(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240305BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240305BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240305BHJP
G01N 29/14 20060101ALI20240305BHJP
G01N 29/44 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G03G21/00 510
G03G21/00 370
B41J2/175 161
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 175
G01N29/14
G01N29/44
(21)【出願番号】P 2020101235
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】津川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 一史
(72)【発明者】
【氏名】池田 一裕
(72)【発明者】
【氏名】平田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 学
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101276(JP,A)
【文献】特開2017-078761(JP,A)
【文献】特開2019-184907(JP,A)
【文献】特開2019-120837(JP,A)
【文献】特開2009-128755(JP,A)
【文献】特開平08-305095(JP,A)
【文献】特開2006-184496(JP,A)
【文献】特開2011-017917(JP,A)
【文献】特開2007-310076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
G03G 15/08
G03G 15/00-15/02
G03G 15/04
G03G 15/16
G03G 15/20
G03G 21/16
G03G 21/18
G03G 5/00- 5/16
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
B41J 2/01-2/215
G01N 29/14
G01N 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消耗部品を着脱可能な画像形成装置であって、
前記消耗部品は、
情報を記憶可能なメモリと、
前記消耗部品の振動を示す第1振動信号を出力する第1振動センサと、
前記メモリ及び前記第1振動センサに接続されると共に、前記消耗部品の外部に露出する端子とを備え、
前記画像形成装置は、
装着された前記消耗部品の前記端子に接触するコネクタと、
前記画像形成装置の振動を示す第2振動信号を出力する第2振動センサと、
前記コネクタに接触した前記端子を通じて前記メモリにアクセスし、前記コネクタに接触した前記端子を通じて前記第1振動センサから前記第1振動信号を取得し、前記第2振動センサから前記第2振動信号を取得するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記第1振動信号及び前記第2振動信号の組み合わせに基づいて、前記端子を通じた前記メモリへのアクセスが不能になるアクセス不能時期を予測することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
情報を報知する報知部を備え、
前記コントローラは、
前記消耗部品の交換が必要になる交換時期を予測し、
前記アクセス不能時期が前記交換時期より早く到来する場合に、前記端子のメンテナンスの必要性を前記報知部を通じて報知することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1振動信号及び前記第2振動信号の組み合わせに基づいて、前記端子の摩耗の度合いを示す摩耗度を算出し、
算出した前記摩耗度が大きい程、前記アクセス不能時期が近いと予測することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1振動信号及び前記第2振動信号それぞれで示される振動の振幅が大きい程、前記摩耗度として大きな値を算出することを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1振動信号及び前記第2振動信号それぞれで示される振動の位相差が大きい程、前記摩耗度として大きな値を算出することを特徴とする請求項3または4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1振動信号及び前記第2振動信号それぞれで示される振動の時間が長い程、前記摩耗度として大きな値を算出することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記消耗部品は、媒体に塗布するトナーを収容するトナーボトル、前記媒体に塗布したトナーを定着させる定着ユニット、トナーで現像された画像を媒体に転写する転写ベルト、媒体に吐出するインクを収容するインクカートリッジのいずれかであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、交換可能なトナーユニットに収容されたトナーを用いて、媒体に画像を形成する画像形成装置が知られている。また、トナーユニットの中には、収容されたトナーの色や残量などの情報を記憶するIDチップと、IDチップに接続されると共にトナーユニットの外部に露出した端子とを備えるものがある。さらに、画像形成装置は、装着されたトナーユニットの端子に接触するコネクタと、コネクタに接触した端子を通じてIDチップにアクセス(情報の書き込み及び読み出し)するコントローラとを備える。
【0003】
ここで、端子の表面の金メッキが摩耗すると、内部のニッケル相が露出して腐食が発生する。そして、ニッケル相の腐食が進んで導電性が失われると、コントローラがIDチップにアクセスできなくなる。そこで、トナーユニットの挿抜回数や挿抜状況に基づいて、端子の劣化具合を予測する技術が知られている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置は、トナーユニットの挿抜時における端子の摩耗しか考慮しておらず、端子の劣化状況を正確に予測できているとは言い難い。そして、予測と異なるタイミングでIDチップにアクセス不能になると、画像形成装置のダウンタイムが発生するという課題がある。
【0005】
なお、このような課題は、トナーユニットのみならず、インクを収容するインクカートリッジ、定着ユニット、転写ベルトなど、画像を形成する際に徐々に消耗する様々な消耗部品に同様に生じ得る。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、メモリ及び外部からメモリにアクセスするための端子を備えた消耗部品が着脱される画像形成装置において、端子の劣化具合を適切に予測する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、消耗部品を着脱可能な画像形成装置であって、前記消耗部品は、情報を記憶可能なメモリと、前記消耗部品の振動を示す第1振動信号を出力する第1振動センサと、前記メモリ及び前記第1振動センサに接続されると共に、前記消耗部品の外部に露出する端子とを備え、前記画像形成装置は、装着された前記消耗部品の前記端子に接触するコネクタと、前記画像形成装置の振動を示す第2振動信号を出力する第2振動センサと、前記コネクタに接触した前記端子を通じて前記メモリにアクセスし、前記コネクタに接触した前記端子を通じて前記第1振動センサから前記第1振動信号を取得し、前記第2振動センサから前記第2振動信号を取得するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記第1振動信号及び前記第2振動信号の組み合わせに基づいて、前記端子を通じた前記メモリへのアクセスが不能になるアクセス不能時期を予測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メモリ及び外部からメモリにアクセスするための端子を備えた消耗部品が着脱される画像形成装置において、端子の劣化具合を適切に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】画像形成装置に着脱されるトナーボトルの外観図。
【
図7】データ収集処理で収集されるデータの例を示す図。
【
図9】摩耗度Xの値に応じたメッキ厚の時間変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、画像形成装置100の内部構成を示す概略図である。
図2は、画像形成装置100の外観斜視図である。
図3は、画像形成装置100に着脱されるトナーボトル130の外観図である。
【0011】
図1に示すように、画像形成装置100は、給紙トレイ101と、排紙トレイ102と、搬送部110と、画像形成部120とを主に備える。給紙トレイ101には、画像が形成される前の複数の用紙Mが積層された状態で収容される。排紙トレイ102には、画像が形成された用紙Mが収容される。
【0012】
用紙Mは、搬送部110によって搬送され、画像形成部120によって画像が形成される媒体の一例である。用紙Mは、例えば、予め所定の大きさ(例えば、A4、B5など)にカットされたカット紙でもよいし、長尺帯状の連帳紙でもよい。また、用紙Mは、紙に限定されず、OHPシートなどであってもよい。また、画像形成装置100の内部には、用紙Mが搬送される空間である搬送路105が形成されている。搬送路105は、給紙トレイ101から画像形成部120を経て排紙トレイ102に至る経路である。
【0013】
搬送部110は、搬送路105に沿って用紙Mを搬送する。具体的には、搬送部110は、給紙トレイ101に収容された用紙Mを、搬送路105に沿って画像形成部120の位置まで搬送する。また、搬送部110は、画像形成部120によって表面に画像が形成された用紙Mを、搬送路105に沿って排紙トレイ102に排出する。
【0014】
搬送部110は、複数の搬送ローラ111、112を含む。搬送ローラ111、112は、例えば、モータの駆動力が伝達されて回転する駆動ローラと、駆動ローラに当接して従動する従動ローラとで構成される。そして、駆動ローラ及び従動ローラで用紙Mを挟持して回転することによって、搬送路105に沿って用紙Mが搬送される。
【0015】
搬送ローラ111は、画像形成部120より搬送方向の上流側に配置されている。搬送ローラ112は、画像形成部120搬送方向の下流に配置されている。但し、搬送ローラの設置位置は、
図1の2箇所に限定されない。
【0016】
画像形成部120は、搬送ローラ111、112の間において、搬送路105に対面して配置されている。画像形成部120は、搬送部110によって搬送された用紙Mの表面に画像を形成する。実施形態に係る画像形成部120は、搬送路105に沿って搬送される用紙Mに、電子写真方式で画像を形成する。
【0017】
より詳細には、画像形成部120は、無端状移動手段である転写ベルト122に沿って各色の感光体ドラム121Y、121M、121C、121K(以下、これらを総称して、「感光体ドラム121」と表記する。)が並べられた構成を備える。すなわち、給紙トレイ101から給紙される用紙Mに転写するための中間転写画像が形成される転写ベルト122に沿って、この転写ベルト122の搬送方向の上流側から順に、複数の感光体ドラム121Y、121M、121C、121Kが配列されている。
【0018】
感光体ドラム121には、後述するトナーボトル130に収容されたドナーが供給される。そして、各色の感光体ドラム121の表面にトナーにより現像された各色の画像が、転写ベルト122に重ね合わせられて転写されることにより、フルカラーの画像が形成される。そして、転写ベルト122上に形成されたフルカラー画像は、搬送路105と最も接近する位置において、転写ローラ123で用紙Mに転写される。
【0019】
さらに、画像形成部120は、転写ローラ123より搬送方向の下流側に配置された定着ローラ124を含む。定着ローラ124は、モータによって駆動される駆動ローラと、駆動ローラに当接して従動する従動ローラとを含む。そして、駆動ローラ及び従動ローラが用紙Mを挟持して回転する過程において、用紙Mを加熱したり押圧することによって、転写ローラ123によって転写された画像が用紙Mに定着する。
【0020】
図2に示すように、画像形成装置100の正面には、開閉可能なカバー103が取り付けられている。そして、カバー103を開放すると、トナーボトル130を収容する収容部104が露出する。なお、
図2では収容部104を1つだけ図示しているが、画像形成装置100は、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーボトル130それぞれを収容する4つの収容部を備える。
【0021】
トナーボトル130は、感光体ドラム121に供給するトナーを収容する。画像形成部120が用紙Mに画像を形成する度に、トナーボトル130に収容されたトナーが減少(消耗)する。すなわち、トナーボトル130は、画像形成部120が画像を形成する度に徐々に消耗する消耗部品の一例である。
図3に示すように、トナーボトル130は、ボトル本体131と、IDチップ132と、振動センサ133(第1振動センサ)と、端子134とを主に備える。
【0022】
ボトル本体131は、内部空間にトナーを収容すると共に、収容したトナーを外部に供給する供給口を備える。IDチップ132は、情報を記憶するメモリである。IDチップ132は、情報の読み出し及び書き込みが可能で、且つ不揮発性のメモリである。IDチップ132に記憶されている情報は、例えば、トナーボトル130の型番、ボトル本体131に収容されているトナーの色及び残量などである。
【0023】
振動センサ133は、トナーボトル130の振動を検知し、検知結果(すなわち、振動の大きさ及び周期)を示す第1振動信号を出力する。端子134は、IDチップ132及び振動センサ133に電気的に接続されると共に、トナーボトル130の外部に露出する。端子134は、例えば、ニッケル相を金メッキして形成される。
【0024】
図4は、画像形成装置100(MFP:Multifunction Peripheral/Product/Printer)のハードウェア構成図である。
図4に示されているように、画像形成装置100は、コントローラ210、近距離通信回路220、エンジン制御部230、操作パネル240、ネットワークI/F250を備えている。
【0025】
これらのうち、コントローラ210は、コンピュータの主要部であるCPU201、システムメモリ(MEM-P)202、ノースブリッジ(NB)203、サウスブリッジ(SB)204、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)206、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)207、HDDコントローラ208、及び、記憶部であるHD209を有し、NB203とASIC206との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス221で接続した構成となっている。
【0026】
これらのうち、CPU201は、画像形成装置100の全体制御を行う制御部である。NB203は、CPU201と、MEM-P202、SB204、及びAGPバス221とを接続するためのブリッジであり、MEM-P202に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタ及びAGPターゲットとを有する。
【0027】
MEM-P202は、コントローラ210の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM202a、プログラムやデータの展開、及びメモリ印刷時の描画用メモリなどとして用いるRAM202bとからなる。なお、RAM202bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0028】
SB204は、NB203とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC206は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス221、PCIバス222、HDDコントローラ208およびMEM-C207をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC206は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC206の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C207を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などを行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、エンジン制御部230との間でPCIバス222を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC206には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0029】
MEM-C207は、コピー用画像バッファ及び符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD209は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD209は、CPU201の制御にしたがってHD209に対するデータの読出又は書込を制御する。AGPバス221は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P202に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0030】
また、近距離通信回路220には、近距離通信回路220aが備わっている。近距離通信回路220は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。
【0031】
エンジン制御部230には、搬送部110、画像形成部120、スキャナ、及びA/Dコンバータ141が接続されている。また、A/Dコンバータ141には、振動センサ142(第2振動センサ)と、コネクタ143とが接続されている。振動センサ142は、画像形成装置100の振動を検知し、検知結果(すなわち、振動の大きさ及び周期)を示す第2振動信号を出力する。コネクタ143は、収容部104に収容されたトナーボトル130の端子134に物理的に接触して導通する。
【0032】
コントローラ210は、エンジン制御部230を介して搬送部110及び画像形成部120を制御することによって、用紙Mに画像を形成する。また、コントローラ210は、振動センサ142から出力され且つA/Dコンバータ141でデジタル信号に変換された第2振動信号を、エンジン制御部230を介して取得する。
【0033】
また、接触した端子134及びコネクタ143が導通しているとき、コントローラ210は、エンジン制御部230、A/Dコンバータ141、及び接触した端子134及びコネクタ143を介して、IDチップ132にアクセス(情報の書き込み及び読み出し)する。さらに、コントローラ210は、振動センサ133から出力され且つA/Dコンバータ141でデジタル信号に変換された第1振動信号を、エンジン制御部230を介して取得する。
【0034】
一方、端子134及びコネクタ143が非接触の場合、または端子134が劣化して導電性を失った場合、コントローラ210は、IDチップ132にアクセスすることができず、振動センサ133から第1振動信号を取得することができない。
【0035】
操作パネル240は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部240a、並びに、濃度の設定条件などの画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキー及びコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル240bを備えている。
【0036】
ネットワークI/F250は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路220及びネットワークI/F250は、PCIバス222を介して、ASIC206に電気的に接続されている。コントローラ210は、ネットワークI/F250を通じて、外部装置に情報を送信し、外部装置から情報を受信することができる。
【0037】
図5は、画像形成装置100の機能ブロック図である。
図5に示すように、画像形成装置100は、データ収集部501と、摩耗度算出部502と、アクセス不能時期予測部503と、交換時期予測部504と、報知処理部505とを主に備える。
図5に示す各機能ブロック501~505は、コントローラ210内のCPU301が、HD209に記憶されているプログラムをRAM202bに展開し、演算実行することで実現される機能部である。
【0038】
データ収集部501は、画像形成装置100から各種データを収集する。より詳細には、データ収集部501は、トナーボトル130が装着された時刻及びトナー残量と、画像形成部120が画像を形成した時刻及び画像形成後のトナー残量と、振動センサ133、142から出力された振動信号から抽出した振幅a、位相差b、振動時間t、及び振動を検知した時刻などを収集する。データ収集部501の処理の詳細は、
図6及び
図7を参照して後述する。
【0039】
摩耗度算出部502は、データ収集部501が収集したデータに基づいて、端子134の摩耗度Xを算出する。摩耗度Xは、端子134の摩耗の度合いを示す数値である。摩耗度Xは、数値が大きいほど摩耗の度合いが大きく、数値が小さいほど摩耗の度合いが小さいことを示す。
【0040】
アクセス不能時期予測部503は、摩耗度算出部502が算出した摩耗度Xに基づいて、アクセス不能時期P1を予測する。アクセス不能時期P1は、接触した端子134及びコネクタ143を通じて、コントローラ210がIDチップ132にアクセスできなくなるまでの期間を示す。換言すれば、端子134が導電性を失うまでの期間を示す。アクセス不能時期P1は、現時点(予測した時点)からアクセス不能になるまでの時間を表す。
【0041】
交換時期予測部504は、データ収集部501が収集したデータに基づいて、交換時期P2を予測する。交換時期P2は、収容部104に収容されているトナーボトル130の交換が必要になる時期を指す。換言すれば、交換時期P2は、ボトル本体131に収容されているトナーの量が閾値量(画像形成を継続するのに必要な最低限の量)未満になる時期を指す。交換時期P2は、現時点(予測した時点)から交換が必要になるまでの時間を表す。
【0042】
報知処理部505は、アクセス不能時期予測部503が予測したアクセス不能時期P1と、交換時期予測部504が予測した交換時期P2とに基づいて、トナーボトル130(より詳細には、端子134)のメンテナンスの必要性を報知する。報知処理部505は、例えば、パネル表示部240aに情報を表示させてもよいし、ネットワークI/F250を通じて外部装置に情報を送信してもよい。パネル表示部240a及びネットワークI/F250は、報知部の一例である。
【0043】
次に、
図6及び
図7を参照して、データ収集部501が実行するデータ収集処理を説明する。
図6は、データ収集処理のフローチャートである。
図7は、データ収集処理で収集されるデータの例を示す図である。なお、
図7において、破線が第1振動信号で示される波形であり、実線が第2振動信号で示される波形である。データ収集処理は、例えば、画像形成装置100の電源がONのときに、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0044】
まず、データ収集部501は、画像形成装置100にトナーボトル130が装着された場合に(S601:Yes)、トナー残量R及び収集時刻Tを収集し、収集したトナー残量R及び収集時刻Tを対応付けてHD209に記憶させる(S602)。トナーボトル130が装着されたことは、例えば、コネクタ143と端子134とが導通したことによって検知してもよいし、トナーボトル130の着脱を検知するセンサによって検知してもよい。
【0045】
データ収集部501は、例えば、コネクタ143に接触した端子134を通じて、IDチップ132からトナー残量R0(例えば、100%)を読み出せばよい。また、データ収集部501は、トナー残量R0を読み出した時刻を収集時刻T0とすればよい。
【0046】
また、データ収集部501は、画像形成部120に画像を形成させた場合に(S603:Yes)、トナー残量R及び収集時刻Tを収集し、収集したトナー残量R及び収集時刻Tを対応付けてHD209に記憶させる(S604)。
【0047】
データ収集部501は、例えば、IDチップ132に記憶されているトナー残量R0(例えば、100%)から、今回の画像形成で消費したトナー量(例えば、10%)を減じて、画像形成後のトナー残量R1(例えば、90%)を算出すればよい。また、データ収集部501は、トナー残量R1を算出した時刻を収集時刻T1とすればよい。さらに、データ収集部501は、算出したトナー残量R1をIDチップ132に書き込む。
【0048】
さらに、データ収集部501は、画像形成装置100及びトナーボトル130の振動を検知した場合に(S605:Yes)、当該振動の振幅a、位相差b、振動時間t、及び収集時刻Tを収集し、収集した振幅a、位相差b、振動時間t、及び収集時刻Tを対応付けてHD209に記憶させる(S606)。
【0049】
データ収集部501は、例えば、振動信号で示される振動の振幅aが閾値以上になった場合に、振動が発生したと判断すればよい。また、データ収集部501は、例えば、振動信号で示される振動の振幅aが閾値未満の状態が閾値期間継続した場合に、振幅aが最初に閾値未満になった時刻(すなわち、閾値期間の始期)に、振動が終了したと判断すればよい。そして、データ収集部501は、例えば、振動の発生から終了までの時間を振動時間tとし、振動が終了した時刻を収集時刻Tとすればよい。
【0050】
また、データ収集部501は、例えば、振動時間t内において、画像形成装置100及びトナーボトル130の振動の振幅の最大値を、振幅aとすればよい。さらに、データ収集部501は、例えば、振動時間t内において、画像形成装置100の振動と、トナーボトル130の振動との位相差の最大値を、位相差bとすればよい。但し、振幅a及び位相差bは、最大値に限定されず、平均値、中央値(これらを総称して、「代表値」と表記する。)などであってもよい。
【0051】
なお、画像形成装置100及びトナーボトル130が振動するのは、例えば、画像形成装置100に対するトナーボトル130の着脱時、画像形成時、給紙トレイ101の挿抜時などが挙げられる。すなわち、データ収集部501は、ステップS602、S606の処理を同時に実行することがあり、ステップS604、S606の処理を同時に実行することがある。
【0052】
次に、
図8及び
図9を参照して、摩耗度算出部502、アクセス不能時期予測部503、交換時期予測部504、及び報知処理部505が実行する予測処理を説明する。
図8は、予測処理のフローチャートである。
図9は、摩耗度Xの値に応じたメッキ厚の時間変化を示す図である。予測処理は、例えば、画像形成装置100の電源がONのときに、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0053】
まず、摩耗度算出部502は、データ収集部501が収集した振幅a、位相差b、振動時間tと、予め定められた係数cとに基づいて、下記式1を用いて摩耗度Xを算出する(S801)。係数cは、端子134を構成する金属の種類、メッキの厚さ、形状などに基づいて、予め定められた正の値である。また、HD209に複数の振幅a、位相差b、振動時間tが記憶されている場合、摩耗度算出部502は、各パラメータa、b、tの代表値(すなわち、最大値、平均値、中央値のいずれか)を式1に代入すればよい。
【0054】
X = a × b × c × t ・・・・(式1)
【0055】
式1を参照すれば明らかなように、摩耗度算出部502は、振幅aが大きいほど摩耗度Xとして大きな値を算出し、位相差bが大きいほど摩耗度Xとして大きな値を算出し、振動時間tが長いほど摩耗度Xとして値を算出する。そして、摩耗度算出部502は、算出した摩耗度Xをアクセス不能時期予測部503に引き渡す。
【0056】
但し、摩耗度Xの算出式は、前述の式1に限定されない。すなわち、摩耗度算出部502は、第1振動信号及び第2振動信号から抽出される情報(前述の例では、振幅a、位相差b、及び振動時間t)に基づいて、摩耗度Xを算出すればよい。換言すれば、摩耗度算出部502は、第1振動信号及び第2振動信号の組み合わせに基づいて、摩耗度Xを算出すればよい。
【0057】
次に、アクセス不能時期予測部503は、摩耗度算出部502が算出した摩耗度Xと、
図9に示されるメッキ厚の時間変化とに基づいて、アクセス不能時期P
1を予測する(S802)。
図9を参照すると、端子134のメッキ厚は、時間の経過と共に減少する。また、X
1<X
2<X
3<X
4なので、摩耗度Xが大きいほどメッキ厚の減少率(単位時間当たりの減少量)が大きくなる。
図9に示す関係は、HD209などに予め記憶されている。
【0058】
アクセス不能時期予測部503は、例えば、ステップS801で算出された摩耗度Xと、閾値X
1、X
2、X
3、X
4とを比較することによって、
図9に示す複数の傾向線のうちの1つを選択する。次に、アクセス不能時期予測部503は、選択した傾向線において、メッキ厚が閾値厚さW
thとなる時間をアクセス不能時期P
1と予測する。閾値厚さW
thは、端子134が導電性を保つことができる最小限のメッキ厚であって、予め定められた値である。そして、アクセス不能時期予測部503は、予測したアクセス不能時期P
1を報知処理部505に引き渡す。
【0059】
また、交換時期予測部504は、データ収集部501が収集したトナー残量R及び収集時刻Tに基づいて、交換時期P
2を予測する(S803)。交換時期予測部504は、例えば
図7において、トナーボトル130が装着されたときのトナー残量R
0及び収集時刻T
0と、直近に記憶されたトナー残量R
1及び収集時刻T
1とを下記式2に代入して、交換時期P
2を予測すればよい。
【0060】
P2 = (T1-T0) × R0 / (R0-R1) ・・・(式2)
【0061】
そして、交換時期予測部504は、予測した交換時期P
2を報知処理部505に引き渡す。なお、ステップS802、S803は、
図8に示す実行順序に限定されず、逆順でもよいし、並行して実行されてもよい。
【0062】
次に、報知処理部506は、アクセス不能時期予測部503から取得したアクセス不能時期P1と、交換時期予測部504から取得した交換時期P2とを比較する(S804)。そして、報知処理部506は、アクセス不能時期P1が交換時期P2より早く到来する場合に(S804:Yes)、トナーボトル130(より詳細には、端子134)のメンテナンスの必要性を報知する。一方、報知処理部506は、交換時期P2がアクセス不能時期P1より早く到来する場合に(S804:No)、ステップS805の処理を実行せずに、予測処理を終了する。
【0063】
ステップS805における報知の具体的な方法は特に限定されないが、報知処理部506は、例えば、パネル表示部240aにメッセージを表示させてもよいし、ネットワークI/F250を通じて外部装置(例えば、サービス拠点の監視端末、サービスマンの携帯端末)にメッセージを送信してもよい。
【0064】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0065】
上記の実施形態によれば、画像形成装置100及びトナーボトル130それぞれの振動の挙動に基づいてアクセス不能時期P1を予測するので、IDチップ132にアクセスできなくなる時期を正確に予測することができる。
【0066】
そして、IDチップ132にアクセスできなくなる前にメンテナンスを報知することによって、画像形成装置100のダウンタイムの発生を防止することができる。なお、報知処理部505は、ステップS805において、アクセス不能時期P1が閾値時期より短い場合に報知を実行し、アクセス不能時期P1が閾値時期より長い場合に報知をスキップしてもよい。これにより、現実にメンテナンスな必要になったタイミングで報知を行うことができる。
【0067】
一方、アクセス不能時期P1より交換時期P2が早く到来する場合は、IDチップ132にアクセスできなくなる前にトナーボトル130そのものが交換されるので、報知の必要はない。このように、メンテナンスが必要な場合にのみ報知を行うことによって、サービスマンの作業負担を軽減することができる。
【0068】
なお、上記の実施形態では、トナーボトル130に搭載されたIDチップ132へのアクセス不能時期P1を予測する例を説明したが、本発明の適用範囲はトナーボトル130に限定されない。他の例として、媒体に塗布したトナーを定着させる定着ユニット、トナーで現像された画像を媒体に転写する転写ベルト122にも適用することができる。さらに、画像形成装置100がインクジェット記録方式の場合は、媒体に吐出するインクを収容するインクカートリッジにも適用することができる。すなわち、本発明は、画像形成装置100に着脱可能で、且つ媒体に画像を形成する際に徐々に消耗する様々な消耗部品に広く適用することができる。
【0069】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0070】
明細書中の対応テーブル(表)は、機械学習の学習効果によって生成されたものでもよい。また、各パラメータを機械学習にて分類付けすることで、対応テーブルを使用しなくてもよい。ここで、機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり,コンピュータが,データ識別等の判断に必要なアルゴリズムを,事前に取り込まれる学習データから自律的に生成し,新たなデータについてこれを適用して予測を行う技術のことをいう。機械学習のための学習方法は、教師あり学習、教師なし学習、半教師学習、強化学習、深層学習のいずれかの方法でもよく、さらに、これらの学習方法を組み合わせた学習方法でもよく、機械学習のための学習方法は問わない。
【0071】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
100 :画像形成装置
101 :給紙トレイ
102 :排紙トレイ
103 :カバー
104 :収容部
110 :搬送部
111,112 :搬送ローラ
120 :画像形成部
121 :感光体ドラム
122 :転写ベルト
123 :転写ローラ
124 :定着ローラ
130 :トナーボトル
131 :ボトル本体
132 :IDチップ
133,142 :振動センサ
134 :端子
141 :A/Dコンバータ
143 :コネクタ
201 :CPU
202a :ROM
202b :RAM
206 :ASIC
208 :HDDコントローラ
210 :コントローラ
220 :近距離通信回路
221 :AGPバス
222 :PCIバス
230 :エンジン制御部
240 :操作パネル
240a :パネル表示部
240b :操作パネル
250 :ネットワークI/F
301 :CPU
501 :データ収集部
502 :摩耗度算出部
503 :アクセス不能時期予測部
504 :交換時期予測部
505 :報知処理部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】