(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】静的磁石アセンブリを有する物理的気相堆積チャンバ、及びスパッタリングする方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/35 20060101AFI20240306BHJP
G03F 1/24 20120101ALI20240306BHJP
【FI】
C23C14/35 C
G03F1/24
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018164111
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-27
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベハラ, シリシャ
(72)【発明者】
【氏名】バート, サンジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジンダル, ヴィブ
【審査官】西田 彩乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-077052(JP,A)
【文献】特表2016-519778(JP,A)
【文献】特開2000-282235(JP,A)
【文献】特開平03-010071(JP,A)
【文献】特表2017-525856(JP,A)
【文献】特開2002-256431(JP,A)
【文献】特開平08-288096(JP,A)
【文献】特開2006-057119(JP,A)
【文献】特開2007-035931(JP,A)
【文献】特開2003-213410(JP,A)
【文献】特開2004-218089(JP,A)
【文献】特表2005-526916(JP,A)
【文献】特開2006-267054(JP,A)
【文献】特開2002-222764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0073965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
G03F 1/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマスパッタチャンバ用のマグネトロンであって、
スパッタリングターゲットの裏側でターゲットに対して固定された関係に位置づけられた、外側の極と、第1の内側の極と、第2の内側の極とを備え、
前記外側の極は、第1の磁極性の複数の第1の細長い磁石であって、磁気ヨークに装着され、中心領域周辺に第1の閉パターンに配置され且つ互いに分離された複数の第1の細長い磁石を備え、
前記第1の内側の極は、前記第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって前記外側の極から分離されており、前記磁気ヨークに装着され第2の閉パターンに配置された前記第1の磁極性の反対の第2の磁極性の複数の第2の細長い磁石であって、互いに分離された複数の第2の細長い磁石を備え、
前記第2の内側の極は、前記中心領域に配置され、前記第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって前記第1の内側の極から分離されており、前記磁気ヨークに装着された前記第1の磁極性の少なくとも1つの第3の細長い磁石を備え、
前記外側の極、前記第1の内側の極、及び前記第2の内側の極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る、
プラズマスパッタチャンバ用のマグネトロン
を備えるプラズマスパッタチャンバ。
【請求項2】
前記第1の閉パターンと前記第2の閉パターンは実質的に円形である、請求項1に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項3】
前記アンバランスな比率は1.5~2.5の範囲である、請求項1に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項4】
前記第2の内側の極は単一の磁石を備える、請求項2に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項5】
前記第2の内側の極は、円形パターンに配置された複数の磁石を備える、請求項2に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項6】
前記マグネトロンは、5.5インチ~8.5インチの範囲の直径を有する、請求項2に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項7】
前記細長い磁石は、ある長さとある直径を有する実質的に円筒形であり、長さ対直径の比率は2:1を上回る、請求項2に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項8】
前記プラズマスパッタチャンバ内の処理領域を画定するチャンバ壁
をさらに備える、請求項1に記載のプラズマスパッタチャンバ。
【請求項9】
プラズマスパッタチャンバ内で基板を処理する方法であって、
チャンバ壁によって画定された前記プラズマスパッタチャンバの処理領域内の基板支持体上に基板を配置することであって、
前記処理領域は上部と下部を含み、前記基板支持体は前記下部にあり、
前記上部は、スパッタリングターゲットの裏側でターゲットに対して固定された関係に位置づけられた、外側の極と、第1の内側の極と、第2の内側の極とを備えるマグネトロンを含み、
前記外側の極は、第1の磁極性の複数の第1の細長い磁石であって、磁気ヨークに装着され且つ中心領域周辺に第1の閉パターンに配置され且つ互いに分離された複数の第1の細長い磁石を備え、
前記第1の内側の極は、前記第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって前記外側の極から分離されており、前記磁気ヨークに装着され第2の閉パターンに配置された前記第1の磁極性の反対の第2の磁極性の複数の第2の細長い磁石であって、互いに分離された複数の第2の細長い磁石を備え、
前記第2の内側の極は、中心領域に配置され、前記第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって前記第1の内側の極から分離されており、前記磁気ヨークに装着された前記第1の磁極性の少なくとも1つの第3の細長い磁石を備え、
前記外側の極、前記第1の内側の極、及び前記第2の内側の極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る、
基板を配置することと、
前記上部の基板支持体の上方に位置する原料を含む前記ターゲットから、基板上に材料をスパッタリングすることと
を含む方法。
【請求項10】
前記ターゲットは5.5インチ~8.5インチの範囲の直径を有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記基板はEUVマスクブランクとして使用される低熱膨張基板であり、
前記原料は、モリブデン、ケイ素、及びタンタル含有材料から選択され、
モリブデンとケイ素の交互層の多層スタックを堆積し、タンタルを含むEUV吸収層を堆積する、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記プラズマスパッタチャンバは、ケイ素を含む第1のスパッタリングターゲットと、モリブデンを含む第2のターゲットと、タンタルを含む第3のターゲットとを含み、
第1のターゲットと前記第2のターゲットとを交互にスパッタリングすることによって前記多層スタックを堆積し、その後に前記第3のターゲットをスパッタリングして前記多層スタック上にタンタルを含む層を形成する、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
プラズマスパッタチャンバであって、
前記プラズマスパッタチャンバ内で処理領域を画定するチャンバ壁と、
スパッタリングターゲットの裏側でターゲットに対して固定された関係に位置づけられた、外側の極と、第1の内側の極と、第2の内側の極とを備えるマグネトロンと、
を備え、
前記外側の極は、第1の磁極性の複数の第1の細長い磁石であって、磁気ヨークに装着され、中心領域周辺に第1の閉パターンに配置され且つ互いに分離された複数の第1の細長い磁石を備え、
前記第1の内側の極は、前記第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって前記外側の極から分離されており、前記磁気ヨークに装着され第2の閉パターンに配置された前記第1の磁極性の反対の第2の磁極性の複数の第2の細長い磁石であって、互いに分離された複数の第2の細長い磁石を備え、
前記第2の内側の極は、前記中心領域に配置され、前記第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって前記第1の内側の極から分離されており、前記磁気ヨークに装着された前記第1の磁極性の少なくとも1つの第3の細長い磁石を備え、前記外側の極、前記第1の内側の極、及び第2の内側の極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る、
プラズマスパッタチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は概して基板処理システムに関し、より具体的には物理的気相堆積(PVD)処理システムに関する。
【0002】
[0002]半導体集積回路の製造において金属及び関連材料の堆積に物理的気相堆積(PVD)とも称されるスパッタリングが長く使用されてきた。スパッタリングの使用は、ビア又は他の垂直配線構造等の高アスペクト比の孔の側壁上に金属層を堆積させるだけでなく、極紫外線(EUV)マスクブランクの製造にまで拡大している。EUVマスクブランクの製造では、粒子生成を最小限に抑えることが好ましく、これは、粒子が最終製品の特性に悪影響を及ぼすためである。
【0003】
[0003]プラズマスパッタリングは、直流スパッタリング又は高周波スパッタリングのいずれかを使用して達成されうる。プラズマスパッタリングは通常、スパッタリングターゲットの裏側に位置づけされたマグネトロンを備えており、当該マグネトロンは、磁気ヨークを通して裏側において磁気的に結合された2つの反対の極の磁石を含んでおり、処理空間の中に磁場を放出して、プラズマ密度を高め、ターゲットの前面からのスパッタ速度を改善する。マグネトロン内で使用される磁石は通常、直流スパッタリングにおいては閉ループであり、高周波スパッタリングにおいては開ループである。
【0004】
[0004]例えば物理的気相堆積(PVD)チャンバ等のプラズマ強化基板処理システムでは、高い磁場及び高い直流電力を用いた高出力密度のPVDスパッタリングにより、スパッタリングターゲットにおいて高いエネルギーが発生し、スパッタリングターゲットの表面温度が大幅に上昇する場合がある。スパッタリングターゲットは、ターゲットのバッキング板を冷却流体に接触させることによって冷却される。通常、商業的に実施されるプラズマスパッタリングでは、スパッタ堆積される材料のターゲットは、コーティングされるウエハを含む真空チャンバに密封される。アルゴンがチャンバに導入される。チャンバの壁又はシールドを接地させたままターゲットに数百ボルトのマイナスの直流バイアスを印加すると、アルゴンが励起してプラズマが形成される。プラスに帯電したアルゴンイオンは、高エネルギーのマイナスにバイアスされたターゲットに引き付けられ、ターゲットからターゲット原子がスパッタリングされる。
【0005】
[0005]ターゲットの侵食により、プラズマスパッタリングに問題が生じる。ターゲットが侵食すると、ターゲット層内のスパッタリング面が減少し、マグネトロンに近づくため、ターゲットの耐用年数を通じてスパッタリング面の磁場が変化する。スパッタリング速度は、スパッタリング面に隣接する磁場の大きさによって変化し、侵食の深さとともに増加する。また、プラズマは磁場が変化すると不安定になって消滅する又は火花が飛ぶ可能性があり、火花によって損傷を与える微粒子が形成されうる。ターゲットの形状にかかわらず、ターゲットはマグネトロンの磁石の磁場に対して特定の場所でより特異的に侵食するため、むらのある(不均一な)又は非対称な侵食プロファイルが生じる。ターゲットのむらのある侵食プロファイルにより、基板全体に均一性の低い堆積膜、及びむらのある膜特性が生じうる。例えば、基板のある空間的位置ではステップカバレッジの低下が生じうるが、基板の他のエリアでは良好なステップカバレッジが達成されうる。侵食プロファイルの非対称性を軽減し、より一様な侵食プロファイルを提供する装置及び方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本開示の一または複数の実施形態は、プラズマスパッタチャンバ用のマグネトロンを対象とし、プラズマスパッタチャンバ用のマグネトロンは、スパッタリングターゲットの裏側でターゲットに対して固定された関係に位置づけ可能な、外側の極と、第1の内側の極と、第2の内側の極とを備え、外側の極は、第1の磁極性の複数の第1の細長い磁石であって、中心領域周辺に配置された磁気ヨークに装着され且つ第1の閉パターンに配置された第1の細長い磁石を備え、第1の内側の極は、第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって外側の極から分離されており、磁気ヨークに装着され第2の閉パターンに配置された第1の磁気極性の反対の第2の磁極性の複数の第2の細長い磁石を備え、第2の内側の極は、中心領域に配置され、第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって第1の内側の極から分離されており、磁気ヨークに装着された第1の磁極性の少なくとも1つの第3の細長い磁石を備え、極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る。
【0007】
[0007]追加の実施形態は、本書に記載のマグネトロンを備えるスパッタチャンバと、本書に記載のマグネトロンを含むプラズマスパッタチャンバ内で基板を処理する方法に関連する。
【0008】
[0008]上述した本開示の特徴を詳細に理解できるように、上記に要約した本開示を、一部が添付の図面に例示されている実施形態を参照しながら、より具体的に説明する。しかし、添付の図面は本開示の典型的な実施形態のみを示すものであり、したがって、実施形態の範囲を限定するものと見なすべきではなく、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容しうることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態に係る処理チャンバの一部を示す概略断面図である。
【
図2】本開示の幾つかの実施形態に係る磁石配置との使用に適した半導体処理チャンバを示す図である。
【
図3】処理チャンバにおいて使用される従来の磁石配置を示す斜視図である。
【
図4】
図3の磁石配置における磁束密度対ターゲットの半径を示すグラフである。
【
図5】
図3の磁石配置におけるターゲットの侵食対ターゲットの半径を示す図である。
【
図6】本開示の幾つかの実施形態に係る処理チャンバにおいて使用される磁石配置を示す斜視図である。
【
図7】
図6の磁石配置における磁束密度対ターゲットの半径を示すグラフである。
【
図8】
図6の磁石配置におけるターゲットの侵食対ターゲットの半径を示す図である。
【
図9】本開示のいくつかの実施形態に係る処理チャンバにおいて使用される磁石配置を示す斜視図である。
【
図10】
図9の磁石配置における磁束密度対ターゲットの半径を示すグラフである。
【
図11】
図9の磁石配置におけるターゲットの侵食対ターゲットの半径を示す図である。
【
図12A】本開示の幾つかの実施形態に係るマグネトロンアセンブリを示す斜視図である。
【
図12B】
図12Aに示すマグネトロンアセンブリからの1つの磁石の側面図である。
【
図13】様々な磁石パターンの配置において磁石を組み立てる際に使用されるプレートの斜視図である。
【
図14】処理チャンバにおいて使用される従来の磁石配置を示す斜視図である。
【
図15】
図14の磁石配置における磁束密度対ターゲットの半径を示すグラフである。
【
図16】
図14の磁石配置におけるターゲットの侵食対ターゲットの半径を示す図である。
【
図17】本開示の幾つかの実施形態に係る処理チャンバにおいて使用される磁石配置を示す斜視図である。
【
図18】
図17の磁石配置における磁束密度対ターゲットの半径を示すグラフである。
【
図19】
図17の磁石配置におけるターゲットの侵食対ターゲットの半径を示す図である。
【
図20】一実施形態に係るマルチカソードPVD堆積チャンバを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0030]本開示の幾つかの例示的な実施形態が説明される前に理解するべきことは、本開示が以下の説明で提示される構成又は処理ステップの詳細に限定されないということである。本開示は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。
【0011】
[0031]本明細書で使用する「水平」という語は、その配向性と関係なく、マスクブランクの面又は表面に平行する面として定義される。「垂直」という語は、ここで定義されたように水平に対して垂直の方向を指すものである。例えば「上方(above)」、「下方(below)」、「底部(bottom)」、「上部(top)」、(「側壁」等における)「側方(side)」、「高い(higher)」、「低い(lower)」、「上方(upper)」、「上側(over)」、「下側(under)」等の語は、図に示すように、水平面に対して定義される。
【0012】
[0032]「の上(on)」という語は、要素間で直接の接触があることを示す。「すぐ上、真上(directly on)」という語は、介在する要素がない要素間での直接の接触を示す。
【0013】
[0033]当業者は、処理領域について説明するための「第1(first)」や「第2(second)」などの序数の使用が、処理チャンバにおける具体的な場所、又は、処理チャンバ内での曝露の順序を示唆するものではないことを、理解しよう。
【0014】
[0034]本開示の実施形態ではプラズマスパッタチャンバ用のマグネトロンが記載され、マグネトロンを含むプラズマスパッタチャンバ、及びプラズマスパッタチャンバ内でEUVマスクブランク等の基板を処理する方法が開示される。マグネトロンは、1を上回り3を下回るアンバランスな比率となるようなパターンに配置された複数の細長い磁石を含む。
【0015】
[0035]
図1は、本開示の幾つかの実施形態に係る物理的気相堆積(PVD)処理システム、具体的にはプラズマスパッタチャンバ100の一部を示す簡略断面図である。本書に記載の教示内容に係る変更に適切な他のPVDチャンバ例には、カリフォルニア州サンタクララのアプライドマテリアルズ社からいずれも市販されているALPS(登録商標)Plus及びSIP ENCORE(登録商標)PVD処理チャンバが含まれる。PVD以外の他の種類の処理用に構成されたものを含む、アプライドマテリアルズ社又は他のメーカーからの他の処理チャンバもまた、本書に開示されている教示内容に係る変更から恩恵を受けることができる。
【0016】
[0036]本開示の幾つかの実施形態に係るプラズマスパッタチャンバ100は、原料のターゲット102と、ターゲット102の裏面124に近接して配置された複数の第1の細長い磁石110を備える外側の極を含むマグネトロン103とを含むスパッタ源101を含む。原料は通常、堆積工程においてカソードとして機能するターゲット内に存在する。
【0017】
[0037]複数の第1の細長い磁石110は、ターゲット102からの原料の所望のスパッタリング、及びその後の処理チャンバ内に配置された基板(例えば、
図2に関して以下に説明するプラズマスパッタチャンバ200等の処理チャンバ内に配置された基板204)の上への材料の堆積を促進するために、例えば処理チャンバ内に形成されたプラズマを維持する及び/又は成形する磁場を発生させる。複数の第1の細長い磁石110は、例えば永久磁石又は電磁石等の所望の磁場を形成するのに適したいずれかの種類の磁石であってよい。加えて、複数の第1の細長い磁石110は、一または複数の実施形態に係る、1を上回り3を下回るアンバランスな比率となるように所望の磁場を形成するのに適したいずれかの形態に配置されうる。磁石配置パターンの特定の実施形態を以下に更に説明する。例えば、ある実施形態では、複数の第1の細長い磁石110は、ターゲット102の中心軸106の周りに対称に、環状に配置されうる。上記実施形態では、複数の第1の細長い磁石110は、複数の第1の細長い磁石110によって形成された磁場の少なくとも一部がターゲット102の裏面124に実質的に垂直の配向を有するように、ターゲット102の裏面124に近接して配置される。
【0018】
[0038]ある実施形態では、マグネトロン103は、例えばターゲット102の中心軸106に近接して配置された少なくとも内側磁石114等の追加の磁石を含みうる。存在する場合、内側磁石114により、複数の第1の細長い磁石110によって形成される磁場が成形されやすくなる。内側磁石114は、例えば永久磁石又は電磁石などの所望の磁場を形成するのに適したいずれかの種類の磁石であってよい。
【0019】
[0039]ターゲット102は、基板上に堆積される原料を有する前面126と、反対側の裏面124とを備える。ターゲット102は、スパッタリング処理中に基板上に堆積されるのに適した任意の好適な材料から製造されうる。例えば、ある実施形態では、ターゲット102は、ニッケル-鉄合金(NiFe)、コバルト-鉄合金(CoFe)、コバルト-鉄-ホウ素合金(CoFeB)、コバルト(Co)等から製造されうる。
【0020】
[0040]特定の実施形態では、ターゲットは、極紫外線(EUV)マスクブランク又はEUVレンズ素子を形成するのに有用な原料を含む。極紫外線リソグラフィシステムのレンズ素子及びマスクブランクは、モリブデン及びケイ素等の材料の多層反射コーティングでコーティングされる。多層コーティングは、ブラッグ干渉によって、13.5ナノメートルの紫外光に対して極端に狭い紫外線バンドパス、例えば12.5~14.5ナノメートルのバンドパス内で光を強く反射する。プラズマスパッタチャンバ100等のPVD処理チャンバは、ソース基板にケイ素、金属、合金、化合物、又はこれらの組み合わせの層を含む薄い層を形成する。特定の実施形態では、チャンバ100は、第1の反射層と第2の反射層の交代反射層を含む多層スタックを形成するのに使用されうる。一実施形態では、第1の反射層と第2の反射層はそれぞれケイ素及びモリブデンから形成されるが、当然ながら、交代層は他の材料から形成されうる、又は他の内部構造を有しうる。 非限定的な実施形態では、多層スタックは、20~60個の範囲の反射ペア、合計で最大120個の反射層を含む。
【0021】
[0041]スパッタチャンバは更に、多層スタック上にキャッピング層を形成するのに使用されうる原料のターゲットを含みうる。一または複数の実施形態では、キャッピング層は、例えばルテニウムを洗浄中に十分侵食に耐える硬度を有する原料のターゲットをスパッタリングすることによって形成されうる。プラズマスパッタチャンバは更に、多層スタック、及び存在する場合はキャッピング層の上に吸収体層を形成するために使用されうる。したがって、プラズマスパッタチャンバは更に、例えばプラチナ(Pt)、亜鉛(Zn)、金(Au)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銀(Ag2O)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、二酸化スズ(SnO2)、コバルト(Co)、クロムニッケル合金(Ni8Cr2)、酸化スズ(SnO)、銅(Cu)、銀(Ag)、アクチニウム(Ac)、テルリウム(Te)、ヨウ化セシウム(CsI)、スズ(Sn)、テルル化亜鉛(ZnTe)、アンチモン(Sb)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、窒化タンタル酸化物(TaNO)、クロム(Cr)、窒化クロム(CrN)及びホウ化タンタル(TaBO)からなる群から選択された、EUV放射線(例:13.5nm)を吸収する吸収体層を形成するための原料のターゲットを備えうる。スパッタチャンバは、例えば酸化タンタル、酸窒化タンタル、又はタンタル酸化ホウ素等のタンタルを含む原料等の、吸収体層に反射防止コーティングを形成するための原料を含むターゲットも含みうる。以下に更に説明するように、本開示の一態様は、EUVマスクブランク、つまり多層スタック、キャッピング層、吸収体層及び反射防止層を形成するために上述した材料を堆積させうる処理チャンバ又はシステムに関連する。したがって、真空下のロードロックによって互いに通信可能である複数のプラズマスパッタチャンバがあってよく、第1のチャンバは、マグネトロンと、多層スタック(例:モリブデン及びケイ素)を形成するための原料のターゲットとを含むスパッタ源を含み、第2のプラズマスパッタチャンバは、キャッピング層を形成するための原料のターゲットを含むスパッタ源を含み、第3のプラズマスパッタチャンバは、吸収体層を形成するための原料のターゲットを含むスパッタ源を含み、第4のプラズマスパッタチャンバは、反射防止コーティングを形成するための原料のターゲットを含むスパッタ源を含む。ある実行形態では、これらの層の一部あるいは全ては、EUVマスクブランクが形成されるようにそれぞれの層の各々を形成するために、複数のスパッタ源を備えるマルチカソードPVDチャンバ又はプラズマスパッタチャンバで形成されうる。
【0022】
[0042]物理的気相堆積システムにより、反射層、キャッピング層、及び吸収体層が形成される。例えば、物理的気相堆積システムは、ケイ素、モリブデン、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ニオブ、ルテニウムタングステン、ルテニウムモリブデン、ルテニウムニオブ、クロム、タンタル、窒化物、化合物、又はこれらの組み合わせの層を形成しうる。
【0023】
[0043]いくつかの実施形態では、ターゲット102を支持する及び/又はターゲット102をスパッタ源101に連結させるために、複数の第1の細長い磁石110とターゲット102との間にバッキング板108が配置されうる。いくつかの実施形態では、バッキング板108は、導電性材料、例えば銅-亜鉛、銅-クロム、又はターゲット102と同じ材料を含んでいてよく、これにより、バッキング板108を介してターゲット102に高周波及び直流電力が結合されうる。あるいは、バッキング板108は非導電性であってよく、例えば電気フィードスルー等の導電素子(図示せず)を含んでいてよい。いくつかの実施形態では、バッキング板108は、スパッタ源101及び/又はターゲット102の温度を制御するために、一または複数の温度制御機構を備えうる。例えば、いくつかの実施形態では、バッキング板108は、バッキング板108を通して温度制御流体を流すためにバッキング板108内に形成された一または複数のチャネルを含みうる。
【0024】
[0044]いくつかの実施形態では、スパッタ源101は、複数の第1の細長い磁石110を囲むエンクロージャ130を備えうる。上記実施形態では、ターゲット102をスパッタ源101に連結させやすくするために、エンクロージャ130にバッキング板108が連結されうる。2つの構成要素として説明したが、バッキング板108とエンクロージャ130を1つの材料から製造することにより、バッキング板108とエンクロージャ130の両方を備える一体型設計を提供することが可能である。
【0025】
[0045]いくつかの実施形態では、第1の細長い磁石110と内側磁石114をスパッタ源101内の所望の位置に固定するために、複数の第1の細長い磁石110と内側磁石114が上部プレート112と底部リング120と底部プレート122との間に配置されうる。例えばスパッタ源101が既存のエンクロージャ(例:エンクロージャ130)の中に組み込まれているいくつかの実施形態では、第1の細長い磁石110と内側磁石114をエンクロージャ130内にしっかり嵌め込むために、複数のスペーサ(図示した2つのスペーサ116、118)が用いられうる。
図1ではプレートとして示しているが、ターゲット102は所望の用途において材料をスパッタするのに適したいずれかの形状を有しうる。
【0026】
[0046]
図2に、本発明のいくつかの実施形態に係るマグネトロンを使用するのに適したプラズマスパッタチャンバ200等の処理チャンバを示す。いくつかの実施形態では、プラズマスパッタチャンバ200は一般に、上に基板204を受け入れるための基板支持ペデスタル202を有するチャンバ本体220と、プラズマスパッタチャンバ200の上部にターゲット206を有するスパッタ源101(例:上述したスパッタ源101)とを含みうる。基板支持ペデスタル202は、(図に示す)チャンバ壁208又は接地シールドであってよい、接地エンクロージャ壁内に位置していてよい。いくつかの実施形態では、スパッタ源101は、誘電体アイソレータ244を通して接地導電性アルミニウムアダプタ(アダプタ)242上に支持されうる。
【0027】
[0047]プラズマスパッタチャンバ200で実施される特定の用途又は処理に対応するためにターゲット206に電力を送るため、任意の数の電源が用いられうる。例えば、いくつかの実施形態では、直流電源226と高周波電源224は、上述したバッキング板108等のソース分配板(図示せず)を介してターゲット206にそれぞれ直流電力及び高周波電力を送りうる。上記実施形態では、ターゲット206にマイナスの電圧又はバイアスを印加するために、直流電源226が用いられうる。いくつかの実施形態では、高周波電源224によって供給される高周波エネルギーは、約2MHzから約60MHzまでの周波数範囲であってよい、あるいは、例えば2MHz、13.56MHz、27.12MHz、又は60MHz等の非限定的な周波数が使用されうる。いくつかの実施形態では、複数の上記周波数において高周波エネルギーを送るために、複数の高周波電源、すなわち2つ以上の高周波電源が配設されうる。
【0028】
[0048]基板支持ペデスタル202は、ターゲット206の主面に面し、処理される基板204を支持する基板支持面210を有する。基板支持ペデスタル202は、プラズマスパッタチャンバ200の処理領域248において基板204を支持しうる。処理領域248は、処理中は(例えば、処理位置にあるときは、ターゲット206と基板支持ペデスタル202との間の)基板支持ペデスタル202の上方の領域として画定される。
【0029】
[0049]幾つかの実施形態では、基板支持ペデスタル202は、プラズマスパッタチャンバ200の処理の下部のロードロックバルブ(図示せず)を通して基板支持ペデスタル202上に基板204を移送し、その後(例えば上述したように)一または複数の処理位置へ持ち上げることができるように、底部のチャンバ壁252に接続されたベローズ250を通して垂直に可動であってよい。
【0030】
[0050]ガス源254から一または複数の処理ガスが、質量流コントローラ256を通してプラズマスパッタチャンバ200の下部の中へ供給されうる。プラズマスパッタチャンバ200内部を排気して、プラズマスパッタチャンバ200内の所望の圧力を維持しやすくするために、排気口258を設け、バルブ260を介してポンプ(図示せず)に連結させることができる。
【0031】
[0051]いくつかの実施形態では、一または複数の電源(図示した高周波電源262及び直流電源264)が基板支持ペデスタル202に連結されうる。存在する場合、基板204上にマイナスの直流バイアスを誘導するために、基板支持ペデスタル202に高周波電源262が連結されうる。加えて、幾つかの実施形態では、処理中に基板204上にマイナスの直流セルフバイアスが形成されうる。
【0032】
[0052]いくつかの実施形態では、プラズマスパッタチャンバ200はさらに、アダプタ242のリッジ(ledge)276に接続された処理キットシールド274を含みうる。アダプタ242が今度はチャンバ壁208に密閉され接地される。一般に、処理キットシールド274は、アダプタ242の壁及びチャンバ壁208に沿って下向きに基板支持ペデスタル202の上面の下方まで延びて、基板支持ペデスタル202の上面に達するまで上向きに戻る(底部においてU字状の部分284を形成している)。あるいは、処理キットシールドの最低部はU字状の部分284である必要はなく、いずれかの適切な形状を有しうる。カバーリング286は、処理キットシールド274の上向きに延びているリップ(lip)288の上部に置かれる。付加的な堆積リング(図示せず)を使用して、基板204の周囲を堆積から保護することができる。
【0033】
[0053]幾つかの実施形態では、磁石290は、基板支持ペデスタル202とターゲット206との間に磁場を選択的に発生させるために、プラズマスパッタチャンバ200の近くに配置されうる。例えば、
図2に示すように、磁石290は、処理位置にあるときに、基板支持ペデスタル202の真上の領域内のチャンバ壁208の外側の近くに配置されうる。幾つかの実施形態では、磁石290は、例えばアダプタ242の隣等の他の場所に付加的に又は代替的に配置されうる。磁石290は電磁石であってよく、電磁石によって生成される磁場の規模を制御するための電源(図示せず)に連結されうる。存在する場合、磁石290は、基板204の上に材料を堆積させる前、最中、又は後に、ターゲット206からスパッタリングされる材料を所望の配向に移動させやすくするために、基板204の近くに均一な磁場を発生させるように構成されうる。
【0034】
[0054]コントローラ218をプラズマスパッタチャンバ200の様々な構成要素に提供および結合させて、それらの動作を制御することができる。コントローラ218は、中央処理装置(CPU)212、メモリ214、及び支援回路216を含む。コントローラ218は、直接、または特定のプロセスチャンバおよび/もしくは支援システム構成要素に関連するコンピュータ(もしくはコントローラ)を介して、プラズマスパッタチャンバ200を制御することができる。コントローラ218は、様々なチャンバ及びサブプロセッサを制御するための工業環境で使用されうる任意の形態の汎用コンピュータプロセッサのうちの1つでありうる。コントローラ218のメモリ又はコンピュータ可読媒体214は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク若しくはデジタルビデオディスク)、フラッシュドライブ、又はローカル若しくは遠隔の任意の他の形態のデジタルストレージなど、容易に入手可能なメモリのうちの一又は複数とすることができる。支援回路216は、従来の方式でプロセッサを支援するためにCPU212に連結される。これらの回路は、キャッシュ、電力供給装置、クロック回路、入出力回路、及びサブシステムなどを含む。一又は複数の処理は、本書に記載の方法でプラズマスパッタチャンバ200の動作を制御するために実行されうる又は呼び出されうるソフトウェアルーチンとして、メモリ214内に記憶させることができる。ソフトウェアルーチンは更に、CPU212によって制御されているハードウェアから遠隔に位置する第2のCPU(図示せず)によって記憶及び/又は実行されうる。
【0035】
[0055]
図3に、支持プレート314と、第2の極性(例:S)の内側磁石312を囲む第1の極性(例:N)の複数の第1の磁石310を含む外側の極302とを備える従来のマグネトロン303を示す。
図4に示すモデリングデータは、ターゲットの半径全体の低い磁束密度を示し、
図5は、ターゲットの半径全体のむらのある侵食プロファイルを示している。
【0036】
[0056]
図6に、本開示の一実施形態に係るマグネトロン323を示す。マグネトロン323は、支持プレート354上にあり、
図1に示すターゲット102等のスパッタリングターゲットの裏側でターゲット102に対して固定された関係に位置づけ可能な外側の極332、第1の内側の極334、及び第2の内側の極336を備える。本書で言うターゲットに対して固定された関係とは、マグネトロン323が静的であり、ターゲットに対して移動又は回転しないという事実を指すものである。業界において、上記マグネトロンは、静的マグネトロン又は固定マグネトロンと称されうる。これらは、ターゲットに対して回転する磁石アレイを有する回転マグネトロンなどの、ターゲットに対して移動可能なマグネトロンとは区別される。外側の極332は、第1の磁極性(例:N極性)の複数の第1の細長い磁石342であって、磁気ヨークであってよい支持プレート354に装着され、第1の閉パターンで中心領域350周辺に配置された第1の細長い磁石342を備える。閉パターンは、図示したように、実質的に円形であってよい。更に以下に説明するように、「細長い」磁石は、幅又は直径の寸法よりも長い長さ寸法を有する磁石を指している。「実質的に円形」とは、いくつかの実施形態では完全な円である閉パターンを指している、あるいは、いくつかの実施形態では、一定の半径を有さない場合がある円等の不完全な円を指している。
【0037】
[0057]更に
図6を参照すると、マグネトロン323は、第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって外側の極332から分離されている第1の内側の極334であって、磁気ヨークの形態の支持プレート354に装着され第2の閉パターンに配置された前記第1の磁極性の反対の第2の磁極性(例:S極性)の複数の第2の細長い磁石344を備える第1の内側の極334を有する。閉パターンは、図示したように、実質的に円形であってよい。
【0038】
[0058]
図6に示すマグネトロンは更に、中心領域350に配置され、第1の内側の極334によって形成された第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって第1の内側の極334から分離されている第2の内側の極336であって、磁気ヨークの形態の支持プレート354に装着された第1の磁極性の少なくとも1つの第3の細長い磁石346を備える第2の内側の極336を含み、外側の極、第1の内側の極、及び第2の内側の極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る。つまり、第2の極性の複数の第2の細長い磁石344の磁石の全磁力に対する、第1の極性の複数の第1の細長い磁石342及び第3の細長い磁石346(複数可)の全磁力である。
【0039】
[0059]いくつかの実施形態では、アンバランスな比率は、1~2.9、1~2.8、1~2.7、1~2.6、1~2.5、1~2.4、1~2.3、1~2.2、1.5~2.9、1.5~2.8、1.5~2.7、1.5~2.6、1.5~2.5、1.5~2.4、1.5~2.3又は1.5~2.2の範囲である。一または複数の実施形態では、マグネトロンは、外側の極、第1の内側の極、及び第2の内側の極から選択された3つ以下の極を含む。一または複数の実施形態では、第2の内側の極は1つの磁石を備える。一または複数の実施形態では、第2の内側の極は、閉パターン、例えば実質的に円形のパターンに配置された複数の磁石を備える。一または複数の実施形態では、マグネトロンは5.5インチ~8.5インチ(139.7mm~215.9mm)の範囲の直径を有する。
【0040】
[0060]
図6のマグネトロン323のモデリングデータを
図7に示す。
図7は、
図3の設計よりも高い、ターゲットの半径全体の磁束密度を示している。
図8に、
図5に示す侵食プロファイルよりも一様な、ターゲットの半径全体の侵食プロファイルを示す。
【0041】
[0061]
図9に、外側の極372、第1の内側の極374及び第2の内側の極376が、磁気ヨークの形態の支持プレート394に装着されている、マグネトロン363の一実施形態を示す。外側の極372は、第1の閉パターンに配置され且つ支持プレート394に装着された第1の磁極性(例:N極性)の複数の第1の細長い磁石382を備える。第1の内側の極374は、第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって外側の極372から分離されており、磁気ヨークの形態の支持プレート394に装着され第2の閉パターンに配置された第1の磁極性の反対の第2の磁極性(例:S極性)の複数の第2の細長い磁石384を備える。
図9のマグネトロン363は、中心領域360に配置され、第1の内側の極374によって形成された第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって第1の内側の極374から分離されている第2の内側の極376であって、磁気ヨークの形態の支持プレート394に装着された第1の磁極性の第3の細長い磁石386を備える第2の内側の極376を含み、外側の極、第1の内側の極、及び第2の内側の極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る。
図9のマグネトロン363のモデリングデータを
図10に示す。
図10は、
図3の設計よりも均一な、ターゲットの半径全体の磁束密度を示している。
図11に、
図5に示す侵食プロファイルよりも一様な、ターゲットの半径全体の侵食プロファイルを示す。
図9のターゲットの特性を改善するために、アンバランスな比率を更に最適化することが期待される。
【0042】
[0062]
図12Aに、支持プレート401と、上部プレート402及び403とを備える、完全に組み立てられたマグネトロン400を示す。マグネトロン400は、外側の極404と、第1の内側の極405と、第2の内側の極406とを含む。
【0043】
[0063]本開示の一または複数の実施形態では、少なくとも外側の極と第1の内側の極とに、及びいくつかの実施形態では第2の内側の極とに使用される磁石は、性能の改善と、より一様な侵食プロファイルを提供する寸法を有する。
図12Bを参照すると、磁石408は長さ「L」と幅又は直径「D」とを有する。本書で使用する「細長い」とは、幅又は直径「D」よりも長い長さ「L」を有する磁石を指し、L:Dの比率は1:1よりも大きく、例えばL:Dは1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1又は3:1よりも大きい。一または複数の実施形態では、L:Dの比率は1.5:1~5:1、2:1~5:1、又は3:1~5:1の範囲である。
【0044】
[0064]
図13は、複数の磁石を本書に記載の様々なパターンに支持するための、磁気ヨークの形態であってよい支持プレート410を示す図である。支持プレートは、閉パターン412a、412b、412c、412d、412e、412f、412g等を形成する複数の開口部を有し、本書に示す様々な同心の実質的に円形の閉パターンが可能でありうる。
【0045】
[0065]
図14に、あるパターンに配置された複数の第1の細長い磁石442からなる第1の極性(例:N)の外側の極432と、複数の第2の細長い磁石444からなる第2の極性(例:S)の第1の内側の極434と、複数の第3の細長い磁石446からなる第1の極性の第2の内側の極436と、1つの細長い磁石からなる第2の極性の第3の内側の極438とを有するマグネトロン423の比較例を示す。したがって、3つを上回る極がある。
図15にモデリングから得られた磁束データを示し、
図16にターゲットの侵食データを示す。第4の極を追加すると、侵食プロファイルの変動性の度合いが上がり、その結果非常にむらのあるプロファイルとなることが分かる。
【0046】
[0066]
図17に、本開示の一実施形態に係るマグネトロン463を示す。マグネトロン463は、3つの極、すなわち第1の閉パターンに配置された複数の第1の細長い磁石482からなる第1の極性(例:N)の外側の極472と、第2の閉パターンに配置され、第1の閉パターン内にあり、間隙によって分離されている複数の第2の細長い磁石484からなる第2の極性(例:S)の第1の内側の極474と、複数の第3の細長い磁石486からなる第1の極性の第2の内側の極476とを備える。
図18及び
図19を再び参照すれば、極を3つに限定し、外側の閉パターンで第1の閉パターンと第2の閉パターンを囲むことによる、改善された磁束密度の性能と、
図15及び
図16に示すよりも一様なターゲットの半径全体の侵食プロファイルが示されている。上述した範囲内のアンバランスな比率の最適化により、性能が更に改善されることが期待される。
【0047】
[0067]一または複数の実施形態では、マグネトロンの直径は5.5~8.5インチ(139.7mm~215.9mm)であり、5.5~8.5インチ(139.7mm~215.9mm)の範囲の直径を有するスパッタリングターゲットの裏側に、ターゲットに対して固定された関係に位置づけ可能である。一または複数の実施形態では、外側の極は本書に記載のL:D比を有する15~30、15~25、15~23、又は15~19個の個別の細長い円筒形磁石を備え、第1の内側の極は本書に記載のL:D比を有する8~12、9~12、又は10~12個の個別の細長い円筒形磁石を備え、 第2の内側の極は本書に記載のL:D比を有する1~6、2~6、3~6、4~6、又は5~6個の個別の細長い円筒形磁石を備える。この選択されたL:D比を有する外側の極、第1の内側の極、及び第2の内側の極の磁石それぞれの各数により、アンバランスな比率の最適化が1以上及び3未満になりうる。
【0048】
[0068]一実施形態に係るマルチカソードPVDチャンバ、例えばプラズマスパッタチャンバ500の上部を示す図である
図20をここで参照する。マルチカソードプラズマスパッタチャンバ500は、上部アダプタ504によって覆われている円筒形本体部502を有する基礎構造501を含む。上部アダプタ504は、上部アダプタ504の周りに位置づけされたカソードソース506、508、510、512、及び514等の幾つかのカソードソースを提供する。
図6、
図9及び
図17で説明したマグネトロン、及びそれらの変形例は、多層スタックだけでなく、単一のチャンバにおいて上述したキャッピング層、吸収体層及び反射防止層を形成するためにマルチカソードソースチャンバ500において用いることが可能である。例えば、物理的気相堆積システムは、ケイ素、モリブデン、酸化チタン、二酸化チタン、酸化ルテニウム、酸化ニオブ、ルテニウムタングステン、ルテニウムモリブデン、ルテニウムニオブ、クロム、タンタル、窒化物、化合物の層、又はこれらの組み合わせの層を形成しうる。幾つかの化合物を酸化物として記載したが、当然ながら、化合物には酸化物、二酸化物、酸素原子を有する原子混合物、又はこれらの組み合わせが含まれうる。
【0049】
[0069]本開示の別の態様は、プラズマスパッタチャンバ内で基板を処理する方法に関連し、本方法は、チャンバ壁によって画定されたプラズマスパッタチャンバの処理領域内の基板支持体上に基板を配置することであって、処理領域は上部と下部を含み、基板支持体は下部にあり、上部は、スパッタリングターゲットの裏側でターゲットに対して固定された関係に位置づけ可能な、外側の極と、第1の内側の極と、第2の内側の極とを備えるマグネトロンを含み、外側の極は、第1の磁極性の複数の第1の細長い磁石であって、磁気ヨークに装着され且つ中心領域周辺に第1の閉パターンに配置された第1の細長い磁石を備え、第1の内側の極は、第1の閉パターン内に配置され且つ間隙によって外側の極から分離されており、磁気ヨークに装着され第2の閉パターンに配置された第1の磁極性の反対の第2の磁極性の複数の第2の細長い磁石を備え、第2の内側の極は、中心エリアに配置され、第2の閉パターンによって囲まれ、間隙によって第1の内側の極から分離されており、磁気ヨークに装着された第1の磁極性の少なくとも1つの第3の細長い磁石を備え、極は、第2の極性の磁石の極の全磁力に対する第1の極性の磁石の極の全磁力によって定義される比率がアンバランスになるように配置され、アンバランスな比率は1を上回り3を下回る、基板を配置することと、上部の基板支持体の上方に位置する原料を含むターゲットから、基板上に材料をスパッタリングすることとを含む。
【0050】
[0070]本方法の一実施形態では、マグネトロンは、外側の極、第1の内側の極、及び第2の内側の極から選択された3つ以下の極を含み、ターゲットは5.5~8.5インチの範囲の直径を有する。本方法の一または複数の実施形態では、基板はEUVマスクブランクとして使用される低熱膨張基板であり、原料は、モリブデン、ケイ素、及びタンタル含有材料から選択され、モリブデンとケイ素の交互層の多層スタックを堆積し、タンタルを含むEUV吸収層を堆積することを含む。本方法の一または複数の実施形態では、プラズマスパッタチャンバは、ケイ素を含む第1のスパッタリングターゲットと、モリブデンを含む第2のターゲットと、タンタルを含む第3のターゲットとを含み、本方法は、第1のターゲットと第2のターゲットとを交互にスパッタリングすることによって多層スタックを堆積し、その後に第3のターゲットをスパッタリングして多層スタック上にタンタルを含む層を形成するためにすることとを含む。
【0051】
[0071]したがって、ターゲットのより一様な侵食プロファイルを提供するチャンバ及び方法が提供される。加えて、本書に記載のマグネトロンは、既存のマグネトロンよりも高い磁束密度で動作することができ、プラズマに対する着火圧力を低減させることができる。着火圧力が低減することで、改善された特性を有し欠陥が少ない膜を形成することが可能になり、EUVマスクブランクの製造において使用されるMo/Si多層膜にとって特に有益である。圧力の低減により、密度の高い層の形成、及びEUVマスクブランクの特性の改善が可能になる。
【0052】
[0072]この明細書全体を通じて、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「一又は複数の実施形態」、又は、「実施形態」に対する言及は、実施形態に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。ゆえに、この明細書全体の様々な箇所での「一又は複数の実施形態で」、「特定の実施形態で」、「一実施形態で」、又は「実施形態で」などの表現は、必ずしも、本開示の同一の実施形態に言及するものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、一又は複数の実施形態において任意の適切な様態で組み合わせることができる。
【0053】
[0073]本明細書の開示内容を特定の実施形態を参照しながら説明してきたが、これらの実施形態は本開示の原理及び用途の例示にすぎないことを理解されたい。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に対して様々な改変及び変形を行い得ることが、当業者には明らかになろう。ゆえに、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内である改変例及び変形例を含むことが意図されている。