(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム並びに処理及び物流方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/00 20060101AFI20240305BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20240305BHJP
B65G 61/00 20060101ALN20240305BHJP
【FI】
C02F11/00 C ZAB
C02F11/121
B65G61/00 300
(21)【出願番号】P 2023103121
(22)【出願日】2023-06-23
【審査請求日】2023-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小堺 規行
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-042624(JP,A)
【文献】特開平05-238791(JP,A)
【文献】特開2007-190538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00
C02F 11/121
B65G 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物の受入設備と、
スラッジ含有物の貯蔵設備、
スラッジ含有物の性状に応じて分類する分類設備
、
スラッジ含有物の反応を行う反応設備、
及び
スラッジ含有物に含まれる不純物を除去する不純物除去設備を有する中間設備と、
前記受入設備及び前記中間設備からの供給物を、用途別に製品として出荷する出荷設備と、
を備えるスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項2】
前記中間設備が、さらに固液分離装置を備える、請求項1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項3】
前記貯蔵設備が複数の貯蔵容器を備え、前記受入設備で受け入れた前記スラッジ含有物を前記分類設備で分類した複数のスラッジ含有物群を、一のスラッジ含有物群ごとに一の貯蔵容器に貯蔵する請求項1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項4】
前記少なくとも一の工場設備及び工事現場から前記スラッジ含有物を回収し、前記受入設備に搬入する受入用輸送手段、及び前記出荷設備から出荷される前記製品を供給先に輸送する出荷用輸送手段の少なくとも一方の輸送手段を備える請求項1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項5】
前記受入用輸送手段及び前記出荷用輸送手段が、一の手段により行われ、前記一の手段が、前記出荷設備から出荷される前記製品を前記供給先に輸送し、かつ前記少なくとも一の工場設備及び工事現場からスラッジ含有物及び前記反応に用いるガスの少なくとも一方を輸送する請求項
4に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項6】
前記出荷設備における前記製品の用途が、炭酸塩原料、セメント原料、固化材原料、製紙用原料、樹脂原料及びゴム用原料の原料、並びにコンクリート材料、モルタル材料及びアスファルト材料の材料から選ばれる少なくとも一の用途である請求項1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項7】
前記スラッジ含有物の性状が、スラッジ含有物中のスラッジ濃度、不純物の種類及びカルシウム含有量から選ばれる少なくとも一の性状である請求項1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【請求項8】
請求項1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムを用い、
少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物を受入設備で受け入れることと、製品を出荷設備で出荷することと、下記(i)~(vi);
(i)貯蔵設備で貯蔵すること
(ii)スラッジ含有物の性状に応じて分類設備で分類すること
(iii)反応設備において反応を行うこと
(iv)不純物除去設備で不純物を除去すること
(v)固液分離装置で固液分離すること
(vi)前記出荷設備に供給すること
の少なくとも一の処理及び反応を行うことと、を備え、
前記出荷設備が、前記処理及び反応を行うことにより得られる製品を、用途別に出荷する設備である、スラッジ含有物の処理及び物流方法。
【請求項9】
前記(i)の貯蔵することにより貯蔵するスラッジ含有物が、前記受入設備で受け入れた前記スラッジ含有物を前記(ii)の分類することにより分類したスラッジ含有物である請求項
8に記載のスラッジ含有物の処理及び物流方法。
【請求項10】
前記(i)の貯蔵することにより貯蔵するスラッジ含有物について、下記(a)~(c)のいずれかを選択する請求項
9に記載のスラッジ含有物の処理及び物流方法。
(a)前記貯蔵するスラッジ含有物を、そのまま製品とし、前記出荷設備から出荷する。
(b)前記(v)により、前記貯蔵するスラッジ含有物を固液分離して、得られる固体及び液体の少なくとも一方を製品とし、前記出荷設備から出荷する。
(c)前記(iii)により、前記貯蔵するスラッジ含有物と、ガスと、を反応して、得られる反応物を製品とし、前記出荷設備から出荷する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム並びに処理及び物流方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生コンクリート工場、各種製品の製造工場等の各種工場において発生するスラッジ水は、これに含まれるスラッジが廃棄物処理法において産業廃棄物である汚泥として扱われるため、必要な処理を行った後、管理型処分場で処分されることが一般的である。また、コンクリートを扱う建築工事及び道路工事等の各種工事現場等では工事に余剰なコンクリートが発生するが、これらの工事現場では廃棄処分ができない。そのため、通常は残コンとして生コンクリート工場等に戻され、必要な処理を行った後に廃棄されている。
【0003】
しかし近年、処分場の確保が困難になる、また処分にかかる費用が高騰するといった問題が発生している。また環境保護、さらには資源の有効活用等に対する関心が高まりをみせており、廃棄物の減量、有価物への転化を図るべく、スラッジ含有物の再利用の検討が進められている(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1では、回収したスラッジ水から上澄み水を分離回収する方法が提案されている。特許文献2には、生コンスラッジに含まれるスラッジを炭酸化することで、炭酸ガスの吸着剤として活用した後にセメント混合材として再利用する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-072947号公報
【文献】特開2021-138574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、工場設備及び工事現場で発生するスラッジ水等のスラッジ含有物の効率的な処理及び物流を行うことができる、スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム並びに処理及び物流方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムを提供する。
1.少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物の受入設備と、
スラッジ含有物の貯蔵設備、
スラッジ含有物の性状に応じて分類する分類設備、及び
スラッジ含有物の反応を行う反応設備、を有する中間設備と、
前記受入設備及び前記中間設備からの供給物を、用途別に製品として出荷する出荷設備と、
を備えるスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【0007】
さらに本発明は、以下のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムを、好ましい実施態様として提供する。
2.前記中間設備が、さらに前記スラッジ含有物に含まれる不純物を除去する不純物除去設備を備える、上記1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
3.前記中間設備が、さらに固液分離装置を備える、上記1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
4.前記貯蔵設備が複数の貯蔵容器を備え、前記受入設備で受け入れた前記スラッジ含有物を前記分類設備で分類した複数のスラッジ含有物群を、一のスラッジ含有物群ごとに一の貯蔵容器に貯蔵する上記1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
5.前記少なくとも一の工場設備及び工事現場から前記スラッジ含有物を回収し、前記受入設備に搬入する受入用輸送手段、及び前記出荷設備から出荷される前記製品を供給先に輸送する出荷用輸送手段の少なくとも一方の輸送手段を備える上記1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
6.前記受入用輸送手段及び前記出荷用輸送手段が、一の手段により行われ、前記一の手段が、前記出荷設備から出荷される前記製品を前記供給先に輸送し、かつ前記少なくとも一の工場設備及び工事現場からスラッジ含有物及び前記反応に用いるガスの少なくとも一方を輸送する上記5に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
7.前記出荷設備における前記製品の用途が、炭酸塩原料、セメント原料、固化材原料、製紙用原料、樹脂原料及びゴム用原料の原料、並びにコンクリート材料、モルタル材料及びアスファルト材料の材料から選ばれる少なくとも一の用途である上記1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
8.前記スラッジ含有物の性状が、スラッジ含有物中のスラッジ濃度、不純物の種類及びカルシウム含有量から選ばれる少なくとも一の性状である上記1に記載のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム。
【0008】
また、本発明は、以下のスラッジ含有物の処理及び物流方法を提供する。
9.少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物を受入設備で受け入れることと、製品を出荷設備で出荷することと、下記(i)~(vi);
(i)貯蔵設備で貯蔵すること
(ii)スラッジ含有物の性状に応じて分類設備で分類すること
(iii)反応設備において反応を行うこと
(iv)不純物除去設備で不純物を除去すること
(v)固液分離装置で固液分離すること
(vi)前記出荷設備に供給すること
の少なくとも一の処理及び反応を行うことと、を備え、
前記出荷設備が、前記処理及び反応を行うことにより得られる製品を、用途別に出荷する設備である、スラッジ含有物の処理及び物流方法。
【0009】
さらに本発明は、以下のスラッジ含有物の処理及び物流方法を、好ましい実施態様として提供する。
10.前記(i)の貯蔵することにより貯蔵するスラッジ含有物が、前記受入設備で受け入れた前記スラッジ含有物を前記(ii)の分類することにより分類したスラッジ含有物である上記9に記載のスラッジ含有物の処理及び物流方法。
11.前記(i)の貯蔵することにより貯蔵するスラッジ含有物について、下記(a)~(c)のいずれかを選択する上記10に記載のスラッジ含有物の処理及び物流方法。
(a)前記貯蔵するスラッジ含有物を、そのまま製品とし、前記出荷設備から出荷する。
(b)前記(v)により、前記貯蔵するスラッジ含有物を固液分離して、得られる固体及び液体の少なくとも一方を製品とし、前記出荷設備から出荷する。
(c)前記(iii)により、前記貯蔵するスラッジ含有物と、ガスと、を反応して、得られる反応物を製品とし、前記出荷設備から出荷する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工場設備及び工事現場で発生するスラッジ水等のスラッジ含有物の効率的な処理及び物流を行うことができる、スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム並びに処理及び物流方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムの好ましい一態様を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、発明の効果を阻害しない範囲において任意に変更して実施し得るものである。
【0013】
[スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム]
本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムは、
少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物の受入設備と、
スラッジ含有物の貯蔵設備、
スラッジ含有物の性状に応じて分類する分類設備、及び
スラッジ含有物の反応を行う反応設備、を有する中間設備と、
前記受入設備及び前記中間設備からの供給物を、用途別に製品として出荷する出荷設備と、を備える、というものである。
【0014】
生コンクリート工場、セメント工場、製品の製造工場等の各種工場としては、上記の特許文献に記載される方法を独自に行える大規模の工場もあれば、そうではない中小規模の工場もある。すなわち、上記の特許文献に記載される方法では、スラッジ含有物の処理に独自に対応できない工場があり、このような工場は常にスラッジ含有物の処理について課題を抱えている。また、建築工事及び道路工事等の各種工事現場は、一時的な現場であるため、上記の特許文献に記載される方法を独自に行うことは現実的ではない。
【0015】
また、上記の特許文献に記載される方法を独自に行える規模の工場、現場があるとしても、スラッジ水等のスラッジ含有物の発生量は一定ではないという性質上、稼働率を常時高くすることは困難である。さらに、常時高い稼働率を維持することが困難である場合とは逆に、スラッジ水等のスラッジ含有物の発生量が多くなるといった場合は、スラッジ含有物を処理しきれない場合も大いに想定される。
【0016】
このように、上記特許文献1及び2に記載の技術によれば、各種工場等においてスラッジ水等のスラッジ含有物の処理を行うことは可能である。しかし、上記のスラッジ含有物の性質、各種工場及び工事現場の状況に鑑みると、スラッジ含有物の処理だけでなく、スラッジ含有物の物流を含めた全体的なシステムを改善する必要がある。
【0017】
本発明者は、上記の事象に着目した結果、大小様々な工場から排出されるスラッジ含有物を一括で受け入れて、各種処理等を行い、かつこれを物流させることで解決できないかと考えた。このように複数の工場から排出されるスラッジ含有物を一括で受け入れれば、稼働率をある程度均一に保ちやすくなるからである。また、少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物を一括で受け入れる受入設備とともに、受入設備で受け入れたスラッジ含有物、また各種処理等を行ったものを、用途別に製品として出荷する出荷設備を備える構成とすることで、スラッジ含有物の物流の効率化を図ることができる。そして、所定の機能を有する貯蔵設備、分類設備及び反応設備を有する中間設備を採用することにより、スラッジ含有物の処理の効率化を図ることができる。中間設備が有する貯蔵設備、分類設備及び反応設備は、その一の設備だけでも、様々な状況に対応することができるので、スラッジ含有物の処理の効率化を図ることは十分に可能である。本実施形態のシステムでは、これら三つの設備を同時に有することで、さらに様々な状況に対応することができるため、スラッジ含有物の処理の効率化の向上効果は格別なものとなる。
【0018】
本実施形態のシステムによれば、これらの設備、すなわち受入設備及び出荷設備と、貯蔵設備、分類設備及び反応設備を有する中間設備と、を複合的に組み合わせた構成とすることにより、スラッジ含有物の効率的な処理及び物流を行うことができる、スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム並びに処理及び物流方法を提供するに至った。
【0019】
図1は、本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムの好ましい一態様を示すフロー図である。以下、本実施形態の処理及び物流システム並びに処理及び物流方法について、
図1のフロー図も用いながら、本実施形態のシステムが備える各設備から、順に説明する。
【0020】
〔受入設備〕
受入設備は、少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物を受け入れる設備である。
【0021】
本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流の複合システムにおいて受入可能なスラッジ含有物としては、スラッジを含むものであれば特に制限なく、残コン、コンクリートの洗浄排水、スラッジ(スラッジ固形分を含む。)、スラッジ水等が挙げられる(JIS A5308:2019(レディーミクストコンクリート)参照。)。例えば生コンクリート工場、セメント工場、各種製品の製造工場等の各種工場において発生する残コン、コンクリートの洗浄排水、スラッジ、これを含むスラッジ水等が挙げられる。また、スラッジについては、乾粉、湿粉のいずれであってもよい。また、JIS A5308:2019(レディーミクストコンクリート)に規定される上澄水もスラッジ含有物として挙げられる。
例えば、これら各種工場のコンクリート製造工程で発生する残コン、コンクリートの洗浄排水、スラッジ、スラッジ水、上澄水等を、そのままスラッジ含有物として受け入れることもできるし、また必要に応じてふるい分け等の処理を行ったものを受け入れることもできる。
【0022】
コンクリートを扱う建築工事及び道路工事等の各種工事現場等で発生する残コン、コンクリートの洗浄排水、スラッジ、これを含むスラッジ水等も挙げられる。これらの残コン、コンクリートの洗浄排水、スラッジ、スラッジ水、上澄水がスラッジ含有物に含まれることは、上記各種工場で発生するスラッジ含有物と同様である。
【0023】
各種工事現場で発生するスラッジ含有物としては、より具体的には、使用せずに残存したコンクリート、これに水を加えて得られるスラリー、また当該スラリーに含まれる骨材等の粗粉分を分離して得られるセメント等の微粉分を含むもの、またアジテータトラック等を洗浄した後に発生するコンクリートを含む残渣、当該残渣から骨材等の粗粒分を分離して得られるセメント等の微粉分を含むもの、等が挙げられる。建設工事の現場としては、例えばマンション及びビルの建設工事、ダムの建設工事の現場等が代表的に挙げられ、道路工事の現場としては、例えば一般道路、林道等の工事現場、また高速道路の工事現場等が挙げられる。
【0024】
受入設備は、上記の工場設備及び工事現場等から回収したスラッジ含有物を受け入れることができれば、また好ましくは少なくとも一時的に保管できれば、その形式等に特に制限はなく、例えば受け入れるスラッジ含有物の性状(例えば、粉状であるのか、液状であるのか等)、またスラッジ含有物を搬送する手段(例えば、ダンプ車、タンクローリー車等の車両、鉄道、またバルク船等の船舶)に応じた形式とすればよい。
【0025】
受入設備が備える機器としては、例えば各種工場設備及び工事現場からのスラッジ含有物を一括で受け入れるための受入容器(例えば、受入ピット)が代表的に挙げられる。また、本実施形態のシステムは、
図1に示されるように一つの受入容器を有してもよいし、スラッジ含有物の種類別、またスラッジ含有物を搬送する手段別に、複数の受入容器を有していてもよい。
【0026】
また、受入設備の設置箇所としては、例えば、ダンプ車、タンクローリー車等の車両、鉄道等の陸送手段に対応する場合は、受入設備は陸地に設けられているとよい。また、バルク船などの海送手段に対応する場合は、海岸部に設けられているとよく、この場合は専用埠頭を備えているとよい。
【0027】
〔中間設備〕
本実施形態のシステムは、貯蔵設備、分類設備及び反応設備を中間設備として有する。中間設備は、スラッジ含有物を処理及び反応を行う設備であり、受入設備で受け入れたスラッジ含有物に対して処理を施すことにより、製品として出荷し得るものとする設備である。以下、貯蔵設備から説明する。
【0028】
(貯蔵設備)
貯蔵設備は、スラッジ含有物を貯蔵するための設備である。
貯蔵設備は、単にスラッジ含有物を貯蔵するだけでなく、スラッジ含有量の発生量が多い場合は一時的又は長期的に貯蔵・保管を行い、他方発生量が少ない場合は貯蔵設備において貯蔵するスラッジ含有量を放出する、といった調整を行うことができる。また、その時々で変動する用途別の需要に応じて、必要な処理を選択するために貯蔵・保管するといった調整を行うこともできる。このような調整により、各種工場設備及び工事現場で発生するスラッジ水等のスラッジ含有物の発生量は一定ではないが、スラッジ含有物の発生量の変化に対応することが可能となる。
【0029】
貯蔵設備において、スラッジ含有物の貯蔵する方法としては、スラッジ含有物を貯蔵できれば特に制限はなく、例えば貯蔵容器(ピット形式、タンク形式、槽形式等のいずれの形式であってもよい。)を用いて行えばよい。
【0030】
貯蔵設備で貯蔵する対象物としては、例えば
図1に示されるように、受入設備で受け入れたスラッジ含有物(以下、「受入設備からの供給物」とも称する。)、その他後述する分類設備で分類したスラッジ含有物(以下、「分類設備からの供給物」とも称する。)、また不純物除去設備で不純物が除去されたスラッジ含有物(以下、不純物除去設備からの供給物」とも称する。)等の中間設備からの供給物等も挙げられる。本実施形態のシステムにおいては、分類設備で分類したスラッジ含有物(分類設備からの供給物)を貯蔵することが好ましい。
貯蔵設備で貯蔵したスラッジ含有物(貯蔵物)は、
図1に示されるように、製品として出荷設備から、反応設備で反応させた反応物を製品として出荷設備から、また必要に応じて固液分離設備で分離して製品として出荷設備から、出荷することができる。
【0031】
貯蔵設備が上記貯蔵容器を有する場合、貯蔵容器は単数であってもよいし、複数であってもよく、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流を図る観点から、複数であることが好ましい。さらに、本実施形態のシステムにおいては、貯蔵設備が複数の貯蔵容器を備え、受入設備で受け入れたスラッジ含有物を分類設備で分類した複数のスラッジ含有物群を、一のスラッジ含有物群ごとに一の貯蔵容器に貯蔵することが好ましい。これにより、反応設備における反応に供するスラッジ含有物を管理することができるため、反応を行いやすく、また反応を行わずに出荷できる場合は直ちに出荷する等の判断を行うことができるため、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0032】
貯蔵設備における貯蔵容器としては、例えば、
図1に示されるように、受入設備で受け入れて、直ちに出荷できるスラッジ含有物(受入設備からの供給物)、及び分類設備で分類した分類物で、出荷できるスラッジ含有物(分類設備からの供給物)を貯蔵する貯蔵容器A、不純物除去設備において不純物を除去したスラッジ含有物(不純物除去設備からの供給物)を貯蔵する貯蔵容器B、不純物除去設備において不純物を除去する必要がなく、かつ反応設備における反応に供するためのスラッジ含有物を貯蔵する貯蔵容器C、といった貯蔵容器が代表的に挙げられる。
【0033】
(分類設備)
分類設備は、スラッジ含有物の性状に応じて分類する設備である。分類設備を有することで、反応設備における反応に供するスラッジ含有物を管理することができるため、反応を行いやすく、また反応を行わずに直ちに出荷できる場合は出荷する等の判断を行うことができるため、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0034】
分類設備で分類する対象物としては、受入設備で受け入れたスラッジ含有物、また
図1に示されるように、不純物除去設備で不純物を除去した後に受入設備で受け入れたスラッジ含有物も挙げられる。いずれにしても、分類設備で分類する対象物は、受入設備で受け入れたスラッジ含有物となる。
分類設備で分類した分類物であるスラッジ含有物(分類設備からの供給物)は、
図1に示されるように、そのまま出荷設備から出荷されるか、貯蔵設備で貯蔵した貯蔵物として、また反応設備で反応させて得られる反応物として、出荷設備から出荷される。また、必要に応じて不純物除去設備及び固液分離設備において処理してから、貯蔵設備、反応設備に供給されてもよいし、出荷設備から出荷されてもよい。
【0035】
分類設備における分類の基準となるスラッジ含有物の性状としては、スラッジ含有物中のスラッジ濃度、不純物の種類及びカルシウム含有量が好ましく挙げられる。本実施形態のシステムにおいてはこれらの性状のうち、少なくとも一の性状に応じて分類することが好ましい。
既述のように、本実施形態のシステムで受け入れるスラッジ含有物は、上記各種工場及び各種工事現場から排出されるものであるから、カルシウムを含まない不純物、例えば浮遊物、塵芥、その他カルシウムを含まない成分等の多種多様の不純物が含まれる場合がある。もし受け入れするスラッジ含有物に含まれる不純物が判明している場合は、予め同種の不純物を含むスラッジ含有物をまとめて処理できれば、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0036】
例えばスラッジ含有物中のスラッジ濃度が高いものと低いものとを受け入れる場合、これらをまとめて受け入れて、同じ貯蔵容器に貯蔵することも可能であるが、例えば出荷する際の製品の種類及び性状に鑑みると、スラッジ含有物中のスラッジ濃度が高い方が、又は低い方が、効率的にスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる場合がある。この場合、高いものと低いものとをまとめて同じ貯蔵容器に貯蔵するよりも、別々に貯蔵し、所望のスラッジ濃度のスラッジ含有物の処理を進めることで、より効率的にスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。また、カルシウム含有量についても、同様である。
【0037】
上記の他、例えばスラッジ含有物に骨材等の粗粒分が含まれる場合、粗粒分の有無、粗粒分の粒径の大きさ等、粗粒分に関する性状を分類の基準としてもよい。同程度の粒径の粗粒分を含むスラッジ含有物を複数受け入れた場合、複数のスラッジ含有物をまとめることで、除去設備における不純物の除去、また後述する固液分離設備における処理が容易となるので、より効率的にスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。なお、粗粒分となる骨材については、粗骨材及び細骨材の両方が該当し得る。粗骨材及び細骨材を含むスラッジ含有物を受入設備で受け入れて、不純物除去設備を経由する場合は主に粗骨材は除去されるため、細骨材の性状を分類の基準とすることとなる。また不純物除去設備を経由せず、そのまま分類設備で分類する場合は、粗骨材及び細骨材が存在するため、そのいずれかの性状を分類の基準とすればよい。
【0038】
スラッジ含有物の性状は、受け入れる時点で判明していればこれに従えばよく、不明である場合は、受入設備で受け入れた時点、例えば受入容器に受け入れた際に、スラッジ含有物の一部をサンプリングし、上記いずれかの性状についての分析を行えばよい。
【0039】
(反応設備)
反応設備は、スラッジ含有物の反応を行う設備である。
反応設備において反応に用いることができるスラッジ含有物としては、受入設備で受け入れたスラッジ含有物(受入設備からの供給物)の他、中間設備からの供給物であるスラッジ含有物、すなわち貯蔵設備、分類設備、さらに後述する固液分離設備及び不純物除去設備から選ばれる少なくとも一の設備で処理された処理物が挙げられる。
【0040】
反応設備における反応としては、上記の各設備からの供給物となるスラッジ含有物と、ガスと、の反応が挙げられる。このような反応としては、例えばスラッジ含有物に含まれるスラッジ分(固形分)、例えばカルシウムを含む成分、より具体的にはセメント水和物(例えば、ケイ酸カルシウム水和物、水酸化カルシウム等が挙げられる。)及びこれらの未水和物等のカルシウム成分と、二酸化炭素と、による反応、また例えばスラッジ水に溶解して存在する水酸化カルシウム等のカルシウムを含む成分と、二酸化炭素と、による反応が挙げられ、当該反応により反応物として炭酸カルシウムが得られる。
【0041】
炭酸カルシウムは、詳細は後述するが、例えばセメント原料、固化材原料、建材、樹脂原料、ゴム用原料等の用途に好適に利用することができる。これらの用途に用いる場合、炭酸カルシウムについてマスバランス認証を受けることで、本実施形態のシステムにより得られる炭酸カルシウムの使用量に応じてカーボンニュートラル化に貢献することが可能となる。このように、本実施形態のシステムは、スラッジ含有物の円滑な処理及び物流を図ることができるだけでなく、炭酸カルシウムのような有価物を製造しつつ、二酸化炭素の固定化を図ることも可能となる。
【0042】
反応設備における、スラッジ含有物と二酸化炭素との反応の方法については、これらの反応が進行すれば特に制限はなく、例えばスラッジ含有物に二酸化炭素を含むガスをバブリング等により供給する方法、また二酸化炭素を含むガスを流通させながら、当該ガスの気流中にスラッジ含有物を噴霧して供給する方法等が代表的に挙げられる。
【0043】
またスラッジ含有物としてスラッジ水を使用する場合、既述のようにスラッジ水には水酸化カルシウム等のカルシウム分が溶解して存在しているため、スラッジ水を濃縮して水酸化カルシウム等のカルシウム分を析出させてから、反応させる、といったことを行ってもよい。すなわち、反応設備は、上記反応を行う反応装置の他、濃縮装置を有していてもよい。
【0044】
反応設備に供給するスラッジ含有物は、不純物が少なく、またスラッジ濃度、カルシウム濃度が高いものであることが好ましい。反応設備における、スラッジ含有物と二酸化炭素との反応が進行しやすくなるからである。
【0045】
反応設備にスラッジ含有物を供給する方法について、例えば
図1に示されるように、分類設備において、不純物が少ない、またスラッジ濃度、カルシウム濃度が高いといった性状を有するスラッジ含有物を、反応設備に供給するスラッジ含有物を貯蔵する貯蔵容器Cに分類し、反応設備に供給することができる。また、貯蔵容器Cから反応設備に供給する前に、固液分離設備において固液分離して、固形分を反応設備に供給することもできる。
また、また不純物が多いスラッジ含有物を反応設備に供給しようとする場合は、不純物が多いスラッジ含有物を不純物除去設備に供給し、不純物除去設備において不純物を除去したスラッジ含有物を貯蔵する貯蔵容器Bに経由して反応設備に供給する、また貯蔵容器Bから固形分離設備において固液分離して、固形分を反応設備に供給することもできる。
【0046】
また、反応設備に供給する二酸化炭素は、
図1に示されるように、本実施形態のシステム内で二酸化炭素製造設備を有する場合は、当該二酸化炭素製造設備で製造する二酸化炭素を、二酸化炭素供給設備により供給してもよいし、また本実施形態のシステム外から供給される二酸化炭素を、二酸化炭素供給設備により供給してもよい。
【0047】
(不純物除去設備)
中間設備は、さらにスラッジ含有物に含まれる不純物を除去するための不純物除去設備を備えていてもよい。本実施形態のシステムが受け入れるスラッジ含有物は、既述のように雑多なものであるから、カルシウムを含まず、後述する出荷設備から出荷することができないような不純物、例えば浮遊物、塵芥、その他カルシウムを含まない成分等が含まれる場合がある。本実施形態のシステムにおいては、このような不純物を予め除去する除去設備を有することで、スラッジ含有物に含まれる不純物を予め除去した不純物除去物とすることにより、反応設備における反応をより効率的に行うことができ、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0048】
スラッジ含有物に含まれる不純物としては、例えばスラッジ水に含まれる水分も挙げられる。水分を除去することで、システム内を流通する流通量を低減することができるため、システムの規模をコンパクトにすることができ、より効率的な処理及び物流が可能となる。他方、スラッジ水のままとすることでハンドリングしやすい、あるいは流通させやすいといった場合は、水分を除去する必要はない。
【0049】
不純物除去設備は、
図1に示されるように、受入設備の受入容器において受け入れる前に設けられていてもよいし、また受入容器で受け入れた後に設けられていてもよい。受入容器で受け入れた後に設けられる場合の不純物除去設備の対象物としては、
図1に示されるように、受入設備からの供給物、分類設備からの供給物、貯蔵設備からの供給物等が挙げられる。また、
図1に示されるように、不純物除去設備により不純物を除去したスラッジ含有物(不純物除去物)を反応設備に供給することで、反応設備における反応をより効率的に行うことが可能となる。
【0050】
本実施形態のシステムにおいては、必要に応じて不純物除去設備を設け、スラッジ含有物に含まれる不純物を必要に応じて除去すればよく、不純物除去を行う装置としては、除去しようとする不純物に応じて適宜選択すればよい。例えば、トロンメル(回転ふるい)、振動ふるい、傾斜ふるい等の各種ふるい等を採用することができる。
【0051】
(固液分離設備)
中間設備は、さらにスラッジ含有物に含まれる固形分と液体分とを分離するため、固液分離設備を備えていてもよい。スラッジ含有物に含まれる固形分のみを出荷する、液体分のみを出荷する、といった場合、またスラッジ含有物を反応装置に供給する際に、固形分及び液体分のいずれか一方のみを供給する、といった場合に採用することができる。
【0052】
固液分離設備において固液分離する対象物としては、
図1に示されるように、受入設備からの供給物、また分類設備からの供給物、貯蔵設備からの供給物、反応設備からの供給物等の中間設備からの供給物が挙げられる。また、
図1には示されていないが、不純物除去設備からの供給物も挙げられる。
例えば
図1に示されるように、受入設備で受け入れたスラッジ含有物をそのまま、又は分類設備を介して貯蔵容器Bに貯蔵するスラッジ含有物は、そのまま出荷設備により出荷することもできるし、また固形分のみ、又は液体分のみが所望される場合は、固液分離設備で固液分離を行い、固形分及び液体分の固液分離物とした後、各々を出荷設備より出荷することができる。
【0053】
反応設備に供給するスラッジ含有物としては、
図1に示されるように、反応設備に供給するために分類設備で分類し、貯蔵容器B又はCに貯蔵したスラッジ含有物を、そのまま反応設備に供給してもよいし、またこれらの貯蔵容器に貯蔵されたスラッジ含有物を、固液分離設備で固液分離を行った後、固形分のみ、又は液体分のみを反応設備に供給することもできる。
【0054】
反応設備で得られた反応物は、そのまま出荷設備より出荷することもできる。また、反応物が固形分及び液体分を有する場合は、そのまま出荷設備より出荷してもよいし、
図1に示されるように、固液分離設備で固液分離して、固形分を製品貯蔵容器A及びBのいずれか一方に貯蔵し、液体分を他方の製品貯蔵容器に貯蔵し、固形分と液体分とを別々に出荷設備より出荷することもできる。
【0055】
本実施形態のシステムにおいては、必要に応じて固液分離設備を設け、固形分及び液体分を必要に応じて分離すればよく、固液分離を行う装置としては、分離しようとする固形分及び液体分に応じて適宜選択すればよい。例えば、フィルタープレス等の脱水装置、ろ過装置等を採用することができる。
【0056】
〔出荷設備〕
出荷設備は、受入設備及び中間設備からの供給物を、用途別に製品として出荷する設備である。本実施形態のシステムは、上記受入設備及び出荷設備を備えることで、スラッジ含有物の効率的な物流を行うことが可能となる。
【0057】
出荷設備から出荷する製品としては、受入設備からの供給物、中間設備からの供給物が挙げられる。
受入設備からの供給物は、受入設備で受け入れたスラッジ含有物そのものとなる。また、中間設備からの供給物は、貯蔵設備からの供給物(貯蔵物)、分類設備からの供給物(分類物)、反応設備からの供給物(反応物)が挙げられる。また、不純物除去設備からの供給物(不純物除去物)、固液分離設備からの供給物(固液分離物であり、固形分及び/又は液体分である。)も挙げられる。
【0058】
出荷設備から出荷するスラッジ含有物としては、
図1に示されるように、受入設備からの供給物、また中間設備からの供給物のうち、貯蔵設備からの供給物(貯蔵物)、分類設備からの供給物(分類物)、また不純物除去設備からの供給物(不純物除去物)、固液分離設備からの供給物(固液分離物であり、固形分及び/又は液体分である。)が該当する。これらの供給物は、受入設備で受け入れたスラッジ含有物に含まれる成分以外の成分は含まれないからである。
【0059】
出荷設備から出荷するスラッジ含有物が、固液分離設備からの供給物である場合、固液分離して得られる固形分、また液体分の少なくとも一方を出荷することができる。
スラッジ含有物が、骨材等の粗粒分を含むスラッジ水である場合、骨材等の粗粒分が固形分に該当し、上記粗粒分を除去したスラッジ水(水酸化カルシウム等のカルシウム分が溶解した上澄み水である。)が液体分に該当する。また、固形分には浮遊物等の不純物が含まれる場合もあるが、受け入れたスラッジ含有物に含まれる不純物が多い場合は、必要に応じて不純物除去設備において除去してもよい。
【0060】
また、出荷設備から出荷するスラッジ含有物としては、受入設備で受け入れたスラッジ含有物がスラッジ水(骨材等の粗粒分を含むものであってもよい。)である場合、例えば骨材等の粗粒分を除去して得られたスラッジ水(水酸化カルシウム等のカルシウム分が溶解した上澄み水である。)を濃縮して得られる水酸化カルシウム等のカルシウム分も挙げられる。
【0061】
上記出荷設備から出荷するスラッジ含有物の用途としては、例えば炭酸塩原料、セメント原料、固化材原料、製紙用原料、樹脂用原料及びゴム用原料の原料、並びにコンクリート材料、モルタル材料及びアスファルト材料の材料(副資材等)等が挙げられる。
【0062】
上記スラッジ水等のスラッジ含有物は、水酸化カルシウム等のカルシウム分として、生コンクリート工場、セメント工場にセメント原料、固化材原料、建材等として出荷することもできるし、製紙工場では副資材(例えば、パルプ製造の際に排出される炭酸ソーダから苛性ソーダとして回収する際の薬剤として利用可能である。)、樹脂原料(例えば、難燃剤、抗菌剤、脱臭剤、有毒ガスの捕捉材等として利用可能である。)、ゴム用原料(例えば、フッ素ゴムの受酸剤等として利用可能である。)として、各々製紙工場、樹脂製造工場、ゴム製造工場に出荷することもできる。また、不純物の含有量が少ない品質の高いスラッジ水である場合は、上記の中でも製紙工場、樹脂製造工場、ゴム製造工場等における原料又は副資材として特に有用である。
これらの工場における所望に応じて、スラッジ水として出荷してもよいし、水酸化カルシウム等のカルシウム分の粉末として出荷してもよい。
【0063】
出荷設備から出荷する製品が中間設備の中でも反応設備からの供給物である場合、製品には受入設備で受け入れたスラッジ含有物に含まれる成分以外の成分を含む場合がある。
反応設備からの供給物(反応物)としては、上記反応設備において得られる反応物である、炭酸カルシウムが挙げられる。上記出荷設備から出荷する炭酸カルシウム等の反応物の用途としては、炭酸塩原料、セメント原料、固化材原料、製紙用原料、樹脂原料及びゴム用原料、又は副資材等が挙げられる。
例えば炭酸カルシウムは、炭酸塩原料として、またセメント原料(例えば、セメント用組成物)固化材原料、建材として出荷することもできるし、製紙用原料(例えば、充填剤、凝集助剤、保留剤等として利用可能である。)、樹脂原料(耐衝撃性、寸法安定性、表面平滑性等の各種性状の向上のための添加剤として利用可能である。)、ゴム用原料(耐熱性、強度、加工性の向上のためのゴム用フィラーとして利用可能である。)として、各々製紙工場、樹脂製造工場、ゴム製造工場に出荷することもできる。また、炭酸カルシウムは、モルタル、コンクリート、アスファルト等に用いられるフィラー(各々モルタル材料、コンクリート材料、アスファルト材料とも称される。)等の各種材料(副資材)として、出荷することも可能である。
【0064】
出荷設備から出荷する製品としては、粗骨材及び細骨材等の骨材も挙げられる。骨材は、既述のように、不純物除去装置、及び固液分離設備から供給され得る供給物である。例えば、不純物除去装置では、骨材を含むスラッジ含有物から不純物として骨材を除去することで、骨材が得られる。また、固液分離設備では、骨材を含むスラッジ含有物から固形分として骨材を分離することで、骨材が得られる。ここで、スラッジ含有物が、骨材以外に、例えばモルタル分を含む場合は、固液分離することで、固形分として骨材及びモルタル分が得られる。
これらの設備から得られる骨材は、上記炭酸カルシウムと同様に、モルタル材料、コンクリート材料、アスファルト材料等の各種材料(副資材)として利用することが可能である。また、モルタル分が得られる場合は、モルタル分は、モルタル原料、コンクリート原料として利用することが可能である。
【0065】
出荷設備は、製品貯蔵設備を備えていてもよい。出荷前の一時的又は長期的な製品の保管のために製品貯蔵設備を有することで、スラッジ含有物の発生量の変化、さらには出荷量の変動に対応しやすくなる。
【0066】
製品貯蔵設備としては、出荷前の一時的又は長期的な製品の保管ができれば、その形式に特に制限はないが、例えば製品貯蔵容器(ピット形式、タンク形式、槽形式、サイロ形式等のいずれの形式であってもよい。)を用いるとよい。
【0067】
また、製品貯蔵設備が上記製品貯蔵容器を有する場合、製品貯蔵容器は単数であってもよいし、複数であってもよく、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流を図る観点から、複数であることが好ましい。複数とする場合は、例えば製品の性状に応じて製品貯蔵容器を設けることができ、例えば液体又は固体の違い、また製品純度の違い等の性状の違いに応じて複数の製品貯蔵容器を設けるとよい。より効率的な出荷ができるため、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0068】
例えば、
図1に示されるように、反応設備からの供給物(反応物)を、必要に応じて固液分離設備で固液分離を行い、固形分を製品貯蔵容器A及びBのいずれかに貯蔵し、液体分を他方の製品貯蔵容器に貯蔵する、といったことを行うことができる。このように固形分と液体分とに分けて貯蔵することもできるし、既述のように製品の純度に応じて貯蔵することもできる。
【0069】
出荷設備は、例えば上記の各設備からの供給物を、用途別に製品として出荷することができれば、その形式等に特に制限はなく、例えば出荷にあたりスラッジ含有物及び反応物を搬送する手段(例えば、ダンプ車、タンクローリー車等の車両、鉄道、またバルク船等の船舶)に応じた形式とすればよい。
例えば、ダンプ車、タンクローリー車等の車両、鉄道等の陸送手段に対応する場合は、受入設備は陸地に設けられているとよい。また、バルク船などの海送手段に対応する場合は、海岸部に設けられているとよく、この場合は専用埠頭を備えているとよい。
【0070】
(輸送手段)
本実施形態のシステムは、上記受入設備で受け入れるスラッジ含有物、また上記出荷設備で出荷する製品の輸送を行う輸送手段を備えることが好ましい。すなわち、本実施形態のシステムは、少なくとも一の工場設備及び工事現場から前記スラッジ含有物を回収し、前記受入設備に搬入する受入用輸送手段、及び出荷設備から出荷される製品(上記各設備からの供給物であり、スラッジ含有物及び反応物が含まれる。)を供給先に輸送する出荷用輸送手段の少なくとも一方の輸送手段を備えることが好ましい。これにより、本実施形態のシステムは、スラッジ含有物の処理及び物流の全てを一括管理することができ、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0071】
輸送手段としては、既述のようにダンプ車、タンクローリー車等の車両、鉄道等の陸送手段、またバルク船などの海送手段が挙げられる。本実施形態のシステムにおいて、受入用輸送手段及び出荷用輸送手段の少なくとも一方が、上記鉄道及び車両から選ばれる少なくとも一の陸送手段である、または上記海送手段であることが好ましい。よって、例えば受入用輸送手段及び出荷用輸送手段が、ともに上記鉄道及び車両から選ばれる少なくとも一の陸送手段であってもよいし、ともに海送手段であってもよいし、受入用輸送手段及び出荷用輸送手段の一方が陸送手段であり、他方が海送手段であってもよい。
【0072】
本実施形態のシステムにおいて、受入用輸送手段及び出荷用輸送手段は、一の手段により行われ、当該一の手段が、出荷設備から出荷される製品を供給先(上記の製品の用途に応じた出荷先である。)に輸送し、かつ上記少なくとも一の工場設備及び工事現場からスラッジ含有物及び上記反応に用いるガスの少なくとも一方を輸送することが好ましい。
このように、受入用輸送手段及び出荷用輸送手段を一の手段により行い、出荷される製品を供給先に輸送し、その帰りに受け入れるスラッジ含有物及び反応に用いるガスの少なくとも一方を輸送することで、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。また、製品の供給先と、スラッジ含有物を受け入れる工場設備及び工事現場と、が一致した場合は、更に効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0073】
受入用輸送手段で輸送するスラッジ含有物は、上記受入設備で受け入れ得るものとして説明したスラッジ含有物であり、その形態に応じた形式で輸送すればよい。
また、ガスはセメント工場等、二酸化炭素が発生する工場から、例えばガスタンク、ボンベ等の荷姿で輸送することができる。
【0074】
[スラッジ含有物の処理及び物流方法]
本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流方法は、
を備える少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物を受入設備で受け入れることと、製品を出荷設備で出荷することと、下記(i)~(vi);
(i)貯蔵設備で貯蔵すること
(ii)スラッジ含有物の性状に応じて分類設備で分類すること
(iii)反応設備において反応を行うこと
(iv)不純物除去設備で不純物を除去すること
(v)固液分離装置で固液分離すること
(vi)前記出荷設備に供給すること
の少なくとも一の処理及び反応を行うことと、を備え、
前記出荷設備が、前記処理及び反応を行うことにより得られる製品を、用途別に出荷する設備である、
というものである。
【0075】
本実施形態の処理及び物流方法は、上記本実施形態のシステムを採用することで容易に行うことができる。本実施形態の処理及び物流方法における上記受入設備、出荷設備、並びに貯蔵設備、分類設備及び反応設備の中間設備については、上記本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流システムにおいて説明したものと同じである。
【0076】
本実施形態の処理及び物流方法において、貯蔵設備で貯蔵するスラッジ含有物は、受入設備で受け入れたスラッジ含有物を分類設備で分類したスラッジ含有物であることが好ましい。このようにすることで、反応設備における反応に供するスラッジ含有物を管理することができるため、反応を行いやすく、また反応を行わずに直ちに出荷できる場合は出荷する等の判断を行うことができるため、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0077】
また、本実施形態の処理及び物流方法は、不純物除去設備及び固液分離装置の中間設備における処理を行うことを備えていてもよい。不純物除去設備及び固液分離装置については、上記本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流システムにおいて説明したものと同じである。
【0078】
本実施形態の処理及び物流方法における、上記(i)~(vi)の処理及び反応を行うことは、これら(i)~(vi)の一のみの処理又は反応を行ってもよいし、これら(i)~(vi)の二以上の処理及び/又は反応を行ってもよい。
本実施形態の処理及び物流方法において、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流を可能とする観点から、上記(i)~(vi)の二以上の処理及び/又は反応を行うことが好ましく、三以上の処理及び/又は反応を行うことがより好ましい。これと同様の観点から、上記(i)、(ii)及び(iv)~(vi)の処理のうち、少なくとも上記(vi)を備えればよく、(i)及び(vi)を備えることが好ましく、上記(i)、(ii)及び(vi)を備えることがより好ましい。
【0079】
スラッジ含有物だけでなく、反応を行うことにより得られる反応物を製品として供給することを考慮すると、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流を可能とする観点から、上記(iii)の反応と、上記(i)、(ii)及び(iv)~(vi)の一のみの処理と、を行うことが好ましく、上記(iii)の反応と、上記(i)、(ii)及び(iv)~(vi)の二以上の処理と、を行うことがより好ましく、上記(iii)の反応と、上記(i)、(ii)及び(iv)~(vi)の三以上の処理と、を行うことが更に好ましい。
【0080】
本実施形態の処理及び物流方法におけるもっとも単純な形態は、受入設備→出荷設備のルート(上記(vi)の処理を行うことに該当する。)であるが、受入設備で受け入れたスラッジ含有物を製品として出荷設備より出荷することによって、大小様々な工場から排出されるスラッジ含有物を一括で受け入れ、これを出荷設備に供給する処理を行い、かつ出荷設備より出荷することで、スラッジ含有物の効率的な処理及び物流を行うことが可能となる。また、上記(vi)の出荷設備に供給することについて、その対象物としては、受入設備で受け入れたスラッジ含有物だけでなく、上記(i)~(v)の処理及び反応を行ったものも挙げられる。
【0081】
本実施形態の処理及び物流方法では、上記(i)~(vi)から選ばれる少なくとも一の処理及び反応を採用することで、製品に対する所望の性状等に応じた処理及び物流をより効率的に行うことが可能となる。上記(i)~(vi)の組み合わせとしては、例えば、後述する(a)~(c)の形態が代表的に好ましく挙げられる。
【0082】
本実施形態の処理及び物流方法は、上記(i)の貯蔵することにより貯蔵するスラッジ含有物について、例えば下記(a)~(c)のいずれかを選択しながら運用し、出荷することができる。
(a)前記貯蔵するスラッジ含有物を、そのまま製品とし、前記出荷設備から出荷する。
(b)前記(v)により、前記貯蔵するスラッジ含有物を固液分離して、得られる固体及び液体の少なくとも一方を製品とし、前記出荷設備から出荷する。
(c)前記(iii)により、前記貯蔵するスラッジ含有物と、ガスと、を反応して、得られる反応物を製品とし、前記出荷設備から出荷する。
【0083】
上記(a)は、
図1に示される、受入設備(受入容器)→貯蔵容器A→出荷設備のルート(上記(i)及び(vi)の処理)が該当する。なお、
図1に示される、受入設備(受入容器)→出荷設備のルートは、貯蔵設備で貯蔵しないルートであり、上記(vi)の出荷設備に供給することによる処理を行うルートに該当する。
本実施形態の処理及び物流方法では、受入設備において、各所から回収したスラッジ含有物を一括で受け入れ、これを出荷設備において用途別に製品として出荷するだけでも、スラッジ含有物の処理及び物流の効率化を図ることは可能である。さらに、上記(a)をはじめ、上記(b)及び(c)のように、上記中間設備が有する貯蔵設備、分類設備及び反応設備の少なくとも一の設備における処理及び反応を行うことで、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。
【0084】
上記(b)は、
図1に示される、受入設備(受入容器)→貯蔵容器A→固液分離設備→出荷設備のルート(上記(i)、(v)及び(vi)の処理)、受入設備(受入容器)→分類設備→貯蔵容器A→固液分離設備→出荷設備のルート(上記(i)、(ii)、(v)及び(vi)の処理)の貯蔵容器Aを経由するルート;受入設備(受入容器)→分類設備→不純物除去設備→貯蔵容器B→固液分離設備→出荷設備のルート(上記(i)、(ii)、(iv)、(v)及び(vi)の処理)の貯蔵容器Bを経由するルート;及び受入設備(受入容器)→分類設備→貯蔵容器C→固液分離設備→出荷設備のルート(上記(i)、(ii)、(v)及び(vi)の処理)の貯蔵容器Cを経由するルート;が該当する。
【0085】
上記(c)は、
図1に示される、受入設備(受入容器)→分類設備→貯蔵容器B又はC→反応設備→出荷設備のルート(分類設備から反応設備における、貯蔵容器B及びCを介するルートは適宜選択し得る。)(上記(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(vi)の処理)、受入設備(受入容器)→分類設備→貯蔵容器B又はC→反応設備→固液分離設備→製品貯蔵容器A及び/又はB→出荷設備のルート(分類設備から反応設備における、貯蔵容器B及びCを介するルートは適宜選択し得る。)(上記(i)、(ii)、(iii)、(iv)、(v)及び(vi)の処理)等が挙げられる。
また、上記(a)~(c)において、製品に要求される性状に応じて、不純物除去設備において不純物の除去を行ってもよいことは、いうまでもない。
【0086】
本実施形態の処理及び物流方法は、少なくとも一の工場設備及び工事現場からスラッジ含有物を回収し、受入設備に搬入する受入用輸送手段によりスラッジ含有物を回収し、受入設備に搬入すること、及び出荷設備から出荷される製品を供給先に輸送する出荷用輸送手段により製品を供給先に輸送すること、の少なくとも一方を備えることが好ましい。これにより、スラッジ含有物の処理及び物流の全てを一括管理することができ、より効率的なスラッジ含有物の処理及び物流が可能となる。ここで、受入用輸送手段及び出荷用輸送手段については、上記本実施形態のスラッジ含有物の処理及び物流システムにおいて説明したものと同じである。
【要約】 (修正有)
【課題】工場設備及び工事現場で発生するスラッジ水等のスラッジ含有物の効率的な処理及び物流を行うことができる、スラッジ含有物の処理及び物流の複合システム並びに処理及び物流方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一の工場設備及び工事現場から回収したスラッジ含有物の受入設備と、スラッジ含有物の貯蔵設備、スラッジ含有物の性状に応じて分類する分類設備、及びスラッジ含有物の反応を行う反応設備、を有する中間設備と、前記受入設備及び前記中間設備からの供給物を、用途別に製品として出荷する出荷設備と、を備えるスラッジ含有物の処理及び物流の複合システム、並びに処理及び物流方法である。
【選択図】
図1