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特許7447519画像処理装置、プログラム、及び画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像処理装置、プログラム、及び画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/20 20060101AFI20240305BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G06T1/20 A
B41J5/30 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020017861
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124945
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】松下 和史
【審査官】▲高▼橋 真之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-263475(JP,A)
【文献】特開2005-229139(JP,A)
【文献】山田 和雄,内藤 孝雄,リアルタイム画像処理システムの構築,電子情報通信学会技術研究報告,Vol.106,No.393,一般社団法人電子情報通信学会,2006年11月22日,pp.21-26
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/20
B41J 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色画像データを複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に処理を実行可能な画像処理装置であって、
前記画像領域に対して第1処理を実行する第1処理部と、
前記第1処理後の前記画像領域に対して第2処理を実行する第2処理部と、を備え、
前記第1処理部は、多色の前記画像領域の境目で、隣接する多色の前記画像領域の一部が重複するように、前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを格納部に格納し、
前記第2処理部は、前記格納部に格納された前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して、前記第2処理を実行した後、多色の前記画像領域の画像データを前記格納部に格納し、
前記格納部に格納された前記第2処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して出力し、
前記第1処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける全色の画素データを同時に用いる処理であり、
前記第2処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける色毎の画素データを別々に用いる処理である
画像処理装置。
【請求項2】
前記第2処理は、所定サイズの画像フィルタを用いる処理である
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2処理部は、前記画像領域のうちの所定領域で所定色の第1データを保持部に保持させ、その後、前記所定領域とは異なる領域で前記所定色と同一色の第2データを処理する際に、前記第1データを読み出す
請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記保持部を備える
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
多色画像データを複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に処理を実行可能な画像処理装置に処理を実行させるプログラムであって、
第1処理部により、前記画像領域に対して第1処理を実行し
第2処理部により、前記第1処理後の前記画像領域に対して第2処理を実行する処理を前記画像処理装置に実行させ、
前記第1処理部は、多色の前記画像領域の境目で、隣接する多色の前記画像領域の一部が重複するように、前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを格納部に格納し、
前記第2処理部は、前記格納部に格納された前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して、前記第2処理を実行した後、多色の前記画像領域の画像データを前記格納部に格納し、
前記格納部に格納された前記第2処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して出力する処理を前記画像処理装置に実行させ、
前記第1処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける全色の画素データを同時に用いる処理であり、
前記第2処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける色毎の画素データを別々に用いる処理である
プログラム。
【請求項6】
多色画像データを複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に処理を実行可能な画像処理装置による画像処理方法であって、前記画像処理装置が、
第1処理部により、前記画像領域に対して第1処理を実行
第2処理部により、前記第1処理後の前記画像領域に対して第2処理を実行
前記第1処理部は、多色の前記画像領域の境目で、隣接する多色の前記画像領域の一部が重複するように、前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを格納部に格納し、
前記第2処理部は、前記格納部に格納された前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して、前記第2処理を実行した後、多色の前記画像領域の画像データを前記格納部に格納し、
前記格納部に格納された前記第2処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して出力し、
前記第1処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける全色の画素データを同時に用いる処理であり、
前記第2処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける色毎の画素データを別々に用いる処理である
画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、プログラム、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
A0用紙等の大判の記録媒体に多色画像を形成可能な画像形成装置では、多色画像のデータサイズ大型化に伴う画像処理回路の規模や内蔵メモリ容量の増大を回避するために、多色画像データを複数の画像領域に分割して処理する技術が知られている。
【0003】
また、フレーム同期信号の有効期間中にライン同期信号を任意時間だけ供給することで、フレームバッファメモリに格納された画像データを複数の画像領域に分割して処理する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来技術では、多色画像データを複数の画像領域に分割しない場合と比較して画像品質が低下する場合がある。
【0005】
本発明は、多色画像データを複数の画像領域に分割して処理する場合の画像品質を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る画像処理装置は、多色画像データを複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に処理を実行可能な画像処理装置であって、前記画像領域に対して第1処理を実行する第1処理部と、前記第1処理後の前記画像領域に対して第2処理を実行する第2処理部と、を備え、前記第1処理部は、多色の前記画像領域の境目で、隣接する多色の前記画像領域の一部が重複するように、前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを格納部に格納し、前記第2処理部は、前記格納部に格納された前記第1処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して、前記第2処理を実行した後、多色の前記画像領域の画像データを前記格納部に格納し、前記格納部に格納された前記第2処理後の多色の前記画像領域の画像データを色毎に別々に読み出して出力し、前記第1処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける全色の画素データを同時に用いる処理であり、前記第2処理は、多色の前記画像領域の画像データにおける色毎の画素データを別々に用いる処理である
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、多色画像データを複数の画像領域に分割して処理する場合の画像品質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る画像処理装置の構成例のブロック図である。
図2】画像データの流れの一例のブロック図である。
図3】前段画像処理回路の入出力信号例のタイミングチャートである。
図4】DDR SDRAMの格納処理例の図である。
図5】画像フィルタの構成例を説明する図である。
図6】DDR SDRAMの格納処理例のタイミングチャートである。
図7】読み直し領域の制御例のタイミングチャートである。
図8】第2実施形態に係る画像処理装置の構成例のブロック図である。
図9】第2実施形態に係る画像処理装置の処理例のタイミングチャートである。
図10】第2実施形態に係る画像処理装置の他の構成例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。
【0010】
実施形態では、多色画像データを複数に分割した画像領域毎に第1処理を実行し、第1処理後の画像領域に対して第2処理を実行する。また第1処理では、画像領域の境目で、隣接する画像領域の一部が重複するように、第1処理後の画像領域の画像データを出力する。
【0011】
これにより、画像フィルタを用いた処理で画像フィルタが境目を跨ぐこと等に起因して生じる画像劣化を抑制し、多色画像データを複数の画像領域に分割して処理する場合の画像品質を確保する。
【0012】
以下では、A0用紙等の大判の記録媒体に多色画像を形成可能な画像形成装置で用いられる画像処理装置を一例として実施形態を説明する。
【0013】
ここで、実施形態の用語における「バンド」は、画像データを複数の画像領域に分割した場合の各画像領域を意味し、画像領域の一例である。また「副走査方向」は画像形成装置における記録媒体の搬送方向に沿う方向を意味し、「主走査方向」は「副走査方向」と直交する方向を意味する。
【0014】
[第1実施形態]
<画像処理装置100の構成>
まず、第1実施形態に係る画像処理装置100の構成について、図1を参照して説明する。図1は画像処理装置100の構成の一例を説明するブロック図である。
【0015】
図1に示すように、画像処理装置100は、前段画像処理回路101と、DMA(Direct Memory Access)コントローラ102と、後段画像処理回路103と、DMA(Direct Memory Access)コントローラ104と、CPU(Central Processing Unit) I/F(Interface)105と、DDR SDRAM(Double-Data-Rate Synchronous Dynamic Random Access Memory)106と、DMAコントローラ107と、出力I/F108とを備えている。これらは、システムバスBを介して電気的に接続されている。また画像処理装置100は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(field programmable gate array)等の集積回路で構成できる。
【0016】
これらのうち、前段画像処理回路101は、画像形成装置に備えられた画像メモリ等からシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色(4版)の多色画像データを入力し、4版の画素データを同時に用いる画像処理を実行する。この4版の画素データは、多色画像データにおける全色の画素データの一例である。なお、以下では、シアンをC、マゼンタをM、イエローをY、ブラックをKと適宜表記する。
【0017】
なお多色画像データはCMYKに限定されるものではなく、CMYKのうちの一部の色のみであってもよいし、CMYKに対して他の色を追加したり、一部又は全部の色を置き換えたりしてもよい。
【0018】
上記の前段画像処理回路101は第1処理部の一例である。また前段画像処理回路101が実行する4版の画素データを同時に用いる画像処理は、第1処理の一例である。
【0019】
ここで、前段画像処理回路101が実行する4版の画素データを同時に用いる画像処理の一例をより具体的に説明する。
【0020】
CMYKの4版の全色を用いる場合、画像形成装置は記録媒体に付与されるトナー又はインクを400%まで出力するように指示できる。しかし、実際に400%等の大量の画像データに対応する画像を記録媒体に形成しようとすると、画像形成部(画像エンジン)が対応しきれずに、トナーの場合はチリ等が発生し、インクの場合は滲み等が発生する場合がある。
【0021】
このようなチリや滲み等によって記録媒体に形成される画像で異常画像が発生する場合がある。前段画像処理回路101が実行する4版の画素データを同時に用いる画像処理として、このような異常画像を抑制するために、画像処理としての出力データ量を制限する処理等が挙げられる。
【0022】
また、DMAコントローラ102,104,107は、DDR SDRAMコントローラ106を介して、DDR SDRAM300に画像データを読み書きするためのインターフェースとなる電気回路である。このDDR SDRAM300は格納部の一例である。
【0023】
後段画像処理回路103は、4版の画素データを同時に用いない画像処理を実行する。4版の画素データを同時に用いない画像処理として、画像の端部を記録媒体に画像形成しないようにCMYKの各版の画像データの一部をマスクする処理や、K版のみで画像のエッジを強調する処理、5×5画素等の所定サイズの画像フィルタを用いる処理等が挙げられる。
【0024】
この後段画像処理回路103は第2処理部の一例である。また後段画像処理回路103が実行する4版の画素データを同時に用いない画像処理は、第2処理の一例である。
【0025】
CPU I/F105は、CPU200との間でデータや信号の送受信を行うためのインターフェースである。またCPU200は、画像処理装置100が搭載された画像形成装置の起動や制御を行うためのプロセッサである。
【0026】
出力 I/F108は、前段画像処理回路101及び後段画像処理回路103のそれぞれで画像処理が行われた後の画像データを、画像形成装置の画像形成部等に出力するインターフェースである。
【0027】
次に、図2は画像処理装置100における画像データの流れの一例を説明するためのブロック図である。
【0028】
図2における矢印110は、前段画像処理回路101に入力され、前段画像処理回路101で所定の画像処理が実行された後、DMAコントローラ102及びDDR SDRAMコントローラ106を介して、DDR SDRAM300に格納される多色画像データの流れを表している。
【0029】
矢印120は、DDR SDRAM300に格納された多色画像データが、4版の色毎に別々に読み出され、後段画像処理回路103で所定の画像処理が実行された後、DDR SDRAM300に再度格納される際の多色画像データの流れを表している。後段画像処理回路103とDDR SDRAM300との間の画像データの読み書きは、DMAコントローラ104及びDDR SDRAMコントローラ106を介して行われる。
【0030】
矢印130は、DDR SDRAM300に格納された多色画像データが、DMAコントローラ102及びDDR SDRAMコントローラ106を介して、4版の色毎に別々に読み出され、出力I/F108を介して画像形成部に出力される際の多色画像データの流れを表している。
【0031】
<画像処理装置100の動作例>
次に、画像処理装置100の動作について説明する。
【0032】
まず、図3は、前段画像処理回路101の入出力信号の一例を示すタイミングチャートである。なお、図3の各信号に示した添字の(O)は前段画像処理回路101の出力信号を表し、添字の(I)は前段画像処理回路101への入力信号を表している。
【0033】
図3における信号FSYNC(O)は、画像形成装置に備えられた画像メモリ等に1フレームの画像データの転送を要求するための信号である。
【0034】
信号LSYNC(O)は、1フレームの画像データのうちの1ライン分の画像データの転送を要求するための信号である。
【0035】
信号FGATE(I)は、前段画像処理回路101に入力される1フレームの画像データの期間を示す信号である。
【0036】
信号LGATE(I)は、前段画像処理回路101に入力される1フレームの画像データのうち、1ライン分の画像データの期間を示す信号である。
【0037】
信号DATA(I)は、前段画像処理回路101に入力される多色画像データを示す信号である。
【0038】
前段画像処理回路101は、CPU200から画像形成の開始を示すデータを受信し、これに応答して画像形成装置に備えられた画像メモリ等に信号FSYNC(O)を出力する。
【0039】
信号FSYNC(O)に応答して信号FGATE(I)と、信号LGATE(I)と、信号DATA(I)が前段画像処理回路101に入力される。またこの際に、信号LGATE(I)は、信号LSYNC(O)の出力に応答して入力される。
【0040】
信号LSYNCは、CPU200により指定された周期に従って出力される。但し、前段画像処理回路101は、図4を用いて次述するように、DDR SDRAM300への多色画像データの格納を停止する場合がある。この場合には、前段画像処理回路101は、信号LSYNC(O)の出力を一時的に停止することで信号LGATE(I)の入力を停止させることができる。
【0041】
次に、図4はDDR SDRAM300における多色画像データの格納処理の一例を説明する図である。
【0042】
DDR SDRAM300は、CMYKの4版の多色画像データを格納し、色版毎で複数のバンドのそれぞれの画像データを格納できるようになっている。図4におけるDDR SDRAM300は、多色画像データ4を格納している。多色画像データ4は、K版データ41、C版データ42、M版データ43及びY版データ44を含んで構成されている。
【0043】
またK版データ41a,41b,41cは、多色画像データ4におけるK版データ41を拡大して示したもので、それぞれ時系列に異なる状態におけるK版データ41を示したものである。データサイズDSは、K版データ41のサイズを表している。
【0044】
K版データ41aは、DDR SDRAM300が格納している多色画像データのうちの1つのバンドの画像データを後段画像処理回路103に出力しながら、前段画像処理回路101で処理された後におけるバンドの画像データの一部を格納する状態を示している。
【0045】
現在使用中の領域411は、後段画像処理回路103に出力している領域であり、バンドサイズBSは1つのバンドのサイズを表している。なお、バンドサイズBSは予め定められている。
【0046】
データ格納領域412は、前段画像処理回路101で処理された後におけるバンドの画像データが格納されている領域である。メモリ開放領域413は、前段画像処理回路101による処理では使用されず、開放されている領域である。
【0047】
K版データ41bは、前段画像処理回路101で1つのバンドの画像データの出力が終了した時の状態を示している。K版データ41aにおける現在使用中の領域411は、メモリ開放領域414と読み直し領域415とに分けられている。メモリ開放領域414では画像データが消去されてメモリが開放され、読み直し領域415では、画像データが出力された後も、画像データが消去されずに残される。
【0048】
データ格納領域416は、前段画像処理回路101による処理後のバンドの画像データが増えたことにより領域を拡大し、反対にメモリ開放領域417は領域を縮小している。
【0049】
K版データ41cは、DDR SDRAM300が格納している多色画像データのうちの次のバンドの画像データを後段画像処理回路103に出力しながら、前段画像処理回路101で処理された後におけるバンドの画像データの一部を格納する状態を示している。
【0050】
この時にバンドの画像データは、K版データ41bにおける読み直し領域415が含まれるように選択されて、後段画像処理回路103に出力されるようになっている。従って、K版データ41cにおけるバンドに対応する現在使用中の領域419は、K版データ41bにおける読み直し領域415を含んでいる。
【0051】
このように、実施形態では、バンド毎に前段画像処理回路101で処理され、DDR SDRAM300に格納されたバンドの画像データのうちの一部を読み直し領域415とし、読み直し領域415を含んだバンドを後段画像処理回路103に出力する。後段画像処理回路103は読み直し領域415を含んだバンドに対して画像処理を実行する。
【0052】
このようにすると、後段画像処理回路103に出力されるバンドの境目で、隣接するバンドにおける画像データの一部が重複する。
【0053】
ここで、例えば後段画像処理回路103が、サイズ5×5画素の画像フィルタ処理等を行う場合に、バンドにおける端部では、注目画素の周囲に画素が存在しない状態になる場合がある。図5はこの状態を説明する図であり、画像フィルタ50の構成例を示す図である。図5に示すように、画像フィルタ50は5×5画素のサイズで構成され、注目画素51の周囲に24個の画素が配置されている。
【0054】
バンドの画像データにおける5×5画素の各画素データに対して、画像フィルタ50の5×5画素の各画素データを用いた演算が行われ、バンドの画像データにおける注目画素51に対応する画素に演算結果が適用される。
【0055】
例えば、5×5画素の画像フィルタを用いた積和演算フィルタ処理では、バンドの画像データ及び画像フィルタ50のそれぞれにおける5×5画素の画素毎で画素データの積算が行われる。そして、バンドの画像データにおける注目画素51に対応する画素に、積算値の総和が演算結果として適用される。
【0056】
このような画像フィルタ50を用いて、バンドの端部の画素を注目画素として処理する場合、図5に網点ハッチングで示した画素領域52には、対象となる画素がバンドに存在しなくなる。
【0057】
注目画素51の周囲に画素が存在しない状態で画像フィルタ処理を実行すると、バンドの画像データにおける注目画素51に対応する画素に、誤差を含んだ演算結果が適用される。その結果、バンドの端部における画質が低下する場合がある。
【0058】
これに対し、隣接するバンドの端部の画像データを読み直し領域415として重複させると、画素領域52に対応する画素の画素データとして、重複させた読み直し領域415の画素データを用いることができる。
【0059】
これにより、バンドの画像データにおける注目画素51に対応する画素に、画像フィルタ処理の誤差を含んだ演算結果が適用されることを防ぎ、バンドの端部における画質の低下を抑制できるようになっている。
【0060】
なお、K版データ41のデータサイズDSに対応する領域の全てに画像データが格納された場合には、前段画像処理回路101は、信号LSYNC(O)の出力を一時的に停止することで信号LGATE(I)の入力を停止させ、DDR SDRAM300への画像データの格納を停止させることができる。
【0061】
また、図4ではK版を一例として説明したが、C版、M版及びY版においても、上述したものと同様の処理を適用できる。
【0062】
次に図6は、図4で説明したDDR SDRAM300の格納処理の一例を示すタイミングチャートである。
【0063】
図6における信号curcolは、処理中の色を示す信号である。信号curcolにおける括弧内のK,C,M,Yは処理中の色を表している。
【0064】
信号fgateは、フレームの期間を示す信号である。ON状態は、フレームにおいて画像データが有効であることを示している。
【0065】
信号eofは、副走査方向の最終画素(最終ライン)を示す信号である。
【0066】
信号bgateは、1フレームの多色画像データのうちのバンドの期間を示す信号である。ON状態は、バンドの画像データが有効であることを示している。
【0067】
信号lgateは、1フレームの多色画像データのうち、副走査方向の同一位置であることを示す信号である。
【0068】
信号eolは、主走査方向の最終画素を示す信号である。
【0069】
図6に示すように、各フレームの多色画像データが色毎でバンドに分割される。前段画像処理回路101は各バンドに対して所定のタイミングで画像処理を実行し、処理後の各バンドの画像データを後段画像処理回路103に出力する。
【0070】
次に図7は、図4で説明した処理における読み直し領域415の制御の一例を示すタイミングチャートである。図7における信号curcol,fgate,bgat,eolはそれぞれ図6で説明したものと同様である。
【0071】
信号dataは、読み直し領域415に格納されているバンドの画像データである。信号dataに示されている数値はライン数を表している。
【0072】
図7は、1つのバンドが100ラインの画像データから構成され、そのうちの5ライン分が読み直し領域415に該当する場合を示している。なお、後段画像処理回路103は、バンドの画像データが読み直し領域の画像データであるか否かに関わらず、所定の処理を所定性能で実行可能である。
【0073】
前段画像処理回路101が1つのバンドを構成する100ラインの画像データに画像処理を実行した後、DDR SDRAM300は1~95ラインにおける画像データを消去してメモリを開放し、残りの96~100ラインにおける画像データは消去せずにメモリに維持するように制御される。図7の例では、信号curcolが(K)を示している時の96~100ラインにおけるバンドの画像データが、次のバンドにおける最初の5ラインを構成するように、DDR SDRAM300の制御が行われている。
【0074】
<画像処理装置100の作用効果>
以上説明してきたように、実施形態では、多色画像データを複数のバンドに分割し、各バンドの画像データをDDR SDRAM300に一時格納した後、これを読み出して画像処理を行うことで、バンド毎の分割処理を実行する。
【0075】
また、分割処理では、前段画像処理回路101で処理され、DDR SDRAM300に格納されたバンド毎の画像データのうちの一部を読み直し領域415とし、読み直し領域415を含んだバンドを後段画像処理回路103に出力する。後段画像処理回路103は読み直し領域415を含むバンドに対して処理を実行する。
【0076】
このようにすると、後段画像処理回路103に出力されるバンドの境目で、隣接するバンドの画像データの一部を読み直し領域415として重複させることができ、バンドの端部で画素が存在しない領域を読み直し領域415で埋めることができる。
【0077】
これにより、バンドの端部で画素が存在しないこと等に起因する画像処理の誤差を防ぎ、画像データを複数のバンドに分割して処理する場合の画像品質を確保できる。
【0078】
また画像処理装置100を備え、A0用紙等の大判の記録媒体に多色画像を形成可能な画像形成装置では、バンド毎の分割処理によって、画像処理回路の規模や内蔵メモリ容量の増大に起因する装置のコストアップを回避するとともに、記録媒体に形成される画像の品質を確保できる。
【0079】
なお、本実施形態では、5×5画素の画像フィルタの例を示したが、画像フィルタのサイズはこれに限定されるものではなく増減があってもよい。画像フィルタのサイズに応じて読み直し領域415のサイズが定められる。例えば5×5画素の画像フィルタを用いる場合には、読み直し領域415を2ライン分の画像とし、9×9画素の画像フィルタを用いる場合には、読み直し領域415を4ライン分の画像とすると好適である。
【0080】
また、後段画像処理回路103が画像フィルタ処理を行う場合を例に説明したが、他の画像処理を実行してもよい。他の画像処理でも、バンドの境目で、隣接するバンドの画像データの一部を重複させることで、バンドの境目が目立たないようにし、画質の劣化を防ぐことができる。
【0081】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る画像処理装置100aについて説明する。
【0082】
図8は、画像処理装置100aの構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、画像処理装置100aは、後段画像処理回路103aと、色メモリ81とを備えている。
【0083】
後段画像処理回路103aは、A0用紙等の大判の記録媒体に対応する多色画像データを構成する全画素に対して累積処理を行う機能を備える。また後段画像処理回路103aは、累積処理を行うために、前段画像処理回路101(図1参照)による処理後におけるバンドの画像データのうち、1ライン分のK版の画像データを色メモリ81に保持させる。その後、次の1ラインのK版の画像データを処理する際に、色メモリ81に保持された画像データを読み出して用いる。
【0084】
ここで、1ラインは「所定領域」の一例であり、Kは「所定色」の一例であり、色メモリ81は「保持部」の一例である。また色メモリ81に保持される1ライン分のK版の画像データは「第1データ」の一例であり、上記の次の1ラインのK版の画像データは「第2データ」の一例である。
【0085】
但し、所定領域は1ラインに限定されるものではなく、複数ラインであってもよいし、所定色はK以外の色であってもよい。
【0086】
色メモリ81は、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリで構成され、画像データを一時保持する。処理対象となる1ライン分の画像データが処理されるたびに、処理後の画像データが色メモリ81に保持される。これにより、色メモリ81には1ライン毎の処理が累積された画像データが保持されるため、後段画像処理回路103aはこれを読み出すことで、累積処理を実行できる。
【0087】
図9は、画像処理装置100aによる処理の一例を示すタイミングチャートである。
【0088】
図9における信号linecntは、後段画像処理回路103aの処理対象となるバンドの画像データを示している。また信号linecnt_kは色メモリ81に保持されるK版の画像データ、信号linecnt_cは色メモリ81に保持されるM版の画像データ、信号linecnt_mは色メモリ81に保持されるM版の画像データ、信号linecnt_yは色メモリ81に保持されるY版の画像データをそれぞれ示している。
【0089】
以上説明したように、本実施形態では、バンド毎に分割処理を行う場合に、大判の記録媒体に対応する多色画像データに対して累積処理を実行することができる。
【0090】
また上述した例では、画像処理装置100aの内部メモリとしてのRAM等で色メモリ81の機能を実現する例を示したが、色メモリ81の機能を外部メモリで実現することもできる。
【0091】
図10は、画像処理装置100bの構成の一例を示すブロック図であり、外部メモリで色メモリ81の機能を実現するための構成の一例を示す図である。
【0092】
色メモリ81aは、DDSDRAM等の画像処理装置100bの外部メモリで構成され、後段画像処理回路103aは、DMAコントローラ82を介して色メモリ81aへの多色画像データの読み書きを行えるようになっている。
【0093】
画像処理装置100bの構成によっても、バンド毎に分割処理を行う場合に、大判の記録媒体に対応する多色画像データに対して累積処理を実行できる。
【0094】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0095】
例えば実施形態では、画像処理装置100を集積回路で構成する例を示したが、これに限定されるものではない。画像処理装置100の機能を電気回路で実現してもよいし、CPU等のプロセッサが所定のプログラムを実行することで実現してもよい。
【0096】
また、上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0097】
また、実施形態はプログラムも含む。例えばプログラムは、多色画像データを複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に処理を実行可能な画像処理装置で実行されるプログラムであって、前記画像領域に対する第1処理と、前記第1処理後の前記画像領域に対する第2処理と、をコンピュータに実行させ、前記第1処理では、前記画像領域の境目で、隣接する前記画像領域の一部が重複するように、前記第1処理後の前記画像領域の画像データを出力させる。このようなプログラムにより、上述した画像処理装置と同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、実施形態は画像処理方法も含む。例えば画像処理方法は、多色画像データを複数の画像領域に分割し、前記画像領域毎に処理を実行可能な画像処理装置による画像処理方法であって、前記画像領域に対して第1処理を実行する第1処理工程と、前記第1処理後の前記画像領域に対して第2処理を実行する第2処理工程と、を行い、前記第1処理工程では、前記画像領域の境目で、隣接する前記画像領域の一部が重複するように、前記第1処理後の前記画像領域の画像データを出力する。このような画像処理方法により、上述した画像処理と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0099】
100 画像処理装置
101 前段画像処理回路(第1処理部の一例)
102、104、107、82 DMAコントローラ
103 後段画像処理回路(第2処理部の一例)
105 CPU I/F
106 DDR SDRAMコントローラ
108 出力I/F
200 CPU
300 DDR SDRAM(格納部の一例)
415 読み直し領域(画像データの一部が重複する領域の一例)
50 画像フィルタ
51 注目画素
52 画素領域
81 色メモリ(保持部の一例)
DS データサイズ
BS バンドサイズ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【文献】特開2002-011905号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10