(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】支援システム、支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
A61B5/00 102B
(21)【出願番号】P 2020051837
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敏
(72)【発明者】
【氏名】吉水 英毅
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0125832(US,A1)
【文献】特開2011-030919(JP,A)
【文献】特開2005-046320(JP,A)
【文献】特開2017-174266(JP,A)
【文献】特開2017-153850(JP,A)
【文献】特開2018-078965(JP,A)
【文献】特開2008-293301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00ー5/0538
A61B 5/06ー5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者が所在を予定している空間を撮影し画像情報を生成する撮影手段と、
前記対象者に対して非装着であって、当該対象者の状態を示す状態情報を生成する状態検知手段と、
前記対象者の状態情報に基づいて前記撮影手段により撮影された画像が
必要か否かを判断し、必要と判断した場合に、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可する撮影制御手段と、
定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースと、支援業務の優先度の判断を行うケースとを、既定の時間帯で切り替える、又は、対象者の状態情報に応じて切り替える選択手段と、
を備え、
前記撮影制御手段は、前記対象者の状態情報に基づいて異常ありと判断した場合であって、前記選択手段により、支援業務の優先度の判断を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可し、前記対象者の状態情報に基づいて異常なしと判断した場合であって、前記選択手段により、定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可することを特徴とする支援システム。
【請求項2】
前記状態情報は、前記対象者の心拍数、心電波形、血流、呼吸数、呼吸波形、睡眠状態、血圧の値、酸素飽和度、血糖値、体温の少なくとも1つあるいは組み合わせ、またこれらの時間推移の少なくとも1つあるいは組み合わせのバイタル情報である、ことを特徴とする請求項
1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記状態情報は、前記対象者の行動を示す行動情報である、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の支援システム。
【請求項4】
前記撮影制御手段は、
前記ケースが、支援業務の優先度の判断を行うケースの場合には、前記対象者の所定の前記行動情報に応じて、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可する、ことを特徴とする請求項
3に記載の支援システム。
【請求項5】
支援システムにより実行される支援方法であって、
対象者に対して非装着
である状態検知手段により、当該対象者の状態を示す状態情報を生成する状態検知ステップと、
定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースと、支援業務の優先度の判断を行うケースとを、既定の時間帯で切り替える、又は、対象者の状態情報に応じて切り替える選択ステップと、
前記対象者の状態情報に基づいて、前記対象者が所在を予定している空間を撮影し画像情報を生成する撮影手段により撮影された画像が
必要か否かを判断し、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可する撮影制御ステップと、
を実行し、
前記撮影制御ステップでは、前記対象者の状態情報に基づいて異常ありと判断した場合であって、前記選択ステップで、支援業務の優先度の判断を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可し、前記対象者の状態情報に基づいて異常なしと判断した場合であって、前記選択ステップで、定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可する
ことを特徴とする支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、
対象者に対して非装着であって、当該対象者の状態を示す状態情報を生成する状態検知手段
からの前記対象者の状態情報に基づいて、前記対象者が所在を予定している空間を撮影し画像情報を生成する撮影手段により撮影された画像が
必要か否かを判断し、必要と判断した場合に、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可する撮影制御手段と、
定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースと、支援業務の優先度の判断を行うケースとを、既定の時間帯で切り替える、又は、対象者の状態情報に応じて切り替える選択手段と、
前記撮影制御手段としての機能として、
前記対象者の状態情報に基づいて異常ありと判断した場合であって、前記選択手段により、支援業務の優先度の判断を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可し、
前記対象者の状態情報に基づいて異常なしと判断した場合であって、前記選択手段により、定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可するように機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援システム、支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護施設、福祉施設、医療施設、高齢者等が生活する住宅(以下、介護施設等とする)において、被介護者・被看護者の状況を見守るニーズが高まっている。また、介護施設等においては、介護者等の人材不足から監視システムによる業務の効率化が求められている。一方で、被介護者・被看護者にバイタルセンサを装着することは身体拘束にあたるとの考え方がある。
【0003】
特許文献1には、カメラを設置し、被看護者の人体に脈拍、体温などの生体情報を測定できるセンサを装着し、容態が急変した被看護者を抽出し、異常と判定した場合に、カメラ映像の様子をみながら適切に処置する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、カメラにより被看視者の行動を検知し離床など所定の行動があった場合、またはナースコールを受け、撮影手段のライブ表示する時間を制御する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラなど撮像手段による撮影は、被介護者・被看護者のプライバシーへの配慮からできるだけ行わないほうが良いといわれている。なお、カメラで撮影した画像情報に基づく被介護者・被看護者の行動の検知は、精神的な身体拘束に当たるとの考え方もある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、被介護者・被看護者である対象者の身体拘束をせず、プライバシーに最大限配慮しつつも、対象者の見守りを行う支援システム、支援方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象者が所在を予定している空間を撮影し画像情報を生成する撮影手段と、前記対象者に対して非装着であって、当該対象者の状態を示す状態情報を生成する状態検知手段と、前記対象者の状態情報に基づいて前記撮影手段により撮影された画像が必要か否かを判断し、必要と判断した場合に、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可する撮影制御手段と、を備え、前記撮影制御手段は、前記対象者の状態情報に基づいて異常ありと判断した場合であって、前記選択手段により、支援業務の優先度の判断を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可し、前記対象者の状態情報に基づいて異常なしと判断した場合であって、前記選択手段により、定期的に全ての対象者の安否確認を行うケースが選択されている場合には、前記撮影手段の制御または前記撮影手段により撮影された画像のアクセスを許可することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被介護者・被看護者である対象者の身体拘束をせず、プライバシーに最大限配慮しつつも、対象者の見守りを行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る支援システムの構成図である。
【
図2】
図2は、ユーザ端末のハードウェア構成図である。
【
図3】
図3は、ユーザ端末の機能を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、ユーザ端末における支援処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、カメラマークを表示させたアイコンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、支援システム、支援方法およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
なお、本明細書では介護施設における被介護者の離床理由の推定を一例として説明するが、本発明は、自宅、病院などの任意の場所にいる任意の者の離床理由を推定する際に適用することができる。
【0012】
図1は、実施の形態に係る支援システム100の構成図である。支援システム100は、1または複数のユーザ端末110、各ベッド(寝台)121に設置されたセンサ122、各ベッド(寝台)121に設置されたカメラ126、各ベッド(寝台)121に設置されたスピーカマイク127を含むことができる。支援システム100は、ベッド121上の被介護者(以下、対象者ともいう)123に対して身体拘束をせず、プライバシーに最大限配慮しつつも、対象者123の見守りを行うシステムである。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
ユーザ端末110は、介護施設内にいる介護者111や介護施設外にいる対象者123の家族112などが利用する端末である。ユーザ端末110は、例えば、タブレット、スマートフォン、パーソナルコンピュータなどのコンピュータである。具体的には、ユーザ端末110は、任意のネットワーク130を介して、センサ122が検知した情報を示すデータ(以下、バイタルデータともいう)を受信することができる。例えば、ユーザ端末110は、バイタルデータが保存されたデータロガー124から、そのバイタルデータを受信することができる。また、ユーザ端末110は、バイタルデータから得られる情報(以下、バイタル情報ともいう)に基づいて、対象者123の状態を判定することができる。また、ユーザ端末110は、対象者123の状態をユーザ端末110上に表示することができる。
【0014】
ユーザ端末110は、任意のネットワーク130を介して、カメラ126で撮影した画像情報を受信することができる。また、ユーザ端末110は、カメラ126で撮影した対象者123の画像情報をユーザ端末110上に表示することができる。
【0015】
ユーザ端末110は、任意のネットワーク130を介して、スピーカマイク127で集音した音声情報を受信することができる。また、ユーザ端末110は、スピーカマイク127で集音した対象者123の音声情報をユーザ端末110上で再生することができる。
【0016】
ベッド121は、対象者123が利用しているベッド(寝床)である。ベッド121は、任意のベッドであってよい。
【0017】
センサ122は、例えばベッド121に設けられる。なお、センサ122は、これに限るものではなく、壁に取り付けるものであってもよい。センサ122は、対象者123のバイタルデータを非装着で計測する装置である。センサ122は、映像、マイクロ波、ミリ波、超音波、音波などを利用して、対象者123のバイタルデータを計測する。
【0018】
バイタルデータから得られるバイタル情報は、具体的には、心拍数、心電波形、血流、呼吸数、呼吸波形、睡眠状態、血圧の値、酸素飽和度、血糖値、体温の少なくとも1つあるいは組み合わせ、またこれらの時間推移である。
【0019】
例えば、レム睡眠時は、眠っていても眼球が動き眠りの浅い状態で、呼吸が速く不規則になる。一方で、ノンレム睡眠時は、眼球が動かない眠りで、ぐっすり寝ている状態である。一般には眠りにおちてすぐに深い眠りのノンレム睡眠になりだいたい90分でノンレム睡眠とレム睡眠を繰り返す。ところが、発熱等があったり、精神的に不安定な状況になったりすると、このパターンが乱れることになる。本実施形態においては、例えば、この夜間の呼吸数の時系列での変化をとらえ、周波数解析することで、通常は90分程度の周波数にピークがある人がここにピークが立たない状況などをとらえて、通常とは異なることを判断する。
【0020】
カメラ126は、対象者123が所在を予定している空間を撮影し画像情報を生成する撮影手段である。カメラ126は、例えばベッド121に設けられる。なお、カメラ126は、これに限るものではなく、壁に取り付けるものであってもよい。カメラ126は、対象者123を撮影する。カメラ126で撮影した対象者123の画像情報は、対象者123の状況確認に用いられる。
【0021】
なお、カメラ126は、多床室に設置される場合には、対象者123のみが写るように設置される。また、カメラ126は、目に見えない熱を視覚化する赤外線サーモグラフィカメラであってもよい。
【0022】
スピーカマイク127は、例えばベッド121に設けられる。スピーカマイク127で集音される対象者123の音声情報は、対象者123の行動情報として用いられる。なお、対象者123の音声情報は、ナースコールシステムなどにより取得するものであってもよい。
【0023】
ネットワーク130は、上述のとおり、有線・無線を問わず、任意のネットワークであってよい。
【0024】
データロガー124は、センサ122が検知したバイタルデータを保存することができる。また、データロガー124が、バイタルデータをバイタル情報へ変換してユーザ端末110に出力するようにしてもよい。
【0025】
データロガー124は、スピーカマイク127が集音した音声情報を保存することができる。また、データロガー124が、スピーカマイク127が集音した音声情報を音声認識するようにしてもよい。例えば、スピーカマイク127を介して介護者111から「助けて」「苦しい」「痛い」などの発声があった場合には、データロガー124は、音声認識を行う。ここで、音声認識した情報は、行動情報としてユーザ端末110に出力される。
【0026】
すなわち、センサ122やスピーカマイク127は、対象者123に対して非装着であって、当該対象者123の状態を示す状態情報(バイタル情報、行動情報)を生成する状態検知手段として機能する。
【0027】
図2は、ユーザ端末110のハードウェア構成図である。ユーザ端末110は、例えば
図2に示すハードウェア構成のコンピュータ200により実現される。
【0028】
ユーザ端末110は、CPU(Central Processing Unit)201、ROM(Read Only Memory)202、RAM(Random Access Memory)203を有する。CPU201、ROM202、RAM203は、いわゆるコンピュータを形成する。
【0029】
また、ユーザ端末110は、補助記憶装置204、表示装置205、操作装置206、I/F(Interface)装置207、ドライブ装置208を有する。なお、ユーザ端末110の各ハードウェアは、バス209を介して相互に接続されている。
【0030】
CPU201は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。
【0031】
ROM202は、不揮発性メモリである。ROM202は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムをCPU201が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM202はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0032】
RAM203は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM203は、補助記憶装置204にインストールされている各種プログラムがCPU201によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0033】
補助記憶装置204は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0034】
表示装置205は、対象者123の状態やカメラ126で撮影した対象者123の画像情報等を表示する表示デバイスである。
【0035】
操作装置206は、ユーザ端末110の管理者がユーザ端末110に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0036】
I/F装置207は、ネットワーク130に接続し、センサ122が検知したバイタルデータやスピーカマイク127で集音した音声情報などが保存されたデータロガー124と通信を行うための通信デバイスである。また、I/F装置207は、ネットワーク130に接続し、カメラ126と通信を行うための通信デバイスである。
【0037】
ドライブ装置208は記憶媒体210をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体210には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体210には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0038】
なお、補助記憶装置204にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体210がドライブ装置208にセットされ、該記憶媒体210に記録された各種プログラムがドライブ装置208により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置204にインストールされる各種プログラムは、I/F装置207を介して、ネットワーク130は異なる他のネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0039】
図3は、ユーザ端末110の機能を示す機能ブロック図である。
【0040】
図3に示すように、ユーザ端末110のCPU201がプログラムを実行することにより、状態判定手段10と、撮影制御手段20と、を備える。
【0041】
状態判定手段10は、状態情報(バイタル情報、行動情報)を取得すると、対象者123の状態が正常であるかを判断する。
【0042】
撮影制御手段20は、対象者123の状態情報(バイタル情報、行動情報)に基づいてカメラ126により撮影された画像が必要と判断した場合に、カメラ126の制御またはカメラ126により撮影された画像のアクセスを許可する。
【0043】
次に、夜間等の見守り業務の業務負荷低減を目的としたユーザ端末110における支援処理について説明する。
【0044】
なお、本実施形態の支援処理においては、例えば2時間ごとに定期的に全ての対象者123の安否確認を行う使うケース1と、他業務を行っている際の業務の優先度の判断のために使うケース2とに分けて説明する。
【0045】
ここで、
図4はユーザ端末110における支援処理の流れを概略的に示すフローチャートである。本実施形態の支援処理は、概略的には、センサ122が検知したバイタルデータに基づくバイタル情報、およびスピーカマイク127を介して集音された音声に基づく行動情報に基づき、カメラ126による撮影、またはカメラ126により撮影した画像へのアクセスの許可判断を行う。以下、具体的に説明する。
【0046】
状態判定手段10は、状態情報(バイタル情報、行動情報)を取得すると(ステップS1のYes)、対象者123の状態が正常であるかを判断する(ステップS2)。
【0047】
例えば、心拍数、呼吸数、血圧の値、酸素飽和度、血糖値、体温などのように、センサ122からの数値のみで対象者123が正常であるかを判定できる場合には、事前に正常であるかを判断する閾値が設定される。例えば、心拍数の場合、一般的には1分で60~75程度が正常値であると言われている。対象者123によりその適正値は異なるが、例えば下記の表のように、対象者123、センサ122のセンサID、カメラ126のカメラIDと紐づいた形で、「Aさん」は下限50、上限80、「Bさん」は下限40、上限70のようにあらかじめ閾値が設定される。なお、ここでセンサIDやカメラIDは、管理用に新たにユニークにつけられたIDや、ネットワークのIPアドレス、MACアドレスなどを用いる。
【0048】
【0049】
状態判定手段10は、設定した閾値の範囲内であれば適正と判断し、設定した閾値の範囲を逸脱していた場合は異常と判断をする。
【0050】
また、「助けて」「苦しい」「痛い」などの対象者123が異常であることを示す言葉を予め登録しておき、スピーカマイク127を介して介護者111から異常であることを示す発声があったことを認識した場合には、状態判定手段10は、対象者123が異常であると判断をする。
【0051】
状態判定手段10が異常であることを示す発声があったり、閾値の範囲を逸脱しており対象者123が異常であると判断した場合であって(ステップS2のNo)、ケース1の場合には(ステップS3のYes)、撮影制御手段20は、カメラ126の画像情報で確認するまでもなく、訪室し対象者123の状況を確認する必要があるため、カメラ126による撮影、またはカメラ126により撮影した画像情報へのアクセスは許可せず、ステップS1に戻る。
【0052】
一方、設定した閾値の範囲内であり対象者123が正常であると判断した場合であって(ステップS2のYes)、ケース1の場合には(ステップS4のYes)、対象者123の良眠を妨げないようにするために、撮影制御手段20は、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを許可し(ステップS5)、カメラ126で撮影した画像情報で状況を介護者111に確認させる。
【0053】
なお、撮影制御手段20は、対象者123の状況を知らせるアイコンを表示装置205上に表示するような場合、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを許可した対象者123のアイコン上にカメラマークを表示させて知らせるようにしてもよい。ここで、
図5はカメラマークMを表示させたアイコンIを示す図である。
図5に示すように、アイコンIに対応付けられた対象者123を撮影するカメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスが許可されたことが一目でわかるようになる。
【0054】
また、異常であることを示す発声があったり、閾値の範囲を逸脱しており対象者123が正常でないと判断した場合であって(ステップS2のNo)、ケース2の場合には(ステップS3のNo)、撮影制御手段20は、介護者・看護者に対して閾値を逸脱した旨の発報を行うとともに(ステップS6)、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを許可し(ステップS7)、カメラ126で撮影した画像情報で状況を介護者111に確認させる。このようにケース2の場合において、カメラ126で撮影した画像情報で確認を行うようにしたのは、現在行っている業務を止めて訪室を行う必要があるかの優先度を判断するためである。
【0055】
また、撮影制御手段20は、設定した閾値の範囲内であり対象者123が正常であると判断した場合であって(ステップS2のYes)、ケース2の場合には(ステップS4のNo)、カメラ126の画像情報で確認するまでもないので、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影された画像情報へのアクセスは許可せず、ステップS1に戻る。
【0056】
なお、上述したケース1とケース2との切り替えは、あらかじめ時間帯で設定しておいても構わないし、対象者123の位置情報や行動情報から現在の作業・業務を推定し、ケース1とケース2との切り替えを行っても構わない。
【0057】
このように本実施形態によれば、対象者123に対して非装着型のバイタルセンサであるセンサ122から得られる情報が、対象者123ごとに事前に設定されている閾値の範囲内の場合であって、ケース1の場合には、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影された画像情報へのアクセスを許可し、カメラ126からの画像情報中の対象者123の状況を、訪室を行わず、スタッフステーション等から確認させる。これにより、スタッフの業務負荷を低減するとともに、対象者123の睡眠や生活を妨げてしまうことを低減することができる。
【0058】
一方、対象者123に対して非装着型のバイタルセンサであるセンサ122から得られる情報が、対象者123ごとに事前に設定されている閾値を逸脱した場合であって、ケース2の場合には、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影された画像情報へのアクセスを許可し、カメラ126からの画像情報中の対象者123の状況を、訪室を行わず、スタッフステーション等から確認させる。これにより、バイタルセンサであるセンサ122からの情報は通常とは異なるものの、画像からは訪室の必要がない、またはほかの業務に優先した訪室の必要性の有無を判断することができる。
【0059】
すなわち、本実施形態によれば、被介護者・被看護者である対象者の身体拘束をせず、プライバシーに最大限配慮しつつも、対象者の見守りを行うことができる、という効果を奏する。
【0060】
なお、撮影制御手段20は、対象者123の所定の行動情報に応じて、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを制限するようにしてもよい。例えば、着替え、着替えの介助、排せつ、排せつの介助等、対象者123が、カメラ126により画像情報を撮影されたくないと思う行動を自動判定し、その行動中は、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを制限する。これらの行動は、例えば、マイクロ波センサやミリ波センサなどを使い居室内の人間の行動を判定する方法を用いたり、排せつ時には一般に血圧が上がるなどバイタルの変化があるとされるのでバイタルデータを用いたりすることで、検知することができる。
【0061】
また、撮影制御手段20は、対象者123の所定の行動情報に応じて、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを許可するようにしてもよい。ここでは、スピーカマイク127(あるいは、ナースコールシステムなど)により、介護者111から対象者123への呼びかけを行った場合について説明する。このような場合において、対象者123からの返答がスピーカマイク127を介して集音できなかった場合には、対象者123が倒れているなどで回答できない場合か、対象者123が部屋にいない場合のどちらかが考えられる。この際は、カメラ126で撮影した画像情報で確認し、対象者123が倒れているなどで回答できない場合か、対象者123が部屋にいない場合のどちらかを特定することが求められる。すなわち、対象者123が返答できないという行動情報を取得した場合、撮影制御手段20は、カメラ126による撮影、カメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを許可する。対象者123が倒れているなどで回答できない場合はプライバシーよりも優先されるべきであり、また対象者123が部屋にいない場合もプライバシーへの配慮はさほどもとめられないことから、カメラ126による撮影、またはカメラ126で撮影した画像情報へのアクセスを許可することが妥当である。
【符号の説明】
【0062】
20 撮影制御手段
100 支援システム
122、127 状態検知手段
126 撮影手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【文献】特開2006‐247014号公報
【文献】特許第6135832号公報