(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/32 20160101AFI20240307BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G09G3/32 A
G09G3/20 624B
G09G3/20 621A
G09G3/20 641A
G09G3/20 641K
G09G3/20 670J
G09G3/20 670K
(21)【出願番号】P 2020534658
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2019029784
(87)【国際公開番号】W WO2020027107
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2018144322
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】秋元 肇
【審査官】橋本 直明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202778(JP,A)
【文献】特表2018-519539(JP,A)
【文献】特開2005-275003(JP,A)
【文献】特開2007-025523(JP,A)
【文献】特開2010-122649(JP,A)
【文献】特開平11-109919(JP,A)
【文献】特開2003-216110(JP,A)
【文献】特開2014-164182(JP,A)
【文献】特開2003-316312(JP,A)
【文献】特表2000-503133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/32
G09G 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が印加される第1電源線と前記第1電源線よりも低電位に設定される第2電源線との間でマトリクス状に配列された複数の画素回路と、
選択回路と、
を備え、
前記複数の画素回路のそれぞれは、
無機半導体発光素子である発光素子と、
前記発光素子に接続され、三角波信号を含む第1信号と所定の期間で設定された第1直流電圧とを比較した結果にもとづいて、前記発光素子へ電流を供給する時間幅を設定する第1回路と、
を含み、
前記複数の画素回路の少なくとも一部は、
前記第1回路と直列に接続され、前記所定の期間とは異なる期間で設定された第2直流電圧にもとづいて、前記第1回路に供給する電流値を制御する第2回路
を含み、
前記選択回路は、前記第1信号として、前記三角波信号および第1電圧信号を、水平走査期間に応じて選択的に供給し、
前記第1電圧信号は、前記発光素子へ電流を供給する時間を制限する電圧値を有し、
前記水平走査期間は、第1方向および前記第1方向に交差する第2方向にそれぞれマトリクス状に配列された前記複数の画素回路のうち前記第1方向に配列された画素回路が前記第2方向に向かって順次選択される期間であり、
前記選択回路は、前記三角波信号および前記第1電圧信号を、前記水平走査期間に応じて切り換えるスイッチ素子を含み、
前記スイッチ素子は、複数の前記水平走査期間で構成される垂直期間内で、周期的に前記第1電圧信号を選択し、
前記第1直流電圧および前記第2直流電圧は、表示する画像
の画素ごとの階調にもとづいてそれぞれ設定される、
画像表示装置。
【請求項2】
前記第1回路は、
前記発光素子に出力が接続されたインバータと、
前記インバータの入力と出力との間に主電極で接続された第1トランジスタと、
前記インバータの入力に一方の電極で接続された第1容量素子と、
前記第1信号が供給される第1信号線に接続された一方の主電極、前記第1容量素子の他方の電極に接続された他方の主電極、および、第1走査線に接続された制御電極を含む第2トランジスタと、
前記第1直流電圧が供給される第2信号線に接続された一方の主電極、前記第1容量素子の他方の電極に接続された他方の主電極、および、前記第1走査線が出力する
第1走査信号の論理値を反転された論理値を有する
第2走査信号を出力する第2走査線に接続されるとともに前記第1トランジスタの制御電極に接続された制御電極を含む第3トランジスタと、
を含み、
前記第2回路は、
前記第1回路と直列に接続された第4トランジスタと、
前記第4トランジスタの制御電極の電位を設定するように接続された第2容量素子と、
前記第2直流電圧を供給される第3信号線と前記第4トランジスタの制御電極との間に接続された第5トランジスタと、
を含み、
前記第5トランジスタは、前記所定の期間とは異なる期間で前記第2容量素子に前記第2直流電圧を設定した後に遮断され、
前記第1トランジスタおよび前記第3トランジスタは、前記所定の期間で前記第2走査線によって導通し、
前記第2トランジスタは、前記所定の期間の後に前記第1走査線によって導通する請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1回路は、前記インバータの出力に接続された制御端子と、前記第2回路と前記発光素子との間に主電極で接続された第6トランジスタを含む請求
項2記載の画像表示装置。
【請求項4】
第1方向および前記第1方向に交差する第2方向にマトリクス状に配列された前記複数の画素回路は、
前記第1方向に沿って設けられた複数の第1画素回路と、
前記第1画素回路の前記第2方向の側で前記第1方向に沿って設けられた複数の第2画素回路と、
を含み、
前記所定の期間では、前記第2走査信号によって、前記複数の第1画素回路の前記第2直流電圧を設定するとともに、前記複数の第2画素回路の前記第1直流電圧を設定する請求項2記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記第2回路は、前記複数の画素回路のうち前記第2回路を含まない画素回路の前記第1回路に接続された請求項1記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第2回路は、
前記第4トランジスタと一方の主電極で接続されるとともに、前記第1回路に並列に接続され、前記第5トランジスタと制御電極同士で接続された第7トランジスタをさらに含み、
前記第7トランジスタは、前記第4トランジスタと同一極性である請求項2記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記第4トランジスタは、n形MOSトランジスタである請求項
6記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記第1信号線に供給される前記三角波
信号を生成し、
前記第2信号線に供給されるアナログ値を有する前記第1直流電圧を生成し、
前記第3信号線に供給されるアナログ値を有する前記第2直流電圧を生成する駆動回路をさらに備えた請求項2記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記第1走査
線から供給される
前記第1走査信号
および前記第2走査線から供給される前記第2走査信号を
それぞれ生成する走査回路をさらに備えた請求項
2記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記第2回路は、前記第1電源線と前記第1回路との間に接続された請求項1記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記第2回路は、前記第1回路と前記第2電源線との間に接続された請求項1記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高輝度、高視野角、高コントラストで低消費電力の薄型の画像表示装置の実現が望まれている。このような市場要求に対応するように、自発光素子を利用した表示装置の開発が進められている。
【0003】
表示装置用の自発光素子として、有機EL(エレクトロルミネッセンス、OLED)を用いたディスプレイが有望視され実用化が進められているが、発光寿命や高輝度での焼き付きといった問題点が指摘されている。
【0004】
マイクロLEDは、III-V族系等の無機半導体材料を用いた微細発光素子を表示装置用の自発光素子として開発され、上述のOLEDの問題点を解決するものとして期待されている。
【0005】
表示装置にマイクロLEDを応用して、OLEDの問題点を解決するには、画素となるマイクロLEDを広いダイナミックレンジで駆動することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、発光素子を広いダイナミックレンジで駆動する画像表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る画像表示装置は、直流電圧が印加される第1電源線と前記第1電源線よりも低電位に設定される第2電源線との間でマトリクス状に配列された複数の画素回路を備える。前記複数の画素回路のそれぞれは、発光素子と、前記発光素子に接続され、三角波信号を含む第1信号と所定の期間で設定された第1直流電圧とを比較した結果にもとづいて、前記発光素子へ電流を供給する時間幅を設定する第1回路と、を含む。前記複数の画素回路の少なくとも一部は、前記第1回路と直列に接続され、前記所定の期間とは異なる期間で設定された第2直流電圧にもとづいて、前記第1回路に供給する電流値を制御する第2回路を含む。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態では、発光素子を広いダイナミックレンジで駆動する画像表示装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る画像表示装置を例示するブロック図である。
【
図2】第1の実施形態の画像表示装置の一部を例示するブロック図である。
【
図3】第1の実施形態の画像表示装置の一部を例示する回路図である。
【
図4】第1の実施形態の画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
【
図5】第1の実施形態の画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
【
図6】第1の実施形態の画像表示装置の動作を説明するための概念図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(c)は、発光素子の特性例を示すグラフである。
【
図8】
図8(a)は、第1の実施形態の変形例を例示するブロック図である。
図8(b)は、第1の実施形態の変形例を例示する回路図である。
【
図9】第2の実施形態に係る画像表示装置の一部を例示するブロック図である。
【
図10】第3の実施形態に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
【
図11】第4の実施形態に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
【
図12】第5の実施形態に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
【
図13】第6の実施形態に係る画像表示装置を例示するブロック図である。
【
図14】第6の実施形態の画像表示装置の一部を例示する回路図である。
【
図15】第6の実施形態に係る画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
【
図16】第6の実施形態に係る画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
【
図18】第6の実施形態の変形例に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、実施形態に係る画像表示装置を例示するブロック図である。
図1に示すように、実施形態の画像表示装置1は、基板2と、複数の画素回路10を備える。複数の画素回路10は、基板2上に設けられている。基板2は、ほぼ方形の板材である。基板2は、たとえばポリイミド等の合成樹脂材料等やガラス等の無機材料により形成されている。
【0013】
ほぼ方形の基板2の1つの辺に平行なX軸と、X軸に直交するY軸を有するXY座標において、画素回路10は、X軸方向に沿って配列されている。また、X軸方向に配列された画素回路10は、さらにY軸方向に配列されている。つまり、画像表示装置1では、複数の画素回路10は、格子状(マトリクス状)に配置されている。以下では、X軸方向を行方向と呼び、Y軸方向を列方向と呼ぶことがある。
【0014】
画素回路10は、画像表示装置1の画面解像度に応じて、必要な個数が配列される。
【0015】
マトリクス状に配列された画素回路10によって形成される画面に1フレーム分の画像データを表示する期間を垂直走査期間といい、垂直走査期間を画面の行数で除した期間を水平走査期間と呼ぶことがある。たとえば、水平走査期間では、行方向(X軸方向、第1方向)に配列された画素回路10の電源制御のための電圧値を設定し、アナログ画像データのための電圧値を設定する。また、垂直走査期間では、画素回路10を走査する走査回路50を列方向(Y軸方向、第2方向)に順次シフトさせる。
【0016】
なお、各画素回路10について、電源制御信号によって電圧値を設定すること、および、アナログ画像信号によって電圧値を設定することを、以下では画素回路10に「電圧値を書き込む」のようにいうことがある。
【0017】
マトリクス状に配置された画素回路10の最上位行のさらに上位行には、電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40が設けられている。電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40は、マトリクス状に配置された画素回路10の最下位行のさらに下位の位置に設けられてもよい。電源制御信号線42およびアナログ画像信号線44は、列方向に伸びており、電源制御信号線42およびアナログ画像信号線44は、画素回路10の列ごとに設けられている。
【0018】
電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40は、電源制御信号線42を介して、各画素回路10に電源制御信号を供給する。電源制御信号(第2直流電圧)は、複数の電圧値をとり得るアナログ信号である。電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40は、アナログ画像信号線44を介して、各画素回路10にアナログ画像信号(第1直流電圧)を供給する。アナログ画像信号も、複数の電圧値をとり得るアナログ信号である。
【0019】
後に詳述するように、電源制御信号を供給されて電圧値が書き込まれた各画素回路10は、書き込まれた電圧値にもとづく駆動電流を設定する。アナログ画像信号を供給され、電圧値が書き込まれた各画素回路10は、アナログ画像信号の電圧値にもとづいて、この図では図示しない基準三角波信号(第1信号)と比較するしきい値電圧を設定し、画素回路10が発光する時間幅を設定する。
【0020】
なお、電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40は、各画素回路10に列ごとに供給する図示しない基準三角波信号を生成するようにしてもよい。或いは、この基準三角波信号は、画素回路10のマトリクスの最下位のさらに下位行に基準三角波回路として別に設けてもよい。電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40または基準三角波回路は、たとえばこれらの回路の外部から供給された基準三角波を各画素回路10の列に分配する。
【0021】
電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40は、記憶部48を含んでもよい。記憶部48には、電源制御信号がとる複数の電圧値に対する輝度設定、およびアナログ画像信号がとる複数の電圧値に対する輝度設定を記憶することができる。これらの電圧値と輝度設定との関係は、画素回路10を構成する発光素子の輝度を視認等することによって、調整され、設定されることができる。電圧値と輝度設定の関係を適切に設定することによって、γ補正することができる。ディジタルPWM方式では階調特性がリニアになるのに対して、信号にγ補正を付与できることは本方式の有利な点の1つである。記憶部48は、たとえば、電気的に書き換え可能な記憶回路等によって形成される。
【0022】
マトリクス状に配置された画素回路10の最左端の列のさらに左の列には、走査回路50が設けられている。走査回路50は、マトリクス状に配置された画素回路10の最右端の列のさらに右の列に設けられてもよい。走査回路50から第1走査線52および第2走査線54は、画素回路10の行ごとに設けられている。第1走査線52および第2走査線54は、行方向に伸びている。
【0023】
第1走査線52は、電圧制御信号およびアナログ画像信号によって、所望の電圧値がそれぞれ書き込まれた画素回路10を、行方向に選択するディジタル信号である第1走査信号を供給する。選択された各画素回路10には、基準三角波信号が供給され、各画素回路10の発光素子は、書き込まれた電圧にもとづく輝度設定によって発光する。第2走査線54は、アナログ画像信号によって電圧値を書き込む場合に、行方向に画素回路10を選択するためのディジタル信号である第2走査信号を供給する。
【0024】
同じ行に対応する第1走査信号および第2走査信号は、相補的な論理値を有する。つまり、第1走査信号がハイレベルの場合には、第2走査信号はローレベルであり、第1走査信号がローレベルの場合には、第2走査信号がハイレベルになる。
【0025】
第2走査信号がハイレベルとなる期間は、水平走査期間ごとに隣接する次の行の第2走査信号がハイレベルとなる期間へと順次シフトされていく。
【0026】
図2は、実施形態の画像表示装置の一部を例示するブロック図である。
図2には、画素回路10の具体例がブロック図で示されている。
図2に示すように、画素回路10は、発光素子12と、アナログ画像PWM回路14と、電源制御回路16と、を含む。発光素子12は、アナログPWM回路14の出力に接続されている。アナログ画像PWM回路14および電源制御回路16は、電源線(第1電源線)4と接地線(第2電源線)5との間で直列に接続されている。この例では、電源制御回路16が、アナログ画像PWM回路14よりも高電位側に接続されている。
【0027】
なお、以下では、「電圧」、「電圧値」という場合には、特に断らない限り、接地線5および後述の共通接地線5aの電圧値を基準値(=0V)としたときの「電圧」、「電圧値」をいうものとする。
【0028】
発光素子12は、アナログ画像PWM回路14の出力と接地線5との間に接続されている。発光素子12は、好ましくは、無機半導体発光素子である。その場合には、発光素子12は、たとえばIII-V族系等の化合物半導体によって形成されている。或いは発光素子12は、電流発光型の量子ドット(QD)素子であってもよい。さらに発光素子12は、有機エレクトロルミネッセンス素子であってもよいが、以下では、特に断らない限り、無機半導体発光素子であるものとして説明する。
【0029】
アナログ画像PWM回路(第1回路)14は、電源制御回路16と接地線5との間に接続されている。アナログ画像PWM回路14は、アナログ画像信号線44および基準三角波信号線46に接続されている。アナログ画像信号線44および基準三角波信号線46は列方向に伸びている。アナログ画像PWM回路14は、第1走査線52および第2走査線54に接続されている。第1走査線52および第2走査線54は、行方向に伸びている。
【0030】
アナログ画像PWM回路14は、第1走査線52を介して供給される第1走査信号がハイレベルのときに、発光素子12を発光させることができる。発光素子12が発光する期間は、基準三角波信号線46を介して供給される基準三角波信号と、アナログ画像PWM回路14に書き込まれている電圧値と、にもとづいて決定される。発光素子12が発光する周期は、基準三角波信号の周期にもとづいて決定される。
【0031】
アナログ画像PWM回路14では、第1走査信号がローレベルのときには、発光素子12の発光が停止される。
【0032】
アナログ画像PWM回路14では、第2走査線54を介して供給される第2走査信号がハイレベルのときに、アナログ画像信号線44を介して供給されるアナログ画像信号の電圧値が書き込まれる。第2走査信号がローレベルのときには、アナログ画像信号の電圧値の書き込みが停止される。
【0033】
電源制御回路(第2回路)16は、電源線4とアナログ画像PWM回路14との間に接続されている。電源制御回路16は、隣接して先行して走査される行の画素回路の第2走査線に接続されている。電源制御回路16は、電源制御信号線42に接続されている。電源制御信号線42は列方向に伸びている。
【0034】
電源制御回路16では、自己の画素回路10の行に隣接する行の第2走査線54を介して供給される第2走査信号がハイレベルのときに、電源制御信号線42を介して供給される電源制御信号の電圧値が書き込まれる。
【0035】
以下では、第1走査信号および第2走査信号がハイレベルのときに所定の動作を許可或いは実行し、ローレベルのときに所定の動作を禁止或いは停止する正論理の場合について記述するものとする。特に断らない限り、正論理での構成について説明するが、トランジスタの極性を変える等によって、容易に負論理に変更することができ、混在させることもできる。
【0036】
画素回路10の構成をより詳細に説明する。
図3は、本実施形態の画像表示装置の一部を例示する回路図である。
図3に、画素回路10の具体的な回路例が示されている。また、
図3には、隣接する2つの行で同じ列の画素回路10i,10jが示されている。
図3において、2つの行の画素回路10i,10jの回路構成は同じであり、同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0037】
図3に示すように、アナログ画像PWM回路14は、インバータ20と、第1トランジスタ21と、第2トランジスタ22と、第3トランジスタ23と、第1キャパシタ31と、を含む。
【0038】
インバータ20は、トランジスタ20a,20bを含む。トランジスタ20a,20bは、主電極で直列に接続され、制御電極同士が接続されている。トランジスタ20aはn形トランジスタであり、トランジスタ20bはp形トランジスタである。インバータ20の出力には、発光素子12のアノード電極が接続されている。発光素子12のカソード電極は接地線5に接続されている。なお、以下では、トランジスタの極性は、特に断らない限り、n形であるものとする。
【0039】
第1トランジスタ21は、インバータ20の入出力間に主電極で接続されている。第1トランジスタ21の制御電極は、第2走査線54に接続されている。
【0040】
第1キャパシタ(第1容量素子)31は、一方の電極でインバータ20の入力に接続されている。第1キャパシタ31は、他方の電極で第2トランジスタ22および第3トランジスタ23のそれぞれの一方の主電極に接続されている。
【0041】
第2トランジスタ22の他方の主電極は、基準三角波信号線(第1信号線)46に接続されている。第2トランジスタ22の制御電極は、第1走査線52に接続されている。第3トランジスタ23の他方の主電極は、アナログ画像信号線(第2信号線)44に接続されている。第3トランジスタ23の制御電極は、第2走査線54に接続されている。
【0042】
第1トランジスタ21および第3トランジスタ23が同時にオンすることによって、インバータ20の入出力が短絡されるとともに、第1キャパシタ31にアナログ画像信号Apの電圧が印加される。インバータ20の入出力短絡時の電圧は、反転中間電圧に等しくなる。反転中間電圧は、インバータ20のしきい値の電圧であり、反転中間電圧よりも低い電圧が入力されると、インバータ20の出力は上昇する。インバータ20および第1キャパシタ31はコンパレータとして動作する。このコンパレータは、アナログ画像信号Apの電圧値をしきい値電圧として動作する。
【0043】
たとえば、第1キャパシタ31に反転中間電圧に等しい電圧値を有するアナログ画像信号Apが入力された場合には、基準三角波信号Atの電圧値が反転中間電圧に等しくなったときに、インバータ20の出力が上昇する。インバータ20および第1キャパシタ31は、アナログ画像信号Apの電圧値が反転中間電圧よりも低い場合や高い場合にも、その電圧値に応じたしきい値電圧を有するコンパレータとして動作する。
【0044】
電源制御回路16は、第4トランジスタ24と、第5トランジスタ25と、第2キャパシタ32と、を含む。
【0045】
第4トランジスタ24は、p形トランジスタである。第4トランジスタ24は、主電極で、電源線4とインバータ20のトランジスタ20bの主電極との間に接続されている。第4トランジスタ24の制御電極は、第5トランジスタ25の一方の主電極に接続されている。第5トランジスタ25の他方の主電極は、電源制御信号線42に接続されている。第5トランジスタ25の制御電極は、自己の画素回路10jの行に隣接する画素回路10iの行の第2走査線54に接続されている。
【0046】
この第2走査線54は、画素回路10jに隣接する画素回路10iの第1トランジスタ21および第3トランジスタ23の制御電極にも接続されている。なお、図示しないが、画素回路10jの第2走査線54には、この画素回路10jの列方向の下方に隣接する画素回路(図示せず)の第5トランジスタ25の制御電極に接続されている。
【0047】
第4トランジスタ24の制御端子には、第5トランジスタ25がオンしたときに電源制御信号Acの電圧値に設定された第2キャパシタ(第2容量素子)32の両端電圧が印加される。第4トランジスタ24は、第2キャパシタ32の両端電圧にもとづいて電流値が設定され、設定された電流をアナログ画像PWM回路14に供給する。
【0048】
各行の電源線4は、列方向に伸びる共通電源線4aにそれぞれ接続されている。各行の接地線5は、列方向に伸びる共通接地線5aにそれぞれ接続されている。共通電源線4aと共通接地線5aとの間には、直流電圧が印加される。
【0049】
走査回路50は、行ごとにインバータ51を含んでいる。各インバータ51の入力には、各行に対応する第2走査線54が接続され、各インバータ51の出力には、各行に対応する第1走査線52が接続されている。
【0050】
走査回路50は、順次、たとえば上から下へ、行を選択するように第2走査信号Di2,Dj2を出力する。この図の場合では、走査回路50は、上の行の画素回路10iにハイレベルの第2走査信号Di2を供給した後、この第2走査信号Di2をローレベルとするとともに、下の行の画素回路10jにハイレベルの第2走査信号Dj2を供給する。水平走査期間は、第2走査信号Di2,Dj2がハイレベルの期間を含んでおり、走査回路50が行ごとに切り換えて第2走査信号Di2,Dj2を出力する期間を含んでいる。
【0051】
後に詳述するが、対象の画素回路10jの行に隣接する行の第2走査信号Di2によって、対象の画素回路10jの電源制御回路16を選択し、その電源制御回路16に電源制御信号に対応する電圧値を書き込む。隣接する行の第2走査信号Di2がローレベルになった後に続いて、対象の画素回路10jの行の第2走査信号Dj2がハイレベルとなる。これによって、対象の画素回路10jのアナログ画像PWM回路14を選択し、アナログ画像信号の電圧値を書き込む。
【0052】
各行の第2走査信号Di2,Dj2がハイレベルになる期間は、水平走査期間によって決定される。第2走査信号Di2,Dj2がハイレベルになる期間は、水平走査期間に等しいか、それより短い期間に設定される。より具体的には、第2走査信号Di2,Dj2の期間は、第1キャパシタ31および第2キャパシタ32の入力端の電圧が、アナログ画像信号の電圧値および電源制御信号の電圧値にほぼ等しくなる期間にもとづいて決定される。
【0053】
各行の第1走査線52は、第2走査信号Di2,Dj2と逆の論理値を有する第1走査信号Di1,Dj1を出力する。つまり、各行の画素回路10i,10jは、電源制御信号Acの電圧値およびアナログ画像信号Apの電圧値の書き込みを行っていない期間に、基準三角波信号Atを入力する。
【0054】
上述した画素回路10のうち、アナログ画像PWM回路14や電源制御回路16は、たとえば低温多結晶シリコンプロセス(Low Temperature Polycrystalline Silicon、LTPS)や酸化物半導体製造プロセス等を用いて形成される。アナログ画像PWM回路14および電源制御回路16を構成するトランジスタは、薄膜トランジスタ(Thin film transistor、TFT)である。走査回路50もTFTにより構成するようにしてもよい。
【0055】
電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40は、ディジタル-アナログ変換器や記憶部48等を含むディジタル-アナログ混在回路とすることがあるので、独立した駆動用の集積回路として提供されることが好ましい。
【0056】
発光素子12は、GaN半導体結晶上に形成された発光素子12を結晶成長用の基板から分離し、上述の画素回路10が形成された基板2上に転写(Mass-Transfer)することによって、画像表示装置1が形成される。
【0057】
本実施形態の画像表示装置1の動作について説明する。
図4は、本実施形態の画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
図4には、2つの水平走査期間における画素回路10の各部の動作波形が示されている。
【0058】
図4の最上段の図は、電源制御信号線42に供給される電源制御信号Acの時間変化を示している。
図4の2段目の図は、対象の画素回路10j(
図3)の行の上方に隣接する行の第2走査線54の第2走査信号Di2の時間変化を示している。この第2走査信号Di2がハイレベルのときに、対象の画素回路10jの第5トランジスタ25がオンする。
図4の3段目の図は、対象の画素回路10jの第2キャパシタ32の両端の電圧の時間変化を示している。
図4の4段目の図は、アナログ画像信号線44に供給されるアナログ画像信号Apの時間変化を示している。
【0059】
図4の5段目の図は、対象の画素回路10jの行の第2走査線54の第2走査信号Dj2の時間変化を示している。この第2走査信号Dj2がハイレベルのときに、対象の画素回路10jの第1トランジスタ21および第3トランジスタ23がオンする。
図4の6段目の図は、対象の画素回路10jのインバータ20の入力電圧Vinの時間変化を示している。
図4の7段目の図は、対象の画素回路10jのインバータ20の出力電圧Voutの時間変化を示している。この電圧波形は、発光素子12のアノード電極の電圧波形である。
図4の8段目の図は、基準三角波信号Atの時間変化を示している。基準三角波信号Atの周期は、垂直走査期間に応じて設定されており水平走査期間よりも十分長いため、ゆるやかな勾配となっている。
図4の最下段の図は、対象の画素回路10jの行の第1走査線52から供給される第1走査信号Dj1の時間変化を示している。この第1走査信号Dj1がハイレベルのときに、対象の画素回路10jの第2トランジスタ22がオンし、ローレベルのときにオフする。
【0060】
電源制御信号Acは、対象の画素回路10jの行に隣接する行の水平走査期間t1~t4内で、設定された値を有する電圧値を示している。このときの電圧値が対象の画素回路10jの第5トランジスタ25の主電極に印加される。
【0061】
時刻t2において、対象の画素回路10jの行の上方に隣接する行の第2走査信号Di2がハイレベルになる。これによって、対象の画素回路10jの第5トランジスタ25がオンする。
【0062】
第5トランジスタ25がオンすることによって、第2キャパシタ32が電源制御信号Acで充電される。このときの第2キャパシタ32の両端の電圧が、画素回路10jの電源制御回路16の書き込み電圧である。
【0063】
時刻t4~t7において、電源制御信号Acの電圧値は、対象の画素回路10jの行に隣接する下の行の画素回路(図示せず)のための電圧値に変更される。
【0064】
第2走査信号Di2は、時刻t3においてすでにローレベルとなっており、対象の行の画素回路10jの第5トランジスタ25は、時刻t3以降ではオフしている。
【0065】
一方、時刻t4~t7の間において、アナログ画像信号Apは、対象の画素回路10jのアナログ画像PWM回路14に書き込む電圧値に設定されている。
【0066】
時刻t5において、対象の画素回路10jの行の第2走査信号Dj2は、ハイレベルになる。これによって、画素回路10jの第1トランジスタ21および第3トランジスタ23はオンする。
【0067】
時刻t5で画素回路10jの第1トランジスタ21および第3トランジスタ23がオンすることによって、第1キャパシタ31は、アナログ画像信号Apが有する電圧値で充電される。インバータ20の入力電圧Vinは、インバータ20の入出力間が第1トランジスタ21によって短絡されているので、一定値であるインバータ20の中間反転電圧値に近づく。時刻t6では、インバータ20の入力電圧Vinは、中間反転電圧値となる。したがって、第1キャパシタ31の両端は、アナログ画像信号Apの電圧値にもとづく電圧値に近づく。インバータ20の出力電圧は、発光素子12のしきい値電圧よりも低いので、時刻t5~t6では、発光素子12は点灯しない。
【0068】
時刻t5~t6の間では、第1走査信号Dj1はローレベルであり、注目している行の画素回路10jの第2トランジスタ22はオフしている。
【0069】
時刻t6以降で、第1走査信号Dj1はハイレベルとなり、画素回路10jの第2トランジスタ22はオンする。
【0070】
時刻t6では、第1キャパシタ31は、アナログ画像信号Apによって設定された電圧値となっている。インバータ20は、時刻t6以降で、基準三角波Atの電圧値がこの電圧を下回ると、インバータ20の出力が上昇し、発光素子12のしきい値電圧を超えたときに、発光素子12は発光する。
【0071】
図5は、本実施形態の画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
図5には、
図4の場合よりも長い期間の時間軸を有するタイミングチャートが示されている。この例では、時刻ta~tmが1垂直走査期間を表している。1垂直走査期間は、たとえば1フレーム周波数によって決定される期間である。1フレーム周波数が60Hzの場合には、1垂直走査期間は、1/60[sec]である。この例では、基準三角波信号Atは、対称三角波であり、周波数はフレーム周波数の2倍に設定されている。したがって、時刻ta~tgの期間における動作と、時刻tg~tmの期間における動作とは、同じなので、以下では、時刻ta~tgの期間における動作について説明する。
【0072】
図5の最上段の図および2段目の図には、インバータ20の入力電圧Vinの時間変化とともに、アナログ画像信号Apによって書き込まれた電圧値によって設定されたしきい値電圧VthK,VthLの時間変化が示されている。
図5の最下段には、基準三角波信号Atと、アナログ画像信号ApK,ApLの電圧値VpK,VpLの時間変化が示されている。
【0073】
図5の最下段の図に示すように、基準三角波Atおよび対象の行の第2走査信号Dj2によって書き込まれたアナログ画像信号ApK,ApLの電圧値VpK,VpLの大きさは、VpK>VpLの関係にある。ここでは、電圧値VpKの場合をケース1とし、電圧値VpLの場合をケース2とする。
【0074】
ケース1の場合には、電圧値VpKが基準三角波Atの電圧値以上となる時刻ta~tbおよびtf~tgの期間では、インバータ20の出力は上昇せず、発光素子12に電流は流れない。
【0075】
一方、電圧値VpKが基準三角波Atの電圧値よりも低くなる時刻tb~tfの期間では、インバータ20の出力が上昇し、発光素子12に電流が流れる。
【0076】
ケース2の場合には、電圧値VpLが基準三角波Atの電圧値以上となる時刻ta~tcおよびte~tgの期間では、インバータ20の出力は上昇せず、発光素子12に電流は流れない。
【0077】
一方、電圧値VpLが基準三角波Atの電圧値よりも低くなる時刻tc~teの期間では、インバータ20の出力が上昇し、発光素子12に電流が流れる。
【0078】
つまり、ケース1の場合には、
図5の最上段の図のように、アナログ画像信号ApKの電圧値VpKが基準三角波Atの電圧値以上のときに、発光素子12が発光する。ケース2の場合には、
図5の2段目の図のように、アナログ画像信号ApLの電圧値VpLが基準三角波Atの電圧値以上のときに、発光素子12が発光する。アナログ画像信号Apの電圧値が基準三角波Atの電圧値より高いときに、発光素子12は発光するので、アナログ画像信号Apの電圧値の大きさによって、発光素子12の発光期間を設定することができる。
【0079】
基準三角波信号Atの周期は一定なので、アナログ画像信号Apの電圧値にもとづいて発光素子12の発光期間を設定することによって、発光期間のデューティを設定して、明るさ(輝度)を調整することができる。
【0080】
さらに、本実施形態の画像表示装置1では、各画素回路10が電源制御回路16を含んでいる。電源制御回路16は、アナログ画像信号を書き込んでいる行に隣接する行の第2走査信号Di2によってすでに電源制御信号に設定された電圧値が書き込まれている。
【0081】
第2走査信号Di2がローレベルとなった後には、第4トランジスタ24は、第2キャパシタ32に書き込まれた電圧の値に応じてインバータ20に電流を供給する。第4トランジスタ24は、MOSFETの飽和領域で動作する場合には、第2キャパシタ32の両端の電圧に応じて出力する電流が決定される。なお、第4トランジスタ24の出力電流は、近似的には、第2キャパシタ32の両端電圧から第4トランジスタ24のしきい値電圧を差し引いた電圧の2乗に比例する。なお、第4トランジスタ24が、MOSFETの線形領域で動作する場合についても、制御電極の電圧および主端子電極(ドレイン電極)の電圧にもとづいて、主電流(ドレイン電流)を一義的に決定することができる。
【0082】
電源制御信号Acの電圧値を適切に設定することによって、第4トランジスタ24が出力する電流が設定される。設定された電流は、インバータ20を介して発光素子12に供給される。
【0083】
電源制御信号Acの電圧値を複数種類設定することによって、第4トランジスタ24が出力する電流値を複数種類設定することができる。そして、アナログ画像PWM回路14に書き込む電圧値も複数種類設定することができ、設定された電圧値に応じたデューティで発光素子12を駆動することができる。
【0084】
なお、基準三角波信号の周波数は、フレーム周波数の2倍程度とすることによって、画像のちらつきを抑えることができるが、フレーム周波数の2倍に限るものではなく、フリッカを生じない範囲で任意に設定することができる。基準三角波信号の周波数はフレーム周波数を基準に設定しなくともよい。また、基準三角波信号は、対称三角波に限らず、非対称の三角波、たとえば鋸歯状波や逆鋸歯状波等であってもよいし、曲線としてγ特性を付与することも可能である。
【0085】
本実施形態の画像表示装置1の作用および効果について説明する。
図6は、本実施形態の画像表示装置の動作を説明するための概念図である。
図6には、本実施形態の画像表示装置1の階調設定の原理が示されている。
図6の横軸は、時間軸である。
図6の縦軸は輝度(電流値)を表す軸である。
【0086】
図6に示すように、本実施形態の画像表示装置1の各画素回路10は、アナログ画像PWM回路14を含む。したがって、
図6の横軸に示すように、アナログ画像PWM回路14によって、単位期間当たりの発光素子12を駆動する期間を複数段階設定することができる。
【0087】
そして、各画素回路10は、電源制御回路16を含む。
図6の縦軸に示すように、電源制御回路16によって、画素回路10ごとに発光素子12に流す電流を複数段階設定して、輝度制御を行うことができる。
【0088】
たとえば、アナログ画像PWM回路14において、8ビットのディジタル信号に対応するようにアナログ画像信号Apの電圧値を設定することによって、255段階(0を含めた場合には256段階)の階調を実現することができる。さらに、電源制御回路16において、5ビットのディジタル信号に対応するように電源制御信号Acの電圧値を設定することによって、31段階(0を含めた場合には32段階)の階調を実現することができる。したがって、本実施形態の画像表示装置1では、実質的に13ビット程度の階調を実現することが可能である。
【0089】
アナログ画像PWM回路を用いた画素回路は、従来知られている。しかしながら、画素回路を構成するTFTを、LTPS技術を用いて製造する場合には、画素回路のノイズ(約20mV)、および、画素回路に印加できる直流電圧の制約(5V程度以下)等から、実現できる階調は、最高でも8ビット程度である。
【0090】
一方で、ハイダイナミックレンジ(High Dynamic Range、HDR)に対応した低消費電力の薄型パネルの要求が強まっている。上述のような従来法では、HDRに対して十分な階調を有するダイナミックレンジを実現することが困難である。
【0091】
上述したように、本実施形態によれば、8ビット程度の階調をさらに数ビット拡張することができる。
【0092】
また、本実施形態において、発光素子12を無機半導体発光素子とすることによって、OLEDと比べ、高輝度においても、焼き付きを少なくし、低輝度における混色を低減させることができる。したがって、HDRに対応した画素回路10を有する画像表示装置1を実現することが可能になる。
【0093】
図7(a)~
図7(c)は、発光素子の特性例を示すグラフである。
図7(a)~
図7(c)は、日亜化学工業製の半導体発光素子「NSSW703BT-HG」の特性例のグラフである。
図7(a)に示すように、半導体発光素子は、順電圧を超えて電流が流れると低電流の領域では、小さな電圧変化に対して、大きく電流が変化する。また、
図7(b)に示すように、順電圧は、温度特性を有する。そのため、半導体発光素子は、電流駆動によって輝度制御されるのが好ましい。したがって、本実施形態の画像表示装置1では、画素回路10のアナログ画像PWM回路14および電源制御回路16によって、発光素子12の電流値を制御しつつ、発光素子12の発光時間のデューティサイクルを制御することによって、発光素子12の輝度を制御する。そのため、発光素子12の温度特性によらず、輝度制御を行うことができる。
【0094】
図7(c)に示すように、半導体発光素子は、駆動する電流によって色度が変化することも知られている。本実施形態の画像表示装置1では、電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路40が記憶部48を有している。記憶部48には上述したように、γ補正のための補正値を含んだ電圧設定値を設定することができるので、電流値による色度の補正値もあらかじめ考慮して設定することによって、電流値設定による色度の変化を抑制することができる。なお、必要があれば、仮に発光素子12の発光特性やトランジスタ回路の特性が画素ごとにばらついた場合でも、あらかじめばらつき特性を加味した補正後の電圧設定値を記憶部48に設定することで、これらの特性ばらつきを補正することができる。
【0095】
(変形例)
上述した実施形態では、電源制御回路16をアナログ画像PWM回路14の高電位側に接続している。電源制御回路は、電源制御信号Acによって書き込まれた電圧値にもとづいて設定された電流値を有する駆動電流を、アナログ画像PWM回路を介して発光素子に供給することができれば、アナログ画像PWM回路の低電位側に接続してもよい。
【0096】
図8(a)は、第1の実施形態の変形例を例示するブロック図である。
図8(b)は、第1の実施形態の変形例を例示する回路図である。
図8(a)に示すように、画素回路110は、発光素子12と、アナログ画像PWM回路114と、電源制御回路116と、を含む。アナログ画像PWM回路114および電源制御回路116は、電源線4と接地線5との間で直列に接続されており、電源制御回路116がアナログ画像PWM回路114よりも低電位側に接続されている。発光素子12は、電源線4とアナログ画像PWM回路114の出力との間に接続されている。
【0097】
図8(b)に示すように、電源制御回路116は、第4トランジスタ124を含んでいる。この第4トランジスタ124は、n形トランジスタである。第2キャパシタ32は、第4トランジスタ124の制御端子と接地線5との間に接続されている。
【0098】
他の構成要素については、上述の実施形態の場合と同じであり、図には同一の符号を付してある。
【0099】
このように、電源制御回路16,116は、アナログ画像PWM回路14,114の高電位側にも低電位側にも設けることができる。回路配置上の利便性等に応じていずれか選択することができる。以下説明する他の実施形態についても、この変形例と同様に、電源制御回路をアナログ画像PWM回路よりも低電位側に設けることができる。
【0100】
なお、上述では、発光素子12の一端を電源線4或いは接地線5のいずれかに接続している。これによって配線の本数を低減することができる。さらに、電源線4或いは接地線5に流れる電流によりこれらの配線に電圧降下或いは電圧上昇が生じても、発光素子12に印加される電圧が安定するという長所を得ることができる。一方で、回路レイアウトの効率その他のメリットに応じて、発光素子の一端を所定の定電圧が供給された別配線に接続することが可能であることは明らかである。
【0101】
(第2の実施形態)
電源制御回路は、すべての画素回路に設けずに、電源制御回路が設けられた画素回路から、電源制御回路が設けられていない画素回路のアナログ画像PWM回路に電流供給するようにしてもよい。
【0102】
図9は、本実施形態に係る画像表示装置の一部を例示するブロック図である。
図9には、画像表示装置のうち、2つの画素回路の主要な部分が示されている。この図では、基準三角波信号線や、隣接行の画素回路や隣接行の第2走査線については、省略されている。
【0103】
図9に示すように、画素回路210aは、電源制御回路216aと、アナログ画像PWM回路14aと、発光素子12aと、を含む。電源制御回路216aおよびアナログ画像PWM回路14aは、電源線4と接地線5との間で直列に接続されている。発光素子12aは、アナログ画像PWM回路14aの出力に接続されている。この画素回路210aの発光素子12aは、電源制御信号Acの電圧値にもとづいて設定された電流値を有する駆動電流IFで駆動される。
【0104】
画素回路210bは、アナログ画像PWM回路14bと、発光素子12bと、を含む。アナログ画像PWM回路14bは、隣接する列の画素回路210aの電源制御回路216aから駆動電流を供給されて、発光素子12bを駆動する。
【0105】
第1の実施形態の場合には、電源制御回路16は、単一の第4トランジスタ24および第2キャパシタ32で構成される1T1C回路である。これに対して、本実施形態の場合には、第4トランジスタ24が並列に2個設けられている。この2個の第4トランジスタ24のソース電極は共に電源線4に接続され、ゲート電極も共に第2キャパシタ32に接続されている。2個の第4トランジスタ24のドレイン電極は、一方がアナログ画像PWM回路14aに接続されており、他方がアナログ画像PWM回路14bに接続されている。したがって、このときの駆動電流IFは、隣接する列の画素回路210aの発光素子12aの駆動電流IFと同じ電流値を有する。
【0106】
画素回路210a,210bのアナログ画像PWM回路14a,14bは、異なるアナログ画像信号Apa,Apbにもとづいて設定された駆動期間で発光素子12a,12bを点灯させる。つまり、この実施形態では、電源制御回路216aを共用して、駆動電流の電流値を等しくしながら、駆動電流の駆動期間を変化させることによって、輝度設定を行う。
【0107】
電源制御回路16は、2つのアナログ画像PWM回路に電流供給する場合に限らず、3つ或いはそれ以上のアナログ画像PWM回路に電流供給するようにしてもよい。この場合にも、アナログ画像PWM回路の数に応じて、第4トランジスタ24の並列数を3個或いはそれ以上の数にすればよい。
【0108】
本実施形態によれば、画素回路の構成を簡略することができるので、その分、集積度を上げて高精細なディスプレイとすることができる。
【0109】
また、画素回路を簡略化することによって、歩留り向上が期待され、低コスト化に寄与することができる。
【0110】
さらに、電源制御回路を共有する画素回路を、複数の同一発光色の画素の単位とすることができる。これによって色バランス制御の複雑化を回避しつつ、低コスト化に貢献することが可能になる。
【0111】
(第3の実施形態)
電源制御回路の回路構成は、上述したものに限られない。
図10は、本実施形態に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
上述した実施形態の場合と同様に、電源制御回路の書き込みのタイミングは、隣接する行の第2走査線54の第2走査信号Di2によって決定される。そのため、
図10には、隣接する行の画素回路310i,310jが示されている。画素回路310i,310jの回路構成は同一であり、同一の回路要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0112】
図10に示すように、画素回路310i,310jは、電源制御回路316を含む。電源制御回路316は、第4トランジスタ324と、第5トランジスタ25と、第7トランジスタ327と、第2キャパシタ32と、を含む。これら3つのトランジスタは、すべてn形トランジスタである。
【0113】
第4トランジスタ324は、主電極で、電源線4とインバータ20との間に接続されている。第7トランジスタ327は、主電極で、第4トランジスタ324とインバータ20との接続ノードNと、接地線5との間に接続されている。第7トランジスタ327の制御電極は、第5トランジスタ25の制御電極とともに、隣接する行の第2走査線54に接続されている。なお、第5トランジスタ25の主電極は、上述の他の実施形態の場合と同様に電源制御信号線42と第4トランジスタ324の制御電極との間に接続されている。また、第2キャパシタ32は、第4トランジスタ324と接続ノードNとの間に接続されている。
【0114】
隣接する行の第2走査線54の第2走査信号Di2がハイレベルになると、第5トランジスタ25がオンする。同時に、第7トランジスタ327もオンして、接続ノードNを接地線5に接続する。これによって、第2キャパシタ32の両端には、電源制御信号線42によって電源制御信号Acの電圧値が印加される。このようにして、電源制御回路316に電源制御信号の電圧を書き込むことができる。
【0115】
第4トランジスタ324をn形トランジスタとすることによって、トランジスタの大きさを小さくすることができる。本実施形態では、n形トランジスタが1つ追加になるが、p形トランジスタを用いる場合よりも占有面積を小さくすることができる場合があり、歩留りの向上が期待される。
【0116】
(第4の実施形態)
アナログ画像PWM回路に代えて、サブフィールド画像信号を用いたディジタル画像PWM回路を用いてもよい。
図11は、本実施形態に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
図11に示すように、画像表示装置は、複数の画素回路410i,410jを備える。複数の画素回路410i,410jは、行ごとに走査線454に接続されている。走査線454は、走査回路450から行方向に伸びている。複数の画素回路410i,410jは、列ごとに電源制御信号線42に接続されている。複数の画素回路410i,410jは、列ごとにディジタル画像信号線444に接続されている。電源制御信号線42およびディジタル画像信号線444は、列方向に伸びている。
【0117】
複数の画素回路410i,410jは、電源制御回路16をそれぞれ含む。電源制御回路16は、上述の他の実施形態の場合と同じものである。つまり、電源制御回路16は、走査回路450から供給され、隣接する行の走査信号のタイミングに応じて、電源制御信号の電圧値を書き込む。電源制御回路16は、書き込まれた電圧値にもとづいて設定された電流値を有する駆動電流を、駆動トランジスタ428を介して発光素子12に供給する。
【0118】
複数の画素回路410i,410jの他の部分は、ディジタル画像PWM回路である。ディジタル画像PWM回路は、駆動トランジスタ428と、選択トランジスタ429と、キャパシタ(第1容量素子)431と、を含む。駆動トランジスタ428は、主電極で、電源制御回路16と発光素子12との間に接続されている。選択トランジスタ429は、主電極で、ディジタル画像信号線444と駆動トランジスタ428の制御電極との間に接続されている。キャパシタ431は、電源線4と駆動トランジスタ428の制御電極との間に接続されている。
【0119】
ディジタル画像PWM回路を採用した画素回路では、1フレーム分の画面の画像データを複数、たとえば8枚に分割されたサブフィールド画面の画像データにもとづいて、画像の表示制御を行う。サブフィールド画面では、1フレーム分の画像データが輝度ごとに分割されて配分されており、ディジタル画像PWM回路は、8枚のサブフィールド画面のどれを選択するかによって、1フレーム分の輝度を再現する。
【0120】
ディジタル画像信号線444を介して、各画素回路410i,410jに供給されるディジタル画像信号データは、選択するサブフィールドに応じて、“1”か“0”に設定されている。選択トランジスタ429は走査信号によって選択され、そのときのディジタル画像信号線444の値をキャパシタ431に書き込む。キャパシタ431に“1”が書き込まれたときに、駆動トランジスタ428は、電源制御回路16によって設定された駆動電流を発光素子12に供給する。キャパシタ431に“0”が書き込まれたときには、駆動トランジスタ428はオフしており、発光素子12に電流が供給されない。
【0121】
このように、アナログ画像PWM回路に限らず、ディジタル画像PWM回路を用いた画素回路においても、電源制御回路を導入することによって、ディジタル画像PWM回路で設定可能な輝度をより詳細に設定することができる。そのため、画像表示装置は、高精細化が可能になる。
【0122】
ディジタル画像PWM回路を用いた画素回路では、回路構成をより簡素にすることができる。そのため、画像表示装置の歩留りが向上し、低コスト化に貢献することができる。
【0123】
(第5の実施形態)
図12は、本実施形態に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
本実施形態では、アナログPWM回路および電源制御回路の出力段の構成が、上述した他の実施形態の場合と相違する。本実施形態の画像表示装置は、他の点では、上述の他の実施形態の場合と同じなので、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0124】
図12に示すように、画素回路510i,510jは、アナログ画像PWM回路514と、電源制御回路516と、を含む。アナログ画像PWM回路(第1回路)514は、第6トランジスタ526を含む。第6トランジスタ526は、主電極で、電源制御回路(第2回路)516と発光素子12との間に接続されている。第6トランジスタ526の制御端子は、インバータ20の出力に接続されている。
【0125】
この実施形態では、インバータ20は、電源線4と接地線5との間に接続されており、インバータ20と電源線4との間には、電源制御回路が接続されていない。つまり、第6トランジスタ526は、インバータ20のための出力バッファとして機能する。
【0126】
電源制御回路516は、第4トランジスタ524を含む。第4トランジスタ524は、主電極で、電源線4と第6トランジスタ526との間に接続されている。第4トランジスタ524はp形トランジスタであり、上述した他の実施形態(第1の実施形態等)と同様に、第5トランジスタ25および第2キャパシタ32が接続されている。
【0127】
本実施形態では、アナログ画像PWM回路514のインバータ20に供給する電源を電源制御回路516の出力から分離したので、アナログ画像信号を電源制御信号の影響を受けないようにすることができる。そのため、アナログ画像PWM回路514が設定するアナログ表示の階調の精度を十分高くすることができる。
【0128】
(第6の実施形態)
図13は、本実施形態に係る画像表示装置を例示するブロック図である。
図13に示すように、本実施形態の画像表示装置601は、上述の他の実施形態の場合と同様に、基板2と、複数の画素回路610と、を備えている。画像表示装置601は、三角波走査回路660と、基準信号選択回路662と、をさらに備える。本実施形態の画像表示装置601は、三角波走査回路660および基準信号選択回路662を備える点で、上述の他の実施形態の場合と相違する。画像表示装置601は、他の点では、上述の他の実施形態の場合と同じなので、同一の構成要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0129】
三角波走査回路660は、マトリクス状に配置された画素回路610の最左端の列のさらに左端の列に設けられている。なお、この例では、走査回路50は、マトリクス状に配置された画素回路10の最右端の列のさらに右側の列に設けられている。三角波走査回路660および走査回路50の配置は、この例の逆であってもよい。
【0130】
基準信号選択回路(選択回路)662は、三角波走査回路660とマトリクス状に配置された複数の画素回路610との間に設けられている。基準信号選択回路662は、画素回路10の行ごとに、選択部664を有する。三角波走査回路660は、画素回路610の行ごとに三角波走査信号線661を有しており、三角波走査信号線661は、選択部664にそれぞれ接続されている。選択部664は、画素回路610の行ごとに基準信号線666を有する。基準信号線666は、行方向に伸びている。
【0131】
基準信号選択回路662は、基準三角波信号線663aおよび高電圧信号線663bに接続されている。基準三角波信号線663aおよび高電圧信号線663bは、各選択部664に接続されている。
【0132】
基準三角波信号線663aには、基準三角波信号が入力される。基準三角波信号は、たとえば、上述した他の実施形態における基準三角波信号Atであるが、ここでは後述のように1水平走査期間の周波数の対称三角波を有する信号である。
【0133】
高電圧信号線663bには、高電圧信号が入力される。高電圧信号は、基準三角波信号の最大電圧値よりも高い電圧値を有する直流電圧の信号である。
【0134】
図14は、本実施形態の画像表示装置の一部を例示する回路図である。
図14に示すように、画素回路610i,610jは、上述した第5の実施形態の場合の画素回路510i,510jと同じ回路構成を有している。画素回路510i,510jとの相違は、画素回路610i,610jの第2トランジスタ22の主電極が基準信号線666に接続されている点である。他の点では、第5の実施形態の場合と同じであり、同一の構成要素に同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略する。
【0135】
選択部664は、2つのスイッチ664a,664bと、インバータ664cと、を含む。一方のスイッチ664aは、基準三角波信号線663aと基準信号線666との間に接続されている。他方のスイッチ664bは、高電圧信号線663bと基準信号線666との間に接続されている。三角波走査信号線661は、一方のスイッチ664aの制御電極に接続されており、インバータ664cを介して、他方のスイッチ664bの制御電極に接続されている。
【0136】
選択部664は、三角波走査回路660から供給される三角波走査信号がハイレベルのときに、基準三角波信号を選択して、画素回路610i,610jにそれぞれ供給する。選択部664は、三角波走査信号がローレベルのときに、高電圧信号を選択し、画素回路610i,610jにそれぞれ供給する。
【0137】
画素回路610i,610jでは、アナログ画像PWM回路514に書き込まれたアナログ画像信号Apの電圧値にもとづくしきい値は、基準三角波信号Atの最小電圧値から最大電圧値の範囲で設定し得る。一方、高電圧信号Ahの電圧値は、基準三角波信号Atの最大電圧値よりも高い電圧値に設定されている。
【0138】
基準三角波信号Atが選択された場合には、上述した他の実施形態において説明したように、アナログ画像PWM回路514に書き込まれた電圧値にもとづいて設定されたしきい値と、基準三角波Atとを比較して、しきい値が基準三角波Atの電圧値を超えたときに発光素子12を発光させる。
【0139】
高電圧信号Ahがアナログ画像PWM回路514に入力された場合には、アナログ画像PWM回路514に書き込まれた電圧値にもとづくしきい値は、高電圧信号Ahの電圧値よりも必ず低い。したがって、この場合には、発光素子12は発光しない。
【0140】
つまり、本実施形態では、三角波走査回路660が出力する三角波走査信号によって、特定の行、すなわち特定の水平走査期間において、発光素子12の発光を強制的に停止する。これによって、画像表示装置の発光素子の発光効率を最適な値に設定する。
【0141】
本実施形態の画像表示装置の動作について、詳細に説明する。
図15および
図16は、本実施形態に係る画像表示装置の動作を説明するためのタイミングチャートの例である。
図15は、電源制御回路516への電源制御信号Acの電圧値を書き込む期間と、アナログ画像PWM回路514へのアナログ画像信号Apの電圧値を書き込む期間とを示すタイミングチャートであり、最上段の図から、5段目の図までは、
図4の場合と同じである。
図15の6段目および7段目の図は、インバータ20の入力電圧および出力電圧の時間変化を示しており、
図4の場合とは異なる電圧値が書き込まれている。
図15の8段目の図は、発光素子12のアノード電極の電圧の時間変化を示している。
図15の9段目の図は、基準信号線666から出力される基準信号A0の時間変化を示している。
図15の最下段の図は、第1走査線52から出力される第1走査信号Dj1の時間変化を示している。
【0142】
図15の最上段から7段目の図に示すように、上述の他の実施形態の場合と同様に、時刻t1~t4の期間で、電源制御回路516に、電源制御信号Acの電圧値を書き込み、時刻t4~t7の期間で、アナログ画像PWM回路514に、アナログ画像信号Apの電圧値を書き込む。
【0143】
ここで、
図15の例では、9段目の図に示すように、示されている期間のすべてにおいて、選択部664は、高電圧信号線663bを選択しており、基準信号A0は、高電圧信号Ahの電圧値を示している。
【0144】
図15の8段目および最下段の図に示すように、時刻t1~t5および時刻t6以降において、第1走査信号Dj1がハイレベルとなっても、画素回路610jのインバータ20の出力電圧Voutはローレベルであり、発光素子12のアノード電極にはしきい値以上の電圧が印加されず、発光素子12の発光が禁止されている。
【0145】
なお、選択部664によって、基準三角波信号Atが選択されている場合には、
図4の例のように、アナログ画像PWM回路514に書き込まれた電圧値にもとづいて設定されたしきい値に応じたタイミングで、発光素子12は発光する。
【0146】
図16には、複数の水平走査期間を含む期間のタイミングチャートが示されている。時刻tA~tB、tB~tC、tC~tF、tF~tG、tG~tH、tH~tI、tI~tL、tL~tMがそれぞれ水平走査期間であり、
図16には合計で8個の水平走査期間が記載されている。
図16の上の図は、インバータ20の入力電圧Vinおよび発光素子12のアノード電圧VAの時間変化を示している。この図には、インバータ20の反転中間電圧VthMが合わせて示されており、この反転中間電圧がアナログ画像信号Apによって書き込まれたアナログ画像PWM回路514のしきい値電圧である。
図16の下の図は、基準信号A0とアナログ画像PWM回路514に書き込まれたアナログ画像信号電圧VpMとの関係が示されている。
【0147】
図16に示すように、時刻tA~tCの期間では、選択部664が高電圧信号Ahを選択している。そのため、アナログ画像PWM回路514に書き込まれた電圧値にかかわらず、発光素子12の発光が禁止されている。
【0148】
時刻tC~tFの期間では、アナログ画像PWM回路514に書き込まれた電圧値にもとづくタイミング(時刻tD~tEの期間)で発光素子12が発光する。なお、この期間における発光素子12に供給される電流は、電源制御回路516に書き込まれた電圧値にもとづいて設定されている。前述のように、対称三角波信号の周期は、1水平走査期間としている。本実施形態では、三角波信号の周波数を1水平走査期間と高くして、周期的に発光期間を有することにより、点灯と三角波信号との干渉に起因するフリッカの発生を回避することができる。したがって三角波信号の周波数は、1水平走査期間に限らず、水平走査期間の自然数倍としてもよい。
【0149】
時刻tF~tIの期間では、時刻tA~tCの期間と同様に、発光素子12の発光が禁止されている。
【0150】
時刻tI~tLの期間では、時刻tC~tFの期間と同様に発光素子12は発光し、時刻tL~tMの期間では、時刻tA~tCの期間と同様に、発光素子12の発光が禁止されている。なお、この図の例では、基準信号A0と比較するしきい値電圧は、一定であるとしたが、画像表示装置の通常の動作においては、たとえば垂直走査期間ごとに異なる電圧値に書き換えられ得る。また、電源制御回路に書き込まれた電圧値もたとえば垂直走査期間ごとに書き換えられ得る。したがってこのような書き換えがなされた時点で、1水平走査期間内の発光期間が変調されることはいうまでもない。
【0151】
上述の例では、3水平走査期間の発光禁止と1水平走査期間の発光素子12の発光とを交互に切り換えるようにしたが、任意のタイミングで発光素子12の発光と発光禁止とを切り換えるようにしてもよい。たとえば、2水平走査期間ごとに発光素子12の発光を許可して、1行おきに発光素子12を発光させる等してもよい。
【0152】
本実施形態の画像表示装置601の作用および効果について説明する。
本実施形態の画像表示装置601は、三角波走査回路660と、基準信号選択回路662と、を備えている。基準信号選択回路662は、三角波走査回路660からの三角波走査信号にもとづいて、基準三角波信号Atと高電圧信号Ahとを切り換えて、各画素回路610に供給することができる。そのため、三角波走査信号にしたがって、各画素回路610の発光素子12の発光と発光禁止を水平走査期間ごと、或いは垂直走査期間ごとに選択的に設定することができる。
【0153】
図17は、発光素子の特性を例示するグラフである。
図17には、発光素子として、無機半導体発光素子の発光効率特性例のグラフが示されている。グラフの横軸は、発光素子に流す順電流IF[A]であり、対数軸となっている。グラフの縦軸は、発光効率K[lm/W]を示している。
【0154】
図17に示すように、無機半導体発光素子は、順電流IFに対して発光効率の最大値Kmaxが存在する。つまり、発光効率の最大値Kmaxとなるときの順電流IFの最適値Ioptが存在し、最適値Ioptで画像表示装置を構成する発光素子を制御することによって、画像表示装置の発光電力を最適化することができる。
【0155】
一方で、通常の無機半導体発光素子による発光素子を用いた場合には、最適値Ioptで発光素子を駆動すると、輝度が高くなる過ぎる場合がある。最適値Ioptは一般に1~100μA程度の値をとる。一方でモバイル用の中小型のパネルを有する画像表示装置の場合に適切なパネルの最大輝度は1000cd/m2以下である。したがってこれらのモバイル用途のパネルにこの電流値を適用すると、適切な輝度の数倍から数100倍の輝度となり、輝度が出すぎてしまう。
【0156】
そこで、本実施形態の画像表示装置601では、水平走査期間ごとに選択的に発光素子12の発光を禁止することによって、パネルの輝度を抑制しつつ、消費電力を最適化することができる。なお本実施例のように発光する水平走査期間を時間的に均一に設けると、発光する複数の行が画面内を均等に順次走査されるため、任意の瞬間における面内発光輝度が均一になってフリッカの発生を防止できるという長所を有する。また発光する水平走査期間を連続して設けると、発光する複数の行が画面内でひと固まりの帯になって走査されるため、ブラウン管(CRT)のように動画解像度の高い表示が実現できるという長所を有する。
【0157】
(変形例)
図18は、第6の実施形態の変形例に係る画像表示装置の一部を例示する回路図である。
本実施形態においても、電源制御回路は、アナログ画像PWM回路の高電位側に設けてもよいし、低電位側に設けてもよい。
図18に示すように、画素回路710i,710jは、電源線4と接地線5との間で直列に接続されたアナログ画像PWM回路714および電源制御回路716を含む。電源制御回路(第2回路)716は、アナログ画像PWM回路(第1回路)714よりも低電位側に接続されている。
【0158】
アナログ画像PWM回路のインバータ20の出力は、第6トランジスタ726の制御端子に接続されている。第6トランジスタ726は、発光素子12と電源制御回路716の第4トランジスタ724との間に接続されている。
【0159】
第4トランジスタ724の制御端子は、第5トランジスタ25の一方の主電極に接続されている。第2キャパシタ32は、第4トランジスタ724の制御電極と接地線5との間に接続されている。
【0160】
このように、第6の実施形態においても、電源制御回路およびアナログ画像PWM回路の接続位置は、回路配置上の利便性等に応じていずれか選択することができる。
【0161】
以上説明した実施形態によれば、発光素子を広いダイナミックレンジで駆動するHDR映像表示に適した画像表示装置を提供することができる。
【0162】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組合せて実施することができる。
【符号の説明】
【0163】
1,601 画像表示装置、2 基板、4 電源線、5 接地線、10,10i,10j,110,210a,210b,310i,310j,410i,410j,510i,510j,610i,610j,710i,710j 画素回路、12,12a,12b 発光素子、14,14a,14b,114,514,714 アナログ画像PWM回路、16,16a,16b,116,516,716 電源制御回路、20 インバータ、21~25 第1トランジスタ~第5トランジスタ、31 第1キャパシタ、32 第2キャパシタ、40 電源制御信号/アナログ画像信号駆動回路、42 電源制御信号線、44 アナログ画像信号線、46 基準三角波信号線、48 記憶部、50 走査回路、51 インバータ、52 第1走査線、54 第2走査線、324,524、724 第4トランジスタ、327 第7トランジスタ、428 駆動トランジスタ、429 選択トランジスタ、431 キャパシタ、444 ディジタル画像信号線、450 走査回路、454 走査線、526、726 第6トランジスタ、660 三角波走査回路、661 三角波走査信号線、662 基準信号選択回路、663a 基準三角波信号線、663b 高電圧信号線、664 選択部、664a,664b スイッチ、664c インバータ、666 基準信号線