(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】カルボキシル基含有ニトリルゴム
(51)【国際特許分類】
C08C 1/04 20060101AFI20240305BHJP
【FI】
C08C1/04
(21)【出願番号】P 2020563351
(86)(22)【出願日】2019-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2019050857
(87)【国際公開番号】W WO2020138184
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2018248414
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 清香
(72)【発明者】
【氏名】小野 健太郎
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-131654(JP,A)
【文献】特開2009-179686(JP,A)
【文献】特開2011-012142(JP,A)
【文献】特開2016-043528(JP,A)
【文献】特開2015-183029(JP,A)
【文献】特開2015-017168(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C1/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴムであって、
ナトリウムの含有量が1500重量ppm以下であり、
カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が350重量ppm以下であり、
140℃に
おいて、動的せん断ひずみ6.98%、周波数91Hzの条件で測定される貯蔵弾性率が350kPa以上であるカルボキシル基含有ニトリルゴム。
【請求項2】
メチルエチルケトン不溶解分が40重量%以下である請求項1に記載のカルボキシル基含有ニトリルゴム。
【請求項3】
ナトリウムの含有量が10重量ppm以上である請求項1または2に記載のカルボキシル基含有ニトリルゴム。
【請求項4】
カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が1.5重量ppm以上である請求項1~3のいずれかに記載のカルボキシル基含有ニトリルゴム。
【請求項5】
前記カルボキシル基含有ニトリルゴムが、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、およびα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有するものである請求項1~4のいずれかに記載のカルボキシル基含有ニトリルゴム。
【請求項6】
前記カルボキシル基含有ニトリルゴムが、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位、共役ジエン単量体単位(飽和化されている単位も含む)、およびα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有するものである請求項5に記載のカルボキシル基含有ニトリルゴム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のカルボキシル基含有ニトリルゴムに、架橋剤を配合してなるゴム組成物。
【請求項8】
請求項7に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有ニトリルゴムに関し、さらに詳しくは、生産性が良く、成形性(特に金型汚れ低減性)に優れ、かつ、耐水性(特に、耐LLC溶液性)および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできるカルボキシル基含有ニトリルゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニトリルゴム(アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム)は、耐油性、機械的特性、耐薬品性等を活かして、ホースやチューブなどの自動車用ゴム部品の材料として使用されており、また、ニトリルゴムのポリマー主鎖中の炭素-炭素二重結合を水素化した水素化ニトリルゴム(水素化アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム)はさらに耐熱性に優れるため、ベルト、ホース、ダイアフラム等のゴム部品に使用されている。
【0003】
このようなニトリルゴムを製造する方法としては、単量体混合物を重合し、得られた重合体を凝固させ、さらに脱水する方法などが用いられている。具体的には、単量体混合物を乳化重合法または溶液重合法により重合し、得られた重合体を凝固させることでクラム状のニトリルゴムを含有する含水クラムとし、含水クラムを脱水することによりニトリルゴムは製造される。
【0004】
たとえば、特許文献1には、含水クラムの脱水を、二軸押出機を用いて行う方法が開示されている。特許文献1に記載の技術のように、二軸押出機を用いることで、生産性の向上を図ることができるものの、この特許文献1に記載の方法など、従来の二軸押出機を用いる方法では、得られるニトリルゴムの耐水性が必ずしも十分でなく、たとえば、比較的温度の低い環境下において、耐水性が要求される用途、より具体的には、寒冷地における水系冷媒をシールするためのシール材用途などとして適さない場合があった。
【0005】
特に、水系冷媒としては、より低温での冷却が可能な冷媒として、LLC(LongLife Coolant)溶液などが用いられる場合があり、このようなLLC溶液をシールするためのシール材等には、より耐水性に優れていることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、生産性が良く、成形性(特に金型汚れ低減性)に優れ、かつ、耐水性(特に、耐LLC溶液性)および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできるカルボキシル基含有ニトリルゴムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴムを、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が特定量以下に抑えられたものとするとともに、140℃における貯蔵弾性率が特定の範囲にあるものとすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴムであって、ナトリウムの含有量が1500重量ppm以下であり、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が350重量ppm以下であり、140℃における貯蔵弾性率が350kPa以上であるカルボキシル基含有ニトリルゴムが提供される。
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、メチルエチルケトン不溶解分が40重量%以下であることが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ナトリウムの含有量が10重量ppm以上であることが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が1.5重量ppm以上であることが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、およびα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有するものであることが好ましい。
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位、共役ジエン単量体単位(飽和化されている単位も含む)、およびα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位を含有するものであることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、上記のカルボキシル基含有ニトリルゴムに、架橋剤を配合してなるゴム組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性が良く、成形性(特に金型汚れ低減性)に優れ、かつ、耐水性(特に、耐LLC溶液性)および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできるカルボキシル基含有ニトリルゴムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法に用いる押出機を示す概略図である。
【
図2】
図2は、押出機の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<カルボキシル基含有ニトリルゴム>
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴムであって、
ナトリウムの含有量が1500重量ppm以下であり、
カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が350重量ppm以下であり、140℃における貯蔵弾性率が350kPa以上であるものである。
【0014】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、たとえば、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、カルボキシル基含有単量体、および、必要に応じて用いられるこれらと共重合可能なその他の単量体を、乳化重合法などにより共重合し、共重合により得られる共重合体のラテックスについて、共重合体中の炭素-炭素二重結合を水素化した後、水素化により得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを、凝固および乾燥することにより得られるものである。
【0015】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を有するα,β-エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α-クロロアクリロニトリル、α-ブロモアクリロニトリルなどのα-ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα-アルキルアクリロニトリル;などが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体は、一種単独で用いてもよく、これらの複数種を併用してもよい。
【0016】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5~60重量%、より好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは15~25重量%である。α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合に、耐油性および耐寒性を良好にバランスさせることができる。
【0017】
カルボキシル基含有単量体としては、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能であり、かつ、エステル化等されていない無置換の(フリーの)カルボキシル基を1個以上有する単量体であれば特に限定されない。
【0018】
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、およびα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体などが挙げられる。また、カルボキシル基含有単量体には、これらの単量体のカルボキシル基がカルボン酸塩を形成している単量体も含まれる。さらに、α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸の無水物も、共重合後に酸無水物基を開裂させてカルボキシル基を形成するので、カルボキシル基含有単量体として用いることができる。
【0019】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エチルアクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。
【0020】
α,β-エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、フマル酸やマレイン酸などのブテンジオン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アリルマロン酸、テラコン酸などが挙げられる。また、α,β-不飽和多価カルボン酸の無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。
【0021】
α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn-ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn-ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn-ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn-ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
【0022】
カルボキシル基含有単量体は、一種単独で用いてもよく、複数種を併用してもよい。これらの中でも、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体が好ましく、α,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体がより好ましく、マレイン酸モノアルキルエステルがさらに好ましく、マレイン酸モノn-ブチルが特に好ましい。なお、上記アルキルエステルのアルキル基の炭素数は、2~8が好ましい。
【0023】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、カルボキシル基含有単量体単位の含有量は、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。カルボキシル基含有単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の機械特性および耐圧縮永久歪み性をより良好なものとすることができる。
【0024】
また、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ゴム弾性がより高められたものとするという観点より、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、およびカルボキシル基含有単量体に加えて、共役ジエン単量体を共重合したものであることが好ましい。
【0025】
共役ジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、クロロプレンなどの炭素数4~6の共役ジエン単量体が好ましく、1,3-ブタジエンおよびイソプレンがより好ましく、1,3-ブタジエンが特に好ましい。これらのなかでも、1,3-ブタジエンが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、共役ジエン単量体単位(飽和化されている単位も含む)の含有割合は、好ましくは20~68重量%、より好ましくは35~64重量%、さらに好ましくは36~63重量%である。共役ジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合に、耐油性、耐熱老化性、および耐化学的安定性を良好なものとしながら、ゴム弾性を適切に高めることができる。
【0027】
また、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、耐寒性をより高めるという観点より、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、およびカルボキシル基含有単量体に加えて、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体を共重合したものであることが好ましい。
【0028】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、特に限定されないが、たとえば、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アミノアルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル単量体、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸フルオロアルキルエステル単量体などが挙げられる。これらのなかでも、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体、またはα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましい。
【0029】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル単量体としては、アルキル基として、炭素数が3~10でアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が3~8であるアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が4~6であるアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0030】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸n-ペンチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ドデシルなどのアクリル酸アルキルエステル単量体;アクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシルなどのアクリル酸シクロアルキルエステル単量体;アクリル酸メチルシクロペンチル、アクリル酸エチルシクロペンチル、アクリル酸メチルシクロヘキシルなどのアクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ペンチル、メタクリル酸n-オクチルなどのメタクリル酸アルキルエステル単量体;メタクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロペンチルなどのメタクリル酸シクロアルキルエステル単量体;メタクリル酸メチルシクロペンチル、メタクリル酸エチルシクロペンチル、メタクリル酸メチルシクロヘキシルなどのメタクリル酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;クロトン酸プロピル、クロトン酸n-ブチル、クロトン酸2-エチルヘキシルなどのクロトン酸アルキルエステル単量体;クロトン酸シクロペンチル、クロトン酸シクロヘキシル、クロトン酸シクロオクチルなどのクロトン酸シクロアルキルエステル単量体;クロトン酸メチルシクロペンチル、クロトン酸メチルシクロヘキシルなどのクロトン酸アルキルシクロアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0031】
また、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体としては、アルコキシアルキル基として、炭素数が2~8でアルコキシアルキル基を有するものが好ましく、炭素数が2~6であるアルコキシアルキル基を有するものがより好ましく、炭素数が2~4であるアルコキシアルキル基を有するものがさらに好ましい。
【0032】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸アルコキシアルキルエステル単量体の具体例としては、アクリル酸メトキシメチル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸メトキシブチル、アクリル酸エトキシメチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピル、アクリル酸エトキシドデシル、アクリル酸n-プロポキシエチル、アクリル酸i-プロポキシエチル、アクリル酸n-ブトキシエチル、アクリル酸i-ブトキシエチル、アクリル酸t-ブトキシエチル、アクリル酸メトキシプロピル、アクリル酸メトキシブチルなどのアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;メタクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸メトキシブチル、メタクリル酸エトキシメチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸エトキシペンチル、メタクリル酸n-プロポキシエチル、メタクリル酸i-プロポキシエチル、メタクリル酸n-ブトキシエチル、メタクリル酸i-ブトキシエチル、メタクリル酸t-ブトキシエチル、メタクリル酸メトキシプロピル、メタクリル酸メトキシブチルなどのメタクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;などが挙げられる。
【0033】
これらα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体のなかでも、アクリル酸アルキルエステル単量体、アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体が好ましく、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸メトキシエチルがより好ましい。また、これらα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0034】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量は、好ましくは10~60重量%であり、より好ましくは15~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%である。α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした場合における耐寒性をより適切に高めることができる。
【0035】
また、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、α,β-エチレン性不飽和ニトリル単量体、共役ジエン単量体、カルボキシル基含有単量体、およびα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体に加えて、これらと共重合可能なその他の単量体を共重合したものであってもよい。このようなその他の単量体としては、α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体(上述したものを除く)、エチレン、α-オレフィン単量体、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0036】
α,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸エステル単量体としては、アクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸α-シアノエチル、メタクリル酸シアノブチルなどの炭素数2~12のシアノアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチルなどの炭素数1~12のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸テトラフルオロプロピルなどの炭素数1~12のフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;などが挙げられる。
【0037】
α-オレフィン単量体としては、炭素数が3~12のものが好ましく、たとえば、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどが挙げられる。
【0038】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0039】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o-トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0040】
共重合性老化防止剤としては、N-(4-アニリノフェニル)アクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)メタクリルアミド、N-(4-アニリノフェニル)シンナムアミド、N-(4-アニリノフェニル)クロトンアミド、N-フェニル-4-(3-ビニルベンジルオキシ)アニリン、N-フェニル-4-(4-ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが挙げられる。
【0041】
これらの共重合可能なその他の単量体は、一種単独で用いてもよく、複数種類を併用してもよい。本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、これらの他の単量体単位の含有量は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0042】
本発明カルボキシル基含有ニトリルゴムのヨウ素価は、120以下であり、好ましくは60以下、より好ましくは35以下、特に好ましくは15以下であるヨウ素価が高すぎると、得られるゴム架橋物の耐熱性および耐オゾン性が低下するおそれがある。
【0043】
また、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ナトリウムの含有量が1500重量ppm以下であり、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が350重量ppm以下であり、かつ、140℃における貯蔵弾性率が350kPa以上の範囲にあるものである。
【0044】
本発明においては、カルボキシル基含有ニトリルゴム中のナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量を上記範囲とするとともに、140℃における貯蔵弾性率を上記範囲とすることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、生産性が良く、成形性(特に金型汚れ低減性)に優れ、かつ、耐水性(特に、耐LLC溶液性)および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えることのできるものとすることができるものである。
【0045】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中のナトリウムの含有量は、1500重量ppm以下であり、好ましくは1200重量ppm以下、さらに好ましくは1000重量ppm以下、さらにより好ましくは860重量ppm以下、特に好ましくは850重量ppm以下である。ナトリウムの含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは10重量ppm以上、より好ましくは50重量ppm以上、さらに好ましくは100重量ppm以上である。また、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴム中のカルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量は、350重量ppm以下であり、好ましくは300重量ppm以下、さらに好ましくは100重量ppm以下、さらにより好ましくは80重量ppm以下、特に好ましくは70重量ppm以下である。カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量の下限は、特に限定されないが、好ましくは1.5重量ppm以上、より好ましくは3.0重量ppm以上、さらに好ましくは4.5重量ppm以上である。ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量のいずれか一方あるいは両方が多すぎると、カルボキシル基含有ニトリルゴムとしての成形性が低下してしまうとともに、得られるゴム架橋物は、耐水性(特に、耐LLC溶液性)に劣るものとなってしまう。なお、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する際に、凝固剤として、1価または2価の金属の塩を用いるとともに、後述する本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法を採用する方法、タンク凝固やポンプ凝固の後、洗浄回数を増やす方法、凝固剤量を減量する方法、金属吸着物質含有水で洗浄する方法、洗浄の際のゴム形状を細かくする方法などが挙げられる。
【0046】
また、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、140℃における貯蔵弾性率が350kPa以上であり、好ましくは352kPa以上、より好ましくは353kPa以上であり、140℃における貯蔵弾性率の上限は、特に限定されないが、好ましくは5000kPa以下である。貯蔵弾性率が低すぎると、カルボキシル基含有ニトリルゴムとしての成形性が低下してしまう。貯蔵弾性率を上記範囲とする方法としては、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する際における凝固温度を調整する方法や、凝固に使用する凝固剤の種類や量を調整する方法、カルボキシル基含有ニトリルゴムの単量体組成を調整する方法、カルボキシル基含有ニトリルゴムの重量平均分子量を調整する方法、カルボキシル基含有ニトリルゴムを重合する際に連鎖移動剤の添加タイミングを制御する方法、カルボキシル基含有ニトリルゴムを重合する際の重合温度を制御する方法、後述する本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法を採用する方法などが挙げられ、これらは組み合わせてもよい。なお、140℃における貯蔵弾性率は、動的粘弾性測定装置を使用し、動的せん断ひずみ6.98%、周波数91Hz(せん断速度40s-1)、温度140℃の条件にて測定することができる。
【0047】
さらに、本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムは、成形性、ならびに、ゴム架橋物とした際における耐水性(特に、耐LLC溶液性)および耐圧縮永久歪み性をより向上させることができるという点より、メチルエチルケトン不溶解分が40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは35重量%以下であり、さらに好ましくは30重量%以下である。
【0048】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムのムーニー粘度〔ML1+4(100℃)〕は、好ましくは5~200、より好ましくは10~100、さらに好ましくは30~80である。ニトリルゴムのムーニー粘度は、連鎖移動剤の量、重合反応温度、重合開始剤濃度などの条件を適宜選定することにより調整することができる。
【0049】
本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムの製造方法は、特に限定されないが、上述した各単量体を、乳化重合法により共重合し、共重合により得られる共重合体のラテックスについて、共重合体中の炭素-炭素二重結合を水素化した後、水素化により得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを、凝固および乾燥することにより得られるものである。乳化重合に際しては、乳化剤、重合開始剤、分子量調整剤に加えて、通常用いられる重合副資材を使用することができる。
【0050】
共重合により得られる共重合体のラテックスについて、水素化を行う際における、水素化反応に用いる水素化触媒の種類と量、水素化温度などは、公知の方法に準じて決めればよい。
【0051】
また、水素化反応において、白金族元素を含有する水素化触媒などを用いた場合には、水素化触媒を除去する操作を行ってもよい。水素化触媒の除去は、たとえば、次の方法により行われる。すなわち、まず、水素化反応後のカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの、水系媒体中または重合体粒子中に存在する白金族元素化合物中の白金族元素を、錯化剤により錯化させることにより、不溶性錯体を形成させ、析出させる。そして、このようにして得られた不溶性錯体を含有するラテックスを、遠心分離装置に連続的に供給して遠心分離操作を連続的に行うことにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、白金族元素を不溶性錯体の状態で連続的に除去することができる。なお、この際には、遠心分離操作に代えて、別の分離方法を採用してもよい。
【0052】
<本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法>
次いで、上記のようにして得られるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法について説明する。
図1は本発明の本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法に用いる押出機1を示す概略図である。
【0053】
以下においては、本発明で用いるカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収装置として、
図1に示す押出機1を使用する場合を例示して、上記した方法にしたがって得られるカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムを含有する含水クラムを得て、次いで、この含水クラムから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収する方法について説明する。
【0054】
図1に示すように、本実施形態に係るカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収装置としての押出機1は、駆動ユニット2、および分割された18個のバレルブロック31~48で構成される単一のバレル3を有する。バレル3の内部には、凝固ゾーン100、排水ゾーン102、洗浄・脱水ゾーン104、および乾燥ゾーン106が、バレル3の上流側から下流側にかけて順次形成されている。
【0055】
凝固ゾーン100は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固剤を接触させて重合体を凝固させ、クラム状のカルボキシル基含有ニトリルゴムのスラリー液(クラムスラリー)を形成する領域である。排水ゾーン102は、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固後に生じる液体(セラム水)をクラムスラリーから分離し排出して含水状態のクラムを形成する領域である。洗浄・脱水ゾーン104は、含水状態のクラムを洗浄し、洗浄後のクラムから洗浄水を脱水して排出する領域である。乾燥ゾーン106は、脱水後のクラムを乾燥させる領域である。
【0056】
本実施形態では、バレルブロック31~36の内部が凝固ゾーン100に対応し、バレルブロック37の内部が排水ゾーン102に対応し、バレルブロック38~41の内部が洗浄・脱水ゾーン104に対応し、バレルブロック42~48の内部が乾燥ゾーン106に対応する。なお、各バレルブロックの設置数は、取り扱うカルボキシル基含有ニトリルゴムの組成等に応じて最適な数をもって実施することができ、
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0057】
凝固ゾーン100の一部を構成するバレルブロック32には、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを供給するためのフィード口320(図示省略)と、凝固剤を供給するためのフィード口321(図示省略)と、水蒸気を供給するためのフィード口322(図示省略)とがそれぞれ形成されている。また、排水ゾーン102を構成するバレルブロック37には、凝固後のカルボキシル基含有ニトリルゴムの水スラリーから分離されたセラム水を排出する排出スリット370が形成されている。さらに、洗浄・脱水ゾーン104の一部を構成するバレルブロック38には、洗浄水を受け入れる第1洗浄水フィード口380が形成されており、バレルブロック39には洗浄排水を外部へ排出する排水スリット390が形成されている。乾燥ゾーン106の一部を構成するバレルブロック43,46,47には、脱気のためのベント口430,460,470が、それぞれ形成されている。
【0058】
図2は、押出機1の内部に配置されるスクリューを示す概略図である。バレル3の内部には、
図2に示すようなスクリュー5が配置されている。スクリュー5の基端には、これを駆動するために、駆動ユニット2(
図1参照)に格納されたモータなどの駆動手段が接続されており、これによりスクリュー5は回転駆動自在に保持される。スクリュー5の形状は、特に限定されないが、たとえば、多種のスクリュー構成を持つスクリューブロックとニーディングディスクとを適宜組合せて構成することができる。
【0059】
本実施形態では、スクリュー5は、バレル3の内部に形成された上述した各ゾーン100,102,104,106に対応する領域に、それぞれ異なる態様のスクリュー構成を有する。ここで、
図3は、
図2のスクリューの一部破断概略図である。
図3に示すように、スクリュー5は、スクリューブロック50と、ニーディングディスク52とから構成される。なお、
図3は、スクリューブロック50と、ニーディングディスク52との組み合わせの一例を示す図であり、本実施形態は、この
図3に示す組み合わせに特に限定されるものではない。
【0060】
図2に示すように、本実施形態では、スクリュー5の長さをL(mm)とし、スクリュー5の外径をDa(mm)とした場合に、L/Daは、好ましくは30~100であり、より好ましくは40~80である。なお、スクリュー5の外径Daは、スクリューを構成するスクリューブロック50の山部50A(
図3参照)の、軸方向から見た場合における直径で定義される。
【0061】
また、
図4に示すように、本実施形態では、このようなスクリュー5を2本用いて、軸芯を平行にして互いに噛み合った状態とした二軸押出機としている。ここで、
図4は、
図1のIV-IV線と
図2のIV-IV線に沿う断面図であり、
図4に示す断面図は、押出機1のスクリューブロック50部分の断面図であって、谷部50Bを横切る断面図である。すなわち、
図4に示すように、2本のスクリュー5,5は、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bに噛み合わせるとともに、一方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の谷部50Bを、他方のスクリュー5の凝固用スクリューブロック50の山部50Aに噛み合わせる状態とした二軸噛合型である。二軸噛合型とすることにより、各ゾーン100,102,104,106における混合性を向上させることができる。また、2本のスクリュー5の回転方向は、同方向でも異方向でもよいが、セルフクリーニングの性能面からは同方向に回転する形式のものが好ましい。
【0062】
図4に示すように、本実施形態では、スクリューブロック50の外径をDa(mm)、スクリューブロック50の谷部50Bの短径をDi(mm)とした場合に、Da/Diが、好ましくは1.2~2.5の範囲、より好ましくは1.4~2.0、さらに好ましくは1.5~1.8の範囲である。Da/Diをこのような範囲とすることで、設備を大がかりなものとすることなく、回収率や生産レート(単位時間あたりに得られる乾燥されたニトリルゴムの量)を良好なものとすることができる。
【0063】
また、谷部50Bの短径Diは、
図4に示すように、谷部50Bのうち、谷部50Bの深さが、最も深くなっている部分である深さDi’(mm)である部分における、軸方向から見た場合における径である。すなわち、谷部50Bの短径Diは、外径Da、および谷部50Bのうち深さが最も深い部分である深さDi’から、Di=Da-Di’×2により求めることができる。
【0064】
ニーディングディスク52は、その断面形状が擬似楕円形、小判形または切頂三角形などの形状と、一定の厚みとを有し、その断面形状の対称軸を所定角度ずつずらしながら、複数枚積み重ね、かつスクリュー軸がその断面形状の回転中心軸と対応するように固定されて使用するものである。ここで、
図5は、
図1のV-V線と
図2のV-V線に沿う断面図であり、
図5に示す断面図は、押出機1のニーディングディスク52部分における断面図である。
図3、
図5においては、ニーディングディスク52を擬似楕円形の断面形状を有するものとし、これらを45度ずつずらし、5枚重ねた態様を示している。ただし、本実施形態においては、ニーディングディスク52としては、このような態様に特に限定されるものではなく、複数枚のニーディングディスク52を、所定の角度だけずらして組み合わせることで、順送りニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、または逆送りニーディングディスクとすることができる。順送りニーディングディスクとは、複数のニーディングディスク52を順送り方向に位相をずらすことで(たとえば、45°ずつずらすことや、60°ずつずらすことで)、順送り方向への送り能力を持たせたものであり、逆送りニーディングディスクとは、複数のニーディングディスク52を逆送り方向に位相をずらすことで(たとえば、270°ずつずらすことで)、逆送り方向への送り能力を持たせたものである。ニュートラルニーディングディスクとは、複数のニーディングディスク52を90°ずらして軸方向に平行に形成することで、送り能力を持たせないものである。
【0065】
また、
図3、
図5においては、ニーディングディスク52を擬似楕円形の断面形状を有するものとしているが、擬似楕円形とは楕円の長径の両端部を、小判形とは平行条の両端を、また切頂三角形とは正三角形の各頂点を含む部分を、それぞれの図形の回転中心を中心とする円弧でカットした形状を指す。いずれの形状の場合も、バレル3の内壁面3aに各該ディスクの端部が所定0.1~5mm程度のクリアランス(間隙)を保持するように設けられる。小判形または切頂三角形の場合は、各辺を凹形として鼓形または三角糸巻形としてもよい。
【0066】
また、本実施形態においては、洗浄・脱水ゾーン104の一部を構成するバレルブロック38に形成される、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとすることが好ましい。このように、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成することにより、後述するように、第1洗浄水フィード口380から、洗浄水を供給する際に、洗浄水を水圧を高めた状態で供給することができ、これにより、洗浄効果を高めることができ、回収されるカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、凝固剤等に起因する、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量を適切に低減できるものである。
【0067】
なお、本実施形態では、上述したバレルブロック48の下流側には、バレル3内で凝固・脱水・乾燥処理されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを、所定形状に押し出し製品化するためのダイ4が接続され、たとえば、シート状に押出すことができる。また、ダイ4には、通常、その吐出口よりも上流側に、異物等を捕捉するための金網が設けられる。
【0068】
次に、本実施形態に係る押出機1を用いたカルボキシル基含有ニトリルゴムの回収方法を説明する。
まず、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスをフィード口320につながる配管から、凝固剤をフィード口321につながる配管から、水蒸気をフィード口322につながる配管から、凝固ゾーン100に、それぞれ供給する。凝固剤としては、特に限定ないが、ポリマー・ムーニー粘度およびポリマーpHを適切な範囲に制御し、これにより得られるカルボキシル基含有ニトリルゴムの加工性等を十分なものとするとともに、140℃における貯蔵弾性率を適切に高めることができるという観点より、1価または2価の金属の塩が好適に用いられる。凝固剤の具体例としては、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化バリウムなどなどが挙げられる。これらのなかでも、140℃における貯蔵弾性率をより適切に高めることができるという観点より、塩化ナトリウムが好適に用いられる。
【0069】
カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、凝固剤、および水蒸気の凝固ゾーン100内への供給レートは、押出機1の大きさなどによって変わり、特に限定されない。
【0070】
また、フィード口321から供給する凝固剤の量は、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス中に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは0.5~200重量部であり、より好ましくは1~95重量部である。凝固剤の供給量を上記範囲とすることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。なお、凝固剤は、水などに溶解して、凝固液として、フィード口321から供給してもよい。この場合における凝固液中の凝固剤の濃度は、特に限定されないが、凝固液全体に対して、好ましくは1~35重量%程度である。
【0071】
凝固ゾーン100に供給されたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスと凝固剤と水蒸気とは、スクリュー5の回転により接触させられ、カルボキシル基含有ニトリルゴムは凝固し、直径約5~30mm程度のクラムとなって水中に懸濁し、クラム濃度が5~30重量%程度のスラリー液(クラムスラリー)となる。凝固ゾーン100内部の温度は、10~100℃とすることが好ましく、45~90℃とすることがより好ましい。凝固ゾーン100の温度をこのような範囲とすることにより、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を良好なものとしながら、カルボキシル基含有ニトリルゴムの凝固を十分に進行させることができ、未凝固分を低減することができ、収率の向上が可能となる。
【0072】
凝固ゾーン100で得られたクラムスラリーは、スクリュー5の回転により排水ゾーン102に送られる。排水ゾーン102では、バレルブロック37に設けられたスリット370から、クラムスラリーに含まれる高濃度の凝固剤をセラム水として排出させ、40~70重量%程度の水分を含有する含水状態のクラムが得られる。
【0073】
排水ゾーン102で得られた含水状態のクラムは、スクリュー5の回転により洗浄・脱水ゾーン104に送られる。洗浄・脱水ゾーン104では、バレルブロック38に設けられた洗浄水フィード口380から、内部に洗浄水を導入し、洗浄水と、クラムとを混合することで、クラムが洗浄され、次いで、脱水される。洗浄済みの排水はバレルブロック39に設けられたスリット390から排出される。
【0074】
本実施形態においては、洗浄・脱水ゾーン104を構成するバレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成(すなわち、第1洗浄水フィード口380の出口における、スクリュー5のスクリュー構成)を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとするものである。第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとすることにより、第1洗浄水フィード口380から供給される洗浄水を、水圧を高めた状態で供給することができ、これにより、洗浄効率を高めることができるものである。そして、これにより、回収されるカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、凝固剤等に起因する、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量を適切に低減することができる。
【0075】
特に、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成することにより、複数のニーディングディスク52の存在および複数のニーディングディスク52により混練されるクラムの存在により、当該部分の空間体積が小さいものとなり、第1洗浄水フィード口380から洗浄水供給される洗浄水の、バレルブロック38中における拡散が抑制される(あるいは、流路が確保し難くなる)こととなり、これにより供給される洗浄水の水圧を高めることができるものである。なお、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52により構成する際における、ディスク構成としては、特に限定されないが、順送りニーディングディスク、ニュートラルニーディングディスク、または逆送りニーディングディスクとすることが好ましく、これらは組み合わせてもよい。
【0076】
また、本実施形態においては、スクリュー5のうち、第1洗浄水フィード口380に対応する部分を、複数のニーディングディスク52より構成すればよいが、供給される洗浄水の水圧をより適切に高め、これにより、得られるカルボキシル基含有ニトリルゴム中に含まれる、凝固剤等に起因する、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量をより効果的に低減することができるという観点より、次のような態様とすることが好ましい。すなわち、第1洗浄水フィード口380が形成されるバレルブロック38中における、スクリュー5のスクリュー構成を、ニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)が30~100%となるような構成とすることが好ましく、ニーディングディスク52の占める割合が60~100%となるような構成とすることがより好ましく、このような構成とすることで、洗浄・脱水ゾーン104における、クラムの洗浄効率をより高めることができるものである。
【0077】
なお、洗浄・脱水ゾーン104全体における、スクリュー5中におけるニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)は、特に限定されないが、洗浄効率に加え、脱水効率も高めるという観点より、好ましくは5~85%、より好ましくは10~80%である。
【0078】
第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の供給レートは、特に限定されないが、好ましくは30~300L/hrであり、より好ましくは70~200L/hrである。また、第1洗浄水フィード口380から供給する洗浄水の量は、カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対して、好ましくは25~1000重量部、より好ましくは50~900重量部である。洗浄水の供給レート、洗浄水の量をそれぞれ上記範囲とすることにより、洗浄・脱水ゾーン104における洗浄効果をより高めることができ、これにより、回収されるカルボキシル基含有ニトリルゴム中における、凝固剤等に起因する、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量をより効果的に低減することができる。また、洗浄水の温度は、特に限定されないが、好ましくは10~90℃であり、より好ましくは40~80℃である。
【0079】
洗浄・脱水ゾーン104のうち、第1洗浄水フィード口380より前の領域においては、バレルブロック温度を40~100℃とすることが好ましく、50~95℃とすることがより好ましい。また、第1洗浄水フィード口380より後の領域においては、バレルブロック温度を80~200℃とすることが好ましく、90~180℃とすることがより好ましい。そして、洗浄・脱水ゾーン104において、2~20重量%程度の水分を含有する洗浄後のクラムが得られる。
【0080】
次いで、洗浄・脱水ゾーン104で得られたクラムは、スクリュー5の回転により乾燥ゾーン106に送られる。乾燥ゾーン106に送られたクラムは、スクリュー5の回転により可塑化混練されて融体となり、発熱して昇温しながら下流側へ運ばれる。そして、この融体がバレルブロック43,46,47に設けられたベント口430,460,470に達すると、圧力が解放されるために、融体中に含まれる水分が分離気化される。この分離気化された水分(蒸気)はベント配管(図示省略)を通じて外部へ排出される。乾燥ゾーン106内部の温度は、90~200℃とすることが好ましく、より好ましくは100~180℃である。また、内部圧力(ダイ部での圧力)は1000~13000kPa(G:ゲージ圧)程度である。なお、乾燥ゾーン106は、減圧にしてもよい。
【0081】
乾燥ゾーン106を通過した水分が分離されたクラムは、スクリュー5により出口側へ送り出され、実質的に水分をほとんど含まない状態(水分含有量が1.0重量%以下)でダイ4に導入され、ここで、たとえばシート状で排出された後、シートカッター(図示省略)に導入されて切断され、適当な長さとされる。
以上のようにして、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスから、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収することができる。
【0082】
なお、上述した実施形態では、洗浄・脱水ゾーン104を構成するバレルブロック38に第1洗浄水フィード口380を設け、第1洗浄水フィード口380から洗浄水を供給するような態様を例示したが、このような態様に特に限定されるものではなく、第1洗浄水フィード口380に代えて、バレルブロック40に第2洗浄水フィード口400を設け、第2洗浄水フィード口400から洗浄水を供給するような態様としてもよい。あるいは、洗浄・脱水ゾーン104における洗浄効果をより高めるという観点より、第1洗浄水フィード口380に加えて、第2洗浄水フィード口400からも洗浄水を供給するような態様としてもよい。なお、第2洗浄水フィード口400から洗浄水を供給する際の供給条件としては、第1洗浄水フィード口380から洗浄水を供給する場合と同様とすればよい。
【0083】
また、バレルブロック40に第2洗浄水フィード口400を設ける場合には、第2洗浄水フィード口400から供給する洗浄水の水圧を高め、これにより洗浄効果を高めるという観点より、バレルブロック40に設けられた第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー5のスクリュー構成(すなわち、第2洗浄水フィード口400の出口における、スクリュー5のスクリュー構成)を、複数のニーディングディスク52から構成されたものとすることが望ましい。さらには、第2洗浄水フィード口400から供給される洗浄水の水圧をより適切に高め、これにより、得られるカルボキシル基含有ニトリルゴム中に含まれる、凝固剤等に起因する、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量をより効果的に低減することができるという観点より、第2洗浄水フィード口400が形成されるバレルブロック40中における、スクリュー5のスクリュー構成を、ニーディングディスク52の占める割合(長さ方向に占める割合)が0~100%となるような構成とすることが好ましく、ニーディングディスク52の占める割合が70~100%となるような構成とすることがより好ましい。
【0084】
さらには、上述した実施形態では、バレルブロック32に、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスを供給するためのフィード口320と、凝固剤を供給するためのフィード口321と、水蒸気を供給するためのフィード口322とを設けるような態様を例示したが、たとえば、バレルブロック31あるいはバレルブロック32に、これらのフィード口(すなわち、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、凝固剤、および水蒸気を供給するためのフィード口)を設けるような態様を採用してもよい。
【0085】
さらに、上述した実施形態においては、押出機1内において、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックスの凝固を行う際に、フィード口320,321,322から、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、凝固剤および水蒸気を供給するような態様を例示したが、水蒸気については供給せずに、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス、および凝固剤のみを供給することで、凝固を行うような態様としてもよい。
【0086】
<ゴム組成物>
そして、このようにして回収されるカルボキシル基含有ニトリルゴムは、たとえば、架橋剤を配合することで、ゴム組成物として用いることができる。架橋剤としては、特に限定されないが、ゴム架橋物とした場合における耐圧縮永久歪み性をより高めることができるという点より、ポリアミン系架橋剤を好適に用いることができる。本発明のゴム組成物中における、架橋剤の含有量は、特に限定されないが、カルボキシル基含有ニトリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.1~20重量部であり、より好ましくは0.2~15重量部、さらに好ましくは0.5~10重量部である。
【0087】
また、本発明のゴム組成物には、架橋剤以外に、ゴム分野において通常使用される配合剤、たとえば、充填剤、酸化亜鉛や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、メタクリル酸亜鉛やアクリル酸亜鉛などのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸金属塩、架橋促進剤、共架橋剤、架橋助剤、架橋遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、ジエチレングリコールなどの活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料、発泡剤などを配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の目的や効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、配合目的に応じた量を配合することができる。
【0088】
さらに、本発明のゴム組成物には、カルボキシル基含有ニトリルゴム以外のゴムを配合してもよい。
【0089】
<ゴム架橋物>
また、上述したゴム組成物は、架橋することによりゴム架橋物とすることができる。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。
【0090】
なお、架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0091】
本発明のゴム架橋物は、上記した本発明のカルボキシル基含有ニトリルゴムを含有するゴム組成物を用いて得られるものであるため、耐水性(特に、耐LLC溶液性)および耐圧縮永久歪み性に優れるものである。そのため、シール材、ガスケット、ロール、ベルト、ホース、ブーツ、減衰材ゴム部品の他、ダストカバー、自動車内装部材、摩擦材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することができる。これらのなかでも、本発明のゴム架橋物は、水系冷媒(特に、耐LLC溶液)をシールするためのシール材用途(特に、ロングライフクーラント(LLC)など冷却液の密封用シール用途)として、特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0092】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」は、特に断りのない限り、重量基準である。
各種の物性については、以下の方法に従って評価した。
【0093】
[カルボキシル基含有ニトリルゴムを構成する各単量体単位の含有割合]
マレイン酸モノn-ブチル単位の含有割合は、2mm角のカルボキシル基含有ニトリルゴム0.2gに、2-ブタノン100mLを加えて16時間攪拌した後、エタノール20mLおよび水10mLを加え、攪拌しながら水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、カルボキシル基含有ニトリルゴム100gに対するカルボキシル基のモル数を求め、求めたモル数をマレイン酸モノn-ブチル単位の量に換算することにより算出した。
1,3-ブタジエン単位および飽和化ブタジエン単位の含有割合は、カルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、水素添加反応前と水素添加反応後のヨウ素価(JIS K 6235による)を測定することにより算出した。
アクリロニトリル単位の含有割合は、JIS K6384に従い、ケルダール法により、カルボキシル基含有ニトリルゴム中の窒素含量を測定することにより算出した。
アクリル酸n-ブチル単位、およびアクリル酸2-メトキシエチル単位の含有割合は、上記各単量体単位に対する残り成分として算出した。
【0094】
[カルボキシル基含有ニトリルゴムのムーニー粘度]
カルボキシル基含有ニトリルゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、JIS K6300に従って、100℃で測定した。
【0095】
[カルボキシル基含有ニトリルゴムの貯蔵弾性率G’]
カルボキシル基含有ニトリルゴムについて、動的粘弾性測定機:商品名「RPA2000」(アルファテクノロジーズ社製)を用いて、貯蔵弾性率G’の測定を行った。具体的には、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、ダイ4の形状に合わせて切り取り、約5gとなるように重ねたものを測定サンプルとし、動的せん断ひずみ6.98%、周波数91Hz(せん断速度40s-1)の条件にて、温度140℃における貯蔵弾性率G’(140℃)の測定を行った。
【0096】
[メチルエチルケトン不溶解分量]
カルボキシル基含有ニトリルゴム200mgを精秤し、100mlのメチルエチルケトンに浸漬して、25℃で24時間静置後、80メッシュのステンレス製金網でろ過し、金網上に残った膨潤状態の不溶解分について、溶剤の揮散を行うことで乾燥させ、乾燥後の重量を精秤した。そして、メチルエチルケトン浸漬前の重量に対する、乾燥後の不溶解分の重量の割合(重量%)を算出し、これをメチルエチルケトン不溶解分量とした。
【0097】
[カルボキシル基含有ニトリルゴム中のナトリウムの含有量、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量]
カルボキシル基含有ニトリルゴムに硝酸を添加して、マイクロウェーブ分解し、次いで、これを適宜希釈した後、得られた希釈液について、ICP-AES(ICPE-9000:島津製作所社製)を用いて、内標準検量線法にて、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量の測定を行った。
【0098】
[ダイ圧の上昇値]
押出機1により、カルボキシル基含有ニトリルゴムの回収処理を行った際における、ダイ4に取り付けられた金網(目開き約0.13mm)の圧力の上昇値を測定した。そして、測定された圧力の上昇値を、押出機1による処理量と、ダイ4の吐出口面積とで割ることで、単位量および単位体積当たりのダイ圧の上昇値(kPa/(kg・cm2))を測定した。
【0099】
[金型汚れ性]
金型汚れ性の評価方法は以下のとおりとした。未架橋のゴム組成物から約65gの試験片を作製した。これを150×80×2mmシート用金型に挟んだ。170℃において9~10MPaの圧力で30分間プレス後、金型表面の汚れ(付着ゴム、ゴム中残留副資材による金型汚染状況)を目視により判定した。未架橋のゴム組成物の金型汚れ性を見ることでゴム架橋物にする際の金型汚れの指標となる。
◎ : 汚れがない
○ : 汚れがほとんどない
△ : 汚れがある
× : 汚れがひどい
【0100】
[耐LLC性]
ゴム組成物を、縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形した後、170℃で4時間二次架橋を行うことでシート状のゴム架橋物を得た。そして、得られたシート状のゴム架橋物を、温度125℃としたLLC(Long Life Coolant)溶液中に、168時間浸漬させた。そして、下記式にしたがって、LLC溶液浸漬後の膨潤度を求めた。LLC溶液浸漬後の膨潤率が低いほど、耐水性、さらには耐LLC性に優れているといえる。
LLC溶液浸漬後の膨潤度(%)=(LLC溶液浸漬後のゴム架橋物の体積-LLC溶液浸漬前のゴム架橋物の体積)÷LLC溶液浸漬前のゴム架橋物の体積×100
【0101】
[圧縮永久歪み(O-リング圧縮永久歪み)]
内径30mm 、リング径3mmの金型を用いて、ゴム組成物を170℃で20 分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行うことにより、O-リング状の試験片を得た。そして、得られたO-リング状の試験片を用いて、O-リング状の試験片を挟んだ二つの平面間の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態で150℃にて168時間保持する条件で、JIS K6262に従って、圧縮永久歪みを測定した。この値が小さいほど、耐圧縮永久歪み性に優れる。
【0102】
[製造例1、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の製造]
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、濃度10%のナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩5部、アクリロニトリル20部、マレイン酸モノn-ブチル5部、アクリル酸n-ブチル31部、t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.75部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3-ブタジエン44部を仕込んだ。金属製ボトルを10℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、攪拌しながら重合反応を継続し、重合転化率が80%になった時点で、濃度2.5重量%の2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル水溶液(重合停止剤)4部を加えて重合反応を停止した。次いで、水温60℃で残留単量体を除去し、共重合体のラテックス(X1)(固形分濃度25重量%)を得た。
【0103】
次いで、上記にて得られた共重合体のラテックス(X1)に含有されるゴムの乾燥重量に対するパラジウム含有量が1000重量ppmになるように、オートクレーブ中に、上記にて得られた共重合体のラテックス(X1)およびパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、老化防止剤を適量加えることで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)(固形分濃度:11.7重量%)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位20.5重量%、1,3-ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)45.5重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、アクリル酸n-ブチル単位29.5重量%であり、ヨウ素価は11であった。
【0104】
[製造例2、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L2)の製造]
アクリロニトリルの使用量を16部とし、アクリル酸n-ブチルの使用量を36部とし、マレイン酸モノn-ブチルの使用量を5部とし、1,3-ブタジエンの使用量を44部とした以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L2)(固形分濃度:11.7重量%)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L2)に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位16.5重量%、1,3-ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)54.8重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、アクリル酸n-ブチル単位34.2重量%であり、ヨウ素価は9であった。
【0105】
[製造例3、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L3)の製造]
アクリロニトリルの使用量を21部とし、アクリル酸n-ブチルの使用量を31部とし、マレイン酸モノn-ブチルの使用量を5部とし、1,3-ブタジエンの使用量を43部とし、t-ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)の使用量を0.70部とし、重合転化率が85%になった時点で重合停止剤を加えた以外は、製造例1と同様にして、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L3)(固形分濃度:11.7重量%)を得た。得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L3)に含まれるカルボキシル基含有ニトリルゴムの組成は、アクリロニトリル単位21.4重量%、1,3-ブタジエン単位(飽和化されている部分を含む)44.3重量%、マレイン酸モノn-ブチル単位4.5重量%、アクリル酸n-ブチル単位29.8重量%であり、ヨウ素価は9であった。
【0106】
[実施例1]
製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)を、硫酸水溶液を用いて、pH=3.5に調整し、凝固液として塩化ナトリウム水溶液(濃度:25重量%)と、水蒸気とを使用して、
図1に示す押出機1により、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを回収した。
【0107】
押出機1としては、バレル3内に2本のスクリュー(シリンダ径=47mm、L/Da=63)5,5を平行に設け、これらのスクリュー5,5を同方向に回転駆動させるとともに、一方のスクリューの山部を他方のスクリューの谷部に噛み合わせ、一方のスクリューの谷部を他方のスクリューの山部に噛み合わせる状態とした、同方向に回転する二軸噛合型のスクリュー押出機を用いた。
【0108】
また、凝固ゾーン100に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL1を931mmとし、排水ゾーン102に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL2を161mmとし、洗浄・脱水ゾーン104に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL3を678mmとし、乾燥ゾーン106に対応する領域の軸方向のスクリュー長さL4を1058mmとした。
【0109】
また、実施例1においては、2本のスクリュー5,5として、下記表1に示すスクリュー構成αを採用し、各バレルブロックの設定温度は、下記表2に示す温度aとした。
【表1】
【表2】
【0110】
なお、表1中、「A」は、順送りニーディングディスク、「B」は、ニュートラルニーディングディスク、「C」は、逆送りニーディングディスク、「D」は、フルフライトスクリューを示す。
表1からも確認できるように、スクリュー構成αにおいては、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっている。なお、スクリュー構成αにおいては、バレルブロック38中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、100%である。
【0111】
そして、このような構成を有する押出機1のバレルブロック32に設けられたフィード口320から、pH=3.5に調整したカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)(固形分濃度:11.7重量%)を345kg/hrのレートで連続的に供給を開始した。同時に、バレルブロック32に設けられたフィード口321から、塩化ナトリウム水溶液(凝固剤濃度:25重量%)を112kg/hrのレートで、バレルブロック32に設けられたフィード口322から、水蒸気を0.35MPaの圧力で65kg/hrのレートで、それぞれ連続的に供給を開始した。すなわち、フィード口321を通過した際のセラム水の全量に対する凝固剤の濃度〔塩化ナトリウム量/全供給物からなるセラム水量〕を5.4重量%とし、カルボキシル基含有ニトリルゴム100部当たり、塩化ナトリウム70部となる量とした。同時に、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380から洗浄水を180L/hrの条件にて連続的に供給し、スクリュー回転数200rpmで押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、この際におけるダイ圧の上昇値を上記方法にしたがって、測定した。結果を表3に示す。
【0112】
そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムについて、上記方法にしたがい、ムーニー粘度、貯蔵弾性率G’(140℃)、メチルエチルケトン不溶解分量、ナトリウムの含有量、ならびに、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量の各測定を行った。結果を表3に示す。なお、これらの評価は、いずれも、ダイ4に取り付けられた金網およびダイ4を通過する前のものをサンプリングして測定したものであり、ダイ4に取り付けられた金網およびダイ4を通過前後で、これらの評価結果は、実質的に変わらないものと判断できる。
【0113】
次いで、バンバリーミキサを用いて、上記にて回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴム100部に、MTカーボン(Cancarb社製、商品名「Thermax MT」、サーマルブラック)100部、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル(ADEKA社製、商品名「アデカサイザーC-8」、可塑剤)20部、4,4’-ジ-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(大内新興化学社製、商品名「ノクラックCD」、老化防止剤)1.5部、ステアリン酸1部、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(東邦化学工業社製、商品名「フォスファノールRL210」、加工助剤)1部を添加して、50℃で5分間混合した。次いで、得られた混合物を50℃のロールに移して、エチレングリコールのジシクロヘキシルアミン塩と長鎖アルコールの混合物(大内新興化学工業社製、商品名「ノックマスターEGS」、エチレングリコールのジシクロヘキシルアミン塩80重量%、および長鎖アルコール(1-テトラデカノール、1-ヘキサデカノール、1-オクタデカノール)20重量%からなるもの、塩基性架橋促進剤)4部、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(デュポンダウエラストマー社製、商品名「Diak#1」、脂肪族多価アミン類に属するポリアミン架橋剤)2.2部を配合して、混練することにより、ゴム組成物を得た。
そして、得られたゴム組成物を用いて、上記方法に従い、金型汚れ性、耐LLC性および圧縮永久歪み(O-リング圧縮永久歪み)の評価を行った。結果を表3に示す。
【0114】
[実施例2]
実施例2においては、押出機1として、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成βであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に加えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400をさらに有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例2においては、このような構成の押出機1を用い、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400の合計の洗浄水量で160L/hrの供給レートにて、洗浄水をそれぞれ連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例2においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.3に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
なお、スクリュー構成βにおいては、表1からも確認できるように、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成は、いずれも、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっており、バレルブロック38中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、100%であり、バレルブロック40中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、99%である。
【0115】
[実施例3]
実施例3においては、押出機1として、バレルブロック33に3つのフィード口を有し、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成αであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に加えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400をさらに有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例3においては、このような構成の押出機1を用い、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)、塩化ナトリウム水溶液、および水蒸気の供給をバレルブロック33に設けられた3つのフィード口を使用するとともに、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400の合計の洗浄水量で260L/hrの供給レートにて、洗浄水をそれぞれ連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例3においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.2に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0116】
[実施例4]
実施例4においては、押出機1として、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成γであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に加えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400をさらに有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例4においては、このような構成の押出機1を用い、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400の合計の洗浄水量で260L/hrの供給レートにて、洗浄水をそれぞれ連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例4においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.5に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
なお、スクリュー構成γにおいては、表1からも確認できるように、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっていないものの、第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっており、バレルブロック40中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、99%である。
【0117】
[実施例5]
実施例5においては、押出機1として、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成βであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に代えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400を有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例5においては、このような構成の押出機1を用い、第2洗浄水フィード口400から、80L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例5においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.8に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0118】
[実施例6]
実施例6においては、押出機1として、バレルブロック33に3つのフィード口を有するとともに、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成βである以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例6においては、このような構成の押出機1を用い、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)、塩化ナトリウム水溶液、および水蒸気の供給をバレルブロック33に設けられた3つのフィード口を使用するとともに、第1洗浄水フィード口380から、180L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例6においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.2に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0119】
[実施例7]
実施例7においては、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成γであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に代えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400を有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例7においては、このような構成の押出機1を用い、第2洗浄水フィード口400から、80L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例7においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.2に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0120】
[実施例8]
製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)に代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L2)を、pH=3.3に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を使用した以外は、実施例1同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L2)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0121】
[実施例9]
実施例9においては、押出機1として、バレルブロック33に3つのフィード口を有するとともに、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成δである以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、実施例9においては、このような構成の押出機1を用い、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)、塩化ナトリウム水溶液、および水蒸気の供給をバレルブロック33に設けられた3つのフィード口を使用するとともに、第1洗浄水フィード口380から、180L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、実施例9においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.6に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
なお、スクリュー構成δにおいては、表1からも確認できるように、第1洗浄水フィード口380に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクにより構成されたものとなっており、バレルブロック38中における、スクリューの、ニーディングディスクの占める割合(長さ方向に占める割合)は、100%である。
【0122】
[比較例1]
比較例1においては、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成εであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に代えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400を有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、比較例1においては、このような構成の押出機1を用い、第2洗浄水フィード口400から、80L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、比較例1においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.4に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
なお、スクリュー構成εにおいては、表1からも確認できるように、第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクではなく、スクリューブロックにより構成されたものとなっている。
【0123】
[比較例2]
比較例2においては、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成ζであるとともに、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に代えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400を有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、比較例2においては、このような構成の押出機1を用い、塩化ナトリウム水溶液に代えて塩化カルシウム水溶液(凝固剤濃度:2重量%)を使用し、塩化カルシウム水溶液の供給レートを、カルボキシル基含有ニトリルゴム100部当たり、塩化カルシウム5部となる量とするとともに、第2洗浄水フィード口400から、180L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、比較例2においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.8に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
なお、スクリュー構成ζにおいては、表1からも確認できるように、第2洗浄水フィード口400に対応する部分における、スクリュー構成は、複数のニーディングディスクではなく、スクリューブロックにより構成されたものとなっている。
【0124】
[比較例3]
比較例3においては、押出機1として、バレルブロック35に3つのフィード口を有するとともに、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成βであり、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に加えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400をさらに有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。また、押出機1の温度は、表2に示す温度bとした。そして、比較例3においては、このような構成の押出機1を用い、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)、塩化ナトリウム水溶液、および水蒸気の供給をバレルブロック35に設けられた3つのフィード口を使用するとともに、第1洗浄水フィード口380および第2洗浄水フィード口400の合計の洗浄水量で260L/hrの供給レートにて、洗浄水をそれぞれ連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、比較例3においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.4に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0125】
[比較例4]
比較例4においては、押出機1として、バレルブロック33に3つのフィード口を有するとともに、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成αであり、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380に代えて、バレルブロック40に、第2洗浄水フィード口400を有する以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。また、押出機1の温度は、表2に示す温度cとした。そして、比較例4においては、このような構成の押出機1を用い、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)に代えて、製造例3で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L3)をpH=3.8(固形分濃度:11.7重量%)に調整して使用するとともに、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L3)、塩化ナトリウム水溶液、および水蒸気の供給をバレルブロック33に設けられた3つのフィード口を使用し、かつ、第2洗浄水フィード口400から、80L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L3)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0126】
[比較例5]
比較例5においては、押出機1として、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成αであり、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380を有しない以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、比較例5においては、このような構成の押出機1を用い、製造例1で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)に代えて、製造例2で得られたカルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L2)をpH=3.4(固形分濃度:11.7重量%)に調整して使用するとともに、洗浄・脱水ゾーン104において洗浄水を供給しなかった以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0127】
[比較例6]
比較例6においては、押出機1として、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成αであり、バレルブロック38に設けられた第1洗浄水フィード口380を有しない以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、比較例6においては、このような構成の押出機1を用い、洗浄・脱水ゾーン104において洗浄水を供給しなかった以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、比較例6においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.8に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0128】
[比較例7]
比較例7においては、押出機1として、スクリュー構成が、表1に示すスクリュー構成γである以外は、実施例1と同様の構成を有するものを用いた。そして、比較例7においては、このような構成の押出機1を用い、塩化ナトリウム水溶液の供給レートを、カルボキシル基含有ニトリルゴム100部当たり、塩化ナトリウム100部となる量とするとともに、第1洗浄水フィード口380から、80L/hrの供給レートにて、洗浄水を連続的に供給した以外は、実施例1と同様にして、押出機1を運転することで、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)の凝固、洗浄、脱水および乾燥を連続的に行うことで、カルボキシル基含有ニトリルゴムを、41kg/hrのレートにて、連続的に回収した。なお、比較例7においては、カルボキシル基含有ニトリルゴムのラテックス(L1)として、pH=3.7に調整したもの(固形分濃度:11.7重量%)を用いた。そして、回収されたカルボキシル基含有ニトリルゴムを用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表3に示す。
【0129】
【0130】
表3に示すように、ナトリウムの含有量が1500重量ppm以下であり、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が350重量ppm以下であり、140℃における貯蔵弾性率が350kPa以上であり、ヨウ素価が120以下であるカルボキシル基含有ニトリルゴムによれば、ダイ圧の上昇値が抑えられており、カルボキシル基含有ニトリルゴムの生産性がよく、これにより、ダイなどを用いて成形する際の成形効率が高く、成形性(金型汚れ低減性を含む成形性)に優れるものであり、しかも、耐LLC性および耐圧縮永久歪み性に優れたゴム架橋物を与えるこのできるものであった(実施例1~9)。
【0131】
一方、ナトリウムの含有量が1500重量ppm超であり、140℃における貯蔵弾性率が350kPa未満であるカルボキシル基含有ニトリルゴムは、ダイ圧の上昇値が大きく、ダイなどを用いて成形する際の成形効率が低く、また、成形性(特に金型汚れ低減性)に劣るものであり、ゴム架橋物とした場合における、耐LLC性に劣るものであった(比較例1,3~7)。
また、カルシウム、マグネシウムおよびアルミニウムの合計の含有量が350重量ppm超であるカルボキシル基含有ニトリルゴムは、成形性(特に金型汚れ低減性)に劣るものであり、さらに、ゴム架橋物とした場合における、耐圧縮永久歪み性に劣るものであった(比較例2)。
【符号の説明】
【0132】
1… 押出機
2… 駆動ユニット
3… バレル
31~48… バレルブロック
380… 第1洗浄水フィード口
4… ダイ
5… スクリュー