(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240305BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20240305BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
G03G15/20 505
G03G15/20 555
G03G15/00 303
G03G21/20
(21)【出願番号】P 2020112624
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】川端 圭輔
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-187816(JP,A)
【文献】特開2009-237203(JP,A)
【文献】特開2017-044953(JP,A)
【文献】特開2019-215428(JP,A)
【文献】特開2009-288275(JP,A)
【文献】特開2017-198851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
13/34
15/00
15/20
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向を有すると共に互いに圧接してニップを形成する加熱部材と加圧部材が筐体内に収容され、当該筐体は前記長手方向を横断する方向で対向する入口と出口を有し、当該入口から出口に向かって搬送されるシート部材を前記ニップに通すことで当該シート部材に前記加熱部材から熱伝達する加熱装置において、
前記筐体は、前記加熱部材の長手方向両端部に向かって開口した一対の開口部と、前記加熱部材の長手方向にスライド移動可能であって、長手方向端部側に移動することで前記開口部を閉塞すると共に、長手方向中央側に移動することで前記開口部を開放するシャッター部材を有し、
送風ファンにより、前記開口部から、前記加熱部材の長手方向端部に向けて冷却風が吹き込み可能とされ、
前記加熱部材の長手方向中央部の温度を検知する中央温度検知部材と、前記加熱部材の長手方向端部の温度を検知する端部温度検知部材からの検知結果に基づいて、前記シャッター部材の開度と前記送風ファンの回転数が制御部によって制御され、
前記端部温度検知部材が所定の高温閾値を検知したとき、前記制御部が、前記高温閾値の検知前に比べて、前記送風ファンの回転数を増大し、かつ、前記シャッター部材を前記加熱部材の長手方向端部側に所定長さ移動することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記シャッター部材を前記加熱部材の長手方向端部側に所定長さ移動する限界を、前記シート部材の搬送方向と直交する幅方向の端部を起点とし、前記加熱部材の長手方向端部に向かって、前記加熱部材の端部高温分布のピーク位置に至るまでの距離の50%以内にしたことを特徴とする請求項1の加熱装置。
【請求項3】
前記制御部による前記シャッター部材の開度調整を、前記端部温度検知部材の検知結果に応じて、又は加熱装置の連続稼働時間に応じて行うことを特徴とする請求項1又は2の加熱装置。
【請求項4】
前記送風ファンの回転数が前記シャッター部材の開度に反比例して増減することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項の加熱装置。
【請求項5】
前記端部温度検知部材が前記高温閾値を検知しなくなったとき、前記シャッター部材を前記加熱部材の長手方向中央側に所定長さ移動すると共に、前記送風ファンの回転数を減少することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の加熱装置。
【請求項6】
前記端部温度検知部材の検知温度が増加したとき、前記送風ファンの回転数を増大することを特徴とする請求項5の加熱装置。
【請求項7】
前記シャッター部材が冷却風の一部を通過可能な複数の切欠き部を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項の加熱装置。
【請求項8】
前記シャッター部材が、複数の前記切欠き部がない第1のシャッター部材と、複数の前記切欠き部がある第2のシャッター部材で構成され、前記端部温度検知部材が所定の高温閾値を検知したとき、前記第1のシャッター部材と前記第2のシャッター部材が、前記加熱部材の長手方向端部側に所定の比率で移動することを特徴とする請求項7の加熱装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項の加熱装置を備え、前記シート部材に担持したトナー画像を前記ニップに通して加熱定着することを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加熱装置、定着装置および画像形成装置に係り、特に定着装置筐体に形成された冷却用開口部の開口面積をシャッター部材の開閉で調整する加熱装置と、当該加熱装置を備えた定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られており、その1つに省エネ性に優れウォームアップ時間も短いサーフ定着方式がある。このサーフ定着方式は低熱容量の薄肉定着ベルトを内側から面状ヒータで接触加熱し、定着ニップを通るシート部材を定着ベルトで加熱してシート部材に担持した未定着トナー画像を加熱定着する。
【0003】
このような定着装置で小サイズ紙を連続印刷すると、定着ベルトの長手方向端部(非通紙部)が過度に温度上昇する場合がある。端部温度が過度に上昇すると、定着ベルトの耐久性が低下する他、小サイズ紙の印刷から大サイズ紙の印刷に移行したときに、端部の定着熱供給量過多による端部過昇温で(高温)オフセットや定着ベルトへの用紙巻き付きによるジャムなどの不具合が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、特許文献1(特開2009-288275号公報)や特許文献2(特開2017-44953号公報)のように、端部過昇温の抑制策として定着ベルトの長手方向両端部(非通紙部)を送風ファンで冷却することが行われている。特許文献1、2の定着装置は、装置筐体の長手方向両端部に形成した開口部にシャッター部材を設け、当該シャッター部材を、筐体の長手方向中央部に設けたラック・アンド・ピニオン機構で長手方向にスライド移動することで冷却風量を調節する。
【0005】
特許文献1、2の定着装置では、定着ベルトの端部温度が高温閾値を超えたとき、前記シャッター部材を全開にして冷却風を定着ベルトの非通紙部に吹き込むようにしている。このため、前記冷却風が定着ベルトの端部通紙部にまで回り込んで当該端部通紙部の温度が中央通紙部の温度よりも落ち込む冷却風の回り込み現象が課題になっている。このような冷却風の回り込み現象があると、定着不良により画像不良が発生するからである。そこで本発明は、加熱部材に対する冷却風の回り込み現象を防止可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の加熱装置は、長手方向を有すると共に互いに圧接してニップを形成する加熱部材と加圧部材が筐体内に収容され、当該筐体は前記長手方向を横断する方向で対向する入口と出口を有し、当該入口から出口に向かって搬送されるシート部材を前記ニップに通すことで当該シート部材に前記加熱部材から熱伝達する加熱装置において、前記筐体は、前記加熱部材の長手方向両端部に向かって開口した一対の開口部と、前記加熱部材の長手方向にスライド移動可能であって、長手方向端部側に移動することで前記開口部を閉塞すると共に、長手方向中央側に移動することで前記開口部を開放するシャッター部材を有し、送風ファンにより、前記開口部から、前記加熱部材の長手方向端部に向けて冷却風が吹き込み可能とされ、前記加熱部材の長手方向中央部の温度を検知する中央温度検知部材と、前記加熱部材の長手方向端部の温度を検知する端部温度検知部材からの検知結果に基づいて、前記シャッター部材の開度と前記送風ファンの回転数が制御部によって制御され、前記端部温度検知部材が所定の高温閾値を検知したとき、前記制御部が、前記高温閾値の検知前に比べて、前記送風ファンの回転数を増大し、かつ、前記シャッター部材を前記加熱部材の長手方向端部側に所定長さ移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱部材に対する冷却風の回り込み現象を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図1B】本発明実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
【
図2】画像形成装置に使用する定着装置の断面図である。
【
図3】本発明実施形態の定着装置あって、シャッター部材が(a)開状態の斜視図、(b)閉状態の斜視図、(c)閉状態の断面図である。
【
図4】(a)(b)は両端の2つの電極に並列接続されたヒータの平面図である。
【
図5】3つの電極に並列接続されたヒータの平面図である。
【
図6A】シャッター部材の位置と定着ベルトの温度分布との関係を示す断面図である。
【
図6B】シャッター部材の位置と定着ベルトの温度分布との関係を示す断面図である。
【
図6C】従来のシャッター部材の位置と定着ベルトの温度分布との関係を示す断面図である。
【
図7A】シャッター部材が(a)位置A、(b)位置Bにある状態の断面図である。
【
図7B】シャッター部材を位置Aから位置Bに移動させるときの送風ファンのデューティ変化を示す図である。
【
図7C】制御部でシャッター部材と送風ファンのモータを制御する構成を示す図である。
【
図8A】上下2枚構成のシャッター部材を使用した
図6Aと同様の断面図である。
【
図8C】先端部材を有するシャッター部材を使用した
図6Aと同様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明実施形態に係る定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0010】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0011】
以下の実施形態ではシート部材(記録媒体)を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0012】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0013】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の模様を媒体に付与することも意味する。
【0014】
(レーザプリンタの構成)
図1Aは、定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのカラーレーザプリンタの構成を概略的に示す構成図である。また
図1Bは当該カラーレーザプリンタの原理を単純化して図示する。
【0015】
画像形成装置100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K、1Y、1M、1Cを備える。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
【0016】
各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K、6Y、6M、6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cの説明を省略する。
【0017】
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kはさらに、像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
【0018】
露光器7は、この画像形成装置100に設置された各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
【0019】
転写装置15は、この実施形態では各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの下方に配設されている。この転写装置15は
図1Bの転写部TMに対応する。一次転写ローラ19K、19Y、19M、19Cは、各像担持体2K、2Y、2M、2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
【0020】
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K、19Y、19M、19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K、2Y、2M、2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
【0021】
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
【0022】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60やローラ対210と共にユニット化されている。
【0023】
用紙給送装置200は用紙の補給等のために、画像形成装置100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
【0024】
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0025】
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサ31が配設され、このレジストセンサ31によって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサ31が用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
【0026】
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。
図1Aに示すように、搬送ローラ240は用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
【0027】
ローラ対210は上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210はFRR分離方式またはFR分離方式とすることができる。
【0028】
FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。
【0029】
この実施形態ではローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
【0030】
分離ローラ230は給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力をクラッチ手段を介して伝達することで
図1Aで左回転するようになっている。
【0031】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との二次転写ニップ(
図1Bでは転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写されるようになっている。
【0032】
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。定着装置300は、発熱部材を内包する加熱部材としての定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。
【0033】
定着後搬送路35は、定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また排紙路36の開口端近傍には排紙ローラ対37が配設されている。
【0034】
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、画像形成装置100の上部に、画像形成装置100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
【0035】
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着されている。
【0036】
本実施形態の画像形成装置100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
【0037】
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことで、画像形成装置100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
【0038】
(画像形成装置の原理)
次に、前述した画像形成装置100の原理図を
図1Bで説明する。画像形成装置100は像担持体2(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3を有している。また像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4と、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像装置5と、像担持体2の下方に配設された転写手段TMと、除電装置等を有する。
【0039】
露光器7は像担持体2の上方に配設されている。この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからのレーザ光Lbをミラー7aで反射して像担持体2に照射する。
【0040】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60と共にユニット化される。
【0041】
給紙ローラ60の下流側に、分離搬送手段としてのレジストローラ対250が配設されている。用紙給送装置200から給紙された用紙Pをレジストローラ対250で一旦停止させる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0042】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、像担持体2上のトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて転写手段TMの転写ニップNに送り出される。そして、送り出された用紙Pは、転写ニップNにおいて印加されたバイアスによって像担持体2上のトナー像が所望の転写位置に静電的に転写されるようになっている。
【0043】
転写ニップNの下流側に定着装置300が配設されている。定着装置300はヒータで加熱される定着ローラ310と、この定着ローラ310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ320を備えている。
【0044】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について
図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。
【0045】
給紙ローラ60は、
図1Aに示すように、画像形成装置100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
【0046】
給紙ローラ60およびローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0047】
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同一である。
【0048】
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lを像担持体2Kの表面に照射する。
【0049】
レーザ光Lが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。
【0050】
トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
【0051】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
【0052】
各色のプロセスユニット1Y、1M、1Cにおいても、同様にして像担持体2Y、2M、2C上にトナー画像を形成し、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写する。
【0053】
各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。一方、レジストローラ対250は、それに突き当てられた用紙を所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上に重畳転写して形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像をレジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写する。
【0054】
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0055】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することで排紙トレイ44に排出することで片面印刷を終了する。
【0056】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。片面印刷の場合と同様に、定着装置300は用紙Pを排紙路36へ送り出す。そして、両面印刷を行う場合、排紙ローラ対37は、回転駆動によって用紙Pの一部を画像形成装置100外に搬送する。
【0057】
そして、用紙Pの後端が、排紙路36を通過すると、切り替え部材42は、
図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37は、用紙Pを画像形成装置100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
【0058】
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、レジストローラ対250は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像を用紙Pのトナー画像未転写面に転写する最適なタイミング(同期)を図り、用紙Pを二次転写ニップへ送り出す。
【0059】
そして、二次転写ローラ20と駆動ローラ18は、用紙Pが二次転写ニップを通過する際に用紙Pのトナー画像未転写面(裏面)にトナー画像を転写する。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。
【0060】
定着装置300は、定着ベルト310と加圧ローラ320によって、搬送された用紙Pを挟み、加熱・加圧することで未定着トナー画像を用紙Pの裏面に定着する。このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0061】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着搬送路を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み、回転駆動し排紙トレイ44に排出することで両面印刷を終了する。
【0062】
中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。ベルトクリーニング装置21は、この残留トナーを中間転写ベルト16から除去する。また、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
【0063】
(定着装置)
次に、本発明実施形態に係る定着装置300について以下さらに説明する。定着装置300は
図2に示すように、低熱容量の薄肉の定着ベルト310と加圧ローラ320で構成されている。定着ベルト310は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。
【0064】
定着装置300は
図2のように定着ベルト310を使用する方式のほか、ローラ定着方式やベルト定着方式でもよい。いずれの定着方式でも、小サイズ用紙Pに形成されたトナー像を加熱定着する場合、用紙Pが通過する領域ではヒータの熱が用紙Pに奪われるが、用紙Pが通過しない領域ではヒータの熱が用紙Pに奪われないため過昇温することがある。
【0065】
定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0066】
また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0067】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。
【0068】
弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。定着ベルト310に対して加圧ローラ320が付勢手段により圧接している。
【0069】
定着ベルト310の内側に、ステー350及びヒータホルダ340が軸線方向に配設されている。ステー350は金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置300の両側板に支持されている。ステー350は加圧ローラ320の押圧力を確実に受けとめて定着ニップSNを安定的に形成する。
【0070】
ヒータホルダ340は定着装置300のヒータ330の基材341を保持するためのもので、ステー350によって支持されている。ヒータホルダ340は好ましくはLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成することができ、これによりヒータホルダ340への熱伝達が減って効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0071】
ヒータホルダ340の形状は、基材341の高温部との接触を回避するために、基材341の短手方向両端部付近の各2箇所のみを支持する形状にしている。これにより、ヒータホルダ340へ流れる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0072】
基材341の裏面に、後述するヒータ330の抵抗部材370の温度を検知する中央温度検知部材としてのサーミスタTH1が配設されている。サーミスタTH1はバネ387によって基材341の裏面に押圧され、これによって抵抗部材370の正確な温度を検知可能にしている。
【0073】
また、定着ニップSNの下流側の定着ベルト310の内面の温度が、中央温度検知部材としてのサーミスタTH2と、端部温度検知部材としてのサーミスタTH3によって、それぞれ検知されるように構成されている。一方のサーミスタTH2は、
図6AのようにサーミスタTH1と同様にヒータ330の長手方向中央部に配設されている。他方のサーミスタTH3は、ヒータ330の長手方向端部(非通紙部)に配設されている。
【0074】
サーミスタTH1、TH2は小サイズ用紙の幅方向中央部に配置される。またサーミスタTH3は、大サイズ用紙の幅方向外側の非通紙部に配置される。サーミスタTH1~TH3からの温度情報に基づいて、
図7Cで後述するように、抵抗部材370に供給される電力や、シャッター部材307の駆動機構(モータM1)が制御され、非通紙部の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0075】
サーミスタTH1~TH3は、加圧ローラ320の外周面に対向配置したサーミスタで代替することも可能である。加圧ローラ320側のサーミスタを定着ベルト310の外側に配設することで、当該サーミスタのメンテナンスが容易になる。なお、定着装置300は各種の型式が可能であって、前述した
図2の定着装置はその一例に過ぎない。
【0076】
(定着装置の筐体)
次に、
図3(a)~(c)を参照して本発明実施形態の定着装置300の筐体301の構造を説明する。この定着装置300は、前述した加熱部材としての定着ベルト310と、加圧部材としての加圧ローラ320を、
図3(a)~(c)のように断熱・保温のため筐体(カバー)301内に収容している。
【0077】
筐体301の形状は、内側に収容する定着ベルト310と加圧ローラ320の外側に無駄な空間ができないように、2つの円弧を水平方向で向かい合わせたコンパクトな断面形状とされている。そして筐体301の上下の平面部に入口302と出口303が形成されている。
【0078】
入口302と出口303は、定着ベルト310の長手方向(
図3で紙面に垂直な軸線方向)を横断する方向(
図3で上下方向)で互いに対向している。トナー画像を担持した用紙が、入口302から入り、定着ニップSNを通って出口303から出ていく。
【0079】
筐体301の片側の円弧状側面の高さ方向半分から上端にかけて、
図3のように矩形状に開口した開口部304が形成されている。この開口部304は、筐体301の長手方向両端部に一対で形成され、定着ベルト310の長手方向両端部(非通紙部)に向かって開口している。
【0080】
そして開口部304の外側に、後述するように送風ファン520が配設されている。この送風ファン520によって、開口部304に冷却用エアが供給されるようになっている。送風ファン520の回転数とシャッター部材307の開度の組み合わせにより、定着ベルト310の非通紙部の温度上昇を効率的に抑制することができるようになっている。
【0081】
(シャッター部材)
冷却用エアの供給量は、
図3(a)(b)のように、開口部304の外側に左右一対で配設されたシャッター部材307の開度で調節可能に構成されている。シャッター部材307は定着ベルト310を覆うように湾曲した形状をしている。
【0082】
本実施形態ではシャッター部材307が全体的に定着ベルト310の回転中心位置を曲率中心とする湾曲形状であるが、シャッター部材307が部分的に直線形状を含んでいても、あるいは部分的に湾曲形状を含んでいてもよい。このような湾曲形状にすることで、シャッター部材307による定着ベルト310の保温効果を高めると共に、画像形成装置全体の小型化が可能となる。
【0083】
図3(a)はシャッター部材307が開いた状態を示し、
図3(b)はシャッター部材307が閉じた状態を示す。また
図3(c)はシャッター部材307が閉じた状態の断面図である。筐体301の長手方向中央部にピニオン308が配設され、当該ピニオン308がモータで駆動される。
【0084】
左右一対のシャッター部材307は定着装置300の筐体長手方向にスライド移動可能に配設され、シャッター部材307から長手方向中央側に延びたラック307aに、ピニオン308が噛み合っている。ピニオン308の回転により、左右のシャッター部材307が接近・離反することで、開口部304が開閉される。
【0085】
シャッター部材307は、耐熱性板金のプレス成形品とすることができる。シャッター部材307をプレス成形品とすることで、シャッター部材の寸法精度を向上することができる。
【0086】
シャッター部材307の内面には、断熱性向上のため、フェルトやスポンジ等の保温部材(断熱部材)を取り付けてもよい。またシャッター部材307を耐熱性樹脂で形成した場合でも、その裏面に保温部材(断熱部材)を取り付けることができる。
【0087】
開口部304の領域は、詳しくは
図3(c)に示すように、高さ方向では筐体301の円弧状側面の高さ方向中央から筐体301の天井に至る領域である。また筐体301の長手方向では、
図3(a)に示すように、定着ベルト310の長手方向両端部に対向した領域である。
【0088】
したがって、開口部304は
図3(a)(c)のように斜め上方に向かって開口している。開口部304は筐体301の真上から見るとほぼ全体が見えるが、筐体301の真下からは見えない。上方ないし斜め上方に向かって開口していることで、定着ベルト310の端部過昇温の原因となる余分な熱を、開口部304から効率的に筐体301外に排出することができる。
【0089】
開口部304はシャッター部材307を半開または全開で開いているだけでも、定着ベルト310の端部過昇温の原因となる余分な熱を上方に向けて排熱可能である。本実施形態では、定着ベルト310の端部冷却作用を高めるため、
図6Aのようにシャッター部材307の外側に送風ファン520を配設する。
【0090】
送風ファン520によって冷却用空気を強制的に定着ベルト310の端部に向けて筐体301内に吹き込むことで、定着ベルト310の端部を効果的に冷却して端部過昇温を抑制することができる。筐体301内に吹き込まれた空気は、定着ベルト310の端部によって昇温されて上方に向けて自然排気される。
【0091】
このようにして上方に排気された温かい空気は、分岐部の結露付着を防止するのに有効利用することができる。すなわち、
図1Aに示すように、両面印刷時に用紙の反転搬送路41に分岐する切り替え部材42を定着装置300の上方に配置することで、当該切り替え部材42に結露が付着するのを防止することができる。結露付着を効果的に防止するためには、開口部304の垂直上方に切り替え部材42を配置するとよい。
【0092】
従来、用紙搬送路の結露対応として、結露が解消するまで画像形成装置を空転(暖気運転)したり、結露解消用に独立したファンを設けたりしていた。前者は印刷するまでの待ち時間が長くなる問題があり、後者はファンにより機構が複雑化して装置の大型化やコスト高になるという問題があった。定着ベルト310の端部排熱を有効利用して積極的に結露部へ送り込むことで、前述した問題を解消できる。
【0093】
(ヒータ)
前述した定着装置300は、
図2のようにヒータホルダ340に保持されたヒータ330を有する。このヒータ330は、基材341の上に抵抗発熱体(面状ヒータ)で構成された抵抗部材370を有する。抵抗部材370は、後述する
図4(a)(b)に一例を示すヒータ330のように、複数タイプで形成することができる。
【0094】
いずれのタイプでも、抵抗部材370は、細長の金属製薄板部材を絶縁材料で被覆した基材341の上に形成される。面状ヒータによって定着ニップSNを加熱する定着方式では、発熱体である抵抗部材を紙幅方向に複数に分割して個別に加熱制御することで、複数種類の紙幅を均一に加熱することができる。
【0095】
基材341の材料としては低コストなアルミやステンレスなどが好ましい。基材341は金属製に限定されたものではなく、アルミナや窒化アルミなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの耐熱性と絶縁性に優れた非金属材料で構成することも可能である。
【0096】
ヒータ330の均熱性を向上し画像品位を高めるため、基材341を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0097】
図4(a)(b)に示すように、ヒータ330は、抵抗発熱体371~378を電気的に並列接続したマルチタイプで構成することができる。ヒータ330は2つの電極370c、370dを有し、両端の電極370c、370d間の抵抗値を10Ωとすると、各発熱体371~378の抵抗値は並列接続のため80Ωと大きくなる。
【0098】
抵抗発熱体371~378にはPTC素子を使用することができる。PTC素子は、正の温度抵抗係数を有する材料で構成され、温度Tが上昇すると抵抗値が上昇する特徴がある(電流Iが低下してヒータ出力が低下)。温度抵抗係数(TCR=Temperature Coefficient of Resistance)は、例えば1500PPM(parts per million)とすることができる。
【0099】
図4(a)(b)の発熱体371~378は、基材341の長手方向で直線状かつ等間隔に配置されている。各発熱体371~378の短手方向両側には小抵抗値の導体370a、370bが直線状に互いに平行に配設され、この導体370a、370bに各発熱体371~378の両端が接続されている。そして、導体370a、370bの各一端部に形成された電極370c、370dにAC電源が供給される。
【0100】
発熱体371~378と導体370a、370bは薄い絶縁層385で覆われている。この絶縁層385は例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成することができる。絶縁層385によって発熱体371~378と導体370a、370bを絶縁・保護すると共に、定着ベルト310との摺動性を維持する。
【0101】
発熱体371~378は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材341に塗工し、その後、当該基材341を焼成することによって形成することができる。本実施形態では各発熱体371~378の抵抗値を常温で80Ωとした(総抵抗値は10Ω)。
【0102】
発熱体371~378の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)の抵抗材料を用いてもよい。導体370a、370bや電極370c、370dの材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。
【0103】
発熱体371~378の絶縁層385側が定着ベルト310と接触して加熱し、伝熱により定着ベルト310の温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される未定着画像を加熱して定着する。発熱体371~378としてPTC素子を使用した場合、小サイズ通紙などで非通紙領域の発熱体の温度が上昇した際に、その温度抵抗依存性により当該PTC素子の発熱量が低下し、温度上昇を抑制することができる。
【0104】
この特徴により、例えば発熱体371~378の全幅よりも狭い紙(例えば発熱体373~376の幅内)を印刷した場合、紙幅より外側の発熱体371、372、377、378は紙に熱を奪われないため温度が上昇する。するとPTC素子による発熱体371、372、377、378の抵抗値が上昇する。
【0105】
発熱体371~378にかかる電圧は一定なので、用紙幅より外側の発熱体371、372、377、378の出力が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。発熱体371~378を電気的に直列に接続した場合、連続印刷において紙幅よりも外側の発熱体371、372、377、378の温度上昇を抑制するには、印刷スピードを低下させる以外に方法がない。発熱体371~378を電気的に並列接続することで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。
【0106】
発熱体371~378の相互間に短手方向に続く隙間があると、当該隙間部分で発熱量低下が発生し、それによって定着ムラが発生しやすい。そこで、
図4(a)(b)では発熱体371~378の端部同士を長手方向で互いにオーバーラップさせている。
【0107】
図4(a)は発熱体371~378の端部にL字状の切り欠きによる段部を形成し、当該段部を隣接する素子端部の段部とオーバーラップさせている。
図4(b)は発熱体371~378の端部に斜めの切り欠きによる傾斜部を形成し、当該傾斜部を隣接する素子端部の傾斜部とオーバーラップさせている。このように発熱体371~378の端部同士を互いにオーバーラップさせることで、素子間の隙間での発熱量低下の影響を抑制することができる。
【0108】
また電極370c、370dは発熱体371~378の両端に配置する他、発熱体371~378の片側に配置することも可能である。このように電極370c、370dを片側配置にすることで長手方向の省スペース化を図ることができる。
図4(a)(b)の各発熱体371~378は短冊状の面状発熱体で構成されているが、所望の出力(抵抗値)を得るために、線幅を細くして蛇行状に形成した複数の発熱体を電気的に並列接続したもので構成することもできる。
【0109】
(ヒータの変形例)
次にヒータ330の変形例を
図5に示す。この変形例のヒータ330は基材341の両端に配設された3つの電極370h、370i、370jと、基材341の長手方向で電極間に配設された7つの発熱体371~377を有する。そして、以下の3つの発熱パターンを選択可能にしてある。
発熱パターン1:中央発熱体372~376のみ発熱(小サイズA4紙加熱)
発熱パターン2:全発熱体371~377発熱(大サイズA3紙加熱)
発熱パターン3:端部発熱体371、377のみ発熱(A3紙加熱時の端部温度低下防止)
【0110】
ヒータ330の長手方向中央の5つの発熱体372~376が、当該発熱体よりも低抵抗の導体370e、370fを介して第1の電極370hと第2の電極370iに並列接続されている。また長手方向両端の2つの抵抗発熱体371、377が、当該発熱体371、377よりも低抵抗の導体370f、370gを介して第2の電極370iと第3の電極370jに並列接続されている。
【0111】
右側の第2の電極370iが常時AC電源に接続され、左側の第1の電極370hと第3の電極370jがスイッチの切換えにより選択的にAC電源に接続される。これにより、前述した3つの発熱パターン1~3を選択できる。
【0112】
このように3つの発熱パターンを選択可能なヒータ330において、例えばヒータ330の長手方向中央部の連続する5つの発熱体372~376の長手方向長さをA4幅、両端を含む全7つの発熱体371~377の長手方向長さをA3サイズと同等にする。そして発熱体371~377の加熱状態を適切に制御することで、A4サイズ、A3サイズの用紙を均一に加熱することができる。
【0113】
発熱体371~377の加熱制御には、所定の制御時間内の発熱体の点灯時間(点灯デューティ)を可変とすることで適正な発熱量を得る制御方法が一般的に用いられる。点灯デューティは、AC電源を制御手段としてのトライアックで位相制御することで調整する。デューティ比0%で電流がゼロになり、デューティ比100%で電流が最大になる。
【0114】
(シャッター部材の開度)
図6Aは、サーミスタTH3が所定の高温閾値を検知したとき、シャッター部材307を定着ベルト310の長手方向端部側に所定長さ移動したときの断面図である。高温閾値は例えば180℃である。サーミスタTH3の検知情報は
図7Cで後述する制御部400に入力され、高温閾値の検知前に比べて、送風ファン520の回転数を増大すると同時に、シャッター部材307を用紙P通紙幅よりも外側に配置する。
【0115】
シャッター部材307を移動する前記「所定長さ」は、
図6Bに示すように、定着ベルト310の端部高温分布のピーク位置に至るまでの距離の50%以内を限界とするのがよい。すなわち、用紙Pの搬送方向(
図6B紙面垂直方向)と直交する幅方向の端部を起点とし、定着ベルト310の長手方向端部に向かって定着ベルト310の端部高温分布のピーク位置に至るまでの距離を100%とする。
【0116】
この場合、当該距離の半分(50%)以内を、シャッター部材307の先端部307bが長手方向端部側に移動する限界とするのがよい。50%を超えてシャッター部材307の先端部307bを移動すると、送風ファン520からの冷却風がシャッター部材307で絞られて端部過昇温を抑制困難になる。
【0117】
図6Aの場合、従来の
図6Cと比べると、非通紙領域への風量がシャッター部材307の影響(絞り効果)により低下する。そこで、当該絞り効果を補うように、送風ファン520を回転数を上げて高出力で駆動する。こうすることで、端部過昇温を防止しつつ、シャッター部材307の絞り効果で回り込みによる温度低下(
図6Cの温度分布の落ち込み)を防止できる。
【0118】
サーミスタTH3が所定の高温閾値を検知したとき、シャッター部材307は常に
図6Aの同じ位置に移動する必要はない。通紙枚数やマシンの連続稼働時間に応じて、
図6Aの位置よりも開方向又は閉方向に所定長さスライド移動してもよい。このように適宜移動する方が、さらに端部温度上昇を抑制してマシンの高い生産性を実現できる。
【0119】
例えば、非通紙部に設けられたサーミスタTH3の検知温度ないし通紙開始からの連続稼働時間に応じて、シャッター部材307の位置を内側(開方向)にずらす。こうすることで、定着ベルト310の両端非通紙部に当たる送風ファン520からの風量を増やし、印刷枚数の低下(生産性低下)を抑えることが可能になる。
【0120】
すなわち、
図6Bに示すように、通紙初期では温度上昇するピーク位置の50%の位置にまでシャッター部材307を移動させ、通紙領域内の温度低下を防止する。しかし、端部領域の温度が上がってきた場合は、シャッター部材307を内側(開方向)へ移動させ、より広範囲に風を当てることで両端非通紙部の温度上昇を抑制する。
【0121】
この時、
図7A(a)に示すようにシャッター部材307が位置Aのときは、
図7Bに示すように送風ファン520を風量最大の状態(デューティ100%)で使用する。しかし、サーミスタTH3の検知温度ないしマシンの連続稼働時間に応じて、
図7A(b)のようにシャッター部材307を位置Bに移動すると同時に、
図7Bに示すように送風ファン520の風量を抑える制御(デューティ80%)を行ってもよい。
【0122】
シャッター部材307が開方向に移動すると、用紙端部に冷却風が回り込み、通紙領域の温度低下が発生する恐れがある。そのため、風量をデューティ80%でいったん抑えて温度低下を防止し、その後、さらなる温度上昇を防止するために風量最大の状態(デューティ100%)にする制御を行ってもよい。
【0123】
(制御部)
図7Cは、シャッター部材307を開閉駆動するモータM1と、送風ファン520を回転するモータM2の制御系を示すものである。2つのモータM1、M2は、マシンの制御部400によって制御される。当該制御部400には、前述した3つのサーミスタTH1~TH3の検知情報が入力される。そして、定着ベルト310の端部過昇温が発生しないようにモータM1、M2が制御される。また、制御部400によって、ヒータ330ないし定着ベルト310の温度が定着目標温度(例えば170℃)に制御される。
【0124】
シャッター部材307を開閉駆動するモータM1の速度は、定着ベルト310の端部高温閾値に対するサーミスタTH3の検出温度の乖離度に応じて、適宜増速することも可能である。これにより、シャッター部材307を速やかに開閉して端部過昇温と冷却風回り込みを効果的に抑制する。また、送風ファン520を回転するモータM2の回転速度も、同様に適宜増速してもよく、これにより端部過昇温と冷却風回り込みを効果的に抑制することができる。さらに、送風ファン520を回転するモータM2の回転数ないしデューティを、シャッター部材307の開度に反比例して連続的に増減するようにしてもよい。
【0125】
(2枚構成のシャッター部材)
図7A(a)のシャッター部材307の位置Aであると、シャッター部材307の外領域(送風入口領域)が狭く、定着ベルト310の非通紙領域を十分に冷却ができない場合もある。そこで、
図8Aのように、上側(外側)シャッター部材307-1と下側(内側)シャッター部材307-2の2枚構成にする。
図8Aでは、シャッター部材307-2が
図7A(a)の位置Aにあり、シャッター部材307-1の先端部307-1bは位置Aよりも開方向(左方向)にやや後退している。
【0126】
下側(内側)シャッター部材307-2は
図8Bのように、送風ファン520からの風を通過させることができる切欠き部としてのスリットSを有するものにする。なお、スリットS部分は送風ファン520からの風を通過可能であればよく、ルーバー形状など他の通風可能形状に変更することができる。
【0127】
このように2枚目のシャッター部材307-2をスリットS付きにすることで、定着ベルト310の端部通紙領域への冷却風の回り込みが増えるので、端部通紙領域の温度低下を抑制する効果は低下する。しかし、非通紙領域に当たる風量はスリットSを通して増加するので、非通紙領域の温度上昇をより効果的に防止できる。
【0128】
なお、2枚のシャッター部材307-1、307-2は互いに独立してスライド移動可能に構成することができる。そして用紙サイズに応じて、予め決められた比率でシャッター部材307-1、307-2をスライド移動して配置する。
【0129】
但し、マシンの連続稼働時間の経過とともに、第1のシャッター部材307-1を動かして冷却領域を増減変更してもよい。そして一定時間を経過し、通紙領域内の温度の落ち込みがなくなれば、第2のシャッター部材307-2を
図8Aの位置に留め、第1のシャッター部材307-1のみを開方向にスライド移動し、定着ベルト310の端部通紙領域に当たる風量を増やすことが望ましい。
【0130】
また、
図8Cように2枚目のシャッター部材307-2をなくし、1枚目のシャッター部材307-1の先端に複数スリットSを有する先端部材307-3を固定する構成としてもよい。2枚構成のシャッター部材307-1、307-2と異なり、1つのシャッター部材307-1の可動領域が減るため冷却効率は低減するが、シャッター部材307-1の駆動部材が1つで済み、低コスト化できる。
【0131】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施形態では送風ファン520をシャッター部材307の外側に配置したが、当該送風ファン520は、筐体301の上面において開口部304に接続された排気ダクトに吸引ファンとして配置してもよい。吸引ファンで筐体301内の空気を吸引排気すると、開口部304の水平横方向から吸入された外気で、定着ベルト310の両端非通紙部が冷却される。シャッター部材307は当該吸入外気の吸入量ないし吸入範囲を調節する。
【0132】
また前記シャッター部材307は開口部304の外側に開閉可能に配置したが、シャッター部材307を開口部304の内側に開閉可能に配設することも可能である。また、前記実施形態では加熱部材として定着ベルト310を使用したが、この定着ベルト310に代えて内部に加熱源を有する定着ローラを使用することも可能である。
【0133】
また本発明の加熱装置は、前述した定着装置300に使用するほか、インクジェットプリンタの用紙乾燥装置にも使用可能である。また定着ベルト310を加熱する発熱体は、PTC素子を使用したヒータ330のほか、セラミックヒータなど他の発熱体も使用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1K、1Y、1M、1C:プロセスユニット 2K、2Y、2M、2C:像担持体
3K、3Y、3M、3C:ドラムクリーニング装置 4K、4Y、4M、4C:帯電装置
5K、5Y、5M、5C:現像装置 6K、6Y、6M、6C:トナーボトル
7:露光器 7a:ミラー
8:転写カバー 10:粉体収容器
15:転写装置 16:中間転写ベルト
17:従動ローラ 18:駆動ローラ
19K、19Y、19M、19C:一次転写ローラ 20:二次転写ローラ
21:ベルトクリーニング装置 31:レジストセンサ
32:給紙路 33:転写後搬送路
35:定着後搬送路 36:排紙路
37:排紙ローラ対 41:反転搬送路
42:切り替え部材 42a:揺動軸
43:反転搬送ローラ対 44:排紙トレイ
45:給紙ローラ 46:トレイ
60:給紙ローラ 100:画像形成装置
200:用紙給送装置 210:ローラ対
220:給送ローラ 230:分離ローラ
240:搬送ローラ 250:レジストローラ対
300:定着装置 310:定着ベルト
301:筐体(カバー) 302:入口
303:出口 304:開口部
307:シャッター部材 307-1:第1のシャッター部材
307-2:第2のシャッター部材 307-3:先端部材
307a:ラック 308:ピニオン
320:加圧ローラ 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330:抵抗部材 334:加圧ベルト
340:ヒータホルダ 341:基材
350:ステー 352:ステー
351:補助ステー 370:抵抗部材
370a、370b:導体 370c、370d:電極
370e~370g:導体 370h:第1の電極
370i:第2の電極 370j:第3の電極
371~378:抵抗発熱体 385:絶縁層
387:バネ 400:制御部
520:送風ファン L:レーザ光
N:転写ニップ P:用紙(シート部材)
SN:定着ニップ TH1~TH3:サーミスタ
TM:転写部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0135】
【文献】特開2009-288275号公報
【文献】特開2017-44953号公報