0)を下面側から撮像し、図3に示す基準画像Gb1(又は基準画像Gb2)を得て、第一の画像記憶部112に記憶する。なお、第一の画像記憶部112に記憶される基準画像Gb1、基準画像Gb2は、必ずしも研削装置1のカメラ50によって撮像されることに限定されず、新品状態の研削砥石33a、及び研削砥石43aを、研削装置1に配設されたカメラ50とは別のカメラによって撮像し、第一の画像記憶部112に記憶してもよい。また、粗研削ホイール33及び仕上げ研削ホイール43の交換のタイミングは、必ずしも同時ではないことから、それぞれの交換のタイミングに合わせて新品状態の研削砥石を撮像して、随時第一の画像記憶部112に記憶する。以上のようにして、画像記憶部110の第一の画像記憶部112に基準画像Gb1、Gb2が記憶される。
【0025】
上記したように、制御手段100の第一の画像記憶部112に基準画像Gb1、Gb2を記憶したならば、研削装置1によって被加工物であるウエーハに対し研削加工を実施する。以下に、研削加工の概略手順について説明する。
【0026】
研削加工を実施するに際して、作業者は、操作手段15又はタッチパネル機能を備えた表示手段16を操作して、研削装置1に対して研削加工の開始を指示する。研削装置1に対し研削加工が指示されたならば、図1に示す第1のカセット7に収容された未加工のウエーハWが被加工物搬送手段12によって搬出され、仮置き手段9に搬送される。仮置き手段9によって中心位置が調整されたウエーハWは、第1の搬送手段13によって、仮置き手段9から、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送され載置されて、吸引保持される。
【0027】
チャックテーブル6上に吸引保持されたウエーハWは、ターンテーブル5を矢印R3で示す方向に回転することにより粗研削加工域Bに移動させられて、上記した粗研削手段Z1の粗研削ホイール33の研削砥石33aにより、所望の厚みになるまで粗研削加工される。次いで、粗研削加工が施されたウエーハWを、ターンテーブル5の回転により仕上げ研削加工域Cに移動して、仕上げ研削手段Z2の直下に位置付ける。仕上げ研削手段Z2の直下に移動させられたウエーハWに対し、上記した仕上げ研削手段Z2により、仕上げ研削加工を施し、ウエーハWを所望の厚みにすると共に所望の面粗さに仕上げる。
【0028】
仕上げ研削加工域Cにおいて仕上げ研削加工が施されたウエーハWは、ターンテーブル5をさらに回転させることにより、再び、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられ、第2の搬送手段14によって吸引されて、洗浄手段11に搬送される。洗浄手段11に搬送されたウエーハWは、洗浄手段11に備えられる図示しない洗浄水供給手段等により洗浄され乾燥させられる。洗浄手段11によって洗浄・乾燥処理が施されたウエーハWは、被加工物搬送手段12によって第2のカセット8に搬送され、第2のカセット8内の所定の位置に収容される。そして、第1のカセット7内に収容された全てのウエーハWに対して、上記した研削加工を順次実施し、第2のカセット8に収容して研削加工が完了する。
【0029】
上記したような手順により、第1のカセット7に収容されたウエーハWに対して研削加工を施すに際し、任意のタイミングで、図4に示すフローチャート140を実施し、研削砥石33a、43aの欠け、及び目詰まりの状態を検出して、研削ホイールの交換や、研削砥石のドレッシングの実施を促す制御を実施する。以下に、図4を参照しながら、詳細に説明する。
【0030】
例えば、一つの第1のカセット7内に収容された全てのウエーハWに対して研削加工を実施した後のタイミングで、カメラ50を使用して、粗研削ホイール33、仕上げ研削ホイール43に配設された研削砥石33a、43aを撮像する撮像モードを実施する(ステップS1)。研削砥石33a、43aを撮像する手順は、上記した基準画像Gb1、Gb2を撮像した際の手順と同様であり、ターンテーブル5を回転して、粗研削ホイール33、及び仕上げ研削ホイール43の直下にカメラ50を位置付けて撮像し、図5に示すような研削砥石33aの画像G1、及び、図5に示す研削砥石43aの画像G2を得る。カメラ50によって撮像された画像G1、画像G2の情報は、画像記憶部110の第二の画像記憶部114(図2を参照)に記憶される。
【0031】
該ステップS1(撮像モード)を実施したならば、状態検出部120により、第一の画像記憶部112に記憶された基準画像Gb1と第二の画像記憶部114に記憶された画像G1とを比較し、及び、第一の画像記憶部112に記憶された基準画像Gb2と第二の画像記憶部114に記憶された画像G2とを比較して、研削砥石33a、研削砥石43aの欠け状態を検出する(ステップS2:欠け検出)。
【0032】
上記した欠け状態の検出について、より具体的に説明する。ステップS1を実施することにより得た図5に示す画像G1と、第一の画像記憶部112に記憶されている基準画像Gb1とを、画像処理技術によって比較することにより、基準画像Gb1とは異なる特徴的な色調(略黒色)で認識される領域を、欠け部C1~C3として検出する。欠け部C1~C3を検出したならば、欠け部C1~C3の総面積G1cを演算し、総面積G1cを研削砥石33aの欠け状態を表す指標として、制御手段100の状態検出部120に記憶する。さらに、ステップS1を実施することにより得た画像G2と、第一の画像記憶部112に記憶されている基準画像Gb2とを、画像処理技術によって比較することにより、基準画像Gb2とは異なる特徴的な色調(略黒色)で認識される領域を、欠け部C4~C7として検出する。欠け部C4~C7を検出したならば、該欠け部C4~C7の総面積G2cを演算し、研削砥石43aの欠け状態を表す指標として、制御手段100の状態検出部120に記憶する。以上により、ステップS2の欠け検出が完了する。
【0033】
上記したステップS2を実行したならば、次いで、目詰まり状態の検出(ステップS3:目詰まり検出)を実行する。上記したように、研削砥石33aを撮像して得た画像G1と基準画像Gb1とを画像処理技術によって比較することにより、図5に示すように、新品状態の研削砥石33a、及び欠け部C1~C3とは異なる色調(略灰色で示す)の目詰まり部D1を検出する。目詰まり部D1は、研削砥石33aによってウエーハWを研削した時に発生する研削屑が、研削砥石33aを構成する結合材である例えばビトリファイドボンドに入り込み形成されるものであって、新品状態の研削砥石33a、及び欠け状態C1~C3とは異なる特徴的な色調であるため、画像処理技術によって明確に区別される。このようにして基準画像Gb1にはない目詰まり部D1を検出し、その総面積G1dを演算し、研削砥石33aの目詰まり状態を表す指標として状態検出部120に記憶する。同様にして、研削砥石43aの画像G2、及び基準画像Gb2に基づいて、新品状態の研削砥石43a、及び欠け部C4~C7とは異なる色調(略灰色)の目詰まり部D2、D3を検出する。目詰まり部D2、D3は、研削砥石43aによってウエーハWを研削した時に発生する研削屑が、研削砥石43aを構成する結合材(例えばビトリファイドボンド)に入り込み形成されるものであって、研削砥石43a、及び欠け状態C4~C7とは異なる特徴的な色調であるため、画像処理技術によって明確に区別される。このようにして基準画像Gb2にはない略灰色で認識される目詰まり部D2、D3の総面積G2dを演算し、研削砥石43aの目詰まり状態を表す指標として、状態検出部120に記憶する。
【0034】
なお、研削砥石33aと研削砥石43aとは、研削砥石を構成する砥粒の大きさ(目の粗さ)が異なり、また、砥粒の素材や結合材が異なる場合も想定される。よって、上記した欠け状態や目詰まり状態を画像処理によって検出する際に基準とする色調は、研削砥石の種類毎に設定されることが好ましい。
【0035】
上記したように、欠け状態、及び目詰まり状態が検出されたならば、判断部130を構成する欠け判断部132により、検出した欠け状態(G1c、G2c)が許容値内であるか否かを判断する(ステップS4)。該許容値は、予め行われる実験等によって、ウエーハが破損する等の問題が生じない基準値として設定されるものであり、研削砥石の粗さや、研削砥石を構成する素材毎に応じて設定することが好ましい。研削砥石33aの欠け許容値は、例えばQ1cで設定され、研削砥石43aの欠け許容値は、例えばQ2cで設定される。すなわち、ステップS4では、研削砥石33aに関し、G1c≦Q1cであるか否かが判断され、研削砥石43aに関し、G2c≦Q2cであるか否かが判断され、いずれか一方、又は両方が「no」と判断される場合は、ステップS5が実行される。
【0036】
上記したように、ステップS4において欠け状態が許容値を超える(no)と判断された場合は、それ以上研削を継続すると、ウエーハWが破損するおそれがある。よって、ステップS4において、研削砥石33aの欠け状態G1cが許容値Q1cを超えて「no」と判断された場合は、作業者に対して粗研削ホイール33の交換を指示し、研削砥石43aの欠け状態G2cが許容値Q2cを超えて「no」と判断された場合は、仕上げ研削ホイール43の交換を指示する。作業者に該指示を知らせる手段としては、表示手段16に表示したり、該表示と共に警告ブザーを鳴らしたり、又は警告ランプを点灯したりする等の手段が考えられる。なお、ステップS5を実施する際には、研削装置1における研削加工を停止し、研削ホイールの交換が実施されるまでは、再稼働ができないようにすることが好ましい。以上のようにステップS5が実施されたならば、フローチャート140は終了(END)となる。
【0037】
上記したステップS4において、研削砥石33aの欠け状態G1c、及び研削砥石43aの欠け状態G2cが許容値を超えない(yes)と判断された場合は、ステップS6に進み、判断部130を構成する目詰まり判断部134により、状態検出部120が検出した目詰まり状態(G1d、G2d)が許容値内であるか否かを判断する。該許容値は、予め行われる実験等によって、ウエーハWが面焼けを起こす等、良好な研削が実施できない問題が生じる基準値として設定され、研削砥石の粗さや、研削砥石を構成する素材毎に設定されることが好ましい。研削砥石33aの目詰まり許容値は、例えばQ1dで設定され、研削砥石43aの目詰まり許容値は、例えばQ2dで設定される。
【0038】
ステップS6において、G1d≦Q1dでない、すなわち、研削砥石33aの目詰まり状態が許容値を超えると判断される場合(no)は、ステップS7に進み、粗研削ホイール33に配設された研削砥石33aの目立てを行うドレッシングの実施を指示する。同様に、G2d≦Q2dでない、すなわち、研削砥石43aの目詰まり状態が許容値を超えると判断された場合(no)も、ステップS7に進み、仕上げ研削ホイール43に配設された研削砥石43aの目立てを行うドレッシングを指示する。作業者に該指示を知らせる手段としては、表示手段16に表示したり、該表示と共に警告ブザーを鳴らしたり、又は警告ランプを点灯したりする等の手段が考えられる。ステップS7を実施する際には、研削装置1における研削加工を停止して、研削ホイールのドレッシングが完了するまでは、再稼働ができないようにすることが好ましい。なお、上記したドレッシングは、作業者による手作業で実施してもよいし、研削装置1に対して研削砥石表面の目立てを行うためのドレッシングボードを配設しておき、制御手段100の制御に基づいて実施するものであってもよい。ステップS7が実施されたならば、フローチャート140は終了(END)となる。
【0039】
上記したステップS4、ステップS6において、いずれにおいても「yes」と判断された場合は、そのまま研削加工を実施しても、ウエーハWの破損や面焼け等が生じないと判断され、制御フローチャート140は終了(END)となる。
【0040】
上記した実施形態によれば、適正な時期に研削ホイール33、43の交換を実施したり、研削砥石33a、43aのドレッシングを行うことができ、ウエーハWが破損したり、ウエーハWの研削面に面焼けが生じてウエーハの品質が低下したりするという問題が解消する。
【0041】
上記した実施形態では、研削装置1に粗研削手段Z1と仕上げ研削手段Z2とを備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、研削手段を一つのみ備えた研削装置に適用することも可能である。また、上記した実施形態では、一つの第1のカセット7内に収容された全てのウエーハWに対して研削加工を実施した後のタイミングで、図4に示すフローチャート140に基づいて、欠け状態の検出や、目詰まり状態の検出を実施する例を示したが、本発明はこれに限定されず、任意のタイミングで実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:研削装置
2:装置ハウジング
21:直立壁
22、23:案内レール
Z1:粗研削手段
31:スピンドルハウジング
31a:スピンドル
32:ホイールマウント
33:粗研削ホイール
33a:研削砥石
34:電動モータ
35:移動基台
36:研削送り機構
Z2:仕上げ研削手段
41:スピンドルハウジング
41a:スピンドル
42:ホイールマウント
43:仕上げ研削ホイール
43a:研削砥石
44:電動モータ
45:移動基台
46:研削送り機構
5:ターンテーブル
6:チャックテーブル
7:第1のカセット
8:第2のカセット
9:仮置き手段
10:入力手段
10a:読取手段
11:洗浄手段
12:被加工物搬送手段
13:第1の搬送手段
14:第2の搬送手段
15:操作パネル
16:表示手段
50:カメラ
100:制御手段
110:画像記憶部
112:第一の画像記憶部
114:第二の画像記憶部
120:状態検出部
130:判断部
132:欠け判断部
134:目詰まり判断部
A:被加工物搬入・搬出域
B:粗研削加工域
C:仕上げ研削加工域
図1
図2
図3
図4
図5