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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】建築物施工方法、建築物施工システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20240305BHJP
   G06Q 10/087 20230101ALI20240305BHJP
【FI】
G06Q50/08
G06Q10/087
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019228886
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021096733
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】若林 美樹
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 博之
【審査官】藤原 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-210800(JP,A)
【文献】特開2019-099361(JP,A)
【文献】特開2011-079661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを利用して建築物の施工を管理する建築物施工方法であって、
前記コンピュータが、
前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定段階と、
前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理段階と、
を少なくとも行い、
複数の前記部材が、前記識別情報に基づいて連結部材として連結され、該連結部材として前記建築物又は前記倉庫に搬入される、建築物施工方法。
【請求項2】
前記建築物が水処理プラントである、
請求項1に記載の建築物施工方法。
【請求項3】
前記部材に関する情報には、前記部材の管理環境に関する情報が含まれる、
請求項1又は2に記載の建築物施工方法。
【請求項4】
前記部材に関する情報には、前記部材の出荷形態に関する情報が含まれる、
請求項1~3のいずれか一項に記載の建築物施工方法。
【請求項5】
前記部材に関する情報には、前記建築物への搬入タイミングに関する情報が含まれる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の建築物施工方法。
【請求項6】
前記部材に関する情報には、搬入車両に関する情報が含まれる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の建築物施工方法。
【請求項7】
前記識別情報が含まれているコードが、前記部材又は前記部材が梱包された容器に付されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載の建築物施工方法。
【請求項8】
前記コードが、バーコード又は二次元バーコードである、
請求項7に記載の建築物施工方法。
【請求項9】
コンピュータを利用して建築物の施工を管理する建築物施工システムであって、
前記コンピュータが、
前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定部と、
前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理部と、
を少なくとも備えており、
複数の前記部材が、前記識別情報に基づいて連結部材として連結され、該連結部材として前記建築物又は前記倉庫に搬入される、建築物施工システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の施工方法及び建築物の施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場では、多種多様な部材や設備等が搬入され、設置や組み立て等が行われる。
【0003】
建築現場での建築スケジュールに従って、適時適量の部材等が搬入されなければならない。部材等の仮置きスペースや作業者の作業スペース等には制限があるため、例えば、不適切なタイミングで部材等が搬入されると、その部材等が建築作業の障害になるおそれがある。
【0004】
部材等が搬入されるタイミングを制御するため、建築現場の近傍に倉庫が設置されることがある。工場等で製造された部材等は、この倉庫に保管され、適切なタイミングで建築現場に搬入される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、多種多様な部材等を保管スペースが限られた倉庫で管理することには問題がある。
【0006】
そこで本発明は、複数の倉庫を利用して部材を適切に管理しつつ、部材の搬入タイミングを制御する高効率な建築物施工方法及び建築物施工システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンピュータを利用して建築物の施工を管理する建築物施工方法であって、前記コンピュータが、前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定段階と、前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理段階と、を少なくとも行う、建築物施工方法を提供する。
前記建築物が水処理プラントでありうる。
前記部材に関する情報には、前記部材の管理環境に関する情報が含まれうる。
前記部材に関する情報には、前記部材の出荷形態に関する情報が含まれうる。
前記部材に関する情報には、前記建築物への搬入タイミングに関する情報が含まれうる。
前記部材に関する情報には、搬入車両に関する情報が含まれうる。
前記識別情報が含まれているコードが、前記部材又は前記部材が梱包された容器に付されてうる。
前記コードが、バーコード又は二次元バーコードでありうる。
さらに、本発明は、コンピュータを利用して建築物の施工を管理する建築物施工システムであって、前記コンピュータが、前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定部と、前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理部と、を少なくとも備えている、建築物施工システムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、少なくとも1か所以上の倉庫を利用して部材を適切に管理しつつ、部材の搬入タイミングを制御する高効率な建築物施工方法及び建築物施工システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る建築物施工方法の一例のフローチャートである。
図2】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図3】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図4】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図5】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図6】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図7】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図8】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図9】本発明に係るコンピュータによる処理の一例のフローチャートである。
図10】本発明に係るデータベースの一実施形態である。
図11】本発明に係るコードの一実施形態である。
図12】本発明に係るコードの読み取り結果の一例を示す図である。
図13】本発明に係るコードの読み取り結果の一例を示す図である。
図14】本発明に係るコンピュータによる処理の一例のフローチャートである。
図15】本発明に係るコンピュータの一実施形態を示すハードウェア構成図である。
図16】本発明に係る建築物施工システムの一実施形態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、添付した図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態に限定されることはない。なお、本発明の説明は以下の順序で行う。
1.本発明に係る第1の実施形態(建築物施工方法)
(1)本発明の概要
(2)判定段階
(3)管理段階
2.本発明に係る第2の実施形態(建築物施工システム)
【0011】
<1.本発明に係る第1の実施形態(建築物施工方法)>
<(1)本発明の概要>
本発明に係る建築物施工方法は、コンピュータを利用して建築物の施工を管理する方法である。
【0012】
この建築物の一例として、住宅、事務所、公共の建物などがある。本発明に係る建築物施工方法は、これらの建築物の施工に利用できる。
【0013】
さらには、本発明に係る建築物施工方法は、水処理プラントの施工に利用できる。水処理プラントとは、水を使用目的に合わせた水質にするために各種の処理を行う設備である。一例を挙げると、一般産業向けに用水を製造する水処理プラントや、液晶パネルや半導体等を製造する産業等向けに超純水を製造する水処理プラント等がある。そのほか、水を周辺環境に影響を与えない水質に処理して排出する水処理プラントや、使用済みの水を再利用する水処理プラント等がある。
【0014】
建築物の施工には、多くの部材が使用される。とりわけ、水処理プラントの施工には、膨大な数の部材が使用され、その部材の種類が多岐にわたる。その一方で、施工には短い建築期間が求められる。そのため、高効率な施工方法が必要となる。
【0015】
また、超純水を製造する水処理プラントでは、わずかなごみのひとつでさえ、半導体や液晶パネルなどの性能に致命的な影響を及ぼす。そのため、超純水を製造する水処理プラントの施工においては、極めて高い品質が求められる。
【0016】
本発明に係る建築物施工方法は、これらの問題を解決できる。本発明に係る建築物施工方法について図1を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る建築物施工方法の一例のフローチャートである。図1に示されるとおり、本発明に係る建築物施工方法は、前記コンピュータが、前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定段階S01と、前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理段階S02と、を少なくとも行う。
【0017】
<(2)判定段階>
まず、判定段階S01について説明する。判定段階S01では、コンピュータが、建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報を利用する。
【0018】
この識別情報について図2を参照しつつ説明する。図2は識別情報を保有するデータベースの一実施形態である。図2に示されるとおり、建築物の部材を識別するための識別情報が付与されている。この識別情報は、例えば建築物の設計段階において、コンピュータが自動的に付与しうる。例えば、部材の名称と所定の文字列とが対応づけられており、この所定の文字列に枝番号などを付与することにより、識別情報が作成されうる。この識別情報は、例えば英数字、記号、マークなどが組み合わされうる。
【0019】
なお、この識別情報が含まれている設計情報は、情報通信ネットワークを介して、ユーザ間で共有されうる。これにより、例えば設計段階におけるユーザ間のメールのやり取りによって生じる、ユーザ間の認識の齟齬が排除できる。あるいは、例えば部材の発注段階におけるメーカーへの発注ミスなどが排除できる。
【0020】
コンピュータは、このデータベースを備えている。このデータベースには、識別情報に加えて、例えば部材の機能、部材が使用される場所、部材のメーカー名、型式名、素材、製品仕様などが含まれうる。
【0021】
この識別情報と部材とが対応づけられていることにより、ユーザは多種多様な部材を一意に識別できる。
【0022】
部材は、複数の部材が連結された連結部材の一部として構成されうる。連結部材として建築物又は倉庫に搬入されることにより、搬入後に連結する必要がなくなるため、施工現場における作業効率化や施工期間の短縮などが可能となる。
【0023】
連結部材には複数の形態がありうる。例えば機能ごとに連結部材が構成されうる。例えば、ろ過機能、イオン交換機能、超純水製造機能などの機能ごとに連結部材が構成されうる。
【0024】
あるいは、例えば搬送可能な大きさで連結部材が構成されてもよい。これにより、建築現場における連結作業の負担が少しでも軽減されうる。
【0025】
なお、連結部材どうしが連結されていてもよい。
【0026】
識別情報には、この連結部材における部材どうしの連結位置に関する情報が含まれうる。例えば、識別情報が「ABC01-2」であるとき、末尾の「2」が連結位置を表していてもよい。例えば識別情報が印刷されたラベルなどが部材に付されることにより、ユーザは容易に部材どうしを連結できる。
【0027】
例えばデータベースにおいて、この識別情報と、部材に関する情報とが対応づけられている。部材に関する情報について図3を参照しつつ説明する。図3は部材に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図3に示されるとおり、部材に関する情報には、例えば部材の管理環境に関する情報が含まれうる。管理環境とは、部材を管理する環境である。
【0028】
部材の管理環境に関する情報には、例えば、部材が雨や風などに耐えることが可能か否かを示す情報が含まれうる。この情報は、限界値として数値で表されてもよい。例えば、雨や風などに耐えることが不可能な部材は、屋根や壁などを備える屋根付き倉庫に搬入されうる。雨や風などに耐えることが可能な部材は、屋根や壁などを備えていない野積み倉庫に搬入されうる。
【0029】
あるいは、部材の管理環境に関する情報には、例えば、管理温度に関する情報が含まれうる。例えば管理温度の条件が厳密に定められているRO膜などは、空調設備を備える倉庫に搬入されうる。
【0030】
あるいは、部材の管理環境に関する情報には、例えば、管理湿度に関する情報が含まれうる。これにより、例えば部材にさびが生じることを防ぐことができる。
【0031】
部材に関する情報には、部材の出荷形態に関する情報が含まれうる。出荷形態とは、例えば工場などから出荷される際の部材の形態である。部材の出荷形態に関する情報について図4を参照しつつ説明する。図4は部材に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図4に示されるとおり、部材に関する情報には、部材の出荷形態に関する情報が含まれうる。
【0032】
部材の出荷形態に関する情報には、例えば、部材が梱包されているか否かを示す情報が含まれうる。例えば巨大なタンクなどは梱包されずに運搬されうるが、小さなバルブなどについては、複数のバルブが一つの容器に梱包されて運搬されうる。
【0033】
あるいは、部材の出荷形態に関する情報には、例えば、部材又は部材を梱包する容器の大きさに関する情報が含まれうる。大きな部材は、空きスペースが広い倉庫に搬入されうる。
【0034】
あるいは、部材の出荷形態に関する情報には、校正の必要有無を示す情報が含まれうる。校正とは、計器又は測定系の示す値、若しくは実量器又は標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業をいう。例えば精密機器や工業計器などは、校正が必要であることがある。例えば校正の必要有無を示す情報に基づいて、校正が可能な倉庫に部材が搬入されうる。
【0035】
あるいは、部材の出荷形態に関する情報には、倉庫内における場所情報が含まれうる。例えばこの場所情報に基づいて、倉庫内における部材の仮置き場所が決定されうる。
【0036】
あるいは、部材の出荷形態に関する情報には、部材の積み重ねが可能であるか否かを示す情報が含まれうる。例えば積み重ねが可能な部材は、倉庫内において積み重ねられうる。
【0037】
あるいは、部材の出荷形態に関する情報には、部材の壊れやすさに関する情報が含まれうる。例えば壊れやすい部材は、耐震設備が整っている倉庫に搬入されうる。さらには、運搬時や積み替え時などに破損するおそれがある部材には、ラベルなどでユーザに注意を促すことができる。
【0038】
あるいは、部材の出荷形態に関する情報には、部材の価値に関する情報が含まれうる。例えば高価な部材は、耐震設備が整っている倉庫に搬入されうる。
【0039】
これにより、それぞれの部材にとって最適な環境を有する倉庫で部材が保管されることになる。そのため、極めて高い品質の施工が実現できる。
【0040】
部材に関する情報には、建築物への部材の搬入タイミングに関する情報が含まれうる。搬入タイミングとは、部材が建築物に搬入される年月日又は時間をいう。搬入タイミングは、建築スケジュールと連携されうる。
【0041】
搬入タイミングに関する情報について図5を参照しつつ説明する。図5は部材に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図5に示されるとおり、部材に関する情報には、搬入タイミングに関する情報が含まれうる。
【0042】
搬入タイミングに関する情報には、部材が搬入される年月日又は時間が含まれうる。搬入タイミングが建築スケジュールと連携されていることにより、建築スケジュールの適切なタイミングで部材が建築物に搬入されうる。
【0043】
あるいは、搬入タイミングに関する情報には、建築物における搬入先の場所情報が含まれうる。この場所情報には、例えば棟や階を指定する情報が含まれうる。
【0044】
搬入タイミングに関する情報に、年月日、時間、又は位置情報が含まれることにより、部材が適切なタイミングで適切な場所に搬入されうる。
【0045】
データベースは、部材に関する情報に加えて、部材を建築物又は倉庫に搬入する搬入車両に関する情報を含みうる。搬入車両に関する情報について図6を参照しつつ説明する。図6は搬入車両に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図6に示されるとおり、データベースは、搬入車両に関する情報を含みうる。
【0046】
搬入車両に関する情報には、例えば車両の識別情報、車両の種別、車両の最大積載量、車両の利用可能期間、車両の現在位置の他に、部材のみを積載し搬入先まで届けることが可能な仕立て便、または部材を別の荷物と混載し搬入先以外の場所も循環して配送するルート便(混載便)を指定する情報などが含まれうる。
【0047】
さらに、データベースは、運転手に関する情報などを含みうる。運転手に関する情報について図7を参照しつつ説明する。図7は運転手に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図7に示されるとおり、データベースは、運転手に関する情報を含みうる。
【0048】
運転手に関する情報には、例えば運転手の識別情報、運転手が有する資格、運転手の勤務可能期間などが含まれうる。
【0049】
搬入車両及び運転手に関する情報を保有することにより、コンピュータは、倉庫から建築物への搬入車両の制御が可能となる。これにより、部材が適切なタイミングで適切な場所に搬入されうる。
【0050】
従来、部材を建築現場に搬入するための人員や車両が全国で不足している。本発明では、従来の生産工場から建築現場への搬入車両を、倉庫から建築物への搬入車両に切り替える。これにより、以前より少ない台数の車両で建築作業を進めることができる。
【0051】
また、従来、時期によってメーカーでの完成のタイミングと生産能力に限界が生じ、ユーザが希望する時期に部材が搬入できないことがある。本発明では、部材を倉庫に仮置きすることにより、部材が適切なタイミングで適切な場所に搬入されうる。
【0052】
さらに、従来、生産工場から建築現場へ直接に搬入していたため、作業者による部材の捜索や、部材が見つからないときの生産工場への問い合わせなどに時間を要していた。また、部材が紛失するリスクも生じていた。本発明では、部材の識別情報に基づいて部材を管理することにより、この問題を解決できる。
【0053】
建築物の施工において、部材が適切なタイミングで適切な場所に搬入されることは、極めて重要である。建築物の施工では、搬入された部材の仮置きスペース、作業者の作業スペース、建築スケジュールなどが、相互に制約を受ける。したがって、部材の搬入計画が綿密に行われていなければ、建築スケジュールの遅延が生じるおそれがある。
【0054】
例えば、大型タンクなどは水平方向からの搬入が難しく、クレーンなどを用いて上から搬入することがある。このとき、クレーンの移動スペースや、上からの搬入スペースなどが確保されている必要がある。屋根の設置時期を考慮する必要がある。
【0055】
例えば、部材の搬入口が少なく、部材を仮置きスペースが小さい場合は、建築物の奥側に設置する部材から順に搬入する必要がある。
【0056】
本発明に係る建築物施工方法は、例えば部材が建築物に搬入されるタイミングをコンピュータが判定するため、この問題を解決できる。
【0057】
さらに、データベースは、倉庫に関する情報を含みうる。倉庫に関する情報について図8を参照しつつ説明する。図8は倉庫に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図8に示されるとおり、倉庫に関する情報には、例えば倉庫の識別情報、倉庫の種別、倉庫の大きさ、空調設備の設定可能温度又は湿度、建築物までの距離などの情報が含まれうる。
【0058】
コンピュータの処理について説明する。コンピュータは、部材に関する情報に基づいて、建築物及び建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、部材が搬入される建築物又は倉庫を判定する。このことについて図9を参照しつつ説明する。図9は、コンピュータによる処理の一例のフローチャートである。図9に示されるとおり、コンピュータは、部材に関する情報と、倉庫に関する情報とを照合する(S03)。部材に関する情報と倉庫に関する情報が合致するとき(S04:Yes)、コンピュータは、部材が搬入される建築物又は倉庫を判定する(S05)。
【0059】
コンピュータは、さらに、部材に関する情報と、搬入車両に関する情報と、運転手に関する情報と、を照合することにより、部材の搬入タイミングを判定しうる。
【0060】
例えば、搬入車両の利用可能期間と、運転手の勤務可能期間と、に基づいて、コンピュータは、倉庫から建築物への搬入車両を特定する。そして、特定された搬入車両に関する情報と、部材に関する情報と、に基づいて、コンピュータは、建築物への部材の搬入タイミングを判定しうる。
【0061】
これにより、建築スケジュールや部材の種別などに応じて、適切な建築物又は倉庫に適切なタイミングで部材が搬入される。
【0062】
<(3)管理段階>
続いて、管理段階S02について説明する。管理段階S02では、識別情報に基づいて、建築物又は前記倉庫に搬入されている部材を管理する。
【0063】
管理段階S02について図10を参照しつつ説明する。図10は部材に関する情報を保有するデータベースの一実施形態である。図10に示されるとおり、部材に関する情報にはステータス情報が含まれうる。ステータス情報には、例えば部材が仮置きされている場所を示す仮置き場所情報、部材が使用される年月日又は時間、部材が使用される場所などが含まれうる。
【0064】
膨大な数の部材を適切に管理することにより、部材が適切なタイミングで適切に使用されうる。その結果、建築スケジュールの遅延を防ぐことができる。
【0065】
部材を識別する識別情報は、例えばバーコードや二次元バーコードなどのコードに変換されて、部材又は部材が梱包された容器に付されうる。
【0066】
このコードの一例について図11を参照しつつ説明する。図11は部材などに付されるコードの一実施形態を示す図である。図11Aに示されるとおり、コードの例としてバーコードで表現されている。
【0067】
あるいは、コードは図11Bに示されるように例えば二次元バーコードでもよい。
【0068】
なお、コードはバーコード又は二次元バーコードに限定されない。また、識別情報は例えば非接触ICチップなどに保有されていてもよい。
【0069】
このコードには、識別情報が含まれている。コードが、前記部材又は前記部材が梱包された容器などに付されている。コード読み取り装置を用いてこのコードを読み取ることにより、この識別情報が参照されうる。さらには、この識別情報は図2に示されるデータベースにおいて、型式名などと対応づけられている。そのため、このコードを読み取ることにより、型式名などが参照されうる。
【0070】
このことについて図12及び図13を参照しつつ説明する。図12及び図13は、コードの読み取り結果の一例を示す図である。図12の下部の領域6には、コードが付されたラベルの画像が表示されている。この画像は、コンピュータが備えるカメラなどの撮像部が撮像したものである。
【0071】
図12の上部の領域5には、コードの読み取り結果が表示されている。この領域5には、一例として、部材の識別情報、部材の名称などが表示されている。
【0072】
この領域5に表示されている識別情報などを選択することにより、図13の画面が表示されうる。この画面には、部材に関する詳細な情報が表示されうる。
【0073】
コードの読み取りについてのコンピュータの処理について図14を参照しつつ説明する。図14は、コンピュータによる処理の一例のフローチャートである。図14に示されるとおり、コンピュータは、ラベルに付されたコードを読み取る(S06)。次に、コンピュータは、読み取ったコードから得た情報を変換等して、識別情報などを取得する(S07)。次に、コンピュータは、この識別情報などを検索キーにしてデータベースを検索し、部材に関する情報を取得する(S08)。そして、コンピュータは、この部材に関する情報を表示する(S09)。
【0074】
これにより、例えば施工現場における部材の取り付け誤りなどが回避できる。例えば、一つの水処理プラントの施工において、数万点のバルブが使用されることがある。この数万点のバルブを目視で見分けることは非常に難しい。本技術に係る建築物施工方法は、このバルブに付されたコードを読み取ることで、バルブの取り付け位置などが把握できる。
【0075】
また、設計段階において自動的に付与された識別情報が、施工段階において利用されるということは、設計計画と施工計画が連携されるということである。これにより、施工段階において建築現場で判断することが少なくなるため、効率が向上し、施工段階の期間が短縮されうる。
【0076】
なお、部材に関する情報には、建築物の施工完了日が含まれていてもよい。これにより、ユーザは建築物のメンテナンス作業の時期が予測でき、メンテナンス計画立案の情報となる。
【0077】
本発明に係る建築物施工方法は、プログラム及びハードウェアを利用することによって実現できる。本発明に係る建築物施工方法が利用するコンピュータ1のハードウェア構成について図15を参照しつつ説明する。図15は、コンピュータ1の一実施形態を示すハードウェア構成図である。図15に示されるとおり、コンピュータ1は、構成要素として、CPU101、ROM102、RAM103、記憶部104、表示部105、通信I/F(インターフェース)106、及び取得部107を備えうる。それぞれの構成要素は、例えばデータの伝送路としてのバスで接続されている。
【0078】
CPU101は、例えばマイクロコンピュータにより実現され、コンピュータ1のそれぞれの構成要素を制御する。CPU101は、例えば、部材が搬入される建築物又は倉庫を判定しうる。この判定は、例えばプログラムにより実現されうる。
【0079】
ROM102は、CPU101が使用するプログラムや演算パラメータ等の制御用データ等を記憶する。
【0080】
RAM103は、例えば、CPU101により実行されるプログラム等を一時的に記憶する。
【0081】
記憶部104は、様々なデータを記憶する。記憶部104は、例えば、部材に関する情報などを保有するデータベースとして機能する。記憶部104は、例えばストレージデバイス等を利用することにより実現されうる。
【0082】
表示部105は、ユーザに対して情報を表示する。表示部105は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)またはOLED(Organic Light-Emitting Diode)等により実現される。表示部105には、CPU101の制御により、例えば、部材のステータス情報などが表示されうる。
【0083】
通信I/F106は、例えばWi-Fi、Bluetooth(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)等の通信技術を利用して、情報通信ネットワークを介して通信する機能を有する。
【0084】
取得部107は、前記コードの読み取り機能を有する。取得部107は、例えばカメラ等により実現されうる。
【0085】
図示を省略するが、コンピュータ1は、位置情報取得部を備えていてもよい。位置情報取得部は、外部からの取得信号に基づいてコンピュータ1の現在位置を検知する機能を有する。具体的には、位置情報取得部は、例えばGPS(Global Positioning System)測位部により実現され、GPS衛星からの電波を受信して、位置情報取得部が存在している位置を検知し、検知した位置情報をCPU101に出力する。あるいは、位置情報取得部は、GPSの他、例えばWi-Fi(登録商標)、携帯電話・PHS・スマートフォン等との送受信、または近距離通信等により位置を検知するものであってもよい。
【0086】
コンピュータ1は、例えばスマートフォン端末、タブレット端末、携帯電話端末、PDA(Personal Digital Assistant)、PC(Personal Computer)、サーバ、またはウェアラブル端末(HMD:Head Mounted Display、メガネ型HMD、時計型端末、バンド型端末等)でありうる。
【0087】
本発明に係る建築物施工方法を実現するプログラムは、コンピュータ1のほかのコンピュータ装置又はコンピュータシステムに格納されてもよい。この場合、コンピュータ1は、このプログラムが有する機能を提供するクラウドサービスを利用することができる。このクラウドサービスとして、例えばSaaS(Software as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)等が挙げられる。
【0088】
さらにこのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、Programmable ROM(PROM)、Erasable PROM(EPROM)、フラッシュROM、Random Access Memory(RAM))を含む。また、上記プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、上記プログラムをコンピュータに供給できる。
【0089】
これ以外にも、本技術の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりできる。
【0090】
<2.本技術に係る第2の実施形態(建築物施工システム)>
本発明に係る建築物施工システムは、コンピュータを利用して建築物の施工を管理するシステムである。本発明に係る建築物施工システムについて図16を参照しつつ説明する。図16は、本発明に係る建築物施工システムの一実施形態を示す概念図である。図16に示されるとおり、本発明に係る建築物施工システム40は、コンピュータであるサーバ10とクライアント端末20とが情報通信ネットワーク30を介して接続されている。サーバ10が、判定部11と、管理部12と、を少なくとも備えている。
【0091】
判定部11は、建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた部材に関する情報に基づいて、建築物及び建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、部材が搬入される建築物又は倉庫を判定する。この判定の詳細な処理の内容は、第1の実施形態において説明したため、割愛する。
【0092】
管理部12は、識別情報に基づいて、建築物又は前記倉庫に搬入されている部材を管理する。この管理の詳細な処理の内容は、第1の実施形態において説明したため、割愛する。
【0093】
サーバ10は、一台でもよいし、複数台でもよい。同様に、クライアント端末20は、一台でもよいし、複数台でもよい。また、全てのサーバ10が情報通信ネットワークに接続されていなくてもよいし、全てのクライアント端末20がネットワークに接続されていなくてもよい。
【0094】
クライアント端末20は、サーバ10が有する一部又は全部の機能を備えることができる。例えば、クライアント端末20が判定部11を備えており、サーバ10が管理部12を備えていてもよい。あるいは、例えば、部材に付されたコードに関する情報をクライアント端末20が取得し、部材が搬入される建築物又は倉庫をサーバ10が判定してもよい。
【0095】
判定部11又は管理部12が有する機能は、建築物施工システム内におけるほかのコンピュータ装置又はコンピュータシステムに格納されてもよい。この場合、サーバ10又はクライアント端末20は、この機能を提供するクラウドサービスを利用することができる。このクラウドサービスとして、例えばSaaS(Software as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)、PaaS(Platform as a Service)等が挙げられる。
【0096】
情報通信ネットワーク30は、例えば、LAN(Local Area Network)又はWAN(Wide Area Network)等の有線ネットワーク、無線LAN(WLAN:Wireless Local Area Network)又は基地局を介した無線WAN(WWAN:Wireless Wide Area Network)等の無線ネットワーク、あるいはTCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)等の通信プロトコルを用いたインターネット等により実現できる。
【0097】
判定部11又は管理部12は、プログラム及びハードウェアを用いることで実現できる。サーバ10及びクライアント端末20のハードウェア構成は、図15に示されるハードウェア構成でありうる。そのため、サーバ10及びクライアント端末20のハードウェア構成の詳細な説明については割愛する。
【0098】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。なお、この建築物施工システムは、第1の実施形態において説明した技術を利用することができる。第1の実施形態において説明した技術については、再度の説明を割愛する。
【0099】
なお、本明細書中に記載した効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0100】
なお、本発明は、以下のような構成をとることもできる。
[1]
コンピュータを利用して建築物の施工を管理する建築物施工方法であって、
前記コンピュータが、
前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定段階と、
前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理段階と、
を少なくとも行う、建築物施工方法。
[2]
前記建築物が水処理プラントである、
[1]に記載の建築物施工方法。
[3]
前記部材に関する情報には、前記部材の管理環境に関する情報が含まれる、
[1]又は[2]に記載の建築物施工方法。
[4]
前記部材に関する情報には、前記部材の出荷形態に関する情報が含まれる、
[1]~[3]のいずれか一つに記載の建築物施工方法。
[5]
前記部材に関する情報には、前記建築物への搬入タイミングに関する情報が含まれる、
[1]~[4]のいずれか一つに記載の建築物施工方法。
[6]
前記部材に関する情報には、搬入車両に関する情報が含まれる、
[1]~[5]のいずれか一つに記載の建築物施工方法。
[7]
前記識別情報が含まれているコードが、前記部材又は前記部材が梱包された容器に付されている、
[1]~[6]のいずれか一つに記載の建築物施工方法。
[8]
前記コードが、バーコード又は二次元バーコードである、
[7]に記載の建築物施工方法。
[9]
コンピュータを利用して建築物の施工を管理する建築物施工システムであって、
前記コンピュータが、
前記建築物の部材に対して自動的に付与した識別情報と対応づけた前記部材に関する情報に基づいて、前記建築物及び前記建築物の近傍に設置されている少なくとも1か所以上の倉庫の中から、前記部材が搬入される前記建築物又は前記倉庫を判定する判定部と、
前記識別情報に基づいて、前記建築物又は前記倉庫に搬入されている前記部材を管理する管理部と、
を少なくとも備えている、建築物施工システム。
【符号の説明】
【0101】
S01 判定段階
S02 管理段階
10 サーバ
11 判定部
12 管理部
20 クライアント端末
30 情報通信ネットワーク
40 建築物施工システム
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 記憶部
105 表示部
106 通信I/F
107 取得部

図1
図2
図3
図4
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