(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】銅系層用エッチング液組成物及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/306 20060101AFI20240306BHJP
C23F 1/14 20060101ALI20240306BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H01L21/306 F
C23F1/14
H05K3/06 N
(21)【出願番号】P 2020043671
(22)【出願日】2020-03-13
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 徹司
(72)【発明者】
【氏名】野口 裕太
(72)【発明者】
【氏名】千葉 広之
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/168037(WO,A1)
【文献】特開2013-234385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
C23F 1/14
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第二銅イオン0.1~20質量%、
(B)下記一般式(1)で表されるアンモニウム化合物0.01~5質量%、及び
水を含有する銅系層用エッチング液組成物。
(前記一般式(1)中、R
1
はフェニル基又はベンジル基を表し、R
2
~R
4は、それぞれ独立に
、炭素原子数1~3のアルキル基を表し、Xは
塩素原子又は臭素原子を表す。)
【請求項2】
塩化物イオンを含有し、
塩化物イオン濃度が0.1~30質量%である、請求項1に記載の銅系層用エッチング液組成物。
【請求項3】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量比率が、(B)/(A)=0.01~1である、請求項1又は2に記載の銅系層用エッチング液組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、N-ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、N-ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、N-ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、N-ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、トリメチルフェニルアンモニウムクロリド、及びトリメチルフェニルアンモニウムブロミドからなる群より選ばれる少なくとも一つを含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の銅系層用エッチング液組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の銅系層用エッチング液組成物を用いて、銅系層をエッチングすることを含むエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅系層をエッチングするために用いられる、特定の成分を含有するエッチング液組成物及びそのエッチング液組成物を用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板や半導体パッケージ基板等の回路形成法として、回路パターンを後から基板に付け加えるアディティブ法や、基板上の金属箔から不要部分を除去して回路パターンを形成するサブトラクティブ法(エッチング法)が知られている。現在、製造コストの低いサブトラクティブ法(エッチング法)がプリント基板の製造に一般的に採用されている。そして、近年の電子デバイスの小型化及び高性能化に伴い、微細なパターンを生産性よくプリント基板上に形成しうるエッチング液の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、塩化銅、塩酸及びドデシルトリメチルアンモニウムクロリドを含有する銅エッチング液が記載されている。また、特許文献2には、テトラアルキルアンモニウムクロリド、塩酸及び硝酸を含有するゲルマニウムエッチング液が開示されている。また、特許文献3には、テトラメチルアンモニウムクロリド及び硝酸を含有するNiPtエッチング液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-178656号公報
【文献】特開2015-162508号公報
【文献】特開2017-017360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献で開示されたエッチング液を用いて銅系層をエッチングして細線を形成しようとした場合、十分なエッチング速度が得られないこと、所望の寸法精度を有する微細なパターンを形成することが困難であることが問題となっていた。
【0006】
したがって、本発明は、寸法精度に優れた微細なパターンを生産性よく形成することが可能な、銅系層用エッチング液組成物を提供しようとするものである。また、本発明は、上記組成物を用いたエッチング方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記組成物を得るべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含有する組成物が上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、(A)第二銅イオン0.1~20質量%、(B)下記一般式(1)で表されるアンモニウム化合物0.01~5質量%、及び水を含有する銅系層用エッチング液組成物が提供される。
【0009】
(前記一般式(1)中、R
1
はフェニル基又はベンジル基を表し、R
2
~R
4は、それぞれ独立に
、炭素原子数1~3のアルキル基を表し、Xは
塩素原子又は臭素原子を表す。)
【0010】
また、本発明によれば、上記の銅系層用エッチング液組成物を用いて、銅系層をエッチングすることを含むエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、寸法精度に優れた微細なパターンを生産性よく形成することが可能な、銅系層用エッチング液組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記組成物を用いたエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】エッチング後の試験基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の一実施形態のエッチング液組成物は、銅系層をエッチングするために用いられるもの、すなわち、銅系層用エッチング液組成物である。この銅系層用エッチング液組成物を、以下では単に「エッチング液組成物」又は「本組成物」と記載することがある。本組成物は、(A)第二銅イオン(以下、「(A)成分」とも記す。);(B)一般式(1)で表されるアンモニウム化合物(以下、「(B)成分」とも記す。);及び水を必須成分として含有する水溶液である。
【0014】
本明細書に記載する「銅系層」とは、銅を含む層であればよく、特に限定するものではないが、例えば、銅を10質量%以上含有する導電層が挙げられる。例えば、金属銅及び銅ニッケル合金等に代表される銅合金から選ばれる少なくとも1種からなる層を総称するものである。銅系層としては、金属銅を特に好適に用いることができる。
【0015】
本明細書に記載する「エッチング」とは、化学薬品等の腐食作用を利用した塑形又は表面加工の技法を意味し、具体的な用途としては例えば、除去剤、表面平滑化剤、表面粗化剤、パターン形成用薬剤、基体に微量付着した成分の洗浄液等を挙げることができる。本組成物は、銅を含有する層の除去速度が早いことから除去剤として好適に用いることができる。また、本組成物は、3次元構造を有する微細な形状のパターンを形成する際に用いた場合に、矩形等の所望の形状のパターンを得ることができることから、パターン形成用薬剤としても好適に用いることができる。
【0016】
(A)成分は、第二銅イオン(銅(II)イオン、Cu2+)である。本組成物に第二銅イオンを含有させるには、第二銅イオンの供給源を用いることができる。第二銅イオンの供給源としては、水中で第二銅イオンを生じうる化合物を用いることができる。そのような第二銅イオンの供給源としては、例えば、塩化銅(II)、臭化銅(II)、硫酸銅(II)、及び水酸化銅(II)等を挙げることができる。これらの第二銅イオンの供給源のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの第二銅イオンの供給源の中でも、塩化銅(II)を用いた場合には、銅系層用エッチング液組成物の安定性が良好であり、さらに、エッチング速度を制御しやすいことから特に好ましい。
【0017】
本組成物中の(A)成分の濃度は、銅系層用エッチング液組成物の全質量を基準として、第二銅イオンとして0.1~20質量%である。(A)成分の濃度は、被エッチング体である銅系層の厚みや幅によって上記濃度範囲内で適宜調節すればよいが、1~15質量%である場合はエッチング速度の制御を行いやすいことから特に好ましい。(A)成分の濃度が0.1質量%未満の場合、充分なエッチング速度が得られない。一方、(A)成分の濃度が20質量%超の場合、エッチング速度の制御が困難となる場合がある。
【0018】
(B)成分は、下記一般式(1)で表されるアンモニウム化合物である。この(B)成分のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
(一般式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立に、フェニル基、ベンジル基、又は炭素原子数1~3のアルキル基を表し、Xはハロゲン原子を表す。)
【0020】
一般式(1)において、R1~R4は、それぞれ独立に、フェニル基、ベンジル基、又は炭素原子数1~3のアルキル基を表す。炭素原子数1~3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、及びイソプロピル基等を挙げることができる。寸法精度に優れた微細なパターンを生産性よく形成することができる効果がさらに高まりやすいことから、R2~R4がそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。なかでも、本組成物の一態様としては、R1~R4がそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基であることがより好ましく、また、本組成物の一態様としては、R1がフェニル基又はベンジル基であり、R2~R4がそれぞれ独立に炭素原子数1~3のアルキル基であることがさらに好ましい。
【0021】
一般式(1)において、Xはハロゲン原子を表す。寸法精度に優れた微細なパターンを生産性よく形成することができる効果がさらに高まりやすいことから、Xは塩素原子又は臭素原子であることが好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。
【0022】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記化学式No.1~No.24でそれぞれ表される化合物を挙げることができる。下記化学式No.1~No.24において、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「nPr」はノルマルプロピル基を表す。
【0023】
【0024】
【0025】
上記の(B)成分のなかでもより好ましい化合物としては、括弧内に上記化学式No.を示して挙げると、例えば、N-ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(No.8)、N-ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(No.20)、N-ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(No.10)、N-ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド(No.22)、トリメチルフェニルアンモニウムクロリド(No.7)、トリメチルフェニルアンモニウムブロミド(No.19)、テトラメチルアンモニウムクロリド(No.1)、及びテトラメチルアンモニウムブロミド(No.13)等を挙げることができる。これらのうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることがより好ましい。
【0026】
本組成物の一態様としては、寸法精度に優れた微細なパターンを生産性よく形成することができる効果がさらに高まりやすいことから、(B)成分は、N-ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(No.8)、N-ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(No.20)、N-ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド(No.10)、トリメチルフェニルアンモニウムクロリド(No.7)、及びテトラメチルアンモニウムクロリド(No.1)からなる群より選ばれる少なくとも一つを含むことがさらに好ましく、N-ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド(No.8)及びN-ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(No.20)の少なくとも一方を含むことが特に好ましい。
【0027】
本組成物中の(B)成分の濃度は、銅系層用エッチング液組成物の全質量を基準として、0.01~5質量%であり、好ましくは0.03~4質量%であり、さらに好ましくは0.05~3質量%である。(B)成分の濃度が0.01質量%未満であると、(B)成分を配合することによる所望の効果を得ることができないことがある。一方、(B)成分の濃度が5質量%超であると、細線のパターン形状に不良等が生じやすくなる場合がある。
【0028】
本組成物中、(A)成分に対する(B)成分の質量比率は、好ましくは(B)/(A)=0.01~1であり、より好ましくは0.03~0.5であり、さらに好ましくは0.05~0.3である。(B)/(A)の値が1以下であると、寸法精度に優れた微細な配線パターンを形成しやすくなる。一方、(B)/(A)の値が0.01以上であると、パターンを生産性よく形成しやすくなる。
【0029】
本組成物は、水を必須成分として含有する、各成分が水に溶解した水溶液である。水としては、イオン交換水、純水、及び超純水等の、イオン性物質や不純物を除去した水を用いることができる。本組成物中の水の含有量は、銅系層用エッチング液組成物の全質量を基準として、50~99質量%程度であればよい。
【0030】
本組成物は、エッチング速度が向上することから、塩化物イオン(Cl-)を含有することが好ましい。本組成物に塩化物イオンを含有させるには、塩化物イオンの供給源を用いることができる。塩化物イオンの供給源としては、水中で塩化物イオンを生じうる化合物を用いることができる。そのような塩化物イオンの供給源としては、例えば、上述の(A)成分の供給源としても用いうる塩化銅(II)、及び上述の(B)成分としても用いうる一般式(1)中のXが塩素原子である場合に当該式で表される化合物、並びにそれら以外の以下に述べる塩化物イオン供給源等を挙げることができる。これらのうちの1種又は2種以上を用いることができる。
【0031】
上記の塩化物イオン供給源としては、例えば、塩化水素、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、塩化鉄(III)、塩化マンガン(II)、塩化コバルト(II)、塩化セリウム(III)、及び塩化亜鉛(II)等を用いることができる。これらの塩化物イオン供給源のうちの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
上述した塩化物イオンの供給源のなかでも、エッチング速度を制御しやすいこと及び配線パターンの形状を制御しやすいこと等の理由から、塩化水素及び塩化銅(II)が好ましく、塩化水素がさらに好ましい。
【0033】
本組成物中の塩化物イオンの濃度は、銅系層用エッチング液組成物の全質量を基準として、0.1~30質量%であることが好ましく、1~28質量%であることがより好ましく、5~25質量%であることがさらに好ましい。塩化物イオンの濃度は、被エッチング物の厚さや幅等に応じて適宜調整することができる。塩化物イオンの濃度が0.1質量%以上であると、エッチング速度が向上することがある。塩化物イオンの濃度が30質量%以下であると、装置部材の腐食等の不具合が生じにくくなることがある。
【0034】
本組成物には、(A)成分、(B)成分、水及び塩化物イオン以外の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で周知の添加剤や溶剤を配合することができる。添加剤としては、エッチング液組成物の安定化剤、各成分の可溶化剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤、防錆剤等を挙げることができる。これらの添加剤の濃度は、それぞれ0.001~50質量%の範囲内とすればよく、0.001~49質量%の範囲内であることが好ましく、0.001~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0035】
pH調整剤としては、例えば、硫酸、硝酸等の無機酸、及びそれらの塩;水溶性の有機酸、及びその塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属類;水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等の水酸化アルカリ土類金属類;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の4級アンモニウムヒドロキシド類;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミン等の有機アミン類;炭酸アンモニウム;炭酸水素アンモニウム;アンモニア;等を挙げることができる。これらのpH調整剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。pH調整剤の含有量は、エッチング液組成物のpHが所望とするpHとなる量とすればよい。
【0036】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸、及びそれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等のアミノカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、及びそれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等のホスホン酸系キレート剤;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、それらの無水物、及びそれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等の2価以上のカルボン酸化合物、2価以上のカルボン酸化合物が脱水した一無水物や二無水物を挙げることができる。エッチング液組成物中のキレート剤の濃度は、一般的に、0.01~40質量%の範囲であり、好ましくは0.05~30質量%の範囲である。
【0037】
界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等を挙げることができる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、イミダゾリニウムベタイン系の界面活性剤等を挙げることができる。エッチング液組成物中の界面活性剤の濃度は、一般的に、0.001~10質量%の範囲である。
【0038】
防錆剤としては、アミノ-1,2,4-トリアゾール等のアミノトリアゾール;トリルトリアゾール等のトリアゾール系防錆剤;ベンゾトリアゾール、5-メチル・1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル・1H-ベンゾトリアゾール、5,6-ジメチル・1H-ベンゾトリアゾール等のアルキルベンゾトリアゾール;ブチルオキシベンゾトリアゾール、ペンチルオキシベンゾトリアゾール、ヘキシルオキシベンゾトリアゾール等のアルコキシベンゾトリアゾール;トリルベンゾトリアゾール、メルカプトベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系防錆剤;テトラゾール、5-アミノテトラゾール等のアミノテトラゾール;5-フェニル-1,2,3,4-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-テトラゾール等のテトラゾール系防錆剤;イミダゾール、アルキルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-イミダゾール、ポリビニル-イミダゾール、N-トリメトキシシリルプロピル-イミダゾール、イミダソール環含有ジアミノ-s-トリアジン等のイミダゾール系防錆剤;ベンゾイミダゾール、2-メルカプト-ベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系防錆剤;ナフトイミダゾール等のナフトイミダゾール系防錆剤;チアゾール、2-メルカプト-チアゾール等のチアゾール系防錆剤;ベンゾチアゾール、2-メルカプト-ベンゾチアゾール等のベンゾチアゾール系防錆剤;及び同様の構造を持つチオカルバミン酸誘導体系防錆剤等を挙げることができる。エッチング液組成物中の防錆剤の濃度は、一般的に、0.001~10質量%の範囲である。
【0039】
溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、及びエーテル系溶剤等を用いることができる。アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、ジエチレングリコール、イソプロピルアルコール、及び2-エチルヘキサノール等を挙げることができる。ケトン系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸プロピル等を挙げることができる。エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、及びメチルセロソルブ等を挙げることができる。
【0040】
本発明の一実施形態のエッチング方法は、上述のエッチング液組成物(本組成物)を用いて、銅系層をエッチングすることを含む。このエッチング方法は、上述のエッチング液組成物を用いること以外、周知一般のエッチング方法の工程を採用することができる。被エッチング物である銅系層として、銀銅合金、アルミニウム銅合金、及び銅ニッケル合金等の銅合金;並びに銅(金属銅)等を含む層を挙げることができる。なかでも、特に銅が好適である。具体的なエッチング方法としては、例えば、浸漬法やスプレー法等を採用することができる。エッチング条件についても、使用するエッチング液組成物の組成やエッチング方法に応じて適宜調整すればよい。さらに、バッチ式、フロー式、エッチャントの酸化還元電位や比重、酸濃度によるオートコントロール式等の周知の様々な方式を採用してもよい。
【0041】
エッチング条件は特に限定されるものではなく、被エッチング物の形状や膜厚等に応じて任意に設定することができる。例えば、0.01~0.2MPaでエッチング液組成物を噴霧することが好ましく、0.01~0.1MPaで噴霧することがさらに好ましい。また、エッチング温度は10~50℃が好ましく、20~50℃がさらに好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがあるので、必要に応じて、上記温度範囲内に維持されるように公知の手段により温度制御してもよい。エッチング時間は、被エッチング物を十分にエッチングすることができる時間とすればよい。例えば、膜厚30μm程度、線幅40μm程度、及び開口部20μm程度の被エッチング物を上記の温度範囲でエッチングする場合には、エッチング時間を10~300秒程度とすればよい。
【0042】
上記のエッチング液組成物を用いるエッチング方法によれば、寸法精度に優れた微細なパターン生産性よく形成することができる。より具体的には、上記のエッチング液組成物を用いて銅系層をエッチングして細線を形成する場合に、細線断面におけるサイド(側面)のエッチングが抑制された、片側サイドエッチ幅が小さい微細なパターンを生産性よく形成することができる。このため、プリント配線基板の他、微細なピッチが要求されるパッケージ用基板、COF、TAB用途のサブトラクティブ法に好適に使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0044】
(B)成分の比較成分として、下記化学式(b1)~(b3)にそれぞれ示す比較化合物1~3を用意した。下記化学式(b1)及び(b3)中の「nBu」はノルマルブチル基を表し、下記化学式(b2)中の「Me」はメチル基を表す。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
<実施例1(実施例1-1~1-13)及び比較例1(比較例1-1~1-7)>
表1に示す組成となるように、塩化銅(II)、塩化水素、(B)成分又はその比較成分、及び水を混合して、エッチング液組成物No.1~20を得た。なお、実施例1-13のみ、第二銅イオンの供給源として、硫酸銅(II)を用いた。また、(B)成分には、前述の化学式No.1、No.7、No.8、No.10、No.20でそれぞれ表される化合物を用い、表1には使用した(B)成分の化学式No.を示した。また、表1に示すエッチング液組成物の組成における残部は水である。
【0049】
【0050】
<実施例2(実施例2-1~2-13)及び比較例2(比較例2-1~2-7)>
ガラスエポキシ製の樹脂基体上に厚さ35μmの銅箔を積層した基体を用意した。この基体の銅箔上に線幅38μm、開口部22μmのパターンのフォトレジストを形成して試験基板を作製した。作製した試験基板に対し、調製したエッチング液組成物を用いて、処理温度45℃、処理圧力0.1MPaの条件下で、細線の断面における細線下部の幅が30μmになるまでエッチング処理を行った。その後、剥離液を用いてレジストパターンを除去し、パターン(細線)を形成した。
【0051】
<評価>
以下に示す(1)エッチング処理時間及び(2)片側サイドエッチ幅の評価を行った。評価結果を表2に示す。なお、エッチング処理時間が短いことは、細線を生産性よく形成できることを意味する。また、片側サイドエッチ幅が小さいほど、サイドエッチングが抑制されたことを意味する。エッチング後の試験基板を模式的に示す断面図を
図1に示す。
【0052】
(1)エッチング処理時間
単位は「秒」である。
(2)片側サイドエッチ幅
レーザー顕微鏡を使用し、
図1に示すように、エッチング後の試験基板の断面を観察することにより、レジスト2の線幅6、及びエッチングされた銅箔1(細線)の断面における、樹脂基体3側の幅(細線下部の幅5)よりも小さくなっているレジスト2側の幅(細線上部の幅4)を測定した。そして、下記式より、片側サイドエッチ幅を算出した。単位は「μm」である。
「片側サイドエッチ幅」={「レジストの線幅」-「細線上部の幅の測定値」}/2
【0053】
【0054】
表2に示すように、実施例2-1~2-13では、エッチング処理時間が55秒以下であり、生産性よくパターンを形成できたことがわかる。なかでも、実施例2-5~2-7及び実施例2-10~2-12では、エッチング処理時間が45秒以下であり、特に生産性よくパターンを形成できたことがわかる。また、実施例2-11ではエッチング処理時間が40秒であるのに対して、実施例2-13ではエッチング処理時間が55秒であることから、本組成物は、塩化物イオンを含有すると、さらに生産性よくパターンを形成できることがわかる。一方、比較例2-1、2-4及び2-5では、エッチング処理時間が65秒以上であり、実施例2-1~2-13と比べると生産性よくパターンを形成できなかったことがわかる。また、比較例2-2、2-3、2-6及び2-7では比較化合物1又は比較化合物3が溶解しなかったため、エッチング処理を行えなかった。
【0055】
さらに、表2に示すように、実施例2-1~2-13では、片側サイドエッチ幅が、11.6μm以下であり、寸法精度に優れた微細なパターンを形成できたことがわかる。なかでも、実施例2-5~2-7及び実施例2-10~2-13では、片側サイドエッチ幅が、9.8μm以下であり、寸法精度に特に優れた微細なパターンを形成できたことがわかる。一方、比較例2-1、2-4及び2-5では、片側サイドエッチ幅が12.8μm以上であり、実施例2-1~2-13と比べると寸法精度に優れた微細なパターンを形成できなかったことがわかる。
【0056】
以上の結果より、本実施例によれば、片側サイドエッチ幅が小さく、所望とする寸法精度を有する微細なパターンを生産性よく形成することが可能な銅系層用エッチング液組成物及びエッチング方法を提供することができることがわかった。また、(B)成分として特定の構造を有するアンモニウム化合物を用いた場合に、特異的に本発明の効果を奏することがわかった。
【符号の説明】
【0057】
1:銅箔
2:レジスト
3:樹脂基体
4:細線上部の幅
5:細線下部の幅
6:レジストの線幅