(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置および吐出制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240305BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 401
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020087530
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】三澤 順一
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-118674(JP,A)
【文献】特開2001-205823(JP,A)
【文献】特開2004-066665(JP,A)
【文献】特開2008-238614(JP,A)
【文献】特開2014-159102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に往復走査させる駆動部と、
前記記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、前記ノズルからの液滴を受容する吐出受けと、
記録に寄与しない液滴を前記吐出受けに吐出させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記吐出受けへの吐出の実行が必要となるタイミングと該タイミングにおける前記キャリッジの位置を予測し、
予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、n回目の走査方向上流側の前記吐出受けよりもn回目の走査方向下流側の前記吐出受けに近い場合は、n回目の走査後に前記吐出受けに対して吐出させ、
予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、n回目の走査方向下流側の前記吐出受けよりもn回目の走査方向上流側の前記吐出受けに近い場合は、(n-1)回目の走査後に前記吐出受けに対して吐出させることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、
前記キャリッジを前記記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に往復走査させる駆動部と、
前記記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、前記ノズルからの廃液を受容する吐出受けと、
記録に寄与しない液滴を前記吐出受けに吐出させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記吐出受けへの吐出の実行が必要となるタイミングと、該タイミングにおける前記キャリッジの位置を予測するとともに、吐出の対象となる前記吐出受けを特定し、
予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、対象とされた前記吐出受けに対してn回目の走査方向の上流側にある場合は、n回目の走査後に対象とされた前記吐出受けに吐出させ、
予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、対象とされた前記吐出受けに対してn回目の走査方向の下流側にある場合は、(n-1)回目の走査後に対象とされた前記吐出受けに吐出させることを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記吐出受けの廃液の受容頻度を参照し、
次回の吐出の対象とされた前記吐出受けの廃液の受容頻度が、他の前記吐出受けの廃液の受容頻度よりも高い場合、
次回の吐出のタイミングが到来する前に、他の前記吐出受けに吐出させることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吐出受けの廃液の受容頻度を参照し、
主走査方向一端側の前記吐出受けの廃液の受容頻度が、主走査方向他端側の前記吐出受けの廃液の受容頻度よりも高い場合、
受容頻度の高い主走査方向一端側の前記吐出受けへの廃液の吐出量を低減させ、残留した廃液を受容頻度の低い主走査方向他端側の前記吐出受けへ吐出させることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記吐出受けの廃液の貯留量を参照し、
主走査方向一端側の前記吐出受けの廃液の貯留量が規定量を超えた場合、
主走査方向他端側の前記吐出受けにのみ吐出させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記吐出受けの廃液の貯留量を参照し、
前記吐出受けの廃液の貯留量が規定量を超えた場合、当該吐出受けへの廃液の吐出量を低減させることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
粘度増加速度の異なる複数の種類の液体を吐出可能であり、
前記制御部は、液体の種類ごとに記録に寄与しない液滴の吐出の実行が必要となるタイミングを判断し、吐出が必要な液体のみ吐出させることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを前記記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に往復走査させる駆動部と、前記記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、前記ノズルからの廃液を受容する吐出受けと、記録に寄与しない液滴を前記吐出受けに吐出させる制御部と、を備える液体を吐出する装置の吐出制御方法において、
前記制御部が、前記吐出受けへの吐出の実行が必要となるタイミングと該タイミングにおける前記キャリッジの位置を予測するステップと、
予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、n回目の走査方向上流側の前記吐出受けよりもn回目の走査方向下流側の前記吐出受けに近い場合は、n回目の走査後に前記吐出受けに対して吐出させ、
予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、n回目の走査方向下流側の前記吐出受けよりもn回目の走査方向上流側の前記吐出受けに近い場合は、(n-1)回目の走査後に前記吐出受けに対して吐出させるステップと、を有することを特徴とする吐出制御方法。
【請求項9】
記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを前記記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に往復走査させる駆動部と、前記記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、前記ノズルからの廃液を受容する吐出受けと、記録に寄与しない液滴を前記吐出受けに吐出させる制御部と、を備える液体を吐出する装置の吐出制御方法において、
前記制御部が、前記吐出受けへの吐出の実行が必要となるタイミングと、該タイミングにおける前記キャリッジの位置を予測するとともに、吐出の対象となる前記吐出受けを特定するステップと、
予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、対象とされた前記吐出受けに対してn回目の走査方向の上流側にある場合は、n回目の走査後に対象とされた前記吐出受けに吐出させ、
予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、対象とされた前記吐出受けに対してn回目の走査方向の下流側にある場合は、(n-1)回目の走査後に対象とされた前記吐出受けに吐出させるステップと、を有することを特徴とする吐出制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置および吐出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置の一例としてのインクジェット記録装置(画像形成装置)は、印字信号に応じてノズルからインク滴を記録材上に吐出することにより画像を形成する手段であり、ノズルを備えた液体吐出ヘッド(インクジェットヘッド)と、液体吐出ヘッドを所定方向へ移動させるキャリッジと、記録媒体(用紙)を印字位置に送り込む搬送機構等を備えている。印字時には、キャリッジを記録媒体の搬送方向と直交する方向へ往復移動させながら、ノズルからインク滴を吐出させることにより印字を行う。待機時には、印字領域から退避した各位置にキャリッジを移動させ、必要なメンテナンスを行うこととなる。
【0003】
インクジェット記録装置にあっては、ノズル内のインクが乾燥して増粘することにより、インク吐出不良が発生し、印字品質を低下させる原因となる。このような不具合に対処して正常な吐出機能を回復させるためのメンテナンス手段として、印字とは無関係にノズルからインク滴を吐出(「空吐出」や「予備吐出」ともいう)させて正常な吐出状態に回復させる機構が提案されている。空吐出された廃インクは、装置内に配置された吐出受け(廃インクタンク)に収容される。
【0004】
近年インクジェット記録装置の普及はめざましく、例えば、CAD図面の印刷等に用いられる最大A0サイズの用紙への印刷が可能な幅広の業務用インクジェット記録装置が広まっている。
このような装置は、個人ユーザに比べ、使用頻度や印刷枚数が大きいのが特徴であり、業務用として求められるニーズに対応するために十分な耐久性、耐用年数を備え、形状も大型化する傾向にある。例えば、CAD用図面の出力はコピーセンターなどでも行われており、印字不良のない良好な品質と高い生産性が求められ、且つメンテナンス時間を短縮するための高耐久性も求められている。
【0005】
一方、業務用のインクジェット記録装置としては小型化が求められており、生産性と装置寿命に見合う廃インク量を収容し得る程度の大型の廃インクタンクを配置することが困難になっている。すなわち、従来のインクジェット記録装置においては、廃インクタンクの容量を大容量に設定した場合、装置の大型化を招き、小型化に対応できなくなる。
【0006】
これに対し、複数の廃インクタンクを装置内の空きスペース内に分散配置することにより、装置の大型化を回避しながら、廃インク収容量を十分に確保することができる装置が提案されている。
【0007】
例えば、特許文献1では、記録ヘッドの走査領域の少なくとも両側に、記録ヘッドより吐出されるインクを受容するインク受容部材を設け、記録ヘッドの走査中に予備吐出が指示されると、その記録ヘッドによる記録走査が終了する時点の記録ヘッドの位置を検出し、その検出された位置とインク受容部材のそれぞれとの距離を算出し、算出された距離が短い方のインク受容部材を選択し、その選択されたインク受容部材の位置まで記録ヘッドを移動して予備吐出を実行するように動作する装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヘッドの状態を維持回復するために記録に寄与しない液滴を吐出する空吐出の実行にあたり、複数の廃インクタンク(吐出受け)から、液体吐出ヘッドを搭載したキャリッジの位置に近いものを選択する態様においては、キャリッジの走査方向と逆方向に移動して空吐出を行う場合があり、生産性が低下してしまうという問題がある。また、同一画像の連続印刷が続いた場合に、一方の廃インクタンクへの空吐出が集中してしまうという問題がある。
さらに、上述のような幅広の装置では、1回の走査終了までの時間も長くなるため、画一的に決められた手順に従って空吐出が行われる場合は、空吐出の指示から空吐出が実行されるまでの間にインクの増粘度が上昇してしまい、吐出不良を招くことがある。
【0009】
そこで本発明は、幅広の装置においても、吐出不良を招くことなく効率よく記録に寄与しない液滴の吐出を実行することができる液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを前記記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に往復走査させる駆動部と、前記記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、前記ノズルからの液滴を受容する吐出受けと、記録に寄与しない液滴を前記吐出受けに吐出させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出受けへの吐出の実行が必要となるタイミングと該タイミングにおける前記キャリッジの位置を予測し、予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、n回目の走査方向上流側の前記吐出受けよりもn回目の走査方向下流側の前記吐出受けに近い場合は、n回目の走査後に前記吐出受けに対して吐出させ、予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、n回目の走査方向下流側の前記吐出受けよりもn回目の走査方向上流側の前記吐出受けに近い場合は、(n-1)回目の走査後に前記吐出受けに対して吐出させることを特徴とする。
また、本発明の液体を吐出する装置は、記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジと、前記キャリッジを前記記録媒体の搬送方向と直交する主走査方向に往復走査させる駆動部と、前記記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、前記ノズルからの廃液を受容する吐出受けと、記録に寄与しない液滴を前記吐出受けに吐出させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出受けへの吐出の実行が必要となるタイミングと、該タイミングにおける前記キャリッジの位置を予測するとともに、吐出の対象となる前記吐出受けを特定し、予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、対象とされた前記吐出受けに対してn回目の走査方向の上流側にある場合は、n回目の走査後に対象とされた前記吐出受けに吐出させ、予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測された前記キャリッジの位置が、対象とされた前記吐出受けに対してn回目の走査方向の下流側にある場合は、(n-1)回目の走査後に対象とされた前記吐出受けに吐出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、幅広の装置においても、吐出不良を招くことなく、効率よく記録に寄与しない液滴の吐出を実行することができる液体を吐出する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る液体を吐出する装置の一例を概略的に示す上面図である。
【
図2】液体を吐出する装置における空吐出動作の一例を示す説明図である。
【
図3】液体を吐出する装置における空吐出動作の一例を示す説明図である。
【
図4】インク放置時間と粘度の関係を示すグラフである。
【
図5】本発明に係る液体を吐出する装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図6】本発明に係る液体を吐出する装置の印字の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】本発明に係る液体を吐出する装置における吐出制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明に係る液体を吐出する装置における吐出制御の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】制御部における吐出受けを特定する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】制御部における吐出の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図11】制御部における吐出受けを特定する流れの一例を示すフローチャートである。
【
図12】制御部における吐出の制御の一例を示すフローチャートである。
【
図13】本発明に係る液体を吐出する装置の印字の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置および吐出制御方法について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0014】
図1は本発明の液体を吐出する装置の一実施形態に係るインクジェット記録装置の外観及び内部構成を示す上面図である。
本発明に係る液体を吐出する装置は、記録媒体上に液滴を吐出するためのノズルを有する液体吐出ヘッド8と、液体吐出ヘッド8を搭載するキャリッジ3と、キャリッジ3を記録媒体の搬送方向Sと直交する主走査方向Dに往復走査させる駆動部と、記録媒体の搬送領域外の主走査方向の上流側及び下流側にそれぞれに配置され、ノズルからの廃液を受容する吐出受け7(7a、7b)と、記録に寄与しない液滴を吐出受け7に吐出させる制御部と、を備える。記録に寄与しない液滴の吐出は、すなわち記録媒体以外への液滴の吐出である。
【0015】
図1に示す装置の印字機構部は、左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド9でキャリッジ3を主走査方向に摺動自在に保持し、このキャリッジ3にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する液体吐出ヘッド8を、インク滴吐出方向(ノズルからの吐出方向)を下方に向けて装着している。
【0016】
キャリッジ3から離間した装置本体内の適所には、液体吐出ヘッド8に各色のインクを供給するためのインクインクタンク(インクカートリッジ)を着脱自在に配置し、インク供給チューブによって液体吐出ヘッド8にインクを供給するように構成している。キャリッジ3に搭載されたサブタンクが、インク供給チューブを介して、インクタンク(インクカートリッジ)と接続され、インクタンク(インクカートリッジ)からインクの供給を受ける。
【0017】
キャリッジ3を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ1で回転駆動される駆動プーリと従動プーリとの間にタイミングベルト2を張装し、このタイミングベルト2をキャリッジ3に固定して駆動力を伝達させている。
さらに、主走査エンコーダ4及び主走査エンコーダシート5を備えている。
【0018】
液体吐出ヘッド8として、本実施形態は各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドを用いてもよい。さらに、液体吐出ヘッド8は、圧電素子などの電気機械変換素子によって液室(インク流路)壁面を形成する振動板を変形させることによりインクを加圧するピエゾ型のもの、或いは発熱抵抗体による膜沸騰でバブルを生じさせてインクを加圧するバブル型のもの、若しくはインク流路壁面を形成する振動板とこれに対向する電極との間の静電力で振動板を変位させてインクを加圧する静電型のものなどを使用することができる。
【0019】
記録媒体を搬送する搬送機構は、搬送ローラを備え、搬送ローラは副走査モータ15によってギヤ列を介して回転駆動される。
また、記録媒体を切断するカッター13と、カッター13を駆動するカッターモータ114を備えている。
【0020】
キャリッジ3の移動方向左右両端側(主走査方向の上流側及び下流側)の待避位置には、夫々液体吐出ヘッド8の信頼性を維持、回復するための維持回復ユニット6を配置している。
以下、液体吐出ヘッド8のノズルから、記録に寄与しない液滴を所定のタイミングで吐出させることによってノズルの機能回復を図る動作を、「空吐出」という。
空吐出は、吐出不良や目詰まりを解消するための吐出であり、記録媒体以外への液滴の吐出である。例えば、増粘したインクを記録媒体以外へ吐出させる動作である。
キャリッジ3は電源投入直後や、印字ジョブ間の待機中や、印字ジョブ中におけるメンテナンス時には、待避位置(以下、空吐出位置ともいう)に移動され、キャッピングや空吐出などによって液体吐出ヘッド8のノズル部が清掃される。
なお、キャッピングとは、液体吐出ヘッドのノズル部をキャッピングした状態でポンプによってノズルに溜まった劣化インク等を吸引することによりノズルの機能を回復させる動作である。
【0021】
本発明に係る液体を吐出する装置の制御部の構成を示すブロック図を
図5に示す。
制御部10は、各種制御対象の制御を司るCPU16と、CPU16とデータバスによって接続された不揮発性メモリ17、空吐出指令回路19、主走査モータ動作指令回路18を備える。CPU16は、貯留量センサ12からの検知信号、または不揮発性メモリ17に記憶した空吐出回数等に基づいて、吐出受け7の状況を判定する。
【0022】
空吐出指令回路19は、液体吐出ヘッド8に対して空吐出を指令する信号を出力する。
主走査モータ動作指令回路18は、駆動部11に対して、主走査モータドライバを制御して主走査モータを駆動する信号を出力する。
即ち、CPU16が空吐出指令回路19に空吐出の指令を行うことによって、空吐出指令回路19からの出力信号が液体吐出ヘッド8に与えられ、インクの空吐出が行われる。空吐出の通算回数は、不揮発性メモリ17に記憶される。
また、CPU16が駆動部11に対して指令を行うことによって、主走査モータ動作指令回路18からの出力信号が主走査モータドライバから主走査モータに与えられ、主走査モータが回転し、キャリッジ3が主走査方向に移動する。
【0023】
図2は及び
図3は、液体を吐出する装置における空吐出動作の一例を示す説明図である。
キャリッジ3による印字が行われる記録媒体20の搬送路に相当する記録媒体搬送領域Rから待避した左右両サイドには、吐出受け7(7a、7b)が設けられている。吐出受け7は、空吐出位置においてノズルから吐出された廃液(以下、「廃インク」ともいう)30を受容し、貯留する。
図中、吐出受け7a及び7bとの間の距離をLで表し、吐出受け7aに近い側をLa、吐出受け7bに近い側をLbで表している。
また、主走査方向Dの1回毎の走査をD1~D4で示し、空吐出のタイミング(空吐出実行信号)を符合40で模式的に示している。
【0024】
本実施形態の装置は、廃インク30の貯留量を検知するための貯留量センサ12を備えている。なお、貯留量センサ12以外にも、空吐出の回数をカウントすることによって廃インク30の貯留状況を予測することも可能である。
【0025】
図2は、841mm幅の記録媒体(用紙)20に印字を行う例を示した説明図である。印字領域をPで示している。
図中D1で示す1回目の走査(往路1)、D2で示す2回目の走査(復路1)、D3で示す3回目の走査(往路2)、D4で示す4回目の走査(復路2)の順に印字が行われる。
【0026】
D3で示す3回目の走査中に、40aで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測された場合、D3で示す3回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7aに空吐出が行われる。空吐出実行後は、次のD4で示す4回目の走査が開始される。
【0027】
一方、D3で示す3回目の走査中に、40bで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測された場合、従来の装置では、D3で示す3回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7aに空吐出が行われる。
このように、従来の装置では、予測されたキャリッジの位置にかかわらず、下流側の吐出受け7aに対して空吐出が行われる。
ここで、上流側(図中右側)の吐出受け7bに空吐出を行った場合は、キャリッジ3の逆方向の無駄な移動が発生し、生産性を低下させることとなる。よって、印字動作における走査方向の下流側に移動することが好ましい。
しかしながら、同一画像の連続印刷が続く場合等、一方の吐出受けに対してのみ空吐出が行われることがある。また、予測されたタイミングから空吐出を実行するまでの時間が長くなると、インクの粘度が高くなり、吐出不良を招くおそれがある。
【0028】
図3(A)は、
図2の半分の幅の記録媒体(用紙)20に印字を行う例を示した説明図であり、
図3(B)は、
図2と同じ幅の記録媒体(用紙)に、異なる印字領域Pの印字を行う例を示した説明図である。
図2と同様、図中D1で示す1回目の走査(往路1)、D2で示す2回目の走査(復路1)、D3で示す3回目の走査(往路2)、D4で示す4回目の走査(復路2)の順に印字が行われる。
【0029】
図3(A)において、D3で示す3回目の走査中に40aで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測された場合、従来の装置では、生産性を低下させないためにキャリッジ3は走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置には移動せず、印字終わりまたは記録媒体20の端部で折り返し、復路のD4で示す4回目の走査が開始され、4回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中右側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7bに空吐出が行われる。
【0030】
図3(B)において、D3で示す3回目の走査中に、40aで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測された場合、従来の装置では、D3で示す3回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7aに空吐出が行われる。
印字領域Pが全面でないD1からD2の走査では、
図3(A)と同様に印字終わりで折り返し、キャリッジ3は走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置には移動しない。
【0031】
このように従来の装置では、記録媒体20のサイズや印字領域Pによって空吐出の対象となる吐出受け7が決められる。そのため、空吐出がどのタイミングで予測されても一方の吐出受けのみが使用される態様においては、一方の吐出受けの廃インク30が満杯となってしまう等の問題が生じる。また、予測されたタイミングから空吐出を実行するまでの時間が長くなる場合は、インクの粘度が高くなり、吐出不良を招くという問題が生じる。
【0032】
そこで、本発明に係る液体を吐出する装置の第1の実施形態は、制御部10が、空吐出の実行が必要となるタイミングと該タイミングにおけるキャリッジ3の位置を予測し、予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、n回目の走査方向上流側の吐出受け7よりもn回目の走査方向下流側の吐出受け7に近い場合は、n回目の走査終了時に吐出受け7に対して空吐出させ、予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、n回目の走査方向下流側の吐出受けよりもn回目の走査方向上流側の吐出受け7に近い場合は、(n-1)回目の走査終了時に吐出受け7に対して空吐出させる。
【0033】
本実施形態の液体を吐出する装置は、
図2に示す態様において、D3で示す3回目の走査中に、40aで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測された場合、D3で示す3回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7aに空吐出が行われる。
一方、D3で示す3回目の走査中に、40bで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測された場合、D2で示す2回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中右側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7bに空吐出が行われる。
このように、本実施形態の液体を吐出する装置によれば、幅広の装置においても、吐出不良を招くことなく効率よく空吐出を実行することができる。
【0034】
また、本発明に係る液体を吐出する装置の第2の実施形態は、制御部10が、空吐出の実行が必要となるタイミングと、該タイミングにおけるキャリッジ3の位置を予測するとともに、空吐出の対象となる吐出受け7を特定し、予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、対象とされた吐出受け7に対してn回目の走査方向の上流側にある場合は、n回目の走査時に対象とされた吐出受け7に空吐出させ、予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、対象とされた吐出受け7に対してn回目の走査方向の下流側にある場合は、(n-1)回目の走査時に対象とされた吐出受け7に空吐出させる。
【0035】
本実施形態の液体を吐出する装置は、
図2に示す態様において、D3で示す3回目の走査中に、40aで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測され、対象の吐出受け7aが特定された場合、キャリッジ3の位置は対象の吐出受け7aに対して上流側にあるため、D3で示す3回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中左側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7aに空吐出が行われる。
一方、D3で示す3回目の走査中に、40bで示す位置において空吐出実行のタイミングが予測され、対象の吐出受け7bが特定された場合、キャリッジ3の位置は対象の吐出受け7bに対して下流側にあるため、D2で示す2回目の走査後にキャリッジ3が走査方向下流側(図中右側)の空吐出位置に移動し、吐出受け7bに空吐出が行われる。
このように、本実施形態の液体を吐出する装置によれば、幅広の装置においても、吐出不良を招くことなく効率よく空吐出を実行することができる。
【0036】
図4は、インク放置時間と粘度の関係を示すグラフである。
縦軸が粘度、横軸は未吐出のインクの放置時間を示し、グラフ上部の矢印は、時間T1、T2及びT3のタイミングで実施された空吐出を示している。
印字中のインク粘度の上昇は、未吐出時または吐出量が少ない条件下において、放置時間と比例関係にある。一定の放置時間が経過したところで空吐出を実行することにより、ノズル面近傍の未吐出のインクの粘度を低下させることができる。
放置時間は、キャリッジ3の移動距離または移動時間から推定可能であるため、空吐出のタイミングとキャリッジ3の位置を予測することができる。
空吐出の実行後、または途中で印字が発生した時は、計上する放置時間をリセットする。
【0037】
本発明に係る液体を吐出する装置における空吐出の制御の流れを
図6~
図8に示す。
図6は、印字中に空吐出の実行が必要となった場合の全体の流れを示したフローチャートである。
まず、印字データを取得し(ステップS01)、記録媒体のサイズに関する情報を取得し(ステップS02)、印字位置に関する情報を取得する(ステップS03)。そして、キャリッジ3の移動時間の情報を取得し(ステップS04)、未吐出のインクの放置時間の情報を取得する(ステップS05)。
これらの取得した情報に基づき、空吐出を実行する(ステップS06)。空吐出の流れは
図7及び
図8のフローチャートに示す。そして、空吐出実行情報を不揮発性メモリ17に記録し(ステップS07)、インク放置時間をリセットする(ステップS08)。
印字を継続するか判断し、継続する場合はステップS01に戻り、継続しない場合は終了する。
【0038】
図7は、第1の実施形態における空吐出の流れを示したフローチャートであり、
図6のステップS06に対応する流れである。
まず、取得した情報に基づき空吐出の実行の要否を判断する(ステップS11)。空吐出の実行が必要と判断された場合、そのタイミングと該タイミングにおけるキャリッジ3の位置を予測する(ステップS12)。
予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、走査方向上流側の吐出受け7よりも走査方向下流側の吐出受け7に近いかを判断し(ステップS13)、下流側に近いと判断した場合は、n回目の走査後に空吐出を実行する処理を行い(ステップS14)、これに従い空吐出を実行する(ステップS15)。一方、上流側に近いと判断した場合は、(n-1)回目の走査後に空吐出を実行する処理を行い(ステップS16)、これに従い空吐出を実行する(ステップS15)。
【0039】
このように、本実施形態の空吐出制御方法は、制御部10が、空吐出の実行が必要となるタイミングと該タイミングにおけるキャリッジ3の位置を予測するステップと、予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、n回目の走査方向上流側の吐出受け7よりもn回目の走査方向下流側の吐出受け7に近い場合は、n回目の走査後に空吐出させ、予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、n回目の走査方向下流側の吐出受け7よりもn回目の走査方向上流側の吐出受け7に近い場合は、(n-1)回目の走査後に空吐出させるステップと、を有する。
【0040】
図8は、第2の実施形態における空吐出の流れを示したフローチャートであり、
図6のステップS06に対応する流れである。
まず、取得した情報に基づき空吐出の実行の要否を判断する(ステップS21)。空吐出の実行が必要と判断された場合、そのタイミングと該タイミングにおけるキャリッジ3の位置を予測し(ステップS22)、空吐出の対象となる吐出受け7を特定する(ステップS23)。
予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、対象の吐出受け7に対して走査方向上流側にあるかを判断し(ステップS24)、上流側にあると判断した場合は、n回目の走査後に空吐出を実行する処理を行い(ステップS25)、これに従い空吐出を実行する(ステップS26)。一方、対象の吐出受け7に対して走査方向の下流側にあると判断した場合は、(n-1)回目の走査後に対象の吐出受け7に対して空吐出を実行する処理を行い(ステップS27)、これに従い空吐出を実行する(ステップS26)。
【0041】
このように、本実施形態の空吐出制御方法は、制御部10が、空吐出の実行が必要となるタイミングと、該タイミングにおける前記キャリッジ3の位置を予測するとともに、空吐出の対象となる吐出受け7を特定するステップと、予測されたタイミングがn(nは2以上の整数)回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、対象とされた吐出受け7に対してn回目の走査方向の上流側にある場合は、n回目の走査後に対象とされた吐出受け7に空吐出させ、予測されたタイミングがn回目の走査時であり、予測されたキャリッジ3の位置が、対象とされた吐出受け7に対してn回目の走査方向の下流側にある場合は、(n-1)回目の走査後に対象とされた吐出受け7に空吐出させるステップと、を有する。
【0042】
空吐出は、印字動作に影響しないよう実行されることが好ましい。
空吐出のタイミングを検知してから実行までに時間を要すると、吐出異常を招く場合があるため、対象の吐出受け7の特定や変更等は事前に予測して対応することが好ましい。また、空吐出の頻度や量についても、適切に制御されることが好ましい。
以下、
図7及び
図8に示したフローチャートにおいて、空吐出を実行する処理から空吐出実行のステップにおいて、制御部10が行う処理の例について説明する。
【0043】
(制御例1)
幅広の装置において小サイズの記録媒体に連続して印刷を行う場合や、同一画像を連続して印刷する場合、主走査方向の一端側の吐出受けにおける廃液の受容頻度が高くなる場合がある。これにより、吐出受けの交換頻度にばらつきが生じる。また一方の吐出受けが早くに満杯となり、印刷が中断してしまうことがある。
これに対し、本実施形態の液体を吐出する装置は、制御部10が、吐出受け7の廃液30の受容頻度を参照し、次回の空吐出の対象とされた吐出受け7の廃液30の受容頻度が、他の吐出受け7の廃液30の受容頻度よりも高い場合、次回の空吐出のタイミングが到来する前に、他の吐出受け7に空吐出させる。
【0044】
図9は制御例1の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、対象の吐出受けを「7a」、他の吐出受けを「7b」と表す。
制御部10は、吐出受け7a、7bの受容頻度情報を取得する(ステップS31)。取得した情報に基づき、次回の空吐出の対象とされた吐出受け7aの廃液受容頻度が他の吐出受け7bよりも高いかを判断し(ステップS32)、高い場合は他の吐出受け7bに吐出受けを実行する処理を行う(ステップS33)。
このような処理を行うことにより、複数の吐出受け7a、7bの間で廃液の受容頻度のばらつきに起因した不具合の発生を防止することができる。
【0045】
(制御例2)
対応する課題は上述の制御例1と同様である。
本実施形態の液体を吐出する装置は、制御部10が、吐出受け7の廃液30の受容頻度を参照し、主走査方向一端側の吐出受け7の廃液30の受容頻度が、主走査方向他端側の吐出受け7の廃液30の受容頻度よりも高い場合、受容頻度の高い主走査方向一端側の吐出受け7への廃液の空吐出量を低減させ、残留した廃液30を受容頻度の低い主走査方向他端側の吐出受け7へ空吐出させる。
【0046】
図10は制御例2の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、対象の吐出受けを「7a」、他の吐出受けを「7b」と表す。
制御部10は、吐出受け7a、7bの受容頻度情報を取得する(ステップS41)。取得した情報に基づき、次回の空吐出の対象とされた吐出受け7aの廃液受容頻度が他の吐出受け7bよりも高いかを判断し(ステップS42)、高い場合は吐出受け7aに対する廃液の空吐出量を低減させる処理を行う(ステップS43)。一方、廃液受容頻度が低い場合、それが印字動作における最後の空吐出であるかを判断し(ステップS44)、最後の空吐出である場合は、ノズル内の残留廃液をすべて吐出させる処理を行う(ステップS45)。なお、最後の空吐出でない場合は特に限定されないが、適宜空吐出量を増加させる等の処理を行ってもよい。一方の吐出受けに対して空吐出量を低減させた分を、他方の吐出受けに対する吐出量を増加させることにより貯留量のばらつきを平均化することが好ましい。
このような処理を行うことにより、複数の吐出受け7a、7bの間で廃液の受容頻度のばらつきに起因した不具合の発生を防止することができる。
【0047】
(制御例3)
課題は上述の制御例1と同様である。特に、一方の吐出受けが早くに満杯となり、印刷が中断してしまうという課題に対応する。
具体的には、CAD図面で多く使われるA1Yサイズ(841mm幅×594mm)、A0Tサイズ(841mm幅×1189mm)、及び海外で多く使われる36インチ幅(914mm幅)の用紙への印刷は、印字面積と印字時間が大きいため、吐出受けが満杯となることで印刷が停止し、やり直しとなると、印刷再開までに大きな無駄が生じるという問題がある。
これに対し、本実施形態の液体を吐出する装置は、制御部10が、吐出受け7の廃液30の貯留量を参照し、主走査方向一端側の吐出受け7の廃液30の貯留量が規定量を超えた場合、主走査方向他端側の吐出受け7にのみ空吐出させる。
このとき、次回の空吐出のタイミングが到来する前に、走査方向他端側の吐出受け7に空吐出させる。
【0048】
図11は、制御例3の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、対象の吐出受けを「7a」、他の吐出受けを「7b」と表す。
制御部10は、吐出受け7の廃液30の貯留量情報を取得する(ステップS51)。取得した情報に基づき、対象の吐出受け7aの廃液貯留量が、予め設定した規定量以下であるかを判断する(ステップS52)。廃液貯留量が規定量を超えている場合、他の吐出受け7bに空吐出を実行する処理を行う(ステップS53)。
これにより、吐出受け7a、7bのいずれかが満杯になったことに起因して印刷動作が止まることがなく、印刷や時間の無駄を防ぐことができる。
【0049】
(制御例4)
課題は上述の制御例3と同様である。
本実施形態の液体を吐出する装置は、制御部10が、吐出受け7の廃液30の貯留量を参照し、吐出受け7の廃液30の貯留量が規定量を超えた場合、当該吐出受け7への廃液30の空吐出量を低減させる。
【0050】
図12は、制御例4の流れの一例を示すフローチャートである。
以下、対象の吐出受けを「7a」、他の吐出受けを「7b」と表す。
制御部10は、吐出受け7の廃液30の貯留量情報を取得する(ステップS61)。取得した情報に基づき、対象の吐出受け7aの廃液貯留量が、予め設定した規定量以下であるかを判断する(ステップS62)。
対象の吐出受け7aの廃液貯留量が規定量を超えている場合、代わりとなる他の吐出受け7bの廃液貯留量についても規定量を超えているかを判断する(ステップS63)。
他の吐出受け7bの廃液貯留量が規定量以下であれば、他の吐出受け7bに空吐出を実行する処理を行う(ステップS64)。
一方、他の吐出受け7bの廃液貯留量が規定量を超えている場合は、当該他の吐出受け7bに対する空吐出が連続して行われることとなるかを判断する(ステップS65)。
連続していない場合は、当該他の吐出受け7bに対して低減した空吐出量にて空吐出を実行する処理を行う(ステップS66)。連続して行われることになる場合は、当初の対象の吐出受け7aに対して低減した空吐出量にて空吐出を実行する処理を行う(ステップS67)。
これにより、吐出受け7a、7bのいずれか一方が早い時点で満杯になるのを防ぐことができ、印刷動作が止まることがなく、印刷や時間の無駄を防ぐことができる。
【0051】
(制御例5)
印字に使用されて吐出されるインクは、放置によるインク粘度の上昇は生じないため、空吐出を行う必要はない。複数の種類のインクを吐出する液体吐出ヘッドにおいて、空吐出の必要がないインクについて空吐出を行うことは、インクの無駄となる。
そこで、印刷した画像履歴からインクの放置状態および使用量を把握し、これらの情報から空吐出の要否を判断し、空吐出の実行が必要な種類のインクのみ空吐出を行うことが好ましい。
【0052】
本実施形態の液体を吐出する装置は、粘度増加速度の異なる複数の種類の液体を吐出可能であり、制御部10は、液体の種類ごとに空吐出の実行が必要となるタイミングを判断し、空吐出が必要な液体のみ空吐出させる。
【0053】
図13は、印字中に空吐出の実行が必要となった場合の全体の流れを示したフローチャートである。
まず、印字データを取得し(ステップS71)、記録媒体のサイズに関する情報を取得し(ステップS72)、印字位置に関する情報を取得する(ステップS73)。そして、キャリッジ3の移動時間の情報を取得し(ステップS74)、未吐出のインクの放置時間の情報をインクの種類ごとに取得する(ステップS75)。
これらの取得した情報に基づき、インクの種類ごとに空吐出を実行する(ステップS76)。空吐出の流れは
図7及び
図8のフローチャートに示したとおりである。
そして、空吐出実行情報を不揮発性メモリ17に記録し(ステップS77)、インク放置時間をリセットする(ステップS78)。
印字を継続するか判断し、継続する場合はステップS71に戻り、継続しない場合は終了する。
これにより、不要な空吐出によってインクが無駄になることを防ぐことができる。
【0054】
本願において、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0055】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0056】
例えば、「液体を吐出する装置」としては、上述のインクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置の他、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0057】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0058】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0059】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0060】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、上述のインクジェット用インクの他、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0061】
また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【符号の説明】
【0062】
1 主走査モータ
2 タイミングベルト
3 キャリッジ
4 主走査エンコーダ
5 主走査エンコーダシート
6 維持回復ユニット
7a、7b 吐出受け
8 液体吐出ヘッド
9 主ガイドロッド
10 制御部
11 駆動部
12 貯留量センサ
13 カッター
14 カッターモータ
15 副走査モータ
16 CPU
17 不揮発性メモリ
18 主走査モータ動作指令回路
19 空吐出指令回路
20 記録媒体
30 廃液(廃インク)
R 記録媒体搬送領域
P 印字領域
D 主走査方向
S 副走査方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】