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特許7447888含フッ素共重合体、その製造方法、撥水撥油剤組成物及び物品
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  • 特許-含フッ素共重合体、その製造方法、撥水撥油剤組成物及び物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】含フッ素共重合体、その製造方法、撥水撥油剤組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08F 214/18 20060101AFI20240305BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08F214/18
C09K3/18 102
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021501956
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005883
(87)【国際公開番号】W WO2020175197
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019033222
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 弘之
(72)【発明者】
【氏名】竹村 元宏
(72)【発明者】
【氏名】富塚 雄二郎
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-100532(JP,A)
【文献】特表2009-513796(JP,A)
【文献】特表2010-519399(JP,A)
【文献】特開平07-133325(JP,A)
【文献】特開昭61-281112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00-2/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体aに基づく単位と下記単量体bに基づく単位とを含む含フッ素共重合体であり、
前記単量体aに基づく単位の割合が、前記含フッ素共重合体を構成する単位の全モル数に対して20~50モル%であり、
前記単量体bに基づく単位が、下記単量体b1に基づく単位を含み、
前記単量体b1に基づく単位の割合が、前記含フッ素共重合体を構成する単位の全モル数に対して50~80モル%であり、
質量平均分子量が20,000~100,000であり、
高速液体クロマトグラフィ測定により得られるクロマトグラムにおける前記含フッ素共重合体のピークの半値幅のピーク幅に対する比が0.35~0.55である含フッ素共重合体。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH=CH-R 式1
但し、Rは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な単量体(ただし、前記式1で表される化合物を除く。)。
単量体b1:下式2で表される化合物。
CH=CH-O-C(=O)-R 式2
但し、Rは、炭素数1~4のアルキル基である。
【請求項2】
前記単量体aにおけるRが炭素数4~6のペルフルオロアルキル基である請求項1に記載の含フッ素共重合体。
【請求項3】
前記単量体aが、CH=CH-CFCFCFCF又はCH=CH-CFCFCFCFCFCFである請求項1又は2に記載の含フッ素共重合体。
【請求項4】
前記単量体b1におけるRがメチル基である請求項1~3のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
【請求項5】
分子量分布(Mw/Mn)が1.0~4.5である請求項1~4のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体。
【請求項6】
下記単量体aと下記単量体bとを含む第1の単量体成分と水性媒体と乳化剤とを含む第1の混合液を乳化して乳化液を得、前記乳化液に、前記単量体aを含む第2の単量体成分と重合開始剤とを添加して第2の混合液を得、前記第2の混合液中で前記第1の単量体成分及び前記第2の単量体成分を重合する、含フッ素共重合体の製造方法であって、前記単量体aの割合が、前記第1の単量体成分のモル数及び前記第2の単量体成分のモル数の合計に対して20~50モル%であり、前記第1の単量体成分に含まれる単量体aの割合が、前記第1の単量体成分に含まれる単量体aと前記第2の単量体成分に含まれる単量体aとの合計に対して30~70質量%であり、前記単量体bが、下記単量体b1を含み、前記単量体b1の割合が、前記第1の単量体成分のモル数及び前記第2の単量体成分のモル数の合計に対して50~80モル%である、含フッ素共重合体の製造方法。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH=CH-R 式1
但し、Rは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な単量体(ただし、前記式1で表される化合物を除く。)。
単量体b1:下式2で表される化合物。
CH=CH-O-C(=O)-R 式2
但し、Rは、炭素数1~4のアルキル基である。
【請求項7】
前記第2の混合液中の単量体成分の割合(第1の単量体成分及び第2の単量体成分の合計含有量)が、10~70質量%である請求項6に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1の混合液を、せん断をかけるか又は高圧条件下で乳化する請求項6又は7に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項9】
前記含フッ素共重合体が、請求項1~のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体である請求項6~8のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体の製造方法であって、
前記単量体aと前記単量体bとからなる単量体成分と水性媒体と乳化剤と重合開始剤とを含む乳化液中で前記単量体成分を重合して含フッ素共重合体分散液を得、前記含フッ素共重合体分散液から含フッ素共重合体を回収し、前記含フッ素共重合体を水又は極性溶媒で洗浄する含フッ素共重合体の製造方法。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか一項に記載の含フッ素共重合体を含む、撥水撥油剤組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品。
【請求項13】
前記物品の表面における摩擦試験後の水の接触角が100度超である請求項12に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素共重合体、その製造方法、撥水撥油剤組成物及び物品に関する。
【背景技術】
【0002】
物品(樹脂表面や繊維製品、多孔質基材等)に撥水撥油性を付与する方法としては、ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有する含フッ素共重合体を水性媒体に分散させた撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理する方法が知られている。さらに、近年では環境対応型として炭素数6のペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有する含フッ素重合体が用いられている。しかし、(メタ)アクリレートに基づく単位におけるエステル結合は、アルカリ等による加水分解や紫外線による光分解で切断されやすい。そのため、含フッ素共重合体からペルフルオロアルキル基が失われて、物品の撥水撥油性が低下することがある。
【0003】
環境に対応し、かつアルカリ等による加水分解や紫外線による光分解により撥水撥油性が低下しにくい含フッ素共重合体としては、ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有しない含フッ素共重合体が知られている。ペルフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく単位を有しない含フッ素共重合体を含む撥水撥油剤組成物としては、(ペルフルオロアルキル)エチレンに基づく単位を有する含フッ素共重合体を含む撥水撥油剤組成物が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本特公平1-26601号公報
【文献】日本特許第3517977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、含フッ素共重合体を有機溶媒に溶解した撥水撥油剤組成物が記載されている(特許文献1の第9頁左欄)。この撥水撥油剤組成物を用いて物品を処理する場合、有機溶媒が揮発し、環境への影響が懸念される。
また、特許文献1に記載の含フッ素共重合体は、有機溶媒に溶解性しやすくするために比較的低分子量とされている(特許文献1の第2頁左欄)。また、特許文献1、2に記載の含フッ素共重合体は、塊状重合によって製造されているため、比較的低分子量の重合体が得られている(特許文献1、2の実施例)。比較的低分子量の含フッ素共重合体を含む撥水撥油剤組成物で処理された物品は、撥水撥油性の摩擦耐久性が不充分になりやすい。例えば、撥水撥油剤組成物で処理された物品同士の擦れや、撥水撥油剤組成物で処理された物品と他の物品との擦れが続くと、撥水撥油性が低下しやすい。
【0006】
本発明は、撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れた物品を得ることができる含フッ素共重合体、その製造方法、撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れた物品を得ることができる撥水撥油剤組成物、及び撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れた物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
<1>下記単量体aに基づく単位と下記単量体bに基づく単位とを含む含フッ素共重合体であり、
前記単量体aに基づく単位の割合が、前記含フッ素共重合体を構成する単位の全モル数に対して20~50モル%であり、
質量平均分子量が20,000~100,000であり、
高速液体クロマトグラフィ測定により得られるクロマトグラムにおける前記含フッ素共重合体のピークの半値幅のピーク幅に対する比が0.35~0.55である含フッ素共重合体。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH=CH-R 式1
但し、Rは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な単量体。
<2>前記単量体aにおけるRが炭素数4~6のペルフルオロアルキル基である前記<1>の含フッ素共重合体。
<3>前記単量体aが、CH=CH-CFCFCFCF又はCH=CH-CFCFCFCFCFCFである前記<1>又は<2>の含フッ素共重合体。
<4>前記単量体bに基づく単位の割合が、前記含フッ素共重合体を構成する単位の全モル数に対して50~80モル%である前記<1>~<3>のいずれかの含フッ素共重合体。
<5>前記単量体bに基づく単位が、下記単量体b1に基づく単位を含む前記<1>~<4>のいずれかの含フッ素共重合体。
単量体b1:下式2で表される化合物。
CH=CH-O-C(=O)-R 式2
但し、Rは、炭素数1~4のアルキル基である。
<6>前記単量体b1におけるRがメチル基である前記<5>の含フッ素共重合体。
<7>分子量分布(Mw/Mn)が1.0~4.5である前記<1>~<6>のいずれの含フッ素共重合体。
<8>下記単量体aと下記単量体bとを含む第1の単量体成分と水性媒体と乳化剤とを含む第1の混合液を乳化して乳化液を得、前記乳化液に、前記単量体aを含む第2の単量体成分と重合開始剤とを添加して第2の混合液を得、前記第2の混合液中で前記第1の単量体成分及び前記第2の単量体成分を重合する、含フッ素共重合体の製造方法であって、前記第1の単量体成分に含まれる単量体aの割合が、前記第1の単量体成分に含まれる単量体aと前記第2の単量体成分に含まれる単量体aとの合計に対して30~70質量%である、含フッ素共重合体の製造方法。
単量体a:下式1で表される化合物。
CH=CH-R 式1
但し、Rは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
単量体b:前記単量体aと共重合可能な前記単量体a以外の単量体。
<9>前期第2の混合液中の単量体成分の割合(第1の単量体成分及び第2の単量体成分の合計含有量)が10~70質量%である前記<8>の含フッ素共重合体の製造方法。
<10>前記第1の混合液を、せん断をかけるか又は高圧条件下で乳化する前記<8>又は<9>の含フッ素共重合体の製造方法。
<11>前記含フッ素共重合体が、前記<1>~<7>のいずれかの含フッ素共重合体である前記<8>~<10>のいずれかの含フッ素共重合体の製造方法。
<12>前記<1>~<7>のいずれかの含フッ素共重合体の製造方法であって、前記単量体aと前記単量体bとからなる単量体成分と水性媒体と乳化剤と重合開始剤とを含む乳化液中で前記単量体成分を重合して含フッ素共重合体分散液を得、前記含フッ素共重合体分散液から含フッ素共重合体を回収し、前記含フッ素共重合体を水又は極性溶媒で洗浄する含フッ素共重合体の製造方法。
<13>前記<1>~<7>のいずれかの含フッ素共重合体を含む、撥水撥油剤組成物。
<14>前記<13>の撥水撥油剤組成物を用いて処理された物品。
<15>前記物品の表面における摩擦試験後の水の接触角が100度超である前記<14>の物品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の含フッ素共重合体によれば、撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れた物品を得ることができる。
本発明の含フッ素共重合体の製造方法によれば、撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れた物品を得ることができる含フッ素共重合体を製造できる。
本発明の撥水撥油剤組成物によれば、撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れた物品を得ることができる。
本発明の物品は、撥水撥油性及び撥水撥油性の摩擦耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】W及びWを説明する図である。
図2】例1及び例2でHPLC測定により得たクロマトグラムを重ねて示した図である。
図3】例1及び例3でHPLC測定により得たクロマトグラムを重ねて示した図である。
図4】例1及び例4でHPLC測定により得たクロマトグラムを重ねて示した図である。
図5】例1及び例10でHPLC測定により得たクロマトグラムを重ねて示した図ムである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書における用語の意味や定義は、以下の通りである。
「単量体に基づく単位」は、単量体1分子が重合して直接形成される原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。単量体に基づく単位を、単に、「単量体単位」とも記す。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。同様に、「(メタ)アクリロイルオキシ基」は、アクリロイルオキシ基及びメタアクリロイルオキシ基の総称である。
固形分濃度は、加熱前の試料の質量を試料質量とし、120℃の対流式乾燥機にて試料を4時間乾燥した後の質量を固形分質量として、固形分質量/試料質量×100によって計算される。
【0011】
含フッ素共重合体の数平均分子量(以下、Mnと記す。)及び質量平均分子量(以下、Mwと記す。)は、標準ポリメチルメタクリレート試料を用いて作成した検量線を用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPC測定とも記す。)で測定することによって得られるポリメチルメタクリレート換算分子量である。分子量分布は、Mw/Mnの式に当てはめて算出される値である。
「高速液体クロマトグラフィ(以下、HPLCとも記す。)測定により得られるクロマトグラムにおける前記含フッ素共重合体のピークの半値幅(以下、Wとも記す。)のピーク幅(以下、Wとも記す。)に対する比(以下、W/Wとも記す。)は、後述の方法で算出した値である。
【0012】
「W」は、HPLC測定により得られるクロマトグラムにおける含フッ素共重合体のピークの半値幅である。HPLC測定は、後述する実施例に示す測定条件により行うものとする。
「W」は、前記クロマトグラムにおける含フッ素共重合体のピークのピーク幅であり、後述のスタートポイントと後述のエンドポイントとの間の幅である。
「スタートポイント」は、前記クロマトグラムの幅方向に平行な直線であって前記含フッ素共重合体のピークのピークスタートの位置から上方にピーク高さの1/20ずれた位置を通る直線と前記クロマトグラムとの交点のうち最も前記ピークスタートに近い交点である。
【0013】
「エンドポイント」は、前記クロマトグラムの幅方向に平行な直線であって前記含フッ素共重合体のピークのピークエンドの位置から上方にピーク高さの1/20ずれた位置を通る直線と前記クロマトグラムとの交点のうち最も前記ピークエンドに近い交点である。
スタートポイント及びエンドポイントをそれぞれピークスタート及びピークエンドの位置から上方にピーク高さhの1/20ずらしているのは、ベースラインの変動による影響を少なくするためである。
【0014】
図1を参照して、「W/W」の算出方法について詳しく説明する。図1は、HPLC測定により得られるクロマトグラムの例を模式的に示したものである。図1中の横方向をX軸、縦方向をY軸とする。X軸は保持時間(分)を示し、図中の右側ほど保持時間が長い。Y軸は検出器で検出される信号強度を示す。
(1)含フッ素共重合体のピークPのピークトップPからX軸に向けて垂線lをひく。ピークPが不分離の複数のピークを含む場合、最大のピークのピークトップをピークPのピークトップPとする。
(2)ピークPのベースラインlと垂線lとの交点PからピークトップPまでの距離をピーク高さhとする。
(3)交点PとピークトップPとを結ぶ線分の中間点、つまりピーク高さhの1/2の位置で、X軸と平行な直線lを引く。直線lとクロマトグラムの左右の交点の距離、つまり各交点の保持時間の差を半値幅Wとする。
【0015】
(4)ピークPのピークスタートP(ベースラインlとクロマトグラムの交点のうち保持時間の短い方の交点)の位置からY軸方向にピーク高さhの1/20ずれた位置Pを通る、X軸と平行な直線lを引く。直線lと、クロマトグラムとの交点のうち最もピークスタートPに近い交点をスタートポイントPとする。
(5)ピークPのピークエンドP(ベースラインlとクロマトグラムの交点のうち保持時間の長い方の交点)の位置からY軸方向にピーク高さhの1/20ずれた位置Pを通る、X軸と平行な直線lを引く。直線lと、クロマトグラムとの交点のうち最もピークエンドPに近い交点をエンドポイントPとする。
(6)スタートポイントP及びエンドポイントPのそれぞれを通るX軸に垂直な2本の垂線を引き、これらの垂線間の距離、つまりスタートポイントP及びエンドポイントPの保持時間の差をWとする。
(7)上記のようにして得られたW及びWの値をW/Wの式に当てはめて「W/W」を算出する。
【0016】
<含フッ素共重合体>
本発明の含フッ素共重合体(以下、共重合体Aとも記す。)は、下式1で表される単量体のa単位と、上記単量体aと共重合可能な単量体bの単位とを有する。
CH=CH-R 式1
但し、Rは、炭素数1~8のペルフルオロアルキル基である。
【0017】
単量体aにおけるRの炭素数は、共重合体Aの製造時に乳化状態を調整しやすく、共重合体Aへの転化率が良好になりやすい点、共重合体Aを含む組成物(後述する本発明の撥水撥油剤組成物)で処理された物品の撥水撥油性が優れる点から、4~6が好ましく、6が特に好ましい。Rは、直鎖状であってもよく分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0018】
単量体aとしては、例えば、CH=CH-CF、CH=CH-CFCF、CH=CH-CFCFCF、CH=CH-CF(CF、CH=CH-CFCFCFCF、CH=CH-CFCF(CF、CH=CH-C(CF、CH=CH-CFCFCFCFCF、CH=CH-CFCFCF(CF、CH=CH-CFCFCFCFCFCF、CH=CH-CFCFCFCFCFCF(CF、CH=CH-CFCFCFCFCFCFCFCFが挙げられる。
【0019】
単量体aとしては、CH=CH-CF、CH=CH-CFCF、CH=CH-CF(CF、CH=CH-CFCFCFCF又はCH=CH-CFCFCFCFCFCFが好ましく、CH=CH-CF、CH=CH-CFCF、CH=CH-CFCFCFCF又はCH=CH-CFCFCFCFCFCFがより好ましく、CH=CH-CFCFCFCF又はCH=CH-CFCFCFCFCFCFがさらに好ましい。単量体aは、2種以上を併用してもよい。
【0020】
単量体bとしては、単量体aと共重合しやすい点から、ビニル基又はアリル基を有する化合物が好ましい。
単量体bは、重合反応性の炭素-炭素二重結合を2個以上有する化合物であってもよい。単量体bにおける重合反応性の炭素-炭素二重結合の数は、1~3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0021】
単量体bとしては、単量体aと共重合性が良い点、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる点、取り扱いが容易である点から、下式2で表される単量体b1が好ましい。
CH=CH-O-C(=O)-R 式2
但し、Rは、炭素数1~4のアルキル基である。
式2中、Rの炭素数は、共重合体Aへの転化率が良好になりやすい点、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性が優れる点から、1又は2が好ましく、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる点から、1が特に好ましい。すなわち、Rはメチル基であることが特に好ましい。Rは、直鎖状であってもよく分岐状であってもよく、直鎖状であることが好ましい。
【0022】
単量体b1としては、単量体aと共重合可能であれば、特に限定されないが、炭素数が1~7のカルボン酸ビニルエステルが好ましく、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、メタクリル酸ビニル、クロトン酸ビニルが挙げられる。単量体b1としては、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる点から、酢酸ビニルが特に好ましい。
【0023】
単量体bとしては、単量体b1と他の単量体b(以下、単量体b2と記す。)とを併用してもよい。
単量体b2としては、炭素数が8以上のカルボン酸ビニルエステル、カルボン酸アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ハロゲン化ビニル、オレフィン、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ハロゲン化ビニル以外のハロゲン化オレフィン、等が挙げられるが、これらに限定されるものでは無い。
【0024】
炭素数が8以上のカルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、アジピン酸ジビニル、桂皮酸ビニルが挙げられる。
カルボン酸アリルエステルとしては、例えば、酢酸アリル、アジピン酸ジアリルが挙げられる。
【0025】
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、iso-ブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、クロロプロピルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。
アリルエーテルとしては、例えば、アリルエチルエーテル、ジアリルエーテル、1,3-ジアリルオキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノアリルエーテルが挙げられる。
【0026】
ハロゲン化ビニルとしては、例えば、塩化ビニルやフッ化ビニルが挙げられる。
オレフィンとしては、エチレン、プロピレンが挙げられる。
(メタ)アクリレートとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、脂肪族環状(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
ハロゲン化ビニル以外のハロゲン化オレフィンとしては、例えば、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、CF=CFOCF、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFが挙げられる。
【0027】
単量体b2の他の例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、エチルビニルスルフィドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
単量体a単位の割合は、共重合体Aを構成する単位の全モル数(すなわち、単量体a単位及び単量体b単位の合計のモル数)に対して20~50モル%であり、30~45モル%が好ましい。単量体a単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできるとともに、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。単量体a単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量を高くできる。また、共重合体Aの水分散性に優れる。
【0029】
単量体b単位の割合は、共重合体Aを構成する単位の全モル数に対して50~80モル%であり、55~70モル%が好ましい。単量体b単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、共重合体Aの分子量を高くできる。また、共重合体Aの水分散性に優れる。単量体b単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
【0030】
単量体b1単位の割合は、共重合体Aを構成する単位の全モル数に対して50~80モル%が好ましく、55~70モル%がより好ましい。単量体b1に基づく単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる。単量体b1単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
【0031】
単量体b2単位の割合は、共重合体Aを構成する単位の全質量に対して30質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、0質量%であってもよい。上記範囲内であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできるとともに、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
単量体a単位及び単量体b1単位の合計の割合は、共重合体Aを構成する単位の合計に対して70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。上記範囲内であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできるとともに、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
【0032】
各単量体単位の割合は、H-NMRによって算出できる。後述する含フッ素共重合体の製造方法において単量体成分の重合後に残存する単量体がほとんど検出されないことから、含フッ素共重合体の製造方法における単量体の仕込み量に基づいて算出してもよい。
【0033】
共重合体AのMwは、20,000以上であり、21,000以上が好ましく、23,000以上がより好ましい。共重合体AのMwは、100,000以下であり、80,000以下が好ましく、70,000以下がより好ましい。共重合体AのMwが前記範囲の下限値以上であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性の摩擦耐久性に優れる。共重合体AのMwが前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aの水分散性に優れる。
【0034】
共重合体AのMnは、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、15,000以上がさらに好ましい。共重合体AのMnは、100,000以下が好ましく、70,000以下がより好ましく、60,000以下がさらに好ましい。共重合体AのMnが前記範囲の下限値以上であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性の摩擦耐久性がさらに優れる。共重合体AのMnが前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aの水分散性がさらに優れる。
共重合体Aの分子量分布(Mw/Mn)は、1.0以上が好ましく、1.2以上がより好ましく、1.4以上がさらに好ましく、1.8超が最も好ましい。共重合体Aの分子量分布(Mw/Mn)は、4.5以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。共重合体AのMw/Mnが前記範囲の下限値以上であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性の摩擦耐久性に優れる。共重合体AのMw/Mnが前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aの水分散性に優れる。
【0035】
共重合体Aは、分子量が1,000以下の共重合体Aを含まないか、含む場合はその割合は、共重合体Aの分子量分布をGPC測定により測定して得られたチャートにおいて、共重合体A全体のピーク面積に対する分子量が1,000以下の部分のピーク面積の割合(%)として1%以下であることが好ましい。共重合体Aは、分子量が1,000以下の共重合体Aを含まないことがより好ましい。
共重合体Aが、分子量が1,000以下の共重合体Aを含まないか、含む場合はその割合が上記範囲内であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性がさらに優れる。
【0036】
共重合体Aは、「W/W」が0.35~0.55であり、0.40~0.50が好ましい。W/Wが前記範囲の下限値以上であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできる。W/Wが前記範囲の上限値以下であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量を高くできる。また、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
【0037】
/Wは、含フッ素共重合体の組成分布の均一性を示し、W/Wが小さいほど、含フッ素共重合体の組成分布の均一性が高い、と考えられる。
従来、塊状重合によって製造される含フッ素共重合体は、塊状重合の重合場が不均一となることで、組成分布が不均一となっていたと考えられる。このことが原因で、含フッ素共重合体を含む組成物で処理した物品の撥水撥油性が不充分になっていたと考えられる。
共重合体Aは、従来よりも組成分布の均一性に優れる。具体的には、分子中の単量体a単位の割合、分子中の単量体a単位の分布状態、それらが相違することに起因する分子間の極性の違いが少ない、と考えられる。
【0038】
/Wは、例えば、含フッ素共重合体を製造する際の重合条件により調整できる。例えば、後述する製造方法1のように、単量体aの一部を乳化液に後添加して乳化重合を行う方法が挙げられる。単量体aの一部を乳化液に後添加する場合、後添加する単量体aの割合によってもW/Wの値を調整できる。
/Wは、例えば、重合により得られた含フッ素共重合体を精製することによっても調整できる。精製方法としては、例えば、後述する製造方法2のように、含フッ素共重合体を、水及び極性溶媒で洗浄する方法が挙げられる。
上記の各方法の2以上を組み合わせてW/Wを調整してもよい。
【0039】
以上説明した共重合体Aにあっては、単量体a単位を有するので、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性が優れる。
そして、共重合体Aにあっては、共重合体Aを構成する全単位に対する単量体a単位の割合が特定の範囲内にあるので、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性、共重合体Aの水分散性に優れる。また、W/Wが特定の範囲内にあるので、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性がより優れる。さらに、Mwが高いので、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性の摩擦耐久性にも優れる。
【0040】
<含フッ素共重合体の製造方法>
本発明の共重合体Aを得る重合方法としては、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等が挙げられる。これらの中でも乳化重合法が好ましい。単量体成分を乳化重合法により重合することにより、水性媒体以外の溶媒を使用することなく、単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上できるとともに、共重合体AのMwを高くできる。
乳化重合法では、例えば、単量体成分と水性媒体と乳化剤と重合開始剤とを含む乳化液中で単量体成分を重合する。
【0041】
重合方法が乳化重合法である場合に、W/Wが前記した範囲内とする方法としては、例えば、以下の方法1又は方法2が挙げられる。これらの方法はいずれか1つを単独で用いてもよく2つ以上を組み合わせて用いてもよい。重合により生成した含フッ素共重合体のW/Wが目的の値とは異なる場合には、重合後に、含フッ素共重合体のW/Wを調整してもよい。
方法1:単量体aと単量体bとからなる第1の単量体成分と水性媒体と乳化剤とを含む第1の混合液を乳化して乳化液を得、乳化液に、単量体aを含む第2の単量体成分と重合開始剤とを添加して第2の混合液を得、第2の混合液中で第1の単量体成分及び第2の単量体成分を重合(乳化重合)する方法。
方法2:単量体aと単量体bとからなる単量体成分と水性媒体と乳化剤と重合開始剤とを含む乳化液中で単量体成分を重合(乳化重合)して含フッ素共重合体分散液を得、含フッ素共重合体分散液から含フッ素共重合体を回収し、含フッ素共重合体を、水及び極性溶媒で洗浄する方法。
以下、共重合体Aの製造方法について、方法1による製造方法(以下、製造方法1とも記す。)、方法2による製造方法(以下、製造方法2とも記す。)を例に挙げて詳しく説明する。
【0042】
(製造方法1)
この製造方法1は、上記方法1のように、単量体aを乳化工程前後で分割して仕込むことにより、W/Wを前記した範囲にできる。また、単量体成分の重合時における単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量を高くできる。
第2の単量体成分は、単量体bを含んでもよく、含まなくてもよい。
【0043】
単量体成分の全モル数に対する単量体aの割合は、20~50モル%であり、30~45モル%が好ましい。単量体aの割合が前記範囲の下限値以上であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできるとともに、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。単量体aの割合が前記範囲の上限値以下であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量を高くできる。また、共重合体Aの水分散性に優れる。
製造方法1においては、第1の単量体成分のモル数及び第2の単量体成分のモル数の合計が単量体成分の全モル数である。
【0044】
単量体成分の全モル数に対する単量体b1の割合は、50~80モル%が好ましく、55~70モル%がより好ましい。単量体b1の割合が前記範囲の下限値以上であれば、撥油性、撥アルコール性に優れる物品が得られる。単量体b1の割合が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
【0045】
単量体成分の全質量に対する単量体b2の割合は、30質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、0質量%であってもよい。上記範囲内であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできるとともに、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
単量体成分の全質量に対する単量体a及び単量体b1の合計の割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%であってもよい。上記範囲内であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させ、かつ共重合体Aの分子量も高くできるとともに、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れる。
【0046】
第1の単量体成分に含まれる単量体aの割合は、第1の単量体成分に含まれる単量体aの質量と第2の単量体成分に含まれる単量体aの質量との合計の質量(第2の混合液に含まれる単量体aの全質量)に対して30~70質量%が好ましく、40~68質量%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、W/Wが前記した範囲になりやすい。また、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率をより向上させ、かつ共重合体Aの分子量をより高くできる。
【0047】
水性媒体としては、後述する撥水撥油剤組成物における水性媒体と同様のものが挙げられる。また、乳化剤としては、後述する撥水撥油剤組成物における乳化剤と同様のものが挙げられる。
【0048】
重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤が挙げられ、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤が重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は、20~150℃が好ましく、35~90がさらに好ましい。
重合開始剤の添加量は、単量体成分100質量部に対して0.1~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がより好ましい。
【0049】
単量体成分を重合する際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤としては、例えば、芳香族化合物、メルカプトアルコール、メルカプトカルボン酸、アルキルメルカプタンが好ましく、メルカプトカルボン酸又はアルキルメルカプタンがより好ましい。分子量調整剤としては、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、tert-ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマ(CH=C(Ph)CHC(CHPh、但しPhはフェニル基である。)が挙げられる。
分子量調整剤の添加量は、単量体成分100質量部に対して0~5質量部が好ましく、0~2質量部がより好ましい。
【0050】
第1の混合液は、第1の単量体成分と水性媒体と乳化剤とを混合することにより調製できる。混合方法は特に制限はない。
第1の混合液の乳化方法としては、乳化液を均一に分散できる点で、ホモジナイザー等を用い、せん断をかけて乳化する方法、又は高圧乳化機等を用い、高圧条件下で乳化する方法が好ましい。
せん断を掛ける際の条件としては、例えば、ホモジナイザーを用い、5000~30000回転/分で1~20分間処理する条件が挙げられる。
高圧条件下で乳化する際の条件としては、例えば、高圧乳化機を用い、5~50MPaで1~3回循環処理する条件が挙げられる。
第1の混合液を乳化する際の温度は、例えば10~60℃である。
【0051】
第2の混合液中の単量体成分の割合(第1の単量体成分及び第2の単量体成分の合計含有量)は、10~70質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。第2の混合液中の単量体成分の濃度が前記範囲内であれば、単量体成分の重合時に単量体成分の共重合体Aへの転化率を向上させることができるとともに、共重合体Aの分子量を充分に高くできる。
【0052】
第2の混合液中の乳化剤の合計量は、単量体成分の100質量部に対して1~6質量部が好ましい。乳化剤の合計量が前記範囲の下限値以上であれば、第2の混合液の分散安定性に優れる。乳化剤の合計量が前記範囲の上限値以下であれば、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性への悪影響が少ない。
【0053】
第2の混合液中の単量体成分を重合するには、例えば、第2の混合液の温度を35~90℃に昇温すればよい。重合時間は、例えば3~144時間である。
重合終了時の単量体成分の共重合体Aへの転化率は、80%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。転化率を高くすることにより、共重合体Aの分子量も高くなり、撥水撥油性能も良好となる。また、高い転化率にすることで、残存単量体による性能低下が抑えられるとともに、共重合体A中に含まれるフッ素原子の量が多くなるため、撥水撥油性が良好となる。転化率を80%以上とするには、乳化方法、乳化液組成、第2の混合液組成、重合温度、重合時間等の最適化を行うことが好ましい。
【0054】
第2の混合液中で単量体成分に重合することにより、共重合体Aを含む含フッ素共重合体分散液が得られる。
重合後、必要に応じて、含フッ素共重合体分散液に含まれる共重合体Aを回収する。回収方法は特に限定されず、例えば後述する製造方法2で例示するような公知の方法を適宜採用できる。回収された含フッ素共重合体Aは水及び極性溶媒で洗浄することができる。この場合の洗浄の方法は、それぞれの好ましい態様も含めて、後記する製造方法2において回収された含フッ素共重合体Aを水及び極性溶媒で洗浄する方法と同様である。かかる含フッ素共重合体Aの洗浄により、W/Wも値を小さくすることができる。
【0055】
なお、前記含フッ素共重合体分散液は、そのまま、後述の本発明の撥水撥油剤組成物としてもよい。又は、含フッ素共重合体分散液を水性媒体で希釈して固形分濃度を調整し、必要に応じて他の成分を添加して、後述の本発明の撥水撥油剤組成物としてもよい。
含フッ素共重合体分散液から回収した共重合体Aと、有機溶媒と、必要に応じて他の成分とを混合して、後述の本発明の撥水撥油剤組成物としてもよい。
【0056】
(製造方法2)
この製造方法2は、上記方法2のように、前記含フッ素共重合体分散液を水性媒体で希釈して固形分濃度を調整し、必要に応じて他の成分を添加した後述の撥水撥油剤組成物を調整して、該撥水撥油剤組成物から、前記フッ素共重合体分散液に含まれていた含フッ素共重合体を回収し、水及び極性溶媒で洗浄する方法でもよい。
【0057】
単量体成分、水性媒体、乳化剤、重合開始剤はそれぞれ製造方法1と同様である。単量体成分の全モル数に対する単量体aの割合、単量体成分の全モル数に対する単量体b1の割合、単量体成分の全質量に対する単量体b2の割合、単量体成分の全質量に対する単量体a及び単量体b1の合計の割合等も製造方法1と同様である。
単量体成分を重合する際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調整剤についても製造方法1と同様である。
【0058】
製造方法2において、乳化液の調製方法は特に限定されない。例えば、単量体成分と水性媒体と乳化剤と重合開始剤とを混合して混合液を得、混合液を乳化し、重合開始剤を添加することによって調製できる。乳化液は、製造方法1において第2の混合液を調製する方法と同様の方法で乳化液を調製してもよい。
乳化液中の単量体成分の好ましい濃度、乳化剤の好ましい合計量はそれぞれ、製造方法1における第2の混合液と同様である。乳化液中の単量体成分の重合方法、重合終了時の単量体成分の共重合体Aへの好ましい転化率も製造方法1と同様である。
【0059】
含フッ素共重合体分散液又は後述の撥水撥油剤組成物からの含フッ素共重合体の回収方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、後述する実施例に示すように、含フッ素共重合体分散液にヘキサン及びtert-ブタノールの混合溶媒を添加して含フッ素共重合体を沈殿させ、固液分離する方法が挙げられる。ヘキサン及びtert-ブタノールの混合溶媒中のヘキサンの割合は、10~90質量%が好ましい。
【0060】
回収した含フッ素共重合体を、水、極性溶媒、又は水と極性溶媒の混合溶媒で洗浄することにより、含フッ素共重合体から比較的極性の高い分子を除去してW1/W2を小さく、分子量を高くできる。水の温度は、40~70℃が好ましい。
水の使用量は、例えば、含フッ素共重合体に対し、質量比で1~20倍である。
極性溶媒としては、共重合体Aが溶解または膨潤せず、比較的低沸点な極性溶媒が作業性の面で好ましい。極性溶媒の沸点としては、作業性の観点から、40~120℃が好ましく、50~90℃がより好ましい。極性溶媒の具体例としては、tert-ブタノールやイソプロピルアルコールが挙げられる。極性溶媒の温度は、特に制限はないが、例えば10~50℃である。
【0061】
極性溶媒の使用量は、例えば、含フッ素共重合体に対し、質量比で1~20倍である。
水と極性溶媒の混合溶媒である場合、水に対する極性溶媒の質量比(極性溶媒/水)は、極性溶媒の除去性の観点から、1/99~99/1が好ましく、10/90~90/10がより好ましい。
含フッ素共重合体を洗浄するには、例えば、含フッ素共重合体と40~70℃の温水、又は極性溶媒とを混合すればよい。洗浄時間は、例えば1~30分間である。
【0062】
<撥水撥油剤組成物>
本発明の撥水撥油剤組成物(以下、本組成物とも記す。)は、共重合体Aを含む。
本組成物は、共重合体Aと水性媒体と乳化剤とを含む含フッ素共重合体分散液であることが好ましい。
本組成物は、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
本組成物は、前記含フッ素共重合体分散液を後述の水性媒体で希釈して固形分濃度を調整し、必要に応じて他の成分を添加して調製したものでもよい。
本組成物は、共重合体Aと有機溶媒を含み、乳化剤を含まない含フッ素共重合体溶液であってもよい。
【0063】
(水性媒体)
水性媒体としては、水、又は水と水溶性有機溶媒との混合媒体が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、アルコール(但し、エーテル結合を有するアルコールを除く。)又はエーテル結合を有するアルコールが好ましい。アルコールとしては、例えば、イソプロピルアルコール、tert-ブタノール、プロピレングリコール、へキシレングリコールが挙げられる。エーテル結合を有するアルコールとしては、例えば、3-メトキシメチルブタノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、共重合体Aと水性媒体との相溶性を向上して基材上で均一な膜をつくりやすくする点から、エーテル結合を有するアルコールが好ましく、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール又はジプロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
水性媒体が水溶性有機溶媒を含む場合、水溶性有機溶媒の含有量は、水の100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、10~60質量部がより好ましい。
【0064】
(乳化剤)
乳化剤は、親水部位と疎水部位の両方を有する界面活性剤である。
乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤が挙げられる。乳化剤はフッ素原子を有さないものが好ましい。
乳化剤としては、本組成物の分散安定性に優れる点から、ノニオン性乳化剤の単独使用、ノニオン性乳化剤とカチオン性乳化剤もしくは両性乳化剤との併用、又はアニオン性乳化剤の単独使用が好ましく、ノニオン性乳化剤とカチオン性乳化剤との併用がより好ましい。W/Wの制御の点から、ノニオン性乳化剤単独の使用もまた好ましい。
【0065】
ノニオン性乳化剤とカチオン性乳化剤との比(ノニオン性乳化剤/カチオン性乳化剤)は、100/0~40/60(質量比)が好ましく、97/3~40/60(質量比)がより好ましい。
ノニオン性乳化剤とカチオン性乳化剤との特定の組み合わせにおいては、共重合体Aの100質量部に対する乳化剤の合計量を、5質量部以下にできるので、乳化剤に起因する本組成物で処理された物品の撥水撥油性への悪影響を低減できる。
【0066】
ノニオン性乳化剤の例としては、日本特開2009-215370号公報の段落[0067]~[0095]に記載の界面活性剤s1~s6が挙げられる。
界面活性剤s1は、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテル、又はポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルである。界面活性剤s1としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。
【0067】
界面活性剤s2は、分子中に1個以上の炭素-炭素三重結合及び1個以上の水酸基を有する化合物である。界面活性剤s2としては、アセチレングリコールエチレンオキシド付加物がノニオン性乳化剤として好ましい。
界面活性剤s3は、ポリオキシエチレン鎖と、炭素数が3以上のオキシアルキレンが2個以上連続して連なったポリオキシアルキレン鎖とが連結し、かつ、両末端が水酸基である化合物である。界面活性剤s3としては、エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物が好ましい。
ノニオン性乳化剤は、2種以上を併用してもよい。
【0068】
カチオン性乳化剤の例としては、日本特開2009-215370号公報の段落[0096]~[0100]に記載の界面活性剤s7が挙げられる。
界面活性剤s7は、置換アンモニウム塩形のカチオン性乳化剤である。
界面活性剤s7としては、窒素原子に結合する水素原子の1個以上が、アルキル基、アルケニル基又は末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖で置換されたアンモニウム塩が好ましく、下式s71で表される化合物s71がより好ましい。
[(R21]・X 式s71。
21は、水素原子、炭素数が1~22のアルキル基、炭素数が2~22のアルケニル基、炭素数が1~9のフルオロアルキル基、又は末端が水酸基であるポリオキシアルキレン鎖である。4つのR21は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、4つのR21は同時に水素原子ではない。Xは、対イオンである。
としては、塩素イオン、エチル硫酸イオン、又は酢酸イオンが好ましい。
化合物s71としては、例えば、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルモノココナッツアミン酢酸塩が挙げられる。
カチオン性乳化剤は、2種以上を併用してもよい。
【0069】
両性乳化剤の例としては、日本特開2009-215370号公報の段落[0101]~[0102]に記載の界面活性剤s8が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。界面活性剤s8は、アラニン、イミダゾリニウムベタイン、アミドベタイン又は酢酸ベタインである。
【0070】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、共重合体Aを溶解可能なものであればよく、例えば、上記水溶性有機溶媒、ケトン、アミド結合を有する化合物、エーテル結合を有し水酸基を有さない化合物、フッ素原子を有する有機溶媒が挙げられる。水溶性有機溶媒としては上記と同様の化合物を例示できる。ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが挙げられる。アミド結合を有する化合物としては、例えば、ジメチルアセトアミド、3-メトキシ-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシージメチルプロパンアミド、メチルピロリドンが挙げられる。エーテル結合を有し水酸基を有さない化合物としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。フッ素原子を有する有機溶媒としては、例えば、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1-メトキシ-1,1,2,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン、1-メトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、1-エトキシ-1,1,2,2,3,3,4,4,4-ノナフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-1デカフルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、ポリ(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロペンオキシド)、1,3-ビストリフルオロメチルベンゼン、1,4-トリフルオロメチルベンゼン、トリフルオロトルエン、ペルフルオロベンゼン及びペルフルオロブチルアミンが挙げられる。
【0071】
(他の成分)
他の成分としては、例えば、共重合体A以外の含フッ素重合体、非フッ素系重合体、非フッ素系撥水撥油剤、水溶性高分子樹脂(例えば、親水性ポリエステル及びその誘導体、親水性ポリエチレングリコール及びその誘導体)、架橋剤、浸透剤(例えば、アセチレン基を中央に持ち左右対称の構造をしたノニオン性界面活性剤、日油社製のディスパノール(製品名)シリーズ)、コロイダルシリカ(例えば、日産化学社製のスノーテックス(製品名)シリーズ、ADEKA社製のアデライトシリーズ)、消泡剤(例えば、日信化学社製のオルフィン(製品名)シリーズ、東レダウコーニング社製のFSアンチフォームシリーズ)、造膜助剤、防虫剤、難燃剤、帯電防止剤(例えば、明成化学社製のディレクトールシリーズ)、防しわ剤、柔軟剤、pH調整剤(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、酢酸、クエン酸)が挙げられる。
【0072】
本組成物が架橋剤を含む場合、基材との接着性が向上しやすい。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、メチロール系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、及びオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、芳香族ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、脂肪族ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、芳香族非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、脂肪族非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤が挙げられる。イソシアネート系架橋剤は、界面活性剤によって乳化された水分散型、又は親水基を有した自己水分散型が好ましい。
【0073】
メチロール系架橋剤としては、例えば、尿素又はメラミンとホルムアルデヒドとの縮合物又は予備縮合物、メチロール-ジヒドロキシエチレン-尿素又はその誘導体、メチロール-エチレン-尿素、メチロール-プロピレン-尿素、メチロール-トリアゾン、ジシアンジアミド-ホルムアルデヒドの縮合物、メチロール-カルバメート、メチロール-(メタ)アクリルアミド、これらの重合体が挙げられる。
【0074】
カルボジイミド系架橋剤は、分子中にカルボジイミド基を有するポリマーであり、基材等のカルボキシ基、アミノ基、活性水素基と優れた反応性を示す架橋剤である。
オキサゾリン系架橋剤は、分子中にオキサゾリン基を有するポリマーであり、基材等のカルボキシ基と優れた反応性を示す架橋剤である。
【0075】
他の架橋剤としては、例えば、ジビニルスルホン、ポリアミド若しくはそのカチオン誘導体、ポリアミン又はそのカチオン誘導体、ジグリシジルグリセロール等のエポキシ誘導体、(エポキシ-2,3-プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N-メチル-N-(エポキシ-2,3-プロピル)モルホリニウムクロライド等のハライド誘導体、エチレングリコールのクロロメチルエーテルのピリジニウム塩、ポリアミン-ポリアミド-エピクロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール又はその誘導体、ポリアクリルアミド又はその誘導体、グリオキサール樹脂系防しわ剤が挙げられる。
【0076】
本組成物が、メチロール系架橋剤又はグリオキサール樹脂系防しわ剤を含む場合、添加剤として、触媒を含むことが好ましい。好ましい触媒としては、例えば、無機アミン塩、有機アミン塩が挙げられる。無機アミン塩としては、例えば、塩化アンモニウムが挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、アミノアルコール塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩が挙げられる。アミノアルコール塩酸塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノール塩酸塩、2-アミノ-2-メチルプロパノール塩酸塩が挙げられる。
【0077】
(各成分の割合)
本組成物の固形分濃度は、本組成物の製造直後の含フッ素共重合体分散液においては、25~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
本組成物の乳化剤の合計量は、本組成物の製造直後の含フッ素共重合体分散液においては、共重合体Aの100質量部に対して1~6質量部が好ましい。
【0078】
本組成物の固形分濃度は、基材の処理に用いる際には、0.1~10質量%が好ましく、0.2~7質量%がより好ましい。本組成物中の架橋剤の濃度は、基材の処理に用いる際には、0.1~3質量%が好ましい。
【0079】
以上説明した本組成物にあっては、共重合体Aが単量体a単位を有するので、本組成物で処理された物品の撥水撥油性が優れる。本組成物で処理された物品は、例えば、後記する実施例により例示されるように、JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して測定された水の接触角は、100度以上、更には、102~115度を有する。この場合には、摩擦後であっても撥水性が良好であることを示す。
そして、本組成物にあっては、共重合体Aを構成する全単位に対する単量体a単位の割合が特定の範囲内にあるので、本組成物で処理された物品の撥水撥油性に優れ、本組成物が水分散液である場合には、共重合体Aの分散安定性にも優れる。また、W/Wが特定の範囲内にあるので、共重合体Aを含む組成物で処理された物品の撥水撥油性がより優れる。さらに、共重合体AのMwが高いので、本組成物で処理された物品の撥水撥油性の摩擦耐久性にも優れる。
【0080】
<物品>
本発明の物品は、本組成物を用いて処理された物品である。
本組成物で処理される物品としては、例えば、繊維、繊維織物、繊維編物、不織布、ガラス、紙、木、皮革、人工皮革、石、コンクリート、セラミックス、金属、金属酸化物、窯業製品、樹脂成形品、多孔質樹脂、多孔質繊維が挙げられる。多孔質樹脂は、例えば、フィルターとして用いられる。多孔質樹脂の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。多孔質繊維の材料としては、例えば、ガラス繊維、セルロースナノファイバー、炭素繊維、セルロースアセテートが挙げられる。
処理方法としては、例えば、公知の塗工方法によって物品に本組成物を塗布又は含浸した後、乾燥する方法が挙げられる。
【0081】
以上説明した本発明の物品にあっては、単量体a単位を有する共重合体Aを含む本組成物を用いて処理されているため、撥水撥油性が優れる。
そして、本物品にあっては、共重合体Aを構成する全単位に対する単量体a単位の割合が特定の範囲内にあり、共重合体AのW/Wが特定の範囲内にあるので、撥水撥油性に優れる。また、共重合体AのMwが高いので、撥水撥油性の摩擦耐久性にも優れる。したがって、摩擦前の優れた撥水撥油性を、物品を摩擦させた後も充分に維持できる。
【実施例
【0082】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、例2~4、6、10は実施例であり、例1、5、7~9は比較例である。
【0083】
(外観)
重合後の含フッ素共重合体分散液の外観を目視で確認した。外観が均一である(残渣や層分離が見られない)ものを○(良)とし、それ以外は、外観の状態を表中に記載した。
【0084】
(転化率)
原料の仕込み量から計算された含フッ素共重合体の分散液又は溶液の固形分濃度の理論値と、含フッ素共重合体の分散液又は溶液の固形分濃度の実測値とを、実測値/理論値×100の式に当てはめて得られた値を単量体成分の含フッ素共重合体への転化率とした。転化率が90%以上である場合を○(良)、80%以上90%未満である場合を△(可)、80%未満である場合を×(不可)とした。
【0085】
(Mn、Mw及びMw/Mn)
含フッ素共重合体の分散液又は溶液から、次のようにして含フッ素共重合体を回収した。含フッ素共重合体の分散液又は溶液の6gを、イソプロピルアルコール(以下、IPAと記す。)の60gに滴下し、撹拌して固体を析出させた。3000rpmで5分間遠心分離した後、固体を分離した。再度、IPAの12gを加えてよく撹拌した。3000rpmで5分間遠心分離した後、固体を上澄み液から分離し、35℃で一晩真空乾燥して含フッ素共重合体を得た。
【0086】
回収した含フッ素共重合体をHCFC225(AK-225、AGC社製品名)(以下、AK-225と記す。)/テトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)=6/4(体積比)の混合溶媒に溶解させて、固形分濃度0.5質量%の溶液とし、0.2μmのフィルターに通し、分析サンプルとした。分析サンプルについて、GPC測定によりMn、Mw及びMw/Mnを測定した。測定条件は下記のとおりである。
装置:東ソー社製、HLC-8320GPC、
カラム:Polymer laboratories社製、MIXED-C 300×7.5mm 5μm、
移動相:AK-225/THF=6/4(体積比)の混合溶媒、
流速:1.0mL/分、 オーブン温度:37℃、 試料濃度:1.0質量%、
注入量:50μL、 検出器:RI(屈折率検出器)、
分子量標準:ポリメチルメタクリレート(Mw=2,136,000、955,000、569,000、332,800、121,600、67,400、31,110、13,300、7,360、1,950、1,010、及び550)。
【0087】
(W/W
含フッ素共重合体をAK-225/THF=5/5(体積比)の混合溶媒に溶解させて、固形分濃度1質量%の溶液とし、0.45μmのフィルターに通し、分析サンプルとした。分析サンプルについて、HPLC測定を行った。測定条件は下記のとおりである。測定結果から、半値幅W及び幅Wを求め、W/Wを算出した。
装置:Agilent社製、HP1100
カラム:ペンタフルオロフェニル基を持つプロピル基を有するシリカゲルを固定相として持つもの(島津ジーエルシー社製品名、phenomenex Luna PFP、内径2mm×長さ150mm×粒子径3μm)
移動相:A液:メタノール、B液:AK-225/THF=5/5(体積比)
グラジエント条件:B液の体積%で、0-95(5-20分)-95(30分)-95-00(30-40分)-00(45分)
流速:0.3mL/分、オーブン温度:40℃、 試料濃度:1質量%(B液中)
注入量:10μL、 検出器:ELSD(蒸発光散乱検出器)
【0088】
前記したグラジエント条件の詳細は、以下のとおりである。
(1)開始時はA液比率100体積%(B液比率0体積%)で5分間流す、(2)開始5分後からB液比率を上げていき、開始5分後から20分後までの15分間を掛けて、B液比率を95体積%まで上げる、(3)開始20分後からB液比率を95体積%に固定して10分間そのまま流す、(4)開始30分後からB液比率を下げていき、開始30分後から40分後までの10分間を掛けて、B液比率を0体積%まで下げる(A液比率100体積%)、(5)開始40分後からA液比率100%で5分間流す。
【0089】
(水の接触角)
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、物品の表面の5箇所に水滴を静置し、各水滴について静滴法によって水の接触角を測定した。水滴は約2μL/滴であり、測定は23℃で行った。水の接触角は、5箇所の測定値の平均値で示す。水の接触角は、物品の撥水性の目安となる。水の接触角の平均値が100度以上であれば撥水性が良好であることを示す。後述の摩擦試験を行った後の水の接触角の平均値は100度以上であれば、
【0090】
(IPA80%の接触角)
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、物品の表面の5箇所にイソプロピルアルコール80質量%水溶液滴を静置し、各液滴について静滴法によってイソプロピルアルコール80質量%水溶液の接触角を測定した。液滴は約2μL/滴であり、測定は23℃で行った。イソプロピルアルコール80質量%水溶液の接触角は、5箇所の測定値の平均値で示す。イソプロピルアルコール80質量%水溶液の接触角は、物品の撥水性、撥アルコール性の目安となる。イソプロピルアルコール80質量%水溶液の接触角の平均値が50度以上であれば撥水性、撥アルコール性が良好であることを示す。後述の摩擦試験を行った後のイソプロピルアルコール80質量%水溶液の接触角の平均値は40度以上であれば、摩擦後であっても撥水性、撥アルコール性が良好であることを示す。
【0091】
(n-ヘキサデカンの接触角)
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して、物品の表面の5箇所にn-ヘキサデカンの液滴を静置し、各液滴について静滴法によってn-ヘキサデカンの接触角を測定した。液滴は約2μL/滴であり、測定は23℃で行った。n-ヘキサデカンの接触角は、5箇所の測定値の平均値で示す。n-ヘキサデカンの接触角は、物品の撥油性の目安となる。n-ヘキサデカンの接触角の平均値が60度以上であれば撥油性が良好であることを示す。後述の摩擦試験を行った後のn-ヘキサデカンの接触角の平均値は50度以上であれば、摩擦後であっても撥油性が良好であることを示す。
【0092】
(摩擦試験)
JIS R 3257:1999「基板ガラス表面のぬれ性試験方法」に準拠して準備した物品の表面を、日本シール社製のエチケットブラシ(品番:H51ワンプッシュ回転機能付き、材質パイルナイロン100%)を用いて10回往復摩耗した。摩擦試験前の水の接触角が100度超であり、摩擦試験後における水の接触角が100度超であると、摩擦耐久性が良好である。
【0093】
(単量体a):C6OLF:CH=CH-CFCFCFCFCFCF
(単量体b):VAC:酢酸ビニル
【0094】
(媒体)
水:イオン交換水。
DPG:ジプロピレングリコール。
MIBK:メチルイソブチルケトン。
【0095】
(乳化剤)
E430:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキシド約30モル付加物、花王社製品名、エマルゲン430)。
P204:エチレンオキシド・プロピレンオキシド重合物(オキシエチレン基含有量40質量%、日油社製品名、プロノン#204、HO-(CO)15-(CO)30-(CO)15-H)。
AQ18:モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリドの63質量%水及びイソプロピルアルコール溶液(ライオン社製品名、リポカード18-63)。
【0096】
(重合開始剤)
VA-061A:2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン](和光純薬社製、VA-061)と80質量%の酢酸水溶液とを、質量比1:1で混合して得られたもの。
パーブチルPV:tert-ブチルパーオキシピバレート(日油社製)。
【0097】
(例1)
撹拌装置付きの0.5リットルのオートクレーブに、表1に示す種類及び仕込み量の単量体、媒体及び乳化剤を入れて撹拌し、第1の混合液を得た。第1の混合液をホモジナイザーに投入して18000回転/分で5分間、せん断を掛けて分散し、乳化液を得た。この乳化液に、表1に示す種類及び仕込み量の重合開始剤を添加して第2の混合液を得た。オートクレーブ内を窒素置換し、45℃に昇温し、第2の混合液中で単量体成分を24時間重合させて含フッ素共重合体分散液を得た。含フッ素共重合体分散液の外観、転化率、含フッ素共重合体のMw、含フッ素共重合体のW/Wを表1に示す。以下の例についても同様である。
【0098】
含フッ素共重合体分散液をイオン交換水で希釈し、固形分濃度を10質量%に調整して撥水撥油剤組成物を得た。
撥水撥油剤組成物を事前にアセトンで脱脂したガラス基板の表面に塗布し、200℃で10分間乾燥したものを評価用の物品とした。ガラス基板は、ASLAB、SUPER GRADE MICROSCOPE SLIDES(THICK社製品名、縦:25mm、横:75mm、厚さ:1.0-1.2mm)を用い、ガラス基板の表面への塗布は、ディップコーター(装置名:F255、速度0.5mm/秒の3往復)を使用した。
物品について、上述した各液滴の接触角を測定した。測定結果を初期撥液性として表1に示す。次いで、物品に対し、上記の方法に従って摩擦試験を行い、その後、上述した各液滴の接触角を測定した。測定結果を摩擦後撥液性として表1に示す。以下の例についても同様に測定結果を表1又は表2に示す。
【0099】
(例2及び例5~例8)
表1、表2に示す種類及び仕込み量の単量体、媒体及び乳化剤とする他は、例1と同様にして、第1の混合液を得、乳化液を得た。乳化液に、表1、表2に示す種類及び仕込み量の単量体及び重合開始剤を添加する他は、例1と同様にして、含フッ素共重合体分散液を得た。
含フッ素共重合体分散液を各例で得られたものに変更した以外は、例1と同様にして物品を得た。これらの物品について、上記と同様にして初期撥液性及び摩擦後撥液性を測定した。
【0100】
(例3及び例4)
表1に示す種類及び仕込み量の単量体、媒体及び乳化剤とし、得られた混合液を高圧乳化機(装置名:LAB60)に投入して40MPaの圧力にて強制乳化分散する他は例1と同様にして乳化液を得た。乳化液に、表1の「乳化後仕込み」の欄に示す種類及び仕込み量の単量体及び重合開始剤を添加する他は例1と同様にして、含フッ素共重合体分散液を得た。含フッ素共重合体分散液を各例で得られたものに変更した以外は、例1と同様にして物品を得た。物品について、上記と同様にして初期撥液性及び摩擦後撥液性を測定した。
【0101】
(例9)
撹拌装置付きの0.5リットルのオートクレーブに、表2に示す種類及び仕込み量の単量体、媒体及び重合開始剤を添加した。オートクレーブ内を窒素置換し、45℃に昇温し、単量体成分を24時間重合させて含フッ素共重合体溶液を得た。含フッ素共重合体溶液をMIBKで希釈し、固形分濃度を10質量%に調整して撥水撥油剤組成物を得た。例1と同様にしてガラス基板の表面に塗布し、乾燥して評価用の物品を得た。物品について、上記と同様にして初期撥液性及び摩擦後撥液性を測定した。
【0102】
(例10)
例1で得られた含フッ素共重合体分散液の1gを、1gのヘキサン及び9gのtert-ブタノールと混合して固体を沈殿させ、3000rpmで5分間遠心分離した後、固体を分離した。得られた固体を、固体質量の10倍量の温水(50℃)で10分間洗浄し、3000rpmで5分間遠心分離した後、固体を分離した。分離した固体を、固体質量の10倍量のIPA(25℃)で10分間洗浄し、3000rpmで5分間遠心分離した後、固体を分離して含フッ素共重合体を得た。含フッ素共重合体をAK-225/THF=5/5(体積比)の混合溶媒に溶解し、固形分濃度10質量%の含フッ素共重合体溶液を得た。含フッ素共重合体分散液を含フッ素共重合体溶液に変更した以外は、例1と同様にして物品を得た。物品について、上記と同様にして初期撥液性及び摩擦後撥液性を測定した。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表1、2中、単量体aのモル比(%)は、単量体成分の全モル数に対する単量体aの割合(モル%)を示す。単量体aの後添加比率(%)は、単量体aの乳化前仕込み量と乳化後仕込み量との合計(単量体aの全質量)に対する乳化後仕込み量の割合を示す。
乳化方法1は、ホモジナイザーを用い、18000回転/分で5分間、せん断を掛けて分散したことを示す。乳化方法2は、高圧乳化機を用いて40MPaの圧力にて強制乳化により分散したことを示す。
【0106】
単量体a単位の割合が単量体単位の全モル数に対して20~50モル%であり、Mwが20,000~100,000であり、W/Wが0.35~0.55である含フッ素共重合体を含む組成物で処理された例2~4、6、10の物品は、初期の撥水撥油性及び摩擦試験後の撥水撥油性に優れていた。
/Wが0.55超である含フッ素共重合体を含む組成物で処理された例1、5、8の物品は、初期の撥水撥油性に劣っていた。
Mwが20,000未満である含フッ素共重合体を含む組成物で処理された例7、9の物品は、摩擦試験後の撥水撥油性に劣っていた。
【0107】
例1、例2、例3、例4、例6、例7の対比から、単量体aの一部を乳化液に後添加して乳化重合を行うことで、W/Wの値が小さくなることが確認できた。また、後添加する単量体aの割合が、単量体aの全質量に対して30~70質量%であれば、Mwが20,000~100,000であり、W/Wが0.35~0.55である含フッ素共重合体が得られやすいこと、重合後の含フッ素共重合体分散系の外観が優れること、重合転化率を高くできること、が確認できた。
例1~9の対比から、重合法として乳化重合を用いると、溶液重合を用いる場合に比べて、重合後の外観が優れること、重合転化率を高くできること、Mwの高い含フッ素共重合体が得られやすいことが確認できた。
例1と例10の対比から、含フッ素共重合体を温水及び極性溶媒で洗浄することで、W/Wの値が小さくなることが確認できた。
【0108】
図2に、例1及び例2の含フッ素共重合体のHPLC測定により得られたクロマトグラムを重ねて示す。図3に、例1及び例3の含フッ素共重合体のHPLC測定により得られたクロマトグラムを重ねて示す。図4に、例1及び例4の含フッ素共重合体のHPLC測定により得られたクロマトグラムを重ねて示す。図5に、例1及び例10の含フッ素共重合体のHPLC測定により得られたクロマトグラムを重ねて示す。
図2図5から、単量体aの一部を乳化液に後添加して乳化重合を行った例2~4、含フッ素共重合体を温水及び極性溶媒で洗浄した例10ではいずれも、例1に比べて、保持時間の比較的短い成分、つまりA液で溶出しやすい比較的高極性の成分が減少している傾向があることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の含フッ素共重合体及びこれを含む組成物は、撥水撥油剤組成物、離型剤、剥離剤等として有用である。
なお、2019年2月26日に出願された日本特許出願2019-033222号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
図1
図2
図3
図4
図5