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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】モータポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/62 20060101AFI20240306BHJP
   F04D 13/02 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
F04D29/62 A
F04D13/02 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020079392
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021173249
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】山崎 賢
(72)【発明者】
【氏名】村田 晶規
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 隆行
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-106323(JP,A)
【文献】特開昭47-029903(JP,A)
【文献】登録実用新案第3188469(JP,U)
【文献】実開昭55-023407(JP,U)
【文献】特開2017-048768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/62
F04D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータポンプであって、
永久磁石が埋設された羽根車と、
前記羽根車を収容するポンプケーシングと、
複数の固定子コイルを有するモータ固定子と、
前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、
前記モータケーシングの中心部に形成され、前記羽根車によって搬送される搬送液が通過する液体流路と、
前記液体流路の吸込口または吐出し口が形成されたフランジ接続部と、を備え、
前記モータポンプは、前記モータケーシングに形成された前記搬送液よりも低い温度の流体が流れる冷却流路を備えており、
前記冷却流路は、前記モータケーシングの内部に形成されており、
前記フランジ接続部は、前記液体流路の吸込口を形成しており、かつ前記モータ固定子を冷却するための流体が流れる連通流路を有しており、
前記連通流路は、前記フランジ接続部の内部に形成されている、モータポンプ。
【請求項2】
前記フランジ接続部は、
前記モータポンプに連結されるフランジ部材に対向するフランジ対向面と、
前記フランジ対向面に形成された、前記モータポンプと前記フランジ部材とを締結する締結具が螺合可能な螺合部と、を有している、請求項1に記載のモータポンプ。
【請求項3】
前記フランジ接続部は、前記ポンプケーシングまたは前記モータケーシングに着脱可能である、請求項1または請求項2に記載のモータポンプ。
【請求項4】
前記フランジ接続部に形成された前記連通流路と、前記モータケーシングの、冷却用の流体が流れる冷却流路と、が連通する、請求項1に記載のモータポンプ。
【請求項5】
前記モータポンプは、前記搬送液よりも低い温度の冷却用の流体が流れる冷却ジャケットを備えており、
前記冷却ジャケットは、少なくとも前記モータケーシングの外周面を覆う、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のモータポンプ。
【請求項6】
前記フランジ接続部に形成された前記連通流路と、前記冷却ジャケットの、冷却用の流体が流れる冷却流路と、が連通する、請求項に記載のモータポンプ。
【請求項7】
前記冷却流路は、前記モータ固定子を取り囲むように配置されている、請求項1~請求項のいずれか一項に記載のモータポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石が埋設された羽根車を、モータ固定子が発生する磁界により回転させるモータポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石が埋設された羽根車を、モータ固定子が発生する磁界により回転させるモータポンプが知られている。このモータポンプは、永久磁石が埋設された羽根車と、羽根車に対向して配置されたモータ固定子と、を備えている。羽根車は軸受により回転自在に支持されている。
【0003】
上記モータ固定子は複数の固定子コイルを有しており、これら固定子コイルに三相電流を流すと回転磁界が発生する。この回転磁界は羽根車に埋設されている永久磁石に作用し、羽根車を回転駆動する。ポンプが取り扱う液体がモータ固定子に接触すると漏電してしまうため、モータ固定子と羽根車との間にはモータケーシングが設けられており、モータケーシングによって液体のモータ固定子への浸入が防止されている。また、このモータポンプは、モータ固定子の中心部に搬送液の流路(液体流路)が形成されており、当該液体流路を通過した搬送液が羽根車によって加圧送水される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-169734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータポンプの吸込口および吐出口には、上流側もしくは下流側の機器や設備と連通する配管が接続される。そのため、モータポンプの用途や連通する機器に合わせた接続方法を提供する必要がある。
【0006】
例えば、モータポンプに接続される配管がフランジ接続の場合、モータポンプにフランジを設けて、締結具で結合すると、配管を含むモータポンプの設置スペースが大きくなってしまう。また、モータポンプの吸込口および吐出口にニップル等でフランジを設けると、そこから搬送液が漏れるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、フランジ接続が可能で、且つコンパクトなモータポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、永久磁石が埋設された羽根車と、前記羽根車を収容するポンプケーシングと、複数の固定子コイルを有するモータ固定子と、前記モータ固定子を収容するモータケーシングと、前記モータケーシングの中心部に形成され、前記羽根車によって搬送される搬送液が通過する液体流路と、前記液体流路の吸込口または吐出し口が形成されたフランジ接続部と、を備える、モータポンプが提供される。
【0009】
一態様では、前記フランジ接続部は、前記モータポンプに連結されるフランジ部材に対向するフランジ対向面と、前記フランジ対向面に形成された、前記モータポンプと前記フランジ部材とを締結する締結具が螺合可能な螺合部と、を有している。
一態様では、前記フランジ接続部は、前記ポンプケーシングまたは前記モータケーシングに着脱可能である。
一態様では、前記フランジ接続部は、前記液体流路の吸込口を形成しており、かつ前記モータ固定子を冷却するための流体が流れる連通流路を有している。
【0010】
一態様では、前記モータポンプは、前記モータケーシングに形成された前記搬送液よりも低い温度の流体が流れる冷却流路を備えている。
一態様では、前記フランジ接続部に形成された連通流路と、前記モータケーシングの、冷却用の流体が流れる冷却流路と、が連通する。
一態様では、前記モータポンプは、前記搬送液よりも低い温度の冷却用の流体が流れる冷却ジャケットを備えており、前記冷却ジャケットは、少なくとも前記モータケーシングの外周面を覆う。
一態様では、前記フランジ接続部に形成された連通流路と、前記冷却ジャケットの、冷却用の流体が流れる冷却流路と、が連通する。
【発明の効果】
【0011】
モータポンプは、フランジ接続部を備えているため、フランジ部材をモータポンプに接続しても、モータポンプのサイズのコンパクト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】モータポンプの一実施形態を示す断面図である。
図2】モータポンプの他の実施形態を示す図である。
図3】冷却ジャケットの他の実施形態を示す図である。
図4図3のA-A線断面図である。
図5】冷却ジャケットのさらに他の実施形態を示す図である。
図6】着脱可能な分割体から構成された冷却ジャケットの一実施形態を示す図である。
図7】着脱可能な分割体から構成された冷却ジャケットの他の実施形態を示す図である。
図8】モータポンプ上に載置された端子箱を示す図である。
図9】モータポンプ上に載置された端子箱の側面図である。
図10】モータポンプ上に載置された端子箱を上から見た図である。
図11】モータポンプの下方に配置された端子箱を示す図である。
図12】モータポンプの下方に配置された端子箱の側面図である。
図13】モータケーシングの表面温度の上昇を抑制する冷却機構のさらに他の実施形態を示す図である。
図14】モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。
図15】モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。
図16】モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。
図17】モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、モータポンプの一実施形態を示す断面図である。このモータポンプは、複数の永久磁石5が埋設された羽根車1と、これらの永久磁石5に作用する磁力を発生するモータ固定子6と、羽根車1を収容するポンプケーシング2と、モータ固定子6を収容するモータケーシング3と、羽根車1のラジアル荷重およびスラスト荷重を支持する軸受組立体10と、を備えている。モータ固定子6および軸受組立体10は、羽根車1の吸込側に配置されている。
【0014】
ポンプケーシング2とモータケーシング3との間にはシール部材としてのOリング9が設けられている。羽根車1とモータケーシング3とは微小な隙間を介して対向しており、羽根車1は、モータ固定子6により発生される回転磁界が永久磁石5に作用することによって回転する。
【0015】
羽根車1は単一の軸受組立体10によって回転自在に支持されている。この軸受組立体10は液体の動圧を利用した滑り軸受(動圧軸受)である。この軸受組立体10は、互いに緩やかに係合する回転側軸受11と固定側軸受12の組み合わせから構成される。回転側軸受11は、羽根車1に固定されており、羽根車1の液体入口を囲むように配置されている。
【0016】
固定側軸受12はモータケーシング3に固定されており、回転側軸受11の吸込側に配置されている。この固定側軸受12は、羽根車1のラジアル荷重を支持するラジアル面12aと、羽根車1のスラスト荷重を支持するスラスト面12bと、を有している。ラジアル面12aは羽根車1の軸心と平行であり、スラスト面12bは羽根車1の軸心に対して垂直である。
【0017】
回転側軸受11は環状の形状を有しており、回転側軸受11の内周面が固定側軸受12のラジアル面12aに対向し、回転側軸受11の側面が固定側軸受12のスラスト面12bに対向している。回転側軸受11の内周面とラジアル面12aとの間、および回転側軸受11の側面とスラスト面12bとの間には微小な隙間が形成されている。また、回転側軸受11の内周面および側面には、動圧を発生させるための図示しないスパイラル溝が形成されている。
【0018】
羽根車1から吐き出された液体の一部は、羽根車1とモータケーシング3との間の微小な隙間を通って軸受組立体10に導かれる。回転側軸受11が羽根車1とともに回転すると、回転側軸受11と固定側軸受12との間に液体の動圧が発生し、これにより羽根車1が軸受組立体10によって非接触に支持される。固定側軸受12は、直交するラジアル面12aおよびスラスト面12bにより回転側軸受11を支持しているので、羽根車1の傾動は軸受組立体10により規制される。軸受組立体10(回転側軸受11および固定側軸受12)は、セラミックまたはカーボンなどの耐摩耗性に優れた材料から形成されている。
【0019】
モータケーシング3には、吸込口15aを有する吸込ポート15が固定される。この吸込ポート15は、ステンレス鋼などの金属からなり、図示しない吸込ラインに接続される。吸込ポート15、モータケーシング3、および軸受組立体10の中心部には、それぞれ液体流路Xが形成されている。これら液体流路Xは一列に連結され、吸込口15aから羽根車1の液体入口まで延びる1つの冷却流路65を構成する。本明細書中において、符号CLは、冷却流路65の延びる方向を示している。
【0020】
吸込ポート15は、円筒状の基部15cと、該基部15cよりも小さい直径を有する、円筒状の軸部15dと、を有しており、液体流路Xに連結されている。基部15cと軸部15dとは、一体に構成されており、軸部15dは、基部15cからモータケーシング3内に延びている。基部15cおよび軸部15dの中心軸は、吸込ポート15の中心軸に一致し、基部15cおよび軸部15dの内周面によって、液体流路15bが形成されている。軸部15dの外周面の一部には、ねじ部15eが形成され、モータケーシング3には、ねじ孔3bが形成される。吸込ポート15のねじ部15eをモータケーシング3のねじ孔3bに係合させることにより、吸込ポート15がモータケーシング3に固定される。
【0021】
軸部15dの先端側の外周面には、ねじ部15eは形成されていない。ねじ部15eが形成されていない軸部15dの外周面には、環状溝15fが設けられる。この環状溝15f内には、モータケーシング3と吸込ポート15との間の隙間をシールするOリング13が配置される。
【0022】
ポンプケーシング2の側面には、吐出口16aを有する吐出ポート16が設けられており、回転する羽根車1によって昇圧された液体は、吐出口16aを通って吐き出される。なお、本実施形態に係るモータポンプは、吸込口15aと吐出口16aが直交する、いわゆるエンドトップ型モータポンプである。
【0023】
羽根車1が回転すると、液体はモータポンプの吸込口15aから羽根車1の液体入口に導入される。液体は羽根車1の回転によって昇圧され、吐出口16aから吐き出される。羽根車1が液体を移送している間、羽根車1の背面は昇圧された液体によって吸込側に(すなわち吸込口15aに向かって)押圧される。軸受組立体10は、羽根車1の吸込側に配置されているので、羽根車1のスラスト荷重を吸込側から支持する。本実施形態に係る構成によれば、1つの軸受組立体10により羽根車1のラジアル荷重およびスラスト荷重を非接触で支持することができるので、パーティクルの発生が少ないコンパクトなモータポンプを実現することができる。
【0024】
図1に示すように、モータケーシング3の側壁部32は、羽根車1の吸込側の側面に対向して配置される。すなわち、側壁部32は、羽根車1と固定子コイル6Bとの間に位置しており、羽根車1とモータ固定子6とを仕切る隔壁として機能する。モータ固定子6が発生する回転磁界は、側壁部32を通って羽根車1の永久磁石5に到達する。したがって、モータケーシング3の側壁部32は、できるだけ薄いことが好ましい。例えば、モータケーシング3の側壁部32は、数mmの厚さとされる。
【0025】
本実施形態のモータポンプには、図1に示すように、モータ固定子6の固定子コア6Aおよび吸込ポート15に接触する放熱部材20が設けられている。放熱部材20は、モータケーシング3に装着されており、モータケーシング3よりも高い熱伝導率を有する材料からなる。このような材料は、例えば、ステンレス鋼またはアルミニウムなどの金属、またはセラミックである。
【0026】
モータ固定子6は、モータケーシング3内に形成された収容空間に収容されており、該収容空間は、図1に示すように放熱部材20により塞がれる。したがって、本実施形態の放熱部材20は、モータ固定子6の収容空間を塞ぐモータカバーとして用いられている。この放熱部材20は、モータ固定子6の収容空間を塞ぐカバープレート20aと、カバープレート20aの表面からモータ固定子6に向かって突出する固定リング20bと、を備えている。これらのカバープレート20aと固定リング20bとは一体に形成されている。放熱部材20を構成するカバープレート20aと固定リング20bと、を別部材としてもよい。この場合も、カバープレート20aと固定リング20bは、いずれもモータケーシング3よりも高い熱伝導率を有する材料からなる。
【0027】
カバープレート20aは、全体として円盤形状であり、その中央には吸込ポート15が挿入される孔が形成されている。吸込ポート15のねじ部15eはモータケーシング3のねじ孔3bに挿入されており、放熱部材20のカバープレート20aの一部が、吸込ポート15の基部15cとモータケーシング3との間に挟まれている。この状態で、放熱部材20の固定リング20bはモータ固定子6の固定子コア6Aに接触しており、モータ固定子6をモータケーシング3の側壁部32に対して押圧している。このように、本実施形態の放熱部材20は、固定子コア6Aおよび吸込ポート15に接触すると共に、モータ固定子6の位置を固定する固定部材としても機能する。
【0028】
モータ固定子6の固定子コイル6Bに電流を流すと、固定子コイル6Bが発熱する。熱の一部はモータケーシング3の側壁部32を介して液体に伝達され、他の一部はモータケーシング3および放熱部材20を介して外気に放散される。モータ固定子6で発生した熱は、モータ固定子6の固定子コア6Aに接触し、かつモータケーシング3よりも高い熱伝導率を有する放熱部材20に伝達され、この放熱部材20から効率良く外気に放散される。
【0029】
さらに、この放熱部材20は、吸込ポート15に接触している。吸込ポート15は金属からなるので、高い熱伝導率を有している。したがって、放熱部材20から吸込ポート15に伝達された熱は、吸込ポート15からも効率良く外気に放散される。さらに、吸込ポート15は、その液体流路15b内を流れる液体と接触している。したがって、吸引ポート15に伝達された熱は、液体流路15b内を流れる液体に伝達される。その結果、モータ固定子6で発生した熱をさらにモータポンプの外部に効率良く放散することができるので、モータ固定子6の温度の上昇を効率良く抑制することができる。
【0030】
上述したモータポンプで、高温の液体が移送される場合、モータ固定子6が高温になり、温度異常の検出にて運転が停止されたり、最悪の場合にはモータ固定子6が故障し運転不可となったり、焼損するおそれがある。ここで、温度異常の検出とは、モータポンプの制御装置が、モータポンプに取り付けられた不図示の温度センサーの検出値がしきい値以上となると温度異常と判断してモータポンプを停止し、モータポンプの焼損を回避することである。そこで、モータケーシング3の冷却効率を向上させるために、モータポンプは、モータケーシング3を覆う冷却ジャケット60を備えている。以下、図面を参照して、冷却ジャケット60の構造について、説明する。
【0031】
図1に示すように、モータポンプは、モータケーシング3の外周面3cを覆う冷却ジャケット60を備えている。冷却ジャケット60は、モータケーシング3の外周面3cに取り付けられている。冷却ジャケット60は、液体流路Xを通過して、羽根車1によって搬送される液体よりも低い温度の冷却液が流れるように構成されている。つまり、冷却液が流れる冷却流路65を形成する冷却ジャケット60がモータケーシング3の外周面3cに取り付けられている。但し、冷却流路65に流れる冷却液は冷却用の流体の一例であって、当該冷却用の流体は、水道水や工場用水、不凍液(例えば、プロピレングリコール)等の液体でもよいし、気体でもよい。
【0032】
本実施形態の冷却ジャケット60は、冷却液が流入する冷却液入口60Aと、冷却液が排出される冷却液出口60Bと、を備えている。これら冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bは、冷却流路65のCL方向と平行に延びている。冷却液入口60Aは、モータケーシング3の下方に配置されており、冷却液出口60Bは、モータケーシング3の上方に配置されている。一実施形態では、冷却液入口60Aは、モータケーシング3の上方に配置され、冷却液出口60Bはモータケーシング3の下方に配置されてもよい。
【0033】
冷却ジャケット60は、冷却液が流れる冷却流路65を有している。より具体的には、冷却ジャケット60は、その内面61に形成された凹部62を有しており、冷却流路65は、この凹部62とモータケーシング3の外周面3cとの間に形成されている。これにより、冷却液がモータケーシング3の外周面3cに直接接するため、モータポンプの温度上昇を抑制できる。また、冷却流路65の形状や材質を変更することで、モータポンプが幅広い温度の搬送液に対応できる。
【0034】
冷却流路65は、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bに連通している。冷却液(例えば、水道水)は、図示しない冷却液供給源から冷却液入口60Aを通じて冷却流路65に流入する。冷却流路65に流入した冷却液は、モータケーシング3の外周面3cに接触して、モータケーシング3を冷却する。その後、冷却液は、冷却流路65の内部を流れて冷却液出口60Bから排出される。本実施形態では、冷却液が冷却液入口60Aから流入され、冷却液出口60Bから排出される。しかしながら、冷却ジャケット60の冷却液にてモータポンプの温度上昇が抑えられればよく、一実施形態では、不凍液等の冷却液が冷却流路65に封入されてもよい。
【0035】
本実施形態では、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bの両方が、吸込ポート15と同じ方向の面(すなわち、液体流路XのCL方向と平行な方向)に形成されている。一実施形態では、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bのうちの少なくとも1つが、吸込ポート15と同じ面に形成されていればよい。これにより、吸込口15aと、当該吸込口15aと同じ面に形成された冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bと、に接続される管とが同一方向に配管できるため、当該配管用の作業スペースを含めたモータポンプの設置スペースを小さくできる。
【0036】
本実施形態によれば、モータポンプは、冷却液の、モータケーシング3の外周面3cへの接触により、モータケーシング3を冷却する冷却ジャケット60を備えている。したがって、高温の液体を搬送する場合であっても、冷却ジャケット60は、搬送液の温度低下は抑えつつモータポンプの温度上昇を抑えることができる。このような構造を有するモータポンプは、特に高温の液体を搬送する用途に有効である。
【0037】
冷却ジャケット60は、モータケーシング3に着脱可能に取り付けられている。したがって、モータポンプによって搬送される液体が常温または低温である場合には、冷却ジャケット60をモータケーシング3から取り外した状態で、モータポンプを運転してもよい。その一方で、モータポンプによって搬送される液体が高温である場合には、冷却ジャケット60をモータケーシング3に装着した状態で、モータポンプを運転してもよい。このように、冷却ジャケット60は、搬送される液体の種類に応じて、着脱可能である。また、冷却ジャケット60が耐圧防爆機能を有すれば、冷却ジャケット60を取り付けることでモータポンプを耐圧防爆機器とすることができる。
【0038】
図2は、モータポンプの他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成や作用効果は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図2に示すように、冷却ジャケット60は、吸込口15aと同じ面に配置された冷却液入口60Aと、吐出口16aと同じ方向に配置された冷却液出口60Bと、を備えてもよい。具体的には、冷却ジャケット60は、液体流路XのCL方向と平行に延びる吸込口15aと冷却液入口60Aとが同じ方向に配置され、液体流路XのCL方向に対して垂直に延びる吐出口16aと冷却液出口60Bとが同じ方向に配置される。一実施形態では、冷却ジャケット60は、吐出口16aと冷却液入口60Aとが同じ方向に配置され、吸込口15aと冷却液出口60Bとが同じ方向に配置されてもよいし、吐出口16aと冷却液入口60Aと冷却液出口60Bの両方が同じ方向に配置されてもよい。
【0039】
このように、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bのうちの少なくとも1つは、ポンプケーシング3に形成された吐出口16aと同じ方向に形成される。これにより、吐出口16aと、当該吸込口15aと同じ方向に形成された冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bと、に接続される管とが同一方向に配管できるので、当該配管の作業スペースを含めたモータポンプの設置スペースを小さくできる。
【0040】
本実施形態のモータポンプの搬送液が引火爆発の危険性がある引火性液体の場合がある。その場合、周囲が囲まれる函体の中などに設置される。上述の実施形態の冷却ジャケット60は冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bが、吸込口15aおよび吐出口16aと同じ方向に配置されるので、設置スペースが小さくでき、制限のある当該函体内のスペースを有効に活用できる。
【0041】
図3は、冷却ジャケット60の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成や作用効果は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図3に示すように、冷却ジャケット60は、モータケーシング3の外周面3cを覆うモータケーシング側部位(第1部位)60aと、モータケーシング側部位60aから吸込ポート15に向かって、すなわち、モータケーシング60の中心部に向かって延びる放熱部材側部位(第2部位)60bと、を有している。放熱部材側部位60bは、放熱部材20に取り付けられている。
【0042】
冷却ジャケット60は、モータケーシング3の外周面に沿って形成された第1冷却流路65と、第1冷却流路65に連通し、かつ放熱部材20に接する第2冷却流路70と、を備えている。モータケーシング側部位60aは、その内面61に形成された凹部62を有し、当該凹部62が第1冷却流路65を形成する。放熱部材側部位60bは、放熱部材20に接触する、放熱部材側の面(第1面)63と、第1面63とは反対側の面(第2面)66と、を有している。また、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bは、第2冷却流路70を形成する第2面66に形成されている。
【0043】
第1面63には、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bに接続された溝部67が形成されている。本実施形態では、溝部67は、吸込ポート15と同心状に配置されている。一実施形態では、溝部67は、第1面63に形成されればよく、その中心が吸込ポート15と異なる位置に配置されてもよい。溝部67と放熱部材20との間には、第2冷却流路70が形成されている。溝部67と凹部62との間には、連通流路68が配置されており、第1冷却流路65および第2冷却流路70は、連通流路68を通じて、互いに連通している。第2冷却流路70に設けられた冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bは、第2冷却流路70を通じて第1冷却流路65に連通している。
【0044】
図4は、図3のA-A線断面図である。図3および図4に示す実施形態では、冷却液入口60Aを通じて第2冷却流路70に流入した冷却液は、放熱部材20を通じて、モータ固定子6を冷却する。さらに、冷却液は、放熱部材20にも接触しており、モータケーシング3の熱を間接的に(すなわち、放熱部材20を介して)奪うことができる。つまり、本実施形態では、モータケーシング3においてCL方向に平行な外周面に加えてCL方向に垂直な面の外側からも冷却できる。また、本実施形態でモータポンプは、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bが吸込口15aの外側に形成されるため、搬送液の温度を保ちつつ搬送することができる。つまり、モータケーシング3の中心部を通る搬送液が冷却液にて冷却されにくい。
【0045】
冷却液の供給が継続されると、冷却液は、第2冷却流路70の全体を流れ、冷却液出口60Bを通じて外部に流れつつ、連通流路68を通じて、第1冷却流路65に流入する。第1冷却流路65に流入した冷却液は、モータケーシング3の外周面3cに接触して、モータケーシング3(およびモータ固定子6)を直接的に冷却する。冷却液は、第1冷却流路65の全体を流れ、冷却液出口60Bを通じて外部に流れる。
【0046】
このように、冷却液の供給が継続されると、冷却液は、第1冷却流路65、第2冷却流路70、および連通流路68を満たし、モータポンプの温度上昇を抑制することができる。
【0047】
図4に示す実施形態では、連通流路68は、第2冷却流路70から放射状に延びる放射流路であるが、第2冷却流路70を取り囲むように配置された環状流路であってもよいし、断面Aに広がる平面でもよい。また、連通流路68の数や形状は図示限りでなく連通流路68は第1冷却流路65と第2冷却流路70とを連通できればよい。
【0048】
図5は、冷却ジャケット60のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成と作用効果は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図5に示すように、冷却ジャケット60はその外面に形成された補強リブ75を備えている。
【0049】
補強リブ75は、モータケーシング側部位60aから延びるモータケーシング側補強リブ75Aと、放熱部材側部位60bから延びる放熱部材側補強リブ75Bと、を備えている。図5に示す実施形態では、複数の補強リブ75Aおよび複数の補強リブ75Bが設けられているが、補強リブ75Aの数および補強リブ75Bの数は、本実施形態には限定されない。一実施形態では、単一の補強リブ75Aおよび単一の補強リブ75Bが設けられてもよい。
【0050】
図5に示す実施形態によれば、補強リブ75は、冷却ジャケットの強度を増加させることができる。さらに、補強リブ75を設けることにより、冷却ジャケット60の表面積を増大することができるため、モータケーシング3の熱を奪った冷却液をより効率的に冷却することができる。つまり、補強リブ75は、放熱フィンとしての機能を有する。一実施形態では、補強リブ75は、図1および図2に示すモータポンプに適用されてもよい。この補強リブ75により、本実施形態のモータポンプの搬送液が引火爆発の危険性がある引火性液体の場合や可燃性ガスまたは引火性液体により引火爆発の危険性がある場所に設置される場合でも、安全に運転することができる。
【0051】
図6は、着脱可能な分割体から構成された冷却ジャケットの一実施形態を示す図である。図7は、着脱可能な分割体から構成された冷却ジャケットの他の実施形態を示す図である。図6に示すように、冷却液が流れる冷却流路を有する冷却ジャケットは、互いに着脱可能な第1分割体80Aおよび第2分割体80Bから構成されている。図6に示す実施形態では、冷却ジャケット60は、左右二つ割り構造を有しており、図7に示す実施形態では、冷却ジャケット60は、上下二つ割り構造を有している。
【0052】
図6および図7に示すように、第1分割体80Aは、その両端から延びる第1両側フランジ81を有しており、第2分割体80Bは、その両端から延びる第2両側フランジ82を有していることが好ましい。本実施形態では、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82は、不図示のシール部材を介して締結具(例えば、ボルトとナット)85によって互いに締結可能である。但し、これに依らず第1分割体80Aと第2分割体80Bが水密に締結可能であればよく、一実施形態では嵌合式でもよい。冷却ジャケット60がモータケーシング3に着脱できることで、冷却ジャケット60の有無や設計変更によってモータポンプは幅広い温度範囲に適応できる。
【0053】
図6および図7に示すように、吸込ポート15(言い換えれば、液体流路X)の吸込口15a、冷却液入口60A、および冷却液出口60Bは、一直線上に配置されており、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82は、吸込ポート15、冷却液入口60A、および冷却液出口60Bの中心を通る面にて接続される。ここで、冷却ジャケット60が耐圧防爆構造を有している場合、強度的に優位な鋳物にて作成されることが好ましい。この、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82、吸込ポート15、冷却液入口60A、および冷却液出口60Bの位置関係は、冷却ジャケット60が鋳物で形成される場合に鋳型から抜きやすくなる、という製造上のメリットがあり製造工程を簡略化できる。
【0054】
図6に示す実施形態では、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bは、鉛直方向に配置されており、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82は、鉛直方向に延びている。図7に示す実施形態では、冷却液入口60Aおよび冷却液出口60Bは、水平方向に配置されており、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82は、水平方向に延びている。
【0055】
図6に示すように、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82が鉛直方向に延び、または、図7に示すように、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82が水平方向に延びることにより、次のような効果を奏することができる。つまり、モータポンプの設置環境によっては、モータポンプの上下方向にスペースがない場合やモータポンプの紙面左右方向にスペースがない場合がある。例えば、モータポンプの上下方向にスペースがない場合には、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82が水平方向に延びるように、冷却ジャケット60を配置し(図7参照)、モータポンプの左右方向にスペースがない場合には、第1両側フランジ81および第2両側フランジ82が鉛直方向に延びるように、冷却ジャケット60を配置する(図6参照)。このように、必要に応じて回転して用いることができる構成により、モータポンプの設置環境によって、モータポンプの配置や作業が阻害されることはない。
【0056】
上述した着脱可能な分割構造は、上述したすべての冷却ジャケット60に適用されてもよい。特に、冷却ジャケット60が耐圧防爆構造であるときには、冷却ジャケット60本体が大型化するため、冷却ジャケット60を分割構造にすることで、着脱の作業性や配管等の設置作業性を向上できる。また、冷却ジャケット60が耐圧防爆構造であるときには、第1分割体80Aと第2分割体80Bとの締結構造も大型化する。よって、冷却ジャケット60の配置を選択できることで作業性が向上する。なお、本実施形態の冷却ジャケット60は図6に示す冷却ジャケット60を90度回転すると図7の冷却ジャケットとなる。しかしながら、一実施形態として図6に示す冷却ジャケット60と図7に示す冷却ジャケット60は別々に構成されてもよい。その場合は、ユーザーが必要に応じてどちらかを選択できるとよい。
【0057】
図8は、モータポンプ上に載置された端子箱を示す図である。図9は、モータポンプ上に載置された端子箱の側面図である。図10は、モータポンプ上に載置された端子箱を上から見た図である。図8乃至図10に示すように、端子台(図示しない)などの部材を収容する端子箱100は、モータポンプ(より具体的には、冷却ジャケット60)の上に配置されてもよい。
【0058】
図8乃至図10に示す実施形態では、端子箱100は、吸込ポート15側にはみ出して配置されている(図9参照)。図10に示すように、ポンプケーシング2側、冷却ジャケット60の一方の側面(第1側面)60Cの側、および冷却ジャケット60の他方の側面(第2側面)60Dの側のうち、少なくとも2つの側の内側に端子箱100を配置する。このような配置により、図10に示すように、モータポンプが壁WL1~WL3の何れかに接近して配置されたとしても、端子箱100の配線作業スペースを壁WL1~WL3側に設けることなく、より小さなスペースに配置することができる。つまり、配線口(配線取り出し口)102が配管作業用のスペースが必要な吸込口15aと同じ方向を向いて配置されていることで、吸込口15aへの配管作業スペースと端子箱100の配線スペースが共用される。これにより、端子箱100の配線スペースが十分に確保され作業効率が上がる。なお、本実施形態では、配線口102が吸込口15aと同じ方向を向いて配置されたが、一実施形態として、配線口102が吐出口16aと同じ方向を向いて配置されてもよい。この場合も吐出口16aへの配管作業スペースと端子箱100の配線スペースが共有されるため、端子箱100の配線作業効率が上がる。
【0059】
端子箱100は、端子箱本体100aと、端子箱本体100aを閉じる蓋100bと、を備えている。モータポンプは、可燃性ガスまたは引火性液体により引火爆発の危険性がある場所に設置される場合がある。周囲の設備の安全性向上を図るために、端子箱100の内部で爆発性ガスによる爆発が起こっても、端子箱100がその圧力に耐え、かつ外部の爆発性ガスに引火するおそれのないようにした全閉の耐圧防爆構造を採用することが望ましい。
【0060】
そこで、蓋100bは、締結具101によって端子箱本体100aに締結される。より具体的には、図8に示すように、締結具101は、端子箱本体100aを貫通して延びる通しボルトであり、モータケーシング3まで延びている。したがって、蓋100bとモータケーシング3との間に端子箱本体100aを挟んだ状態で、締結具101をこれら蓋100bおよび端子箱本体100aに挿入して、締結具101を締め付けることにより、端子箱100をモータポンプに固定することができる。なお、図8に示すように、複数の締結具101は、まとめて締結具101aと呼ばれてもよい。
【0061】
また、図9に示すように、端子箱100がモータポンプの吸込口15aからはみ出した位置に配置される場合がある。冷却ジャケット60からはみ出した位置にある締結具101は、蓋100bを端子箱本体100aに締結する締結具である。
【0062】
なお、締結具101で蓋100bを端子箱本体100aに締結したとき、締結具101は鉛直方向に延びている。つまり、吐出口16aの締結作業に必要なスペースが配管作業用のスペースが必要な吐出口16aと同じ方向を向いて配置されていることで、吐出口16aへの配管作業スペースと締結具101の締結スペースが共用される。これにより、締結具101の締結スペースが十分に確保され作業効率が上がる。なお、本実施形態では、締結具101は吐出口16aと同じ鉛直方向に延びて配置されたが、一実施形態として、締結具101は吸込口15aと同じ方向を向いて配置されてもよい。この場合も吸込口15aへの配管作業スペースと締結具101の締結作業スペースが共有されるため、締結具101の締結作業の効率が上がる。
【0063】
図11は、モータポンプの下方に配置された端子箱100を示す図である。図12は、モータポンプの下方に配置された端子箱100の側面図である。図11および図12に示す実施形態においても、端子箱100は、吸込ポート15側にはみ出して配置されている(図12参照)。図11および図12に示す実施形態においても、ポンプケーシング2側、冷却ジャケット60の一方の側面(第1側面)60Cの側、および冷却ジャケット60の他方の側面(第2側面)60Dの側のうち、少なくとも2つの側よりも内側に端子箱100を配置する。このような配置により、端子箱100をより小さなスペースに配置することができる。つまり、モータポンプが壁WL1~WL3の何れかに接近して配置されたとしても、端子箱100の配線作業スペースを壁WL1~WL3側に設けることなく、より小さなスペースに配置することができる。
【0064】
配線口102は、吸込ポート15と同じ方向を向いて配置されている。より具体的には、配線口102は、吸込ポート15、冷却液入口60A、および冷却液出口60Bの斜め下方に配置されている(図11参照)。このような配置により、ケーブルは、吸込ポート15、冷却液入口60A、および冷却液出口60Bのいずれにも接触することなく、配線口102を通じて、端子箱100内の端子台(図示しない)に接続可能である。また、万が一、吸込ポート15、冷却液入口60A、および冷却液出口60Bの何れかから液漏れしたときに、端子箱100に配線される線が被水するのを防止することができる。
【0065】
蓋100bは、締結具103によって端子箱本体100aに締結される。より具体的には、図12に示すように、蓋100bは、端子箱本体100aの側面を閉じるように構成されている。蓋100bを端子箱本体100aに接触させた状態で、締結具103をこれら蓋100bおよび端子箱本体100aに挿入して、締結具103を締め付けることにより、端子箱100を組み立てることができる。締結具103で蓋100bを端子箱本体100aに締結したとき、締結具101は水平方向に延びている。
【0066】
このように、端子箱100をモータポンプの上方に配置する場合であっても、モータポンプの下方に配置する場合であっても、端子箱100を上方から見た場合に吸込ポート15側でのみ、はみ出して配置される。したがって、耐圧防爆構造を有することでサイズが大きくなった端子箱100を備えたモータポンプであっても、当該モータポンプの設置スペースは省スペース化を実現することができる。
【0067】
上述のモータポンプは、取り扱い液(例えば、水、シリコーンオイルなど)の温度の範囲が低温(例えば、マイナス25度)から高温(例えば、160度)である場合がある。さらに、モータ固定子が高温になると、モータ固定子を収容するモータケーシングの表面温度も上昇してしまう。モータポンプは、可燃性ガスまたは引火性液体により引火爆発の危険性がある場所に設置される場合がある。上述の冷却ジャケット60を備えたモータポンプであれば、高温の液体を取り扱う場合であっても、モータケーシング3の表面温度の上昇を抑制することができる。また、冷却ジャケット60を有することで、モータポンプは、可燃性ガスまたは引火性液体により引火爆発の危険性がある場所に設置される場合でも、冷却ジャケット60内部で爆発性ガスによる爆発が起こっても、冷却ジャケット60がその圧力に耐え、かつ外部の爆発性ガスに引火するおそれのないようにした全閉の耐圧防爆構造とすることができ、周囲の設備の安全性向上を図ることができる。
【0068】
図13は、モータケーシング3の表面温度の上昇を抑制する冷却機構のさらに他の実施形態を示す図である。図13に示す実施形態では、冷却ジャケット60は設けられておらず、その代わりに、モータポンプは、モータケーシング3の内部に形成された冷却流路65を備えている。冷却流路65は、モータ固定子6を取り囲むように配置されており、冷却流路65の内部には、冷却用の流体が流れている。このような構成によっても、上述した実施形態に係るモータポンプの効果と同様の効果を奏することができる。
【0069】
図14は、モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。例えば、図8図12に示すような端子台に代えて、モータポンプは、カバープレート20aに形成されたケーブル引き込み口200を有してもよい。図14に示す実施形態では、冷却流路65を備えた面とは別の面にケーブル引き込み口200が設けられており、当該ケーブル引き込み口200からケーブル(例えば、信号線や動力線)を引き出している。特に、耐圧防爆構造の場合、可燃性ガスまたは引火性液体により引火爆発しないようケーブル引き込み口200の構造が複雑化し大型となる。よって、耐圧防爆構造によってケーブル引き込み口200が大型化しても冷却流路65と異なる面にケーブル引き込み口200を配置することでモータポンプをコンパクト化できる。特に、本実施形態のように、吸込口15aとケーブル引き込み口200を同じ方向で配置すれば、吸込口15aへの配管作業スペースとケーブル引き込み口200が共有されるため、モータポンプをコンパクト化できる。しかしながら、一実施形態では、ケーブル引き込み口200は端子箱100と同様の位置に配置されてもよい。
【0070】
なお、上述の全てのモータポンプにおいて、放熱部材20またはおよび吸込ポート15はなくてもよい。その場合、放熱部材20またはおよび吸込ポート15に代えてモータケーシング3、またはモータケーシング3の開口を閉じるカバー等が吸込口15aを形成するとよい。さらに、図4に示すように、モータケーシング3の外周面は、矩形である。しかしながら、モータケーシング3の形状はこれに限定されず、例えば、冷却流路65の延びる方向CLに沿って延びる円筒形や多角形でもよい。
【0071】
上述したように、モータポンプの吸込口15aおよび吐出口16bには、上流側もしくは下流側の機器や設備と連通するための配管が接続される。例えば、モータポンプに接続される配管の端部がフランジを有し、当該フランジにてモータポンプと接続される場合、モータポンプにも同じ種類のフランジを設け、締結具(例えば、ボルトとナット)で両フランジを結合する。フランジは、例えば、JIS規格に準じたものが使用される。また、フランジ等の配管や締結具にアクセスするための作業スペースを設ける必要がある。そのため、モータポンプのサイズに関わらず、設置スペースが一律に大きくなってしまうという課題があった。また、搬送液、機器、設備等によってモータポンプに接続されるフランジの種類が異なる。そこで、以下の実施形態では、フランジ接続でもコンパクトな設置スペースを実現し、且つ、様々な種類のフランジに対応可能なモータポンプについて、図面を参照して説明する。
【0072】
図15は、モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。図15に示すように、モータポンプは、液体流路Xの吸込口が形成されたフランジ接続部300を備えている。以下の実施形態では、主に、図14に記載のモータポンプと異なる機能構造について説明する。フランジ接続部300は、上述した実施形態に係る放熱部材20に相当する。したがって、フランジ接続部300は、カバープレート20aに相当するカバープレート300aと、固定リング20bに相当する固定リング300bと、を備えている。本実施形態では、モータケーシング3、カバープレート300a、固定リング300b並びに吸込ポート15は別々の部品で構成されている。但し、一実施形態では、モータケーシング3、カバープレート300a、固定リング300bおよび吸込ポート15のうち、少なくとも2つが一体的に構成されてもよい。
【0073】
フランジ接続部300は、モータポンプに連結されるフランジ部材310に対向するフランジ対向面301と、フランジ対向面301に形成された締結具311が螺合可能な螺合部302と、を有している。図15に示す実施形態では、締結具311は、ねじである。螺合部302は、フランジ対向面301から液体流路Xに沿って延びる方向に形成されたねじ溝である。一実施形態では、螺合部302は、フランジ対向面301から突出するねじ部であり、締結具311は、この螺合部(ねじ部)302に螺合可能なナットであってもよい。
【0074】
フランジ部材310には、締結具311が貫通する貫通孔310aが形成されている。フランジ部材310をフランジ接続部300のフランジ対向面301に接触させた状態で、締結具311を貫通孔310aおよび螺合部302に挿入し、締結具311を締め付けることにより、フランジ部材310はフランジ接続部300に接続される。なお、フランジ部材310とフランジ対向面301とは、不図示のシール部材(ガスケットやOリング等)を介して接続されてもよい。
【0075】
このように、モータポンプは、フランジ接続部300を備えているため、フランジ部材310をモータポンプに接続しても、すなわち、配管がフランジ接続であっても、モータポンプのコンパクト化を実現することができる。また、本実施形態では、モータポンプの設置スペースをコンパクト化できる。
【0076】
フランジ接続部300は、モータケーシング3に着脱可能であることが好ましい。より具体的には、図15に示すように、フランジ接続部300は、モータケーシング3に装着可能な装着部303を有している。モータケーシング3は、フランジ接続部300の装着部303に対応する形状を有しており、フランジ接続部300は、装着部303を介してモータケーシング3に装着可能である。一実施形態では、装着部303は、螺合構造を有しており、フランジ接続部300は、螺合によってモータケーシング3に装着される。他の実施形態では、装着部303は、嵌合構造を有しており、フランジ接続部300は、嵌合によってモータケーシング3に装着される。更に、他の実施形態では、フランジ接続部300は、締結具(例えばボルトとナット)にてモータケーシング3に装着される。本実施形態のモータポンプは、フランジ接続部300がモータケーシング3に着脱可能であるため、フランジ接続部300を設計変更すれば、様々な種類のフランジに対応できる。ここで、比較例として、異なるフランジに対応するため、ニップルを介して、吸込口15aおよび吐出口16bにフランジを設ける方法を挙げる。比較例の方法によると、ニップルとフランジの接続部から搬送液が漏れるおそれがある。本実施形態では、フランジ接続部300がモータケーシング3に装着されるため、比較例に比べて広い面積にてシールできるので、搬送液の漏水を防止できる、といった効果も奏する。
【0077】
図15に示すように、フランジ接続部300は、モータ固定子6を冷却するための流体が流れる連通流路315を有している。連通流路315は、フランジ接続部300の内部に形成されており、モータ固定子6に隣接している。モータケーシング3は、その内部に形成された冷却流路65を有しており、連通流路315は、冷却流路65に連通していることが好ましい。より具体的には、連通流路315および冷却流路65は、連通路316を通じて互いに連通している。連通路316は、モータケーシング3の一部およびフランジ接続部300の一部から構成されている。
【0078】
モータケーシング3は、その冷却流路65に接続された出入り口320A,320Bを有している。搬送液よりも低い温度の流体は、出入り口320A,320Bのいずれか(図15に示す実施形態では、出入り口320A)を通じてモータケーシング3の内部の冷却流路65に導入される。なお、本実施形態では、出入り口320Aはモータケーシング3の下部に形成されており、出入り口320Bはモータケーシング3の上部に形成されている。但し、これに依らず、出入り口320A,320Bはモータケーシング3または/およびフランジ接続部300の外周面に設けられればよい。例えばモータケーシング3または/およびフランジ接続部300の軸線CLの延長線上に形成されたり、出入り口320A,320Bの両方がモータケーシング3または/およびフランジ接続部300の上部または下部に形成されていてもよい。
【0079】
冷却流路65に導入された流体は、連通路316を通じて連通流路315に流れ込み、冷却流路65、連通路316、および連通流路315は、冷却液で満たされる。この状態で、冷却液は、出入り口320Bから流出する。このように、冷却液が冷却流路65および連通流路315を流れることにより、モータ固定子6は冷却液によって冷却される。なお、モータ固定子6に冷却が必要ない場合、冷却流路65および連通流路315等はなくてもよい。
【0080】
図16は、モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図16に示すように、モータポンプは、吐出口が形成されたフランジ接続部330を備えている。フランジ接続部330は、フランジ部材310に対向するフランジ対向面331と、締結具311が螺合可能な螺合部332と、を有している。
【0081】
上述した実施形態では、モータポンプは、エンドトップ型モータポンプであるが、図16に示す実施形態に係るモータポンプは、吸込口15aおよび吐出口16aが一直線上に並ぶインライン型モータポンプである。図16に示す実施形態においても、フランジ部材310をフランジ接続部330のフランジ対向面331に接触させた状態で、締結具311を貫通孔310aおよび螺合部332に挿入し、締結具311を締め付けることにより、フランジ部材310はフランジ接続部330に接続される。
【0082】
図16に示す実施形態において、フランジ接続部330は、ポンプケーシング2に着脱可能である。より具体的には、図16に示すように、フランジ接続部330は、ポンプケーシング2に装着可能な装着部333を有している。ポンプケーシング2は、フランジ接続部330の装着部333に対応する形状を有しており、フランジ接続部330は、装着部333を介してポンプケーシング2に装着可能である。一実施形態では、装着部333は、螺合構造を有してもよく、他の実施形態では、装着部333は、嵌合構造を有してもよいし、フランジ接続部330とポンプケーシング2とが何らかの締結具で締結されてもよい。なお、図15に示す装着部303は、フランジ接続部300の外周側に形成されている。これと同様に、装着部333がフランジ接続部330の外周側に形成されてもよいし、図15に示す装着部303が装着部333と同様に、液体流路X側に形成されてもよい。
【0083】
図15に示す実施形態と図16に示す実施形態とは、組み合わされてもよい。つまり、モータポンプは、図15に示すフランジ接続部300と、図16に示すフランジ接続部330と、を備えてもよい。このような構成の場合、モータポンプは、上流側の機器および下流側の機器に対して、フランジ接続をすることができる。また、モータポンプをコンパクトに設置できるとともに、様々な接続方法やフランジに容易に対応できる。
【0084】
図17は、モータポンプのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、上述した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図17に示すように、図1に示す実施形態と図15に示す実施形態とを組み合わせてもよい。より具体的には、モータポンプは、冷却ジャケット60と、連通流路315と、冷却ジャケット60および連通流路315を連通させる連通路336と、を備えている。なお、冷却ジャケット60とフランジ接続部300は一体的に構成されてもよい。
【0085】
なお、上述した実施形態は、可能な限り、組み合わされてもよい。モータポンプは、図1図14に示す実施形態に係る構成と、図15図16に示す実施形態に係る構成と、を備えてもよい。
【0086】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0087】
1 羽根車
2 ポンプケーシング
3 モータケーシング
3a 液体流路
3b ねじ孔
3c 外周面
5 永久磁石
6 モータ固定子
6A 固定子コア
6B 固定子コイル
9 Oリング
10 軸受
10a 液体流路
11 回転側軸受
12 固定側軸受
12a ラジアル面
12b スラスト面
13 Oリング
15 吸込ポート
15a 吸込口
15b 液体流路
15c 基部
15d 軸部
15e ねじ部
15f 環状溝
16 吐出ポート
16a 吐出口
20 放熱部材
20a カバープレート
20b 固定リング
32 側壁部
60 冷却ジャケット
60a モータケーシング側部位(第1部位)
60b 放熱部材側部位(第2部位)
60A 冷却液入口
60B 冷却液出口
61 内面
62 凹部
63 放熱部材側の面(第1面)
65 第1冷却流路
66 反対側の面(第2面)
67 溝部
68 連通流路
70 第2冷却流路
75,75A,75B 補強リブ
100 端子箱
100a 端子箱本体
100b 蓋
101 締結具
102 配線口
103 締結具
200 ケーブル引き込み口
300 フランジ接続部
300a カバープレート
300b 固定リング
301 フランジ対向面
302 螺合部
303 装着部
310 フランジ部材
310a 貫通孔
311 締結具
315 連通流路
316 連通路
320A,320B 出入り口
330 フランジ接続部
331 フランジ対向面
332 螺合部
333 装着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17