(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-04
(45)【発行日】2024-03-12
(54)【発明の名称】窒化アルミニウム粉末及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C01B 21/072 20060101AFI20240305BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240305BHJP
【FI】
C01B21/072 Z
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2023577447
(86)(22)【出願日】2023-08-29
(86)【国際出願番号】 JP2023031295
【審査請求日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2022136889
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】高草木 誠
(72)【発明者】
【氏名】福永 豊
(72)【発明者】
【氏名】伊本 靖司
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 晃匡
(72)【発明者】
【氏名】千振 正登
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180221(JP,A)
【文献】特開2020-176222(JP,A)
【文献】特開2021-134132(JP,A)
【文献】特開平3-177308(JP,A)
【文献】特開2012-56774(JP,A)
【文献】特開2012-121742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/072
C08L 1/00-101/00
C08K 3/00-13/08
C04B 35/56-35/599
C04B 38/00-38/10
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が5~50μm、酸素含有量が0.5質量%以下であり、倍率500倍の走査型電子顕微鏡観察において、少なくとも2つの平滑面が存在する多面粒子を含み、かつ、長径(L)が5μm以上の前記多面粒子についての、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値が1.0~1.4の範囲にある窒化アルミニウム粉末。
【請求項2】
前記多面粒子の存在割合が70%以上である、請求項1に記載の窒化アルミニウム粉末。
【請求項3】
前記多面粒子の切断面の2000倍のSEM画像において、任意に選択した10粒子において、平滑面に該当する外郭線と上記外郭線の端部間を結ぶ直線との垂直距離の最大値Mの平均値(M
A)が0.15μm以下である請求項1に記載の窒化アルミニウム粉末。
【請求項4】
樹脂充填用である、請求項1~3のいずれかに記載の窒化アルミニウム粉末。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の窒化アルミニウム粉末と樹脂とを含有する樹脂組成物。
【請求項6】
平均粒子径0.5~5μm、比表面積1.2~16.0m
2/gの第1の窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3~40μm、比表面積が0.05~1.8m
2/gであり、且つ、第1の窒化アルミニウム粉末原料の比表面積(SA1)に対するその比表面積(SA2)の比(SA2/SA1)が0.8以下の関係にある第2の窒化アルミニウム粉末原料1~20質量部とを混合して原料混合物を作製する工程1、及び、前記原料混合物を不活性ガスの供給下、1750~2100℃に加熱する工程2を含むことを特徴とする窒化アルミニウム粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化アルミニウム粉末及び該窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム粉末は高熱伝導性を有し、かつ電気絶縁性にも優れる材料として知られており、例えばサーマルインターフェースマテリアルなどに利用されている。
サーマルインターフェースマテリアルとは、半導体素子から発生する熱をヒートシンク又は筐体等に逃がす経路の熱抵抗を緩和するための材料であり、シート、ゲル、グリースなど多様な形態が用いられる。サーマルインターフェースマテリアルとしては、窒化アルミニウムなどの熱伝導性フィラーを、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの樹脂に充填した放熱材料が知られている。
樹脂に窒化アルミニウムを充填する際には、充填率を高めたり、熱パスを形成しやすくしたりするなどの目的で、複数の異なる平均粒径の窒化アルミニウムを組み合わせて、熱伝導率を向上させる方法が知られている。
樹脂中において粒径の大きい粒子は熱伝導パスを形成しやすいものの、厚みの薄い放熱材料に使用し難くなる場合があり、また特に球状の粒子は樹脂中での粒子同士の接触面積が小さく熱伝導パスが形成し難い場合もある。一方粒径が小さい粒子は樹脂中において熱伝導パスが形成しにくく、また樹脂に充填した際の流動性が悪くなる場合がある。そのため、平均粒径5~50μm程度を有する窒化アルミニウム粉末は利用価値が高い。
【0003】
特許文献1には、平均粒径D50が15~200μmで、粒径5μm以下の粒子の含有量が個数基準で60%以下であり、アルカリ土類金属、希土類元素、酸素含有量、及びケイ素含有量が低減された窒化アルミニウム系粉末に関する発明が開示され、高分子材料への充填性が優れることが記載されている。そしてこのような窒化アルミニウム系粉末を得る方法として、実施例では、直接窒化法により得られた窒化アルミニウムを粉砕して熱処理をする方法が開示されている。
なお、直接窒化法は、窒化アルミニウムなどのセラミックの合成法として知られており、窒化反応の発熱が大きく、高温になる為、生成物は塊状物として得られる。粉末として使用するには粉砕処理が必要となる。
【0004】
また、特許文献2では、放熱部材の熱伝導率を向上させることが可能な窒化アルミニウム粉末として、平均粒径が20~50μm、酸素量が0.6質量%以下、X線回折によって得られるミラー指数(100)面、(002)面及び(101)面の3つの回折ピークの平均半価幅が0.095°以下であることを特徴とする窒化アルミニウム粉末が開示されている。
更に、特許文献3は、粒子間の接触面積を改善するため、平滑面を有する粒子を含む窒化アルミニウム粉末が提案されている。
【0005】
特許文献4では、燃焼合成法により結晶粒子を大型化させた後、粉砕及び分級して得た平均粒径(D50)60μmの窒化アルミニウム粉末について、樹脂への充填性、熱伝導率などを検討しており、これらの各物性が良好であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2018/216591号
【文献】特開2003-119010号公報
【文献】国際公開第2017/131239号
【文献】特開2022-067865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した従来技術において、特許文献1、特許文献4に開示される窒化アルミニウム粉末は、直接窒化法や燃焼合成によって得られる窒化アルミニウム粉末であり、その製造方法上、低酸素含有量であるために、粒子自体の熱伝導性は優れているものの、反応後の塊状物を破砕、或いは解砕して得られるため、粉末を構成する粒子は、不定形若しくは強固な凝集体であり、平滑面を有する粒子を得ることは困難である。また、上記粒子はアスペクト比(粒子の短径(D)に対する長径(L)の比(L/D))が高く、上記表面の性状にも影響され、樹脂に充填された際の流動性において十分満足されるものではない。
また、特許文献2において開示される窒化アルミニウム粉末は、原料窒化アルミニウム粉末を加熱することにより結晶性を高め、低酸素含有量を達成したものであり、粒成長を促す微粉が制限された破砕粉を熱処理して、所望の粒子径を有する低酸素含有量の窒化アルミニウム粉末を製造することを特徴とする。そのため、得られる窒化アルミニウム粉末の粒子形状は、不定形であり、また、破砕面の存在により、平滑面が形成されることはない。
更に、前記特許文献3に記載された窒化アルミニウム粉末は、平滑面を有する粒子を含むことにより、樹脂に充填した際の粒子間の流動性と面接触による熱伝導性の向上は期待されるものの、平滑面を形成するための製造方法に由来して、酸素濃度が高いため、粒子自体の熱伝導性において改良の余地があった。
以上説明したように、窒化アルミニウム粉末の樹脂への充填において、特に中径粒子として使用される従来の窒化アルミニウム粉末は、近年のパワーデバイスの密度上昇などに伴う高度な放熱性の要求を十分満足するものではなく、更なる改良の余地があった。
そこで本発明では、樹脂に充填して樹脂組成物とした際の熱伝導性が高く、流動性も良好な窒化アルミニウム粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、後述の特定の製造方法を採用することにより、粒子自体の熱伝導性に影響する酸素含有量が低く、また、流動性を高めるのに有効な、平滑面を有し、且つ、アスペクト比が小さい、平均粒径5~50μm程度の窒化アルミニウム粉末を開発することに成功し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の要旨は、以下の[1]~[6]である。
[1]平均粒子径が5~50μm、酸素含有量が0.5質量%以下であり、倍率500倍の走査型電子顕微鏡観察において、少なくとも2つの平滑面が存在する多面粒子を含み、かつ、長径(L)が5μm以上の前記多面粒子についての、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値が1.0~1.4の範囲にある窒化アルミニウム粉末。
[2]前記多面粒子の存在割合が70%以上である、上記[1]に記載の窒化アルミニウム粉末。
[3]前記多面粒子の切断面の2000倍のSEM画像において、任意に選択した10粒子において、平滑面に該当する外郭線と上記外郭線の端部間を結ぶ直線との垂直距離の最大値Mの平均値(MA)が0.15μm以下である上記[1]又は[2]に記載の窒化アルミニウム粉末。
[4]樹脂充填用である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の窒化アルミニウム粉末。
[5]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の窒化アルミニウム粉末と樹脂とを含有する樹脂組成物。
[6]平均粒子径0.5~5μm、比表面積1.2~16.0m2/gの第1の窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3~40μm、比表面積が0.05~1.8m2/gであり、且つ、第1の窒化アルミニウム粉末原料の比表面積(SA1)に対するその比表面積(SA2)の比(SA2/SA1)が0.8以下の関係にある第2の窒化アルミニウム粉末原料1~20質量部とを混合して原料混合物を作製する工程1、及び、前記原料混合物を不活性ガスの供給下、1750~2100℃に加熱する工程2を含むことを特徴とする窒化アルミニウム粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸素含有量が低いため、粒子自体の熱伝導性が高く、また、2以上の平滑面を有し、且つ、アスペクト比が小さいため、樹脂に充填した際の流動性が極めて高く、更に、前記平滑面による粒子同士の接触面積の増大により、これを充填した樹脂組成物に極めて高い熱伝導性を付与することが可能な、平均粒径5~50μm程度の窒化アルミニウム粉末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の窒化アルミニウム粉末のSEM観察画像である。
【
図2】実施例26で得られた窒化アルミニウム粉末のSEM観察画像である。
【
図3】本発明の窒化アルミニウム粉末を構成する粒子の平滑面についての定義の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[窒化アルミニウム粉末]
本発明の窒化アルミニウム粉末は、平均粒子径が5~50μm、酸素含有量が0.5質量%以下であり、倍率500倍の走査型電子顕微鏡観察において、少なくとも2つの平滑面が存在する多面粒子を含み、かつ、長径(L)が5μm以上の前記多面粒子についての、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値が1.0~1.4の範囲にある。
【0013】
<多面粒子>
図1に本発明の窒化アルミニウム粉末の倍率500倍での走査型電子顕微鏡観察で得られた画像を示す。窒化アルミニウム粉末は、複数の窒化アルミニウム粒子から構成されており、多面粒子11及び多面粒子12など複数の多面粒子を含んでいる。
多面粒子11は、少なくとも2つの平滑面aがランダムに存在する多面体形状を有する窒化アルミニウム粒子である。多面粒子12も同様に平滑面aを少なくとも2つ備える窒化アルミニウム粒子である。また、
図1においては、多面粒子11及び多面粒子12以外にも、複数の多面粒子が存在している。
【0014】
多面粒子が備える平滑面aは、
図1に示す通り、倍率500倍の走査型電子顕微鏡観察において面内に凹凸構造が確認されない平滑な面であり、窒化アルミニウムの結晶成長面に由来する面である。また、平滑面aは、窒化アルミニウム粒子を粉砕することにより形成された破砕面とは異なるものである。破砕面は、平滑面と比較して平滑性に劣り、走査型電子顕微鏡観察において粉砕に由来する凸凹構造が確認されるため、平滑面と区別することができる。また、上記平滑面aの平滑性は、実施例においてより詳細に説明するが、粒子の切断面の2000倍のSEM画像において、任意に選択した10粒子において、平滑面に該当する外郭線と上記外郭線の端部間を結ぶ直線との垂直距離の最大値をMとし、上記選択した10粒子においてそれぞれ測定されるMのうち、最も大きい数値M
maxが0.3μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2μm以下である。さらに、10粒子のMの平均値M
Aが0.15μm以下であることが更に好ましい。
ちなみに、窒化アルミニウムの塊状物を破砕することによって生成する破砕面は、平滑な面についても、上記M
maxは、凹凸やうねりを含めて0.3μmを下回ることはなく、また、上記最大値の平均値M
Aも0.15μmを下回ることはない。
【0015】
本発明の窒化アルミニウム粉末は多面粒子を含むことにより、樹脂に充填した場合の樹脂組成物の熱伝導率が向上しやすくなる。この理由は定かではないが、複数の平滑面を備える多面粒子が存在することにより、樹脂中での粒子間の接触面積が増大し、熱伝導パスが形成されやすいためと考えられる。また、平滑面の存在により、粒子の流動性も改善され、樹脂への充填に際して充填性の向上に寄与することもできる。
【0016】
本発明において多面粒子が備える平滑面の数は2つ以上であれば特に限定されないが、樹脂に充填した際の粒子間の接触面積を大きくする観点などから、好ましくは3以上である。また、多面粒子が備える平滑面の上限は特に限定されないが、例えば10である。なお、多面粒子が備える平滑面の数は、倍率500倍での走査型電子顕微鏡(SEM)観察で得られる画像を基に特定される。
また、連続する2つの平滑面は陵部を形成するように連続していることが好ましい。
【0017】
多面粒子が備える個々の平滑面の面積は、樹脂に充填した際の粒子間の接触面積を大きくして熱伝導率を向上させる観点から、一定程度大きいことが好ましい。このような観点から、多面粒子は、面積が2~1600μm2の平滑面を少なくとも2つ備えることが好ましく、面積が2~1600μm2の平滑面を少なくとも3つ備えることがより好ましい。
なお、該平滑面の面積は、倍率500倍での走査型電子顕微鏡(SEM)観察で得られた画像により求められる。
【0018】
本発明の窒化アルミニウム粉末における前記多面粒子の存在割合は、窒化アルミニウム粉末を樹脂に充填した樹脂組成物の熱伝導率向上の観点から、好ましくは70%以上であり、より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。多面粒子の存在割合は、倍率500倍での走査型電子顕微鏡観察の画像で特定される全窒化アルミニウム粒子の合計面積に対する、多面粒子の合計面積の割合である。
【0019】
上記した通り、多面粒子の備える平滑面は、面に凹凸やうねりが存在する破砕面とは異なるものである。破砕面を有する粒子の少ない窒化アルミニウム粉末を用いると、樹脂に充填した樹脂組成物の流動性が向上する傾向がある。そのため、本発明の窒化アルミニウム粉末における破砕面を有する粒子の存在割合は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは10%以下である。破砕面を有する粒子の存在割合は、倍率500倍での走査型電子顕微鏡観察の画像で特定される全窒化アルミニウム粒子の合計面積に対する、破砕面を有する粒子の合計面積の割合である。
【0020】
<多面粒子の長径/短径比>
本発明の窒化アルミニウム粉末は、長径(L)が5μm以上の多面粒子についての、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値が1.0~1.4の範囲にある。前記比(L/D)が1.4を超えると、窒化アルミニウム粉末を樹脂に充填した樹脂組成物の流動性が低くなりやすく、取り扱い性などが悪化する。
樹脂組成物の流動性向上の観点から、長径(L)が5μm以上の多面粒子についての、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値は、好ましくは1.0~1.3であり、より好ましくは1.0~1.2である。
ここで、多面粒子の長径(L)及び短径(D)は、倍率500倍での走査型電子顕微鏡観察で観察される多面粒子の形状に基づいて定められる。
長径(L)は多面粒子の外周上の任意の2点間の最大距離と定義する。短径(D)は、長径(L)と垂直に交わる線分であって、長径(L)の中点と多面粒子の外周上の2点とを通る線分と定義する。
また、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値は、少なくとも20個以上の長径(L)が5μm以上の多面粒子に対して比(L/D)を求め、これらを平均して算出することとする。
なお、本発明の多面粒子を含む窒化アルミニウム粉末は、例えば後述する製造方法により得ることができる。
【0021】
<平均粒子径>
本発明の窒化アルミニウム粉末の平均粒子径は5~50μmである。このような中程度の平均粒子径を有する窒化アルミニウム粉末は、樹脂への充填用に使用し易いため利用価値が大きい。平均粒子径が大きすぎると、例えば厚みの薄い放熱材料などに使用し難くなる場合があり、また平均粒子径が小さすぎると熱伝導率が低くなる傾向がある。本発明の窒化アルミニウム粉末の平均粒子径は、好ましくは5~40μmであり、より好ましくは5~30μmである。
なお、本明細書において、窒化アルミニウム粉末の平均粒子径は、レーザー回折粒度分布装置において測定される粒子の累積体積が50%となる粒径(D50)を意味する。
【0022】
<酸素含有量>
本発明の窒化アルミニウム粉末の酸素含有量は0.5質量%以下である。
なお、酸素含有量は、実施例にて説明する高温熱分解法により測定される全酸素量である。
上記酸素含有量が0.5質量%を超えると、窒化アルミニウム粉末の熱伝導率が低下するため、該窒化アルミニウム粉末を充填した樹脂組成物の熱伝導性も低下する。窒化アルミニウム粉末の酸素含有量は、好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。このような低酸素濃度を有する多面粒子は本発明によってはじめて提供されるものであり、これにより本発明の窒化アルミニウム粉末は、以下に示すように高い熱伝導率を発揮する。
【0023】
<熱伝導率>
本発明の窒化アルミニウム粉末の熱伝導率は、好ましくは80W/m・K以上であり、より好ましくは120W/m・K以上であり、さらに好ましくは160W/m・K以上である。窒化アルミニウム粉末自体の熱伝導率がこのように高いことで、樹脂に充填した際の樹脂組成物の熱伝導率も高まり、優れた放熱性を発揮することができる。窒化アルミニウム粉末の熱伝導率は高ければ高いほどよいが、一般には230W/m・K以下である。窒化アルミニウム粉末の熱伝導率は、酸素含有量などによって調整することができる。
なお、窒化アルミニウム粉末の熱伝導率の測定は、顕微ラマン分光法に基づいて測定され、詳細は実施例にて説明する。
【0024】
[窒化アルミニウム粉末の製造方法]
本発明の窒化アルミニウム粉末の製造方法としては、上記した多面粒子を含有し、かつ上記した平均粒子径及び酸素含有量の窒化アルミニウム粉末を得られる方法であれば特に制限されないが、以下の工程1及び工程2を含む方法が好ましい。
工程1:平均粒子径0.5~5μm、比表面積1.2~16.0m2/gの第1の窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3~40μm、比表面積が0.05~1.8m2/gであり、且つ、第1の窒化アルミニウム粉末原料の比表面積(SA1)に対するその比表面積(SA2)の比(SA2/SA1)が0.8以下の関係にある第2の窒化アルミニウム粉末原料1~20質量部とを混合して原料混合物を作製する工程
工程2:原料混合物を不活性ガスの供給下において1750~2100℃に加熱する工程
【0025】
<工程1>
工程1は、平均粒子径0.5~5μm、比表面積1.2~16.0m2/gの第1の窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3~40μm、比表面積が0.05~1.8m2/gであり、且つ、第1の窒化アルミニウム粉末原料の比表面積(SA1)に対するその比表面積(SA2)の比(SA2/SA1)が0.8以下の関係にある第2の窒化アルミニウム粉末原料1~20質量部とを混合して原料混合物を作製する工程である。
該原料混合物は、異なる平均粒子径の窒化アルミニウムを所定の配合量で含んでいることにより、後述する加熱工程(工程2)を経ることにより、本発明の窒化アルミニウム粉末が得られる。
すなわち、相対的に平均粒子径の大きな第2の窒化アルミニウム粉末原料が適量存在することにより、加熱工程において、平均粒子径の小さい第1の窒化アルミニウム粉末原料が昇華反応により第2の窒化アルミニウム粉末原料に取り込まれて、第2の窒化アルミニウム粉末原料が結晶成長して、粒子径が大きくなると考えられる。そして、このような結晶成長により、上記した所定の多面粒子が形成されるものと推定される。さらに、上記昇華反応により第1の窒化アルミニウム粉末中に存在していた酸素が効果的に除かれるため、加熱工程を経て製造された本発明の窒化アルミニウム粉末は酸素濃度が低くなると推定される。
一方で、このように第1及び第2の窒化アルミニウム粉末原料を所定の配合量で併用しない場合は、粒子の成長が不十分となったり、粒子同士の凝結が起こったりするなどの現象が生じてしまい、本発明の窒化アルミニウム粉末が得難くなる。
【0026】
第1の窒化アルミニウム粉末原料の平均粒子径は0.5~5μm、比表面積1.2~16.0m2/gであり、好ましくは平均粒子径0.7~5μm、比表面積1.2~12.0m2/gである。
第2の窒化アルミニウム粉末原料の平均粒子径は3~40μm、比表面積0.05~1.8m2/gである。第2の窒化アルミニウム粉末原料の平均粒子径は、製造される本発明の窒化アルミニウム粉末の平均粒子径に応じて適宜選択するとよいが、好ましくは3~20μm、より好ましくは5~15μmである。
原料混合物における、第1の窒化アルミニウム粉末原料100質量部に対する第2の窒化アルミニウム粉末原料の配合量は、1~20質量部であり、好ましくは2~15質量部であり、より好ましくは3~10質量部である。上記した通り、第1及び第2のアルミニウム粉末原料の配合量を適切に調整することにより、本発明の窒化アルミニウム粉末を得ることが可能となる。
【0027】
第1の窒化アルミニウム粉末原料の比表面積(SA1)に対する、第2の窒化アルミニウム粉末原料の比表面積(SA2)の比(SA2/SA1)は、0.8以下である。このように、比表面積の比(SA2/SA1)を調整することにより、本発明の窒化アルミニウム粉末を得やすくなる。上記比表面積の比(SA2/SA1)は、好ましくは0.7以下であり、より好ましくは0.6以下である。
【0028】
粒子の成長を促進するため、焼成中に粒成長を促進する添加物を添加しても良い。添加剤は特に限定されず、アルカリ金属、アルカリ金属又は希土類元素の酸化物、フッ化物、塩化物等が利用できる。
【0029】
第1及び第2の窒化アルミニウム粉末原料は、所定の平均粒子径を有するものであれば、一般に使用されているものを特に制限なく使用することができ、還元窒化法により製造されたものであってもよいし、燃焼合成法などの直接窒化法により製造し、粉砕及び分級工程を経て所定の平均粒子径に調整されたものであってもよいし、これら以外の製造方法で製造されたものであってもよい。
また、工程1及び工程2を経ることにより製造された本発明の窒化アルミニウム粉末を第2の窒化アルミニウム粉末原料として用いて、再度工程1及び工程2を実施することで、より平均粒子径の大きな本発明の窒化アルミニウム粉末を得ることも好ましい。
【0030】
<工程2>
工程2は、工程1で調製した原料混合物を不活性ガスの供給下において1750~2100℃に加熱する工程である。
加熱温度を1750℃未満の場合、窒化アルミニウム粒子の結晶成長が促進されず、平滑面を有する窒化アルミニウム粒子を含む窒化アルミニウム粉末を得ることが困難となる。一方、加熱温度が2100℃を超えた場合、粒子同士の融着が起こり易くなる。このような観点から、加熱温度は1750~2100℃が好ましく、1800~2050℃がより好ましく、更に1800~2000℃が好ましい。
また、加熱時間は特に限定されないが、好ましくは1~20時間であり、より好ましくは2~15時間である。上記加熱時間が1時間より短い場合は、窒化アルミニウム粒子の結晶成長が十分進行せず、平滑面が形成され難くなる。一方、20時間を超えて加熱を行っても粒成長は進み難くなり、工業的な実施において不利となる。
【0031】
前記加熱は不活性ガスの供給下に行う。即ち、原料混合物を収容して加熱するための加熱装置内に不活性ガスを供給して加熱する態様が最も好ましいが、不活性ガスを連続的に供給しながら行うこともできる。また、原料混合物は、加熱用の容器(以下、「セッター」ともいう。)に充填して前記加熱装置に収容されるが、上記セッターとしては、カーボン製のものを使用することが好ましい。更に、不活性ガスとしては、アルゴンガス、窒素ガスが一般に使用され、そのうち、窒素ガスが好適に使用される。
【0032】
<その他の工程>
工程2の後に、必要に応じて解砕工程を行ってもよい。解砕は、ゆるやかに結合した窒化アルミニウム粒子同士の結合を解きほぐすために行うものであり、窒化アルミニウム粒子が部分的に破砕される粉砕とは異なる。そのため、解砕工程を行ったとしても、上記多面粒子の形状は維持され、破砕面を有する粒子もほとんど生じることはない。
解砕は、公知の方法で行えばよく、例えばロールクラッシャーミル、ピンミル、振動ミル、ジェットミル、ボールミル、マスコロイダー、ジョークラッシャーなどで行うとよい。
【0033】
また工程2の後に酸化工程を行ってもよく、酸化工程は上記解砕工程の後に行うことが好ましい。酸化工程を行うことにより、水等との接触による分解を防ぐことができる。
酸化工程は、大気雰囲気で加熱することで行うことができる。酸化工程における加熱温度は、特に制限されないが、好ましくは500~900℃であり、より好ましくは600~800℃である。加熱時間は、特に制限されないが、好ましくは1~20時間であり、より好ましくは5~15時間である。
上記酸化工程において形成する酸化膜の酸素含有量は、窒化アルミニウム粉末の酸素含有量に含まれるものであり、酸素含有量が前記窒化アルミニウム粉末の酸素含有量の範囲を超えないように行うことにより、樹脂に充填した際、得られる樹脂組成物に優れた熱伝導性を付与することが可能となる。
【0034】
本発明の窒化アルミニウム粉末は、樹脂との相溶性、耐水性の向上などを目的に、必要に応じて表面処理してもよい。表面処理は、公知の方法を適用できる。表面処理は、例えば、シリコーンオイル、シリル化剤、シランカップリング剤などの有機珪素化合物、リン酸、リン酸塩、脂肪酸などの酸、ポリアミド樹脂などの高分子化合物、アルミナ、シリカなどの無機物などを用いて行うことができる。
【0035】
<用途>
本発明の窒化アルミニウム粉末の用途は特に限定されず、窒化アルミニウム基板の原料として使用することもできるが、樹脂充填用として用いることが好ましい。本発明の窒化アルミニウム粉末を樹脂に充填して、樹脂及び窒化アルミニウム粉末を含む樹脂組成物として使用することが好ましい。本発明の窒化アルミニウム粉末は、上記した通り、酸素含有量が低いため窒化アルミニウム粉末自体の熱伝導率が高く、さらに平滑面を複数有する多面粒子を含んでいるため、粒子同士の接触面積が大きいため樹脂組成物中で熱伝導パスを効果的に形成しやすい。そのため、樹脂組成物の熱伝導率が高まり、放熱材料として好適に使用できる。
【0036】
樹脂組成物に含まれる樹脂は特に制限されないが、エポキシ樹脂、メソゲン基を導入したエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム、シリコーン樹脂などが挙げられる。中でも、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが好ましい。
【0037】
樹脂組成物に含まれる本発明の窒化アルミニウム粉末の含有量は、特に制限されないが、樹脂100質量部に対して、好ましくは600~2500質量部であり、より好ましくは1000~2500質量部である。窒化アルミニウム粉末の含有量がこれら下限値以上であると樹脂組成物の熱伝導性が向上し、窒化アルミニウム粉末の含有量がこれら上限値以下であると樹脂組成物の流動性が高まり、成形性などの取り扱い性が向上する。
【0038】
樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明の窒化アルミニウム粉末以外の他のフィラーを含んでもよい。
他のフィラーとしては、本発明の要件を満足しない窒化アルミニウム粉末の他、アルミナ、酸化亜鉛、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、グラファイトなどが挙げられる。
本発明の窒化アルミニウム粉末と他のフィラーとの混合比は、1:99~99:1の範囲で適宜調整できる。
【0039】
樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、加硫剤、硬化促進剤、離型剤等の添加剤を含んでもよい。
【0040】
樹脂組成物は、各成分をブレンダーやミキサーで混合することで製造することができる。そして、このようにして得られた樹脂組成物を公知の成形方法によって、放熱シート、放熱グリースなどの所望の形態の放熱材料とすることができる。成形方法としては、例えば、押出成形、プレス成形、ドクターブレード法、樹脂含浸法などが挙げられ、必要に応じて、成形後に、加熱硬化、光硬化などを行うとよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明をさらに具体的に説明するため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
[測定方法]
実施例および比較例における各種物性は、下記の方法により測定した。
(1)平均粒子径、比表面積
平均粒子径(D50)は、窒化アルミニウム粉末をホモジナイザーでピロリン酸ソーダ水溶液中に分散させ、レーザー回折粒度分布装置(日機装株式会社製「MICROTRAC HRA」)にて測定した。
比表面積は、島津製作所製流動式表面積自動測定装置フローソーブ2300形を用いてN2吸着によるBET法により求めた。
【0043】
(2)多面粒子の有無及び存在割合
窒化アルミニウム粉末について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製「TM3030」)を用いて倍率500倍のSEM写真(加速電圧15kV、二次電子検出)を撮影した。該SEM写真から、平滑面を2つ以上有する粒子の有無を確認し、多面粒子の有無を判断した。
また、多面粒子の存在割合は、上記SEM写真の画像解析から全窒化アルミニウム粒子の合計面積に対する、多面粒子の合計面積の割合を算出し、これを多面粒子の存在割合とした。SEM写真の視野数は10以上とする。具体的には、以下の式で求めた。
多面粒子の存在割合(%)=[(多面粒子の合計面積)/(全窒化アルミニウム粒子の合計面積)]×100
【0044】
(3)多面粒子の長径(L)と短径(D)の比(L/D)
上記(2)で得られたSEM写真から、長径(L)が5μm以上の20個の多面粒子について、それぞれ短径(D)に対する長径(L)の比を求めこれらを平均して、多面粒子の長径(L)と短径(D)の比(L/D)とした。
なお、比較例において多面粒子が確認されない窒化アルミニウム粉末については、長径(L)が5μm以上の粒子を対象に、上記と同様の方法で比(L/D)を求めた。
【0045】
(4)平滑面の平滑性の評価
窒化アルミニウム粉末をアクリル樹脂に充填し、硬化させた後、任意の箇所で切断し、その切断面の2000倍のSEM画像において、平滑面を有する任意の10粒子を選択し、
図3に示すように、平滑面を形成する外郭線の端部P1と端部P2を結ぶ直線Lを引き、上記直線Lと外郭線との垂直距離の最大値をMとし、上記選択した10粒子においてそれぞれ測定されたMのうち、最も大きい数値をM
maxとして示した。また、上記Mの平均値をM
Aとして示した。
【0046】
(5)酸素含有量
窒化アルミニウム粉末の酸素含有量は、堀場製作所製の酸素窒素分析装置「EMGA-620W」を用いて、グラファイトるつぼ中での高温熱分解法により発生したCOガス量から、窒化アルミニウム粉末に含まれる酸素含有量(酸素濃度)を測定した。
【0047】
(6)窒化アルミニウム粉末の熱伝導率
窒化アルミニウム粉末の熱伝導率は、特開2021-143968号公報に記載された顕微ラマン分光法に基づいて測定した。具体的には、以下のとおりである。
【0048】
(検量線の作成)
以下のS1~S4の窒化アルミニウム焼結体を検量線作成のための試料として用いた。
S1:市販品、相対密度99%以上、六方晶系、レーザーフラッシュ法で求めた熱伝導率:90W/m・K
S2:市販品、相対密度99%以上、六方晶系、レーザーフラッシュ法で求めた熱伝導率:175W/m・K
S3:市販品、相対密度99%以上、六方晶系、レーザーフラッシュ法で求めた熱伝導率:200W/m・K
S4:市販品、相対密度99%以上、六方晶系、レーザーフラッシュ法で求めた熱伝導率:239W/m・K
【0049】
市販の窒化アルミニウム焼結体試料S1~S4のラマンスペクトルを、顕微ラマン分光装置(日本分光社製:NRS‐7100)を用いて、励起波長532nm、出力10.9~11.0mW、対物レンズ100倍、測定時間30秒×2回積算、グレーティング3000 line/mm、スリット10×1000μm、アパーチャ4000μm、スペクトル分解能0.47cm-1、ビームスポット径1μm、分光器焦点距離500mmの条件で測定し、得られたラマンスペクトルにおいて、窒化アルミニウム固有のピークの一つであるE2
Hモードのピーク(655cm-1付近のピーク)のピーク半値幅を求めた。1つの試料について6ヶ所のピーク半値幅を測定し、その平均値を該試料のピーク半値幅とした。
【0050】
次いで、ピーク半値幅を測定した窒化アルミニウム焼結体試料の熱伝導率を、レーザーフラッシュ法によって求めた。
得られた熱伝導率とピーク半値幅の関係をグラフにプロットして確認したところ、ピーク半値幅の対数と熱伝導率の対数が正比例し、下記式で表わされる検量線を得た。
log(λ)=Alog(W)+B
上記式において、λは熱伝導率、Wはピーク半値幅であり、Aは-2.25、Bは3.50である。
【0051】
(熱伝導率の測定)
各実施例及び比較例で得られた窒化アルミニウム粉末の熱伝導率を、顕微ラマン分光装置(日本分光社製:NRS-7100)を用いて測定した。測定条件は、励起波長532nm、出力10.9~11.0mW、対物レンズ100倍、測定時間30秒×2回積算、グレーティング3000line/mm、スリット10×1000μm、アパーチャ4000μm、スペクトル分解能0.47cm-1、ビームスポット径1μm、分光器焦点距離500mmとした。測定は、スライドガラス上に分散するようにふりまいた窒化アルミニウム粉末試料について、光学顕微鏡による観察で前記粉末中の平均粒径に近い粒子径の粒子を選択してその表面に焦点を合わせてラマン分光測定を行った。
得られたラマンスペクトルにおいて、窒化アルミニウム固有のピークの一つであるE2
Hモードのピーク(655cm-1付近のピーク)を選択し、該ピークの半値幅を求めた。1つの試料について6個の粒子のピーク半値幅を測定し、その平均値を該試料のピーク半値幅とした。得られたピーク半値幅と、前記検量線から窒化アルミニウム粉末の熱伝導率を算出した。
【0052】
(7)樹脂組成物の熱伝導率
窒化アルミニウム粉末100質量部と、樹脂10質量部とを混合して、樹脂組成物を得た。樹脂としてはエポキシ樹脂を用いた。該樹脂組成物を100℃で熱プレスして、厚み1mmのシートを得た。得られたシートの熱伝導率をレーザーフラッシュ法により測定した。
【0053】
(8)樹脂組成物の流動性
上記(7)で得られた樹脂組成物について、武蔵エンジニアリング(株)社製のシリンジ「PSY-30F」を用いて、1分間あたりの吐出量(g/min)を測定した。
シリンジの試料を保管する胴部の内径は22mm、試料を吐出する先端部分の内径は2mmであった。また吐出圧は0.62Paとした。
【0054】
(実施例1)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.7m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.2μm、比表面積1.68m2/gの窒化アルミニウム粉末原料1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で4時間加熱した。加熱は常圧下で行った。得られた窒化アルミニウム粉末を遊星ボールミルで解砕して、大気雰囲気下において、700℃で8時間酸化処理をして、平均粒子径5.0μm、比表面積0.96m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-1)を得た。解砕と酸化処理は以下の全ての実施例で同様に行った為、以下略とする。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0055】
(実施例2)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として硫黄を0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径6.9μm、比表面積0.70m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-2)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0056】
(実施例3)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化イットリウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.0μm、比表面積0.69m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-3)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0057】
(実施例4)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤としてフッ化カルシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.0μm、比表面積0.69m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-4)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0058】
(実施例5)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.2μm、比表面積1.68m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、2100℃で1時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.1μm、比表面積0.68m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-5)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0059】
(実施例6)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として炭酸カルシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.1μm、比表面積0.68m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-6)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0060】
(実施例7)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として硫黄を5.0質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.1μm、比表面積0.68m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-7)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0061】
(実施例8)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化セシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.2μm、比表面積0.67m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-8)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0062】
(実施例9)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化ランタンを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1800℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.3μm、比表面積0.66m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-9)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0063】
(実施例10)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.2μm、比表面積1.68m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、2000℃で2時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径7.6μm、比表面積0.63m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-10)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表1に示した。
【0064】
(実施例11)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径5.0μm、比表面積1.02m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で3時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径8.0μm、比表面積0.60m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-11)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0065】
(実施例12)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径7.8μm、比表面積0.62m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で3時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径14.0μm、比表面積0.27m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-12)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0066】
(実施例13)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径7.8μm、比表面積0.62m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1900℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径16.2μm、比表面積0.23m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-13)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0067】
(実施例14)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径7.8μm、比表面積0.62m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で5時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径16.6μm、比表面積0.23m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-14)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0068】
(実施例15)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料20質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径17.2μm、比表面積0.22m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-15)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0069】
(実施例16)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径7.8μm、比表面積0.62m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1900℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径17.8μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-16)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0070】
(実施例17)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化イットリウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径17.8μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-17)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0071】
(実施例18)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤としてフッ化カルシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径18.1μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-18)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0072】
(実施例19)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤としてフッ化カルシウムを5質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径18.2μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-19)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0073】
(実施例20)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化セシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径18.3μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-20)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表2に示した。
【0074】
(実施例21)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として炭酸カルシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径18.5μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-21)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0075】
(実施例22)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径10.2μm、比表面積0.47m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化ランタンを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径18.5μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-22)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0076】
(実施例23)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径7.8μm、比表面積0.62m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、2000℃で5時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径18.7μm、比表面積0.20m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-23)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0077】
(実施例24)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径16.2μm、比表面積0.23m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤としてフッ化カルシウムを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1900℃で18時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径26.3μm、比表面積0.19m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-24)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0078】
(実施例25)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径16.2μm、比表面積0.23m2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部と、添加剤として酸化ランタンを0.1質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1900℃で18時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径26.5μm、比表面積0.19m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-25)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0079】
(実施例26)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m
2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径18.7μm、比表面積0.20m
2/gの窒化アルミニウム粉末原料5質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、2000℃で8時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径28.8μm、比表面積0.17m
2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-26)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3、SEM観察を
図2に示した。
【0080】
(実施例27)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径18.2μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末原料15質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1900℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径28.8μm、比表面積0.17m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-27)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0081】
(実施例28)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径17.8μm、比表面積0.21m2/gの窒化アルミニウム粉末原料20質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径29.4μm、比表面積0.17m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-28)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0082】
(実施例29)
平均粒子径0.5μm、比表面積15.70m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径26.5μm、比表面積0.14m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で12時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径38.2μm、比表面積0.11m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-29)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表3に示した。
【0083】
(実施例30)
平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径28.8μm、比表面積0.13m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径39.0μm、比表面積0.10m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-30)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0084】
(実施例31)
平均粒子径4.7μm、比表面積1.22m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径38.2μm、比表面積0.10m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1950℃で20時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径44.0μm、比表面積0.09m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-31)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0085】
(実施例32)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径26.4μm、比表面積0.14m2/gの窒化アルミニウム粉末原料15質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、2100℃で14時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行い、平均粒子径49.4μm、比表面積0.05m2/gの窒化アルミニウム粉末(AL-32)を得た。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0086】
(比較例1)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末のみを加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1900℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い、解砕、酸化処理を行って窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末は、比較的平坦な輪郭線を有する面を有する粒子が10%程度存在するものの、平均粒子径は2.2μmと小さいものであった。また、上記平坦な面の平滑性を評価したところ、平滑性も乏しいものであった。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0087】
(比較例2)
平均粒子径2.0μm、比表面積1.93m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料10質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い解砕、酸化処理を行って窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末は、比較的平坦な輪郭線を有する面を有する粒子を40%程度存在するものの、平均粒子径は3.2μmと小さいものであった。また、上記平坦な面の平滑性を評価したところ、平滑性は乏しいものであった。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0088】
(比較例3)
平均粒子径1.0μm、比表面積2.81m2/gの窒化アルミニウム粉末原料100質量部と、平均粒子径3.0μm、比表面積1.79m2/gの窒化アルミニウム粉末原料50質量部とを混合して原料混合物を作製した。
該原料混合物を加熱装置に収容し、装置内に窒素ガスを供給して窒素雰囲気とし、1850℃で10時間加熱した。加熱は常圧下で行い解砕、酸化処理を行って窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末は、比較的平坦な輪郭線を有する面を有する粒子を50%程度含むものの、平均粒子径は3.7μmと小さいものであった。また、上記平坦な面の平滑性を評価したところ、上記平坦な面の平滑性を評価したところ、平滑性も乏しいものであった。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0089】
(比較例4)
平均粒子径7.5μmのアルミニウム粉末と平均粒子径1.0μm、比表面積2.8m2/gの窒化アルミニウム粉末を1:2の割合で混合し、原料混合物を作製した。この原料混合物を反応器に収容し、窒素加圧下で燃焼反応させ、得られた塊状物を解砕して窒化アルミニウム粉末を得た。
得られた窒化アルミニウム粉末の平均粒子径は、19.2μmであり、上記窒化アルミニウム粉末を構成する粒子において、比較的平坦な輪郭線を有する面を有する粒子の割合は、20%程度であり、上記粒子について上記平坦な面の平滑性を評価したところ、平滑性も乏しいものであった。このように、比較例4では本発明で規定する、少なくとも2つの平滑面が存在する多面粒子を含む特定の窒化アルミニウム粉末が得られなかった。該窒化アルミニウム粉末についての各種測定結果を表4に示した。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
各実施例では、平均粒径5~50μmの範囲に含まれる窒化アルミニウム粉末が得られており、該窒化アルミニウム粉末には、少なくとも2つの平滑面を有し、かつ長径/短径比が特定の範囲の多面粒子が含まれ、しかも、酸素濃度も十分低く、高い熱伝導率を有していた。そして、各実施例の窒化アルミニウム粉末を樹脂に充填した樹脂組成物は熱伝導率が高く、かつ流動性にも優れており、放熱材料として有用であることが分かった。
【符号の説明】
【0095】
11、12 多面粒子
a 平滑面
【要約】
本発明の窒化アルミニウム粉末は、平均粒子径が5~50μm、酸素含有量が0.5質量%以下であり、倍率500倍の走査型電子顕微鏡観察において、少なくとも2つの平滑面aが存在する多面粒子を含み、かつ、長径(L)が5μm以上の前記多面粒子についての、短径(D)に対する長径(L)の比(L/D)の平均値が1~1.4の範囲にある。
本発明によれば、樹脂に充填して樹脂組成物とした際の熱伝導性が高く、かつ流動性も良好な窒化アルミニウム粉末を提供することができる。