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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-01
(45)【発行日】2024-03-11
(54)【発明の名称】インクジェット用硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20240304BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20240304BHJP
   C09D 11/30 20140101ALN20240304BHJP
【FI】
C08G59/24
C08K5/06
C09D11/30
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020094207
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021046529
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】P 2019166458
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正人
(72)【発明者】
【氏名】斧田 遥夏
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196475(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034507(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/061988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、
(A)多官能脂環式エポキシ化合物
(B)オキセタン化合物
(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物
(D)光カチオン重合開始剤、および
(E)光カチオン増感剤
を含有し、
(A)多官能脂環式エポキシ化合物が、式(a1):
【化1】
(a1)
の構造を有する化合物と、
下記式(a2)~(a10):
【化2】
(a2)
【化3】
(a3)
【化4】
(a4)
【化5】
(a5)
【化6】
(a6)
【化7】
(a7)
【化8】
(a8)
【化9】
(a9)
および
【化10】
(a10)
(式中、Aは、炭素原子数1~8のアルキレン基を表し;n1およびn2はそれぞれ、1~30の整数を示す)
のうち少なくともいずれか1種の構造を有する化合物
との混合物であって、それらの質量比が、100:0~50:50である、
ことを特徴とする、硬化性組成物。
【請求項2】
50℃にて5~20mPa・sの粘度を有する、請求項1に記載の硬化性組成物
【請求項3】
前記(E)光カチオン増感剤は、アルコキシアントラセン系増感剤である、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~のうちいずれか1項に記載の硬化性組成物より得られる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、特に、インクジェット工法用の硬化性組成物およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷法は、インクジェットプリンタを用いて、基材に硬化性組成物の液滴を吐出させた後にUVなどの活性エネルギー線を照射して即時硬化させる方法である。インクジェット印刷法は、所定の印刷パターンをデジタルデータから直接描画が可能であり、インキの使用量が削減でき、スクリーン印刷用の版も不要であるため、従来法と比較し効率的な生産が可能である。
また、インクジェット印刷法は、非接触印刷であるため、凹凸のついた基材やフレキシブル性を有する基材へ印刷するのが容易であり、プリント配線板用材料への適用が期待されている。
そのようなインクジェット用の硬化性組成物として、例えば特許文献1は、室温にて安定してインクジェット吐出ができ、かつ、加熱を要せず光照射のみで、充分な耐熱性と絶縁性を有する硬化膜を形成するため、特定の単官能重合性モノマーと多官能重合性モノマーを含有するという技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-143982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、硬化物の硬度および基板に対する硬化物の密着性は、できるかぎり優れていることが望ましいのは当然である。また他方では、インクジェット用の硬化性組成物を硬化させるための活性エネルギー線量としては、およそ2000mJ/cmの露光量に抑えることが実用的である。
本発明者は、硬化性組成物において、特定の構造の環状シロキサン化合物を含有させることによって、硬化物の硬度がより高まることを見出した。しかしながら、当該組成物は、完全な硬化までに比較的多量の露光量を必要とし、実用的な露光量に抑えることができなかった。
また、上記特許文献1に記載の技術は、実用的な露光量にて硬化し得、さらには、より高い硬度を有する硬化物を与える硬化性組成物についてまでを想定したものではない。
【0005】
そこで本発明は、インクジェット用の硬化性組成物であって、実用的な露光量にて硬化し得、なお且つ、より高い硬度を有する硬化物となり得る硬化性組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は鋭意検討の結果、主として、多官能脂環式エポキシ化合物、オキセタン化合物、4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物および光カチオン重合開始剤を含有する組成物において、特定の光カチオン増感剤をさらに添加したことによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(A)多官能脂環式エポキシ化合物
(B)オキセタン化合物
(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物
(D)光カチオン重合開始剤、および
(E)光カチオン増感剤
を含有することを特徴とする、硬化性組成物に関する。
本発明の好ましい態様は、50℃にて5~20mPa・sの粘度を有する、上記の硬化性組成物である。
本発明のさらに好ましい態様は 波長395nmにて2000mJ/mの露光量で硬化し得る、上記の硬化性組成物である。
また、本発明の別のさらに好ましい態様は、前記(E)光カチオン増感剤は、アルコキシアントラセン系増感剤である、上記の硬化性組成物である。
また本発明の別の態様は、上記の硬化性組成物より得られる硬化物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘度が抑えられ、且つ実用的な露光量にて硬化し得る硬化性組成物、ならびに、より高い硬度および密着性を有するその硬化物を提供することができる。
従って、本発明の硬化性組成物は、インクジェット工法用の材料として、好適に使用されることが期待される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の硬化性組成物においては、主として、(A)多官能脂環式エポキシ化合物、(B)オキセタン化合物および(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物に加えて、さらに(E)光カチオン増感剤が含有されている。
そのため、得られる硬化物はより高い硬度および密着性を有するだけでなく、およそ波長395nmにておよそ2000mJ/mの露光量で硬化し得る。
【0009】
また、本発明の硬化性組成物は、原則、インクジェット工法にて適用されることを前提としている。そのため、インクジェットノズルからの円滑な吐出の観点から、その粘度は、50℃にて5~20mPa・sの範囲にあるのが好ましく、50℃にて5~15mPa・sの範囲にあるのがより好ましい。
粘度は、例えば、コーンプレート型粘度計(東機産業社製TVE-33H)を用いて測定し得る。
【0010】
以下、上記の特徴を有する本発明の硬化性組成物の各成分について、説明する。
【0011】
[(A)多官能脂環式エポキシ化合物]
本発明においては、(A)多官能脂環式エポキシ化合物を硬化性組成物に含有させることによって、当該硬化性組成物から得られる硬化物の硬度を高めることができる。
【0012】
本発明において、(A)多官能脂環式エポキシ化合物は、分子中に、下記構造式:
【化1】
で表されるエチレンオキシド基、および/または、下記構造式:
【化2】
で表されるシクロヘキセンオキシド基を、合計2個以上有する化合物である。
【0013】
上記構造式で表されるエチレンオキシド基を有する化合物として、例えば、下記構造:
【化3】
(a1)
を有する化合物が挙げられる。
【0014】
また、上記構造式で表されるシクロヘキセンオキシド基を有する化合物として、例えば、下記構造:
【化4】
(a2)
【化5】
(a3)
【化6】
(a4)
【化7】
(a5)
【化8】
(a6)
【化9】
(a7)
【化10】
(a8)

【化11】
(a9)

または
【化12】
(a10)
(式中、Aは、炭素原子数1~8のアルキレン基を表し;n1およびn2はそれぞれ、1~30の整数を示す)
のいずれかを有する化合物が挙げられる。上記化合物の中でも、(a10)の構造を有するものが、低粘度であり且つガラス基板との密着性により優れるため、特に好ましい。
【0015】
(A)多官能脂環式エポキシ化合物としては、もちろん市販品も用いることが可能である。
例えば、リモネンジオキシド(LDO)(SYMRISE社製))、セロキサイド2021P、セロキサイド2081およびエポリードGT401(いずれも株式会社ダイセル製)、Syna Epoxy 06E、Syna Epoxy 21およびSyna Epoxy 28(いずれもSYNASIA社)、ならびに、上記(a10)の構造を有するTHI-DE(JXTGエネルギー株式会社製)が挙げられる。
【0016】
また、硬化膜の硬度をより高めるという観点から、式a1で表される化合物と、式a2~a10のうちいずれか1種の化合物とを、併用することも好ましい。
この場合、式a1で表される化合物と、式a2~a10のうちいずれか1種の化合物との質量比は、100:0~50:50であり、好ましくは、100:0~80:20である。
【0017】
かかる(A)多官能脂環式エポキシ化合物の全含有量としては、硬化物の硬度の観点から、硬化性組成物の全固形分に基づき、10~90質量%であり、好ましくは、30~60質量%である。
【0018】
[(B)オキセタン化合物]
(B)オキセタン化合物としては、単官能のものおよび多官能のものが使用され得る。
単官能のオキセタン化合物としては、例えば、3-メチルオキセタン、3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン等が挙げられる。
【0019】
また、多官能のオキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマーまたは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、またはシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0020】
(B)オキセタン化合物としては、例えば、OXT-101およびOXT-221(いずれも、東亞合成社製)または次式:
【化13】
で表されるTR-TCM-207(TRONLY株式会社製)などの市販品を用いることももちろん可能である。この中でも、TR-TCM-207は、低粘度であり且つガラス基板との密着性により優れるので特に好ましい。
【0021】
このうち、硬化物の光沢度をより良好に抑え得るという観点から、単官能のものよりも多官能のものが好ましい。
しかしながら、単官能のものと、多官能のものとを併用することももちろん可能である。
【0022】
かかる(B)オキセタン化合物の含有量としては、硬化物の硬度および光沢度の観点から、硬化性組成物の全固形分に基づき、5~70質量%であり、好ましくは、10~50質量%である。
【0023】
[(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物]
本発明の硬化性組成物においては、硬化物の硬度および基材との密着性の観点から、(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物が含有される。
【0024】
そのような(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物は、シロキサン結合:
-Si-O-Si-
による環状構造を有しており、四量体、五量体またはそれ以上の多量体を包含していてもよい。そして、4個以上のエポキシ基が、そのような環状シロキサン構造のそれぞれのSi原子から延びる鎖上に結合された構造をとっている。
【0025】
それらの例として、例えば、下記の式(1)、(2)および(3)で表される構造のもの(各々、四量体、五量体および六量体に相当)を挙げることができる。
【化14】
(式中、R、R、RおよびRは、エポキシ基含有基であり、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。)
【0026】
【化15】
(式中、R、R、R、RおよびRのうち4つまたは5つ全てが、エポキシ基含有基であり、エポキシ基含有基ではないR、R、R、RまたはRが存在する場合は、それは炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基であり、R、R、R、RおよびR10は、それぞれ独立して、炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。)
【0027】
【化16】
(式中、R、R、R、R、RおよびR11のうち4つ、5つまたは6つ全てが、エポキシ基含有基であり、エポキシ基含有基ではないR、R、R、R、RまたはR11が存在する場合は、それは炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基であり、R、R、R、R、R10およびR12は、それぞれ独立して、炭化水素基、好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基、特に好ましくはメチル基またはエチル基である。)
【0028】
エポキシ含有基としては、グリシドキシメチル基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基などが挙げられる。
これらの具体例としては、例えば下記構造を有するものを挙げることができる。
【化17】
【0029】
エポキシ含有基としてより好ましいのは、脂環式エポキシ基である。そのような脂環式エポキシ基を有する(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物としては、例えば、下記構造:
【化18】
を有するものを挙げることができる。
【0030】
(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物として、KR-470(信越化学株式会社製)などの市販品を用いることももちろん可能である。
【0031】
また、(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物の2種以上を併用することも可能である。
【0032】
かかる(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物の含有量としては、硬化物の硬度および光沢度の観点から、硬化性組成物の全固形分に基づき、1~30質量%であり、好ましくは、3.0~15質量%である。
【0033】
[(D)光カチオン重合開始剤]
光カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、ブロモニウム塩、クロロニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、ピリジニウム塩等のオニウム塩;トリス(トリハロメチル)-s-トリアジンおよびその誘導体等のハロゲン化化合物;スルホン酸の2-ニトロベンジルエステル;イミノスルホナート;1-オキソ-2-ジアゾナフトキノン-4-スルホナート誘導体;N-ヒドロキシイミド=スルホナート;トリ(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン誘導体;ビススルホニルジアゾメタン類;スルホニルカルボニルアルカン類;スルホニルカルボニルジアゾメタン類;ジスルホン化合物等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
(D)光カチオン重合開始剤の市販品としては、例えば、CPI-100P、CPI-200K、CPI-101A(以上、サンアプロ(株)製)、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI-6976(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)、アデカオプトマーSP-150、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーSP-172(以上、旭電化工業(株)製)、CI-5102、CI-2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI-60L、サンエイドSI-80L、サンエイドSI-100L、サンエイドSI-110L、サンエイドSI-180L、サンエイドSI-110、サンエイドSI-145、サンエイドSI-150、サンエイドSI-160、サンエイドSI-180(以上、三新化学工業(株)製)、エサキュア1064、エサキュア1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット432、オムニキャット440、オムニキャット445、オムニキャット550、オムニキャット650、オムニキャットBL-550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア250(BASF(株)製)、ロードシル フォトイニシエーター2074(RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローディア・ジャパン(株)製)、WPI-113、WPI-116、WPI-169、WPI-170(和光純薬工業(株)製)等が挙げられる。
【0035】
これらの中では、サンアプロ社製CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S、あるいは芳香族ヨードニウム塩であるBASF社製イルガキュア250、和光純薬工業社製WPI-113、WPI-116、WPI-169、WPI-170が好ましい。
【0036】
(D)光カチオン重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に基づき、3.5~13質量%であり、好ましくは、3.8~6質量%である。
また、(D)光カチオン重合開始剤の含有量は、硬化性組成物中の(A)多官能脂環式エポキシ化合物、(B)オキセタン化合物及び(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物の全固形分に基づいた場合、4.1~12質量%が好ましく、より好ましくは、4.3~7.5質量%である。
【0037】
[(E)光カチオン増感剤]
本発明の硬化性組成物においては、光感度をより高めるために、(E)光カチオン増感剤をさらに含有させることができる。
当該(E)光カチオン増感剤は、波長350nm~450nmの光によって励起状態となる化合物であることが好ましい。例として、ピレン、ペリレン、トリフェニレン、アントラセン等の多核芳香族類;フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル等のキサンテン類;キサントン、チオキサントン、ジメチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のキサントン類;チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン等のシアニン類;メロシアニン、カルボメロシアニン等のメロシアニン類;ローダシアニン類;オキソノール類;チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー等のチアジン類;アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン等のアクリジン類;アクリドン、10-ブチル-2-クロロアクリドン等のアクリドン類;アントラキノン類;、スクアリウム類;スチリル類;ベーススチリル類;7-ジエチルアミノ4-メチルクマリン等のクマリン類が挙げられる。これらの中で、アントラセン化合物が好ましく、さらにその中でも、アルコキシアントラセン、特に、下記構造:
【化19】
又は
【化20】
を有するものがより好ましい。
これら(E)光カチオン増感剤は、それらの2種以上を組み合わせて用いてももちろん構わない。
【0038】
(E)光カチオン増感剤として市販品を用いることも可能である。そのような例としては、UVS-1101(ジエキシアントラセン;川崎化成工業株式会社製)、UVS-1221(ジプロポキシアントラセン;川崎化成工業株式会社製)、UVS-1331(ジブトキシアントラセン;川崎化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0039】
(E)光カチオン増感剤の含有量は、(D)光カチオン重合開始剤1質量部に対し0.1~2.0質量部であり、好ましくは、0.2~1.0質量部である。
また、(E)光カチオン増感剤の含有量は、硬化性組成物中の(A)多官能脂環式エポキシ化合物、(B)オキセタン化合物及び(C)4個以上のエポキシ基を有する環状シロキサン化合物の全固形分に基づいた場合、0を超え~6質量%以下が好ましく、より好ましくは1.0を超え~3質量%以下である。
【0040】
[着色剤]
本発明の硬化性組成物は、LED製品のための所謂ブラックマトリックスの材料として使用することもできる。
この場合、ブラックマトリックスとしての特性の観点から、着色剤が含有される。典型的には、カーボンブラックなどの黒色系の着色剤が用いられるが、黒色系の着色剤の代わりにその他の着色剤が含有されていてもよいし、カーボンブラックに加えてさらに含有されてもよい。
【0041】
黒色系の着色剤としては、例えば、カーボンブラックの他、四三酸化鉄(Fe)、黒酸化チタン、銅マンガンブラック、銅クロムブラックおよびコバルトブラック等の無機顔料、並びにシアニンブラックおよびアニリンブラック等の有機顔料が挙げられる。
【0042】
また、その他の着色剤としては、公知慣用の赤、青、緑、黄色の顔料または染料が挙げられる。
【0043】
本発明の硬化性組成物における着色剤の含有量は、硬化性組成物の全固形分に基づき、概ね3.0~25.0質量%であり、好ましくは、4.0~15.0である。
【0044】
[その他の成分]
さらに、本発明の硬化性組成物においては、その特性を損なわない範囲において、溶剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、レベリング剤、消泡剤および抗菌剤等のその他の成分がさらに含有されていてもよい。
【0045】
[硬化物およびその製造方法]
本発明の硬化性組成物は、インクジェット工法によって基板の目的箇所に適用され、そして硬化させることによって硬化物を形成する。
硬化は、適用した組成物に対する活性エネルギー線の照射によって行われる。
活性エネルギー線の照射光源としては、LED、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプなどが適当である。その他、電子線、α線、β線、γ線、X線、中性子線なども利用可能である。なお、照射光源は1つまたは2つ以上で、2つ以上の場合は異なる波長の光源を組み合わせて使用することももちろん可能である。
【0046】
以下、実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、他に特に但書が無い限り、示される「部」および「%」は質量に基づくものとする。
【実施例
【0047】
下記表1に記載の配合量に従って、各材料をそれぞれ配合し、攪拌機にて予備混合して、実施例1~16および比較例1~3の硬化性組成物を調製した。なお、表中の配合量の数値は、特に断りがない限り、固形分の質量部を示す。
【0048】
【表1】
※1:セロキサイド2021P(株式会社ダイセル製)
※2:LDO(SYMRISE社製)
※3:THI-DE(JXTGエネルギー株式会社製)
※4:OXT-101(東亞合成社製)
※5:OXT-221(東亞合成社製)
※6:TR-TCM-207(TRONLY株式会社製)
※7:KBM-403(信越化学株式会社製)
※8:BYK-315N(ビッケミー・ジャパン社製)
※9:カーボンブラックPigment black7
※10:KR-470(信越化学株式会社製)
※11:X-40-2678(信越化学株式会社製)
※12:CPI-100P(固形分50%)(サンアプロ株式会社製)
※13:UVS-1331(川崎化成工業株式会社製)
※14:UVS-1101(川崎化成工業株式会社製)
【0049】
こうして得られた実施例1~16および比較例1~3の硬化性組成物から硬化物(硬化塗膜)を得、下記のとおり、当該硬化物について、光沢度、OD値、鉛筆硬度を測定した。また、硬化前のそれぞれの硬化性組成物の50℃における粘度についても測定を行った。
【0050】
[試験基板の作製]
下記条件にて、インクジェットプリンタを用いて、実施例1~16および比較例1~3の硬化性組成物を基材に描画し、次いでUV硬化させて、試験基板をそれぞれ作成した。なお、基材として、ガラス基板を使用した。
・インクジェットプリンタによる描画条件
膜厚:10μm
装置:ピエゾ方式インクジェットプリンタ(富士フィルム社製 マテリアルプリンタDMP-2831を使用(ヘッド温度50℃))
・UV硬化条件
LED-UVランプ(Phoseon TECHNOLOGY社製 FireEdge FE400)
露光量:5000mJ/cm、1000mJ/cm、2000mJ/cm、5000mJ/cm、10000mJ/cm
波長:395nm
【0051】
[UV硬化後の指触乾燥性]
得られた硬化塗膜の指触乾燥性を評価した。
○:指で触っても痕がつかない
×:指で触ってべた付きあり
空欄:硬化せず
結果を下記表2に示す。
【0052】
[50℃における粘度]
実施例1~16および比較例1~3の硬化性組成物の、インキ温度50℃、100rpmにおける粘度をコーンプレート型粘度計(東機産業社製TVE-33H)にて測定した。
【0053】
[鉛筆硬度]
得られた硬化塗膜の表面における鉛筆硬度について、をJIS K 5600-5-4に準拠して測定を行った。H以上を合格とする。
結果を下記表2に示す。
【0054】
[クロスカット]
JIS K 5600-5-6に準拠し、得られた硬化塗膜をカットして縦横それぞれ幅1mmの碁盤目を25個(5×5)作製し、碁盤目の状態を調べた。評価基準は以下のとおりである。
分類0:カットの縁が完全に滑らかで,どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれが生じている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に5%を上回ることはない。
分類2:塗膜がカットの縁に沿って,および/または交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って,部分的または全面的に大きなはがれを生じており,および/または目のいろいろな部分が,部分的または全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って,部分的または全面的に大きなはがれを生じており,および/または数か所の目が部分的または全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは,明確に35%を超えるが65%を上回ることはない。
分類5:分類4以上の大きなはがれが生じている。
【0055】
【表2】