(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/14 20060101AFI20240307BHJP
G03G 15/14 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/14
(21)【出願番号】P 2020078852
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】永田 敦司
(72)【発明者】
【氏名】今井 正和
(72)【発明者】
【氏名】深尾 剛
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-219341(JP,A)
【文献】特開2005-338205(JP,A)
【文献】特開2014-052583(JP,A)
【文献】特開2001-235970(JP,A)
【文献】特開2015-175883(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0151829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜像担持体と、
前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体へ一次転写する一次転写部材と、
搬送されてくる記録材を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材と、
前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置とに切り替える切替手段と、
前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記タイミングに前記中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を変更する
ものであり、
前記制御手段は、前記潜像担持体上の前記対向領域を含む所定領域内の画像面積率の情報を用いた前記トナー像部分のトナー付着量情報に応じて、前記異常画像低減条件を満たすか否かを判断することを特徴とする画像形成装置
。
【請求項2】
請求項
1に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を行わないように、又は、前記第一動作の開始タイミングが早くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが遅くなるように、変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
潜像担持体と、
前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体へ一次転写する一次転写部材と、
搬送されてくる記録材を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材と、
前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置とに切り替える切替手段と、
前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記タイミングに前記中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を変更するものであり、
前記制御手段は、前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を行わないように、又は、前記第一動作の開始タイミングが早くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが遅くなるように、変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃
至3のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすとき、前記第一動作における前記第二位置が基準位置よりも前記中間転写体に近い位置となるように、変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求
項4に記載の画像形成装置において、
前記異常画像低減条件は、前記トナー像部分のトナー付着量情報が第一規定量以下のトナー付着量であるという条件を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
潜像担持体と、
前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体へ一次転写する一次転写部材と、
搬送されてくる記録材を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材と、
前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置とに切り替える切替手段と、
前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記タイミングに前記中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を変更するものであり、
前記制御手段は、前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすとき、前記第一動作における前記第二位置が基準位置よりも前記中間転写体に近い位置となるように、変更し、
前記異常画像低減条件は、前記トナー像部分のトナー付着量情報が第一規定量以下のトナー付着量であるという条件を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項
4乃至6のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記異常画像低減条件は、前記トナー像部分のトナー付着量情報が第二規定量以上のトナー付着量であるという条件を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃
至7のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記中間転写体に対向するように該中間転写体の表面移動方向に沿って配置される複数の潜像担持体を備え、
各潜像担持体上に互いに異なる色のトナー像をそれぞれ形成する複数のトナー像形成手段を備え、
前記制御手段は、所定の選択条件に従って選択される選択色についての前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすか否かによって、前記少なくとも一方の動作を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
潜像担持体と、
前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体へ一次転写する一次転写部材と、
搬送されてくる記録材を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材と、
前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置とに切り替える切替手段と、
前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記タイミングに前記中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を変更するものであり、
前記中間転写体に対向するように該中間転写体の表面移動方向に沿って配置される複数の潜像担持体を備え、
各潜像担持体上に互いに異なる色のトナー像をそれぞれ形成する複数のトナー像形成手段を備え、
前記制御手段は、所定の選択条件に従って選択される選択色についての前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすか否かによって、前記少なくとも一方の動作を変更することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項
8又は9に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記選択色がブラックである場合、前記選択色が基準色である場合よりも、前記第一動作の前記第二位置が前記中間転写体から遠い位置となるように、又は、前記第一動作の開始タイミングが遅くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが早くなるように、前記少なくとも一方の動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項
8乃至10
のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記選択色がイエローである場合、前記選択色が基準色である場合よりも、前記第一動作の前記第二位置が前記中間転写体から近い位置となるように、又は、前記第一動作の開始タイミングが早くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが遅くなるように、前記少なくとも一方の動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求
項8乃至11のいずれか1項に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記選択色のトナー像が形成される潜像担持体と前記二次転写部との間における前記中間転写体の表面移動方向に沿った距離が短いほど、前記第一動作の前記第二位置が前記中間転写体から遠い位置となるように、又は、前記第一動作の開始タイミングが遅くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが早くなるように、前記少なくとも一方の動作を制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項3、6、7又は9に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記トナー像部分のトナー付着量情報に応じて、前記異常画像低減条件を満たすか否かを判断することを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像形成装置において、
前記制御手段は、前記トナー付着量情報として、前記潜像担持体上の前記対向領域を含む所定領域内の画像面積率の情報を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項15】
請求項14に記載の画像形成装置において、
前記画像面積率の情報は、前記潜像担持体に形成するトナー像の画像データから算出されることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、潜像担持体と、前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体へ一次転写する一次転写部材と、搬送されてくる記録材を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材と、前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置とに切り替える切替手段と、前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、記録材先端側に形成される先端側画像部分の画像濃度が低い場合、中間転写体から離間している二次転写部材を中間転写体に向けて移動させるときの二次転写部材の移動速度を遅くするように、接触動作(第一動作)を制御する画像形成装置が開示されている。このように二次転写部材の移動速度を遅くすることで、第一動作により二次転写部材が記録材を介して中間転写体に衝突するときの衝撃が低減され、当該衝撃で潜像担持体から中間転写体へ一次転写されているトナー像が乱れるのを抑制する。また、先端側画像部分の画像濃度が低い場合には、その先端側画像部分に必要な転写圧が小さくても転写性が維持される。そのため、二次転写部材の移動速度を遅らせて二次転写部に最大転写圧がかかるまでの時間が遅れても、当該先端側画像部分についての転写性は維持され、当該先端側画像部分の異常画像も抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の画像形成装置では、二次転写部に記録材が進入するタイミングで生じる衝撃や二次転写部から記録材が抜けるタイミングで生じる衝撃で、潜像担持体から中間転写体へ一次転写されているトナー像が乱れるショックジターによる異常画像は抑制できない。そのため、ショックジターによる異常画像の抑制と先端側画像部分の転写圧不足による異常画像の抑制とを両立できない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、潜像担持体と、前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段と、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体へ一次転写する一次転写部材と、搬送されてくる記録材を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材と、前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置とに切り替える切替手段と、前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段とを有する画像形成装置であって、前記制御手段は、前記タイミングに前記中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を変更するものであり、前記制御手段は、前記潜像担持体上の前記対向領域を含む所定領域内の画像面積率の情報を用いた前記トナー像部分のトナー付着量情報に応じて、前記異常画像低減条件を満たすか否かを判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ショックジターによる異常画像の抑制と二次転写部の転写圧不足による異常画像の抑制とを両立できるケースを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図。
【
図2】同画像形成装置において、二次転写ローラの位置を、中間転写ベルトとの間に用紙を挟持する挟持位置と、この挟持位置よりも中間転写ベルトから遠い離間位置とに切り替える接離機構の説明図。
【
図3】同画像形成装置において、用紙が転写ニップ部に突入する直前のカムの状態を示す説明図。
【
図4】同画像形成装置において、用紙にトナー像を二次転写しているときのカムの状態を示す説明図。
【
図5】同画像形成装置における制御系の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図6】入力画像データ分析部において、画像データに基づいて、イエロー感光体及びマゼンタ感光体上にそれぞれ形成されるトナー像部分の画像面積率の算出方法を示す説明図。
【
図7】(a)~(d)は、各色トナー像について所定領域内の画像面積率とショックジター影響レベルと関係を示すグラフ。
【
図8】実施形態における接離機構の挟持動作時の制御の流れを示すフローチャート。
【
図9】実施形態における接離機構の離間動作時の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置100の一例を示す概略構成図である。
本実施形態の画像形成装置100は、中間転写体としての中間転写ベルトを備えたタンデム型のカラー画像形成装置であり、その装置本体内には、潜像担持体として、4つのドラム状の感光体1Y,1M,1C,1Kが、中間転写ベルトの表面移動方向に沿って等間隔に配置されている。符号の添え字Y、M、C、Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの色を示している。以下、これらの添え字は適宜省略する。
【0009】
感光体1の回りには、感光体クリーニングブレード6、帯電器2、露光手段としての光書き込み装置3、現像手段としての現像器4などのトナー像形成手段が配置されている。現像手段は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4個の現像器4から構成される。フルカラー画像形成時は、イエロー現像器4Y、マゼンタ現像器4M、シアン現像器4C、ブラック現像器4Kの順で可視像を形成し、各色の可視像が中間転写ベルト5に順次重なるように一次転写されることで、フルカラー画像が形成される。
【0010】
中間転写ベルト5は、駆動ローラ7、テンションローラ8などにより張架されており、駆動モータによって駆動され、そのプロセス速度は415[mm/sec]に調整されている。また、中間転写ベルト5は、内側に一次転写部材としての一次転写ローラ9、ベルトクリーニング対向ローラ13,14などを有している。また、各ローラは中間転写ベルトユニット側板によって各軸受けやアームを介して中間転写ベルト5の両側より支持されている。
【0011】
一次転写部材としての一次転写ローラ9は、感光体1と中間転写ベルト5との接触部(一次転写部)に配置されており、一次転写ローラ9には所定の転写バイアスが印加される。
【0012】
中間転写ベルト5は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層に構成し、カーボンブラック等の導電性材料を分散させている。そして、その体積抵抗率は、108~1012[Ωcm]、かつ表面抵抗率を109~1013[Ωcm]の範囲となるよう調整されている。
【0013】
なお、必要に応じ、中間転写ベルト5の表面に離型層をコートしても良い。コートに用いる材料としては、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PTFE(ポリ四フッ化エチレン)、PVDF(フッ化ビニルデン)、PEA(パ-フルオロアルコキシフッ素樹脂)等のフッ素樹脂が使用できる。また、コートに用いる材料としては、FEP(四フッ化エチレン-六フッ化プロピレン共重合体)、PVF(フッ化ビニル)等のフッ素樹脂も使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
ウレタンゴムよりなるクリーニングブレード10は、中間転写ベルト5に押し当てられ、トナーを堰き止めて清掃する構成となっている。クリーニングしやすくするために、固形潤滑剤11を潤滑剤塗布部材であるブラシ12により塗布する。ブラシ12による中間転写ベルト5への振動を抑制するために、テンションローラ17でベルトを加圧している。本実施形態では、テンションローラ17を中間転写ベルト5の外側に設けているが、内側でも同様の効果を得ることができる。
【0015】
また、一次転写ローラ9K,9C,9M,9Yのうち、カラー用の一次転写ローラ9C、9M、9Yは、従来と同様の接離機構で、中間転写ベルト5と接離可能となっている。カラー用の一次転写ローラ9C,9M,9Yは、フルカラーモード時には
図1で示すように中間転写ベルト5を介してそれぞれの感光体1C,1M,1Yに当接し、モノクロモード時には感光体1C,1M,1Yから離れて中間転写ベルト5が感光体1C,1M,1Yから離間した状態になる。一方、モノクロ用の一次転写ローラ9Kは、常に、
図1で示すように中間転写ベルト5を介して感光体1Kに当接している。
【0016】
また、本実施形態の画像形成装置100には、記録材としての用紙Pが収納される給紙部26と、給紙部26の用紙搬送方向下流側にレジストローラ対27とが設けられている。
【0017】
図2は、二次転写ローラ15の位置を、対向ローラ18に巻き付いた中間転写ベルト5との間に用紙Pを挟持する第一位置(以下、適宜「挟持位置」という。)と、この挟持位置よりも中間転写ベルト5から遠い第二位置(以下、適宜「離間位置」という。)とに切り替える切替手段としての接離機構の説明図である。
なお、本実施形態の接離機構は、ステッピングモータと偏心カムを用いた構成の例であるが、他の構成のものを用いることもできる。
【0018】
二次転写部材としての二次転写ローラ15と対向ローラ18は、中間転写ベルト5を挟んで、
図2のように配置されている。二次転写ローラ15には、付勢手段24によって、対向ローラ18に向かうように付勢力が加わっている。付勢手段の例としては圧縮バネ、引っ張りバネなどが挙げられる。この付勢手段によって、用紙Pと中間転写ベルト5に対して所定の二次転写ニップ圧(転写圧)を付加することができる。
【0019】
対向ローラ18の両端部には、対向ローラ18と同軸上に偏心カム19が設置されている。この偏心カム19は、二次転写ローラ15の両端に二次転写ローラ15の回転を妨げないように取り付けられた玉軸受23に突き当たるような構成となっている。偏心カム19を取り付けている軸が回転したら、偏心カム19も同タイミングかつ同じ角度回転するようにお互いはDカットの溝などで取り付けられている。
【0020】
偏心カム19の形状は、偏心カム19の回転中心と外形部とを結んだ距離が最も短い部分は対向ローラ18の直径よりも短く、偏心カム19の回転中心と外形部とを結んだ距離が最も長い部分は対向ローラ18の直径よりも長くなるような形状とする。
【0021】
偏心カム19を取り付けている軸は、ステッピングモータ22によって自由に回転を制御できるような構成となっている。
図2では、ギアとタイミングベルトを介することによってステッピングモータ22の回転を偏心カム19に取り付けている軸に伝えられるようになっている。ステッピングモータ22はステップ角1.8[°]で回転の制御が可能である。
【0022】
偏心カム19は玉軸受23と突き当てられており、偏心カム19を回転させることによって、次の式(1)を満たすとき、付勢手段24によって固定されている二次転写ローラ15は対向ローラ18から離間する方向に押し下げられる。
(偏心カム19の回転中心から偏心カム19の玉軸受23の接触部を結んだ距離+玉軸受23の半径)>(対向ローラ18の半径+二次転写ローラ15の半径)・・・(1)
【0023】
そして、ステッピングモータ22によって偏心カム19の回転を開始し、次の式(2)を満たすとき、二次転写ローラ15と対向ローラ18は接触し、所定の二次転写ニップ圧を付加することができる。
(偏心カム19の回転中心から偏心カム19の玉軸受23の接触部を結んだ距離+玉軸受23の半径)<(対向ローラ18の半径+二次転写ローラ15の半径)・・・(2)
【0024】
図3は、用紙が転写ニップ部に突入する直前のカムの状態を示す説明図である。
図4は、用紙にトナー像を二次転写しているときのカムの状態を示す説明図である。
偏心カム19には、図中符号A、B、Cで示す三箇所の停止場所が設定されている。
【0025】
カム位置が符号Aの場所で停止している場合、二次転写ローラ15は第一の離間位置をとり、二次転写ローラ15と対向ローラ18とがギャップ量GAだけ離れる。また、カム位置が符号Cの場所で停止している場合、二次転写ローラ15は第二の離間位置をとり、二次転写ローラ15と対向ローラ18は、
図3に示すように、ギャップ量GC(GC<GA)だけ離れる。
【0026】
一方、カム位置が符号Bで停止している場合、次の式(3)を満たすので、
図4に示すように、二次転写ローラ15は挟持位置をとり、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが中間転写ベルト5を介して当接した状態(用紙Pが存在する場合には用紙Pを挟持した状態)となる。このとき、付勢手段24により、トナー像を用紙Pに転写する際に必要なだけの二次転写ニップ圧を得ることができるような構成となっている。
(偏心カム19の中心からB地点でのカム外周までのカム半径+玉軸受23の半径)<(対向ローラ18の半径+二次転写ローラ15の半径)・・・(3)
【0027】
偏心カム19は、ステッピングモータ22などの駆動部品及び制御により、C→B→A→Cと連続的にカム位置を変化させることができる。
【0028】
本実施形態において、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが中間転写ベルト5を介して対向する二次転写部に用紙Pが進入する際、用紙Pの先端が二次転写部に到達するまでは、二次転写ローラ15の接離機構によって、二次転写ローラ15と中間転写ベルト5との間にギャップ量GA又はギャップ量GCのギャップを確保しておく。このギャップは、用紙Pが二次転写部に進入する際の衝撃を低減するために確保されており、用紙Pの厚さ以上のギャップ量を確保しておくのが望ましい。すなわち、用紙Pの先端が二次転写部に到達するまで、二次転写ローラ15と中間転写ベルト5との間を離間させておくことで、二次転写ローラ15が挟持位置に位置して中間転写ベルト5に当接しているところに用紙Pの先端が進入する場合よりも、二次転写部への用紙進入時における衝撃が緩和される。その結果、この衝撃に起因して、各感光体1Y,1M,1C,1Kから中間転写ベルト5へ一次転写されている各色トナー像が乱れるショックジターが軽減され、ショックジターによる異常画像(横すじ状の濃度ムラなど)の発生が抑制される。
【0029】
用紙Pが二次転写部に進入するまでの二次転写ローラ15と中間転写ベルト5との間のギャップ量(離間量)は、用紙Pの厚さを超えた一定の大きさまでは、ギャップ量が大きいほど用紙Pが突入する際の衝撃を緩和する効果が高まる。ただし、更にそれ以上大きくても、用紙Pが突入する際の衝撃の大きさを緩和する効果にあまり変化は無い。むしろ、ギャップ量が大きすぎると、二次転写ローラ15の接離動作に要する移動距離が長くなる。よって、このギャップ量は、用紙Pが突入する際の衝撃を緩和する効果が高まる範囲内でなるべく大きく設定することが望ましい。
【0030】
本実施形態では、このように離間位置にある二次転写ローラ15を、用紙Pの先端が二次転写部に進入した後、中間転写ベルト5上のトナー像の先端が二次転写部に進入する時までに、挟持位置へと切り替えるように、接離機構のカム19を駆動するステッピングモータ22を制御する。これにより、中間転写ベルト5上のトナー像の先端が二次転写部に進入する時には、二次転写ローラ15の挟持位置への移動が完了し、二次転写部には所定の二次転写ニップ圧が加わった状態となる。よって、中間転写ベルト5上のトナー像を、その先端から順次、適正な二次転写ニップ圧にて用紙Pへ二次転写することができる。
【0031】
ところが、用紙Pの先端側の余白量が少ない場合には、用紙Pの先端が二次転写部に進入した後、挟持動作が完了する前に、二次転写部内にトナー像の先端が進入してしまうことがある。この場合、二次転写ローラ15の挟持位置への移動が完了していないため、二次転写部には本来の二次転写ニップ圧が加わっておらず、トナー像の先端側部分に対する転写圧が不足し、当該先端側部分に対応する画像部分が白抜けなどの異常画像となってしまう。
【0032】
一方で、このトナー像の先端側部分に対応する異常画像を抑制するために、その先端側部分が二次転写部に達する前に挟持動作を完了させるべく、挟持動作の完了時期が早まるように挟持動作を制御することは可能である。しかしながら、この場合、用紙Pの先端が二次転写部に進入する時点で、すでに二次転写ローラ15の挟持位置への移動が開始され又は挟持位置への移動が完了してしまうおそれがある。そのため、用紙Pの先端が二次転写部に進入する時のギャップ量(離間量)が不十分となり、用紙Pが二次転写部へ突入する際の衝撃を緩和する効果が十分に得られず、ショックジターを十分に軽減できない。その結果、この時に一次転写されているトナー像が乱れて、ショックジターによる異常画像が発生し得る。
【0033】
このように、用紙Pの先端側の余白量が少ない場合には、従来は、二次転写部の転写圧不足によって先端側画像部分に異常画像が発生することを抑制することと、ショックジターによる異常画像の発生を抑制することとを両立することが困難であった。なお、ここでいうショックジターによる異常画像とは、用紙Pの先端が二次転写部に進入する時に発生する衝撃によって中間転写ベルト5の表面移動速度が変動し、中間転写ベルト5と感光体1との間の速度差に起因して生じる画像の横すじ状の濃度ムラのことである。
【0034】
ここで、本発明者らは、ショックジターによる異常画像の程度、すなわち、異常画像として人間に知覚される不具合の程度は、その異常画像部分の画像パターン、例えば、文字画像のような線画画像なのか、ハーフトーン画像なのか、高濃度画像(ベタ画像等)なのか等、によって異なることを見出した。すなわち、ショックジターによる異常画像が生じた画像部分の画像パターンによっては、異常画像として人間に知覚されやすい場合と、異常画像として人間に知覚されにくい場合とが存在する。
【0035】
そこで、本実施形態においては、二次転写部に用紙Pの先端が進入する時に中間転写ベルト5に対向する各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域(一次転写部に存在する感光体表面部分)に形成されるトナー像が、ショックジターによる異常画像の知覚度合いの低い画像パターンであることを判定するための所定の異常画像低減条件を満たすか否かを判断する。そして、この異常画像低減条件を満たすと判断した場合(ショックジターによる異常画像が知覚されにくい場合)には、先端側画像部分の転写圧不足による異常画像の抑制を優先するように、挟持動作を制御する。例えば、挟持動作の完了時期が早まるように挟持動作を制御する。これにより、用紙Pの先端側の余白量が少ない場合でも、転写圧不足による異常画像(白抜け等)の発生を抑制しつつ、ショックジターによる異常画像を抑制することができる。
【0036】
また、以上の説明は、用紙Pの先端が二次転写部に進入するときのショックジターの場合であるが、用紙Pの後端が二次転写部を抜けるときのショックジターの場合でも同様である。
【0037】
すなわち、用紙Pが二次転写部を抜ける際、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける直前までは、二次転写ローラ15を挟持位置に位置させたままとし、二次転写部に本来の二次転写ニップ圧を加えておく。そして、中間転写ベルト5上のトナー像の後端が二次転写部を抜けた後、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける前に二次転写ローラ15が離間位置へ切り替わるように、接離機構のカム19を駆動するステッピングモータ22を制御する。これにより、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける時には、二次転写ローラ15の離間位置への移動が完了し、二次転写ローラ15と中間転写ベルト5との間を離間させることができる。その結果、二次転写ローラ15が挟持位置に位置して中間転写ベルト5に当接している状態のまま用紙Pの後端が二次転写部を抜ける場合よりも、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける時の衝撃が緩和される。よって、この衝撃に起因して、各感光体1Y,1M,1C,1Kから中間転写ベルト5へ一次転写されている各色トナー像が乱れるショックジターが軽減され、ショックジターによる異常画像(横すじ状の濃度ムラなど)の発生が抑制される。
【0038】
ところが、用紙Pの後端側の余白量が少ない場合には、中間転写ベルト5上のトナー像の後端が二次転写部を抜けた後、離間動作が完了する前に、用紙Pの後端が二次転写部を抜けてしまうことがある。この場合、二次転写ローラ15の離間位置への移動が完了していないため、二次転写部には二次転写ニップ圧が加わった状態になっていて、用紙Pが二次転写部を抜ける際の衝撃を緩和する効果が十分に得られず、ショックジターを十分に軽減できない。その結果、この時に一次転写されているトナー像が乱れて、ショックジターによる異常画像が発生し得る。
【0039】
一方で、用紙Pの後端が二次転写部を抜けるときのショックジターによる異常画像を抑制するために、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける前に離間動作を完了させるべく、離間動作の完了時期が早まるように離間動作を制御することは可能である。しかしながら、この場合、中間転写ベルト5上のトナー像の後端が二次転写部を抜ける前に、二次転写ローラ15の離間位置への移動が開始されてしまうおそれがある。そのため、中間転写ベルト5上のトナー像の後端側部分に対する転写圧が不足し、当該後端側部分に対応する画像部分が白抜けなどの異常画像となってしまう。
【0040】
このように、用紙Pの後端側の余白量が少ない場合も、従来は、二次転写部の転写圧不足によって後端側画像部分に異常画像が発生することを抑制することと、ショックジターによる異常画像の発生を抑制することとを両立することが困難であった。
【0041】
そこで、本実施形態においては、二次転写部を用紙Pの後端が抜ける時に中間転写ベルト5に対向する各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域(一次転写部に存在する感光体表面部分)に形成されるトナー像が、ショックジターによる異常画像の知覚度合いの低い画像パターンであることを判定するための所定の異常画像低減条件を満たすか否かも判断する。そして、この異常画像低減条件を満たすと判断した場合(ショックジターによる異常画像が知覚されにくい場合)には、後端側画像部分の転写圧不足による異常画像の抑制を優先するように、離間動作を制御する。例えば、離間動作の完了時期が早まるように離間動作を制御する。これにより、用紙Pの後端側の余白量が少ない場合でも、転写圧不足による異常画像(白抜け等)の発生を抑制しつつ、ショックジターによる異常画像を抑制することができる。
【0042】
図5は、本実施形態に係る画像形成装置100における制御系の要部構成の一例を示すブロック図である。
画像形成装置100は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータ装置で構成された制御手段としての制御部500を備えている。制御部500には、I/Oインターフェース部505を介して、入力画像データ分析部28、中間転写ベルト5の駆動ローラ7を駆動する駆動モータ25、レジストローラ対用駆動モータ29、タイマ30、ステッピングモータ22等が接続されている。
【0043】
制御部500は、CPU(Central Processing Unit)501を備える。また、CPU501にバスライン502を介して接続された記憶手段としてのROM(Read Only Memory)503及びRAM(Random Access Memory)504と、I/Oインターフェース部505とを備えている。
【0044】
CPU501は、予め組み込まれているコンピュータプログラムである制御プログラムを実行することにより、各種演算や各部の駆動制御を実行する。ROM503は、コンピュータプログラムや制御用のデータ等の固定的データを予め記憶する。RAM504は、各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能する。なお、制御部500は、マイクロコンピュータ等のコンピュータ装置ではなく、例えば画像形成装置における制御用に作製された半導体回路素子としてのICやLSIなどを用いて構成してもよい。また、制御部500に、入力画像データ分析部28の機能を持たせても良い。
【0045】
入力画像データ分析部28は、例えば専用のIC、LSI等からなる画像プロセッサで構成される。本実施形態においては、用紙Pの先端が二次転写部に進入する時と用紙Pの後端が二次転写部を抜ける時(すなわちショックジターが発生する時)に中間転写ベルト5に対向する各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域に形成されるトナー像部分のトナー付着量を示すトナー付着量情報を取得する。ショックジターによる異常画像の知覚度合いに違いのある画像パターンを判別するうえで、このトナー像部分のトナー付着量は有効な情報である。したがって、本実施形態においては、このトナー像部分のトナー付着量を示すトナー付着量情報に基づき、所定の異常画像低減条件を満たすか否かを判断するため、入力画像データ分析部28において、当該トナー付着量情報を取得する。
【0046】
なお、本実施形態においては、当該トナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすか否かの判断を当該トナー像部分のトナー付着量情報に基づいて行う例で説明するが、他のパラメータ情報に基づいて行っても良い。
【0047】
また、本実施形態では、このトナー像部分のトナー付着量情報として、二次転写部に用紙Pの先端が進入する時(ショックジターが発生する時)に中間転写ベルト5に対向する各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域(一次転写部に存在する感光体表面部分)を含む所定領域内の画像面積率の情報を用いる。この画像面積率の情報は、入力画像データ分析部28において、印刷する画像の画像データに基づき、各感光体1Y,1M,1C,1Kに形成するトナー像の各画像データから算出する。
【0048】
また、タイマ30は、用紙Pの先端が二次転写部に進入するタイミングを判断するための計時手段である。本実施形態のタイマ30は、レジストローラ対用駆動モータ29がONになってからの時間を計測する。そして、タイマ30は、レジストローラ対用駆動モータ29がONになってから用紙Pの先端が二次転写部に進入するまでに要する規定時間に達したら、タイムアップ信号を制御部500に出力する。
【0049】
図6は、入力画像データ分析部28において、画像データに基づいて、イエロー感光体1Y及びマゼンタ感光体1M上にそれぞれ形成されるトナー像部分の画像面積率の算出方法を示す説明図である。なお、
図6では省略されているが、シアン感光体1C及びブラック感光体1Kについても同様である。
【0050】
図6中符号EY,EMに示す破線は、入力画像データ分析部28において画像面積率を求める所定領域を示している。すなわち、各感光体1Y,1M,1C,1Kの所定領域EY,EM,EC,EKは、ショックジターが発生する時(用紙Pの先端が二次転写部に進入する時又は用紙Pの後端が二次転写部を抜ける時)に、中間転写ベルト5に対向することになる各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域(一次転写部に存在することになる感光体表面部分)を含む領域である。
【0051】
ショックジターが実際に発生し得るトナー像部分の範囲は、感光体表面移動方向において、一次転写部におけるニップ幅(一次転写ニップの中間転写ベルト表面移動方向長さ)であり、感光体表面移動方向において所定領域EY,EM,EC,EKよりも狭い範囲である。しかしながら、トナー像部分の制御位置誤差や、ショックジターが発生してから一次転写部においてショックジターの影響が収まるまでの時間などを考慮して、所定領域EY,EM,EC,EKは感光体表面移動方向に余裕をみた範囲に設定するのが好ましい。
【0052】
また、接離機構の挟持動作によって二次転写ローラ15が中間転写ベルト5へ衝突するときの衝撃や、接離機構の離間動作によって二次転写ローラ15が中間転写ベルト5から離れるときの衝撃によっても、ショックジターと同様に、その衝撃時に中間転写ベルト5に対向する各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域(一次転写部に存在する感光体表面部分)のトナー像が乱れて、ショックジターと同様の異常画像(横すじ状の濃度ムラ)を発生させることがある。ショックジターによる異常画像とともに、中間転写ベルト5に対する二次転写ローラ15の接離時の衝撃に起因した異常画像も考慮するのであれば、所定領域EY,EM,EC,EKは、当該トナー像も含まれる範囲に設定してもよい。
【0053】
本実施形態において、所定領域EY,EM,EC,EKは、例えば、感光体表面移動方向長さを25mmとし、感光体軸方向長さを330mmとする。なお、所定領域EY,EM,EC,EK内の画像面積率は、
図6に示す例では、イエロー感光体1Yは50%であり、マゼンタ感光体1Mは30%であり、シアン感光体1Cは0%であり、ブラック感光体1Kは0%である。
【0054】
図7(a)~(d)は、各色トナー像について所定領域EY,EM,EC,EK内の画像面積率とショックジター影響レベルと関係を示すグラフである。
上述したとおり、ショックジターによる異常画像の程度、すなわち、異常画像として人間に知覚される不具合の程度は、その異常画像部分の画像パターンによって異なる。具体的には、文字画像のような線画画像の場合には、ショックジターによる異常画像が生じても、人間に異常画像として知覚されにくい。また、高濃度画像(ベタ画像)の場合も、ショックジターによる異常画像が生じたときに人間に異常画像として知覚されにくい。これに対し、ハーフトーン画像については、ショックジターによる異常画像が生じると、人間に異常画像として知覚されやすい。
【0055】
このように画像パターンごとにショックジターによる異常画像の知覚度合いが異なるので、本実施形態では、異常画像の知覚度合いをショックジター影響レベルとして3段階に分けて考える。具体的には、
図7(a)~(d)に示すように、ショックジターによる異常画像の知覚度合いが最も小さい場合をショックジター影響レベル1とし、ショックジターによる異常画像の知覚度合いが中位である場合をショックジター影響レベル2とし、ショックジターによる異常画像の知覚度合いが最も大きい場合をショックジター影響レベル3とする。
【0056】
そして、画像面積率が第一規定量である例えば20%以下であるときには、当該所定領域EY,EM,EC,EKの画像パターンが、ショックジターによる異常画像が生じても人間に異常画像として知覚されにくい文字画像のような線画画像であると判断する。特に、本実施形態では、画像面積率が他の第一規定量である例えば5%以下であるときには、当該所定領域EY,EM,EC,EKの画像パターンが、ショックジターによる異常画像が生じても人間に異常画像として更に知覚されにくいものであると判断する。
【0057】
また、画像面積率が第二規定量である例えば80%以上であるときには、当該所定領域EY,EM,EC,EKの画像パターンが、ショックジターによる異常画像が生じても人間に異常画像として知覚されにくい高濃度画像(ベタ画像)であると判断する。特に、本実施形態では、画像面積率が他の第二規定量である例えば95%以上であるときには、当該所定領域EY,EM,EC,EKの画像パターンが、ショックジターによる異常画像が生じても人間に異常画像として更に知覚されにくいものであると判断する。
【0058】
一方、画像面積率が20%よりも大きく80%よりも小さいときには、当該所定領域EY,EM,EC,EKの画像パターンが、ショックジターによる異常画像が生じても人間に異常画像として最も知覚されやすいハーフトーン画像であると判断する。
【0059】
図8は、本実施形態における接離機構の挟持動作時の制御の流れを示すフローチャートである。
印刷する画像の画像データが入力されると(S1)、入力された画像データに基づいて、入力画像データ分析部28により、用紙Pの先端が二次転写部に進入するタイミングに中間転写ベルト5に対向することになる各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域を含む所定領域EY,EM,EC,EK内における画像面積率を算出する(S2)。なお、二次転写ローラ15の初期位置は挟持位置とする。
【0060】
ここで、
図7(a)~(d)に示すように、同じ画像パターンであっても(同じ画像面積率であっても)、その色によって、ショックジターによる異常画像の程度、すなわち、異常画像として人間に知覚される不具合の程度が異なる。具体的には、
図7(d)に示すブラック(K)の場合が最も、ショックジターによる異常画像が人間に知覚されやすく、次に、
図7(b)及び(c)に示すマゼンタ(M)及びシアン(C)が知覚されやすく、
図7(a)に示すイエロー(Y)が最も、ショックジターによる異常画像が人間に知覚されにくい。そのため、本実施形態では、
図7(a)~(d)に示すように、画像面積率とショックジター影響レベルとの関係が色ごとに異なるように設定されている。
【0061】
制御部500は、入力画像データ分析部28から各所定領域EY,EM,EC,EK内の画像面積率の情報を受け取ると、
図6に示す各色についての画像面積率とショックジター影響レベルとの関係から、各色のショックジター影響レベルを判定する(S3)。
【0062】
本実施形態では、ショックジターによる異常画像の知覚度合いが最も大きいショックジター影響レベル3の場合を基準とし、ショックジターによる異常画像が発生しないような接離機構の挟持動作の内容を基準の制御とする。そのため、挟持動作を行うときのギャップ量(離間量)は、広ギャップ量GAが基準となる。そして、各色のショックジター影響レベルのうち、最もショックジター影響レベルが高い最高レベルに基づいて、挟持動作の内容を基準内容から変更する。
【0063】
具体的には、最高レベルがレベル3であった場合(S4のYes)、ギャップ量が基準である広ギャップ量GAとなるように、接離機構のステッピングモータ22を制御して偏心カム19を回転させる。これにより、二次転写ローラ15は第一の離間位置をとり、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが広ギャップ量GAだけ離れる(S5)。そして、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが広ギャップ量GAで離間している二次転写部に用紙Pの先端が進入する際、挟持動作が開始され(S9)、用紙Pの先端が二次転写部に進入した後に二次転写ローラ15の挟持位置への移動が完了する(S10)。このとき、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが広ギャップ量GAで離間している二次転写部に用紙Pの先端が進入することになるので、ショックジターが十分に緩和される。したがって、ショックジターによる異常画像が最も知覚されやすいブラックのハーフトーン画像(ショックジター影響レベル3)であっても、ショックジターによる異常画像が抑制される。
【0064】
なお、この場合、用紙Pの先端側の余白量が少ないときには、用紙Pの先端側画像部分については転写圧不足による白抜け等の異常画像が生じ得る。ただし、このような転写圧不足による白抜け等の異常画像が発生するほど用紙Pの先端側の余白量が少ないケースというのが稀であることから、本実施形態では、ショックジターによる異常画像の抑制を優先している。
【0065】
一方、最高レベルがレベル2であった場合(S4のNo,S6のYes)、ギャップ量を基準の広ギャップ量GAから狭ギャップ量GCへ変更し、狭ギャップ量GCとなるように接離機構のステッピングモータ22を制御して偏心カム19を回転させる。これにより、二次転写ローラ15は第二の離間位置をとり、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが狭ギャップ量GCだけ離れる(S7)。そして、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが狭ギャップ量GCで離間している二次転写部に用紙Pの先端が進入する際、挟持動作が開始され(S9)、用紙Pの先端が二次転写部に進入した後に二次転写ローラ15の挟持位置への移動が完了する(S10)。このとき、二次転写ローラ15と対向ローラ18とが狭ギャップ量GCで離間している二次転写部に用紙Pの先端が進入することになるので、ショックジターの緩和効果が若干低いものとなる。しかしながら、ショックジターによる異常画像の知覚されやすさが中位であるショックジター影響レベル2であることから、ショックジターによる異常画像は十分に抑制できる。
【0066】
しかも、この場合、用紙Pの先端側の余白量が少ないときでも、二次転写ローラ15と対向ローラ18とのギャップ量が狭いので、中間転写ベルト5上のトナー像の先端が二次転写部に達する前に二次転写ローラ15の位置への移動を完了できる。よって、用紙Pの先端側画像部分において、転写圧不足による白抜け等の異常画像が生じることも抑制できる。
【0067】
他方、最高レベルがレベル1であった場合(S4のNo,S6のNo)、二次転写ローラ15の位置を挟持位置のままとし、二次転写ローラ15と対向ローラ18とを離間させない(S8)。この場合、二次転写ローラ15と中間転写ベルト5とが当接している状態の二次転写部に用紙Pの先端が進入することになるので、ショックジターが発生する。しかしながら、ショックジターによる異常画像の知覚されやすさが最も低いショックジター影響レベル1であることから、ショックジターが発生しても、ショックジターによる異常画像が知覚されにくく、ショックジターによる異常画像は十分に抑制できる。
【0068】
しかも、この場合、用紙Pの先端側の余白量が少ないときでも、確実にトナー像の先端から適正な二次転写ニップ圧を加えることができるので、用紙Pの先端側画像部分において、転写圧不足による白抜け等の異常画像が生じることも抑制できる。
【0069】
なお、
図6に示した例では、各色のショックジター影響レベルは、イエローがレベル1、マゼンタがレベル2、シアンとブラックがレベル0(トナー無し)であるため、マゼンタのショックジター影響レベル2が最高レベルとして採用される。そのため、ギャップ量が基準の広ギャップ量GAから狭ギャップ量GCへと変更され、ショックジターによる異常画像の抑制と、用紙Pの先端側画像部分における転写圧不足による異常画像の抑制とが両立できる。
【0070】
また、本実施形態では、挟持動作の内容を変更する方法として、二次転写ローラ15の離間位置を変更する例で説明したが、これに限らず、例えば、二次転写ローラ15の挟持動作開始タイミングを変更する方法も、同様に採用することができる。具体的には、例えば、ギャップ量は広ギャップ量GAに固定しておき、最高レベルがレベル3であった場合には、挟持動作開始タイミングを最も遅いタイミング(基準タイミング)に設定し、最高レベルがレベル2であった場合には、挟持動作開始タイミングを基準タイミングよりも早いタイミングに設定し、最高レベルがレベル1であった場合には、挟持動作開始タイミングを基準タイミングよりも更に早いタイミングに設定すればよい。
【0071】
図9は、本実施形態における接離機構の離間動作時の制御の流れを示すフローチャートである。
印刷する画像の画像データが入力されたとき(S11)、入力された画像データに基づいて、入力画像データ分析部28により、用紙Pの後端が二次転写部を抜けるタイミングに中間転写ベルト5に対向することになる各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域を含む所定領域EY,EM,EC,EK内における画像面積率を算出する(S12)。そして、制御部500は、入力画像データ分析部28から各所定領域EY,EM,EC,EK内の画像面積率の情報を受け取ると、
図6に示す各色についての画像面積率とショックジター影響レベルとの関係から、各色のショックジター影響レベルを判定する(S13)。
【0072】
本実施形態では、ショックジターによる異常画像の知覚度合いが最も大きいショックジター影響レベル3の場合を基準とし、ショックジターによる異常画像が発生しないような接離機構の離間動作の内容を基準の制御とする。そのため、離間動作を行うときの開始タイミングは、用紙Pの後端が二次転写部を抜けるまでに二次転写ローラ15の離間位置への移動が完了するように、比較的早いタイミングが基準となる。そして、各色のショックジター影響レベルのうち、最もショックジター影響レベルが高い最高レベルに基づいて、離間動作の内容を基準内容から変更する。
【0073】
具体的には、最高レベルがレベル3であった場合(S14のYes)、制御部500は、離間動作開始タイミングが基準タイミングとなる設定にする。そして、設定した離間動作開始タイミングが到来したら(S19)、離間動作が開始され、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける前に二次転写ローラ15の離間位置への移動が完了する(S20)。これにより、ショックジターが緩和され、ショックジターによる異常画像が最も知覚されやすいブラックのハーフトーン画像(ショックジター影響レベル3)であっても、ショックジターによる異常画像が抑制される。
【0074】
なお、この場合、用紙Pの後端側の余白量が少ないときには、用紙Pの後端側画像部分については転写圧不足による白抜け等の異常画像が生じ得る。ただし、このような転写圧不足による白抜け等の異常画像が発生するほど用紙Pの後端側の余白量が少ないケースというのが稀であることから、本実施形態では、ショックジターによる異常画像の抑制を優先している。
【0075】
一方、最高レベルがレベル2であった場合(S14のNo,S16のYes)、離間動作開始タイミングを、基準タイミングから、基準タイミングよりも遅い遅延タイミングへ変更する(S17)。そして、設定した離間動作開始タイミングが到来したら(S19)、離間動作が開始され、用紙Pの後端が二次転写部を抜ける前に二次転写ローラ15の離間位置への移動が完了する(S20)。このとき、離間動作開始タイミングが遅くなったため、二次転写ローラ15が離間位置まで完全に移動する前に用紙Pの後端が二次転写部を抜けるおそれがあり、ショックジターの緩和効果が若干低いものとなる。しかしながら、ショックジターによる異常画像の知覚されやすさが中位であるショックジター影響レベル2であることから、ショックジターによる異常画像は十分に抑制できる。
【0076】
しかも、この場合、用紙Pの後端側の余白量が少ないときでも、離間動作開始タイミングが遅いので、中間転写ベルト5上のトナー像の後端が二次転写部を抜けた後に二次転写ローラ15の離間動作を開始することができる。よって、用紙Pの後端側画像部分において、転写圧不足による白抜け等の異常画像が生じることも抑制できる。
【0077】
他方、最高レベルがレベル1であった場合(S14のNo,S16のNo)、二次転写ローラ15の位置を挟持位置のままとし、二次転写ローラ15と対向ローラ18とを離間させない(S18)。この場合、二次転写ローラ15と中間転写ベルト5とが当接している状態の二次転写部を用紙Pの後端が抜けることになるので、ショックジターが発生する。しかしながら、ショックジターによる異常画像の知覚されやすさが最も低いショックジター影響レベル1であることから、ショックジターが発生しても、ショックジターによる異常画像が知覚されにくく、ショックジターによる異常画像は十分に抑制できる。
【0078】
しかも、この場合、用紙Pの後端側の余白量が少ないときでも、確実にトナー像の後端まで適正な二次転写ニップ圧を加えることができるので、用紙Pの後端側画像部分において、転写圧不足による白抜け等の異常画像が生じることも抑制できる。
【0079】
本実施形態においては、二次転写ローラ15が中間転写ベルト5に対して接離する構成について説明したが、二次転写ローラ15及び中間転写ベルト5の少なくとも一方が他方に対して接離する構成であってもよい。
【0080】
また、本実施形態では、ショックジターの発生時に中間転写ベルト5に対向する各感光体1Y,1M,1C,1K上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすか否かの判断を、当該トナー像部分のトナー付着量情報に基づいて判断しているが、これに限られない。特に、本実施形態では、トナー付着量情報として画像面積率の情報を用いているが、感光体上のトナー付着量をセンサで検知した検知情報を用いるなど、他のトナー付着量情報を用いても良い。
【0081】
また、本実施形態では、ショックジターの発生時に一次転写されるトナー像部分の色も考慮して、挟持動作や離間動作を変更しているが、必ずしも色も考慮する必要はない。一方で、本実施形態では考慮していないが、ショックジターによる異常画像を生じさせる各感光体の一次転写部と、ショックジターが発生する二次転写部との距離(中間転写ベルト表面移動方向に沿った距離)を考慮してもよい。この距離が短い一次転写部ほど、二次転写部で発生するショックジターの影響が大きく、ショックジターによる異常画像の程度が大きいものとなる。
【0082】
なお、いわゆる当業者は特許請求の範囲内における本発明を変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、これらの変更・修正はこの特許請求の範囲に含まれるものである。また、以上の説明はこの発明における形態の一例であって、この特許請求の範囲を限定するものではない。
【0083】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
〔第1態様〕
第1態様は、潜像担持体(例えば感光体1Y,1M,1C,1K)と、前記潜像担持体上にトナー像を形成するトナー像形成手段(例えば、帯電器2、光書き込み装置3、現像器4等)と、前記潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写体(例えば中間転写ベルト5)へ一次転写する一次転写部材(例えば一次転写ローラ9K,9C,9M,9Y)と、搬送されてくる記録材(例えば用紙P)を前記中間転写体との間の二次転写部で挟持して該中間転写体上のトナー像を該記録材へ二次転写する二次転写部材(例えば二次転写ローラ15)と、前記二次転写部材又は前記中間転写体の位置を、前記中間転写体との間に記録材を挟持する第一位置(例えば挟持位置)と、該第一位置よりも前記中間転写体と前記二次転写部材との間の距離が遠い第二位置(例えば離間位置)とに切り替える切替手段(例えば接離機構)と、前記二次転写部に記録材が進入するタイミングで前記第二位置から前記第一位置へ切り替える第一動作(例えば挟持動作)、及び、前記二次転写部から記録材が抜けるタイミングで前記第一位置から前記第二位置へ切り替える第二動作(例えば離間動作)のうちの少なくとも一方の動作を制御する制御手段(例えば制御部500、入力画像データ分析部28等)とを有する画像形成装置100であって、前記制御手段は、前記タイミングに前記中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が所定の異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を変更することを特徴とするものである。
二次転写部に記録材が進入するタイミングで生じる衝撃や二次転写部から記録材が抜けるタイミングで生じる衝撃で、潜像担持体から中間転写体へ一次転写されているトナー像部分が乱れるショックジターが発生する。そのため、このタイミング(ショックジターの発生時)に一次転写されたトナー像部分が記録材上に二次転写されて異常画像が発生する。
このショックジターによる異常画像の発生を抑制するため、本態様においては、二次転写部に記録材が進入するタイミングで二次転写部材の位置を第二位置(離間位置)から第一位置(挟持位置)へと切り替える第一動作(挟持動作)や、二次転写部から記録材が抜けるタイミングで二次転写部材の位置を第一位置(挟持位置)から第二位置(離間位置)へ切り替える第二動作(離間動作)を行う。第一動作を行うことにより、二次転写部材が第一位置(挟持位置)に位置しているところに記録材が二次転写部に進入してくる場合よりも、二次転写部への記録材進入時における衝撃が緩和され、ショックジターを抑制できる。第二動作を行うことにより、二次転写部材が第一位置(挟持位置)に位置である状態のまま記録材が二次転写部から抜ける場合よりも、二次転写部から記録材が抜ける時における衝撃が緩和され、ショックジターを抑制できる。
ところが、記録材の先端側の余白量が少ない場合、記録材の先端が二次転写部に進入した後、第一動作が完了する前に、二次転写部内に先端側画像部分が進入してしまう。この場合、二次転写部材が挟持位置まで達していないため、二次転写部(二次転写部材と中間転写体との間)に存在する先端側画像部分に対する転写圧が不足し、当該先端側画像部分が異常画像となる。一方で、この先端側画像部分の異常画像を抑制するために、先端側画像部分が二次転写部に達する前に第一動作が完了するように第一動作を制御すると、記録材の先端が二次転写部に進入する時に二次転写部材と中間転写体との間の離間量が不十分となり、ショックジターを軽減できないため、この時に一次転写されているトナー像部分が乱れて当該トナー像部分に対応する画像部分に異常画像が発生する。したがって、先端側画像部分の転写圧不足による異常画像の抑制とショックジターによる異常画像の抑制とを両立することができない。
なお、第二動作の場合も、同様の理由から、記録材の後端側の余白量が少ない場合には、後端側画像部分の転写圧不足による異常画像の抑制とショックジターによる異常画像の抑制とを両立することができない。
ここで、本発明者らは、ショックジターによる異常画像の程度、すなわち、異常画像として人間に知覚される不具合の程度は、その異常画像部分の画像パターン(文字画像のような線画画像なのか、ハーフトーン画像なのか、高濃度画像(ベタ画像)なのか等)によって異なることを見出した。すなわち、ショックジターによる異常画像が生じた画像部分の画像パターンによっては、異常画像として人間に知覚されやすい場合と、異常画像として人間に知覚されにくい場合とが存在するのである。
そこで、本態様においては、二次転写部に記録材が進入するタイミングや二次転写部から記録材が抜けるタイミングに、中間転写体に対向する潜像担持体上の対向領域に形成されるトナー像部分が、ショックジターによる異常画像の知覚度合いの低い画像パターンであることを判定するための所定の異常画像低減条件を満たすときには、第一動作(挟持動作)や第二動作(離間動作)の内容を変更するようにしている。これにより、本態様によれば、当該タイミング(ショックジターの発生時)に一次転写されるトナー像部分が異常画像として人間に知覚されにくい画像パターンであるときには、ショックジターが大きくなっても、先端側画像部分や後端側画像部分の転写圧不足による異常画像の抑制を優先するように第一動作を制御することが可能となる。これにより、記録材の先端側の余白量が少ない場合や記録材の後端側の余白量が少ない場合において、転写圧不足による異常画像の抑制とショックジターによる異常画像の抑制とを両立することができるケースを増やすことができる。
【0084】
〔第2態様〕
第2態様は、前記第1態様において、前記制御手段は、前記トナー像部分のトナー付着量情報(例えば、画像面積率の情報)に応じて、前記異常画像低減条件を満たすか否かを判断することを特徴とするものである。
本発明者らは、ショックジターによる異常画像の知覚度合いに違いのある画像パターンを判別するうえで、前記トナー像部分のトナー付着量が有効な情報であることを見いだした。したがって、本態様によれば、ショックジターによる異常画像の知覚度合いを適切に判断することが可能となる。
【0085】
〔第3態様〕
第3態様は、前記第2態様において、前記制御手段は、前記トナー付着量情報として、前記潜像担持体上の前記対向領域を含む所定領域内の画像面積率の情報を用いることを特徴とするものである。
これによれば、ショックジターによる異常画像の知覚度合いに違いのある画像パターンを判別するうえで有効なトナー付着量情報を、画像面積率という形で簡易に取得することが可能となる。
【0086】
〔第4態様〕
第4態様は、前記第3態様において、前記画像面積率の情報は、前記潜像担持体に形成するトナー像の画像データから算出されることを特徴とするものである。
これによれば、画像面積率の情報を簡易に得ることができる。
【0087】
〔第5態様〕
第5態様は、前記第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすとき、前記少なくとも一方の動作を行わないように、又は、前記第一動作の開始タイミングが早くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが遅くなるように、変更することを特徴とする。
これによれば、記録材の先端側の余白量が少ない場合や記録材の後端側の余白量が少ない場合において、転写圧不足による異常画像の抑制とショックジターによる異常画像の抑制とを両立することができるケースを増やすことができる。
【0088】
〔第6態様〕
第6態様は、前記第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすとき、前記第二位置が基準位置よりも前記中間転写体に近い位置となるように、変更することを特徴とする。
これによれば、ショックジターの発生時に一次転写されるトナー像部分が異常画像として人間に知覚されにくい画像パターンであるときには、第一動作の際に、より早く第二位置から第一位置への移動を完了することができる。よって、記録材の先端側の余白量が少ない場合でも、先端側画像部分の転写圧不足による異常画像を抑制できる。一方で、この場合、ショックジターの緩和効果が低下するが、ショックジターによる異常画像の知覚されにくい画像パターンであることから、ショックジターによる異常画像も抑制される。
【0089】
〔第7態様〕
第7態様は、前記第6態様において、前記異常画像低減条件は、前記トナー像部分のトナー付着量情報が第一規定量以下のトナー付着量であるという条件を含むことを特徴とするものである。
これによれば、ショックジターによる異常画像が生じたときに人間に異常画像として知覚されにくい画像パターンである文字画像のような線画画像を適切に判別することができる。
【0090】
〔第8態様〕
第8態様は、前記第6又は第7態様において、前記異常画像低減条件は、前記トナー像部分のトナー付着量情報が第二規定量以上のトナー付着量であるという条件を含むことを特徴とするものである。
これによれば、ショックジターによる異常画像が生じたときに人間に異常画像として知覚されにくい画像パターンである高濃度画像(ベタ画像)を適切に判別することができる。
【0091】
〔第9態様〕
第9態様は、前記第1乃至第8態様のいずれかにおいて、前記中間転写体に対向するように該中間転写体の表面移動方向に沿って配置される複数の潜像担持体を備え、各潜像担持体上に互いに異なる色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のトナー像をそれぞれ形成する複数のトナー像形成手段を備え、前記制御手段は、所定の選択条件に従って選択される選択色についての前記トナー像部分が前記異常画像低減条件を満たすか否かによって、前記少なくとも一方の動作を変更することを特徴とするものである。
同じ画像パターンであっても、その色によって、ショックジターによる異常画像の程度、すなわち、異常画像として人間に知覚される不具合の程度が異なる。本態様によれば、色も考慮して異常画像低減条件を満たすか否かを判断できるので、ショックジターによる異常画像の抑制と、転写圧不足による異常画像の抑制とをより適切に両立できる。
【0092】
〔第10態様〕
第10態様は、前記第9態様において、前記制御手段は、前記選択色がブラックである場合、前記選択色が基準色(例えばマゼンタ又はシアン)である場合よりも、前記第一動作の前記第二位置が前記中間転写体から遠い位置となるように、又は、前記第一動作の開始タイミングが遅くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが早くなるように、前記少なくとも一方の動作を制御することを特徴とするものである。
これによれば、ショックジターによる異常画像が生じたときに人間に異常画像として知覚されやすいブラックの画像の場合でも、ショックジターによる異常画像の抑制と、転写圧不足による異常画像の抑制とを両立できる。
【0093】
〔第11態様〕
第11態様は、前記第9又は第10態様において、前記制御手段は、前記選択色がイエローである場合、前記選択色が基準色(例えばマゼンタ又はシアン)である場合よりも、前記第一動作の前記第二位置が前記中間転写体から近い位置となるように、又は、前記第一動作の開始タイミングが早くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが遅くなるように、前記少なくとも一方の動作を制御することを特徴とするものである。
これによれば、ショックジターによる異常画像が生じたときに人間に異常画像として知覚されにくいイエローの画像の場合でも、ショックジターによる異常画像の抑制と、転写圧不足による異常画像の抑制とを両立できる。
【0094】
〔第12態様〕
第12態様は、前記第9乃至第11態様のいずれかにおいて、前記制御手段は、前記選択色のトナー像が形成される潜像担持体と前記二次転写部との間における前記中間転写体の表面移動方向に沿った距離が短いほど、前記第一動作の前記第二位置が前記中間転写体から遠い位置となるように、又は、前記第一動作の開始タイミングが遅くなるように若しくは前記第二動作の開始タイミングが早くなるように、前記少なくとも一方の動作を制御することを特徴とする。
同じ画像パターンであっても、中間転写体表面移動方向に沿った二次転写部との距離が短い潜像担持体ほど、二次転写部で発生するショックジターの影響が大きいものとなる。本態様によれば、この距離も考慮して異常画像低減条件を満たすか否かを判断できるので、ショックジターによる異常画像の抑制と、転写圧不足による異常画像の抑制とをより適切に両立できる。
【符号の説明】
【0095】
1 :感光体
2 :帯電器
3 :光書き込み装置
4 :現像器
5 :中間転写ベルト
9 :一次転写ローラ
15 :二次転写ローラ
18 :対向ローラ
19 :偏心カム
22 :ステッピングモータ
23 :玉軸受
24 :付勢手段
25 :駆動モータ
26 :給紙部
27 :レジストローラ対
28 :入力画像データ分析部
29 :レジストローラ対用駆動モータ
30 :タイマ
100 :画像形成装置
500 :制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】