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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】可塑性油脂組成物用添加剤
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240304BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20240304BHJP
   A21D 13/16 20170101ALI20240304BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20240304BHJP
   A21D 2/16 20060101ALI20240304BHJP
【FI】
A23D9/00
A23D9/00 502
A23D7/00 506
A21D13/16
A21D13/00
A21D2/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019188736
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2020065546
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018200291
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】折笠 祥子
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼染 芳宗
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 美穂
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/204089(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/119781(WO,A1)
【文献】特開2016-189724(JP,A)
【文献】特開2012-070655(JP,A)
【文献】国際公開第2016/121675(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00 - 17/00
A23D 7/00 - 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂中にパーム系油脂を半量以上含み、トランス脂肪酸含有量が0~2質量%である可塑性油脂組成物、に含有される可塑性油脂組成物用添加剤であって、
構成脂肪酸全体中の炭素数4~10の脂肪酸含量が60~85質量%で、且つ下記(a)(b)および(c)を満たす、60~80質量%のMMM、10~28質量%のラウリン系油脂および5~28質量%の非ラウリン系油脂を原料油脂とするエステル交換油脂、を有効成分とし、前記エステル交換油脂以外のその他成分の含有量が10質量%以下である、前記可塑性油脂組成物用添加剤。
(a)MMMの含有量が28~45質量%である。
(b)M2Lの含有量が33~45質量%である。
(c)M2H/M2L=0.25~0.90である。
M:炭素数が~10の脂肪酸
L:炭素数が12~24の脂肪酸
H:炭素数が16~24の脂肪酸
MMM:1分子のグリセロールに、3分子のMがエステル結合したトリアシルグリセロール
M2L:1分子のグリセロールに、2分子のMと1分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロール
M2H:1分子のグリセロールに、2分子のMと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロール
【請求項2】
さらに、下記(d)を満たす前記エステル交換油脂を含む、請求項1に記載の可塑性油脂組成物用添加剤。
(d)LLLの含有量が5質量%以下である。
H:炭素数が16~24の脂肪酸
LLL:1分子のグリセロールに、3分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロール
【請求項3】
さらに、下記(e)を満たす前記エステル交換油脂を含む、請求項1又は2に記載の可塑性油脂組成物用添加剤。
(e)MMM/M2L=0.5~1.0である。
【請求項4】
請求項1ないしのいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物用添加剤を、油脂相中に0.05~20質量%含有する、油脂中にパーム系油脂を半量以上含み、トランス脂肪酸含有量が0~2質量%である可塑性油脂組成物。
【請求項5】
可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、MMMの含有量が0.1~10質量%であり、M2Lの含有量が0.1~10質量%であり、M2Lの含有量に対するMMMの含有量(MMM/M2L)が0.5~1.0である、請求項4に記載の可塑性油脂組成物。
【請求項6】
請求項又はに記載の可塑性油脂組成物を使用した、ベーカリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーガリンやショートニングといった可塑性油脂に優れた伸展性を付与することのできる可塑性油脂組成物用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる可塑性油脂組成物は、練り込み、折り込み、スプレッド、コーティングクリームおよびサンドクリームなどの様々な用途に用いられているものである。可塑性油脂組成物の例としては、マーガリン、ファットスプレッドおよびショートニングが挙げられる。
【0003】
従来、可塑性油脂組成物には、加工適性を向上させるために、さまざまな原料油の部分水素添加油が使用されていた。一方で、部分水素添加油には、トランス脂肪酸が含まれており、近年のトランス脂肪酸が引き起こす健康問題が問題視されるようになったことから、可塑性油脂組成物においても、トランス脂肪酸含有量を低減化する必要性が強く求められるようになってきた。
【0004】
可塑性油脂組成物に含まれるトランス脂肪酸の含有量を低減するためには、トランス脂肪酸を実質上含まない天然固体脂である、パーム油やパーム核油の利用を進める必要がある。しかしながら、パーム油やその分別油である、所謂パーム系油脂は、経日的に油脂結晶が粗大化する傾向にあり、可塑性油脂の伸展性を阻害するという問題があった。また、パーム核油やヤシ油などのラウリン系油脂は、口どけは良いが、伸展性を維持できる温度範囲が狭いという問題があった。そのため、ラウリン系油脂の可塑性油脂組成物への配合量は自ずと制限されていた。
【0005】
上記のような問題を解決するために、可塑性油脂に添加する様々な改質剤の開発がこれまで行われてきている。例えば、特許文献1には、パーム系油脂を主原料とする可塑性油脂の粗大結晶の発生や、経日的に硬くなるという現象を抑制するための改質剤として、MCTと他の極度硬化油を主原料とするエステル交換油であり、特定の脂肪酸構成を有する油脂組成物が提案されている。しかしながら、この油脂組成物が可塑性油脂の伸展性を向上させる効果については十分とはいえなかった。
【0006】
また、特許文献2では、可塑性油脂の経日的な変化を抑制する効果を有し、含気性を有する可塑性油脂が得られる、可塑性油脂用の改質剤として、中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを特定の比率で含有させた油脂が開示されている。しかしながら、この油脂も、可塑性油脂の伸展性を向上させる効果については十分とはいえず、また、この油脂を工業的に安価に製造することは難しかった。
【0007】
また、特許文献3では、経時的な口溶けの低下が改善されたパンが得られるパン生地、及び、その様なパンを容易に作製する為の可塑性油脂として、中鎖脂肪酸と長鎖脂肪酸を構成脂肪酸とするトリグリセリドを特定の比率で含有させたパン生地もしくは可塑性油脂が開示されている。しかしながら、この可塑性油脂も、パンの口溶けの改善には効果を発揮するものの、可塑性油脂の伸展性については十分とはいえなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5736706号公報
【文献】特許第4894975号公報
【文献】特開2016-189724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の課題は、パーム系油脂やラウリン系油脂を使用したトランス脂肪酸含量が低い可塑性油脂組成物において、硬さ変化や粗大結晶の生成といった物性変化を抑制でき、さらにパン生地などへの折り込みや練りこみに適した良好な伸展性を付与できる、可塑性油脂組成物用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために、鋭意研究したところ、特定のトリアシルグリセロール組成を満たした油脂を、可塑性油脂組成物用添加剤として、可塑性油脂組成物に添加したときに、前記可塑性油脂組成物の伸展性が向上し、経時的な硬さの変化も抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明には、以下の態様のようなものが含まれる。
〔1〕構成脂肪酸全体中の炭素数4~10の脂肪酸含量が60~85質量%で、且つ下記(a)と(b)を満たす油脂を含む、可塑性油脂組成物用添加剤。
(a)MMMの含有量が28~62質量%である。
(b)M2Lの含有量が33~45質量%である。
M:炭素数が4~10の脂肪酸
L:炭素数が12~24の脂肪酸
MMM:1分子のグリセロールに、3分子のMがエステル結合したトリアシルグリセロール
M2L:1分子のグリセロールに、2分子のMと1分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロール
〔2〕さらに、下記(c)と(d)を満たす油脂を含む、〔1〕に記載の可塑性油脂組成物用添加剤。
(c)M2H/M2L=0.25~0.90である。
(d)LLLの含有量が5質量%以下である。
H:炭素数が16~24の脂肪酸
M2H:1分子のグリセロールに、2分子のMと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロール
LLL:1分子のグリセロールに、3分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロール
〔3〕さらに、下記(e)を満たす油脂を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の可塑性油脂組成物用添加剤。
(e)MMM/M2L=0.5~1.0である。
〔4〕60~80質量%の中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール、7~40質量%のラウリン系油脂および0~33質量%の非ラウリン系油脂を原料油脂とする、エステル交換油脂を含む、〔1〕ないし〔3〕のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物用添加剤。
〔5〕〔1〕ないし〔4〕のいずれか1項に記載の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂を、油脂相中に0.05~20質量%含有する、可塑性油脂組成物。
〔6〕可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占める、MMMの含有量が0.1~10質量%であり、M2Lの含有量が0.1~10質量%であり、M2Lの含有量に対するMMMの含有量(MMM/M2L)が0.5~1.0である、前記可塑性油脂組成物。
〔7〕〔5〕又は〔6〕に記載の可塑性油脂組成物を使用した、ベーカリー食品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、パーム系油脂やラウリン系油脂を使用した可塑性油脂組成物の硬さ変化や、粗大結晶の生成といった物性変化の抑制効果を有するとともに、パン生地などへの折り込みや練りこみに適した、良好な伸展性を可塑性油脂組成物に付与できる可塑性油脂組成物用添加剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の「可塑性油脂組成物用添加剤」について順を追って説明する。
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤は、構成脂肪酸全体中の炭素数4~10の脂肪酸(後述のM)の含量が60~85%質量%である油脂を含む。炭素数4~10の構成脂肪酸は、好ましくは直鎖の飽和脂肪酸である。構成脂肪酸全体中の、炭素数4~6の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0~5質量%である。また、構成脂肪酸全体のうち、炭素数8~10の脂肪酸が占める割合は、好ましくは50~85質量%であり、より好ましくは55~80質量%であり、さらに好ましくは60~75質量%であり、ことさらに好ましくは60~70質量%である。ここで、炭素数8~10の脂肪酸については、炭素数10の脂肪酸が好ましい。
【0014】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、構成脂肪酸全体中の炭素数12の脂肪酸の含有量が、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。この炭素数12の脂肪酸は、好ましくは直鎖の飽和脂肪酸である。また、構成脂肪酸全体中の炭素数14~24の脂肪酸の含有量は0~50質量%が好ましく、より好ましくは10~40質量%であり、さらに好ましくは15~35質量%である。この炭素数14~24の構成脂肪酸は、好ましくは直鎖の飽和脂肪酸である。
【0015】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、MMMを28~62質量%含有する。以下、MおよびMMMは、次を意味する。Mは炭素数4~10の脂肪酸である。Mを構成する脂肪酸は好ましくは直鎖の飽和脂肪酸である。MMMは1分子のグリセロールに、3分子のMがエステル結合したトリアシルグリセロールである。MMMの、これら3つの脂肪酸(M)は、すべて同一であってもよいし、異なる脂肪酸を含んでいてもよい。さらに、MMMは、複数の異なる化合物の混合物であってもよい。このような混合物の例として、トリオクタノイルグリセロールとトリデカノイルグリセロールとの混合物が挙げられる。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂のMMM含有量は、好ましくは28~45質量%であり、より好ましくは28~37質量%である。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂のMMM含有量が上記範囲内にあると、可塑性油脂組成物に優れた伸展性を付与することができる。
【0016】
上記MMMが有する構成脂肪酸全量のうち、炭素数4~6の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0~5質量%である。また、上記MMMの有する構成脂肪酸全量のうち、炭素数8~10の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは60~100質量%あり、さらに好ましくは90~100質量%であり、最も好ましくは95~100質量%である。ここで、炭素数8~10の脂肪酸については、炭素数10の脂肪酸が好ましい。
【0017】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤の好ましい実施の態様の一例として、可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂の28~62質量%が以下のMMMである、可塑性油脂組成物用添加剤が挙げられる。すなわち、このMMMが有する構成脂肪酸全量のうち、95質量%以上を占める構成脂肪酸が、オクタン酸(炭素数8)および/またはデカン酸(炭素数10)である、MMMである。さらに、この構成脂肪酸としてのオクタン酸と、デカン酸と、の質量比は、好ましくは、100:0~10:90であり、より好ましくは80:20~20:80である。
【0018】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれるMMMは、従来公知の方法を用いて製造できる、MMMを40質量%以上(好ましくは60~100質量%)含有する油脂(以下、MMM油脂とも表す)を使用してもよい。MMM油脂は、例えば、炭素数4~10の脂肪酸とグリセロールとを、120~180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。この縮合反応は、減圧下で行うのが好ましい。上記縮合反応には、触媒を用いることができる。しかし、無触媒下で、上記縮合反応を行うことが好ましい。
【0019】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、M2Lを33~45質量%含む。以下、LおよびM2Lは次を意味する。Lは炭素数が12~24の脂肪酸である。M2Lは1分子のグリセロールに、2分子のMと1分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロールである。Lは好ましくは炭素数12~24の直鎖の飽和脂肪酸であり、より好ましくは炭素数12~18の直鎖の飽和脂肪酸である。本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、M2Lを、好ましくは36~45質量%、より好ましくは38~45質量%含む。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂に占めるM2Lの含有量が上記範囲にあると、この可塑性油脂組成物用添加剤を添加した可塑性油脂組成物は、経時的な硬さの変化や粗大結晶の発生が抑制されるとともに、優れた伸展性が得られる。
【0020】
上記M2Lが有する構成脂肪酸中のMの全量のうち、炭素数4~6の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0~5質量%である。また、上記M2Lが有する構成脂肪酸中のMの全量のうち、炭素数8~10の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは60~100質量%あり、さらに好ましくは90~100質量%であり、最も好ましくは95~100質量%である。ここで、炭素数8~10の脂肪酸については、炭素数10の脂肪酸が好ましい。
【0021】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれるM2Lとしては、従来公知の方法を用いて製造できる、M2Lの含有量が20質量%以上(好ましくは40~100質量%)である油脂(以下、M2L油脂とも表す)を使用してもよい。M2L油脂は、例えば、20~80質量部(より好ましくは40~60質量部)のMMMと、20~80質量部(より好ましくは40~60質量部)のヨウ素価5以下かつ構成脂肪酸として炭素数12以上の飽和脂肪酸の含有量が80質量%以上の油脂(例えば、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、やし油などを原料とする、極度硬化油)との混合油脂をエステル交換し、分別した油脂であってもよい。また、MMMと、構成脂肪酸として炭素数12以上の脂肪酸の含有量が80質量%以上の油脂(例えば、菜種油、大豆油、パーム油、パーム核油、やし油など)との混合油脂を、エステル交換した後、極度硬化し、さらに分別した油脂であってもよい。硬化(水素添加)反応およびエステル交換反応は、従来公知の方法が適用できる。エステル交換反応は、ナトリウムメトキシドなどの合成触媒を使用した化学的エステル交換、ならびに、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換、のどちらの方法でも適用できる。分別は、従来公知の、ドライ分別(自然分別)、乳化分別(界面活性剤分別)、ならびに、溶剤分別などの通常の方法が適用できる。
【0022】
可塑性油脂組成物用添加剤は、MMMを28~62質量%、M2Lを33~45質量%含有する油脂を有効成分とする。当該油脂は、また、M2Lの含有量に対するMMMの含有量の質量比(MMM/M2L)が、好ましくは0.5~1.0であり、より好ましくは0.6~0.9である。当該条件が満たされ、食用に適する限り、本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂の製造にどのような油脂原料を使用してもよい。例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレインなど)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールおよびココアバター、ならびにこれらの混合油および加工油脂(水素添加油、エステル交換油、分別油など)を使用してもよい。
【0023】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤中のM2LにはM2Hが含まれる。以下、Hおよび、M2Hは次を意味する。Hは炭素数が16~24の脂肪酸である。M2Hは1分子のグリセロールに、2分子のMと1分子のHがエステル結合したトリアシルグリセロールである。Hは、より好ましくは炭素数が16~24の直鎖の飽和脂肪酸である。可塑性油脂組成物用添加剤中のM2Lの含有量に対するM2Hの含有量の質量比(M2H/M2L)は、0.25~0.80が好ましく、より好ましくは0.45~0.70である。可塑性油脂組成物用添加剤中のM2H/M2Lが上記範囲にあると、この可塑性油脂組成物用添加剤を添加した可塑性油脂組成物は、組織の状態が良くなり、良好な伸展性が得られる。そして、本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂に占める、M2H含有量に対するMMM含有量の質量比(MMM/M2H)は、好ましくは1.0~1.4であり、より好ましくは1.1~1.3である。
【0024】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂には、他のトリアシルグリセロールとして、LLLを含んでもよい。以下、LLLは次を意味する。LLLは1分子のグリセロールに、3分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロールである。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂に占めるLLLの含有量は5質量%以下が好ましい。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂に占めるLLLの含有量が上記範囲にあると、この可塑性油脂組成物用添加剤を添加した可塑性油脂組成物は、組織の状態が良くなり、良好な伸展性が得られる。
【0025】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、他のトリアシルグリセロールとして、ML2を5~25質量%含んでもよい。以下、ML2は次を意味する。ML2は1分子のグリセロールに、1分子のMと2分子のLがエステル結合したトリアシルグリセロールである。本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、ML2を、より好ましくは10~25質量%、さらに好ましくは15~22質量%含む。本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれるM2LとML2は、ML2の含有量に対するM2Lの含有量の質量比(M2L/ML2)が2.0を越えることが好ましい。M2L/ML2は、より好ましくは2.2~5.0であり、さらに好ましくは2.2~3.0である。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂に占めるML2の含有量、およびM2L/ML2が上記範囲にあると、この可塑性油脂組成物用添加剤は、可塑性油脂組成物に優れた伸展性を付与することができる。
【0026】
本発明の可塑性油脂組成物添加剤は、有効成分である油脂のみで構成されてもよいし、油脂以外のその他成分(例えば、乳化剤等の食品添加物)を含んでもよい。しかし、その他成分の含有量は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは0~5質量%、さらに好ましくは0~2質量%である。なお、本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂の構成脂肪酸の分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)を用いて行うことができる。可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂の、MMM含有量、M2L含有量、M2H含有量、ML2含有量、およびLLL含有量は、例えば、ガスクロマトグラフ法(JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)に準じて測定できる。
【0027】
本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール、ラウリン系油脂および非ラウリン系油脂を原料油脂とするエステル交換油脂でもよい。
【0028】
前記エステル交換油脂の原料として用いることができる中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールは、MMMを90質量%以上(好ましくは、95~100質量%)含有する油脂を意味する。エステル交換に用いる中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールは、エステル交換の原料油脂中の60~80質量%が好ましく、より好ましくは60~70質量%である。中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール中のMMMが有する構成脂肪酸全量のうち、炭素数4~6の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは0~5質量%である。また、上記MMMの有する構成脂肪酸全量のうち、炭素数8~10の脂肪酸が占める割合は、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは60~100質量%あり、さらに好ましくは90~100質量%であり、最も好ましくは95~100質量%である。ここで、炭素数8~10の脂肪酸については、炭素数10の脂肪酸が好ましい。この中鎖脂肪酸トリアシルグリセロールは従来公知の方法を用いて製造してもよい。例えば、炭素数4~10の脂肪酸とグリセロールとを、120~180℃に加熱し、脱水縮合させることにより製造できる。この縮合反応は、減圧下で行うのが好ましい。上記縮合反応には、触媒を用いることができる。しかし、無触媒下で、上記縮合反応を行うことが好ましい。
【0029】
前記エステル交換油脂の原料として用いることができるラウリン系油脂は、構成脂肪酸の全量に占めるラウリン酸の割合が30質量%以上である油脂である。ラウリン系油脂としては、例えばパーム核油、やし油、ならびにこれらの混合油および加工油脂(水素添加油、エステル交換油、分別油など)が挙げられる。エステル交換に用いるラウリン系油脂は、エステル交換原料油脂中の7~40質量%が好ましく、より好ましくは10~35質量%、さらに好ましくは12~28質量%である。
【0030】
前記エステル交換油の原料として用いることができる非ラウリン系油脂は、構成脂肪酸の全量に占める炭素数が16以上の脂肪酸の割合が90質量%以上である油脂である。非ラウリン系油脂としては、例えば、パーム油、シア脂、サル脂、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、およびココアバター、ならびにこれらの混合油および加工油脂(水素添加油、エステル交換油、分別油など)を使用してもよい。非ラウリン系油脂は、好ましくは極度硬化油である。エステル交換に用いる非ラウリン系油脂は、エステル交換の原料中の0~33質量%が好ましく、より好ましくは5~30質量%、さらに好ましくは、12~28質量%である。
【0031】
前記エステル交換油脂を得るためのエステル交換反応は、従来公知の方法が適用できる。エステル交換反応は、ナトリウムメトキシドなどの合成触媒を使用した化学的エステル交換、ならびに、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換、のどちらの方法でも適用できる。
【0032】
本発明の可塑性油脂組成物は、本発明の可塑性油脂組成物用添加剤を含有する。本発明の可塑性油脂組成物用添加剤に含まれる油脂は、可塑性油脂組成物の油脂相中に0.05~20質量%含有されることが好ましい。より好ましくは0.1~15質量%であり、さらに好ましくは0.5~10質量%である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占めるMMMの含有量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂に占めるM2Lの含有量は、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%である。また、本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂は、M2Lの含有量に対するMMMの含有量の質量比(MMM/M2L)が、好ましくは0.5~1.0であり、より好ましくは0.6~0.9である。また、本発明の可塑性油脂組成物に含まれる油脂は、M2L含有量に対するM2H含有量の質量比(M2H/M2L)が、好ましくは0.25~0.80であり、より好ましくは0.45~0.70である。そして、M2H含有量に対するMMM含有量の質量比(MMM/M2H)が、好ましくは1.0~1.4であり、より好ましくは1.1~1.3である。
【0033】
本発明の可塑性油脂組成物の製造には、食用に適する限り、どのような油脂原料を使用してもよい。例えば、ヤシ油、パーム核油、パーム油、パーム分別油(パームオレイン、パームスーパーオレインなど)、シア脂、シア分別油、サル脂、サル分別油、イリッペ脂、大豆油、菜種油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、米油、コーン油、ゴマ油、オリーブ油、乳脂、およびココアバター、ならびにこれらの混合油および加工油脂(水素添加油、エステル交換油、分別油など)を使用してもよい。
【0034】
本発明の可塑性油脂組成物は、健康上懸念されるトランス脂肪酸の含有量を低減できる。この可塑性油脂組成物のトランス脂肪酸含有量は、好ましくは0~5質量%であり、より好ましくは0~3質量%であり、さらに好ましくは0~2質量%である。
【0035】
本発明の可塑性油脂組成物は、油脂以外のその他の成分として、通常ベーカリー食品に用いる油脂組成物に配合される成分を配合できる。その他の成分としては、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩および塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸およびグルコン酸などの酸味料、糖類、糖アルコール類、ステビアおよびアスパルテームなどの甘味料、β-カロテン、カラメルおよび紅麹色素などの着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキンなど)およびルチンなどの酸化防止剤、小麦蛋白および大豆蛋白などの植物蛋白、全脂粉乳、脱脂粉乳および乳清蛋白などの乳製品、卵および卵加工品、香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類および魚介類など、の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0036】
本発明の可塑性油脂組成物としては、油相部と水相部を有するマーガリン、ファットスプレッドや、油相部のみを有するショートニングが挙げられる。油相部と水相部を有する乳化物の場合は、油中水型乳化物が好ましい。しかし、逆相(水中油型乳化物)であっても、また、複合乳化型であってもよい。油中水型乳化物の場合、水の含有量は、好ましくは3~50質量%、より好ましくは5~45質量%である。本発明の可塑性油脂組成物は、油脂を、好ましくは40質量%以上、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは70~100質量%含有する。
【0037】
本発明の可塑性油脂組成物の製造方法は、特に制限されない。本発明の可塑性油脂組成物は、公知の可塑性油脂組成物の製造条件および製造方法により製造できる。具体的には、配合する油溶成分を混合溶解することで製造できる。また、可塑性を付与する場合は、まず、配合する油溶成分を混合溶解した油相を調製する。次に、必要に応じて調製した水相を、油相と混合乳化する。その後、混合乳化物を、冷却し、結晶化させて製造できる。冷却および結晶化は、好ましくは冷却可塑化である。冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、さらに好ましくは-5℃/分以上である。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。また、油相の調製後または混合乳化後は、調製物は、好ましくは殺菌処理される。殺菌方法としては、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機、掻き取り式熱交換機を用いた連続式が挙げられる。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクターなどのマーガリン製造機やプレート型熱交換機などが挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0038】
本発明の可塑性油脂組成物は、パーム系油脂やラウリン系油脂を油脂原料として使用しても、硬さ変化や、粗大結晶の生成といった物性変化が抑制される。また、良好な伸展性を有するので、パン生地などへの折り込みや練りこみに適している。本発明の可塑性油脂組成物は、例えば、菓子・パンなどのベーカリー生地への練り込み用や折り込み用、ベーカリー食品へのスプレッド用やコーティング用、ならびに、バタークリームなどのホイップ用など、として使用できる。
【実施例
【0039】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。以下において「%」とは、特別な記載がない場合、質量%を示す。
【0040】
〔可塑性油脂組成物用添加剤の調製1〕
62質量部のn-オクタン酸およびn-デカン酸を構成脂肪酸とする中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(日清オイリオグループ社製「日清MCT-C10R」)、19質量部のパーム核極度硬化油、および19質量部の菜種極度硬化油を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換を行い、エステル交換油脂を得た。このエステル交換油脂を可塑性油脂組成物用添加剤1とした。
【0041】
〔可塑性油脂組成物用添加剤の調製2〕
50質量部のn-オクタン酸およびn-デカン酸を構成脂肪酸とする中鎖脂肪酸トリアシルグリセロール(日清オイリオグループ社製「日清MCT-C10R」)、および50質量部の菜種極度硬化油を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換を行い、エステル交換油脂を得た。このエステル交換油脂を可塑性油脂組成物用添加剤2とした。
【0042】
〔測定方法〕
表1に示す可塑性油脂組成物用添加剤1~2の全トリアシルグリセロール(油脂)に占めるMMM含量、M2L含量、M2H含量、LLL含量は、JAOCS,vol70,11,1111-1114(1993)を参考にしたガスクロマトグラフ法により測定した。測定結果を表1に示す。
また、油脂の構成脂肪酸は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce1f-96準拠)により測定した。
【0043】
〔ロールイン用マーガリンの調製〕
口どけは良いが、経日的に結晶が粗大化しやすいパーム油中融点画分を半量以上含む、ロールイン用マーガリンを調製した。すなわち表2の配合に従って、可塑性油脂組成物用添加剤1~2、パーム油中融点画分、エステル交換油脂、および大豆油を混合し、混合油脂A、B、Cを得た。また、表3の配合に従って、各混合油脂を使用した実施例1および比較例1~2のロールイン用マーガリンを常法に従って製造した。すなわち、マーガリンは油相と水相とをそれぞれ調製し、油相に水相を混合、乳化した後、急冷混捏し、レスティングチューブを通してシート状に成形して、ロールイン用マーガリンを製造した。製造したロールイン用マーガリンは冷蔵保存した。保存1週間後、1カ月後、3カ月後に下記の通り評価を行った。
【0044】
〔レオメーターを用いた可塑性の評価〕
実施例1、比較例1~2のロールイン用マーガリンを縦3cm×横7cmにカットし、3時間、10℃で調温した。クリープメータ(RE-2-33005C、株式会社山電)の3点曲げ試験冶具プランジャーを用いて破断した際の破断荷重と破断歪率を解析ソフト(破断強度解析Windows)によって算出した。破断荷重をマーガリンが割れる際の硬さの指標とした。破断荷重の値が大きいほど、マーガリンが硬く、値が小さいほど、マーガリンが柔らかいことを意味する。また、破断歪率を伸展性の指標とした。破断歪率の値が小さいほど伸展性が悪く、大きいほど伸展性が良好であることを意味する。以上の結果を表2に示した。
【0045】
〔ナッペ時の伸展性評価〕
実施例1、比較例1~2のロールイン用マーガリンを縦3cm×横7cmにカットし、これをヘラでナッペして、下記の基準に従って伸展性を評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、その結果を表2に示した。なお、ナッペ時の伸展性評価は、破断歪率だけでなく破断荷重にも影響を受ける。
【0046】
〔ナッペ時の伸展性評価の基準〕
途切れなく伸び、ナッペ後の組織がなめらかである ◎
途切れはあるが、ナッペ後の組織がなめらかである 〇
ナッペ途中で途切れ、ナッペ後の組織が粗い △
ナッペ途中で途切れ、組織がボロボロになり、伸展しない ×
【0047】
〔クロワッサンの作製〕
実施例1、および比較例1~2のロールイン用マーガリンを、2カ月間、冷蔵保存し、クロワッサンの作製に使用した。強力粉50質量部、中力粉50質量部、砂糖6質量部、食塩1.7質量部、全卵5質量部、乳製品3質量部、ショートニング6質量部、水53質量部、生イースト5質量部及びイーストフード1質量部からなるクロワッサン生地を調製し、生地3kgに対して、実施例1および比較例1~2のロールイン用マーガリンを800gのせ、常法に従ってロールイン用マーガリンを生地に折り込み、成形、ホイロ後、焼成してクロワッサンを得た。そして、可塑性油脂組成物の生地折り込み時の作業性について、以下の基準に従って評価した。評価は5名のパネラーの総合評価とし、その結果を表2に示した。またクロワッサンの体積、高さをレーザー体積計(Selnac-WinVM2100、株式会社アステックス)を用いて測定した。その結果を表2に示した。
【0048】
〔生地への折り込みの作業性の評価の基準〕
ひび割れが無く、伸びが良い 〇
ひび割れがある、又は伸びが悪い ×
【0049】
【表1】
可塑性油脂組成物用添加剤1のMMM/M2Lは0.75、MMM/M2Hは1.19
可塑性油脂組成物用添加剤2のMMM/M2Lは0.46、MMM/M2Hは0.46
【0050】
【表2】
実施例1のマーガリンに含まれる油脂に占める、MMM含有量は1.66質量%、M2L含有量は2.22質量%、M2H含有量は1.40質量%
実施例2のマーガリンに含まれる油脂に占める、MMM含有量は0.98質量%、M2L含有量は2.15質量%、M2H含有量は2.15質量%
【0051】
【表3】
【0052】
実施例1のロールイン用マーガリンは保存1カ月以上では破断荷重の変化が少なく、硬さの変化が抑制されていた。また、実施例1のロールイン用マーガリンは、破断歪率の値も大きく、ナッペ時の観察でも、伸展性が高いことが確認された。このロールイン用マーガリンを使用したクロワッサン生地は、折り込みの作業性も良好であった。焼成後のクロワッサンの体積、高さの数値が大きいことから、マーガリンが生地中にムラなく伸展したことが示された。
【0053】
一方、比較例1のロールイン用マーガリンは、保存1カ月以上では破断荷重の変化が少なく、硬さの変化が抑制されていたが、破断荷重の値が大きく、実施例1のロールイン用マーガリンと比べて硬かった。比較例1のロールイン用マーガリンは、ナッペ時の観察から、伸展性に劣ることが示された。クロワッサン生地への折り込み作業では、多数のひび割れが観察され、焼成後の体積や高さも不十分であった。
【0054】
比較例2のロールイン用マーガリンは、保存1カ月から3カ月の間に破断荷重の増加がみられ、経日的な硬さの変化が大きかった。また、破断歪率の値が小さく、ナッペ時の観察でも、伸展性が非常に悪かった。クロワッサン生地への折り込み作業では、伸びが悪く、焼成後の体積や高さもやや不十分であった。