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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-05
(45)【発行日】2024-03-13
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20240306BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240306BHJP
【FI】
H05K3/38 A
H05K3/46 T
H05K3/46 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020162183
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054913
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】雪入 裕司
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-164305(JP,A)
【文献】特開2016-219478(JP,A)
【文献】特開2001-203313(JP,A)
【文献】特開2007-067217(JP,A)
【文献】特開2012-235166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の一方の面に形成された配線層と、
前記第1絶縁層の一方の面に形成され、前記配線層を被覆する第2絶縁層と、を有し、
前記第2絶縁層は、前記配線層の前記第1絶縁層から露出する面の少なくとも一部を被覆する第1樹脂層と、前記第1樹脂層を被覆する第2樹脂層と、を含み、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層、及び前記第1絶縁層の一方の面と接し、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、樹脂とフィラーを含有し、
前記第1樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率は、前記第2樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率よりも高い、配線基板。
【請求項2】
前記第1樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率は、前記第2樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率の1.5倍以上である、請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1樹脂層に含まれる単位面積当たりのフィラーの比率は、前記第2樹脂層に含まれる単位面積当たりのフィラーの比率よりも低い、請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記第1樹脂層の厚さは、前記第2樹脂層の厚さよりも薄い、請求項1乃至3の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第2絶縁層全体でのフィラーの含有率が50wt%以上である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記配線層の前記第1絶縁層から露出する面の表面粗さ(Ra)は200nm以下である、請求項1乃至5の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記第2絶縁層に埋設されたビア配線を有し、前記ビア配線は前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層を貫通し、前記配線層と接している、請求項1乃至6の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1樹脂層の厚さは、前記第2樹脂層の厚さよりも薄い、請求項1乃至7の何れか一項に記載の配線基板。
【請求項9】
第1絶縁層の一方の面に配線層を形成する工程と、
前記配線層の前記第1絶縁層から露出する面に有機被膜処理を行う工程と、
前記第1絶縁層の一方の面に、前記配線層を被覆する第2絶縁層を形成する工程と、を有し、
前記第2絶縁層を形成する工程は、
フィラーを含有する熱硬化性樹脂を準備し、前記第1絶縁層の一方の面に、前記配線層を被覆するように前記熱硬化性樹脂を配置する工程と、
前記熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度よりも低い温度で前記熱硬化性樹脂を加熱し、その後、前記熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度よりも高い温度で前記熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる工程と、を含み、
前記硬化させる工程では、前記配線層の前記第1絶縁層から露出する面の少なくとも一部を被覆する第1樹脂層と、前記第1樹脂層を被覆する第2樹脂層と、を含む前記第2絶縁層が形成され、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、樹脂とフィラーを含有し、
前記第1樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率は、前記第2樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率よりも高い、配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記有機被膜処理を行う工程よりも前に、前記配線層の前記第1絶縁層から露出する面に粗化処理を行う工程を有する、請求項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記第2絶縁層にレーザを照射し、前記第2絶縁層に前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層を貫通して前記配線層を露出するビアホールを形成する工程を有する、請求項又は10に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂を含む絶縁層と配線層が交互に積層された配線基板が知られている。このような配線基板において、絶縁層と配線層との密着性は重要である。そのため、配線層の表面に粗化処理を施して配線層の表面に凹凸を形成し、アンカー効果をもたせることで、絶縁層と配線層との密着性を向上させる方法が採られる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-235166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、絶縁層は樹脂の他にフィラーを含む場合がある。この場合、フィラーと配線層とが接するため、絶縁層と配線層との密着性を確保することが困難である。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、フィラーを含む絶縁層と配線層との密着性を向上可能な配線基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本配線基板は、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の一方の面に形成された配線層と、前記第1絶縁層の一方の面に形成され、前記配線層を被覆する第2絶縁層と、を有し、前記第2絶縁層は、前記配線層の前記第1絶縁層から露出する面の少なくとも一部を被覆する第1樹脂層と、前記第1樹脂層を被覆する第2樹脂層と、を含み、前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層、及び前記第1絶縁層の一方の面と接し、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層は、樹脂とフィラーを含有し、前記第1樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率は、前記第2樹脂層に含まれる単位面積当たりの樹脂の比率よりも高い。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、フィラーを含む絶縁層と配線層との密着性を向上可能な配線基板の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る配線基板を例示する図である。
図2】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】比較例に係る配線基板を例示する断面図である。
図5】応用例1に係る多層配線基板を例示する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[配線基板の構造]
図1は、第1実施形態に係る配線基板を例示する図であり、図1(a)は部分断面図、図1(b)は図1(a)のA部の拡大図である。
【0011】
図1を参照するに、配線基板1は、絶縁層10と、配線層20と、絶縁層30と、配線層40とを有している。
【0012】
なお、本実施形態では、便宜上、配線基板1の絶縁層30側を上側又は一方の側、絶縁層10側を下側又は他方の側とする。また、各部位の絶縁層30側の面を上面又は一方の面、絶縁層10側の面を下面又は他方の面とする。ただし、配線基板1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。また、平面視とは対象物を絶縁層10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を絶縁層10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0013】
絶縁層10は、例えば、多層配線の層間絶縁層として、ビルドアップ工法を用いて形成することができる絶縁層である。したがって、絶縁層10の下層として他の配線層や他の絶縁層が積層されていてもよい。また、絶縁層30の上層として他の配線層や他の絶縁層が積層されていてもよい。この場合、絶縁層10や他の絶縁層に適宜ビアホールを設け、ビアホールを介して配線層同士を接続することができる。
【0014】
絶縁層10の材料としては、例えば、非感光性(熱硬化性樹脂)のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。また、絶縁層10は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有してもかまわない。絶縁層10の厚さは、例えば、10~50μm程度とすることができる。絶縁層10の熱膨張係数は、例えば、10ppm/℃~50ppm/℃程度である。
【0015】
配線層20は、絶縁層10の上面10aに形成されている。配線層20の下面は絶縁層10の上面10aに接しており、配線層20の上面及び側面は絶縁層10から露出している。すなわち、配線層20は、絶縁層10の上面10aから上側に突出している。配線層20の厚さは、例えば、5~25μm程度とすることができる。配線層20の材料としては、例えば、銅(Cu)等を用いることができる。
【0016】
絶縁層30は、絶縁層10の上面10aに形成され、配線層20を被覆する。絶縁層30の材料としては、例えば、非感光性(熱硬化性樹脂)のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。また、絶縁層30は、シリカ(SiO)等のフィラー30Fを含有している。フィラー30Fの粒径は、例えば、5μm以下とすることができる。絶縁層30の厚さは、例えば、10~50μm程度とすることができる。絶縁層30の熱膨張係数は、例えば、10ppm/℃~50ppm/℃程度である。
【0017】
絶縁層30は、第1樹脂層31と、第2樹脂層32とを含む。第1樹脂層31は、配線層20の絶縁層10から露出する面(図1では配線層20の上面及び側面)を被覆している。例えば、配線層20が絶縁層10に埋め込まれ、上面のみが絶縁層10から露出する場合には、第1樹脂層31は配線層20の上面のみを被覆する。第2樹脂層32は、第1樹脂層31を被覆している。第1樹脂層31の厚さは、第2樹脂層32の厚さよりも薄い。第1樹脂層31の厚さは、例えば、1μm~3μm程度である。第1樹脂層31の厚さは場所によりばらつきがあってもよいが、厚い方が好ましい。
【0018】
なお、第1樹脂層31は、配線層20の絶縁層10から露出する面をおおよそ被覆するが、完全に被覆する必要はない。つまり、第1樹脂層31は、配線層20の絶縁層10から露出する面の少なくとも一部を被覆していればよく、配線層20の絶縁層10から露出する面は、第2樹脂層32と接する部分を有してもよい。第1樹脂層31は、配線層20の絶縁層10から露出する面の70%以上を被覆していることが好ましく、80%以上を被覆していることがより好ましく、90%以上を被覆していることがさらに好ましい。第1樹脂層31は、配線層20の絶縁層10から露出する面の全てを被覆していることが特に好ましい。
【0019】
第1樹脂層31及び第2樹脂層32は、樹脂30Rとフィラー30Fを含有している。つまり、第1樹脂層31及び第2樹脂層32は、同じ樹脂と同じフィラーを含有している。ただし、第1樹脂層31及び第2樹脂層32は、樹脂30Rとフィラー30Fを含有する量が異なる。第1樹脂層31に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率は、第2樹脂層32に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率よりも高い。すなわち、第1樹脂層31は、樹脂リッチ層である。言い換えれば、第1樹脂層31に含まれる単位面積当たりのフィラー30Fの比率は、第2樹脂層32に含まれる単位面積当たりのフィラー30Fの比率よりも低い。
【0020】
例えば、第1樹脂層31に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率は70%以上であり、第2樹脂層32に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率50%以下である。第1樹脂層31に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率は、第2樹脂層32に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率の1.5倍以上であることが好ましい。例えば、第1樹脂層31に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率は、第2樹脂層32に含まれる単位面積当たりの樹脂30Rの比率の1.5倍~2倍程度となるが、2倍より大きくてもよい。なお、単位面積当たりの樹脂の比率は、絶縁層の断面写真を画像処理することで求められる。
【0021】
配線層40は、絶縁層30の一方の側に形成されている。配線層40は、絶縁層30の第1樹脂層31及び第2樹脂層32を貫通し配線層20の上面を露出するビアホール30x内に充填されたビア配線、及び絶縁層30の上面に形成された配線パターンを含んでいる。絶縁層30に埋設されたビア配線は、第1樹脂層31及び第2樹脂層32を貫通し、配線層20の上面と接している。つまり、配線層40の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層20と電気的に接続されている。ビアホール30xは、例えば、絶縁層30の上面側に開口されている開口部の径が配線層20の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。配線層40の材料は、例えば、銅等である。
【0022】
[配線基板の製造方法]
次に、第1実施形態に係る配線基板の製造方法について説明する。図2及び図3は、第1実施形態に係る配線基板の製造工程を例示する図である。なお、本実施形態では、単品の配線基板を形成する工程を示すが、配線基板となる複数の部分を作製後、個片化して各配線基板とする工程としてもよい。
【0023】
まず、図2(a)に示す工程では、絶縁層10を準備し、絶縁層10の上面10aに配線層20を形成する。配線層20は、セミアディティブ法、サブトラクティブ法等の各種配線形成方法を用いて形成できる。一例として、セミアディティブ法により配線層20を形成する方法を以下に示す。
【0024】
まず、絶縁層10の上面10aに、無電解めっき法又はスパッタ法により、銅(Cu)等からなるシード層を形成する。次に、シード層上に配線層20に対応する開口部を備えたレジスト層を形成する。次に、シード層を給電層に利用した電解めっき法により、レジスト層の開口部内に露出するシード層の表面に銅(Cu)等を析出させ、電解めっき層を形成する。次に、レジスト層を除去した後、電解めっき層をマスクにして、電解めっき層に覆われていない部分のシード層をエッチングにより除去する。これにより、シード層上に電解めっき層が積層された配線層20が形成される。
【0025】
次に、図2(b)に示す工程では、配線層20の絶縁層10から露出する面(上面及び側面)に粗化処理を行う。そして、粗化処理後、配線層20の絶縁層10から露出する面(上面及び側面)の酸化防止及び絶縁層30との密着性向上のため、有機被膜処理を行う。粗化処理は、例えば、エッチング、酸化、ブラスト等の方法により行うことができる。ただし、粗化処理は必須ではなく、必要に応じて行えばよい。高周波数帯での信号の遅延の発生を回避する観点から、配線層20の上面及び側面の表面粗さ(Ra)は0nm以上200nm以下が好ましく、0nm以上150nm以下がより好ましく、0nm以上100nm以下が特に好ましい。有機被膜処理には、例えば、アミン化合物とメタノールを主成分とする混合物(例えば、防錆処理液)を使用できる。有機被膜処理により、配線層20の上面及び側面は、例えば、厚さ10nm以下程度の有機被膜20Sで被覆される。
【0026】
次に、図2(c)に示す工程では、絶縁層10の上面10aに配線層20を被覆する絶縁層30を形成する。絶縁層30を形成する工程では、例えば、まず、シリカ(SiO)等のフィラーを含有する熱硬化性樹脂を準備し、絶縁層10の上面10aに、配線層20を被覆するように熱硬化性樹脂を配置する。そして、熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度よりも低い温度で熱硬化性樹脂を加熱し、その後、熱硬化性樹脂の硬化に必要な温度よりも高い温度で熱硬化性樹脂を加熱して硬化させる。フィラーを含有する熱硬化性樹脂としては、例えば、半硬化状態のフィルム状のエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等を主成分とする非感光性の熱硬化性樹脂が挙げられる。或いは、フィルム状のエポキシ系樹脂等に代えて、液状又はペースト状の非感光性の熱硬化性樹脂を用いてもよい。
【0027】
配線層20の絶縁層10から露出する面は有機被膜20Sで被覆されているため、絶縁層30を積層する直前の配線層20は酸素と反応しない活性な状態を保っている。そのため、配線層20を被覆する熱硬化性樹脂を加熱すると、熱硬化性樹脂の熱硬化反応(架橋反応)が進むと同時に、配線層20を構成する金属(Cu等)と熱硬化性樹脂中の水酸基が反応する。
【0028】
これにより、フィラーを含有する熱硬化性樹脂中の樹脂成分のみが配線層20の絶縁層10から露出する面の付近に移動する。その結果、配線層20の絶縁層10から露出する面の少なくとも一部を被覆する樹脂リッチな第1樹脂層31が形成される。また、第1樹脂層31を被覆するように、単位面積当たりの樹脂の比率が第1樹脂層31よりも低い第2樹脂層32が形成される。なお、加熱により、有機被膜20Sの一部又は全部が消失する。
【0029】
このように、フィラーを含有する熱硬化性樹脂を加熱して絶縁層30を形成する際には、2段階の熱処理を行うことが好ましい。これにより、第1樹脂層31を厚く形成できる。具体的には、例えば、使用する熱硬化性樹脂の最低溶融温度付近の低温側(例えば90℃~140℃程度)で30分以上保持したのち、使用する熱硬化性樹脂の硬化に必要な高温側(例えば、160℃以上)の温度を20分以上加える。この方法では、低温側の温度で熱硬化性樹脂が軟化し樹脂成分のみが配線層20の上面及び側面の付近に移動しやすい状態を長時間作り出すことで、第1樹脂層31をより厚く形成できる。
【0030】
なお、軟化した樹脂成分が配線層20の付近に移動する際に、フィラーが一緒に移動する場合もある。フィラーの粒径がばらついている場合、小径のフィラーの方が大径のフィラーよりも移動しやすいため、配線層20の付近には、比較的小径のフィラーが集まりやすい。つまり、第1樹脂層31には、比較的小径のフィラーが集まりやすい。
【0031】
次に、図3(a)に示す工程では、絶縁層30に、絶縁層30を貫通し配線層20の上面を露出させるビアホール30xを形成する。ビアホール30xは、例えば、絶縁層30にCOレーザ等のレーザを照射するレーザ加工法により形成できる。ビアホール30xを形成後、デスミア処理を行い、ビアホール30xの底部に露出する配線層20の上面に付着した樹脂残渣を除去することが好ましい。
【0032】
次に、絶縁層30の一方の側に配線層40を形成する。配線層40は、ビアホール30x内に充填されたビア配線、絶縁層30の上面に形成された配線パターンを含む。配線層40の配線パターンは、ビアホール30xの底部に露出した配線層20と電気的に接続される。以上の工程により、配線基板1が完成する。
【0033】
ここで、比較例を示しながら、配線基板1の奏する効果について説明する。図4は、比較例に係る配線基板を例示する断面図である。図4に示す配線基板1Xは、絶縁層30が絶縁層30Aに置換された点が、配線基板1(図1等参照)と相違する。
【0034】
絶縁層30Aは、絶縁層30のように2層構造になっていない。つまり、絶縁層30Aにおける単位面積当たりの樹脂の比率は、配線基板1の第2樹脂層32と同じであり、絶縁層30Aは第1樹脂層31に相当する樹脂リッチ層を有していない。
【0035】
絶縁層30Aでは、配線層20の周囲に樹脂リッチ層が存在しないため、配線層20の周囲には多くのフィラー30Fが存在し、配線層20に接触しているフィラー30Fも多い。しかし、配線層20とフィラー30Fは接触しているだけで密着はしていない。そのため、配線層20とフィラー30Fが接触している箇所が多いほど、配線層20と絶縁層30Aとの密着性が低下し、配線層20と絶縁層30Aとの界面が剥がれやすくなる。
【0036】
特に、上面側にビアホール30xが形成される配線層20では、ビアホール30xを形成するためのレーザ加工時に熱ストレスが加わる。そのため、配線層20の周囲の樹脂30Rが炭化し、密着力がますます低下することになり、配線層20と絶縁層30Aとの界面が一層剥がれやすくなる。
【0037】
また、配線基板1Xにおいて、配線層20と絶縁層30Aとの界面の剥がれを抑制するために、配線層20の上面及び側面の粗度を大きくし、より多くの大きなアンカーを形成することは可能である。これにより、配線層20と絶縁層30Aとの接触面積が広がるため、両者の間の密着力を向上できる。しかし、配線層20の表面の大きなアンカーは、高周波数帯での信号遅延を発生されるため好ましくない。
【0038】
これに対して、配線基板1では、樹脂リッチな第1樹脂層31が配線層20の周囲に存在するため、配線層20の上面及び側面と第1樹脂層31を構成する樹脂との接触する面積が大きい。そのため、配線層20と絶縁層30との密着力が強くなる。その結果、配線層20と絶縁層30との界面の剥がれを抑制できる。配線層20に、ビアホール30xを形成するためのレーザ加工時に熱ストレスが加わった場合でも、配線層20と絶縁層30とが十分な密着力を維持するため配線層20と絶縁層30との界面が剥がれることを抑制できる。
【0039】
また、配線基板1では、第1樹脂層31の存在により配線層20と絶縁層30とが十分な密着力を有しているため、配線層20の表面に配線基板1Xのような大きなアンカーを形成する必要はない。そのため、配線基板1では、高周波数帯での信号の遅延の発生を回避することが可能となる。
【0040】
特に、近年では、配線基板を構成する絶縁層の熱ストレスを低減する目的で、低熱膨張係数の絶縁層が要求されるため、絶縁層においてシリカ等のフィラーの含有量が50wt%を超える場合がある。絶縁層においてフィラーの含有量が50wt%を超える場合には、配線基板1Xのように第1樹脂層が存在しないと、配線層と絶縁層との密着性が大きく低下する。したがって、絶縁層においてフィラーの含有量が50wt%を超える場合に、第1樹脂層を有する配線基板は、配線層と絶縁層との界面の剥がれを抑制できる点で特に有効である。配線基板1では、例えば、絶縁層30全体でのフィラーの含有率が50wt%以上である場合でも、配線層20と絶縁層30との間に十分な密着力が得られる。
【0041】
〈応用例1〉
応用例1では、絶縁層30と同一構造の絶縁層を含む多層配線基板の例を示す。なお、応用例1において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0042】
図5は、応用例1に係る多層配線基板を例示する断面図である。図5を参照すると、多層配線基板2は、コア層100の一方の面100aに順次積層された、配線層110、絶縁層111、配線層112、絶縁層113、配線層114、及びソルダーレジスト層115を有している。また、多層配線基板2は、コア層100の他方の面100bに順次積層された、配線層120、絶縁層121、配線層122、絶縁層123、配線層124、及びソルダーレジスト層125を有している。
【0043】
コア層100としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の絶縁性樹脂を含浸させた所謂ガラスエポキシ基板等を用いることができる。コア層100として、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の織布や不織布にエポキシ系樹脂等を含浸させた基板等を用いてもよい。
【0044】
配線層110は、コア層100の一方の面100aに形成されている。配線層110は、コア層100を貫通する貫通配線105を介して、配線層120と電気的に接続されている。配線層110の材料は、例えば、銅等である。絶縁層111は、コア層100の一方の面100aに配線層110を覆うように形成されている。絶縁層111の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂を主成分とする絶縁性樹脂等を用いることができる。絶縁層111の厚さは、例えば10~50μm程度とすることができる。絶縁層111は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有する。
【0045】
配線層112は、絶縁層111の一方の側に形成されている。配線層112は、絶縁層111を貫通し配線層110の上面を露出するビアホール111x内に充填されたビア配線、及び絶縁層111の上面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層112の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層110と電気的に接続されている。ビアホール111xは、例えば、絶縁層113側に開口されている開口部の径が配線層110の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。配線層112の材料は、例えば、銅等である。
【0046】
絶縁層113は、絶縁層111の上面に配線層112を覆うように形成されている。絶縁層113の材料や厚さは、例えば、絶縁層111と同様である。絶縁層113は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有する。
【0047】
配線層114は、絶縁層113の一方の側に形成されている。配線層114は、絶縁層113を貫通し配線層112の上面を露出するビアホール113x内に充填されたビア配線、及び絶縁層113の上面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層114の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層112と電気的に接続されている。ビアホール113xは、例えば、ソルダーレジスト層115側に開口されている開口部の径が配線層112の上面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい逆円錐台状の凹部である。配線層114の材料は、例えば、銅等である。
【0048】
ソルダーレジスト層115は、多層配線基板2の一方の側の最外層であり、絶縁層113の上面に、配線層114を覆うように形成されている。ソルダーレジスト層115は、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂等の感光性樹脂等から形成することができる。ソルダーレジスト層115の厚さは、例えば5~40μm程度とすることができる。
【0049】
ソルダーレジスト層115は、開口部115xを有し、開口部115xの底部には配線層114の上面の一部が露出している。開口部115xの平面形状は、例えば、円形である。必要に応じ、開口部115x内に露出する配線層114の上面に金属層を形成したり、OSP処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。
【0050】
開口部115xの底部に露出する配線層114の上面には、外部接続端子116が形成されている。外部接続端子116は、例えば、はんだバンプである。はんだバンプの材料としては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。外部接続端子116は、半導体チップと電気的に接続するための端子となる。
【0051】
配線層120は、コア層100の他方の面100bに形成されている。配線層120の材料は、例えば、銅等である。絶縁層121は、コア層100の他方の面100bに配線層120を覆うように形成されている。絶縁層121の材料や厚さは、例えば、絶縁層111と同様である。絶縁層121は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有する。
【0052】
配線層122は、絶縁層121の他方の側に形成されている。配線層122は、絶縁層121を貫通し配線層120の下面を露出するビアホール121x内に充填されたビア配線、及び絶縁層121の下面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層122の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層120と電気的に接続されている。ビアホール121xは、例えば、絶縁層123側に開口されている開口部の径が配線層120の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部である。配線層122の材料は、例えば、銅等である。
【0053】
絶縁層123は、絶縁層121の下面に配線層122を覆うように形成されている。絶縁層123の材料や厚さは、例えば、絶縁層111と同様である。絶縁層123は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有する。
【0054】
配線層124は、絶縁層123の他方の側に形成されている。配線層124は、絶縁層123を貫通し配線層122の下面を露出するビアホール123x内に充填されたビア配線、及び絶縁層123の下面に形成された配線パターンを含んでいる。配線層124の配線パターンは、ビア配線を介して、配線層122と電気的に接続されている。ビアホール123xは、例えば、ソルダーレジスト層125側に開口されている開口部の径が配線層122の下面によって形成された開口部の底面の径よりも大きい円錐台状の凹部である。配線層124の材料は、例えば、銅等である。
【0055】
ソルダーレジスト層125は、多層配線基板2の他方の側の最外層であり、絶縁層123の下面に、配線層124を覆うように形成されている。ソルダーレジスト層125の材料や厚さは、例えば、ソルダーレジスト層115と同様である。
【0056】
ソルダーレジスト層125は、開口部125xを有し、開口部125x内には配線層124の下面の一部が露出している。開口部125xの平面形状は、例えば、円形とすることができる。開口部125x内に露出する配線層124は、マザーボード等の実装基板(図示せず)と電気的に接続するためのパッドとして用いることができる。必要に応じ、開口部125x内に露出する配線層124の下面に前述の金属層を形成したり、OSP処理等の酸化防止処理を施したりしてもよい。
【0057】
多層配線基板2において、絶縁層111、絶縁層113、絶縁層121、及び絶縁層123は、第1実施形態の絶縁層30と同様に、配線層の表面の少なくとも一部を被覆する第1樹脂層と、第1樹脂層を被覆する第2樹脂層とを含む構造とすることができる。これにより、絶縁層111、絶縁層113、絶縁層121、及び絶縁層123と、それぞれが被覆する配線層との密着性を向上できる。
【0058】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0059】
1 配線基板
2 多層配線基板
10、30、111、113、121、123 絶縁層
10a 上面
20、40、110、112、114、120、122、124 配線層
30x、111x、113x、121x、123x ビアホール
31 第1樹脂層
32 第2樹脂層
100 コア層
115、125 ソルダーレジスト層
116 外部接続端子
図1
図2
図3
図4
図5