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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】磁歪式トルクセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020156939
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050809
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中村 晃之
(72)【発明者】
【氏名】金 一銘
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-344391(JP,A)
【文献】特開平02-302638(JP,A)
【文献】特開2009-128181(JP,A)
【文献】特開平02-271230(JP,A)
【文献】特開平11-132877(JP,A)
【文献】特開2013-210365(JP,A)
【文献】特開2004-140966(JP,A)
【文献】特開平08-193894(JP,A)
【文献】特開平08-114516(JP,A)
【文献】特開2001-124640(JP,A)
【文献】特開平11-118627(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0210059(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 3/10,1/12,5/00-5/28
H02K 1/00-1/16,1/18-1/26
H02K 1/28-1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出の対象となるトルクが付与される回転軸部材を挿通する中空部が形成されたボビン部材と、
前記ボビン部材の外周面に巻かれたコイル部材と、
前記コイル部材の周囲を覆うように配設された磁性体リング積層体と、を備え、
前記磁性体リング積層体は、電磁鋼材からなる円環状の形状を有する複数のリング部材が中心軸方向に積層されているとともに、前記複数のリング部材のうち積層方向において隣接するリング部材がそれぞれ絶縁されており
前記複数のリング部材は、それぞれ同一の形状及び寸法を有している、
磁歪式トルクセンサ。
【請求項2】
前記複数のリング部材は、表面に絶縁被膜が形成されている、
請求項1に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項3】
前記絶縁被膜は、酸化被膜である、
請求項2に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項4】
前記複数のリング部材は、それぞれ真円度(JIS B0621)が0.1mm以内の円形状の内縁を有する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項5】
前記複数のリング部材は、それぞれ0.1mm以上1.0mm以内の厚さを有する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁歪式トルクセンサ。
【請求項6】
検出の対象となるトルクが付与される回転軸部材を挿通する中空部が形成されたボビン部材と、
前記ボビン部材の外周面に巻かれたコイル部材と、
前記コイル部材の周囲を覆うように配設された磁性体リング積層体と、を備え、
前記磁性体リング積層体は、電磁鋼材からなる円環状の形状を有する複数のリング部材が中心軸方向に積層されているとともに、前記複数のリング部材のうち積層方向において隣接するリング部材がそれぞれ絶縁されており、
10個以上100個以内の前記複数のリング部材を備える、
歪式トルクセンサ。
【請求項7】
検出の対象となるトルクが付与される回転軸部材を挿通する中空部が形成されたボビン部材と、
前記ボビン部材の外周面に巻かれたコイル部材と、
前記コイル部材の周囲を覆うように配設された磁性体リング積層体と、を備え、
前記磁性体リング積層体は、電磁鋼材からなる円環状の形状を有する複数のリング部材が中心軸方向に積層されているとともに、前記複数のリング部材のうち積層方向において隣接するリング部材がそれぞれ絶縁されており、
前記複数のリング部材は、加工突起が発生している面が同一の方向を向くように積層されている、
歪式トルクセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪式トルクセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、応力が付与された際に透磁率が変化する磁歪特性を有するシャフトを用い、トルクが付与されてシャフトが捩じれた際のシャフトの透磁率の変化を検出コイルのインダクタンスの変化として検出することにより、シャフトに付与されたトルクを検出する磁歪式トルクセンサが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載の磁歪式トルクセンサは、磁歪特性を有する回転軸と離間して同軸に設けられ、中空円筒状に形成されるボビンと、ボビンの周囲に設けられた中空円筒状の磁性体からなる磁性体リング材を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-200552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の磁歪式トルクセンサによれば、磁性体リング材が円筒状に形成されていることにより、磁性体リング材の外周面の面積が大きくなっており、磁性体リング積層体の表面に渦電流が発生しやすくなっている。磁性体リング材の表面に渦電流が発生すると磁性体リング材に磁束が入りにくくなり実効的な透磁率が低下する。このことはセンサの感度を低下させるため、トルクの検出の精度を低下させる虞がある。
【0006】
そこで、本発明は、磁性体リングに発生する渦電流を抑制することが可能な磁歪式トルクセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、検出の対象となるトルクが付与される回転軸部材を挿通する中空部が形成されたボビン部材と、前記ボビン部材の外周面に巻かれたコイル部材と、前記コイル部材の周囲を覆うように配設された磁性体リング積層体と、を含み、前記磁性体リング積層体が、電磁鋼材からなる円環状の形状を有する複数のリング部材が中心軸方向に積層されているとともに、前記複数のリング部材のうち積層方向において隣接するリング部材がそれぞれ絶縁されている、磁歪式トルクセンサを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る磁歪式トルクセンサによれば、磁性体リング材に発生する渦電流を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】磁歪式トルクセンサの一例を示す図であり、(a)はシャフトに取り付けた際の側面図、(b)はそのA-A線断面図である。
図2】磁性体リング積層体の構成の一例を示す斜視図である。
図3】フレキシブル基板の取り付け後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。
図4】磁性体リング材を積層する工程の一例を模式的に示す図である。
図5】磁性体リング積層体の取り付け後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。
図6】信号線の接続後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。
図7】ホルダ部材の取り付け後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。
図8】アウターモールドの形成後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
図1は、磁歪式トルクセンサの一例を示す図であり、(a)はシャフトに取り付けた際の側面図、(b)はそのA-A線断面図である。なお、図1では、説明の便宜上、ホルダ部材7(図7参照)とアウターモールド8(図8参照)とを省略して示している。
【0011】
トルクセンサ1は、シャフト10に付与された回転トルクを測定するものである。図1(a),(b)に示すように、磁歪式トルクセンサ(以下、単に「トルクセンサ」ともいう。)1は、回転軸部材としてのシャフト10と、ボビン部材11と、フレキシブル基板12(Flexible Preprint Circuits:FPCともいう。)と、磁性体リング積層体13(「磁性体ヨーク」又は「磁性体ヨーク構造体」ともいう。)と、を備えている。
【0012】
シャフト10は、磁歪特性を有する材料から構成され、円柱状(棒状)に形成されている。シャフト10は、例えば、車両のパワートレイン系のトルク伝達に用いられるシャフト、あるいは車両のエンジンのトルク伝達に用いられるシャフトが該当する。
【0013】
ボビン部材11は、中央にシャフト10が挿通する中空部としての挿通孔110aが形成された円筒状の本体部110と、本体部110の一方の端部(図1(a)の図示奥側の端部をいう。)に設けられ、本体部110の径方向外向きに突設された長方形状の鍔部112と、を備えている。ボビン部材11は、非磁性体である樹脂により構成される。
【0014】
本体部110は、シャフト10と同軸に設けられている。また、ボビン部材11は、本体部110の内周面110bがシャフト10の外周面10aと離間するように設けられている。具体的には、ボビン部材11は、本体部110の内周面110bとシャフト10の外周面10aとが径方向における位置によらずに一定の間隔dで離間するように配置されている。この間隔dは、例えば、0.25mm以内である。
【0015】
フレキシブル基板12は、コイル部材(以下、単に「コイル」ともいう。)121と、コイル121に電気的に接続された端子部122と、を備えている。コイル121は、ボビン部材11の本体部110の外周面に巻き付けて形成されている。端子部122は、ボビン部材11の鍔部112に設けられている。
【0016】
磁性体リング積層体13は、例えば、リング部材としての、磁性体からなる環状の磁性体リング材130(図2参照。)を中心軸方向(すなわち、シャフト10方向)に積層させて構成されている。磁性体リング積層体13は、コイル121の周囲を覆うように配設されている。磁性体リング積層体13は、コイル121で生じた磁束が外部に漏れて感度が低下することを抑制する役割を果たす。
【0017】
図2は、磁性体リング積層体13の構成の一例を示す斜視図である。図2に示すように、磁性体リング積層体13は、複数の磁性体リング材130を厚さ方向に積層させて一体化した磁性体連結体である。磁性体リング積層体13は、10±1mmの厚さTを有している。
【0018】
本実施の形態では、磁性体リング材130は、電磁鋼材により構成された電磁鋼板により形成されている。磁性体リング材130は、平面視において、真円度(JIS B0621)が0.1mm以内の円形状の内縁を有している。フレキシブル基板12を磁性体リング積層体13になるべく近接させて挿入できるようにするためである。また、環状の磁性体材料を用いることで、四角形枠状や多角形枠状の磁性体材料と比較して、等方性に優れ、また、角部がないため組立中に引っ掛かり等による損傷を抑制できるなど作業上の安全にも資する。
【0019】
磁性体リング材130は、例えば、0.1mm以上1.0mm以下の厚さtを有する。厚さを0.1mm以下とした場合、変形しやすくなるため電磁鋼板からの打ち抜き加工が困難になる虞があり、厚さを1.0mm以上とした場合、渦電流の発生を促進させてしまう虞がある。また、一つの磁性体リング積層体13を構成する磁性体リング材130の数は、例えば、10個以上100個以下としてよい。
【0020】
複数の磁性体リング材130は、いずれも同一の形状及び寸法を有する。打ち抜き加工等の同一の形状の量産加工に適した方法を用いて安価に製造できるようにするためである。なお、「同一」とは、完全に同じであることのみをいうものではなく、製造の過程で生じ得る僅かな誤差が含まれているものも含む。
【0021】
磁性体リング積層体13の積層方向(すなわち、厚み方向。ここでは、図示上下方向をいう。)において隣接する磁性体リング材130は、それぞれ絶縁されている。隣接する磁性体リング材130間を絶縁することで、渦電流を抑制するためである。また、過電流を抑制することによって、磁性体リング積層体13に磁束が流れやすくなり、上述した機能(すなわち、磁束が外部に漏れて感度が低下することを抑制する機能)を向上させるためである。
【0022】
隣接する磁性体リング材130間を絶縁する方法として、例えば、各磁性体リング材130の表面130aは、絶縁被膜が形成されている。絶縁被膜は、例えば、表面130aを酸化することにより形成された酸化被膜でもよい。
【0023】
なお、酸化被膜は、電磁鋼板を製造する際に自然に形成されるものであってもよい。また、磁性体リング材130は、必ずしも表面130a全体(すなわち、上面、下面、外周面及び内周面の全て)に絶縁被膜が形成されていなくてもよい。隣接する磁性体リング材130間が絶縁されていればよく、磁性体リング材130は、例えば、少なくとも上面又は下面に酸化被膜が形成されていればよい。
【0024】
(トルクセンサ1の製造方法)
次に、トルクセンサ1の製造方法について図3乃至図8を参照して説明する。以下では、トルクセンサ1の製造方法は、
(1)フレキシブル基板12を取り付ける工程、
(2)磁性体リング積層体13を形成する工程
(3)磁性体リング積層体13を取り付ける工程
(4)信号線を接続する工程、
(5)ホルダ部材7を取り付ける工程、及び
(6)アウターモールド8を形成する工程、
の6つの工程を含む。以下、それぞれ順に説明する。
【0025】
(1)フレキシブル基板12を取り付ける工程
図3は、フレキシブル基板12の取り付け後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。フレキシブル基板12は、例えば、コイル121に端子部122が接続された端子クリンプ付FPC等、予め用意されたものを用いてよい。フレキシブル基板12を形成する工程では、まず、図3に示すように、ボビン部材11の本体部110の外周面にコイル121が位置するように、フレキシブル基板12をボビン部材11に取り付ける。
【0026】
(2)磁性体リング積層体13を形成する工程
磁性体リング積層体13を形成する工程は、以下、
(2-1)磁性体リング材130を形成する工程、及び
(2-2)磁性体リング材130を積層する工程
の2つの工程を含む。それぞれ説明する。
【0027】
(2-1)磁性体リング材130を形成する工程
図4は、磁性体リング材130を積層する工程の一例を模式的に示す図である。上述したように、磁性体リング積層体13を構成する各磁性体リング材130は、材料となる厚みtを有する電磁鋼板を打ち抜く打ち抜き加工により製造される。具体的には、磁性体リング積層体13は、電磁鋼板を、中心部に円形状の貫通孔131が形成された同一の形状及び寸法に打ち抜き加工することにより製造される。なお、打ち抜き加工では、図4に示すように、切れ歯材(不図示)によって破断面に加工突起(以下、「バリ」ともいう。)132が発生する場合がある。
【0028】
(2-2)磁性体リング材130を積層する工程
磁性体リング材130を積層する工程では、磁性体リング材130を積層して磁性体リング積層体13を形成する。また、磁性体リング材130は、バリ132が発生している面の向きが揃うように、すなわちバリ132が発生している面が同一の方向を向くように、打ち抜いた向きに揃えて積層する(図4の矢印参照)。バリ132が発生している面が向かい合うように積層した場合、バリ132同士が接触して、積層の障害となる虞があるが、バリ132が発生している面が同一の方向を向くようにすることで、この積層の障害を抑制することが可能である。
【0029】
(3)磁性体リング積層体13を取り付ける工程
図5は、磁性体リング積層体13の取り付け後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。磁性体リング積層体13を取り付ける工程では、フレキシブル基板12のコイル121の周囲を覆うように、磁性体リング積層体13を取り付ける。具体的には、各磁性体リング材130の貫通孔131にフレキシブル基板12を挿入することにより、コイル121の周囲を覆うように、磁性体リング積層体13を取り付ける。
【0030】
このとき、各磁性体リング材130の貫通孔131にフレキシブル基板12を挿入する際にフレキシブル基板12を損傷しないように、上述したバリ132が突出する向きが、フレキシブル基板12を挿入する方向と同一になるようにして、磁性体リング材130を挿入する。換言すれば、バリ132と対向しない方向からフレキシブル基板12を磁性体リング材130の貫通孔131に挿入する。なお、説明の便宜上、図5では、磁性体積層体13を円筒状に描いているが、実際は、上述したように磁性体リング材130を積層させたものである点に留意されたい。
【0031】
(4)信号線を接続する工程
図6は、信号線の接続後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。信号線を接続する工程では、トルクセンサ1を駆動する交流電圧を印加する発信器(不図示)及び電圧を測定する電圧測定装置(不図示)から延出された信号線61の各心線62を、端子部122に電気的に接続する。ここでは、信号線61は、4本の心線62を一括してジャケット63で覆った構造となっている。心線62は、例えば、抵抗溶接により端子部122に取り付けられる。
【0032】
(5)ホルダ部材7を取り付ける工程
図7は、ホルダ部材7の取り付け後のトルクセンサの外観を示す斜視図である。ホルダ部材7は、磁性体リング材130の位置ズレを抑制して位置合わせを補助する位置ガイドとしての機能を有している。ホルダ部材7を取り付ける工程では、図7に示すように、コイル121を覆うようにエポキシ樹脂をモールドしてホルダ部材7を取り付ける。本実施の形態では、コイル121、及び端子部122の一部を覆うように、ホルダ部材7を形成した。
【0033】
溶融エポキシ樹脂は粘度が低いため、成型時にコイル121や磁性体リング積層体13に樹脂の流れによる圧力がかかりにくく、コイル121の断線等の不具合が発生しにくい。よって、次工程のアウターモールドを形成する工程に先立ってホルダ部材7を形成する工程を実行しておくことで、アウターモールド8を形成する工程の際にホルダ部材7がコイル121を保護する役割を果たし、アウターモールド8を形成する工程を実行する時にコイル121の断線が生じにくくなる。なお、エポキシ樹脂以外に、フェノール樹脂やシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0034】
(6)アウターモールド8を形成する工程
図8は、アウターモールド8の形成後のトルクセンサ1の外観を示す斜視図である。アウターモールド8を形成する工程では、図8に示すように、ホルダ部材7を覆うように樹脂をモールドしてアウターモールド8を形成する。アウターモールド8は、磁性体リング積層体13をモールドして固定及び保護する役割を果たす。
【0035】
アウターモールド8は、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PPA(ポリフタルアミド)、あるいはPA(ポリアミド)等の熱可塑性樹脂からなるものを用いることができる。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と比較して、低コストであり、成形性が良く(バリがでない)、割れにくい等の理由により好ましい。なお、アウターモールド8の材料としては、熱硬化性樹脂等も用いてもよい。
【0036】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、磁性体リングに発生する渦電流を抑制する作用及び効果が得られる。
【0037】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0038】
[1]検出の対象となるトルクが付与される回転軸部材を挿通する中空部が形成されたボビン部材(11)と、前記ボビン部材(11)の外周面に巻かれたコイル部材(121)と、前記コイル部材(121)の周囲を覆うように配設された磁性体リング積層体(13)と、を備え、前記磁性体リング積層体(13)は、電磁鋼材からなる円環状の形状を有する複数のリング部材が中心軸方向に積層されているとともに、前記複数のリング部材のうち積層方向において隣接するリング部材がそれぞれ絶縁されている、磁歪式トルクセンサ(1)。
[2]前記複数のリング部材は、表面に絶縁被膜が形成されている、前記[1]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
[3]前記絶縁被膜は、酸化被膜である、前記[2]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
[4]前記複数のリング部材は、それぞれ同一の形状及び寸法を有している、前記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
[5]前記複数のリング部材は、それぞれ真円度0.1以内の円形状の内縁を有する、前記[4]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
[6]前記複数のリング部材は、それぞれ0.1mm以上1.0mm以内の厚さを有する、前記[4]又は[5]に記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
[7]10個以上100個以内の前記複数のリング部材を備える、前記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載の磁歪式トルクセンサ(1)。
[8]前記複数のリング部材は、加工突起が発生している面が同一の方向を向くように積層されている、前記[1]乃至[7]のいずれか1つに記載の歪式トルクセンサ(1)。
【0039】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0040】
1…トルクセンサ
10…シャフト
10a…外周面
11…ボビン部材
110…本体部
110a…貫通孔
110b…内周面
112…鍔部
12…フレキシブル基板(FPC)
121…コイル
122…端子部
13…磁性体リング積層体
130…磁性体リング材
130a…表面
131…貫通孔
132…バリ
61…信号線
62…心線
63…ジャケット
7…ホルダ部材
8…アウターモールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8