(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】非水系二次電池接着層用スラリーおよび接着層付き非水系二次電池用電池部材、並びに、非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/411 20210101AFI20240305BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240305BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240305BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240305BHJP
【FI】
H01M50/411
H01M4/13
H01M50/403 D
H01M50/42
H01M50/449
H01M50/46
(21)【出願番号】P 2020549093
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036852
(87)【国際公開番号】W WO2020066857
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2018182889
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】田中 慶一朗
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聖司
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-156395(JP,A)
【文献】特開2006-338907(JP,A)
【文献】特開平10-321200(JP,A)
【文献】特開2011-210412(JP,A)
【文献】特開2016-042459(JP,A)
【文献】特開2018-085270(JP,A)
【文献】特開平02-066852(JP,A)
【文献】特開2017-016754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/411
H01M 4/13
H01M 50/403
H01M 50/42
H01M 50/449
H01M 50/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体(A)、有機着色材料、および水を含む非水系二次電池接着層用スラリーであって、
前記有機着色材料の含有割合が、前記重合体(A)100質量部当たり0.1質量部以上50質量部以下であ
り、
前記有機着色材料が、金属イオンと金属錯体を形成可能な有機着色材料を含み、
前記金属イオンは、マンガンイオン、コバルトイオン、およびニッケルイオンからなる群より選択される一種以上である、非水系二次電池接着層用スラリー。
【請求項2】
前記有機着色材料は、25℃における電解液に対する溶解度が5質量%以下である、請求項1に記載の非水系二次電池接着層用スラリー。
【請求項3】
前記金属イオンと金属錯体を形成可能な有機着色材料は、フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物およびキナグリドンキノン化合物からなる群より選択される一種以上である、請求項1または2に記載の非水系二次電池接着層用スラリー。
【請求項4】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に形成された接着層とを備え、
前記基材がセパレータ基材または電極基材であり、
前記接着層が、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系二次電池接着層用スラリーの乾燥物である、接着層付き非水系二次電池用電池部材。
【請求項5】
基材上に、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水系二次電池接着層用スラリーを塗工する塗工工程と、
前記基材上に塗工された前記非水系二次電池接着層用スラリーを乾燥して接着層を形成する乾燥工程と、
前記基材上に形成された接着層の位置を検出し、当該接着層の状態の良否判断を行う検出工程と、
前記接着層の状態が良好と判断された場合には、前記接着層が形成された前記基材と被接着部材とを前記接着層を介して接着する接着工程とを含み、
前記基材がセパレータ基材および電極基材の少なくとも一方である、非水系二次電池用積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の非水系二次電池用積層体の製造方法により得られる非水系二次電池用積層体を用いる、非水系二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池接着層用スラリーおよび接着層付き非水系二次電池用電池部材、並びに、非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池などの非水系二次電池(以下、「二次電池」と略記する場合がある。)は、小型で軽量、且つエネルギー密度が高く、更に繰り返し充放電が可能という特性があり、幅広い用途に使用されている。そして、二次電池は、一般に、正極、負極、および、正極と負極とを隔離して正極と負極との間の短絡を防ぐセパレータなどの電池部材を備えている。
【0003】
このような二次電池を製造するに際し、二次電池の電池部材同士、例えば電極とセパレータを接着して二次電池用積層体とすることが従来から行われている。ここで、電池部材同士の接着は、例えば、表面に接着層を備える電池部材を製造し、当該電池部材を他の電池部材と接着することで行われる。そして、表面に接着層を備える電池部材は、接着性を有する重合体(結着材)等が溶媒中に分散および/または溶解してなる二次電池接着層用スラリーを電池部材表面に塗工し、その後乾燥することで、形成することができる。
【0004】
例えば、特許文献1では、結着材として、コア部およびシェル部を備えるコアシェル構造を有する有機粒子であって、コア部およびシェル部のそれぞれが、所定の電解液膨潤度を有する重合体からなる有機粒子が用いられている。また、特許文献1では、上記有機粒子を含むスラリーを塗布および乾燥して接着層を有する電池部材を製造し、この接着層を有する電池部材を他の電池部材と接着して二次電池用積層体を作製している。そして、得られた二次電池用積層体を電解液と共に電池容器に封入して、二次電池を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、接着層を介して電池部材同士を接着させる場合には、接着層を所望の位置に形成することが肝心である。そのため、接着層を用いた二次電池用積層体の製造においては、電池部材上に形成された接着層の位置を把握する技術が求められていた。なお、このような技術は、インクジェット法等を用いて二次電池接着層用スラリーを塗工し、所望のパターン形状の接着層を形成して二次電池用積層体を製造する場合(電池部材の表面(塗工面)の一部のみに二次電池接着層用スラリーを塗工する場合)に特に求められていた。
しかしながら、上記従来の二次電池接着層用スラリーを用いて接着層を形成した場合、形成された接着層の位置を検出し難いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置の容易な検出を可能とする非水系二次電池接着層用スラリーを提供することを目的とする。
また、本発明は、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置を容易に検出可能な接着層付き非水系二次電池用電池部材を提供することを目的とする。
更に、本発明は、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、不良品の発生を抑制可能な非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、重合体(A)、有機着色材料、および水を含み、前記有機着色材料の含有割合が所定の範囲内である非水系二次電池接着層用スラリーを用いれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、位置を容易に検出可能な接着層を形成できることを見出した。そして、本発明者は、上記知見に基づき本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池接着層用スラリー(以下、「接着層用スラリー」と略記する場合がある。)は、重合体(A)、有機着色材料、および水を含む非水系二次電池接着層用スラリーであって、前記有機着色材料の含有割合が、前記重合体(A)100質量部当たり0.1質量部以上50質量部以下であることを特徴とする。このように、重合体(A)、有機着色材料、および水を含み、且つ、有機着色材料の含有割合が、重合体(A)100質量部当たり0.1質量部以上50質量部以下である接着層用スラリーを用いれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、位置を容易に検出可能な接着層を形成することができる。
【0010】
ここで、本発明の非水系二次電池接着層用スラリーにおいて、前記有機着色材料は、25℃における電解液に対する溶解度が5質量%以下であることが好ましい。25℃における電解液に対する有機着色材料の溶解度が5質量%以下であることで、本発明の接着層用スラリーを用いて作製された二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
なお、本発明において、「溶解度」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0011】
また、本発明の非水系二次電池接着層用スラリーにおいて、前記有機着色材料が、金属イオンと金属錯体を形成可能な有機着色材料を含むことが好ましい。有機着色材料が金属イオンと金属錯体を形成可能な有機着色材料を含んでいれば、本発明の接着層用スラリーを用いて二次電池を製造する際に、正極活物質等から電解液中に溶出した金属イオンは、有機着色材料と金属錯体を形成することによって捕捉される。これにより、電解液中に溶出した金属イオンが低減されるため、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0012】
そして、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の接着層付き非水系二次電池用電池部材(以下、「接着層付き電池部材」と略記する場合がある。)は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された接着層とを備え、前記基材がセパレータ基材または電極基材であり、前記接着層が上述したいずれかの非水系二次電池接着層用スラリーの乾燥物であることを特徴とする。本発明の接着層付き電池部材が備える接着層は、本発明の接着層用スラリーの乾燥物からなり、有機着色材料を含むことで着色しているため、検出し易い。したがって、本発明によれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置を容易に検出可能な接着層付き電池部材を提供することができる。
【0013】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池用積層体(以下、「二次電池用積層体」と略記する場合がある。)の製造方法は、基材上に、上述したいずれかの非水系二次電池接着層用スラリーを塗工する塗工工程と、前記基材上に塗工された前記非水系二次電池接着層用スラリーを乾燥して接着層を形成する乾燥工程と、前記基材上に形成された接着層の位置を検出し、当該接着層の状態の良否判断を行う検出工程と、前記接着層の状態が良好と判断された場合には、前記接着層が形成された前記基材と被接着部材とを前記接着層を介して接着する接着工程とを含み、前記基材がセパレータ基材および電極基材の少なくとも一方であることを特徴とする。このように、本発明の二次電池接着層用スラリーを用いれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置を容易に検出し、接着層の状態が良好な基材と被接着部材とを接着することができる。そのため、二次電池用積層体に良好な電池特性を発揮させつつ、二次電池用積層体を製造する際の不良品の発生を抑制することができる。
【0014】
更に、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の非水系二次電池の製造方法は、上述した非水系二次電池用積層体の製造方法により得られる非水系二次電池用積層体を用いることを特徴とする。このように、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法によって得られる非水系二次電池用積層体を用いれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、二次電池を製造する際の不良品の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置の容易な検出を可能とする非水系二次電池接着層用スラリーを提供することができる。
また、本発明によれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置を容易に検出可能な接着層付き非水系二次電池用電池部材を提供することができる。
更に、本発明によれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、不良品の発生が抑制された非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池接着層用スラリーは、本発明の接着層付き非水系二次電池用電池部材、非水系二次電池用積層体、および非水系二次電池の製造に用いることができる。
【0017】
(非水系二次電池接着層用スラリー)
本発明の二次電池接着層用スラリーは、重合体(A)、有機着色材料、および水を含み、任意に、重合体(B)およびその他の成分を更に含み得る。なお、重合体(A)としては、1種類の重合体(A)を含んでいてもよく、2種類以上の重合体(A)を任意の割合で含んでいてもよい。
【0018】
<重合体(A)>
重合体(A)は、セパレータ基材や電極基材などの電池部材同士を接着させる結着材として機能する成分である。重合体(A)を含むことにより、本発明の接着層用スラリーを用いて形成された接着層は、電池部材同士を良好に接着することができる。
【0019】
[組成]
そして、重合体(A)を調製するために用いる単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2-(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル単量体;マレイミド、フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを意味する。
【0020】
ここで、重合体(A)の構造形態は、特に限定されないが、粒子状であることが好ましく、コア部がシェル部に覆われているコアシェル構造を有することがより好ましい。重合体(A)がコアシェル構造を有する粒子状重合体であることにより、本発明の接着層用スラリーを用いて形成された接着層において、接着性を向上させることができる。なお、シェル部は、コア部の外表面の全体を覆っていてもよいし、コア部の外表面を部分的に覆っていてもよい。また、外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆うシェル部である。従って、例えば、シェル部の外表面(即ち、重合体(A)の周面)からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える重合体(A)は、シェル部がコア部の外表面を部分的に覆う重合体に該当する。
【0021】
<<コア部>>
-コア部の組成-
そして、重合体(A)のコア部の調製に用いられる単量体としては、上述した単量体と同様の単量体が挙げられる。それらの中でも、接着層を介して電池部材同士を強固に接着させる観点から、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の少なくとも一方を用いることが好ましく、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体の双方を用いることがより好ましい。即ち、重合体(A)のコア部は、芳香族ビニル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、芳香族ビニル単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の双方を含むことがより好ましい。
なお、本発明において、「単量体単位を含む」とは、「その単量体を用いて得た重合体中に単量体由来の繰り返し単位が含まれている」ことを意味する。
【0022】
そして、重合体(A)のコア部における芳香族ビニル単量体単位の割合は、接着層を介して電池部材同士をより強固に接着させる観点から、重合体(A)のコア部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
【0023】
また、重合体(A)のコア部における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、接着層を介して電池部材同士をさらに強固に接着させる観点から、重合体のコア部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることが更に好ましく、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
なお、本発明において、各単量体単位の割合は、1H-NMRなどの核磁気共鳴(NMR)法を用いて測定することができる。
【0024】
また、重合体(A)のコア部は、酸基含有単量体単位を含み得る。ここで、酸基含有単量体単位を形成し得る酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体が挙げられる。
【0025】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0026】
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
【0027】
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル-(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アリルとは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
【0028】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
また、重合体(A)のコア部における酸基含有量体単位の割合は、重合体(A)のコア部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。酸基含有量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、重合体(A)の調製時に、コア部の重合体(A)の分散性を高め、コア部の重合体(A)の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くすることができる。
【0030】
そして、重合体(A)のコア部は、水酸基含有単量体単位を含んでいてもよい。ここで、水酸基含有単量体単位を形成し得る水酸基含有単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0031】
また、重合体(A)のコア部が、水酸基含有単量体単位を含む場合には、重合体(A)のコア部における水酸基含有単量体単位の割合は、重合体(A)のコア部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。水酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、重合体(A)の調製時に、コア部の重合体(A)の分散性をより高め、重合体(A)のコア部の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部をより形成し易くすることができる。
【0032】
また、重合体(A)のコア部は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体単位を形成し得る架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成し得る単量体である。重合体(A)のコア部が架橋性単量体単位を含むことにより、後述する重合体(A)のTHF不溶分率および電解液膨潤度を、好適な範囲に容易に収めることができる。
【0033】
架橋性単量体としては、例えば、当該単量体に2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、1,3-ブタジエン、イソプレン、アリルメタクリレート等のジビニル単量体;エチレンジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル単量体;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル単量体;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。これらの中でも、重合体(A)のTHFへの不溶分率および電解液膨潤度を容易に制御する観点から、ジ(メタ)アクリル酸エステル単量体がより好ましい。
これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
また、重合体(A)のコア部における架橋性単量体単位の割合は、重合体(A)のコア部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。架橋性単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、接着層を介して電池部材同士を一層強固に接着させつつ、重合体(A)のTHF不溶分率および電解液膨潤度を制御して二次電池のレート特性を更に向上させることができる。
【0035】
-コア部のガラス転移温度(Tg)-
そして、重合体(A)のコア部のガラス転移温度(Tg)は、40℃以上であることが好ましく、50℃以上であることがより好ましく、60℃以上であることが更に好ましく、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが更に好ましい。重合体(A)のコア部のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて二次電池を製造する際に、製造プロセス中における電池部材同士の接着性(以下、「プロセス接着性」と言う。)の低下を抑制することができる。また、重合体(A)のコア部のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、重合体(A)の重合安定性の低下を抑制することができる。
【0036】
<<シェル部>>
-シェル部の組成-
また、重合体(A)のシェル部を調製するために用いる単量体としては、例えば、重合体(A)のコア部を製造するために用い得る単量体として例示した単量体と同様の単量体が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0037】
これらの単量体の中でも、重合体(A)のシェル部の調製に用いられる単量体としては、接着層を介して電池部材同士をより一層強固に接着させる観点から、(メタ)アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体の少なくとも一方を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体と芳香族ビニル単量体の双方を用いることがより好ましい。即ち、重合体(A)のシェル部は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の双方を含むことがより好ましい。
【0038】
そして、重合体(A)のシェル部における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の割合は、接着層を介して電池部材同士をより一層強固に接着させる観点から、重合体(A)のシェル部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0039】
また、重合体(A)のシェル部における芳香族ビニル単量体単位の割合は、接着層を介して電池部材同士をより一層強固に接着させる観点から、重合体(A)のシェル部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることが更に好ましく、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。
【0040】
重合体(A)のシェル部は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および芳香族ビニル単量体単位以外に、酸基含有単量体単位を含み得る。ここで、酸基含有単量体単位を形成し得る酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、および、リン酸基を有する単量体が挙げられる。具体的には、酸基含有単量体としては、コア部の形成に使用し得る酸基含有単量体と同様の単量体が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸が更に好ましい。
【0042】
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0043】
そして、重合体(A)のシェル部における酸基含有単量体単位の割合は、重合体(A)のシェル部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、重合体(A)の分散性を向上させ、接着層を介して電池部材同士をより一層強固に接着させることができる。
【0044】
ここで、重合体(A)のシェル部は、水酸基含有単量体単位を含み得る。
重合体(A)のシェル部の水酸基含有単量体単位を形成し得る水酸基含有単量体としては、重合体(A)のコア部の形成に使用し得る水酸基含有単量体と同様の単量体が挙げられる。
【0045】
そして、重合体(A)のシェル部が水酸基含有単量体単位を含む場合には、重合体(A)のシェル部における水酸基含有単量体単位の割合は、重合体(A)のシェル部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。水酸基含有単量体単位の割合を上記範囲に収めることにより、重合体(A)の分散性をより向上させ、接着層を介して電池部材同士をより一層強固に接着させることができる。
【0046】
また、重合体(A)のシェル部は、架橋性単量体単位を含み得る。重合体(A)のシェル部の架橋性単量体単位を形成し得る架橋性単量体としては、例えば、重合体(A)のコア部に用い得る架橋性単量体として例示したものと同様の単量体が挙げられる。これらの中でもジ(メタ)アクリル酸エステル単量体およびジビニル単量体が好ましく、アリルメタクリレートがより好ましい。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0047】
そして、重合体(A)のシェル部における架橋性単量体単位の割合は、重合体(A)のシェル部に含まれる全繰り返し単位(全単量体単位)を100質量%として、0.05質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.2質量%以上であることが更に好ましく、4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、2質量%以下であることが更に好ましい。
【0048】
-シェル部のガラス転移温度-
そして、重合体(A)のシェル部のガラス転移温度は、-50℃以上であることが好ましく、-45℃以上であることがより好ましく、-40℃以上であることが更に好ましく、60℃以下であることが好ましく、50℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることが更に好ましい。重合体(A)のシェル部のガラス転移温度が上記下限値以上であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて製造された二次電池において、レート特性の低下を抑制することができる。また、重合体(A)のシェル部のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて二次電池を製造する際に、接着層の接着性を良好にして不良品の発生を更に抑制することができる。
【0049】
なお、重合体(A)のコア部やシェル部のガラス転移温度は、例えば、コア部やシェル部の調製に用いる単量体の種類や割合を変更することにより、調整することができる。
【0050】
また、重合体(A)は、所期の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部およびシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。具体的には、例えば、重合体(A)は、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、重合体(A)をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。ただし、所期の効果を顕著に発揮する観点からは、重合体(A)はコア部およびシェル部のみを備えることが好ましい。
【0051】
[テトラヒドロフラン(THF)不溶分率]
そして、重合体(A)のテトラヒドロフラン(THF)不溶分率は、80質量%以上であることが好ましく、82質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。重合体のTHF不溶分率が上記下限値以上であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて製造された二次電池において、レート特性の低下をより抑制することができる。
【0052】
なお、本発明において、「THF不溶分率」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。また、重合体(A)のTHF不溶分率は、例えば、重合体(A)の調製に用いる単量体の種類や割合を変更することにより、調整することができる。
【0053】
[体積平均粒子径]
また、重合体(A)の体積平均粒子径は、100nm以上であることが好ましく、150nm以上であることがより好ましく、180nm以上であることが更に好ましく、400nm以下であることが好ましく、350nm以下であることがより好ましく、300nm以下であることが更に好ましい。重合体(A)の体積平均粒子径が上記下限値以上であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて二次電池を製造する際に、プロセス接着性の低下を更に抑制することができる。また、重合体(A)の体積平均粒子径が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いて本発明の接着層用スラリーを塗工する際に、接着層用スラリーの吐出性の低下を抑制することができる。
【0054】
なお、本発明において、「体積平均粒子径」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。また、重合体(A)の体積平均粒子径は、例えば、重合体(A)の調製に用いる重合開始剤や乳化剤の種類や量を変更することにより、調整することができる。
【0055】
[電解液膨潤度]
そして、重合体(A)の電解液膨潤度は、1.01倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることが更に好ましく、20倍以下であることが好ましく、10倍以下であることがより好ましく、5倍以下であることが更に好ましい。重合体(A)の電解液膨潤度が上記下限値以上であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて二次電池を製造する際に、プロセス接着性の低下を更に効果的に抑制することができる。また、重合体(A)の電解液膨潤度が上記上限値以下であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて製造した二次電池において、レート特性の低下を更に抑制することができる。
【0056】
なお、本発明において、「電解液膨潤度」は、本明細書の実施例に記載の測定方法を用いて測定することができる。また、重合体(A)の電解液膨潤度は、例えば、重合体(A)の調製に用いる単量体の種類や割合を変更することにより、調整することができる。
【0057】
<重合体の調製方法>
そして、重合体(A)は、上述した単量体を重合することにより調製することができる。ここで、重合法としては、特に限定されず、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれも用いることができる。そして、上述したコアシェル構造を有する重合体(A)は、例えば、重合体(A)のコア部を形成する単量体と、重合体(A)のシェル部を形成する単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、コアシェル構造を有する重合体(A)は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
【0058】
そこで、以下に、多段階乳化重合法により上記コアシェル構造を有する重合体(A)を得る場合の一例を示す。
【0059】
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ハイドロキシエチル)-プロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0060】
そして、重合手順としては、まず、重合体(A)のコア部を形成する単量体および乳化剤を混合し、一括で乳化重合することによって重合体(A)のコア部を構成する粒子状重合体を得る。更に、この重合体(A)のコア部を構成する粒子状重合体の存在下に、重合体(A)のシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、上述したコアシェル構造を有する重合体(A)を得ることができる。
【0061】
この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う重合体(A)を調製する場合は、重合体(A)のシェル部を形成する単量体は、複数回に分割して、もしくは、連続して重合系に供給することが好ましい。重合体(A)のシェル部を形成する単量体を重合系に分割して、もしくは、連続で供給することにより、重合体(A)のシェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0062】
<有機着色材料>
そして、有機着色材料は、有機材料であって、本発明の接着層用スラリーを用いて形成される接着層に色を付与できるものであれば、特に限定されない。有機着色材料としては、例えば、ビタミンB2等の水溶性着色料や有機着色顔料等が挙げられる。
【0063】
<<有機着色顔料>>
ここで、有機着色顔料としては、特に限定されず、例えば、黒色、青色、黄色、赤色、緑色、橙色、紫色、白色等を呈する有機着色顔料が挙げられる。
【0064】
また、黒色を呈する有機着色顔料としては、オイルブラック等が挙げられる。
【0065】
そして、青色を呈する有機着色顔料としては、フタロシアニン化合物およびその誘導体、並びに、アントラキノン化合物、キナグリドンキノン化合物等の縮合多環系顔料等を用いることができ、具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、及び66等が挙げられる。
【0066】
更に、黄色や赤色を呈する有機着色顔料としては、モノアゾ顔料及びジスアゾ顔料等のアゾ系顔料、縮合多環系顔料を用いることができる。
【0067】
具体的には、黄色を呈する有機着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、24、60、62、65、73、74、75、83、93、97、99、100、101、104、108、117、120、123、138、139、148、150、151、154、155、156、166、169、173、176、177、179、180、181、183、185、186、191、192、193、199、及び213等が挙げられる。
【0068】
また、赤色を呈する有機着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、17、23、31、48:2、48:3、48:4、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、150、163、166、169、170、177、184、185、187、202、206、207、209、220、221、251、および、254等が挙げられる。
【0069】
更に、緑色を呈する有機着色顔料としては、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0070】
そして、橙色を呈する有機着色顔料としては、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31、40等が挙げられる。
【0071】
また、紫色を呈する有機着色顔料としては、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。
【0072】
更に、白色を呈する有機着色顔料としては、アクリル酸エステルが形成される密実粒子および、中空粒子等が挙げられる。
【0073】
そして、本発明の接着層用スラリーを用いて形成される接着層と、電極基材等の基材とを明確に区別する観点からは、有機着色材料は、基材の色と異なる色を呈することが好ましく、黒色および白色以外の色を呈することがより好ましい。
【0074】
また、有機着色材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。なお、有機着色材料の調製方法は、特に限定されず、従来公知の方法によって調製することができる。また、有機着色材料として、市販のものを使用してもよい。
【0075】
更に、有機着色材料は、金属イオンと金属錯体を形成可能な有機着色材料(以下、「錯体形成有機着色材料」とも言う。)を含むことが好ましい。より具体的には、錯体形成有機着色材料としては、接着層中に含有された状態にて、接着層に金属イオン捕捉能を付与し得る有機着色材料が好ましい。なお、有機着色材料を含む接着層が金属イオン捕捉能を呈し得るものであったか否かは、例えば、本明細書の実施例に記載の方法で測定した場合の金属イオン捕捉量が100ppm以上であったか否かを判定することにより決定することができる。有機着色材料が錯体形成有機着色材料を含んでいれば、二次電池接着層用スラリーを用いて二次電池を製造する際に、正極活物質等から電解液中に溶出した金属イオンは、錯体形成有機着色材料と金属錯体を形成することによって捕捉される。これにより、電解液中に溶出した金属イオンが低減されるため、二次電池におけるサイクル特性等の電池特性の低下を抑制することができる。
【0076】
そして、二次電池のサイクル特性を向上させる観点からは、錯体形成有機着色材料は、好ましくは多価金属イオン、より好ましくは周期律表の第4周期に属する金属のイオン、更に好ましくはマンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオンと金属錯体を形成可能な有機着色材料であることが好ましい。
【0077】
そして、錯体形成有機着色材料としては、例えば、上述したフタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、キナグリドンキノン化合物等の縮合多環系顔料が挙げられる。
【0078】
ここで、有機着色材料が錯体形成有機着色材料を含む場合、有機着色材料中の錯体形成有機着色材料の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは、有機着色材料の全量100質量部当たり、錯体形成有機着色材料の含有割合は80質量部以上であり、より好ましくは90質量部以上であり、更に好ましくは100質量部である。
【0079】
[溶解度]
また、有機着色材料は、25℃における電解液に対する溶解度が、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0質量%、即ち、電解液に対して不溶であることが特に好ましい。25℃の電解液に対する有機着色材料の溶解度が5質量%以下であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて製造された二次電池において、良好なサイクル特性を発揮させることができる。
【0080】
[有機着色材料の含有割合]
そして、接着層用スラリー中の有機着色材料の含有割合は、重合体(A)100質部当たり0.1質量部以上であることを必要とし、0.5質量部以上であることが好ましく、0.7質量部以上であることがより好ましく、50質量部以下であることを必要とし、40質量部以下であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。接着層用スラリー中の有機着色材料の含有割合が重合体(A)100質量部当たり0.1質量部以上であることで、本発明の接着層用スラリーを用いて製造された二次電池において、接着層の位置の容易な検出が可能となるとともに、優れたサイクル特性を発揮させることができる。また、接着層用スラリー中の有機着色材料の含有割合が50質量部以下であることにより、二次電池の性能や接着層の接着性が更に良好となるため、二次電池の製造において不良品の発生を十分に抑制することができる。
【0081】
<水>
そして、接着層用スラリーに含有される水は、接着層用スラリー中の各成分を溶解または分散させることができる量であれば特に限定されないが、接着層用スラリーの固形分濃度が好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下となるように調整することが好ましい。接着層用スラリーの固形分濃度が30質量%以下であれば、インクジェット法を用いて塗工する際の接着層用スラリーの吐出性が向上する。
【0082】
<その他の成分>
そして、接着層用スラリーが任意に含み得るその他の成分としては、上述した重合体(A)、有機着色材料および水以外の成分であれば、特に限定されない。その他の成分としては、例えば、上述した重合体(A)以外の結着材としての重合体(B)、既知の添加剤等が挙げられる。なお、接着層用スラリーが重合体(B)を含む場合には、重合体(A)が通常は上述したコアシェル構造を有し、重合体(B)が非コアシェル構造を有するものとする。
【0083】
<<重合体(B)>>
重合体(B)としては、上述した重合体(A)と異なる組成を有する重合体であれば特に限定されない。ここで、重合体(B)としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素系重合体;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体(NBR)等の共役ジエン系重合体;共役ジエン系重合体の水素化物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を含む重合体(アクリル重合体);ポリビニルアルコール(PVOH)等のビニルアルコール系重合体;が挙げられる。なお、重合体(B)は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0084】
-重合体(B)のガラス転移温度-
ここで、重合体(B)のガラス転移温度は、20℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましく、10℃以下であることが更に好ましい。重合体(B)のガラス転移温度が20℃以下であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて形成される接着層において、接着層からの粉落ちを更に抑制することができる。
【0085】
-重合体(B)の含有割合-
そして、重合体(B)の含有割合は、重合体(A)100質量%に対して1質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましく、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。重合体(B)の含有割合が上記下限値以上であれば、本発明の接着層用スラリーを用いて形成される接着層において、接着層からの粉落ちを十分に抑制することができる。また、重合体(B)の含有割合が上記上限値以下であれば、本発明の接着性スラリーを用いて製造される二次電池において、二次電池のレート特性の低下を一層十分に抑制することができる。
【0086】
-重合体(B)の調製方法-
そして、重合体(B)の調製方法は、特に限定されず、例えば、重合体(B)を構成する単量体を含む単量体混合物を乳化重合して得ることができる。乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用することができる。
【0087】
<<添加剤>>
また、既知の添加剤としては、特に制限されることなく、例えば、表面張力調整剤、分散剤、粘度調整剤、補強材、電解液添加剤等の成分が挙げられる。これらの添加剤は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のもの、例えば国際公開第2012/115096号に記載のものを使用することができる。なお、これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0088】
<非水系二次電池接着層用スラリーの粘度>
そして、本発明の接着層用スラリーの粘度(静的粘度)は、1mPa・s以上であることが好ましく、2mPa・s以上であることがより好ましく、5mPa・s以上であることが更に好ましく、30mPa・s以下であることが好ましく、10mPa・s以下であることがより好ましい。接着層用スラリーの粘度が上記下限値以上であれば、基材上での接着層用スラリーの定着性を向上させることができる。また、接着層用スラリーの粘度が上記上限値以下であれば、インクジェット法を用いて接着層用スラリーを塗工する際の接着層用スラリーの吐出性が更に向上する。
なお、本発明において、「粘度」は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0089】
<非水系二次電池用スラリーの調製方法>
そして、本発明の接着層用スラリーの調製方法は、特に限定されず、例えば、重合体(A)と、有機着色材料と、水と、任意の重合体(B)およびその他の成分とを混合して調製することができる。その際、混合方法は特に限定されず、例えば、撹拌容器、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、超音波分散機、らい潰機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックス等の一般的な混合装置を用いることができる。混合条件は特に限定されないが、通常、室温~80℃の範囲で、10分~数時間行うことができる。
【0090】
(接着層付き非水系二次電池用電池部材)
本発明の接着層付き二次電池用電池部材は、基材と、基材の少なくとも一方の面に形成された接着層とを備え、基材がセパレータ基材または電極基材であり、接着層が上述した非水系二次電池接着層用スラリーの乾燥物である。そして、本発明の接着層付き電池部材は、接着層が形成された基材が、当該接着層を介して被接着部材と良好に接着され得る。そして、本発明の二次電池用電池部材は、基材がセパレータ基材である場合には、接着層付き二次電池用セパレータとして使用し得、基材が電極基材である場合には、接着層付き二次電池用電極として使用し得る。
【0091】
<基材>
<<セパレータ基材>>
そして、セパレータ基材としては、特に限定されることはなく、二次電池の分野において使用され得る既知のセパレータ基材を用いることができる。また、セパレータ基材は、片面または両面に多孔膜層が形成されていてもよい。
【0092】
なお、セパレータ基材および多孔膜層としては、特に限定されることなく、例えば特開2012-204303号公報や特開2013-145763号公報に記載のもの等、二次電池の分野において使用され得る任意のセパレータ基材および多孔膜層を使用し得る。ここで、セパレータ基材に形成される多孔膜層は、例えば特開2013-145763号公報に記載されているような非導電性粒子を含む層であってもよい。
【0093】
<<電極基材>>
また、電極基材としては、特に限定されることはなく、二次電池の分野において使用され得る既知の電極基材を用いることができる。例えば、電極基材としては、集電体の片面または両面に電極合材層を形成してなる電極基材、あるいは、電極合材層上に多孔膜層を更に形成してなる電極基材を用いることができる。
【0094】
なお、集電体、電極合材層および多孔膜層としては、特に限定されることなく、例えば特開2013-145763号公報に記載のもの等、二次電池の分野において使用され得る任意の集電体、電極合材層および多孔膜層を使用し得る。
【0095】
<接着層>
そして、上述した基材の少なくとも一方の面に形成される接着層は、本発明の接着層用スラリーの乾燥物である。即ち、接着層は、少なくとも、重合体(A)に由来する重合体と、有機着色材料をと含み、任意に、重合体(B)に由来する重合体および/またはその他の成分を含み得る。更に、接着層には、乾燥により気化せずに残存する水が含まれていてもよいが、接着層の水分含有量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましく、0質量%(検出限界以下)であることが最も好ましい。
【0096】
ここで、接着層は、基材の接着層が形成される面(以下、「形成面」という。)全面に均一に形成されていてもよいし、平面視形状として、ストライプ状、ドット状、格子状などの所定のパターンに配列するように形成されていてもよい。
【0097】
また、接着層の断面形状は、特に限定されることなく、凸形状、凹凸形状、凹形状とすることができ、中でも、基材を、接着部材(例えば電極)とを接着層を介して一層強固に接着させる観点からは、凹凸形状であることが好ましい。なお、接着層の断面形状は、例えば、本発明の接着層用スラリーを用いて接着層を形成する際の乾燥条件を調整することにより変更することができる。
【0098】
そして、基材上に形成された接着層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、更に好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは3μm以下、より好ましくは1.5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。接着層の厚みが、上記下限値以上であれば、接着層の強度を十分に確保することができる。また、接着層の厚みが上記上限値以下であれば、本発明の二次電池用電池部材を備えた二次電池において、低温出力特性を更に向上させることができる。
【0099】
そして、インクジェット法を用いて接着層が形成される場合には、接着層の形成量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、100g/m2以下であることが好ましく、50g/m2以下であることがより好ましく、10g/m2以下であることが更に好ましい。接着層の形成量が0.1g/m2以上であれば、二次電池用電池部材と被接着部材とを接着層を介して更に強固に接着させることができる。一方、接着層の形成量が100g/m2以下であれば、本発明の二次電池用電池部材を備えた二次電池において、電池抵抗の上昇を抑制し、二次電池に良好な出力特性を発揮させることができる。
【0100】
なお、本発明において、「接着層の形成量」とは、形成面の単位面積当たりの接着層を形成するのに必要とする二次電池接着層用スラリーの量を指し、形成面上に形成された接着層用スラリーの質量を、当該接着層が形成された形成面の面積で割ることにより算出することができる。
【0101】
ここで、形成面上の一箇所以上、好ましくは二箇所以上にドット状の接着層が形成されている場合、形成されたドット1つ当たりの大きさは、25μm2以上であることが好ましく、50μm2以上であることがより好ましく、100μm2以上であることが更に好ましく、250000μm2以下であることが好ましく、200000μm2以下であることがより好ましく、100000μm2以下であることが更に好ましい。ドット1つ当たりの大きさが25μm2以上であれば、二次電池用電池部材と被接着部材とを接着層を介して一層強固に接着させることができる。また、ドット1つ当たりの大きさが250000μm2以下であれば、二次電池用電池部材を効率的に製造することができる。
【0102】
なお、上述したドット1つ当たりの大きさは、本発明の二次電池接着層用スラリーを形成面に供給する量、接着層の形状および範囲を変更することで調整することができる。具体的には、ドット1つ当たりの大きさは、例えば、本発明の二次電池接着層用スラリーを用いてインクジェット法により接着層を形成する場合には、インクジェットヘッドのノズルからの二次電池接着層用スラリーの吐出の諧調(同じポイントに吐出した回数)を変更することで調整することができる。
【0103】
(非水系二次電池用電池部材の製造方法)
そして、二次電池用電池部材の製造方法は、特に限定されず、例えば、本発明の二次電池接着層用スラリーを基材上に塗工する部材用塗工工程と、基材上に塗工された二次電池接着層用スラリーを乾燥して接着層を形成する部材用乾燥工程とを含む方法によって製造することができる。
【0104】
<部材用塗工工程>
部材用塗工工程では、基材の少なくとも一方の面に本発明の接着層用スラリーを塗工する。なお、接着層用スラリーが、錯体形成有機着色材料を含む場合には、錯体形成有機着色材料による金属イオンの捕捉効果を十分に得る観点からは、接着層用スラリーを塗工する基材は、セパレータ基材であることが好ましい。
【0105】
部材用塗工工程において、接着層用スラリーを基材上に塗工する方法は、特に限定されず、例えば、インクジェット法、グラビア法、ダイレクトロール法、スプレーコート法等の方法が挙げられる。中でも、接着層のパターン形成の容易性の観点からは、インクジェット法を用いて塗工することが好ましい。
【0106】
<部材用乾燥工程>
そして、部材用乾燥工程では、基材上に塗工された二次電池接着層用スラリーを乾燥して、接着層用スラリーの乾燥物からなる接着層を形成する。
【0107】
その際、接着層用スラリーの乾燥方法は、特に限定されることなく、ヒーター、ドライヤー、ヒートローラなどの加熱装置を用いて行うことができる。また、接着層用スラリーが塗工された基材の乾燥時の温度は、特に限定されることはないが、0℃以上とすることが好ましく、10℃以上とすることがより好ましく、15℃以上とすることが更に好ましく、200℃以下とすることが好ましく、150℃以下とすることがより好ましく、100℃以下とすることが更に好ましい。乾燥時の温度を0℃以上にすれば、乾燥速度を十分に高めることができる。また、乾燥時の温度を200℃以下にすれば、乾燥後に得られる接着層の形状を良好なものとし、二次電池用電池部材と被接着部材とを良好に接着させることができる。
【0108】
(非水系二次電池用積層体の製造方法)
そして、本発明の非水系二次電池用積層体の製造方法は、本発明の接着層用スラリーを用いた方法であって、
(1)基材上に本発明の接着層用スラリーを塗工する塗工工程と、
(2)基材上に塗工された接着層用スラリーを乾燥して接着層を形成する乾燥工程と、
(3)基材上に塗工された接着層用スラリーの位置を検出し、当該接着層の状態の良否判断を行う検出工程と、
(4)接着層の状態が良好と判断された場合には、接着層が形成された基材と、被接着部材とを接着する接着工程とを含むものである。
【0109】
なお、以下では、上述した(1)~(4)すべての工程を一つの製造ライン上で実施するものとして説明する。但し、本発明の二次電池用積層体の製造方法は、以下に説明する方法に限定されるものではない。
【0110】
<(1)塗工工程>
塗工工程では、基材上に、本発明の接着層用スラリーを塗工する。ここで、基材は、セパレータ基材および電極基材の少なくとも一方であればよい。また、基材としては、特に限定されることなく、「接着層付き非水系二次電池用電池部材」の項で挙げた基材を用いることができる。また、塗工条件や塗工方法は、「非水系二次電池用電池部材の製造方法」の項で挙げた条件を採用することができる。
【0111】
<(2)乾燥工程>
また、乾燥工程では、基材上に塗工された接着層用スラリーを乾燥して接着層用スラリーの乾燥物からなる接着層を形成する。ここで、接着層用スラリーの乾燥条件は、特に限定されることなく、「非水系二次電池用電池部材の製造方法」の項で挙げた乾燥方法および乾燥時間を採用することができる。
【0112】
<(3)検出工程>
検出工程では、基材上に形成された接着層の位置を検出し、接着層の状態の良否判断を行う。本発明によれば、接着層は、本発明の接着層用スラリーの乾燥物から形成されているため、当該接着層は、接着層用スラリー中の有機着色材料によって着色されている。したがって、本発明によれば、接着層の位置を、接着層の着色の有無に基づいて容易に検出することができる。なお、接着層の状態が良好であるか否かの判断基準は適宜設定すればよく、例えば、形成面の単位面積当たりに形成される接着層の量を判断基準とすることができる。また、接着層の検出方法は、特に限定されないが、高感度で検出する観点からは、カラー画像検出装置等の画像処理装置を用いて検出することが好ましい。
【0113】
<(4)接着工程>
接着工程では、接着層の状態が良好と判断された場合には、接着層が形成された基材と被接着部材とを、接着層を介して接着する。これにより、二次電池用積層体を得ることができる。ここで、接着層が形成された基材と被接着部材とを接着させる方法は、特に限定されないが、金型プレスやロールプレスなどを用いて加圧接着することが好ましい。なお、加圧接着の条件(圧力、温度、時間など)は、接着層用スラリー中に含まれる重合体(A)のガラス転移温度等に応じて適宜変更し得る。また、被接着部材としては、特に限定されず、例えば、基材が電極基材である場合には、被接着部材としてはセパレータ基材等が挙げられ、基材がセパレータ基材である場合には被接着部材としては電極基材等が挙げられる。
【0114】
なお、検出工程において接着層の状態が良好と判断されなかった場合には、製造ラインを一旦停止して、接着層が形成されていない基材を製造ラインから除去したり、基材上に接着層が形成されていない区間を除外したりして、接着工程を行えばよい。
【0115】
(非水系二次電池の製造方法)
本発明の非水系二次電池の製造方法は、上述した非水系二次電池用積層体の製造方法により製造される非水系二次電池用積層体を用いることを特徴とする。具体的には、本発明の製造方法により得られる二次電池は、例えば、正極と、負極と、セパレータと、電解液とを備え、接着層を介して接着された正極とセパレータ、および/または、接着層を介して接着された負極とセパレータとして、上述した二次電池用積層体を備えるものである。そして、本発明の製造方法により得られる二次電池は、本発明の接着層用スラリーを用いることで、セパレータと基材(正極または負極)とが良好に接着されているため、優れたプロセス接着性、サイクル特性およびレート特性を発揮し得る。
【0116】
なお、本発明の二次電池の製造方法において、上述した二次電池用積層体以外に正極、負極およびセパレータなどを使用する場合には、当該正極、負極およびセパレータとしては、非水系二次電池において用いられている既知の正極、負極およびセパレータを使用することができる。また、電解液としては、非水系二次電池において用いられている既知の電解液を使用することができる。
【0117】
そして、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、支持電解質としては、リチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、CF3SO3Li、C4F9SO3Li、CF3COOLi、(CF3CO)2NLi、(CF3SO2)2NLi、(C2F5SO2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが好ましく、LiPF6が特に好ましい。なお、支持電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0118】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合、有機溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれら有機溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類を用いることが好ましい。
【0119】
本発明の非水系二次電池は、例えば、上述した本発明の非水系二次電池用積層体の製造により製造された非水系二次電池用積層体、あるいは、非水系二次電池用積層体と非水系二次電池用積層体以外の正極、負極およびセパレータなどとを積層したものを、必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。
【0120】
また、本発明の二次電池には、内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0121】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0122】
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される単量体単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
【0123】
そして、実施例および比較例において、ガラス転移温度、重合体のTHF不溶分率、体積平均粒子径、電解液膨潤度、着色材料の溶解度、接着層用スラリーの粘度(静的粘度)、金属錯体形成能、プロセス接着性、サイクル特性、レート特性、および検出性は、下記の方法で測定および評価した。
【0124】
<ガラス転移温度>
重合体(A)および(B)のガラス転移温度(Tg)は、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR DSC6220」)を用いて測定した。具体的には、実施例および比較例で作製した各重合体(A)および(B)を含む水分散液から各重合体(A)および(B)を乾燥させたものを試験試料として、試験試料10mgをアルミニウムパンに入れ、計測した。なお、リファレンスとしては空のアルミニウムパンを用いた。そして、温度範囲-100℃~500℃(昇温速度10℃/分)の間で測定し、示差走査熱量分析(DSC)曲線を得た。なお、この測定はJIS Z 8703に規定された方法に準じた。この昇温過程において、得られたDSC曲線にて微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となる吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点での接線との交点に対応する温度を、ガラス転移温度(℃)として求めた。結果を表1に示す。
【0125】
<THF不溶分率>
重合体(A)のTHF不溶分率は、以下のようにして測定した。
重合体(A)が水中に分散された水分散液を、湿度50%、温度23℃~25℃の環境下にて乾燥させて、厚み3±0.3mmの乾燥フィルムを作製した。作製した乾燥フィルムを5mm角に裁断して乾燥フィルム片を用意した。
用意した乾燥フィルム片を精秤し、得られたフィルム片の重量をW0とした。
次に、乾燥フィルム片を、100gのTHFに温度23℃~25℃の環境下にて24時間浸漬させ、溶解させた。その後、THFから引き揚げた残留フィルム片を、温度105℃の環境下で3時間真空乾燥して、得られた残留フィルム片の重量(不溶分の重量)をW1とした。
そして、下記式に従って、重合体のTHF不溶分率(%)を算出した。結果を表1に示す。
THF不溶分率(%)=(W1/W0)×100
【0126】
<体積平均粒子径>
重合体(A)の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折法を用いて測定した。具体的には、実施例および比較例で作製した各重合体(A)を含む水分散溶液(固形分濃度0.1質量%)を試料とし、レーザー回折式粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、製品名「LS-230」)により得られた粒度分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を求め、体積平均粒子径(D50)とした。結果を表1に示す。
【0127】
<電解液膨潤度>
重合体(A)の電解液膨潤度は、以下のようにして測定した。
乾燥させた重合体0.2g程度を、200℃、5MPaのプレス条件で2分間プレスし、フィルムを得た。そして、得られたフィルムを1cm角に裁断し、試験片とした。この試験片の質量WE0を測定した。
上述の試験片を、電解液に60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、表面の電解液を拭き取り、浸漬試験後の試験片の重量WE1を測定した。
得られた重量WE0及びWE1の値から、重合体の電解液に対する膨潤度S(倍)を、S=WE1/WE0により求め、電解液膨潤度とした。
なお、上述した電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)との混合溶媒(体積比:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5)に、支持電解質としてLiPF6を1Mの濃度で溶解して得られる非水電解液を用いた。
【0128】
<溶解度>
着色材料の溶解度は、以下のようにして測定した。
フラスコに、実施例および比較例で使用した着色材料0.1mgを秤量した。そして、フラスコに10mgの電解液を加えた。なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(体積比:EC/EMC=1/1)を用いた。
フラスコについて、超音波処理を10分間行った後、25℃で2時間静置し、安定させた。
それから、フラスコの内容物をバイアル瓶に移し、遠心分離(5000rpmで30分間)を行い、不溶分を沈降させた。
そして、バイアル瓶内の沈降物の有無を目視で確認し、沈降物が確認された場合には、沈殿物をろ過後、60℃で3時間乾燥し、ろ過前後のフィルターの質量から、沈降物の質量を測定した。そして、下記式から溶解度を求めた。なお、溶解度が1%以下であれば「不溶」と判断した。結果を表1に示す。
溶解度=[(0.1(mg)-沈殿物の質量(mg))/電解液の質量(mg)]×100(%)
【0129】
<粘度>
接着層用スラリーの粘度η0(静的粘度)は、デジタル粘度計(英弘精機製「DV-E」)を用いて60rpm、25℃にて測定した。結果を表1に示す。
【0130】
<金属錯体形成能>
接着層用スラリーを塗工したセパレータ基材を面積100cm2の大きさに打ち抜き、試験片とした。そして、遷移金属イオンを捕捉する前の試験片の質量(A)を測定した。次いで、接着層用スラリーを塗工していないセパレータ基材を面積100cm2の大きさに打ち抜き、その質量(B)を測定した。質量(A)から質量(B)を差し引いた値を、遷移金属イオンを捕捉する前の接着層の質量(C)とした。
次いで、溶媒(エチルメチルカーボネート:エチレンカーボネート=70:30(質量比))に支持電解質としてのLiPF6を1Mの濃度で溶解させて得た電解液に、遷移金属イオン源として、塩化コバルト(無水)(CoCl2)、塩化ニッケル(無水)(NiCl2)、塩化マンガン(無水)(MnCl2)を溶解し、各金属イオン濃度が20質量ppmとなるよう電解液を調製し、非水系二次電池内のように、遷移金属イオンが所定割合で存在している状態を創出した。
次に、前述の試験片をガラス容器に入れ、前述の塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化マンガンを溶解した電解液15gを入れ、試験片を浸漬させ、25℃で5日間静置した。
その後、試験片を取り出し、ジエチルカーボネートで試験片を十分に洗浄し、試験片表面に付着したジエチルカーボネートを十分に拭き取った。その後、試験片をテフロン(登録商標)製ビーカーに入れ、硫酸および硝酸(硫酸:硝酸=0.1:2(体積比))を添加し、ホットプレートで試験片が炭化するまで加温した。更に、硝酸および過塩素酸(硝酸:過塩素酸=2:0.2(体積比))を添加した後、過塩素酸およびフッ化水素酸(過塩素酸:フッ化水素酸=2:0.2(体積比))を添加し、白煙が出るまで加温した。次いで、硝酸および超純水(硝酸:超純水=0.5:10(体積比))を20ml添加し、加温した。放冷後、超純水を総量が100mlとなるように加え、遷移金属イオンを含有する遷移金属イオン溶液を得た。
ICP質量分析計(PerkinElmer社製、「ELAN DRS II」)を用いて、得られた遷移金属イオン溶液中のコバルト、ニッケル、マンガンの量を測定した。そして、遷移金属イオン溶液中のコバルト、ニッケル、マンガンの量の総量を、遷移金属イオンを捕捉する前の接着層の質量(C)で割ることで、試験片中の遷移金属量(質量ppm)を算出し、得られた値を接着層の遷移金属イオン捕捉量とした。
そして、接着層の遷移金属イオン捕捉量が100ppm以上であれば、金属錯体形成能「有」、100ppm未満であれば、金属錯体形成能「無」と評価した。結果を表1に示す。
【0131】
<プロセス接着性>
実施例および比較例で作製した正極、負極、およびセパレータを、それぞれ幅10mm、長さ50mmに裁断した。そして、裁断した正極とセパレータ、及び、負極とセパレータを、それぞれ接着層用スラリーを用いて形成された平均厚み1μmの接着層を介して積層させた。得られた積層片を、温度80℃、荷重1MPaのロールプレスで10m/minでプレスして、正極とセパレータ、及び、負極とセパレータをそれぞれ接着させることにより、正極およびセパレータからなる試験片Aと、負極およびセパレータからなる試験片Bを得た。
これらの試験片A,Bを、電極(正極または負極)の集電体側の面を下にして、電極の表面にセロハンテープ(JIS Z1522に規定されるもの)を貼り付けた。なお、セロハンテープは水平な試験台に固定しておいた。そして、引張り速度50mm/分で、接着層が形成されたセパレータ基材の一端を鉛直上方に引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を試験片A,Bのそれぞれについて合計3回行った。測定された応力の平均値をピール強度(N/m)として求め、接着層を介して接着された電極基材とセパレータ基材とのプロセス接着性として下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
ピール強度が大きいほど、プロセス接着性が良好であることを示す。
A:ピール強度が5N/m以上
B:ピール強度が3N/m以上5N/m未満
C:ピール強度が1N/m以上3N/m未満
D:ピール強度が1N/m未満
【0132】
<サイクル特性>
作製したリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した。その後、25℃の環境下で、1Cの充電レートにて定電圧定電流(CC-CV)方式で4.35V(カットオフ条件:0.02C)まで充電し、1Cの放電レートにて定電流(CC)方式で3.0Vまで放電する充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。
更に、50℃の環境下で同様の充放電の操作を繰り返し、300サイクル後の容量をC1として測定した。そして、容量維持率ΔC=(C1/C0)×100(%)を算出し、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
容量維持率ΔCの値が高いほど、リチウムイオン二次電池は放電容量の低下が少なく、サイクル特性に優れていることを示す。
A:容量維持率ΔCが90%以上
B:容量維持率ΔCが85%以上90%未満
C:容量維持率ΔCが80%以上85%未満
D:容量維持率ΔCが80%未満
【0133】
<レート特性>
作製したリチウムイオン二次電池を25℃雰囲気下、0.5Cの定電流法によってセル電圧4.2Vまで充電した後3.0Vまで放電して、初期放電容量C0を測定した。
初期放電容量を測定したリチウムイオン二次電池を、25℃雰囲気下、0.2Cで電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電し、電圧4.2Vで充電電流が0.02Cになるまで定電圧充電を行った。続いて、3Cで電池電圧が3.0Vになるまで定電流放電を行い、3C容量とした。{(3C容量)/(初期放電容量C0)}×100(%)の値をレート特性(出力特性)とし、下記基準で評価を行った。結果を表1に示す。
A:レート特性が85%以上
B:レート特性が80%以上85%未満
C:レート特性が70%以上80%未満
D:レート特性が65%以上70%未満
【0134】
<検出性>
接着層の検出性は、以下の装置を用いて行った。
装置 株式会社ヒューテック製「無地シート面検査装置(MaxEye.Core/320C)」
カメラ 8000画素カラーデジタルカメラ
レンズ 株式会社ミュートロン製「F2.8/185」
幅分解能 0.03mm(画素)
流れ分解能 0.055mm/SCAN
光源 LEDライン照明
検査速度 100m/min
【0135】
具体的には、幅600mmのセパレータ基材に、スラリー供給機を使用して、インクジェット法により接着層用スラリーを塗工して、平均厚み1μmのドット状の接着層を形成した。そして、上記装置を用いて接着層の検出を行い、画像検出よりドット状の接着層の径(ドット径)を測定し、得られたドット径を実測値と比較した。そして、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
画像検出より得られたドット径が実測値に近いほど、接着層の検出性が高い、即ち、接着層の位置を容易に検出できることを示す。
A:実測値と同等
B:実測値±10%
C:実測値±30%以上
【0136】
(実施例1)
<重合体(A)の調製>
重合体(A)として、コアシェル構造を有する重合体を調製した。
まず、コア部の形成にあたり、攪拌機付き5MPa耐圧容器に、芳香族ビニル単量体としてのスチレン88部、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのブチルアクリレート6部、酸基含有単量体としてのメタクリル酸5部、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、シェル部を形成するために、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのブチルアクリレート80.7部、酸基含有単量体としてのメタクリル酸1部、芳香族ビニル単量体としてのスチレン18部、架橋性単量体としてのアリルメタクリレート0.3部を連続添加し、70℃に加温して重合を継続し、重合転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、重合体(A)を含む水分散液を得た。
【0137】
<重合体(B)の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、および過硫酸アンモニウム0.5部をそれぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、重合性単量体として、アクリル酸ブチル94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド1部およびアリルグリシジルエーテル1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて上記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、更に70℃で3時間撹拌して反応を終了し、重合体(B)としてのアクリル重合体を含む水分散液を得た。
【0138】
<非水系二次電池接着層用スラリーの調製>
上記重合体(A)分散液を固形分相当で100部と、上記重合体(B)分散液を固形分相当で20部とを、撹拌容器内で混合した後、更に有機着色材料としてのフタロシアニン1部と、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロース0.3部とを加えて混合した。得られた混合液をイオン交換水により希釈し、非水系二次電池接着層用スラリー(固形分濃度:15%)を得た。そして、得られた接着層用スラリーについて、粘度を測定した。
【0139】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiCoO2[体積平均粒子径(D50):12μm]を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS-100」)を2部、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製「#7208」)を固形分相当で2部、およびN-メチルピロリドンを、全固形分濃度が70%となるようにプラネタリーミキサーに投入し、混合して正極用スラリー組成物を得た。
【0140】
得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体としての厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させて正極原反を得た。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。
その後、ロールプレス機を用いて正極原反を圧延することにより、正極合材層を備える正極を得た。
【0141】
<負極の作製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3-ブタジエン33部、イタコン酸3.5部、スチレン63.5部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止し、負極合材層用結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記負極合材層用結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下になるまで冷却し、所望の負極合材層用結着材を含む水分散液を得た。
【0142】
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、製品名「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、およびイオン交換水を混合して固形分濃度68%に調整した後、25℃で60分間更に混合した。更に、イオン交換水で固形分濃度を62%に調整した後、25℃で15分間更に混合した。得られた混合液に、上記の負極合材層用結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
【0143】
得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体としての厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレス機で圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
【0144】
<セパレータ基材の準備>
セパレータ基材として、ポリプロピレン(PP)製のセパレータ(製品名「セルガード2500」)を準備した。
【0145】
<二次電池用積層体の製造>
準備した接着層用スラリー、正極、負極、およびセパレータを使用して、正極/接着層(iii)/セパレータ(A)/接着層(ii)/負極/接着層(i)/セパレータ(B)の順で積層されてなる二次電池用積層体を得た。
【0146】
具体的には、負極の表面に対し、スラリー供給機を用いて接着層用スラリーを塗工した。そして、負極の表面上に塗工された接着層用スラリーを乾燥することで、接着層用スラリーの乾燥物からなる接着層(i)を形成した。次に、接着層(i)が形成された負極とセパレータ(B)とを1MPaの圧力で接着して、[負極/セパレータ(B)]の順で積層されてなる積層体(I)を得た。
【0147】
積層体(I)の負極側の表面に対し、スラリー供給機を用いて接着層用スラリーを塗工した。そして、負極の表面上に塗工された接着層用スラリーを乾燥することで、接着層用スラリーの乾燥物からなる接着層(ii)を形成した。次に、接着層(ii)が形成された積層体(I)とセパレータ(A)とを1MPaの圧力で接着して、[セパレータ(A)/負極/セパレータ(B)]の順で積層されてなる積層体(II)を得た。
【0148】
更に、積層体(II)のセパレータ(A)側の表面に対し、スラリー供給機を用いて接着層用スラリーを塗工した。そして、セパレータ(A)の表面上に塗工された接着層用スラリーを乾燥することで、接着層用スラリーの乾燥物からなる接着層(iii)を形成した。次に、接着層(iii)が形成された積層体(II)と正極とを1MPaの圧力で接着して、[正極/セパレータ(A)/負極/セパレータ(B)]の順で積層されてなる二次電池用積層体を得た。
【0149】
なお、スラリー供給機としては、インクジェットヘッド(コニカ社製、製品名「KM1024」(シアモードタイプ))を備えるインクジェット方式のスラリー供給機を用いた。また、塗工パターンは斜めストライプ形状とし、塗工量(形成量)は0.5g/m2とした。そして乾燥条件として、接着層用スラリーの乾燥温度を70℃とし、乾燥時間を1秒間とした。
【0150】
<二次電池の製造>
上述のようにして得られた二次電池用積層体を適当な大きさに切断した。そして、切断した二次電池用積層体を5つ重ね合わせ、温度70℃、圧力1MPaで10秒間プレスして重ね合わせ体とした。
作製した重ね合わせ体を電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF6)を注液した。その後、アルミ包材外装の開口を150℃のヒートシールで閉口して、容量800mAhの積層型リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池について、サイクル特性およびレート特性を評価した。結果を表1に示す。
【0151】
(実施例2)
接着層用スラリー中の有機着色材料としてのフタロシアニンの含有割合を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして接着層用スラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0152】
(実施例3)
粘度調整剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして接着層用スラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0153】
(実施例4)
有機着色材料としてのフタロシアニンをピグメントレッド17に変更した以外は、実施例1と同様にして接着層用スラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0154】
(実施例5)
有機着色材料としてのフタロシアニンをピグメントオレンジ40に変更した以外は、実施例1と同様にしてスラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0155】
(実施例6)
有機着色材料としてのフタロシアニンをビタミンB2に変更した以外は、実施例1と同様にして接着層用スラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0156】
(比較例1)
有機着色材料を無機着色材料としてのオキシ水酸化鉄(FeOOH)に変更した以外は、実施例1と同様にして接着層用スラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0157】
(比較例2)
有機着色材料を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして接着層用スラリーを調製した。得られた接着層用スラリーを用いて、実施例1と同様にして測定および評価を行った。結果を表1に示す。
【0158】
【0159】
なお、表1中、
「BA」は、ブチルアクリレートを示し、
「MAA」は、メタクリル酸を示し、
「ST」は、スチレンを示し、
「AMA」は、アリルメタクリレートを示し、
「EDMA」は、エチレングリコールジメタクリレートを示し、
「CMC」は、カルボキシメチルセルロースを示す。
【0160】
表1より、実施例1~6から、有機着色材料を含む接着層用スラリーを用いて形成された接着層は、検出性が高いことが分かる。また、実施例1~6から、有機着色材料を含む接着層用スラリーを用いて形成された接着層はプロセス接着性が高く、また、そのような接着層を備える二次電池は、レート特性およびサイクル特性に優れていることがわかる。
一方で、比較例1から、有機着色材料に替えて無機着色材料を含む接着層用スラリーを用いて形成された接着層は、検出性は高いものの、当該接着層を備える二次電池は、サイクル特性に劣ることが分かる。また、比較例2から、有機着色材料を含まない接着層用スラリーを用いて形成された接着層は、プロセス接着性が高く、当該接着層を備える二次電池は、サイクル特性およびレート特性に優れているものの、検出性が低いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させつつ、接着層の位置の容易な検出を可能とする非水系二次電池接着層用スラリーおよび非水系二次電池用電池部材を提供することができる。
また、本発明によれば、二次電池に良好な電池特性を発揮させ得るとともに、不良品の発生を抑制しうる非水系二次電池用積層体の製造方法および非水系二次電池の製造方法を提供することができる。