(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】フタロシアニン化合物
(51)【国際特許分類】
C09B 47/06 20060101AFI20240305BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C09B47/06
C09B67/20 G
(21)【出願番号】P 2023525731
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2022021042
(87)【国際公開番号】W WO2022255135
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2021091591
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【氏名又は名称】小森 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【氏名又は名称】山下 武志
(72)【発明者】
【氏名】フー シオン ワン
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 博
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宗矩
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-235354(JP,A)
【文献】特開2001-335715(JP,A)
【文献】特表2018-524297(JP,A)
【文献】特表2011-514927(JP,A)
【文献】国際公開第2022/045236(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0252996(US,A1)
【文献】THIYAGARAJAN, S. et al.,Substituted phthalic anhydrides from biobased furanics: a new approach to renewable aromatics,ChemSusChem,2015年,Vol.8, No.18,p.3052-3056
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/06
C09B 67/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性炭素原子
14Cを含有する下記式(I)、及び(II)で表される化合物群から選択される少なくとも1種以上の化合物と、放射性炭素原子
14Cを含有する下記式(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)で表される化合物群から選択される少なくとも1種以上の化合物とを含有する組成物で
あって、
前記組成物中における下記式(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)で表される化合物群から選択される化合物の含有量が、0.1~10重量%である組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(上記式(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)中、R
1~R
4は互いに独立して水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シクロヘキシル基、フェニル基を表し、前記アルキル基中に存在する1個又は隣接しない2個以上の-CH
2-は-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられていても良く、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又はフェニル基に置換されていても良く、前記シクロヘキシル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-又は-S-に置き換えられていても良く、前記フェニル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられていても良く、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、Mは金属原子を表す。)
【請求項2】
前記Mで表される金属原子が、Al、Si、Sc、Ti、V、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、In、Sn又はPbからなる群から選択される1種又は2種以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、又は(IIE)で表される化合物におけるpMC(パーセントモダンカーボン)が、20%以上である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記R
1~R
4が、全て水素原子である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物を含有する顔料組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の顔料組成物を含有する印刷インキ。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷インキが印刷された印刷物。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷物を有する積層体。
【請求項9】
請求項5に記載の顔料組成物を含有する塗料。
【請求項10】
請求項9に記載の塗料による塗膜を有する塗装物。
【請求項11】
請求項5に記載の顔料組成物を含有するカラーフィルター用着色組成物。
【請求項12】
請求項11に記載のカラーフィルター用着色組成物を有するカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フタロシアニン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニンは青色から緑色の色相を呈し、幅広い用途を持つ優れた顔料である。現在フタロシアニンは無水フタル酸、フタル酸又はフタロニトリルから合成されるのが一般的である。フタルイミド又は1,3-ジイミノイソインドリンを用いた合成アプローチもあるが一般的ではない。フタロシアニン合成の出発物質であるフタル酸誘導体は種類が限られているため、最終生成物であるフタロシアニンの誘導体化方法も限定される。従って、工業的には、一般的に官能基を有さないフタロシアニンが生産されている。
【0003】
フタロシアニン骨格に結合する官能基はその電子供与性、電子吸引性によって色相を微調整することができるため、非常に重要である。さらに、官能基を有するフタロシアニンは顔料形成中の結晶成長を制御する添加剤としても働く。こうした重要性から、フタロシアニンに直接官能基を導入する方法が開発された。特に成功した事例としては、フタロシアニンのハロゲン化、スルホン化及びイミド化である(特許文献1、2及び3)。しかしながらこれら方法では官能基の数及び位置を制御することができず、また使用できる官能基の種類も非常に限られているという問題が未だに残っている。したがって、フタロシアニンの官能基の数や位置を制御可能で新たな官能基を導入することができる技術の開発が望まれている。
【0004】
加えて、近年持続可能な開発に向けた石油資源の保存、二酸化炭素排出量の削減という観点から、化学工業製品の原料として石油由来の原料からバイオマス原料へと切り替えるカーボンニュートラルに向けた動きも活発化しており、非可食バイオマスに含まれる(ヘミ)セルロース由来の糖から製造できることが現在広く知られているフルフラール(FF)やヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の利用が検討されている(特許文献4及び5)。有機顔料においてもバイオリニューアブルな材料へと転換していく流れは例外ではないが、現状バイオマス原料由来の有機顔料というものは達成されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-33526号公報
【文献】特開平10-140025号公報
【文献】特開2016-23222号公報
【文献】特許第5791838号公報
【文献】特許第6328990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、様々な種類の官能基の数及び位置を制御可能で、かつバイオマス原料から製造できる、従来と同等以上の性能を有し、カーボンニュートラルに貢献可能なフタロシアニン化合物、及び該フタロシアニン化合物を用いた組成物、顔料組成物、印刷インキ、印刷物、印刷物の積層体、塗料、塗装物、カラーフィルター用着色組成物、若しくはカラーフィルター等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、原料としてバイオマス由来のフラン誘導体、無水マレイン酸を使用し、Diels-Alder(DA)反応によりDA中間体を得、DA中間体を開環脱水することで無水フタル酸誘導体を合成し、該無水フタル酸誘導体を用いてフタロシアニン合成を行い、放射性炭素原子14Cを含有するフタロシアニン化合物を得ることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1] 放射性炭素原子
14Cを含有する下記式(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)で表される化合物群から選択される化合物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
(上記式(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)中、R
1~R
4は互いに独立して水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シクロヘキシル基、フェニル基を表し、前記アルキル基中に存在する1個又は隣接しない2個以上の-CH
2-は-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられていても良く、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又はフェニル基に置換されていても良く、前記シクロヘキシル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-又は-S-に置き換えられていても良く、前記フェニル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられていても良く、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、Mは金属原子を表す。)
[2] 前記Mで表される金属原子が、Al、Si、Sc、Ti、V、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、In、Sn又はPbからなる群から選択される1種又は2種以上である[1]に記載の化合物。
[3] 前記(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、又は(IIE)で表される化合物におけるpMC(パーセントモダンカーボン)が、20%以上である[1]又は[2]に記載の化合物。
[4] 前記R
1~R
4が、全て水素原子である、[1]~[3]のいずれかに記載の化合物。
[5] [1]に記載の前記式(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、又は(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する組成物。
[6] [1]に記載の化合物、又は[5]に記載の組成物を含有する顔料組成物。
[7] [6]に記載の顔料組成物を含有する印刷インキ。
[8] [7]に記載の印刷インキが印刷された印刷物。
[9] [8]に記載の印刷物を有する積層体。
[10] [6]に記載の顔料組成物を含有する塗料。
[11] [10]に記載の塗料による塗膜を有する塗装物。
[12] [6]に記載の顔料組成物を含有するカラーフィルター用着色組成物。
[13] [12]に記載のカラーフィルター用着色組成物を有するカラーフィルター。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、様々な種類の官能基の数及び位置を制御可能で、かつバイオマス原料から製造できる、従来と同等以上の性能を有し、カーボンニュートラルに貢献可能なフタロシアニン化合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】顔料化前の比較例1の顔料のTEM観察結果を示す図である。
【
図2】顔料化後の比較例1の顔料のTEM観察結果を示す図である。
【
図3】顔料化前の実施例1の顔料のTEM観察結果を示す図である。
【
図4】顔料化後の実施例1の顔料のTEM観察結果を示す図である。
【
図5】顔料化前の実施例2の顔料のTEM観察結果を示す図である。
【
図6】顔料化後の実施例2の顔料のTEM観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下に記載する構成要件の説明は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【0012】
(放射性炭素原子14Cを含有する化合物)
本発明の化合物は、放射性炭素原子14Cを含有する。
本発明の化合物は、下記式(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)(以下、式(I)~(IIE)ともいう)で表される化合物群から選択される。
本発明の化合物を、印刷インキ、塗料、カラーフィルター用着色剤等へ適用する場合には、式(I)~(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する組成物の態様で提供されることが好ましい。中でも、化合物(I)及び(II)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有し、さらに式(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)(以下、式(IA)~(IIE)ともいう)で表される化合物群から選択される1種又は2種以上を含有する組成物の態様で提供されることが好ましい。
【0013】
<式(I)、(II)、(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)、及び(IIE)で表される化合物>
以下に、式(I)~(IIE)で表される化合物を示す。
【0014】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【0015】
式(I)~(IIE)中、R1~R4は互いに独立して水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シクロヘキシル基、フェニル基を表し、前記アルキル基中に存在する1個又は隣接しない2個以上の-CH2-は-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられていても良く、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又はフェニル基に置換されていても良く、前記シクロヘキシル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-又は-S-に置き換えられていても良く、前記フェニル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられていても良く、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子に置換されていても良く、Mは金属原子を表す。
【0016】
Mで表される金属原子は、例えば、Al、Si、Sc、Ti、V、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、In、Sn又はPbからなる群から選択される1種又は2種以上の金属原子が挙げられる。
【0017】
式(I)~(IIE)中、R1~R4が、全て水素原子であるとより好ましい。
【0018】
式(I)~(IIE)で表される化合物におけるpMC(パーセントモダンカーボン)は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
ここで、pMC(パーセントモダンカーボン)は、ASTM-D6866-18に従った測定によって算出することができ、標準現代炭素中における14C濃度に対する対象物中における14C濃度の割合を表す。なお、対象物が放射性炭素原子14Cを含有しない場合pMCは0%となる。
【0019】
式(I)~(IIE)中、R1~R4は水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、塩素原子、臭素原子がより好ましく、水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、臭素原子がさらに好ましく、水素原子、臭素原子が特に好ましい。
式(I)~(IIE)中、Mは金属原子を表すが、Al、Si、Sc、Ti、V、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、In、Sn又はPbであることが好ましく、Al、Fe、Cu、Znであることがより好ましく、Cu、Znであることがさらに好ましい。
【0020】
また、式(I)~(IIE)で表される化合物群から選択される化合物が示すバイオマス度としては、例えば、1%以上であり、5%以上であり、10%以上であり、15%以上であり、20%以上であり、25%以上であり、30%以上であり、35%以上であり、40%以上であり、45%以上であり、50%以上である。また、バイオマス度が、例えば、55%以上であるとより好ましく、60%以上であるとより好ましく、65%以上であるとより好ましく、70%以上であるとより好ましい。また、バイオマス度が、75%以上であるとさらに好ましく、80%以上であるとさらに好ましく、85%以上であるとさらに好ましい。また、バイオマス度が、90%以上であると特に好ましく、95%以上であると特に好ましい。
バイオマス度が、上記範囲であれば、バイオマス由来の炭素を含有することとなり、カーボンニュートラルによる環境負荷低減に貢献することができる。
ここでバイオマスとは、代替エネルギーの供給源としての植物をいう。バイオマスは、主にリグニンと(ヘミ)セルロースの2つの成分で構成されている。リグニンと(ヘミ)セルロースはどちらも高分子であり、リグニンは芳香族モノマーで構成され、(ヘミ)セルロースは炭素数5の糖と炭素数6の糖で構成される。上記化合物では、リグニン由来の原料、および(ヘミ)セルロース由来の原料のどちらも原料として用いることができる。
なお、バイオマス度とは、ASTM-D6866-18に従った測定によって算出された、全炭素中におけるバイオマス由来の炭素の含有量(質量%)をいう。
【0021】
式(I)で表される化合物の好ましい実施態様として、例えば、下記式(I-1)~(I-12)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化25】
(式中、R
Iは前記R
1~R
4と同じ意味を表し、Mは前記Mと同じ意味を表す。)
【0023】
式(I)で表される化合物としては、限定されるわけではないが、例えば、下記式(I-1)~(I-12-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0024】
【化26】
(式中、Mは前記Mと同じ意味を表す。)
【0025】
【化27】
(式中、Mは前記Mと同じ意味を表す。)
【0026】
式(I-1)で表される化合物の好ましい実施態様としては、下記式(I-1-1)~(I-1-4)で表される化合物が挙げられる。
【0027】
【化28】
式(I-1-1)~(I-1-4)で表される化合物としては、(I-1-2)で表される化合物がより好ましい。
【0028】
式(II)で表される化合物の好ましい実施態様としては、下記式(II-1)~(II-12)で表される化合物が挙げられる。
【0029】
【化29】
(式中、R
Iは前記R
1~R
4と同じ意味を表し、Mは前記Mと同じ意味を表す。)
【0030】
式(II)で表される化合物としては、限定されるわけではないが、下記式(II-1)~(II-12-2)で表される化合物等が挙げられる。
【0031】
【0032】
【0033】
式(II-1)~(II-12)で表される化合物としては、式(II-1)で表される化合物が好ましい。
【0034】
式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)及び(IE)で表される化合物の好ましい態様としては、例えば、下記式(IA-1)~(IE-1)で表される化合物が挙げられる。
【0035】
【化32】
(式中、Mは前記Mと同じ意味を表す。)
【0036】
式(IA-1)~(IE-1)で表される化合物としては、下記式(IA-1-1)~(IE-1-4)で表される化合物が好ましい。
【0037】
【0038】
式(IA-1-1)~(IE-1-4)で表される化合物としては、(IA-1-2)、(IB-1-2)、(IC-1-2)、(ID-1-2)及び(IE-1-2)で表される化合物が好ましい。中でも、(IA-1-2)~(ID-1-2)が好ましく、(IA-1-2)~(IC-1-2)がより好ましく、(IA-1-2)がさらに好ましい。
【0039】
式(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)及び(IIE)で表される化合物の好ましい態様としては、例えば、下記式(IIA-1)~(IIE-1)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【0041】
式(IIA-1)~(IIE-1)で表される化合物としては、式(IIA-1)~(IID-1)で表される化合物が好ましく、(IIA-1)~(IIC-1)で表される化合物がより好ましく、(IIA-1)で表される化合物がさらに好ましい。
【0042】
式(IA)~(IIE)で表される化合物により、顔料結晶化、樹脂分散性及び色相を制御することが可能であり、式(I)~(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を含有する組成物(以下、フタロシアニン組成物ともいう)の高性能化につながる。
式(IA)~(IIE)で表される化合物群から選択される化合物としては、(IA)~(IID)で表される化合物群から選択される化合物であることが好ましく、(IA)~(IIC)で表される化合物群から選択される化合物であることがより好ましく、(IA)及び(IIA)で表される化合物群から選択される化合物であることがさらに好ましい。
【0043】
式(I)又は(II)で表される化合物(化合物(I)又は(II)ともいう)は、以下に記載の方法により得ることができる。
【0044】
<化合物(I)又は(II)の製造方法>
本発明の化合物(I)又は(II)の製造方法について以下に記載する。
【0045】
下記式(DA-1)で表される化合物から下記式(PA-1)で表される化合物を得、この式(PA-1)で表される化合物から本発明の式(I)又は(II)で表される化合物を得ることができる。
【0046】
【化35】
(式中R
1~R
4は互いに独立して水素原子、炭素原子数1~12の直鎖又は分岐のアルキル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シクロヘキシル基、フェニル基を表し、前記アルキル基中に存在する1個又は隣接しない2個以上の-CH
2-は-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-S-、-COO-、-OCO-又は-CO-により置き換えられていても良く、これらの基中に存在する水素原子はフッ素原子又はフェニル基に置換されていても良く、前記シクロヘキシル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-又は-S-に置き換えられていても良く、前記フェニル基中に存在する1個の又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられていても良く、この基中に存在する1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子に置換されていても良い。)
【0047】
【化36】
(式中R
1~R
4は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0048】
式(DA-1)で表される化合物としては限定されるわけではないが、下記化合物(DA-1-1)~(DA-1-17)等が挙げられる。
【0049】
【0050】
式(PA-1)で表される化合物としては限定されるわけではないが、下記化合物(PA-1-1)~(PA-1-17)等が挙げられる。
【0051】
【0052】
また式(DA-1)で表される化合物は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが下記式(FR-1)で表される化合物と無水マレイン酸を反応させて得ることが好ましい。
【0053】
【化39】
(式中R
1~R
4は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0054】
式(FR-1)で表される化合物としては限定されるわけではないが、下記化合物(FR-1-1)~(FR-1-5)等が挙げられる。
【0055】
【0056】
式(DA-1)で表される化合物から式(PA-1)で表される化合物を得る際には反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、触媒を用いることが好ましい。
触媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリリン酸、二リン酸、トリフルオロ酢酸、又は下記式(AC)で表される化合物であることが好ましい。
【0057】
【化41】
(式中Xは-OH、-ONa、-OK、-R
5を表し、R
5は前記R
1~R
4と同じ意味を表し、Yは硫黄原子又はリン原子を表し、Zは水素原子、-COR
6、-COH又は-CO-CF
3を表し、R
6は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0058】
触媒の量としては、式(DA-1)で表される化合物に対して0.1~3000mol%が好ましく、0.5~2500mol%が好ましく、1~2000mol%が好ましく、5~1500mol%が好ましく、10~1000mol%が好ましく、20~500mol%が好ましく、50~500mol%が好ましく、70~500mol%が好ましく、100~500mol%が好ましく、150~500mol%が好ましく、200~500mol%が好ましく、250~500mol%が好ましく、300~500mol%が好ましい。下限値としては0.1mol%以上が好ましく、0.5mol%以上が好ましく、1mol%以上が好ましく、5mol%以上が好ましく、10mol%が好ましく、20mol%以上が好ましく、50mol%以上が好ましく、70mol%以上が好ましく、100mol%以上が好ましく、150mol%以上が好ましく、200mol%以上が好ましく、250mol%以上が好ましく、300mol%以上が好ましい。上限値としては3000mol%以下が好ましく、2500mol%以下が好ましく、2000mol%以下が好ましく、1500mol%以下が好ましく、1000mol%以下が好ましく、500mol%以下が好ましい。これらの上限値と下限値はいずれの組み合わせでも用いられる。
【0059】
本製造方法においては、前記R1~R4はいずれも水素原子を表すことが好ましい。
【0060】
前記無水マレイン酸はバイオマス由来であることが好ましい。
前記式(FR-1)で表される化合物はバイオマス由来であることが好ましい。
前記無水マレイン酸と前記式(FR-1)で表される化合物は共にバイオマス由来であることがより好ましい。
【0061】
上記製造方法に用いる原料のバイオマス度は1%以上が好ましく、5%以上が好ましく、10%以上が好ましく、15%以上が好ましく、20%以上が好ましく、25%以上が好ましく、30%以上が好ましく、35%以上が好ましく、40%以上が好ましく、45%以上が好ましく、50%以上が好ましく、55%以上が好ましく、60%以上が好ましく、65%以上が好ましく、70%以上が好ましく、75%以上が好ましく、80%以上が好ましく、85%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましい。
【0062】
バイオマス由来の無水マレイン酸としては、例えば特許文献4又は5に記載の方法により得られるFFやHMFを酸化することにより得られるマレイン酸を脱水環化することによって得られ、又は直接酸化することによっても得ることができる。バイオマス由来の式(FR-1)で表される化合物としては、例えば特許文献4又は5に記載の方法により得られるFFやHMFに対し脱カルボニル反応、還元反応及び脱水反応等を適宜組み合わせて行うことにより得ることができる。
【0063】
上記製造方法の具体的な反応経路を以下に示す。
【0064】
【0065】
<<反応A>>
化合物(FR-1)及び無水マレイン酸をDiels-Alder反応に供することにより化合物(DA-1)を製造することができる。
反応溶媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないがクロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、アルキルベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテルが好ましい。
反応温度は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、-10~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましく、10℃~70℃がさらに好ましく、15度~50℃が特に好ましい。下限値としては-10℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、15℃以上が特に好ましい。上限値としては100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましく、50℃以下が特に好ましい。
【0066】
反応圧力は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、0.1~5MPaが好ましく、0.1~3MPaがより好ましく、0.1~1MPaがさらに好ましく、0.1~0.5MPaが特に好ましい。下限値としては0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上が好ましく、0.3MPa以上が好ましく、0.4MPa以上が好ましい。上限値としては5MPa以下が好ましく、3MPa以下が好ましく、1MPa以下が好ましく、0.9MPa以下が好ましく、0.8MPa以下が好ましく、0.7MPa以下が好ましく、0.6MPa以下が好ましく、0.5MPa以下が好ましい。
【0067】
<<反応B>>
反応Aで得られた化合物(DA-1)を開環脱水反応を行うことにより、化合物(PA-1)を製造することができる。
反応溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、水、アセトニトリル、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、或はそれぞれの混合溶剤、無溶剤が好ましい。
反応温度は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、20~150℃が好ましく、30~120℃がより好ましく、40~100℃がより好ましい。下限値としては20℃以上が好ましく、25℃以上が好ましく、30℃以上が好ましく、35℃以上が好ましく、40℃以上が好ましい。上限値としては150℃以下が好ましく、140℃以下が好ましく、130℃以下が好ましく、120℃以下が好ましく、110℃以下が好ましく、100℃以下が好ましい。
【0068】
上記反応は触媒を使用することが好ましい。触媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリリン酸、二リン酸、トリフルオロ酢酸、又は下記式(AC)で表される化合物であることが好ましい。
【0069】
【化43】
(式中Xは-OH、-ONa、-OK、-R
5を表し、R
5は前記R
1~R
4と同じ意味を表し、Yは硫黄原子又はリン原子を表し、Zは水素原子、-COR
6、-COH又は-CO-CF
3を表し、R
6は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0070】
上記触媒の量としては、式(DA-1)で表される化合物に対して0.1~3000mol%が好ましく、0.5~2500mol%が好ましく、1~2000mol%が好ましく、5~1500mol%が好ましく、10~1000mol%が好ましく、20~500mol%が好ましく、50~500mol%が好ましく、70~500mol%が好ましく、100~500mol%が好ましく、150~500mol%が好ましく、200~500mol%が好ましく、250~500mol%が好ましく、300~500mol%が好ましい。下限値としては0.1mol%以上が好ましく、0.5mol%以上が好ましく、1mol%以上が好ましく、5mol%以上が好ましく、10mol%が好ましく、20mol%以上が好ましく、50mol%以上が好ましく、70mol%以上が好ましく、100mol%以上が好ましく、150mol%以上が好ましく、200mol%以上が好ましく、250mol%以上が好ましく、300mol%以上が好ましい。上限値としては3000mol%以下が好ましく、2500mol%以下が好ましく、2000mol%以下が好ましく、1500mol%以下が好ましく、1000mol%以下が好ましく、500mol%以下が好ましい。これらの上限値と下限値はいずれの組み合わせでも用いられる。
【0071】
<<反応C>>
反応Bで得られた化合物(PA-1)を尿素及びMXと触媒存在下反応させることによって化合物(I)を製造することができる。
反応溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、無溶剤、アルキルベンゼンが好ましい。
反応温度は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、100~250℃が好ましく、110~240℃が好ましく、120~230℃が好ましく、130~220℃が好ましく、140~210℃が好ましく、150~200℃が好ましい。下限値としては100℃以上が好ましく、110℃以上が好ましく、120℃以上が好ましく、130℃以上が好ましく、140℃以上が好ましく、150℃以上が好ましい。上限値としては250℃以下が好ましく、240℃以下が好ましく、230℃以下が好ましく、220℃以下が好ましく、210℃以下が好ましく、200℃以下が好ましい。
【0072】
上記MXにおけるMは金属原子を表すが、Al、Si、Sc、Ti、V、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、In、Sn又はPbであることが好ましく、Al、Fe、Cu、Znであることがより好ましく、Cu、Znであることがさらに好ましい。
上記MXにおけるXはハロゲン原子を表すが、塩素原子であることがより好ましい。
【0073】
触媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、モリブデン触媒が好ましく、モリブデン(IV)酸アンモニウム四水和物がより好ましい。
本反応により下記(i-1)~(i-5)で表される化合物を製造することもできる。
【0074】
【化44】
(式中、R
1~R
4は互いに独立して式(I)中のR
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0075】
<<反応D>>
反応Cで得られた化合物(I)は脱金属反応を行うことにより化合物(II)を製造することができる。脱金属反応としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、例えばChemical Communication,2009,1970-1971に記載の方法が挙げられる。
【0076】
式(IA)~(IIE)で表される化合物は、以下に記載の方法でフタロシアニン組成物を製造することにより、得ることができる。
【0077】
<フタロシアニン組成物の製造方法>
上記<化合物(I)又は(II)の製造方法>の欄で説明した製造方法を最適化することにより、化合物(I)及び(II)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有し、さらに式(IA)~(IIE)で表される化合物群から選択される1種又は2種以上を含有する組成物を製造することができる。
式(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)又は(IIE)で表される化合物の製造方法について以下に記載する。
【0078】
下記式(DA-2)で表される化合物から下記式(PA-2)で表される化合物を得、この式(PA-2)で表される化合物から本発明の式(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)又は(IIE)で表される化合物を得ることができる。
【0079】
【化45】
(式中R
1~R
4は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0080】
【化46】
(式中R
1~R
4は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0081】
式(DA-2)で表される化合物としては限定されるわけではないが、下記化合物(DA-2-1)~(DA-2-7)等が挙げられる。
【0082】
【0083】
式(PA-2)で表される化合物としては限定されるわけではないが、下記化合物(PA-2-1)~(PA-2-7)等が挙げられる。
【0084】
【0085】
また式(DA-2)で表される化合物は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、式(FR-1)で表される化合物と無水マレイン酸を反応させて得ることが好ましい。この際、式(FR-1)で表される化合物を無水マレイン酸に対してモル比で過剰量使用することが好ましい。
【0086】
式(DA-2)で表される化合物から式(PA-2)で表される化合物を得る際には反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、触媒を用いることが好ましい。
触媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリリン酸、二リン酸、トリフルオロ酢酸、又は下記式(AC)で表される化合物であることが好ましい。
【0087】
【化49】
(式中Xは-OH、-ONa、-OK、-R
5を表し、R
5は前記R
1~R
4と同じ意味を表し、Yは硫黄原子又はリン原子を表し、Zは水素原子、-COR
6、-COH又は-CO-CF
3を表し、R
6は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0088】
触媒の量としては、式(DA-2)で表される化合物に対して0.1~3000mol%が好ましく、0.5~2500mol%が好ましく、1~2000mol%が好ましく、5~1500mol%が好ましく、10~1000mol%が好ましく、20~500mol%が好ましく、50~500mol%が好ましく、70~500mol%が好ましく、100~500mol%が好ましく、150~500mol%が好ましく、200~500mol%が好ましく、250~500mol%が好ましく、300~500mol%が好ましい。下限値としては0.1mol%以上が好ましく、0.5mol%以上が好ましく、1mol%以上が好ましく、5mol%以上が好ましく、10mol%が好ましく、20mol%以上が好ましく、50mol%以上が好ましく、70mol%以上が好ましく、100mol%以上が好ましく、150mol%以上が好ましく、200mol%以上が好ましく、250mol%以上が好ましく、300mol%以上が好ましい。上限値としては3000mol%以下が好ましく、2500mol%以下が好ましく、2000mol%以下が好ましく、1500mol%以下が好ましく、1000mol%以下が好ましく、500mol%以下が好ましい。これらの上限値と下限値はいずれの組み合わせでも用いられる。
【0089】
本製造方法においては、前記R1~R4はいずれも水素原子を表すことが好ましい。
【0090】
前記無水マレイン酸はバイオマス由来であることが好ましい。
前記式(FR-1)で表される化合物はバイオマス由来であることが好ましい。
前記無水マレイン酸と前記式(FR-1)で表される化合物は共にバイオマス由来であることがより好ましい。
【0091】
上記製造方法により、式(I)及び(II)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上と、式(IA)、(IIA)、(IB)、(IIB)、(IC)、(IIC)、(ID)、(IID)、(IE)及び(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上とを含有する組成物を得ることができる。
【0092】
式(I)~(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する該組成物を製造する方法の具体的な反応経路を以下に示す。
【0093】
【化50】
(式中R
1~R
4は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0094】
<<反応A2>>
化合物(FR-1)及び無水マレイン酸をDiels-Alder反応に供することにより化合物(DA-1)及び(DA-2)を含む組成物を製造することができる。
反応溶媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないがクロロホルム、ジオキサン、酢酸エチル、アルキルベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテルが好ましい。
反応温度は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、-10~100℃が好ましく、0℃~80℃がより好ましく、10℃~70℃がさらに好ましく、15度~50℃が特に好ましい。下限値としては-10℃以上が好ましく、0℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、15℃以上が特に好ましい。上限値としては100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましく、50℃以下が特に好ましい。化合物(DA-2)の生成を促進するためには0~100℃が好ましく、10~100℃が好ましく、15~100℃がより好ましく、20~100℃がさらに好ましく、25~100℃が特に好ましい。下限値としては0℃以上が好ましく、10℃以上が好ましく、15℃以上がより好ましく、20℃以上がさらに好ましく、25℃以上が特に好ましい。化合物(DA-2)の生成を抑制するためには-10~90℃が好ましく、-10~80℃が好ましく、-10~70℃がより好ましく、-10~60℃がさらに好ましく、-10~50℃が特に好ましい。上限値としては90℃以下が好ましく、80℃以下が好ましく、70℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましく、50℃以下が特に好ましい。
【0095】
反応圧力は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、0.1~5MPaが好ましく、0.1~3MPaがより好ましく、0.1~1MPaがさらに好ましく、0.1~0.5MPaが特に好ましい。下限値としては0.1MPa以上が好ましく、0.2MPa以上が好ましく、0.3MPa以上が好ましく、0.4MPa以上が好ましい。上限値としては5MPa以下が好ましく、3MPa以下が好ましく、1MPa以下が好ましく、0.9MPa以下が好ましく、0.8MPa以下が好ましく、0.7MPa以下が好ましく、0.6MPa以下が好ましく、0.5MPa以下が好ましい。化合物(DA-2)の生成を促進するためには0.15~5MPaが好ましく、0.2~3MPaがより好ましく、0.25~1MPaがさらに好ましく、0.3~1MPaが特に好ましい。下限値としては0.15MPa以上が好ましく、0.2MPa以上がより好ましく、0.25MPa以上がさらに好ましく、0.3MPa以上が特に好ましい。化合物(DA-2)の生成を抑制するためには0.1~3MPaが好ましく、0.1~1MPaがより好ましく、0.1~0.5MPaがさらに好ましく、0.1~0.4MPaが特に好ましい。上限値としては3MPa以下が好ましく、1MPa以下がより好ましく、0.5MPa以下がさらに好ましく、0.4MPa以下が特に好ましい。
また化合物(FR-1)及び無水マレイン酸の当量を変化させることによって化合物(DA-1)及び化合物(DA-2)の生成比率を制御することができる。化合物(DA-2)の生成を促進するためには反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、無水マレイン酸に対する化合物(FR-1)の当量は2.0~15.0が好ましく、4.0~14.0がより好ましく、6.0~13.0がさらに好ましく、8.0~12.0が特に好ましい。下限値としては2.0以上が好ましく、4.0以上がより好ましく、6.0以上がさらに好ましく、8.0以上が特に好ましい。上限値としては15.0以下が好ましく、14.0以下がより好ましく、13.0以下がさらに好ましく、12.0以下が特に好ましい。化合物(DA-2)の生成を抑制するためには反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、無水マレイン酸に対する化合物(FR-1)の当量は1.0~2.0が好ましく、1.0~1.5がより好ましく、1.0~1.4がさらに好ましく1.0~1.2が特に好ましい。上限値としては2.0以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。
【0096】
<<反応B2>>
反応A2で得られた化合物(DA-1)及び(DA-2)を含む組成物を開環脱水反応を行うことにより、化合物(PA-1)及び(PA-2)を含む組成物を製造することができる。
反応溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、水、アセトニトリル、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン、或はそれぞれの混合溶剤、無溶剤が好ましい。
反応温度は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、20~150℃が好ましく、30~120℃がより好ましく、40~100℃がより好ましい。
下限値としては20℃以上が好ましく、25℃以上が好ましく、30℃以上が好ましく、35℃以上が好ましく、40℃以上が好ましい。上限値としては150℃以下が好ましく、140℃以下が好ましく、130℃以下が好ましく、120℃以下が好ましく、110℃以下が好ましく、100℃以下が好ましい。
【0097】
上記反応は触媒を使用することが好ましい。触媒としては、反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、塩酸、硫酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ポリリン酸、二リン酸、トリフルオロ酢酸、又は下記式(AC)で表される化合物であることが好ましい。
【0098】
【化51】
(式中Xは-OH、-ONa、-OK、-R
5を表し、R
5は前記R
1~R
4と同じ意味を表し、Yは硫黄原子又はリン原子を表し、Zは水素原子、-COR
6、-COH又は-CO-CF
3を表し、R
6は前記R
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0099】
上記触媒の量としては、式(DA-1)及び(DA-2)で表される化合物の総量に対して0.1~3000mol%が好ましく、0.5~2500mol%が好ましく、1~2000mol%が好ましく、5~1500mol%が好ましく、10~1000mol%が好ましく、20~500mol%が好ましく、50~500mol%が好ましく、70~500mol%が好ましく、100~500mol%が好ましく、150~500mol%が好ましく、200~500mol%が好ましく、250~500mol%が好ましく、300~500mol%が好ましい。下限値としては0.1mol%以上が好ましく、0.5mol%以上が好ましく、1mol%以上が好ましく、5mol%以上が好ましく、10mol%が好ましく、20mol%以上が好ましく、50mol%以上が好ましく、70mol%以上が好ましく、100mol%以上が好ましく、150mol%以上が好ましく、200mol%以上が好ましく、250mol%以上が好ましく、300mol%以上が好ましい。上限値としては3000mol%以下が好ましく、2500mol%以下が好ましく、2000mol%以下が好ましく、1500mol%以下が好ましく、1000mol%以下が好ましく、500mol%以下が好ましい。これらの上限値と下限値はいずれの組み合わせでも用いられる。
【0100】
<<反応C2>>
反応B2で得られた化合物(PA-1)及び(PA-2)を含む組成物を尿素及びMXと触媒存在下反応させることによって式(I)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有し、式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)及び(IE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する組成物を製造することができる。
反応溶媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、無溶剤、アルキルベンゼンが好ましい。
反応温度は反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、100~250℃が好ましく、110~240℃が好ましく、120~230℃が好ましく、130~220℃が好ましく、140~210℃が好ましく、150~200℃が好ましい。下限値としては100℃以上が好ましく、110℃以上が好ましく、120℃以上が好ましく、130℃以上が好ましく、140℃以上が好ましく、150℃以上が好ましい。上限値としては250℃以下が好ましく、240℃以下が好ましく、230℃以下が好ましく、220℃以下が好ましく、210℃以下が好ましく、200℃以下が好ましい。
【0101】
上記MXにおけるMは金属原子を表すが、Al、Si、Sc、Ti、V、Mg、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、In、Sn又はPbであることが好ましく、Al、Fe、Cu、Znであることがより好ましく、Cu、Znであることがさらに好ましい。
上記MXにおけるXはハロゲン原子を表すが、塩素原子であることがより好ましい。
【0102】
触媒としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、モリブデン触媒が好ましく、モリブデン(IV)酸アンモニウム四水和物がより好ましい。
本反応により下記(i-1)~(i-5)で表される化合物を製造することもできる。
【0103】
【化52】
(式中R
1~R
4は互いに独立して式(I)中のR
1~R
4と同じ意味を表す。)
【0104】
<<反応D2>>
反応C2で得られた式(I)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、式(IA)、(IB)、(IC)、(ID)及び(IE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する組成物は、脱金属反応を行うことにより、式(II)で表される化合物を1種又は2種以上含有し、式(IIA)、(IIB)、(IIC)、(IID)及び(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する組成物を製造することができる。脱金属反応としては反応を好適に進行させるものであればいずれでも構わないが、例えばChemical Communication,2009,1970-1971に記載の方法が挙げられる。
【0105】
上記のようにして製造することにより、式(I)及び(II)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有し、式(IA)~(IIE)で表される化合物群から選択される化合物を1種又は2種以上含有する組成物を得ることができる。
【0106】
上記のようにして得られた組成物中における式(IA)~(IIE)で表される化合物の含有量としては、0.1~40重量%であることが好ましく、0.1~30重量%であることが好ましく、0.1~20重量%であることがより好ましく、0.1~15重量%であることがさらに好ましく、0.1~10重量%であることが特に好ましい。下限値としては0.1重量%以上であることが好ましく、0.5重量%以上であることが好ましく、1.0重量%以上であることがより好ましく、1.5重量%以上であることがさらに好ましく、2.0重量%以上であることが特に好ましい。上限値としては40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、15重量%以下であることがさらに好ましく、10重量%以下であることが特に好ましい。
【0107】
上記方法により製造した式(I)、(II)又は(IA)~(IIE)で表される化合物はさらに公知慣用の方法により精製を行い、式(I)又は(II)で表される化合物のみを取り出すことも可能である。
上記方法により製造した式(I)、(II)又は(IA)~(IIE)で表される化合物、上述の精製により取り出した式(I)又は(II)で表される化合物、及び組成物中に含まれる化合物は、さらに公知慣用の方法によりハロゲン化、スルホン化、イミド化を行うことができる。
【0108】
上記方法により得られた式(I)~(IIE)で表され、放射性炭素原子14Cを含有する本発明の化合物は、下記実施例でも示すように、顔料の粒子径は小さく、また微細化もしやすいものであることから、顔料を分散する樹脂に対する分散性を向上させることができる。
また、本発明の化合物は上記製造方法により得られるため、様々な種類の官能基の数及び位置を制御することができ、所望の色相に調整可能である。
さらに、本発明の化合物は、バイオマス由来の炭素を含有しており、カーボンニュートラルによる環境負荷低減に貢献するものである。
【0109】
本発明の化合物は、特に有機顔料としての性質を示すものであり、顔料粒子の微細化を施すことで、より好適に使用することができる。このような処理としては、例えば、アシッドペースト法、アシッドスラリー法、ドライミリング法、ソルベント法、ソルトミリング法などが挙げられ、これらの中から、一つもしくは複数組み合わせて適用することができる。
本発明の化合物は追加の有機顔料、有機染料、有機顔料誘導体等の色材を、調色等の目的で併用しても良い。これらは上述の用途に合わせて適宜選択されるべきものであり、用途によっては本発明の化合物を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
併用可能な色材としては、公知の顔料染料等いずれのものでも構わない。
【0110】
(本発明の化合物の適用)
本発明の化合物は多様な用途に適用可能である。例えば顔料組成物として使用でき、必要に応じて、他の樹脂、ゴム、添加剤、顔料や染料等と混合され化粧品、医薬品または農薬のコーティング材または印字マーカー、文房具、筆記具、印刷インキ、インクジェットインキ、金属インキ、塗料、プラスチック着色剤、カラートナー、カラーフィルター、有機半導体材料や近赤外の強い吸収を生かしたレーザー溶着用の近赤外吸収剤等に調整され使用される。以下、上記用途の一例を示す。
【0111】
<化粧品用途>
本発明の化合物は、化粧品として使用できる。使用される化粧品には特に制限はなく、本発明の化合物は、様々なタイプの化粧品に使用することができる。
【0112】
前記化粧品は、機能を有効に発現することができる限り、いかなるタイプの化粧品であってもよい。前記化粧品は、ローション、クリームゲル、スプレー等であってよい。前記化粧品としては、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、保護用乳液、保護用クリーム、美白化粧品、紫外線防止化粧品等のスキンケア化粧品、ファンデーション、白粉、化粧下地、口紅、アイメークアップ、頬紅、ネイルエナメル等のメークアップ化粧品、シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、整髪剤、パーマネント・ウェーブ剤、染毛剤、育毛剤等のヘアケア化粧品、身体洗浄用化粧品、デオドラント化粧品、浴用剤等のボディケア化粧品などを挙げることができる。
前記化粧品に使用される本発明の化合物の量は、化粧品の種類に応じて適宜設定することができる。前記化粧品中の含有量が通常0.1~99質量%の範囲であり、一般的には、0.1~10質量%の範囲となるような量であることが好ましい。一方で、着色が目的のメークアップ化粧品では、好ましくは5~80質量%の範囲、さらに好ましくは10~70質量%の範囲、最も好ましくは20~60質量%の範囲となるような量であることが好ましい。前記化粧品に含まれる本発明の化合物の量が前記範囲であると、着色性等の機能を有効に発現することができ、かつ化粧品に要求される機能も保持することができる。
【0113】
前記化粧品は、化粧品の種類に応じて、本発明の化合物の他、化粧品成分として許容可能な、担体、顔料、油、ステロール、アミノ酸、保湿剤、粉体、着色剤、pH調整剤、香料、精油、化粧品活性成分、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、セルフタンニング剤、賦形剤、充填剤、乳化剤、酸化防止剤、界面活性剤、キレート剤、ゲル化剤、濃厚剤、エモリエント剤、湿潤剤、保湿剤、鉱物、粘度調整剤、流動調整剤、角質溶解剤、レチノイド、ホルモン化合物、アルファヒドロキシ酸、アルファケト酸、抗マイコバクテリア剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗刺激剤、抗腫瘍剤、免疫系ブースト剤、免疫系抑制剤、抗アクネ剤、麻酔剤、消毒剤、防虫剤、皮膚冷却化合物、皮膚保護剤、皮膚浸透増強剤、剥脱剤(exfoliant)、潤滑剤、芳香剤、染色剤、脱色剤、色素沈着低下剤(hypopigmenting agent)、防腐剤、安定剤、医薬品、光安定化剤、及び球形粉末等を含むことができる。
前記化粧品は、本発明の化合物及びその他の化粧品成分を混合することによって製造することができる。
また、本発明の化合物を含む化粧品は、該化粧品のタイプ等に応じて、通常の化粧品と同様に使用することができる。
【0114】
<印刷インキ用途>
本発明の化合物は、流動性に優れた低粘度のインキの製造が可能であり、グラビア印刷インキやフレキソ印刷インキ用の顔料として好適である。
インキは、バインダー樹脂、溶媒、顔料、各種添加剤からなる。
バインダー樹脂としては、例えば、ニトロセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノールなどのアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-i-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-i-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-i-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-i-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-i-プロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-i-ブチルエーテル、エチレングリコールジ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールジ-i-プロピルエーテル、プロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールジ-i-ブチルエーテル、プロピレングリコールジ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-i-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-i-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-i-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-i-ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ-t-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-i-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-i-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-i-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-i-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル系溶剤等が挙げられる。
添加剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤、ガムロジン、重合ロジン、不均化ロジン、水添ロジン、マレイン化ロジン、硬化ロジン、フタル酸アルキッド樹脂などロジン類、顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、ワックス成分等を挙げることができる。
【0115】
上記の通り調製した印刷インキは、紙、合成紙、熱可塑性樹脂フィルム、プラスチック製品、鋼板等への印刷に使用することができるものであり、電子彫刻凹版等によるグラビア印刷版を用いたグラビア印刷用、又は樹脂版等によるフレキソ印刷版を用いたフレキソ印刷用のインキ等として有用である。当該印刷インキは、印刷インキを一旦印刷版又は印刷パターンに密着・転写した後、インキのみを再度基材に密着させ、必要に応じて乾燥させ印刷物とするものである。当該印刷物は他基材等との積層体の構成要素としても使用可能である。
【0116】
<塗料用途>
本発明の化合物を着色剤として塗料に含有させることができる。
塗料として使用される樹脂としては、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂など様々である。
塗料に使用される溶媒としては、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。溶媒としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0117】
また、顔料添加剤及び/又は顔料組成物を、液状樹脂中で分散し又は混合し、塗料用樹脂組成物とする場合に、通常の添加剤類、例えば、分散剤類、充填剤類、塗料補助剤類、乾燥剤類、可塑剤類及び/又は補助顔料を用いることができる。これは、それぞれの成分を、単独又は幾つかを一緒にして、全ての成分を集め、又はそれらの全部を一度に加えることによって、分散又は混合して達成される。
【0118】
上記のように用途にあわせて調製された本発明の化合物を含む組成物を分散する分散機としては、ディスパー、ホモミキサー、ペイントコンディショナー、スキャンデックス、ビーズミル、アトライター、ボールミル、二本ロール、三本ロール、加圧ニーダー等の公知の分散機が挙げられるが、これらに限定されるものではない。顔料組成物の分散は、これらの分散機にて分散が可能な粘度になるよう、樹脂、溶剤が添加され分散される。分散後の高濃度塗料ベースは固形分5~20%であり、これにさらに樹脂、溶剤を混合し塗料として使用に供される。
このようにして調製した塗料を用い塗膜を形成することにより、塗装物となすことができる。
【0119】
<インクジェットインキ用途>
本発明の化合物は、インクジェット用インクに好適に使用することができ、特に顔料分散剤などを用いて分散させた水性顔料分散液として、水性インクジェット用インクに好適に使用することができる。前記水性顔料分散液は、本発明の縮合多環系有機顔料の高濃度水分散液(顔料ペースト)を作成し、それを水溶性溶媒及び/または水で希釈し、必要に応じてその他の添加剤を添加して調製することができる。
【0120】
本発明の化合物を前記水溶性溶媒及び/または水に分散させて顔料ペーストを得る方法は特に限定はなく、公知の分散方法を使用することが好ましい。この時使用する分散剤も、公知の顔料分散剤を使用して水に分散してもよいし、界面活性剤を使用してもよい。前記顔料分散剤としては水性樹脂がよく、好ましい例としては、ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アニオン性基やカチオン性基を有するウレタン樹脂、アニオン性基やカチオン性基を有するラジカル系共重合体樹脂等が挙げられる。アニオン性基やカチオン性基を有するラジカル系共重合体樹脂としては例えば、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及び該水性樹脂の塩が挙げられる。
【0121】
前記共重合体の塩を形成するための化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどの水酸化アルカリ金属類、およびジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどが挙げられる。これらの塩を形成するための化合物の使用量は、前記共重合体の中和当量以上であることが好ましい。
【0122】
また市販品を使用することも勿論可能である。市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製品のアジスパーPBシリーズ、ビックケミー・ジャパン(株)のDisperbykシリーズ、BYK-シリーズ、BASFジャパン株式会社製のEFKAシリーズ等を使用できる。
【0123】
また、分散方法としては、例えば以下(1)~(3)を示すことができる。
(1)顔料分散剤及び水を含有する水性媒体に、顔料を添加した後、撹拌・分散装置を用いて顔料を該水性媒体中に分散させることにより、顔料ペーストを調製する方法。
(2)顔料、及び顔料分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を、水を含む水性媒体中に添加し、撹拌・分散装置を用いて顔料ペーストを調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に顔料を添加した後、撹拌・分散装置を用いて顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し顔料ペーストを調製する方法。
【0124】
混練機としては、特に限定されることなく、例えば、ヘンシェルミキサー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリミキサーなどがあげられる。また、撹拌・分散装置としても特に限定されることなく、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げられる。これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
前記顔料ペーストに占める縮合多環系有機顔料の量は5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。顔料量が5質量%より少ない場合は、前記顔料ペーストから調製した水性インクの着色が不充分であり、充分な画像濃度が得られない傾向にある。また、逆に60質量%よりも多い場合は、顔料ペーストにおいて顔料の分散安定性が低下する傾向がある。
また、粗大粒子が、ノズル詰まり、その他の画像特性を劣化させる原因になるため、インク調製前後に、遠心分離、あるいは濾過処理等により粗大粒子を除去することが好ましい。
【0125】
分散工程の後に、イオン交換処理や限外処理による不純物除去工程を経て、その後に後処理を行っても良い。イオン交換処理によって、カチオン、アニオンといったイオン性物質(2価の金属イオン等)を除去することができ、限外処理によって、不純物溶解物質(顔料合成時の残留物質、分散液組成中の過剰成分、有機顔料に吸着していない樹脂、混入異物等)を除去することができる。イオン交換処理は、公知のイオン交換樹脂を用いる。限外処理は、公知の限外ろ過膜を用い、通常タイプ又は2倍能力アップタイプのいずれでもよい。
【0126】
前記顔料ペーストを作成した後、適宜希釈し必要に応じた添加剤を添加して、目的に応じた水性顔料分散液を得る。前記水性顔料分散液をインクジェット記録用インクに適用する場合は、更に水溶性溶媒及び/または水、バインダー目的のアニオン性基含有有機高分子化合物等を加え、所望の物性に必要に応じて湿潤剤(乾燥抑止剤)、浸透剤、あるいはその他の添加剤を添加して調製する。インクの調整後に、遠心分離あるいは濾過処理工程を加えてもよい。
【0127】
インクの物理特性については特に限定はされないが、インクジェットインクとしての吐出性に考慮して、粘度は1~10(mPa・s)が好ましく、表面張力は20~50(mN/m)が好ましく、顔料濃度は1~10質量%であることが好ましい。
【0128】
前記湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加する。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3~50質量%であることが好ましい。本発明で使用する湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
【0129】
前記浸透剤は、被記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加する。浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
前記界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加する。このために添加することのできる界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0130】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマーが好ましい。
【0131】
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
【0132】
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。界面活性剤を添加する場合は、その添加量はインクの全質量に対し、0.001~2質量%の範囲が好ましく、0.001~1.5質量%であることがより好ましく、0.01~1質量%の範囲であることがさらに好ましい。界面活性剤の添加量が0.001質量%未満の場合は、界面活性剤添加の効果が得られない傾向にあり、2質量%を超えて用いると、画像が滲むなどの問題を生じやすくなる。
【0133】
また、必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
【0134】
<プラスチック用途>
本発明の化合物はプラスチック着色用途にも使用できる。着色プラスチック成形品を得る場合には、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂等の、射出成形やプレス成形等の熱成形用の熱可塑性樹脂(プラスチック)が用いられるが、本発明の化合物はこれらの樹脂に従来公知の方法で練り込んで使用することができる。
【0135】
<トナー用途>
本発明の化合物はトナー着色用途にも使用できる。
静電荷像現像用トナーを得る場合には、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の常温で固形の皮膜形成性の熱可塑性樹脂が分散用樹脂として使用される。
【0136】
本発明の化合物を構成成分として製造される静電荷像現像用トナーは、トナー中に磁性体を含有する1成分色磁性トナー(磁性一成分現像用カラートナー)、磁性体を含有しない非磁性1成分色カラートナー(非磁性一成分現像用カラートナー)、又は、キャリアーを混合した2成分色現像剤用カラートナー(二成分現像用カラートナー)として用いることができる。
【0137】
1成分色磁性トナーは、通常使用されているものと同様に、例えば着色剤、結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤(CCA)や離型剤に代表されるその他添加剤等から構成出来る。
【0138】
静電荷像現像用トナー中に占める本発明の化合物の使用量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対し0.5~25質量部の割合で使用することが好ましく、着色剤自身の有する帯電性能を一層顕著ならしめる点から結着樹脂100質量部に対し4~10質量部であることが更に好ましい。
【0139】
静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、前記熱可塑性樹脂として例示した公知慣用のものがいずれも使用できるが、熱又は圧力の適用下で接着性を示す合成樹脂、天然樹脂、天然ゴム、合成ゴム、合成ワックス等がいずれも使用できる。
【0140】
<カラーフィルター用途>
本発明の化合物は、公知の方法でカラーフィルターの緑色画素部のパターンの形成に用いることが出来る。典型的には、本発明の化合物と、感光性樹脂とを必須成分して含むカラーフィルター用着色組成物(より具体的には、カラーフィルター緑色画素部用感光性組成物)を得ることが出来る。
【0141】
カラーフィルター緑色画素部用感光性組成物を調製するには、例えば、本発明の化合物と、感光性樹脂と、光重合開始剤と、前記樹脂を溶解する有機溶剤とを必須成分として混合する。その製造方法としては、本発明の化合物と有機溶剤と必要に応じて分散剤を用いて分散液を調製してから、そこに感光性樹脂等を加えて調製する方法が一般的である。
カラーフィルター緑色画素部用感光性組成物に使用される本発明の化合物には必要に応じて黄色顔料を用いることができる。
【0142】
必要に応じて用いる分散剤としては、例えばビックケミー社のディスパービック(DISPERBYK 登録商標)130、同161、同162、同163、同170、同LPN-6919、同LPN-21116等が挙げられる。また、レベリング剤、カップリング剤、カチオン系の界面活性剤なども併せて使用可能である。
【0143】
有機溶剤としては、例えばトルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N-ジメチルホルムアミド、γ-ブチロラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ-ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル、水等がある。有機溶剤としては、特にプロピオネート系、アルコール系、エーテル系、ケトン系、窒素化合物系、ラクトン系、水等の極性溶媒で水可溶のものが適している。
【0144】
使用可能な感光性樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、スチレンマレイン酸系樹脂、スチレン無水マレイン酸系樹脂等の熱可塑性樹脂や、例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロキシエトキシ)ビスフェノールA、3-メチルペンタンジオールジアクリレート等のような2官能モノマー、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアネート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等のような多官能モノマー等の光重合性モノマーが挙げられる。
光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾイルパーオキサイド、2-クロロチオキサントン、1,3-ビス(4'-アジドベンザル)-2-プロパン、1,3-ビス(4'-アジドベンザル)-2-プロパン-2'-スルホン酸、4,4'-ジアジドスチルベン-2,2'-ジスルホン酸等がある。
こうして調製されたカラーフィルター緑色画素部用感光性組成物は、フォトマスクを介して紫外線によるパターン露光を行った後、未露光部分を有機溶剤やアルカリ水等で洗浄することによりカラーフィルターとなすことができる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。
【0146】
(合成例1)フランと無水マレイン酸のDiels-Alder反応による化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物の合成1
【0147】
【0148】
窒素雰囲気下、撹拌装置を備えた反応器にバイオマス由来の無水マレイン酸(24.01g)をジエチルエーテル(250mL)に溶解させ、バイオマス由来のフラン(25.00g)を投入し、室温、0.25MPaで18時間反応させた。その後白色粗体をフィルターで濾別し、ジエチルエーテルで洗浄した後、真空乾燥することで化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物(31.70g)を得た。化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の比率は97%と0.94%であった。
【0149】
(実施例1)化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物からのフタロシアニン化合物(Pc-1)の合成
撹拌装置、温度計、滴下ロート、冷却管を備えた反応容器に、無水酢酸(21.0g)、メタンスルホン酸(148.0g)を加え、撹拌しながら氷冷した。反応混合物に合成例1で得た化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物(10.0g)をゆっくり滴下した。室温で2時間撹拌後、80℃に昇温しさらに4時間撹拌した。その後室温まで冷却し、トルエン(50mL)を加えた。有機層を分けとり、さらに水層をトルエン(50mL×2)で再抽出した。得られた有機層を合わせた後、水、飽和食塩水、炭酸水素ナトリウム水溶液の順に洗浄し、溶液を濃縮後、無水フタル酸と2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物の混合物の白色固体が得られた。
【0150】
その後撹拌装置、温度計、滴下ロート、冷却管を備えた反応容器に得られた白色固体、尿素(9.7g)、塩化銅(1.25g)、モリブデン(IV)酸アンモニウム四水和物(0.03g)、アルキルベンゼン(20mL)を加え、撹拌しながら190℃に加熱した。2時間撹拌後室温まで冷却し、粗体をフィルターで濾別し、水、酸の順に洗浄した後、中性になるまで洗浄し、オーブンで一晩乾燥させることでPc-1(8.5g)を得た。Pc-1のpMCは100%であり、放射性炭素原子14Cを含有していた。
【0151】
(合成例2)フランと無水マレイン酸のDiels-Alder反応による化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物の合成2
【0152】
窒素雰囲気下、撹拌装置を備えた反応器に石油由来の無水マレイン酸(24.01g)をジエチルエーテル(250mL)に溶解させ、バイオマス由来のフラン(25.00g)を投入し、室温、0.25MPaで18時間反応させた。その後白色粗体をフィルターで濾別し、ジエチルエーテルで洗浄した後、真空乾燥することで化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物(32.54g)を得た。化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の比率は97%と0.86%であった。
【0153】
(実施例2)化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物からのフタロシアニン化合物(Pc-2)の合成
撹拌装置、温度計、滴下ロート、冷却管を備えた反応容器に、無水酢酸(13.8g)、メタンスルホン酸(73.9g)を加え、撹拌しながら氷冷した。反応混合物に合成例2で得た化合物(DA-1-1)と化合物(DA-2-1)の混合物(5.0g)をゆっくり滴下した。室温で2時間撹拌後、80℃に昇温しさらに4時間撹拌した。その後室温まで冷却し、トルエン(30mL)を加えた。有機層を分けとり、さらに水層をトルエン(30mL×2)で再抽出した。得られた有機層を合わせた後、水、飽和食塩水、炭酸水素ナトリウム水溶液の順に洗浄し、溶液を濃縮後、無水フタル酸と2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物の混合物の白色固体が得られた。
【0154】
その後撹拌装置、温度計、滴下ロート、冷却管を備えた反応容器に得られた白色固体、尿素(5.3g)、塩化銅(0.68g)、モリブデン(IV)酸アンモニウム四水和物(0.02g)、アルキルベンゼン(10mL)を加え、撹拌しながら190℃に加熱した。2時間撹拌後室温まで冷却し、粗体をフィルターで濾別し、水、酸の順に洗浄した後、中性になるまで洗浄し、オーブンで一晩乾燥させることでPc-2(3.6g)を得た。Pc-2のpMCは50%であり、放射性炭素原子14Cを含有していた。
【0155】
(比較例1)比較フタロシアニン(RPc-1)の合成
ニトロベンゼンの代わりにアルキルベンゼン使用した以外はChem.Commun.,2009,1970-1971に記載の方法に準拠し、比較フタロシアニンRPc-1(8.75g)を得た。RPc-1のpMCは0%であり、放射性炭素原子14Cを含有していなかった。
【0156】
【0157】
(質量分析)
上記実施例1で得られたフタロシアニン組成物等を質量分析した。分析方法としては得られた組成物等5mgをTHFに溶解させ、FD-MS JMS-T100GC(JEOL製)に供した。結果を下記表に示す。
【0158】
【0159】
上記表1の結果から、Pc-1は下記式(I-1-2)で表される化合物を94.6%、下記式(IA-1-2)で表される化合物を2.8%含有していることが分かった。また、Pc-2は下記式(I-1-2)で表される化合物を98.8%含有していることが分かった。
【0160】
【0161】
(X線結晶構造解析)
X線回折(XRD)によりPc-1及びPc-2の結晶構造を解析したところ、ともにβ型フタロシアニンの結晶構造を有することを確認した。
【0162】
(TEM観察)
上記実施例及び比較例により得られたPc-1、Pc-2、RPc-1及びそれらを顔料化したものの顔料化前後のTEM観察を行い粒子の状態を確認した。
ここで、顔料化とは、実用化に適したサイズにまで、粗体をより細かくする操作をいい、本実施例では、以下のように行った。
粗体(0.5g)を塩化ナトリウム(1.5g)とともにジエチレングリコール(0.6g)に分散し、Hoover Mullerを用いて粉砕し、水に分散させた後ろ過し98℃のオーブンで一晩乾燥させることで、顔料化した粒子を調製した。
TEM観察の結果を
図1~
図6に示す。
【0163】
図1~
図6のTEM観察結果より、本発明の実施例の銅フタロシアニン化合物は、比較例の銅フタロシアニンと比較して顔料化後の粒子径を小さくすることができるため、樹脂への分散性、輝度を向上させることができ、高性能化へつなげることができることがわかった。
【0164】
合成例1で使用したフランはバイオマス由来であり、本発明の実施例のフタロシアニン化合物はバイオマス度を向上することができる。加えて、合成例1で使用した原料のフランに置換基を導入しておくことで、置換位置及び数を制御しながらフタロシアニンを製造することが可能となる。