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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】変性開始剤の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/48 20060101AFI20240305BHJP
   C08F 12/28 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C08F4/48
C08F12/28
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021548648
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 KR2020013877
(87)【国際公開番号】W WO2021071341
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0126517
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イ、テ-チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒ-スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ノ-マ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、フン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ナ、ユク-ヨル
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-515125(JP,A)
【文献】特開2011-219699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/48
C08F 12/00- 12/36
C08F 36/00- 36/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性官能基含有化合物および共役ジエン系単量体を含む第1流体と、重合開始官能基含有化合物を含む第2流体とを反応させるステップ(S1)と、
前記(S1)ステップの反応で製造された変性開始剤を含む第3流体を得るステップと、を含み、
前記変性官能基含有化合物は前記重合開始官能基含有化合物1モルに対して1モルを超過する割合で用いられ、
前記共役ジエン系単量体は前記変性官能基含有化合物1モルに対して1モル~4モルの割合で用いられ、
前記(S1)ステップおよび(S2)ステップは連続的に行われ、
前記重合開始官能基含有化合物は、アニオン性化合物であり、
前記変性官能基含有化合物は、香族ビニル化合物をなす何れか1つ以上の炭素にN、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含むヘテロアルキル基、または複素環基が置換された芳香族ビニル化合物誘導体である
変性開始剤の製造方法。
【請求項2】
前記変性官能基含有化合物は、前記重合開始官能基含有化合物1モルに対して1.5モル~10.0モルの割合で用いられる、請求項1に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項3】
前記変性官能基含有化合物は、前記重合開始官能基含有化合物1モルに対して3.0モル~5.0モルの割合で用いられる、請求項1または2に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項4】
前記第1流体および前記第2流体のうち少なくとも1つは極性添加剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項5】
前記第1流体は、極性添加剤をさらに含み、
前記第1流体は、前記変性官能基含有化合物、前記共役ジエン系単量体、および前記極性添加剤を順次に連続混合して製造される、請求項1~4のいずれか一項に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項6】
前記(S1)ステップの反応は-50℃~50℃で行う、請求項1~5のいずれか一項に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項7】
前記(S1)ステップは、第1流体流入口および第2流体流入口を備えた反応器内に、前記第1流体流入口に前記第1流体を、そして前記第2流体流入口に前記第2流体を投入して、前記第1流体および前記第2流体を混合させて行い、
前記混合時点の前記第1流体および前記第2流体の流量は一定に維持され、前記第1流体の流速は増加する、請求項1~6のいずれか一項に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項8】
前記第1流体および前記第2流体の投入時、各流体の流動は層流(laminar flow)である、請求項7に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項9】
前記第1流体および前記第2流体の投入時、前記第1流体および前記第2流体それぞれの流動方向は、互いに垂直である、請求項7に記載の変性開始剤の製造方法。
【請求項10】
前記重合開始官能基含有化合物が、下記化学式3で表される化合物である請求項1~9のいずれか一項に記載の変性開始剤の製造方法。
【化2】
[前記化学式3中、
11は、炭素数1~30の1価炭化水素基であり、
Mは、金属、具体的にはアルカリ金属である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月11日付けの韓国特許出願第10-2019-0126517号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に記載された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、副反応を最小化し、高転換率で変性開始剤を得ることができる、変性開始剤の製造方法およびそれを実施するための変性開始剤の製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、自動車に対する低燃費化の要求に伴い、タイヤ用ゴム材料として、転がり抵抗が少なく、耐磨耗性、引張特性に優れるとともに、ウェットスキッド抵抗性で代表される調整安定性も兼備した共役ジエン系重合体が求められている。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を減少させるための方法としては、加硫ゴムのヒステリシス損を小さくする方法が挙げられ、かかる加硫ゴムの評価指標としては、50℃~80℃の反発弾性、tanδ、グッドリッチ発熱などが用いられている。すなわち、前記温度での反発弾性が大きいか、tanδ、グッドリッチ発熱が小さいゴム材料が好ましい。
【0005】
ヒステリシス損の小さいゴム材料としては、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、またはポリブタジエンゴムなどが知られているが、これらは、ウェットスキッド抵抗性が小さいという問題がある。そこで、近年、スチレン-ブタジエンゴム(以下、SBRという)またはブタジエンゴム(以下、BRという)などの共役ジエン系重合体または共重合体が乳化重合や溶液重合により製造され、タイヤ用ゴムとして用いられている。中でも、乳化重合に比べて溶液重合が有する最も大きい利点は、ゴムの物性を規定するビニル構造の含量およびスチレンの含量を任意に調節することができ、カップリング(coupling)や変性(modification)などによって分子量および物性などが調節可能であるという点である。したがって、最終的に製造されたSBRやBRの構造の変化が容易であるとともに、鎖末端の結合や変性によって鎖末端の動きを減少させ、シリカまたはカーボンブラックなどの充填剤との結合力を増加させることができるため、溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として多く用いられている。
【0006】
かかる溶液重合によるSBRがタイヤ用ゴム材料として用いられる場合、前記SBR中のビニルの含量を増加させることで、ゴムのガラス転移温度を上昇させて走行抵抗および制動力のようなタイヤに要求される物性を調節することができるだけでなく、ガラス転移温度を適宜調節することで、燃料消費を低減することができる。前記溶液重合によるSBRは、アニオン重合開始剤を用いて製造し、形成された重合体の鎖末端を種々の変性剤を用いて結合させたり、変性させたりして用いている。例えば、米国特許第4,397,994号には、一官能性開始剤であるアルキルリチウムを用いて、非極性溶媒下でスチレン-ブタジエンを重合することで得られた重合体の鎖末端の活性アニオンを、スズ化合物などの結合剤を用いて結合させた技術が提示されている。
【0007】
一方、タイヤトレッドの補強性充填剤として、カーボンブラックおよびシリカなどが用いられているが、補強性充填剤としてシリカを用いる場合、低ヒステリシス損失性およびウェットスキッド抵抗性が向上するという利点がある。しかしながら、疎水性表面のカーボンブラックに比べて、親水性表面のシリカはゴムとの親和性が低いため、分散性が悪いという欠点を有する。したがって、分散性を改善させるか、シリカとゴムとを結合させるための別のシランカップリング剤を使用する必要がある。そこで、ゴム分子の末端部に、シリカとの親和性や反応性を有する官能基を導入する方案が行われているが、その効果が十分ではない状況である。
【0008】
また、前記官能基を導入する方案として、変性開始剤により重合を開始して、重合体の一側末端に変性開始剤に由来した官能基を導入する方案が提示されている。かかる変性開始剤は、変性基含有物質と重合開始物質とを反応させて製造され、反応時に変性基含有物質と重合開始物質の割合を調節して、製造される変性開始剤中の変性基含有物質由来の単位の割合を調節することができる。この際、変性開始剤中の変性基含有物質由来の単位の割合が高い場合、すなわち、反応時に変性基含有物質が重合開始物質に比べて過量に用いられた場合には、重合体に官能基の導入効果がさらに高くなり得る。
【0009】
しかしながら、変性基含有物質が重合開始物質に比べて過量に用いられる場合、反応中に前記反応物間のアニオン重合反応で目的としなかったオリゴマーが過度に発生し得るし、そこで、反応器の配管が閉塞して反応が中断されることで、変性開始剤の製造工程効率が低下するという問題があり、反応物間の混合が均一に行われないため、変性開始剤の転換率が低下するという問題がある。そこで、高変性率の変性開始剤を、反応が中断されることなく、容易に製造することができる方法の開発が必要な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】JP1994-271706 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記の従来技術の問題を解決するためになされたものであって、重合体の製造に用いられて重合体を高変性率で容易に変性させるとともに、重合を容易に開始することができる、オリゴマーが過度に生成されて反応が妨害される問題なく、高転換率で高変性率の変性開始剤を得ることができる、変性開始剤の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記変性開始剤の製造方法を行うことができる、変性開始剤の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、変性官能基含有化合物および共役ジエン系単量体を含む第1流体と、重合開始官能基含有化合物を含む第2流体とを反応させるステップ(S1)と、前記(S1)ステップの反応で製造された変性開始剤を含む第3流体を得るステップと、を含み、前記変性官能基含有化合物は重合開始官能基含有化合物1モルに対して1モルを超過する割合で用いられ、前記共役ジエン系単量体は変性官能基含有化合物1モルに対して1モル~4モルの割合で用いられ、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップは連続的に行われる、変性開始剤の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記変性開始剤の製造方法を実施するための変性開始剤の製造装置であって、第1流体流入口と、第2流体流入口と、第1流体および第2流体が混合される混合部と、第3流体が流出される流出口と、を備えた反応器である、変性開始剤の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る変性開始剤の製造方法は、連続反応によって行うことで、反応中に第1流体および第2流体の割合に一定に維持することができ、そこで、未反応物の残留および未変性開始剤の残留などの副反応が最小化され、高転換率で変性開始剤を製造することができる。
【0015】
また、前記変性開始剤の製造方法は、変性開始剤の製造時、より良い変性率の改善のために、変性官能基含有化合物を重合開始官能基含有化合物に比べて過量の割合に維持しつつ反応を行い、この際、変性官能基含有化合物を共役ジエン系単量体と予備混合して反応に参加させることで、溶媒溶解性に優れることができ、過度なオリゴマーの発生およびオリゴマーによる反応器の閉塞現象が抑制されることができるため、変性率が高い変性開始剤を転換率を低下させることなく容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0017】
本発明において、用語「変性開始剤」は重合反応を開始するための重合開始剤(polymerization initiator)を意味し、前記重合開始剤が重合体の変性官能基を含むことを意味し、前記変性開始剤は一例として共役ジエン系重合体の重合を開始するための変性開始剤であってもよく、この場合、活性が高く、単量体の十分なランダム化を確保することができる。
【0018】
本発明において、用語「官能基含有化合物」は、化合物の分子中に特定の性質を示す原子団である官能基(functional group)が置換されている化合物を意味する。
本発明において、用語「1価炭化水素基」は、1価のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、不飽和結合を1以上含むアリール基などの炭素と水素が結合された1価の原子団を意味する。
【0019】
本発明は、重合体を高変性率で容易に変性させるとともに重合を容易に開始することができる、オリゴマーが過度に生成されて反応が妨害される問題なく、高転換率で高変性率の変性開始剤を得ることができる、変性開始剤の製造方法を提供する。
【0020】
本発明に係る変性開始剤の製造方法は、変性官能基含有化合物および共役ジエン系単量体を含む第1流体と、重合開始官能基化合物を含む第2流体とを反応させるステップ(S1)と、前記(S1)ステップの反応で製造された変性開始剤を含む第3流体を得るステップと、を含み、前記変性官能基含有化合物は重合開始官能基含有化合物1モルに対して1モルを超過する割合で用いられ、前記共役ジエン系単量体は変性官能基含有化合物1モルに対して1モル~4モルの割合で用いられ、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップは連続的に行われることを特徴とする。
【0021】
前記変性開始剤の製造方法により変性開始剤を製造する場合、連続反応によって行うことで、反応中に第1流体および第2流体を調節する割合に一定に維持することができ、そこで、未反応物の残留および未変性開始剤の残留などの副反応が最小化され、高転換率で変性開始剤を製造することができる。
【0022】
また、一般的に、変性官能基含有化合物を重合開始官能基含有化合物に比べて過量の割合で反応させる場合、変性官能基含有化合物が重合開始官能基含有化合物にオリゴマーの形態で結合され、変性官能基の割合が高い高変性の変性開始剤が形成されることができるが、反応物中の変性官能基含有化合物が多くなる場合、極性の増加により溶媒に対する溶解性が減少するようになり、過度なオリゴマーが生成されて反応器の閉塞など、反応が持続できないという問題が発生し得る。しかし、本発明に係る変性開始剤の製造方法は、変性官能基含有化合物を共役ジエン系単量体と予備混合して重合開始官能基含有化合物と反応させることで、溶媒溶解性が改善されて持続的に反応が容易に行われることができ、過度なオリゴマーの発生およびオリゴマーによる反応器の閉塞現象が抑制されることができるため、変性官能基の割合が高く溶媒溶解性に優れた高変性率の変性開始剤を製造することができる。
【0023】
前記変性官能基含有化合物は、変性開始剤により重合が開始され、重合された重合体の一側末端に変性官能基を導入させるための化合物であり、重合体の変性目的に応じて選択可能であり、一例として、溶媒親和性を向上させるための炭化水素基を含有する化合物、充填剤との親和性を向上させるためのヘテロ原子含有化合物などであってもよい。また、前記変性官能基含有化合物は、前記重合開始官能基含有化合物との反応によりアニオン化されて変性開始剤を生成するための化合物であり、前記重合開始官能基含有化合物が添加されやすい不飽和結合を含む化合物であってもよく、または前記重合開始官能基化合物から除去しやすい水素原子を含む化合物であってもよい。
【0024】
具体的な例として、前記変性官能基含有化合物は、下記化学式1で表される化合物であってもよい。
【化1】
【0025】
前記化学式1中、R1~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価炭化水素基、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含む炭素数1~30のヘテロアルキル基、またはN、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含む炭素数4~30の複素環基であってもよい。
【0026】
より具体的な例として、前記化学式1で表される化合物は、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレンなどのような芳香族ビニル化合物;前記芳香族ビニル化合物をなす何れか1つ以上の炭素に1価炭化水素基、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含むヘテロアルキル基、または複素環基が置換された芳香族ビニル化合物誘導体;1,3-ブタジエン、イソプレンなどのような共役ジエン系化合物;または前記共役ジエン系化合物をなす何れか1つ以上の炭素に1価炭化水素基、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含むヘテロアルキル基、または複素環基が置換された共役ジエン系化合物誘導体であってもよい。
【0027】
また他の例として、前記変性官能基含有化合物は、下記化学式2で表される化合物であってもよい。
【化2】
【0028】
前記化学式2中、R5~R7は、それぞれ独立して、炭素数1~30の1価炭化水素基、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含む炭素数1~30のヘテロアルキル基、またはN、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含む炭素数4~30の複素環基であるか、R5およびR6、R6およびR7、またはR5およびR7は、互いに結合して炭素数5~30の炭化水素環基を形成してもよく、前記R5およびR6、R6およびR7、またはR5およびR7が互いに結合して炭化水素環基を形成する場合、前記炭化水素環は、環内に-CR89-、-NR10-、-O-、または-S-を含んでもよく、前記R8、R9、およびR10は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~30の1価炭化水素基、N、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含む炭素数1~30のヘテロアルキル基、またはN、O、およびSからなる群から選択された1種以上のヘテロ原子を含む炭素数4~30の複素環基であってもよい。
【0029】
また、前記共役ジエン系単量体は、変性官能基含有化合物と混合され、反応物中の変性官能基含有化合物の割合が増加することに応じた溶媒溶解性の減少を抑制し、反応が容易に行われるようにすることができ、前記変性官能基含有化合物の割合の増加に応じたオリゴマーの過度な発生および反応器の閉塞現象などを抑制し、高変性の変性開始剤の製造を容易にすることができ、その結果、それより製造された変性開始剤を重合体の製造に用いる場合、重合反応を容易に行われるようにするとともに重合体を高変性させることができる。
【0030】
本発明において、前記共役ジエン系単量体は、変性官能基含有化合物1モルに対して1モル~4モルの割合、具体的には1モル~2モルの割合で第1流体に含まれてもよく、この範囲内である場合、未反応共役ジエン系単量体による副反応を起こさず、且つ、未反応の変性官能基含有化合物無しに転換率の高い反応を誘導することができる。
【0031】
前記共役ジエン系単量体は、特に限定されるものではないが、例えば、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、イソプレン、および2-フェニル-1,3-ブタジエンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0032】
また、前記重合開始官能基含有化合物は、前記変性官能基含有化合物と反応して、変性開始剤を製造するための化合物であってもよく、一例として、アニオン性化合物であってもよい。具体的な例として、アニオンを示す有機基と、カチオンを示す金属とがイオン結合で結合された化合物であってもよい。
【0033】
より具体的な例として、前記重合開始官能基含有化合物は、下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【化3】
【0034】
前記化学式3中、R11は、炭素数1~30の1価炭化水素基であってもよく、Mは、金属、具体的にはアルカリ金属であってもよい。
【0035】
より具体的な例として、前記化学式3で表される化合物は、炭素数1~30のアルキル基、または炭素数4~30のシクロアルキル基をなす何れか1つ以上の炭素のプロトンが前記Mで置換されているアニオン性化合物であってもよい。すなわち、前記Mは、隣り合った炭素とイオン結合で結合されたものであってもよい。
【0036】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの変性官能基含有化合物および共役ジエン系単量体を含む第1流体(fluid)は、変性官能基含有化合物と共役ジエン系単量体が直接的に混合されている混合物であってもよく、または前記変性官能基含有化合物と共役ジエン系単量体が溶媒に溶解された溶液であってもよい。
【0037】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの重合開始官能基含有化合物を含む第2流体(fluid)は、重合開始官能基含有化合物そのものであってもよく、または前記重合開始官能基含有化合物が溶媒に溶解された溶液であってもよい。
【0038】
前記第1流体および第2流体それぞれが溶液である場合、溶媒は、変性官能基含有化合物、重合開始官能基含有化合物、および共役ジエン系単量体を溶解可能な溶媒であってもよく、一例として、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、およびエチルベンゼンなどの炭化水素溶媒であってもよい。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記第1流体および第2流体のうち少なくとも1つは、極性添加剤をさらに含んでもよく、前記極性添加剤は、第1流体および第2流体のうちどの流体に含まれるかに応じて、それぞれ変性官能基含有化合物および重合開始官能基含有化合物に対して10:1~1:10、5:1~1:5、3:1~1:3、または2:1~1:2のモル比(変性官能基含有化合物または重合開始官能基含有化合物:極性添加剤)で含まれてもよく、この範囲内である場合、変性官能基含有化合物および重合開始官能基含有化合物の間の反応速度差を補うことで、副反応が最小化されるという効果がある。前記極性添加剤は、一例として、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、シクロペンチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチレンメチルエーテル、エチレンジメチルエーテル、ジエチルグリコール、ジメチルエーテル、ターシャリー-ブトキシエトキシエタン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、(ジメチルアミノエチル)エチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびテトラメチルエチレンジアミンからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0040】
他の例として、本発明の一実施形態に係る前記製造方法において、第1流体は、極性添加剤をさらに含んでもよく、この場合、前記第1流体は、変性官能基含有化合物、共役ジエン系単量体、および極性添加剤を含んでもよく、この際、第1流体は、変性官能基含有化合物、共役ジエン系単量体、および極性添加剤を順次に連続混合して製造されてもよい。
【0041】
また他の例として、(S1)ステップにおいて、変性官能基含有化合物は、重合開始官能基含有化合物1モルに対して1モルを超過する割合、すなわち、重合開始官能基含有化合物に比べて過量に用いられてもよく、具体的に、前記変性官能基含有化合物は、重合開始官能基含有化合物1モルに対して1.5モル~10.0モル、1.5モル~5モルの割合、または3.0モル~5.0モルで用いられてもよく、この場合、変性官能基含有化合物が2個以上結合され、二量体、三量体、および四量体以上の多量体オリゴマーが生成されることができ、それより製造される高変性率の変性開始剤を重合体の製造に適用時に重合体を高変性率で変性させることができるため、前記重合体の物性を改善させることができる。よって、本発明に係る変性開始剤の製造方法は、前記変性開始剤から製造しようとする重合体の条件に応じて、変性官能基含有化合物と重合開始官能基含有化合物が適宜なモル比で反応して生成物が得られるように実施することができる。
【0042】
また、本発明の一実施形態によると、前記反応器の内部温度は-50℃~50℃、-40℃~40℃、または-30℃~40℃であってもよく、好ましくは10℃~40℃であってもよく、この範囲内である場合、反応速度に優れ、副反応を最小化するという効果がある。
【0043】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップおよび(S2)ステップは、連続的に行われてもよい。前記(S1)ステップおよび(S2)ステップが連続的に行われる場合、変性開始剤の連続的な製造が可能であるため、生産性に優れるという効果があり、さらには、変性開始剤の製造時、反応器内に反応が完了した変性開始剤が残留しないため、連続的に流入する変性官能基含有化合物および重合開始官能基含有化合物の間の反応が円滑に行われ、変性開始剤の転換率に優れるという効果がある。
【0044】
一方、前記(S1)ステップは、第1流体流入口および第2流体流入口を備えた反応器内に、第1流体流入口に第1流体を、そして第2流体流入口に第2流体を投入し、第1流体および第2流体を混合させて行い、前記混合時点の第1流体および第2流体の流量は一定に維持され、第1流体の流速は増加してもよい。
【0045】
具体的に、第1流体および第2流体がそれぞれの流入口に流入し、反応器内で互いに混合され、混合により、第1流体に含まれた変性官能基含有化合物および共役ジエン系単量体、および第2流体に含まれた重合開始官能基含有化合物の間の反応により、変性開始剤が製造されるステップであってもよい。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップにおいて、前記第1流体および第2流体が混合される時点の第1流体および第2流体の流量は、一定に維持されてもよい。前記流量は、各流体をそれぞれの流入口に流入させる時点の流量であってもよく、反応性、反応速度、反応環境などを考慮し、各流体流入口に流入させる時点の流量を調節することで調節されてもよい。
【0047】
また、本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップにおいて、前記各流体が混合される時点の第1流体の流速は増加してもよい。前記第1流体の流速は、第1流体が反応器内に備えられた変形部を流れることで増加してもよい。前記第1流体が流れる前記変形部は、前記第1流体および第2流体が混合される時点で、第1流体の流速を瞬間的に増加させるためのものであり、前記混合される時点以前の第1流体が流れる反応器の内径、外径、または反応器の断面面積が一定の範囲内で縮小されるか、次第に減少する形状を有してもよい。このように、反応器内の変形部を通して第1流体が流れることで、第1流体の瞬間流速が増加する場合、別の撹拌器または混合器などを備えなくても、各流体の混合力を向上させるという効果がある。一方、前記第1流体の流速は、変形部を経て各流体が混合される時点においてのみ一時的に増加してもよい。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの各流体の投入時、第1流体および第2流体それぞれの流動は、層流(laminar flow)であってもよい。本発明において、用語「層流(laminar flow)」は、レイノルズ数(Reynolds number、NRe)が2,100以下である流体の流れ状態を示す無次元の整数を意味する。
【0049】
前記レイノルズ数は、流体の運動力と粘性力の割合であり、下記数学式1により計算することができる。
【数1】
【0050】
前記数学式1中、ρは流体の密度であり、vは流入口および反応器内の流体の流速であり、dは流入口および反応器の内径であり、μは流体の粘度である。
【0051】
通常、流体の速度が遅くなると、運動力が小さくなってレイノルズ数が減少し、流体の粘度が上昇すると、粘性力が大きくなってレイノルズ数が減少するようになる。この際、運動力が比較的に小さい流体は比較的に柔らかく流れ、流入口、変形部、または流出口などの内壁では流体の流れが継続して抵抗を受けて流体の速度が遅くなり、前記流入口、変形部、または流出口などの中心では流体の速度が最高点に達し、速度分布が内壁から中心に行くほど、流動の大きい放物線状の速度分布が現れるようになるが、前記層流はこのような速度分布を有する流れ形態を意味する。
【0052】
具体的な例として、前記(S1)ステップの第1流体の投入時、第1流体のレイノルズ数(NRe)は2,100以下、1~2,100、10~1,500、または30~1,000であってもよく、好ましくは50~500であってもよく、この範囲内である場合、層流を維持するとともに、第1流体の流量が適切に維持されて副反応を最小化するという効果がある。
【0053】
また他の例として、前記(S1)ステップの第2流体の投入時、第2流体のレイノルズ数(NRe)は2,100以下、1~2,100、10~1,500、または30~1,000であってもよく、好ましくは50~500であってもよく、この範囲内である場合、層流を維持するとともに、第2流体の流量が適切に維持されて副反応を最小化するという効果がある。
【0054】
一方、本発明に係る第1流体の流動は、第1流体流入口を通して反応器の内部に流入し、変形部に沿って流れた後、第2流体と混合されるようになるが、前記第1流体のレイノルズ数は、第1流体流入口を通して投入されて流れるときから、変形部に至るまで一定に維持されることができ、前記変形部を通過して前記第2流体と混合される時点の第1流体のレイノルズ数は次第に減少することができる。これは、各流体が混合される時点で、前記変形部により第1流体の流速は増加するが、反応器の内径、外径、または反応器の断面面積が一定の範囲内で縮小されるか、次第に減少する形状である変形部の内径、外径、または断面面積の減少によるものである。
【0055】
また、本発明に係る第2流体の流動は、第2流体流入口を通して反応器の内部に流入し、第1流体と混合されるようになるが、前記第2流体のレイノルズ数は、第2流体流入口を通して投入されて流れるときから、前記各流体が混合される時点に至るまで一定に維持されることができる。
【0056】
本発明の一実施形態によると、前記(S1)ステップの第1流体および第2流体の投入時、第1流体および第2流体の流動方向は、互いに垂直であってもよい。前記第1流体および第2流体の流動方向は、第1流体流入口および第2流体流入口の設置位置から調節されてもよく、第1流体流入口と第2流体流入口が反応器内で互いに垂直方向に備えられることで調節されてもよく、これにより、第1流体および第2流体の流動方向が互いに垂直な場合、第1流体および第2流体が混合される時点に、層流が維持されつつ、均一な混合が容易であるという効果がある。また他の例として、前記第1流体および第2流体の投入時、第1流体および第2流体の流動方向は互いに垂直であってもよいが、前記第1流体が反応器の内部に投入されて変形部を通過して流れつつ、第1流体と第2流体の流動方向は平行してもよく、この場合、第1流体と第2流体の混合される時点における、第1流体と第2流体の接触面積が広いため、均一な混合に優れるという効果がある。
【0057】
一方、前記(S1)ステップを経て、前記(S2)ステップで得られる第3流体の流動は、層流(laminar flow)であってもよい。
具体的な例として、前記(S2)ステップで得られる第3流体のレイノルズ数(NRe)は2,100以下、1~2,100、10~1,500、または30~1,000であってもよく、好ましくは50~500であってもよく、この範囲内である場合、層流を維持するとともに、第3流体の流量が適切に維持されて副反応を最小化するという効果がある。
【0058】
本発明に係る変性開始剤の製造装置は、前記変性開始剤の製造方法を実施するためのものであり、第1流体流入口と、第2流体流入口と、第1流体の流速を増加させるための変形部と、第1流体および第2流体が混合される混合部と、第3流体が流出される流出口と、を備えた反応器であってもよい。
【0059】
前記反応器は、一例として、管型反応器(tubular reactor)であってもよく、前記反応器に備えられた第1流体流入口、第2流体流入口、および流出口の内径、外径、または断面面積は、それぞれ独立して、前記反応器の内径、外径、または断面面積の0.01~0.99倍、0.05~0.95倍、0.1~0.9倍、または0.3~0.7倍であってもよく、この範囲内である場合、第1流体の流速増加に優れるという効果がある。
【0060】
前記第1流体流入口および第2流体流入口は、それぞれ、一例として、前記反応器の端部または側部に備えられてもよく、前記反応器の内部に挿入された形態で備えられてもよい。
前記流出口は、一例として、変性開始剤から重合を開始するための重合反応器に連結されてもよく、前記重合反応器は、連続式反応器であってもよい。
【0061】
前記変形部は、前記各流体が混合される時点で、第1流体の流速を瞬間的に増加させるためのものであり、前記各流体が混合される時点以前の第1流体が流れる反応器の内径、外径、または反応器の断面面積が第1流体の流入口から流出口の方向に一定の範囲内で縮小されるか、次第に減少する形状を有してもよい。また他の例として、前記変形部の内径、外径、または断面面積の縮小、または次第に減少する形状は、前記反応器の内径、外径、または断面面積から前記流出口の内径、外径、または断面面積に縮小、または次第に減少する形状であってもよい。本発明の一実施形態によると、前記各流体が混合部において混合される時点は、前記変形部の端部を通過する時点であってもよい。
【0062】
前記混合部は、反応器内に別に備えられてもよく、または前記変形部を通過した第1流体と第2流体流入口を通過した第2流体とが反応器内で互いに混合される位置を意味する。
【0063】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0064】
実施例
実施例1
第1流体流入口、第2流体流入口、変形部、および流出口が備えられた管型反応器を準備した。前記管型反応器の胴体(body)の外径は1/4inchであり、前記第1流体流入口は、管型反応器の側部に備えられており、外径が1/8inchであり、前記第2流体流入口は、管型反応器の一側端部から変形部と流出口の連結部まで内部に挿入された形態で備えられるが、前記変形部と流出口の連結部から離隔しており、外径が1/8inchであり、前記流出口は、管型反応器の他側端部に備えられており、外径が1/8inchであり、前記変形部は、反応器の第1流体流入口が備えられた地点から離隔して、管型反応器の外径から前記流出口の外径に外径が次第に減少する形態で流出口に連結されている。
【0065】
前記第2流体流入口を通して、重合開始官能基含有化合物としてn-ブチルリチウムが1.5重量%でn-ヘキサンに溶解された溶液を350g/hrで投入し、レイノルズ数は約53であった。これと同時に、前記第1流体流入口を通して、変性官能基含有化合物としてジメチルビニルベンジルアミン(DMVBA)が5.7重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が3.1重量%で、1,3-ブタジエンが3.8重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入し、レイノルズ数は約230であった。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:1.5であり、ジメチルビニルベンジルアミンとテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:0.77であり、ジメチルビニルベンジルアミンと1,3-ブタジエンのモル比は1:2モルであった。
【0066】
前記第2流体流入口に投入されたn-ブチルリチウム溶液は、18mm/secの流速で移動し、反応器の変形部を通過すると同時に、流速が90mm/secに増加した状態で、前記第1流体流入口を通過して、流出口の開始点に移動したジメチルビニルベンジルアミン、1,3-ブタジエン、およびテトラメチルエチレンジアミン溶液と混合された。次いで、n-ブチルリチウム溶液と、ジメチルビニルベンジルアミン、1,3-ブタジエン、およびテトラメチルエチレンジアミン溶液が混合された混合溶液は、前記混合と同時に、流出口に流入し、約1分の滞留時間の間、流出口に備えられた外径1/4inch、長さ1.1mのチューブを通過しつつ、20℃で反応が行われ、これによる生成物である変性開始剤を前記流出口に備えられたチューブから連続的に得、この際、流出口および前記流出口に備えられたチューブのレイノルズ数は約180であった。
【0067】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が99モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
【0068】
実施例2
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが11.3重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.2重量%で、1,3-ブタジエンが6.3重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:3であり、ジメチルビニルベンジルアミンと1,3-ブタジエンのモル比は1:1.67であり、反応は40℃で行われた。
【0069】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が99モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
【0070】
実施例3
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが18.9重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.1重量%で、1,3-ブタジエンが10.1重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:5であり、ジメチルビニルベンジルアミンと1,3-ブタジエンのモル比は1:1.6であり、反応は40℃で行われた。
【0071】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が99モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
【0072】
実施例4
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが11.3重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.2重量%で、1,3-ブタジエンが15.2重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:3であり、ジメチルビニルベンジルアミンと1,3-ブタジエンのモル比は1:4であり、反応は40℃で行われた。
【0073】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が99モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
【0074】
比較例1
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが5.7重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.2重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:1.5であり、反応は20℃で行われた。
【0075】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が99モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
一方、反応が開始されてから9時間後、反応器の流出口が閉塞し、これ以上変性開始剤の製造反応を行うことができなかった。
【0076】
比較例2
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが11.3重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.1重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:3であり、反応は20℃で行われた。
【0077】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が53モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
一方、反応が開始されてから5時間後、反応器の流出口が閉塞し、これ以上変性開始剤の製造反応を行うことができなかった。
【0078】
比較例3
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが11.3重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.1重量%で、1,3-ブタジエンが6.3重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:3であり、ジメチルビニルベンジルアミンと1,3-ブタジエンのモル比は1:0.67であり、反応は20℃で行われた。
【0079】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が73モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
【0080】
比較例4
前記実施例1において、第1流体流入口を通して、ジメチルビニルベンジルアミンが11.3重量%で、極性添加剤としてテトラメチルエチレンジアミンが3.1重量%で、1,3-ブタジエンが22.8重量%でn-ヘキサンに共に溶解された溶液を350g/hrで投入したことを除いては、前記実施例1と同様の方法により実施した。この際、n-ブチルリチウムとジメチルビニルベンジルアミンのモル比は1:3であり、ジメチルビニルベンジルアミンと1,3-ブタジエンのモル比は1:6であり、反応は40℃で行われた。
【0081】
このように得た変性開始剤化合物を過量のエタノールを用いて水素化させ、ガスクロマトグラフィで確認した結果、変性官能基含有化合物として投入されたジメチルビニルベンジルアミンは検出されず、変性開始剤化合物が67モル%以上の転換率で生成されたことを確認することができた。
【0082】
実験例1
本発明に係る変性開始剤の製造方法は、収率および長期運転可能性を確認するために、前記実施例1~4および比較例1~4における、変性開始剤の転換率および反応器の閉塞時間を測定し、下記表1に示した。この際、反応器の閉塞時間は、反応が開始されてから、反応器が完全に閉塞してこれ以上反応の進行が不可能な時点までの経過時間を示した。
【0083】
【表1】
【0084】
前記表1に示されたように、本発明に係る実施例1~実施例4に適用された変性開始剤の製造方法は、比較例1および比較例2に比べて、反応器の閉塞現象が抑制されて長期間反応が可能であり、それのみならず、高転換率で変性開始剤の製造が可能であるため、反応収率も非常に高いことを確認した。この際、比較例1および2は、反応物として1,3-ブタジエンを用いないことを除いては、実施例と同等レベルの製造方法により変性開始剤を製造したものであり、比較例1の場合は、変性官能基含有化合物としてジメチルビニルベンジルアミンと重合開始官能基含有化合物としてn-ブチルリチウムの割合が1:1のレベルであって、変性官能基含有化合物が多くないため、変性官能基含有化合物の割合が高い比較例2に比べると、反応を長時間持続しつつ高転換率で変性開始剤を製造することができたが、数時間も経たないうちに反応器が閉塞して反応が中断され、よって、3倍以上の顕著に増加した時間の間反応が可能な実施例に比べると、工程効率、すなわち、可能な変性開始剤の総生産量が顕著に低下した。一方、比較例3および比較例4は、反応物として1,3-ブタジエンを用いたが、比較例3は、本発明において提示する割合範囲の未満で用いて、反応物中の1,3-ブタジエンの含量が少なすぎるため、溶媒溶解性の改善効果が微々たるものであり、過度なオリゴマーの発生抑制がろくに行われないため、変性開始剤の転換率が低く、反応器の閉塞現象の抑制効果も微々たるものであった。また、1,3-ブタジエンを本発明において提示する割合範囲を超過して用いた比較例4の場合は、反応物中の1,3-ブタジエンの割合が高いため、n-ブチルリチウムを開始剤にして1,3-ブタジエン間に重合反応でブタジエン重合体を形成する副反応が起こり、変性開始剤の転換率が顕著に低下した。
【0085】
実験例2
前記実施例1~4、比較例3および4の変性開始剤を用いて変性共役ジエン系重合体を製造し、それよりゴム試験片を製造した後、回転抵抗特性(燃費特性)を分析し、結果を下記表3に示した。
また、比較のために、未変性共役ジエン系重合体を製造し、それよりゴム試験片を製造した後、回転抵抗特性(燃費特性)を分析し、結果を下記表3に共に示した。
【0086】
1)変性共役ジエン系重合体の製造
20Lのオートクレーブ反応器に、n-ヘキサン3kg、スチレン270g、1,3-ブタジエン710g、実施例で製造された各変性開始剤4.7mmol、および極性添加剤として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン1.29gを投入し、反応器の内部温度を60℃に合わせ、断熱昇温反応を行った。30分余りの経過後、1,3-ブタジエン20gを投入して重合体の末端をブタジエンでキャッピング(capping)し、10分間反応させた。その後、エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解されている溶液33gを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、各変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0087】
2)比較例5:未変性共役ジエン系重合体の製造
20Lのオートクレーブ反応器に、n-ヘキサン3kg、スチレン270g、1,3-ブタジエン710g、n-ブチルリチウム4.7mmol、および極性添加剤として2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン1.29gを投入し、反応器の内部温度を60℃に合わせ、断熱昇温反応を行った。30分余りの経過後、1,3-ブタジエン20gを投入して重合体の末端をブタジエンでキャッピング(capping)し、10分間反応させた。その後、エタノールを用いて反応を停止させ、酸化防止剤であるWingstay Kがヘキサンに30重量%溶解されている溶液33gを添加した。その結果として得られた重合物をスチームで加熱された温水に入れ、撹拌して溶媒を除去した後、ロール乾燥して残量の溶媒と水を除去し、未変性スチレン-ブタジエン共重合体を製造した。
【0088】
3)ゴム試験片の製造
上記で製造された各変性または未変性のスチレン-ブタジエン共重合体を原料ゴムとして、下記表2に示した配合条件で配合した。表2中の原料の含量は、原料ゴム100重量部を基準とした各重量部である。
【0089】
【表2】
【0090】
具体的に、前記ゴム試験片は、第1段混練および第2段混練を経て混練される。第1段混練では、温度制御装置付きのバンバリーミキサーを用いて、原料ゴム、シリカ(充填剤)、有機シランカップリング剤(X50S、Evonik)、プロセス油(TDAE oil)、亜鉛華(ZnO)、ステアリン酸、酸化防止剤(TMQ(RD)(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンポリマー)、老化防止剤(6PPD((ジメチルブチル)-N-フェニル-フェニレンジアミン)、およびワックス(Microcrystaline Wax)を混練した。この際、混練機の初期温度を70℃に制御し、配合完了後、145℃~155℃の排出温度で1次配合物を得た。第2段混練では、前記1次配合物を室温まで冷却した後、混練機に1次配合物、硫黄、ゴム促進剤(DPG(ジフェニルグアニジン))、および加硫促進剤(CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド))を加え、100℃以下の温度で混合して2次配合物を得た。その後、160℃で20分間キュアリング工程を経てゴム試験片を製造した。
【0091】
(4)回転抵抗特性
回転抵抗特性(燃費特性)は、動的機械分析機(GABO社)を用いて、Film Tensionモードで、周波数10Hz、各測定温度(-60℃~60℃)で、動的変形に対する粘弾性挙動を測定してtanδ値を確認した。測定結果値において、60℃ tanδ値が低いほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性(燃費特性)に優れることを示す。しかし、下記表3において、結果値は比較例5の測定値を基準として指数化して示したものであり、数値が大きいほど優れることを意味する。
【0092】
【表3】
【0093】
前記表3において、実施例1~4、比較例3および4は、比較例5の測定値を基準として指数化して示したものであり、数値が高いほど優れることを意味する。前記表3から確認できるように、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造された変性開始剤を用いて製造された重合体の場合、未変性の比較例5に比べて顕著に改善された回転抵抗性を示した。
【0094】
また、同一な割合の変性官能基含有化合物と重合開始官能基含有化合物を用いて製造された変性開始剤を適用した実施例2、実施例4、比較例3、および比較例4において、実施例2および実施例4が、比較例3および4に比べて10%以上にゴム組成物の回転抵抗性を顕著に改善可能であることを確認し、この際、比較例3および4は、変性開始剤の製造時に用いられた1,3-ブタジエンの割合が異なり、他の条件は実施例2および4と同一のレベルであった。
【0095】
これにより、本発明に係る製造方法により製造された変性開始剤が重合体の重合に用いられて重合を開始するとともに、重合体に官能基を導入させて重合体を容易に変性可能であることを確認することができる。