(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】加熱装置、画像形成装置及び熱圧着装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240306BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2020087550
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100182453
【氏名又は名称】野村 英明
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-079285(JP,A)
【文献】特開2004-047247(JP,A)
【文献】特開2015-191734(JP,A)
【文献】特表2002-539506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極部が設けられた基材を有する加熱部材と、
前記電極部に接触する接続端子を有する給電部材と、
を備える加熱装置であって、
前記給電部材は、前記給電部材及び前記加熱部材と分離可能に構成された部材を介さずに前記加熱部材に係合し、
前記給電部材及び前記加熱部材は、
前記基材の長手方向の両方向、
前記基材の前記電極部が設けられている面と直交する厚み方向の両方向、
前記基材の長手方向及び厚み方向に直交する幅方向の両方向、
の各方向の相対的な変位が制限され
、
前記給電部材は、前記幅方向から前記加熱部材に挿入され、
前記給電部材及び前記加熱部材が、前記幅方向に渡る複数個所において凸部と凹部によって係合する加熱装置。
【請求項2】
前記給電部材は、前記接続端子を保持する端子保持部を有し、
前記端子保持部は、前記加熱部材に係合して前記加熱部材に対する前記電極部の前記長手方向の両方向への変位を制限する係合部を有する請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記給電部材は、前記接続端子を保持する端子保持部を有し、
前記端子保持部は、前記加熱部材に係合して前記加熱部材に対する前記給電部材の前記幅方向の両方向への変位を制限する係合部を有する請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記係合部は、前記厚み方向へ弾性変形可能な変形部に設けられている請求項2又は3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記給電部材は、前記接続端子を保持する端子保持部を有し、
前記接続端子は、前記加熱部材に対して前記厚み方向に付勢力を加えながら前記電極部に接触し、
前記端子保持部は、前記加熱部材の前記電極部が設けられた面とは反対の面側を支持する支持部を有する請求項1から4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記電極部は、前記基材に少なくとも2つ設けられ、
前記2つの電極部の間に、前記係合部が前記2つの電極部に接触することなく通過可能な間隔が設けられている請求項2、3、4のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項7】
前記係合部は、凸状の係合凸部であり、
前記加熱部材は、前記係合凸部と係合可能な係合凹
部を有する請求項2、3、4、6のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記係合凸部は、その突出方向に対して傾斜する傾斜面を有する請求項7に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記電極部は、前記基材の長手方向中央よりも一端側に設けられている請求項1から8のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項10】
前記加熱部材を保持する保持部材を備え、
前記加熱部材は、前記基材の長手方向中央よりも一端側で前記保持部材に対する前記長手方向の位置決めを行う位置決め部を有し、
前記電極部は、前記基材の長手方向中央よりも他端側に設けられている請求項1から9のいずれかに記載の加熱装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の加熱装置を備える画像形成装置。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載の加熱装置を備える熱圧着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、画像形成装置及び熱圧着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなどの画像形成装置に搭載される加熱装置として、用紙上のトナーを熱により定着させる定着装置や用紙上のインクを乾燥させる乾燥装置などが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(特許第6200363号公報)には、板状の基材に抵抗発熱体が設けられた加熱部材(ヒータ)を備えるヒータユニットが開示されている。この種の加熱部材においては、電極部が基材に設けられており、電極部に対して給電部材(コネクタ)が接続されることにより、抵抗発熱体へ給電可能な状態となる。また、特許文献1では、加熱部材に対して給電部材が位置ずれすることによる給電部材と電極部との接触不良を防止するために、ホルダによって加熱部材及び給電部材を保持するようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、加熱部材と給電部材とを、これらとは分離可能なホルダなどの部材を介して保持する構成では、加熱部材が熱膨張したりその後の温度低下により縮んだりした際の加熱部材と給電部材との相対的な変位を効果的に抑制することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、電極部が設けられた基材を有する加熱部材と、前記電極部に接触する接続端子を有する給電部材と、を備える加熱装置であって、前記給電部材は、前記給電部材及び前記加熱部材と分離可能に構成された部材を介さずに前記加熱部材に係合し、前記給電部材及び前記加熱部材は、前記基材の長手方向の両方向、前記基材の前記電極部が設けられている面と直交する厚み方向の両方向、前記基材の長手方向及び厚み方向に直交する幅方向の両方向、の各方向の相対的な変位が制限され、前記給電部材は、前記幅方向から前記加熱部材に挿入され、前記給電部材及び前記加熱部材が、前記幅方向に渡る複数個所において凸部と凹部によって係合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電極部及び接続端子の相対的変位を効果的に抑制できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る定着装置の概略構成図である。
【
図5】前記定着装置が備える加熱ユニットの斜視図である。
【
図9】前記ヒータにコネクタが取り付けられた状態を示す概略図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図11】第1実施形態に係るコネクタを
図10とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図12】第1実施形態に係るコネクタの平面図である。
【
図13】本発明の第1実施形態に係るヒータの斜視図である。
【
図14】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図15】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図16】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図17】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図19】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図20】ヒータがヒータホルダに保持された状態を
図19とは異なる方向から見た示す斜視図である。
【
図21】コネクタとヒータホルダが部分的に接触する例を示す図である。
【
図22】本発明の第2実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図23】第2実施形態に係るコネクタを
図22とは異なる方向から見た斜視図である。
【
図24】本発明の第2実施形態に係るヒータの斜視図である。
【
図25】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図26】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図27】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図28】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図29】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図30】本発明の第3実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図31】第3実施形態に係るコネクタの側面図である。
【
図32】本発明の第3実施形態に係るヒータの斜視図である。
【
図33】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図34】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図35】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図36】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図38】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図39】第3実施形態に係るヒータの変形例を示す図である。
【
図40】本発明の第4実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図41】本発明の第4実施形態に係るヒータの斜視図である。
【
図42】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図43】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図44】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図45】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図46】ヒータにコネクタが取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図47】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図48】本発明の第5実施形態に係るヒータにコネクタが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図49】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図50】本発明の第6実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図51】本発明の第6実施形態に係るヒータの斜視図である。
【
図52】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図53】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図54】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図55】ヒータに対するコネクタの取付方法を示す図である。
【
図56】ヒータにコネクタが取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図58】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図59】本発明の第7実施形態に係るコネクタの斜視図である。
【
図60】本発明の第7実施形態に係るヒータの斜視図である。
【
図61】ヒータにコネクタが取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図62】ヒータがヒータホルダに保持された状態を示す斜視図である。
【
図63】ヒータホルダの変形例を示す斜視図である。
【
図65】位置決め部を有するヒータの平面図である。
【
図66】位置決め部を有するヒータの他の例を示す平面図である。
【
図69】さらに別の定着装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【0010】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成部200と、転写部300と、定着部400と、記録媒体供給部500と、記録媒体排出部600と、を備えている。
【0011】
画像形成部200には、4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkと、露光装置6と、が設けられている。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、画像形成装置本体に対して着脱可能に構成されている。また、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外、基本的に同様の構成である。具体的に、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、表面に画像を担持する像担持体である感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段である帯電ローラ3と、感光体2上にトナー画像を形成する現像手段である現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段であるクリーニングブレード5と、を備えている。露光装置6は、画像情報に基づいて感光体2の帯電面を露光して静電潜像を形成する潜像形成手段である。
【0012】
転写部300には、記録媒体である用紙に画像を転写する転写装置8が設けられている。なお、画像が形成(転写)される記録媒体は、紙(普通紙、厚紙、薄紙、コート紙、ラベル紙、封筒などを含む)のほか、OHPシートなどの樹脂製のシートであってもよい。転写装置8は、中間転写ベルト11と、4つの一次転写ローラ12と、二次転写ローラ13と、を有している。中間転写ベルト11は、表面に画像を担持してその画像を用紙に転写する転写部材であり、無端状のベルト部材で構成されている。各一次転写ローラ12は、中間転写ベルト11を介してそれぞれ別の感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2との間に、中間転写ベルト11と各感光体2とが接触する一次転写ニップが形成されている。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架する複数のローラの1つに接触し、中間転写ベルト11との間に二次転写ニップを形成している。
【0013】
定着部400には、用紙を加熱する加熱装置であって、用紙を加熱することにより用紙上の画像を定着させる定着装置9が設けられている。
【0014】
記録媒体供給部500には、用紙Pを収容する給紙カセット14と、給紙カセット14から用紙Pを送り出す給紙ローラ15と、が設けられている。
【0015】
記録媒体排出部600には、用紙を画像形成装置外に排出する一対の排紙ローラ17と、排紙ローラ17によって排出された用紙を載置する排紙トレイ18と、が設けられている。
【0016】
次に、
図1を参照しつつ本実施形態に係る画像形成装置100の印刷動作について説明する。
【0017】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkの感光体2、及び中間転写ベルト11が回転を開始する。また、給紙ローラ15が回転することにより、給紙カセット14から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、一対のタイミングローラ16に接触して一旦停止される。
【0018】
各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkでは、まず、帯電ローラ3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント画像情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面(帯電面)に露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して各感光体2の表面に静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達すると、回転する中間転写ベルト11上に順次重なり合うように転写される。かくして、中間転写ベルト11上にフルカラーのトナー画像が形成される。また、感光体2から中間転写ベルト11へトナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーやその他の異物はクリーニングブレード5によって除去される。さらに、クリーニングされた各感光体2の表面に対して、保護剤供給装置7によって掻き取られた像担持体保護剤が供給され、感光体2は次の静電潜像の形成に備えられる。
【0019】
中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送され、タイミングローラ16によって搬送されてきた用紙P上に転写される。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出され、一連の印刷動作が完了する。
【0020】
以上の印刷動作の説明は、フルカラー画像を形成するときの動作についてであるが、4つの作像ユニットのうち、いずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの作像ユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0021】
続いて、本実施形態に係る定着装置9の構成について説明する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、温度センサ19と、を備えている。
【0023】
定着ベルト20は、回転可能に設けられた第1回転部材であって、用紙Pの未定着トナー担持面側(画像形成面側)に配置されて未定着トナーを用紙Pに定着させる定着部材である。定着ベルト20は、例えば、外径が25mmで厚みが40~120μmの筒状基材を有する無端状のベルト部材で構成される。基材の材料は、ポリイミドのほか、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル、SUSなどの金属材料であってもよい。また、耐久性を高めると共に離型性を確保するため、基材の外周面に、PFAやPTFEなどのフッ素樹脂から成る離型層が設けられてもよい。また、基材と離型層との間に、ゴムなどから成る弾性層が設けられてもよい。さらに、基材の内周面に、ポリイミドやPTFEなどから成る摺動層が設けられてもよい。
【0024】
加圧ローラ21は、定着ベルト20とは別の回転可能な第2回転部材であって、定着ベルト20の外周面に対向するように配置された対向部材である。また、加圧ローラ21は、定着ベルト20の外周面に圧接されて、定着ベルト20との間にニップ部Nを形成する加圧部材でもある。加圧ローラ21は、例えば、外径が25mmであって、鉄製の芯金と、この芯金の外周面に設けられたシリコーンゴム製の弾性層と、弾性層の外周面に設けられたフッ素樹脂製の離型層とを有するローラなどにより構成される。
【0025】
ヒータ22は、定着ベルト20の内側に配置され、定着ベルト20や、定着ベルト20を介して用紙を加熱する加熱部材である。本実施形態では、ヒータ22が、板状の基材50と、基材50上に設けられた第1絶縁層51と、第1絶縁層51上に設けられた導体層52と、導体層52を被覆する第2絶縁層53と、により構成されている。導体層52は、発熱部60を有している。
【0026】
基材50は、例えば、ステンレス(SUS)や鉄、銅、銅合金、アルミニウム等の金属材料で構成される。また、基材50の材料として、金属材料のほか、アルミナ、窒化アルミニウム、ベリリアなどの種々のセラミック、あるいはガラスなどを用いることも可能である。基材50にセラミックなどの絶縁材料を用いた場合は、基材50と導体層52との間の第1絶縁層51を省略することが可能である。一方、金属材料は、急速加熱に対する耐久性に優れ、加工もしやすいため、低コスト化を図るのに好適である。金属材料の中でも、特にアルミニウムや銅は熱伝導性が高く、温度ムラが発生しにくい点で好ましい。また、ステンレスはこれらに比べて安価に製造できる利点がある。
【0027】
各絶縁層51,53は、例えば、耐熱性ガラスなどの絶縁性を有する材料で構成される。また、これらの材料として、セラミックあるいはポリイミドなどを用いてもよい。また、基材50の第1絶縁層51や第2絶縁層53が設けられる面とは反対側の面に、別途絶縁層が設けられてもよい。
【0028】
本実施形態では、発熱部60が基材50よりもニップ部N側に配置されているが、これとは反対に、基材50が発熱部60よりもニップ部N側に配置されてもよい。ただしその場合は、発熱部60の熱が基材50を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材50は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。
【0029】
また、本実施形態では、ヒータ22から定着ベルト20への熱伝達効率を高めるため、ヒータ22が定着ベルト20の内周面に対して直接接触するように配置されている。また、これに限らず、ヒータ22は、定着ベルト20に対して、非接触、あるいは低摩擦シートなどを介して間接的に接触するように配置されてもよい。また、定着ベルト20に対するヒータ22の接触箇所は、定着ベルト20の外周面であってもよい。ただし、定着ベルト20の外周面の傷付きによる定着品質の低下を回避するため、ヒータ22が接触する面は、定着ベルト20の内周面であることが望ましい。
【0030】
ヒータホルダ23は、定着ベルト20の内側でヒータ22を保持する保持部材である。ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で構成されることが望ましい。特に、ヒータホルダ23が、LCPやPEEKなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で構成される場合は、ヒータホルダ23の耐熱性を確保しつつ、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制されるので、効率的に定着ベルト20を加熱することが可能である。
【0031】
ステー24は、定着ベルト20の内側に配置される補強部材である。ステー24によってヒータホルダ23のニップ部N側の面とは反対の面が支持されることにより、ヒータホルダ23が加圧ローラ21の加圧力によって撓むのが抑制される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に均一な幅のニップ部Nが形成される。ステー24は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0032】
温度センサ19は、ヒータ22の温度を検知する温度検知手段である。温度センサ19の検知結果に基づいてヒータ22の出力が制御されることにより、定着ベルト20の温度が所望の温度(定着温度)となるように維持される。温度センサ19は、接触型、非接触型のいずれでもよい。例えば、温度センサ19として、サーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなどの公知の温度センサを適用可能である。
【0033】
本実施形態に係る定着装置9においては、印刷動作が開始されると、ヒータ22に電力が供給されることにより、発熱部60が発熱し、定着ベルト20が加熱される。また、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、
図2に示すように、未定着トナー画像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(ニップ部N)に搬送されることにより、未定着トナーが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。
【0034】
図3は、本実施形態に係る定着装置9の斜視図、
図4は、その分解斜視図である。
【0035】
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、矩形の枠状に形成された装置フレーム40を備えている。装置フレーム40は、一対の側壁部28及び前壁部27を一体に有する第1装置フレーム25と、後壁部29を有する第2装置フレーム26と、によって構成されている。第1装置フレーム25と第2装置フレーム26は、一対の側壁部28に設けられた複数の係合突起28aが後壁部29に設けられた複数の係合孔29aに係合することにより組み付けられる。
【0036】
定着ベルト20や加圧ローラ21は、一対の側壁部28によって支持される。このため、各側壁部28には、加圧ローラ21の回転軸などを挿通させるための挿通溝28bが設けられている。挿通溝28bは、その一端側(後壁部29側)で開口し、これとは反対側の端では開口しない突き当て部が形成されている。この突き当て部には、加圧ローラ21の回転軸を回転可能に支持する軸受30が設けられている。加圧ローラ21が各側壁部28によって支持された状態では、加圧ローラ21の軸方向の一端に設けられた駆動伝達部材としての駆動伝達ギヤ31が、側壁部28よりも外側に露出した状態で配置される。これにより、定着装置9が画像形成装置本体に搭載されると、駆動伝達ギヤ31が画像形成装置本体に設けられているギヤに連結され、駆動源からの駆動力を伝達可能な状態となる。また、駆動伝達ギヤ31に代えて、駆動伝達ベルトを張架するプーリやカップリング機構などの駆動伝達部材を用いてもよい。
【0037】
定着ベルト20の長手方向の両端には、定着ベルト20やステー24などを支持する一対の支持部材32が設けられている。各支持部材32には、ガイド溝32aが形成されている。
図4に示すように、一対の支持部材32と、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23、及びヒータ22を組み付けた状態で、各支持部材32のガイド溝32aを各側壁部28の挿通溝28bの縁に沿わせながら各支持部材32を各側壁部28に組み付けることにより、定着ベルト20、ステー24、ヒータホルダ23及びヒータ22が、各側壁部28に支持される。また、各支持部材32が、後壁部29との間に設けられた付勢部材としての一対のバネ33によって付勢されることにより、定着ベルト20が加圧ローラ21へ加圧され、ニップ部が形成される。
【0038】
また、後壁部29には、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めを行う位置決め部としての孔部29bが設けられている。一方、画像形成装置本体には、位置決め部としての突起101(
図4参照)が設けられている。この突起101が、定着装置9の孔部29bに対して挿入されることで、突起101と孔部29bが嵌合し、画像形成装置本体に対する定着装置本体の位置決めがなされる。なお、孔部29bが設けられる位置は、後壁部29の長手方向の中央よりもいずれか一方の端寄りの位置であることが好ましい。このような位置に孔部29bが設けられることにより、孔部29bが設けられない端側では、温度変化に伴う長手方向の伸縮が許容され、装置フレーム40の歪を抑制することが可能である。
【0039】
図5は、ヒータ22などを一対の支持部材32によって支持した加熱ユニットの斜視図、
図6は、その加熱ユニットの分解斜視図である。
【0040】
図5に示すように、ヒータ22及びヒータホルダ23は、図の左右方向へ長く伸びる長手状の部材である。ヒータ22及びヒータホルダ23は、定着装置に組み込まれた状態で、定着ベルト20の長手方向又は加圧ローラ21の軸方向へ長手状に配置される。また、同様にステー24も、定着ベルト20の長手方向又は加圧ローラ21の軸方向へ長手状に配置される。
【0041】
図5及び
図6に示すように、ヒータホルダ23には、ヒータ22を収容するための矩形の収容凹部23aが設けられている。収容凹部23aは、ヒータ22とほぼ同等の形状及びサイズに形成されている。ただし、収容凹部23aの長手方向寸法L2はヒータ22の長手方向寸法L1よりも若干長く設定されている。このため、熱膨張によってヒータ22がその長手方向に伸びても、ヒータ22と収容凹部23aとの干渉を回避できる。
【0042】
一対の支持部材32は、定着ベルト20の内側に挿入されて定着ベルト20を支持するC字状のベルト支持部32bと、定着ベルト20の端面に接触して定着ベルト20の長手方向の移動(片寄り)を規制するフランジ状のベルト規制部32cと、ヒータホルダ23及びステー24の長手方向の両端近傍部分が挿入されてこれらを支持する支持凹部32dと、を有している。定着ベルト20は、その長手方向の両端にベルト支持部32bが挿入されることで、ベルト非回転時において基本的に周方向(ベルト回転方向)の張力が作用しない、いわゆるフリーベルト方式で支持される。
【0043】
また、
図5及び
図6に示すように、ヒータホルダ23の長手方向の中央よりも一端側には、位置決め部としての位置決め凹部23eが設けられている。この位置決め凹部23eに対して、
図5及び
図6における左側の支持部材32の嵌合部32eが嵌合することにより、ヒータホルダ23と支持部材32との位置決めがなされる。一方、
図5及び
図6における右側の支持部材32には、嵌合部32eは設けられておらず、ヒータホルダ23との長手方向の位置決めはされない。このように、支持部材32に対するヒータホルダ23の位置決めをヒータホルダ23の長手方向の片側のみとすることで、温度変化に伴うヒータホルダ23の長手方向の伸縮が許容される。
【0044】
また、
図6に示すように、ステー24の長手方向の両端近傍部分には、各支持部材32に対するステー24の移動を規制する段差部24aが設けられている。各段差部24aは支持部材32に突き当たることで支持部材32に対するステー24の長手方向の移動を規制する。ただし、これら段差部24aのうち少なくとも一方は、支持部材32に対して隙間(ガタ)を介して配置される。このように、少なくとも一方の段差部24aが支持部材32に対して隙間を介して配置されることにより、温度変化に伴うステー24の伸縮が許容される。
【0045】
図7は、本実施形態に係るヒータ22の平面図、
図8は、その分解斜視図である。
【0046】
図8に示すように、第1絶縁層51を介してヒータ22の基材50上に設けられる導体層52は、発熱部60を構成する複数の抵抗発熱体59A~59Gのほか、複数の電極部61A~61Cと、複数の給電線(導電部)62A~62Dと、を有している。
図7に示すように、複数の抵抗発熱体59A~59Gの全体及び複数の給電線62A~62Dの大部分は、第2絶縁層53によって覆われ、絶縁性が確保されている。一方、複数の電極部61A~61Cは、定着装置9が備える後述のコネクタが接続されるため、第2絶縁層53によってほとんど覆われておらず露出した状態となっている。
【0047】
各抵抗発熱体59A~59Gは、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷などにより基材50に塗工し、その後、当該基材50を焼成することによって形成することができる。また、各抵抗発熱体59A~59Gの材料として、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)などの抵抗材料を用いてもよい。
【0048】
各電極部61A~61C及び各給電線62A~62Dは、抵抗発熱体59A~59Gよりも小さい抵抗値の導体で構成されている。例えば、各電極部61A~61C及び各給電線62A~62Dは、銀(Ag)あるいは銀パラジウム(AgPd)などの材料を基材50上にスクリーン印刷することによって形成される。
【0049】
本実施形態では、各抵抗発熱体59A~59Gが、基材50の長手方向Zに渡って互いに間隔をあけて一列に並んで配置されている。このため、隣り合う抵抗発熱体59A~59G同士の間は絶縁領域(第2絶縁層53)が介在している。なお、本明細書中の「基材の長手方向」及び「ヒータの長手方向」は、「定着ベルトの長手方向」及び「加圧ローラの軸方向」と同じ方向を意味する。
【0050】
3つの電極部61A~61Cのうち、2つの電極部61A,61Cは、基材50の長手方向中央cよりも長手方向Zの一端側(
図7における左側)に配置され、残りの1つの電極部61Bは、基材50の長手方向中央cよりも長手方向Zの他端側(
図7における右側)に配置されている。各抵抗発熱体59A~59Gは、複数の電極部61A~61Cのうちのいずれか2つに電気的に接続されている。詳しくは、7つの抵抗発熱体59A~59Gのうち、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fは、第1給電線62Aを介して第1電極部61Aに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。一方、両端の各抵抗発熱体59A,59Gは、第3給電線62C又は第4給電線62Dを介して第3電極部61Cに並列に接続されると共に、第2給電線62Bを介して第2電極部61Bに並列に接続されている。
【0051】
このような接続構造とすることで、本実施形態では、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fで構成される第1発熱部と、両端の各抵抗発熱体59A,59Gで構成される第2発熱部とを、互いに独立して発熱制御することが可能である。具体的に、第1電極部61A及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61A,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59Fが通電し、第1発熱部のみが発熱する。一方、第3電極部61C及び第2電極部61Bに電圧を印加して両電極部61C,61B間に電位差を生じさせた場合は、両端の各抵抗発熱体59A,59Gが通電するため、第2の発熱部のみが発熱する。また、全ての電極部61A~61Cに電圧を印加して第1電極部61Aと第2電極部61の間及び第3電極部61Cと第2電極部61Bの間でそれぞれ電位差を生じさせた場合は、全ての抵抗発熱体59A~59Gが通電するため、第1の発熱部及び第2の発熱部の両方が発熱する。例えば、A4サイズ(通紙幅:210mm)以下の比較的小さい幅サイズの用紙を通紙する場合は、両端以外の各抵抗発熱体59B~59F(第1の発熱部)のみを発熱させ、A3サイズ(通紙幅:297mm)以上の比較的大きい幅サイズの用紙を通紙する場合は、全ての抵抗発熱体59A~59G(第1の発熱部及び第2の発熱部)を発熱させることで、用紙幅に応じた発熱領域とすることが可能である。
【0052】
図9は、ヒータ22に給電部材としての一対のコネクタ70が取り付けられた状態を示す概略図である。
【0053】
図9に示すように、ヒータ22の長手方向両端側に、一対のコネクタ70が取り付けられることにより、電源部35からヒータ22へ給電可能な状態となる。ヒータ22の各端部側にコネクタ70が取り付けられると、各コネクタ70に設けられている接続端子71がヒータ22の電極部61に接触することにより、接続端子71と電極部61とが電気的に接続される。なお、コネクタ70の接続端子71は、対応する電極部61の数と同じ数だけ設けられており、
図9における左側のコネクタ70は2つの接続端子71を有し、右側のコネクタ70は1つの接続端子71を有している。また、各接続端子71には、電源部35に接続された給電用のハーネス(配線)73が接続されている。このため、各コネクタ70の接続端子71が電極部61に接続されると、電源部35からヒータ22へ給電可能な状態となる。
【0054】
続いて、コネクタ70の構成についてさらに詳しく説明する。
【0055】
図10は、本発明の第1実施形態に係るコネクタ70の斜視部、
図11は、当該コネクタ70を
図10とは異なる方向から見た斜視図、
図12は、当該コネクタ70の平面図である。
【0056】
図10に示すように、本実施形態に係るコネクタ70は、接続端子71と、接続端子71を保持する端子保持部としての樹脂製のハウジング72と、を有している。接続端子71は、板バネなどの導電性を有し弾性変形可能な導電性弾性部材で構成されている。また、接続端子71の少なくとも一部はハウジング72から露出している。接続端子71の露出する部分には、ヒータ22の電極部61に対して接触する三角形状の接触部71aが設けられている。
【0057】
ハウジング72は、ベース部74と、ベース部74から同じ方向に伸びる第1アーム部75及び第2アーム部76と、を有している。第1アーム部75は、2本のスリット77を介して三分割されている(
図11、
図12参照)。三分割されて形成された3つの分割アーム部75A~75Cのうち、両端の各分割アーム部75A,75Cには、それぞれ接続端子71が設けられている(
図12参照)。なお、接続端子71を1つのみ有するもう一方のコネクタ70においては、両端の分割アーム部75A,75Cのうち、接続端子71が設けられない方の分割アーム部を省略しても構わない。
【0058】
図10に示すように、中央の分割アーム部75Bの先端には、ヒータ22に係合する係合部としての係合爪部78が設けられている。また、ベース部74には、ヒータ22に係合する係合部としての係合凸部79が設けられている。係合凸部79は、3つの分割アーム部75A~75Cのうち、中央の分割アーム部75Bとこれに対向する第2アーム部76との間で、ベース部74から突出している。
【0059】
図13は、本発明の第1実施形態に係るヒータ22の斜視図である。
【0060】
図13に示すように、本実施形態に係るヒータ22の長手方向一端側には、上記コネクタ70の係合凸部79と係合する被係合部としての係合凹部41が形成されている。ここで、ヒータ22において、基材50の電極部61が設けられている面と直交する方向を「厚み方向Y」とし、基材50の長手方向Z及び厚み方向Yに直交する方向を「幅方向X」とすると、係合凹部41は基材50の幅方向Xの一端(一方の縁)に設けられている。
【0061】
続いて、2つの接続端子71を有するコネクタ70を例に、ヒータ22に対するコネクタ70の取付方法について説明する。なお、1つの接続端子71を有するコネクタ70の取付方法については、2つの接続端子71を有するコネクタ70と基本的に同様であるので、ここでは説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係るヒータ22に対してコネクタ70を取り付けるには、まず、
図14に示すように、コネクタ70を、ヒータ22の長手方向一端側のコネクタ取付部位に対して幅方向Xに接近させる。このとき、ヒータ22の係合凹部41は、コネクタ70側を向くように配置する。
【0063】
そして、
図15に示すように、コネクタ70をヒータ22に対して接近させると、係合爪部78の先端側に設けられた傾斜面78aが、ヒータ22の幅方向Xの一端面22a(コネクタ取付方向の手前側の端面)又は係合凹部41に接触することにより、係合爪部78が、分割アーム部75Bの弾性変形を伴いながら
図15における上側へ押し上げられる。このように、本実施形態では、係合爪部78を有する分割アーム部75Bがヒータ22の厚み方向Yに弾性変形可能な変形部として機能することにより、係合爪部78は円滑に押し上げられヒータ22の電極部61が設けられた側の面に円滑に乗り上げられる。
【0064】
そして、
図16に示すように、コネクタ70の係合爪部78は、ヒータ22に沿って摺動しつつ2つの電極部61の間を通過する。このとき、係合爪部78が電極部61に接触して傷付けないように、2つの電極部61の間には、係合爪部78が各電極部61に接触することなく通過可能な間隔が設けられている。すなわち、
図18に示すように、各電極部61同士の間隔Dは、ヒータ22に対して係合爪部78が接触する部分の幅Wよりも大きい間隔に設定されている。
【0065】
そして、
図17に示すように、係合爪部78がヒータ22の幅方向Xの他端面22b(コネクタ取付方向の奥側の端面)に到達すると、中央の分割アーム部75Bの弾性復帰によって係合爪部78が図の下側へ押し下げられ、係合爪部78がヒータ22の幅方向Xの他端面22bに対して係合可能な状態となる。すなわち、係合爪部78が、ヒータ22の幅方向Xの他端面22bに対して接触した状態か、あるいは僅かな隙間を介して対向した状態となる。これにより、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が幅方向Xの一方向に制限され得る状態となり、ヒータ22に対するコネクタ70の取付が完了する。
【0066】
また、コネクタ70の取付が完了した状態では、
図17に示すように、コネクタ70の係合凸部79がヒータ22の係合凹部41内に挿入されることにより、係合凸部79と係合凹部41とが幅方向Xの他方向(上記幅方向Xの一方向とは反対方向)と長手方向Zの両方向に係合可能な状態となる。これにより、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が幅方向Xの他方向と長手方向Zの両方向で制限され得る状態となる。
【0067】
さらに、
図17に示す取付完了状態では、コネクタ70の各接続端子71がヒータ22の対応する各電極部61に弾性的に接触(圧接)することにより、各接続端子71と各電極部61とが電気的に接続される。また、この状態で、各接続端子71からヒータ22へ厚み方向Yの付勢力が加えられることにより、ヒータ22は、第2アーム部76へ押し付けられる。そして、第2アーム部76は、各接続端子71からの付勢力を受けて、ヒータ22の電極部61が設けられた面とは反対の面側を支持する支持部として機能する。これにより、ヒータ22は、第2アーム部76と各接続端子71とによって厚み方向Yに挟持された状態となり、厚み方向Yの両方向におけるヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が制限される。
【0068】
このように、本実施形態では、ヒータ22にコネクタ70が取り付けられた状態で、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限されるため、ヒータ22に対するコネクタ70の位置ずれを高度に防止することが可能である。また、コネクタ70が、コネクタ70及びヒータ22と分離可能に構成された部材を介さずにヒータ22に係合するため、ヒータ22が発熱により熱膨張したり、その後の温度低下により縮んだりしても、ヒータ22の変位に対するコネクタ70の追従がこれらの間に介在する部材の影響を受けることなく良好に行われる。このように、本実施形態に係る構成によれば、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を効果的に抑制できるので、接続端子71の位置ずれ(摺動)に伴う電極部61の摩耗を効果的に軽減できるようになり、電極部61と接続端子71との導通性を長期に亘って良好に維持することが可能となる。
【0069】
図19及び
図20は、本実施形態に係るヒータ22にコネクタ70が取り付けられた状態で、さらにヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態を示す斜視図である。
【0070】
図19及び
図20に示すように、本実施形態では、ヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態で、コネクタ70はヒータホルダ23に対して係合しないように構成されている。すなわち、本実施形態では、ヒータホルダ23におけるコネクタ70が配置される部分に凹部63,64が形成され、ヒータホルダ23とコネクタ70との係合が回避されるように構成されている。これにより、ヒータ22が熱膨張したり収縮したりしても、コネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することができる。また、本実施形態では、ヒータホルダ23に設けられた凹部63,64が、ヒータ22に対してコネクタ70が取り付けられる側(
図19における手前側)で開口しているので、先にヒータ22をヒータホルダ23によって保持してから、ヒータ22に対してコネクタ70を取り付けることも可能である。
【0071】
また、
図19に示すように、ヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態で、コネクタ70とヒータホルダ23との互い対向する面同士の隙間は、ヒータ22が非発熱状態(例えば、常温の状態)から所定の発熱状態(例えば定着温度に達した状態)になるまでの熱膨張に伴う最大変位よりも大きいことが好ましい。特に、熱膨張に伴うヒータ22の変位は長手方向Zに顕著となるため、
図20に示すコネクタ70のベース部74とこれが収容される凹部63との長手方向Zの対向面同士の隙間G1、及び、コネクタ70の第2アーム部76とこれが収容される凹部64との長手方向Zの対向面同士の隙間G2は、ヒータ22が非発熱状態から所定の発熱状態になるまでの熱膨張に伴う最大変位よりも大きいことが好ましい。これにより、ヒータ22の温度変化に伴う変位が生じても、コネクタ70がヒータホルダ23からの干渉を受けることなくヒータ22の変位により確実に追従できるようになる。また、このような隙間を介して配置されるヒータホルダ23とコネクタ70の構成は、ヒータホルダ23とコネクタ70の関係に限らず、ヒータホルダ23以外の部材(ヒータ22及びコネクタ70以外の他部材)とコネクタ70の関係においても同様に成立していることが好ましい。
【0072】
このように、コネクタ70は、ヒータホルダ23などの他部材に対して接触しないように配置されることが好ましいが、ヒータ22の変位に対するコネクタ70の追従が拘束されない程度であれば、コネクタ70と他部材が部分的に接触してもよい。例えば、
図21に示すように、コネクタ70の第2アーム部76の先端面76bとこれに対向するヒータホルダ23の対向面64aとが接触していたとしても、ヒータホルダ23に対するコネクタ70の相対的な変位が制限されなければよい。この場合、ヒータ22の熱膨張に伴ってコネクタ70が長手方向Zへ変位しても、第2アーム部76の先端面76bは、ヒータホルダ23の対向面64aに沿って長手方向Zに摺動するため、コネクタ70はヒータホルダ23から大きな抵抗を受けることはなく、ヒータ22の熱膨張に伴う変位に追従することが可能である。
【0073】
続いて、上述の第1実施形態とは異なる実施形態について説明する。なお、以下の説明では、主に上述の実施形態とは異なる部分について説明し、その他の部分については基本的に上述の実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0074】
図22及び
図23は、本発明の第2実施形態に係るコネクタ70をそれぞれ異なる方向から見た斜視図である。
【0075】
図22及び
図23に示すように、第2実施形態に係るコネクタ70は、第2アーム部76を2つ有している点で、上述の実施形態とは異なる。これらの第2アーム部76は、第1アーム部75の両端の各分割アーム部75Bに対向するように配置されている。
【0076】
図24は、本発明の第2実施形態に係るヒータ22の斜視図である。
【0077】
図24に示すように、第2実施形態に係るヒータ22は、基材50の幅方向Xの両端にそれぞれ被係合部としての係合凹部41,42が設けられている点で、上述の実施形態とは異なる。それ以外は、基本的に上述の実施形態と同様である。
【0078】
このような第2実施形態において、ヒータ22に対してコネクタ70を取り付けるには、
図25に示すように、上述の実施形態と同様、コネクタ70を、ヒータ22に対して幅方向Xに接近させればよい。
【0079】
図26に示すように、コネクタ70をヒータ22に対して接近させると、コネクタ70の係合爪部78が、ヒータ22の幅方向Xの一端面22a(コネクタ取付方向の手前側の端面)又は係合凹部41に接触することにより、中央の分割アーム部75Bの弾性変形を伴いつつ、係合爪部78が押し上げられる。
【0080】
そして、
図27に示すように、係合爪部78は、ヒータ22の電極部61が設けられた側の面上を摺動し、さらに、
図28に示すように、係合爪部78がヒータ22の幅方向Xの他端面22b(コネクタ取付方向の奥側の端面)に設けられた係合凹部42に到達すると、中央の分割アーム部75Bの弾性復帰によって係合爪部78が押し下げられる。これにより、係合爪部78が係合凹部42に対して幅方向Xの一方向に加え長手方向Zの両方向に係合可能な状態となり、ヒータ22に対するコネクタ70の取付が完了する。
【0081】
また、コネクタ70の取付が完了した状態では、
図28に示すように、係合凸部79が係合凹部41に挿入されて、互いに係合可能な状態となると共に、接続端子71と第2アーム部76とによってヒータ22が厚み方向Yに挟持された状態となる。これにより、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限される。
【0082】
このように、第2実施形態においても、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限されることにより、ヒータ22に対するコネクタ70の位置ずれを高度に防止することができる。また、第2実施形態においても、コネクタ70が、コネクタ70及びヒータ22と分離可能に構成された部材を介さずにヒータ22に係合するため、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を効果的に抑制でき、電極部61の摩耗を効果的に軽減できるようになる。
【0083】
また、第2実施形態においては、コネクタ70の係合凸部79及び係合爪部78が、ヒータ22の各係合凹部41,42に係合することにより、ヒータ22の幅方向Xの両側でヒータ22に対するコネクタ70の長手方向Zの位置ずれを高度に抑制することが可能である。このため、ヒータ22の幅方向Xの片側でコネクタ70が位置ずれすることによるコネクタ70のねじれを抑制でき、コネクタ70に対するヒータ22の位置精度をより高度に維持することができるようになる。
【0084】
さらに、第2実施形態においては、2つの第2アーム部76によってヒータ22を支持することができ、各第2アーム部76は、ヒータ22を付勢する各接続端子71と対向する位置でヒータ22を支持するので、ヒータ22の姿勢が安定し、電極部61と接続端子71との接触状態をより確実に維持できるようになる。
【0085】
図29は、第2実施形態に係るヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態を示す図である。
【0086】
このように、第2実施形態においても、ヒータホルダ23に、コネクタ70との干渉を回避するための凹部63が設けられている。すなわち、ヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態では、コネクタ70がヒータホルダ23に対して係合しないように構成されている。このため、第2実施形態においても、コネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することが可能である。
【0087】
図30は、本発明の第3実施形態に係るコネクタ70の斜視図、
図31は、第3実施形態に係るコネクタ70の側面図である。
【0088】
図30及び
図31に示すように、第3実施形態に係るコネクタ70は、中央の分割アーム部75Bの先端に、上述の係合爪部78に代えて、係合部としての円錐台状の係合凸部80が設けられている。係合凸部80は、その先端に向かって(分割アーム部75Bから突出する方向に向かって)テーパ状に縮径する傾斜面80aを有している。なお、傾斜面80aは、円錐状の面に限らず、四角錘などの平面状の傾斜面であってもよい。
【0089】
また、
図30及び
図31に示すように、第3実施形態に係るコネクタ70においては、第1アーム部75と第2アーム部76との間に、ヒータ22を押える押える押え部81が設けられている。また、一対の第2アーム部76には、ヒータ22を支持する支持部としての支持突起76aが設けられている。
【0090】
図32は、本発明の第3実施形態に係るヒータ22の斜視図である。
【0091】
図32に示すように、第3実施形態に係るヒータ22は、上述の第2実施形態に係るヒータ22(
図24参照)と同様の構成であり、基材50の幅方向Xの両端にそれぞれ被係合部としての係合凹部41,42が設けられている。
【0092】
このような第3実施形態において、ヒータ22に対してコネクタ70を取り付けるには、
図33に示すように、上述の実施形態と同様、コネクタ70を、ヒータ22に対して幅方向Xに接近させればよい。
【0093】
図34に示すように、コネクタ70をヒータ22に対して接近させると、コネクタ70の係合凸部80が、ヒータ22の幅方向Xの一端面22a(コネクタ取付方向の手前側の端面)又は係合凹部41に接触することにより、中央の分割アーム部75Bの弾性変形を伴いつつ、係合爪部78が押し上げられる。また、このとき、係合凸部80はテーパ状の傾斜面80aを有していることにより、係合凸部80は円滑に押し上げられる。
【0094】
そして、
図35に示すように、係合凸部80は、ヒータ22の電極部61が設けられた側の面上を摺動し、さらに、
図36に示すように、係合凸部80がヒータ22の幅方向Xの他端面22b(コネクタ取付方向の奥側の端面)に設けられた係合凹部42に到達すると、中央の分割アーム部75Bの弾性復帰によって係合凸部80が押し下げられる。これにより、係合凸部80は係合凹部42の縁に係合し、ヒータ22に対するコネクタ70の取付が完了する。
【0095】
コネクタ70の取付が完了した状態では、
図36に示すように、係合凸部80が係合凹部42の縁に係合していることにより、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、幅方向Xの一方向と長手方向Zの両方向で制限される。また、係合凸部80は、その先端側にテーパ状の傾斜面80aを有しているため、係合凹部42に対する係合凸部80の接触範囲を広く確保することができ、係合状態を安定させることが可能である。なお、係合凹部42の形状は、
図36に示すような矩形である以外に、円形など他の形状であってもよい。また、係合凸部80に傾斜面80aを設けず、代わりに、係合凹部42の縁に係合凸部80と係合する傾斜面を設けてもよい。
【0096】
また、
図36に示すように、コネクタ70の取付が完了した状態では、上述の実施形態と同様、もう一方の係合凸部79が対応する係合凹部41に挿入されて係合可能な状態になると共に、ヒータ22が接続端子71と第2アーム部76とによって厚み方向Yに挟持された状態となる。これにより、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限される。
【0097】
このように、第3実施形態においても、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限されるため、ヒータ22に対するコネクタ70の位置ずれを効果的に抑制することが可能である。また、コネクタ70は、上述の実施形態と同様に、コネクタ70及びヒータ22と分離可能に構成された部材を介さずにヒータ22に係合するため、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を効果的に抑制でき、電極部61の摩耗を軽減できるようになる。
【0098】
また、第3実施形態では、上述の作用効果に加え、
図36に示す取付完了状態で、コネクタ70の押え部81がヒータ22の電極部61が設けられた面側に接触することにより、ヒータ22を安定して保持することが可能である。さらに、第3実施形態では、各第2アーム部76の支持突起76aが、各接続端子71に対応する箇所(厚み方向Yに対向する位置)でヒータ22を保持するため、ヒータ22の姿勢をより安定させることが可能である。
【0099】
また、第3実施形態において、コネクタ70の係合凸部80は、上述の係合爪部78と同様、ヒータ22に沿って摺動する際に電極部61に接触しないことが好ましい。そのため、本実施形態では、
図37に示すように、2つの電極部61の間に、ヒータ22に対して係合凸部80が接触する部分の幅Wよりも大きい間隔Dが設けられている。また、同様の理由から、コネクタ取付方向(
図37中の矢印方向)の奥側に設けられた係合凹部42は、各電極部61とは幅方向Xに重ならない領域(
図37中のハッチング部以外の領域)に設けられることが好ましい。
【0100】
また、
図38は、第3実施形態に係るヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態を示す図である。
【0101】
このように、第3実施形態においても、ヒータホルダ23に、コネクタ70との干渉を回避するための凹部63が設けられているため、コネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することが可能である。
【0102】
図39は、本発明の第3実施形態に係るヒータ22の変形例を示す図である。
【0103】
図39に示す例のように、係合凸部80と係合するヒータ22の被係合部は、上述のような、ヒータ22の幅方向Xの端面22bに設けられた係合凹部42(
図24参照)ではなく、当該端面22bから幅方向Xに離れた箇所に設けられた係合孔部43であってもよい。この場合、係合孔部43に係合凸部80が係合することにより、幅方向Xの両方向、及び長手方向Zの両方向において、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を制限することができる。なお、係合孔部43は、ヒータ22を厚み方向Yに貫通する貫通孔でもよいし、底部を有する貫通しない孔(凹部)であってもよい。
【0104】
図40は、本発明の第4実施形態に係るコネクタ70の斜視図である。
【0105】
図40に示すように、第4実施形態に係るコネクタ70においては、第1アーム部75の中央の分割アーム部75Bのほか、これに対向する第2アーム部76の各先端側に、それぞれ、係合部としての円錐台状の係合凸部80,82が設けられている。一方で、本実施形態においては、上述の各実施形態に設けられている係合凸部79(ベース部74から突出する係合凸部)は省略されている。
【0106】
図41は、本発明の第4実施形態に係るヒータ22の斜視図である。
【0107】
図41に示すように、第4実施形態に係るヒータ22においては、被係合部としての係合孔部43が厚み方向Yに貫通するように設けられている。なお、ヒータ22の幅方向Xの両端には、上述の係合凹部41,42は設けられていない。
【0108】
このような第4実施形態において、ヒータ22に対してコネクタ70を取り付けるには、
図42に示すように、上述の実施形態と同様、コネクタ70を、ヒータ22に対して幅方向Xに接近させればよい。
【0109】
図43に示すように、コネクタ70をヒータ22に対して接近させると、コネクタ70の一対の係合凸部80、82が、ヒータ22の幅方向Xの一端面22a(コネクタ取付方向の手前側の端面)に接触することにより、中央の分割アーム部75B及び第2アーム部76の弾性変形を伴いつつ、一方の係合凸部80は押し上げられ、他方の係合凸部82は押し下げられる。また、このとき、各係合凸部80,82はテーパ状の傾斜面80a,82aを有していることにより、各係合凸部80,82の押し上げ又は押し下げが円滑に行われる。
【0110】
そして、
図44に示すように、各係合凸部80,82は、ヒータ22の電極部61側の面及びこれとは反対側の面に沿って摺動し、さらに、
図45に示すように、各係合凸部80、82がヒータ22の係合孔部43に到達すると、中央の分割アーム部75B及び第2アーム部76の弾性復帰によって各係合凸部80、82が係合孔部43の縁に係合する。すなわち、
図46に示すように、係合孔部43は厚み方向Yの両側でそれぞれ開口しているので、各係合凸部80,82は係合孔部43の各開口部の縁に係合する。なお、係合孔部43は、ヒータ22を厚み方向Yに貫通する貫通孔である場合に限らず、底部を有する孔(凹部)であってもよい。
【0111】
また、各係合凸部80,82が係合孔部43に係合した状態では、ヒータ22が、各係合凸部80,82によって厚み方向Yに挟持される。これにより、ヒータ22に対するコネクタ70の取付が完了し、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、幅方向Xの両方向、長手方向Zの両方向、及び厚み方向Yの両方向で制限される。また、本実施形態では、
図46に示すように、ヒータ22の幅方向Xの一端面22aがコネクタ70のベース部74に接触していることにより、ヒータ22の姿勢が安定する。
【0112】
このように、第4実施形態では、一対の係合凸部80,82が係合孔部43に係合すると共にヒータ22を挟持することにより、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を、幅方向Xの両方向、長手方向Zの両方向、及び厚み方向Yの両方向で制限することができる。このため、第4実施形態においても、ヒータ22に対するコネクタ70の位置ずれを高度に防止することが可能である。また、コネクタ70は、上述の実施形態と同様に、コネクタ70及びヒータ22と分離可能に構成された部材を介さずにヒータ22に係合するため、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を効果的に抑制でき、電極部61の摩耗を軽減できるようになる。
【0113】
また、
図47は、第4実施形態に係るヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態を示す図である。
【0114】
このように、第4実施形態においても、ヒータホルダ23に、コネクタ70との干渉を回避するための凹部63が設けられているため、コネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することが可能である。
【0115】
図48は、本発明の第5実施形態に係るヒータ22にコネクタ70が取り付けられた状態を示す斜視図である。
【0116】
図48に示すように、第5実施形態に係るコネクタ70では、両端の分割アーム部75Bのうちの一方に、ガイド部83が設けられている。それ以外は、上述の第4実施形態に係るコネクタ70(
図40参照)とほぼ同様の構成である。
【0117】
このように、第5実施形態においては、コネクタ70にガイド部83が設けられていることにより、ヒータ22に対してコネクタ70を取り付ける際、ガイド部83をヒータ22の長手方向Zの一端面22cに摺動させながら取付作業を行うことができる。なお、ヒータ22に対するコネクタ70の取付動作は、上述の第4実施形態と同様である。これにより、コネクタ70をヒータ22に対して所定の位置で係合させやすくなり、取付作業の確実性と作業性が向上する。
【0118】
また、
図49に示すように、上述の実施形態と同様、第5実施形態においても、ヒータホルダ23に、コネクタ70との干渉を回避するための凹部63が設けられているため、ネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することが可能である。
【0119】
図50は、本発明の第6実施形態に係るコネクタ70の斜視図である。
【0120】
図50に示すように、第6実施形態に係るコネクタ70では、第1アーム部75が二分割されており、幅が細い方の分割アーム部75Bに係合部としての円錐台状の係合凸部80が設けられている。一方、幅が太い方の分割アーム部75Aには、2つの接続端子71が設けれている。また、第1アーム部75に対向する第2アーム部76には、ヒータ22を支持する支持部84が突出するように設けられている。さらに、本実施形態では、ベース部74に、ヒータ22に突き当たる複数の突き当て部85が突出するように設けられている。
【0121】
図51は、本発明の第6実施形態に係るヒータ22の斜視図である。
【0122】
図51に示すように、第6実施形態に係るヒータ22は、その幅方向Xの一端面22aに被係合部としての係合凹部44が設けられている。
【0123】
このように構成された第6実施形態においては、上述の各実施形態とはコネクタ70の取付方向が異なる。すなわち、第6実施形態の場合は、
図52に示すように、コネクタ70を、ヒータ22に対して長手方向Zに接近させる。
【0124】
図53に示すように、ヒータ22に対するコネクタ70の接近に伴い、係合凸部80がヒータ22の長手方向Zの一端面22cに接触すると、分割アーム部75Bの弾性変形を伴いつつ、係合凸部80が押し上げられる。そして、
図54に示すように、係合凸部80が、ヒータ22の電極部61が設けられた側の面上を摺動し、さらに、
図55に示すように、係合凸部80がヒータ22の係合凹部42に到達すると、分割アーム部75Bの弾性復帰によって係合凸部80が押し下げられ、係合凹部42の縁に係合する。これにより、ヒータ22に対するコネクタ70の取付が完了し、係合凸部80と係合凹部42との係合によって、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位が、幅方向Xの一方向と長手方向Zの両方向で制限される。
【0125】
また、
図56に示すように、取付完了状態では、ヒータ22が、接続端子71と支持部84によって厚み方向Yに挟持されることにより、ヒータ22及びコネクタ70の厚み方向Yの両方向における相対的な変位が制限される。さらに、この状態で、コネクタ70の突き当て部85がヒータ22の長手方向Zの一端面22cに突き当たることにより、ヒータ22に対するコネクタ70の長方向Zの一方向への位置決めも行われる。また、支持部84及び突き当て部85がヒータ22に対して接触することにより、これらの接触箇所において生じる摩擦抵抗によって、ヒータ22とコネクタ70との長手方向Zの両方向、及び幅方向Xの両方向の相対的な変位も制限される。
【0126】
このように、第6実施形態においても、ヒータ22とコネクタ70との相対的な変位が、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、及び厚み方向Yの両方向で制限されるため、ヒータ22に対するコネクタ70の位置ずれを高度に防止することが可能である。また、コネクタ70は、上述の実施形態と同様に、コネクタ70及びヒータ22と分離可能に構成された部材を介さずにヒータ22に係合するため、ヒータ22及びコネクタ70の相対的な変位を効果的に抑制でき、電極部61の摩耗を効果的に軽減することができる。
【0127】
また、
図57に示すように、コネクタ70をヒータ22に対して長手方向Zに接近させて取り付ける際、係合凸部80が電極部61に接触しないように、係合凹部44は、各電極部61とは長手方向Zに重ならない領域(
図57中のハッチング部以外の領域)に設けられていることが好ましい。
【0128】
また、
図58は、第6実施形態に係るヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態を示す図である。
【0129】
図58に示すように、第6実施形態においても、ヒータホルダ23には、コネクタ70との干渉を回避するための凹部63が設けられているため、コネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することが可能である。
【0130】
図59は、本発明の第7実施形態に係るコネクタ70の斜視図である。
【0131】
図59に示すように、第7実施形態に係るコネクタ70は、
図30に示すコネクタ70の円錐台状の係合凸部80に代えて爪状の係合爪部78を設け、ベース部74から突出する係合凸部79を省略したものである。それ以外は、基本的に
図30に示す第3実施形態に係るコネクタ70と同様である。
【0132】
図60は、本発明の第7実施形態に係るヒータ22の斜視図である。
【0133】
図60に示すように、第7実施形態に係るヒータ22には、上述の係合凹部や係合孔部は設けられていない。すなわち、第7実施形態に係るヒータ22の基材50は、凹凸や孔部を有しない板状に形成されている。
【0134】
第7実施形態に係るヒータ22に対するコネクタ70の取付方法は、上述の第3実施形態における取付方法と同様、コネクタ70を、ヒータ22に対して幅方向Xに接近させて取り付ければよい。ただし、第7実施形態の場合は、
図61に示すように、コネクタ70の取付が完了した状態で、ヒータ22が、コネクタ70の係合爪部78とベース部74とによって幅方向Xに挟持されることにより、幅方向Xの両方向の変位が制限される。また、この状態で、ヒータ22に対する係合爪部78及びベース部74の摩擦抵抗によって、ヒータ22及びコネクタ70の長手方向Zの両方向における相対的な変位も制限される。
【0135】
このように、係合凹部や係合孔部が形成されていないヒータ22を用いた第7実施形態においても、ヒータ22とコネクタ70との相対的な変位を、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限することが可能である。また、この場合、ヒータ22に係合凹部や係合孔部を設けなくてもよいので、ヒータ22の加工が容易となる。このため、ヒータ22の材料として、金属材料に比べて加工しにくいセラミック材料を用いる場合は、特に本実施形態に係るヒータ22の構成を採用することが好ましい。
【0136】
また、
図62は、第7実施形態に係るヒータ22がヒータホルダ23に保持された状態を示す図である。
【0137】
図62に示すように、第7実施形態においても、ヒータホルダ23に、コネクタ70との干渉を回避するための凹部63が設けられているため、コネクタ70はヒータホルダ23に拘束されることなくヒータ22の変位に高度に追従することが可能である。
【0138】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、これらの実施形態によれば、ヒータ22とコネクタ70との相対的な変位を、これらに分離可能な部材を介さずに、長手方向Zの両方向、幅方向Xの両方向、厚み方向Yの両方向で制限できるため、ヒータ22に対するコネクタ70の位置ずれを効果的に抑制し、電極部61と接続端子71の導通性を長期に亘って良好に維持することが可能である。なお、本発明における「相対的な変位の制限」とは、上述の係合部と被係合部とによる係合や、互いに対向する面同士又は部分同士の突き当てによる変位の制限のほか、互いに接触する面又は部分で生じる摩擦抵抗による変位の制限も含まれることを意味する。また、このような相対的な変位を制限するのに寄与する係合部や被係合部などの部分は、それぞれコネクタ70又はヒータ22と一体に構成されている場合に限らず、これらに対して固定されていれば別体で構成されていてもよい。
【0139】
また、上述の各実施形態では、ヒータ22にコネクタ70が取り付けられた状態で、ヒータ22及びコネクタ70がこれら以外の他部材と干渉しないように構成されているため、コネクタ70が他部材の干渉を受けることなくヒータ22の変位に対して高度に追従することができ、電極部と接続端子との良好な導通性を長期に亘って維持することができるようになる。
【0140】
上述の実施形態では、ヒータ22が、コネクタ取付箇所以外のほぼ全域に渡ってヒータホルダ23によって保持されているため、ヒータ22に荷重が加わっても、ヒータホルダ23によってヒータ22の変形を効果的に抑制することが可能である。また、ヒータ22の変形の懸念が少ない場合は、
図63に示すように、ヒータホルダ23をヒータ23よりも長手方向Zに短くし、コネクタ70が取り付けられるヒータ22の一端側の部分をヒータホルダ23によって保持しない構成としてもよい。この場合は、コネクタ70との干渉を回避するための上記凹部63などをヒータホルダ23に形成しなくてもよいため、ヒータホルダ23の強度低下を抑制でき、ヒータホルダ23の耐久性が向上する。
【0141】
また、上述の実施形態では、ヒータ22の長手方向Zの両端側にそれぞれコネクタ70を取り付ける例について説明したが、本発明は、ヒータ22の長手方向Zの片側のみにコネクタ70を取り付ける構成にも適用可能である。
【0142】
また、長手方向Zの片側のみにコネクタ70が取り付けられるヒータ22としては、例えば、
図64(a)~(d)に示すような各ヒータ22が挙げられる。これらのヒータ22においては、全ての電極部61A~61Cが基材50の長手方向中央cよりも一端側(図の左側)のみに設けられている。このため、コネクタ70はヒータ22の長手方向Zの片側のみに取り付けられる。なお、
図64において、(a)~(d)に示す各ヒータ22は、各抵抗発熱体59に対する各給電線62A~62Dの接続位置が異なる以外は同様の構成である。具体的に、
図64(a)~(d)に示す各例では、各抵抗発熱体59に対する各給電線61A~62Dの接続箇所のうち、第2給電線62Bとの接続位置(各抵抗発熱体59の図の下側の接続箇所)と、それ以外の給電線62A,62C,62Dとの接続位置(各抵抗発熱体59の図の上側の接続箇所)とが、ヒータ22の長手方向における抵抗発熱体59の中央Mを基準に互いに反対側にあるか{
図64(a)(d)に示す例}、あるいは同じ側にあるか{
図64(b)(c)に示す例}の点において異なっている。
【0143】
また、本発明は、
図65に示すような、基材50の長手方向中央cよりも一端側でヒータホルダ23に対する長手方向Zの位置決めを行う位置決め部66を有するヒータ22にも適用可能である。このようなヒータ22の場合、位置決め部66が設けられた側とは反対側の端でヒータホルダ23に対するヒータ22の長手方向Zの変位が特に大きくなるため、このような相対的な変位が大きくなる側、すなわち、位置決め部が設けられた一端側とは反対の他端側に設けられる電極部61Bと、これに接続されるコネクタ70において、本発明を適用することが好ましい。これにより、ヒータ22の相対的な変位が生じやすい部分に設けられた電極部61Bとコネクタと70との位置ずれを効果的に抑制することが可能となる。
【0144】
また、
図66に示す例のように、ヒータホルダ23に対するヒータ22の位置決めを行う位置決め部66は、基材50の長手方向中央cに設けられていてもよい。この場合、ヒータ22が熱膨張しても、基材50の長手方向中央cは用紙の幅方向中央に対してずれない、又はずれにくいといった利点がある。一方で、この場合は、ヒータ22の長手方向両端でヒータ22の熱膨張に伴う相対的変位が生じる。そのため、
図66に示す例においては、両端の電極部とコネクタとの接続構造に、上述の実施形態に係る接続構造を採用することが好ましい。これにより、ヒータに対するコネクタの位置ずれを効果的に抑制できるようになり、ヒータの熱膨張に伴う電極部と接続端子との接続不良やヒータホルダの損傷などを抑制できるようになる。
【0145】
また、画像形成装置が備える定着装置は、上述の定着装置に限らず、
図67~
図69に示すような定着装置であってもよい。以下、
図67~
図69に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0146】
図67に示す定着装置9は、定着ベルト20の加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ90が配置されている点において、上述の定着装置とは異なっている。この場合、押圧ローラ90とヒータ22とによって定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材91が配置されている。ニップ形成部材91は、ステー24によって支持されており、ニップ形成部材91と加圧ローラ21とによって定着ベルト20を挟んでニップ部Nを形成している。
【0147】
次に、
図68に示す定着装置9では、上述の押圧ローラ90が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、
図67に示す定着装置9と同じ構成である。
【0148】
続いて、
図69に示す定着装置9では、定着ベルト20のほかに加圧ベルト92が設けられ、加熱ニップ(第1ニップ部)N1と定着ニップ(第2ニップ部)N2とが分けて構成されている。すなわち、加圧ローラ21に対して定着ベルト20側とは反対側にも、ニップ形成部材91とステー93が配置され、ニップ形成部材91とステー93を内包するように加圧ベルト92が配置されている。その他は、
図2に示す定着装置9と同じ構成である。
【0149】
このような、
図67~
図69に示すような定着装置を備える画像形成装置においても、本発明を適用することにより、ヒータに対するコネクタの位置ずれを効果的に抑制し、電極部と接続端子の導通性を長期に亘って良好に維持することができるようになる。
【0150】
また、上述の各実施形態では、本発明を加熱装置の一例である定着装置に適用した場合を例に説明したが、本発明は定着装置に適用される場合に限らない。例えば、インクジェット式の画像形成装置において、用紙を加熱して用紙上のインク(液体)を乾燥させる乾燥装置などの加熱装置にも本発明を適用可能である。
【0151】
さらに、本発明は、画像形成装置のほか、フィルムなどの被覆部材を用紙などのシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置が備える加熱装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0152】
9 定着装置(加熱装置)
22 ヒータ(加熱部材)
23 ヒータホルダ(保持部材)
41 係合凹部(被係合部)
42 係合凹部(被係合部)
43 係合孔部(被係合部)
44 係合凹部(被係合部)
50 基材
61 電極部
70 コネクタ(給電部材)
71 接続端子
71a 接触部
72 ハウジング(端子保持部)
75 第1アーム部
75B 分割アーム部(変形部)
76 第2アーム部(支持部)
78 係合爪部(係合部)
79 係合凸部(係合部)
80 係合凸部(係合部)
80a 傾斜面
82 係合凸部(係合部)
82a 傾斜面
c 基材の長手方向中央
X 幅方向
Y 厚み方向
Z 長手方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0153】