(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】画像異常検出装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20240307BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20240307BHJP
B65H 7/04 20060101ALI20240307BHJP
B65H 43/00 20060101ALI20240307BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240307BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240307BHJP
H04N 1/04 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
B41J29/393 101
B41J29/38 301
B41J29/393 105
B65H7/04
B65H43/00
G03G21/00 500
G03G21/14
H04N1/04 107Z
(21)【出願番号】P 2020089923
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2019130991
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】青柳 広太
(72)【発明者】
【氏名】牧野 英世
(72)【発明者】
【氏名】三ヶ尻 晋
(72)【発明者】
【氏名】山崎 公晴
(72)【発明者】
【氏名】小沼 良成
(72)【発明者】
【氏名】中山 聡
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-114498(JP,A)
【文献】特開2016-158207(JP,A)
【文献】特開2017-157962(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0234398(US,A1)
【文献】特開2010-014805(JP,A)
【文献】特開2015-082690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
B41J 29/38
B65H 7/04
B65H 43/00
G03G 21/00
G03G 21/14
H04N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上に形成された対象画像の異常を検出する画像異常検出手段を備えた画像異常検出装置であって、
複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材の後端が該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングを含む期間、又は、搬送方向上流側の搬送手段によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングを含む期間に、該記録材上のパターン画像又は該記録材と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材上のパターン画像を読み取る読取手段を備えた読取装置を有し、
前記読取手段は、前記記録材上に形成された前記対象画像と該記録材上の前記パターン画像とを読み取り、
前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報に基づいて得られる搬送速度変動情報を用い、
前記対象画像を形成するときの元画像情報又はこれを変換した画像情報と、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報
とを、所定の探索範囲ごとに比較して、該対象画像の異常を検出する
ものであり、
前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、前記所定の探索範囲を調整する探索範囲調整手段を有することを特徴とする画像異常検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像異常検出装置において、
前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、該読取手段の読取タイミングを調整する読取タイミング調整手段を有することを特徴とする画像異常検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像異常検出装置において、
前記複数の搬送手段のうち、搬送方向上流側の搬送手段は、画像形成装置の定着装置の定着搬送部材を含み、搬送方向下流側の搬送手段は、前記定着装置を通過した記録材を冷却する冷却装置の冷却搬送部材を含むことを特徴とする画像異常検出装置。
【請求項4】
請求
項1乃至3のいずれか1項に記載の画像異常検出装置において、
前記画像異常検出手段は、前記対象画像を形成するときの元画像情報を、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報の色空間に対応する画像情報に変換し、変換後の画像情報と前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報とを比較して、該対象画像の異常を検出することを特徴とする画像異常検出装置。
【請求項5】
記録材上に対象画像を形成する画像形成手段を備えた画像形成システムであって、
請求
項1乃
至4のいずれか1項に記載の画像異常検出装置を有することを特徴とする画像形成システム。
【請求項6】
請求
項5に記載の画像形成システムにおいて、
請求
項4に記載の画像異常検出装置を有し、
前記読取手段は、前記画像形成手段により形成した記録材上のテスト画像を読み取り、
前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったテスト画像の読取情報に基づいて、前記変換に用いる変換パラメータを取得することを特徴とする画像形成システム。
【請求項7】
請求
項6に記載の画像形成システムにおいて、
前記画像形成手段は、前記テスト画像が形成される記録材上に前記パターン画像も形成することを特徴とする画像形成システム。
【請求項8】
請求
項5乃
至7のいずれか1項に記載の画像形成システムにおいて、
前記画像異常検出手段は、前記搬送速度変動情報を用いて、前記記録材の搬送速度変動が低減されるように前記搬送手段を制御することを特徴とする画像形成システム。
【請求項9】
請求
項5乃
至7のいずれか1項に記載の画像形成システムにおいて、
前記画像異常検出手段は、前記搬送速度変動情報を用いて画像補正パラメータを生成し、生成した画像補正パラメータを用いて前記対象画像の異常を検出することを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
請求
項5乃
至9のいずれか1項に記載の画像形成システムにおいて、
前記画像異常検出手段は、前記記録材の情報を取得し、取得した記録材情報も用いて、前記対象画像の異常を検出することを特徴とする画像形成システム。
【請求項11】
複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材の後端が該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングを含む期間、又は、搬送方向上流側の搬送手段によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングを含む期間に、該記録材上のパターン画像又は該記録材と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材上のパターン画像を読み取る読取手段を有する読取装置と、
記録材上に形成された対象画像の異常を検出する画像異常検出手段と、
を備え、
前記読取手段は、前記記録材上に形成された前記対象画像と該記録材上の前記パターン画像とを読み取り、
前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報に基づいて得られる搬送速度変動情報を用い、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報に基づいて該対象画像の異常を検出する、画像異常検出装置であって、
前記画像異常検出手段は、前記対象画像を形成するときの元画像情報又はこれを変換した画像情報と、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報とを比較して、該対象画像の異常を検出するものであり、
前記比較において、前記対象画像の読取情報は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、前記対象画像の、該対象画像中の突発的な搬送速度変動に対応する画像部分の副走査方向の倍率が補正された後の情報であることを特徴とする画像異常検出装置。
【請求項12】
複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材の後端が該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングを含む期間、又は、搬送方向上流側の搬送手段によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングを含む期間に、該記録材上のパターン画像又は該記録材と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材上のパターン画像を読み取る読取手段を有する読取装置と、
記録材上に形成された対象画像の異常を検出する画像異常検出手段と、
を備え、
前記読取手段は、前記記録材上に形成された前記対象画像と該記録材上の前記パターン画像とを読み取り、
前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報に基づいて得られる搬送速度変動情報を用い、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報に基づいて該対象画像の異常を検出する、画像異常検出装置であって、
前記画像異常検出手段は、前記対象画像を形成するときの元画像情報又はこれを変換した画像情報と、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報とを比較して、該対象画像の異常を検出するものであり、
前記比較において、前記元画像情報は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、突発的な搬送速度変動に対応する画像部分の副走査方向の倍率が補正された後の元画像情報であることを特徴とする画像異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像異常検出装置及び画像形成システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送中の記録材上のパターン画像を読み取る読取手段を備えた読取装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェット記録装置において、テストパターン(パターン画像)を記録媒体(記録材)上に形成し、その記録媒体上のテストパターンを読取センサで読み取る読取装置が開示されている。このインクジェット記録装置では、読取センサで読み取ったテストパターンの読取情報から搬送ローラ(搬送手段)の搬送誤差を検出し、この搬送誤差を補正するための補正値を用いて記録媒体の搬送を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、搬送中の記録材上の対象画像(前記テストパターン等)を読取センサ(読取手段)で読み取っている期間に、当該記録材において突発的に大きな搬送速度変動が発生すると、対象画像の適切な処理に支障をきたす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、記録材上に形成された対象画像の異常を検出する画像異常検出手段を備えた画像異常検出装置であって、複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材の後端が該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングを含む期間、又は、搬送方向上流側の搬送手段によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングを含む期間に、該記録材上のパターン画像又は該記録材と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材上のパターン画像を読み取る読取手段を備えた読取装置を有し、前記読取手段は、前記記録材上に形成された前記対象画像と該記録材上の前記パターン画像とを読み取り、前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報に基づいて得られる搬送速度変動情報を用い、前記対象画像を形成するときの元画像情報又はこれを変換した画像情報と、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報とを、所定の探索範囲ごとに比較して、該対象画像の異常を検出するものであり、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、前記所定の探索範囲を調整する探索範囲調整手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、記録材の後端が搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングで生じる突発的に大きな搬送速度変動を検出することができるので、その検出結果を利用して対象画像の適切な処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の画像形成システムにおける作像装置の概略構成を示す模式図。
【
図2】同画像形成システムにおける定着装置、冷却装置、読取装置、排紙装置の概略構成を示す模式図。
【
図3】(a)は、印刷画像の元画像情報による理想の画像(マスター画像)の一例を転写紙上に表した説明図。(b)は、副走査倍率変動が発生している場合(画像異常が発生している場合)における転写紙上に実際に形成された印刷画像を示す説明図。
【
図4】(a)は、副走査倍率変動が発生していない場合において、
図3(a)に示した理想の画像(マスター画像)を実際に転写紙上に形成したときの説明図。(b)は、
図4(a)に示す転写紙上の印刷画像を読取装置にて読み取った読取情報に基づく読取印刷画像を転写紙上に表した説明図。(c)は、
図4(b)に示す転写紙上の副走査方向位置と、当該副走査方向位置が読取装置の読取領域を通過する時の搬送速度との関係を示すグラフ。
【
図5】同画像形成システムを複数の転写紙が搬送されている様子を示す説明図。
【
図6】(a)は、転写紙上に実際に形成された印刷画像の一例を示す説明図。(b)は、
図6(a)に示す転写紙上の印刷画像を読取装置にて読み取っている期間中に突発的に大きな搬送速度変動が発生した場合の読取情報に基づく読取印刷画像を転写紙上に表した説明図。
【
図7】(a)は、転写紙上に実際に形成された印刷画像の他の例を示す説明図。(b)及び(c)は、
図7(a)に示す転写紙上の印刷画像を読取装置にて読み取っている期間中に突発的に大きな搬送速度変動が発生した場合の読取情報に基づく読取印刷画像を転写紙上に表した説明図。
【
図8】実施形態における画像異常検出動作の流れを示すフローチャート。
【
図9】実施形態における検出用パターンの読取情報に基づく転写紙上の各副走査方向位置のラインと、対応する目標位置とのズレの一例を示すグラフ。
【
図10】変形例1におけるパラメータ生成チャートと検出用パターンの一例を示す説明図。
【
図11】変形例1におけるパラメータ生成チャートと検出用パターンの他の例を示す説明図。
【
図12】(a)及び(b)は、変形例2におけるユーザー画像と検出用パターンの一例を示す説明図。
【
図13】変形例3の画像形成システムの一部の概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、画像形成システムに適用した一実施形態について説明する。
本実施形態の画像形成システムは、主に、給紙装置、作像装置、定着装置、冷却装置、読取装置、排紙装置から構成され、この順に、記録材としての転写紙の搬送方向に沿って並べて配置されている。これらの装置は、それぞれがモジュール化されているため、画像形成システムの構成は、本実施形態のものに限らず、例えば冷却装置などの一部の装置を除外した構成としてもよい。また、例えば、作像装置の搬送方向上流側に、転写紙に対して所望の液体を塗布するなどの前処理を実施する前処理装置など、新たに装置を追加した構成としてもよい。
【0009】
図1は、本実施形態の画像形成システムにおける作像装置(画像形成装置)の概略構成を示す模式図である。
本実施形態の作像装置100は、像担持体としての中間転写体である中間転写ベルト21の表面移動方向に沿って潜像担持体である4つの感光体5,6,7,8が配置された、いわゆるタンデム型で中間転写方式のカラー画像形成装置である。ただし、作像装置としては、このような電子写真方式の画像形成装置に限られず、インクジェット方式などの他の方式の画像形成装置でもよい。
【0010】
本実施形態の作像装置100は、4つの感光体5,6,7,8の表面上にそれぞれ形成されるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色の各単色画像(単色トナー像)を中間転写ベルト21の表面上で互いに重ね合わせることでカラー画像を形成するものである。4つの感光体5,6,7,8の表面上には、潜像形成手段としての光書込ユニット1,2,3,4によりそれぞれ静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、図中矢印Bの方向に回転駆動する感光体の回転に伴って現像手段としての現像装置9,10,11,12と対向する現像領域へ搬送される。各感光体5,6,7,8上の静電潜像には、それぞれの現像装置9,10,11,12により各色のトナーが供給され、各静電潜像はトナー像化される。
【0011】
4つの感光体5,6,7,8は、複数の支持ローラに張架されている中間転写ベルト21のベルト平坦部に接触した状態で、その表面移動方向(図中矢印Aの方向)に沿って並んで配置されている。各感光体と接触する部分の中間転写ベルト裏面側には、一次転写ローラ13,14,15,16が対向しており、各一次転写ローラ13,14,15,16には、各感光体5,6,7,8上のトナー像を中間転写ベルト21の表面上に一次転写するための一次転写高圧電源17,18,19,20が接続されている。各感光体5,6,7,8の表面上に形成された各色トナー像は、各一次転写ローラ13,14,15,16により中間転写ベルト21の表面上で互いに重なり合うように、中間転写ベルト21の表面上に一次転写される。
【0012】
中間転写ベルト21の表面上に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト21の表面移動に伴って二次転写領域へと搬送される。二次転写領域には、中間転写ベルト21の裏面側に支持ローラである二次転写対向ローラ22が設けられ、中間転写ベルト21の表面側には転写部材としての二次転写ローラ23が設けられている。二次転写ローラ23は、駆動力付与手段としての駆動モータMにより回転駆動する。また、二次転写ローラ23は、中間転写ベルト21の表面に対して接離可能に構成されている。画像形成工程時には、
図1に示すように、中間転写ベルト21と二次転写ローラ23とが当接状態となり、図中矢印Cで示すように二次転写領域へと搬送されてくる記録材としての転写紙Pは、中間転写ベルト21と二次転写ローラ23とに挟まれた状態で二次転写領域を通過する。この際、中間転写ベルト21の表面上に形成されているトナー像は、二次転写高圧電源24により二次転写バイアスが印加された二次転写ローラ23により、その二次転写ローラ23の表面移動により搬送される転写紙P上に二次転写される。
【0013】
図2は、本実施形態の画像形成システムにおける定着装置30、冷却装置40、読取装置50、排紙装置60によって構成される搬送装置の概略構成を示す模式図である。なお、搬送装置を構成する装置は、適宜設定することができるものである。
作像装置100においてトナー像が転写された転写紙Pは、定着装置30へと搬送される。定着装置30は、2つのローラ31,32にかけ渡されて回転する定着部材としての定着ベルト33と、定着ベルト33との間で定着ニップを形成するための加圧ローラ34とから構成されている。作像装置100から搬送されてきた転写紙Pが定着ニップに進入して通過する間、加熱された定着ベルト33の熱と定着ニップの圧力とによって、転写紙P上のトナー像が転写紙Pに定着される。
【0014】
定着装置30で定着処理がなされた転写紙Pは、次に、冷却装置40へと搬送される。冷却装置40は、2つの冷却ベルト41,42の外周面同士を対面させて転写紙Pを挟持する挟持面を形成し、転写紙Pを搬送方向下流側へ搬送させる向きに2つの冷却ベルト41,42がそれぞれ回転駆動されている。2つの冷却ベルト41,42間の挟持面に転写紙Pが進入して通過する間、定着処理時に加熱された転写紙Pの熱が2つの冷却ベルト41,42を伝って放熱される。これにより、転写紙Pの熱を迅速に取り除くことができる。
【0015】
冷却装置40で冷却処理がなされた転写紙Pは、次に、読取装置50へと搬送される。読取装置50は、読取デバイス51と、照明ユニット52と、コンタクトガラス53と、背景部材54と、第一読取搬送ローラ対55と、第二読取搬送ローラ対56とから構成されている。読取手段は、読取デバイス51と、照明ユニット52と、コンタクトガラス53と、背景部材54とから構成され、搬送中の転写紙P上のパターン画像を読み取る。読取デバイス51は、イメージセンサ51a、レンズ51b、ミラー51c,51d,51e等から構成され、照明ユニット52によって照明された転写紙P(
図2には、符号P1,P2で示す2つの転写紙が示されている。)上の画像を読み取る。
【0016】
照明ユニット52によって照明される照明領域には、コンタクトガラス53と背景部材54とが配置されており、これらの間を、第一読取搬送ローラ対55や第二読取搬送ローラ対56などによって搬送される転写紙Pが通過する。照明ユニット52による照明光が転写紙Pで反射し、コンタクトガラス53を通過して読取デバイス51へと入射する。読取デバイス51は、転写紙Pの先端が照明領域に進入する直前からイメージセンサ51aでの画像の読み取りを開始し、転写紙Pの後端が照明領域を抜けた直後にイメージセンサ51aでの画像の読み取りを終了する。これにより、転写紙1枚ごとに、転写紙の外形を含めて転写紙上の画像が読み取られる。
【0017】
本実施形態の読取装置50に設けられる背景部材54は、外周面が黒色である黒色大径ローラ54aと、外周面が黒色である黒色小径ローラ54bと、外周面が白色である白色大径ローラ54cと、外周面が白色である白色小径ローラ54dとを備えている。これらの4つのローラ54a,54b,54c,54dは、回転支持体54eに対してそれぞれ回転可能に支持されており、回転支持体54eが回転することで、いずれかのローラ54a,54b,54c,54dをコンタクトガラス53との対面位置(照明領域内)に位置させることができる。背景部材54は、転写紙Pの情報(転写紙の厚みや転写紙の色などを特定するための情報)や、画像形成システムの動作モード(搬送速度の違いなど)に応じて、対応するいずれかのローラ54a,54b,54c,54dをコンタクトガラス53との対面位置に位置させる。
【0018】
読取装置50を通過した転写紙Pは、その後、排紙装置60へと搬送される。排紙装置60は、読取装置50から搬送されてきた転写紙Pを排紙トレイ62へ搬送する排紙ローラ対61が設けられている。
【0019】
本実施形態における画像形成システムにおいては、主に作像装置100での異常によって、種々の画像異常が発生し得る。このような画像異常を検出するため、本実施形態では、読取装置50を配置し、実際に印刷された画像中に異常が発生しているか否かを制御部200にて判断している。
【0020】
画像異常の一例としては、副走査倍率誤差偏差(副走査倍率変動)に起因した画像濃度ムラなどが挙げられる。副走査倍率変動は、例えば、各感光体5,6,7,8の偏心等に起因して、それぞれの潜像書込位置での感光体表面移動速度が変動することにより生じ得る。また、各感光体5,6,7,8の表面移動速度変動や中間転写ベルト21の表面移動速度変動などに起因して、各感光体5,6,7,8から中間転写ベルト21への各一次転写領域において感光体表面移動速度と中間転写ベルト表面移動速度との間の速度差の変動が生じる場合にも生じ得る。また、二次転写領域における中間転写ベルト21の表面上に担持されているトナー像(画像)の移動速度と転写紙Pの搬送速度との速度差の変動が生じる場合にも生じ得る。
【0021】
制御部200は、読取装置50から受け取った印刷画像の読取情報から画像異常が発生しているか否かを判断する。具体的には、読取情報に基づく読取印刷画像と、当該印刷情報のマスター画像(本実施形態では、当該印刷画像を形成するときの元画像情報による理想の画像)とを比較し、その比較結果に基づいて画像異常が発生しているか否かを判断する。
【0022】
ただし、本実施形態の作像装置100では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の4色を用いて転写紙P上の印刷画像の色を表現するため、その印刷画像を形成するための元画像情報は、CMYK色空間に基づくカラーモデルを用いて作成されている。一方、本実施形態における読取装置50の読取デバイス51は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色のRGB色空間に基づくカラーモデルを用いた読取情報を出力するものである。そのため、読取情報に基づく読取印刷画像と、当該印刷情報のマスター画像(元画像情報による理想画像)とを適切に比較するためには、両者の色空間を整合させる必要がある。
【0023】
そのため、本実施形態の制御部200では、マスター画像として用いるCMYK色空間の元画像情報を、読取情報と同じRGB色空間の情報に変換し、RGB色空間のマスター画像を生成する。この変換に用いる変換パラメータは、制御部200の記憶手段に予め記憶された固定パラメータを用いてもよいが、使用環境や転写紙の特性などによって適正な値が変動することから、本画像形成システムにおいて測定した測定値に基づいて変換パラメータを生成してもよい。
【0024】
図3(a)は、印刷画像の元画像情報による理想の画像(マスター画像)の一例を転写紙P上に表した説明図である。
図3(b)は、副走査倍率変動が発生している場合(画像異常が発生している場合)における転写紙P上に実際に形成された印刷画像を示す説明図である。
図示のマスター画像は、
図3(a)に示すように、主走査方向に延びる複数のラインが副走査方向(転写紙搬送方向)に等間隔に配置されたパターンを含んでいる。すなわち、元画像情報に基づいて形成される理想の印刷画像では、各ライン間隔E1~E8がいずれも等しい間隔となる。したがって、副走査倍率変動が発生していない状況であれば、この元画像情報に基づいて実際に転写紙P上に形成される印刷画像でも、各ライン間隔E1’~E8’はいずれも等しい間隔となる。
【0025】
しかしながら、副走査倍率変動が発生している場合、転写紙P上に形成された印刷画像では、
図3(b)に示すように、各ライン間隔E1’~E8’が等間隔にはならない。具体的には、
図3(b)に示す例では、E2’~E4’の間隔は理想の間隔E2~E4よりも広がり、E5’~E7’の間隔は理想の間隔E5~E7よりも狭くなっている。このような副走査倍率変動が発生している状況で転写紙P上に形成された印刷画像が読取装置50にて適正に読み取られることで、読取装置50の読取情報から、副走査倍率変動という画像異常が発生しているか否かを判断することができる。
【0026】
画像異常検出動作では、例えば、読取情報に基づく読取印刷画像と、当該印刷情報のマスター画像とを比較し、その比較結果に基づいて画像異常の種類を判定し、その判定結果をユーザーに報知して、画像異常の原因を解消するための作業を促すようにする。ところが、読取装置50にて読み取り誤差が発生する場合、その読取情報に誤情報が含まれる結果、画像異常検出動作において、誤って画像異常が発生していると判断してしまうおそれがある。
【0027】
図4(a)は、副走査倍率変動が発生していない場合において、
図3(a)に示した理想の画像(マスター画像)を実際に転写紙P上に形成したときの説明図である。
図4(b)は、
図4(a)に示す転写紙P上の印刷画像を読取装置50にて読み取った読取情報に基づく読取印刷画像を転写紙P上に表した説明図である。
図4(c)は、
図4(b)に示す転写紙P上の副走査方向位置と、当該副走査方向位置が読取装置50の読取領域を通過する時の搬送速度との関係を示すグラフである。
【0028】
副走査倍率変動が発生していない場合、
図4(a)に示すように、実際に転写紙P上に形成される印刷画像では、
図3(a)に示した理想の画像(マスター画像)と同じく、各ライン間隔E1’~E8’がいずれも等しい間隔となる。しかしながら、このような副走査倍率変動が発生していない印刷画像が形成された転写紙Pが読取装置50の読取領域を通過するときに
図4(c)に示すような転写紙Pの搬送速度変動が生じている場合、その読取情報が示す読取印刷画像では、
図4(b)に示すように、各ライン間隔E1’’~E8’’が等間隔ではないものとなり、読み取り誤差が発生する。
【0029】
そして、読取装置50の読み取り誤差によって、その読取情報から、
図4(b)に示すようなライン間隔E1’’~E8’’の読取印刷画像が取得されてしまうと、例えばE3’’の間隔が、予め規定された許容範囲を超えていると判定されて、画像異常が発生していると判断されてしまうおそれがある。あるいは、例えばE6’’の間隔が、予め規定された許容範囲を超えていると判定されて、画像異常が発生していると判断されてしまうおそれがある。このような判断がなされてしまうと、
図4(a)に示すように、実際には副走査倍率変動が発生しておらず、その他の画像異常も発生していないにもかかわらず、読取装置50の読み取り誤差により、誤って画像異常対応処理が実施されてしまうという事態を招いてしまう。
【0030】
このように誤って画像異常対応処理が実施されてしまう事態を引き起こすような読取装置50の読み取り誤差は、主に、以下のような原因で発生することが判明した。
すなわち、読取装置50の読取領域を通過するように搬送される転写紙Pは、その搬送中に、定着装置30の定着搬送部材としての定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却搬送部材としての冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56、排紙装置60の排紙ローラ対61などの複数の搬送手段によって、搬送力あるいは搬送負荷を受ける。そして、これらの搬送手段から受ける搬送力あるいは搬送負荷は、転写紙Pの後端が搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングや、転写紙Pの先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングに、大きく変動することになる。
【0031】
例えば、
図2において、読取領域を通過中の転写紙P1には、搬送方向上流側の搬送手段である冷却装置40の冷却ベルト41,42による搬送力又は搬送負荷と、搬送方向上流側の搬送手段である読取装置50の第一読取搬送ローラ対55による搬送力又は搬送負荷とが作用している。この転写紙P1が更に搬送されると、この転写紙P1の先端が搬送方向下流側の搬送手段である第二読取搬送ローラ対56に進入する。これにより、転写紙P1には、転写紙P1の先端が第二読取搬送ローラ対56に突き当たることによる急激な搬送負荷が発生したり、第二読取搬送ローラ対56による搬送力又は搬送負荷が追加されたりすることによって、転写紙P1には突発的に大きな搬送速度変動が生じる。
【0032】
また、更に転写紙P1が更に搬送されると、この転写紙P1の後端が搬送方向上流側の搬送手段である冷却ベルト41,42のニップから抜ける。これにより、転写紙P1に作用していた冷却ベルト41,42による搬送力又は搬送負荷が急に無くなるので、転写紙P1には突発的に大きな搬送速度変動が生じる。
【0033】
このように、転写紙P1が読取装置50の読取領域を通過している間(転写紙P1上の印刷画像を読み取っている期間)に、転写紙P1に搬送力や搬送負荷を作用させる搬送手段が切り替わるタイミングで、転写紙P1には突発的に大きな搬送速度変動が生じる。
【0034】
また、読取装置50の読取領域を通過している転写紙P1に対して直接的に搬送力や搬送負荷を作用させる搬送手段が切り替わるタイミングだけでなく、当該転写紙P1と同じ搬送手段に搬送されている他の転写紙P1に対して搬送力や搬送負荷を作用させる搬送手段が切り替わるタイミングでも、転写紙P1には突発的に大きな搬送速度変動が生じる。
【0035】
図5は、本実施形態の画像形成システムを複数の転写紙P1,P2が搬送されている様子を示す説明図である。
図5に示すように、読取領域を通過中の転写紙P1が冷却ベルト41,42によって搬送されている時に、この転写紙P1に後続する転写紙P2の後端が搬送方向上流側の搬送手段である定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34のニップを抜ける場合、そのタイミングで、冷却ベルト41,42に加わる負荷が大きく変動することになる。その結果、冷却ベルト41,42が転写紙P1に与える搬送力又は搬送負荷が変動し、転写紙P1に突発的に大きな搬送速度変動が生じる。
【0036】
特に、本実施形態の画像形成システムでは、目標の搬送速度がそれぞれの装置(モジュール)によって異なっている。具体的には、読取装置50、冷却装置40、定着装置30の順に、目標の搬送速度が速く設定されている。そのため、例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34のニップに挟持されている後続の転写紙P2が冷却装置40の冷却ベルト41,42のニップにも挟持されているときは、冷却装置40の冷却ベルト41,42の搬送速度は当該冷却装置での目標搬送速度よりも遅くなる。その結果、この冷却ベルト41,42に挟持されている先行の転写紙P1も冷却ベルト41,42に引っ張られ、読取装置50での転写紙P1の搬送速度は当該読取装置50での目標搬送速度よりも遅くなる。
【0037】
そして、後続の転写紙P2の後端が定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34のニップから抜けると、そのタイミングで冷却装置40の搬送速度は急激に目標搬送速度に戻って増加し、この冷却ベルト41,42に挟持されている先行の転写紙P1の搬送速度が急激に増加して、読取装置50での転写紙P1の搬送速度が突発的に増加することになる。本実施形態の画像形成システムのように、目標の搬送速度がそれぞれの装置で異なるように設定されていると、読取装置50を転写紙P1が通過中に、転写紙P1,P2の先端が搬送手段に進入したり、転写紙P1,P2の後端が搬送手段から抜けたりするタイミングで、転写紙P1に突発的に大きな搬送速度変動が生じやすい。
【0038】
図6(a)は、転写紙P上に実際に形成された印刷画像の一例を示す説明図である。
図6(b)は、
図6(a)に示す転写紙P上の印刷画像を読取装置50にて読み取っている期間中に突発的に大きな搬送速度変動が発生した場合の読取情報に基づく読取印刷画像を転写紙P上に表した説明図である。
読取領域を通過中の転写紙P1に突発的に大きな搬送速度変動が生じると、読取情報に基づく読取印刷画像には、
図6(b)に示すように、転写紙搬送方向(副走査方向)におけるライン間隔が大きく広がったり狭まったりする箇所が発生している。その結果、画像異常検出動作では、例えば、本来はラインが存在しないはずの副走査方向位置にラインが検出される結果から、画像汚れあるいは印字ズレという画像異常が発生しているものと誤検知してしまう。また、例えば、本来はラインが存在するはずの副走査方向位置にラインが検出されない結果から、印字抜けという画像異常が発生しているものと誤検知してしまう。
【0039】
図7(a)は、転写紙P上に実際に形成された印刷画像の他の例を示す説明図である。
図7(b)及び(c)は、
図7(a)に示す転写紙P上の印刷画像を読取装置50にて読み取っている期間中に突発的に大きな搬送速度変動が発生した場合の読取情報に基づく読取印刷画像を転写紙P上に表した説明図である。
読取領域を通過中の転写紙P1に突発的に搬送速度が遅くなるような搬送速度変動が生じると、読取情報に基づく読取印刷画像には、
図7(b)に示すように、対応する副走査方向位置で画像の伸びが発生する。また、読取領域を通過中の転写紙P1に突発的に搬送速度が速くなるような搬送速度変動が生じると、読取情報に基づく読取印刷画像には、
図7(c)に示すように、対応する副走査方向位置で画像の縮みが発生する。これらの場合、画像異常検出動作では、画像の歪みという画像異常が発生しているものと誤検知してしまう。
【0040】
そこで、本実施形態では、上述したような突発的に大きな搬送速度変動を検出するためのパターン画像(以下「検出用パターン」という。)を中間転写ベルト21上に形成し、これを転写紙Pに転写したうえで、読取装置50によって転写紙P上の検出用パターンを読み取る。そして、読み取った検出用パターンの読取情報を用いて、突発的に大きな搬送速度変動による画像異常の誤検出を是正する処理を実行する。
【0041】
図8は、本実施形態における画像異常検出動作の流れを示すフローチャートである。
本実施形態における画像異常検出動作は、制御部200の制御の下、まず、作像装置100において、通常の画像形成工程で画像形成に使用する構成を利用して、トナーによる検出用パターンを所定のプロセスにて中間転写ベルト21の表面上に作成する(S101)。そして、二次転写高圧電源24により二次転写バイアスを二次転写ローラ23に印加して、中間転写ベルト21の表面上に形成した検出用パターンを転写紙P上に転写する(S102)。検出用パターンが転写された転写紙Pは、通常の画像形成工程と同様、定着装置30及び冷却装置40を経て、読取装置50へと搬送される。読取装置50は、搬送されてきた転写紙P上の検出用パターンを読取デバイス51により読み取る(S103)。読取装置50が読み取った検出用パターンの読取情報(パターン読取情報)は、制御部200へと送られる。
【0042】
制御部200は、読取装置50から受け取った検出用パターンの読取情報から、読取印刷画像中に生じ得る突発的な搬送速度変動を検出する(S104)。突発的な搬送速度変動は、例えば、読取情報に基づく検出用パターンのパターン間隔が予め決められた許容範囲から外れる箇所が存在するとき、その箇所で突発的な搬送速度変動が発生していることを検出する。
【0043】
図9は、本実施形態における検出用パターンの読取情報に基づく転写紙上の各副走査方向位置のラインと、対応する目標位置とのズレの一例を示すグラフである。
図5に示したように、本実施形態では、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34のニップに挟持されている後続の転写紙P2が冷却装置40の冷却ベルト41,42のニップにも挟持されているとき、冷却装置40の冷却ベルト41,42の搬送速度が当該冷却装置での目標搬送速度よりも遅くなる。その結果、この冷却ベルト41,42に挟持されている先行の転写紙P1も冷却ベルト41,42に引っ張られる。この期間T1では、
図9に示すように、読取装置50での転写紙P1の搬送速度は当該読取装置50での目標搬送速度よりも遅くなり、目標位置とのズレ量(遅れ量)が徐々に増大する。
【0044】
その後、後続の転写紙P2の後端が定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34のニップから抜けると(期間T1から期間T2に切り替わると)、そのタイミングで冷却装置40の搬送速度は急激に目標搬送速度に戻ろうとして増加し、この冷却ベルト41,42に挟持されている先行の転写紙P1の搬送速度が急激に増加して、読取装置50での転写紙P1の搬送速度が突発的に増加することになる。これにより、目標位置とのズレ量が一時的に目標位置を超えて進んでしまうが、第一読取搬送ローラ対55及び第二読取搬送ローラ対56の表面移動速度が目標速度に制御される結果、目標位置とのズレ量が小さくなる。
【0045】
図9の例では、後続の転写紙P2の後端が定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34のニップから抜けた直後の突発的な搬送速度変動時に、読取情報に基づく検出用パターンのパターン間隔が予め決められた許容範囲から外れるため、その箇所で突発的な搬送速度変動が発生していることが検出される。
【0046】
検出用パターンは、突発的な搬送速度変動を検出できるパターンであれば特に制限はなく、例えば、
図3(a)に示したように、主走査方向に延びる複数のラインが副走査方向(転写紙搬送方向)に等間隔に配置されたパターンを含むものが好適に用いることができる。特に、このような検出用パターンを用いる場合、読取装置50での読取結果から、突発的な搬送速度変動だけでなく、副走査倍率変動も検出することができることから、副走査倍率変動の補正処理にも利用できる。
【0047】
このような検出用パターンを用いる場合、突発的な搬送速度変動が発生すると、転写紙P上に形成された検出用パターンでは、例えば、
図4(b)に示したE3’’の間隔のように予め決められた規定範囲よりも広いライン間隔や、
図4(b)に示したE6’’の間隔のように予め決められた規定範囲よりも狭いライン間隔が、検出される。このような規定範囲外のライン間隔を検出したときに、突発的な搬送速度変動が検出されたと判断し(S105のYes)、制御部200は、突発的な搬送速度変動による画像異常の誤検出を是正する是正処理を実施する(S106)。
【0048】
是正処理の具体的な方法としては、例えば、突発的な搬送速度変動の検出結果を制御部200の記憶手段に記憶しておき、印刷画像が形成された転写紙P1の読取時に、記憶手段に記憶された検出結果に基づいて、突発的な搬送速度変動が発生するタイミングにおける読取装置50の第一読取搬送ローラ対55及び第二読取搬送ローラ対56の表面移動速度を調整し、突発的な搬送速度変動をキャンセルするように是正する方法が挙げられる。
【0049】
また、他の是正処理の方法としては、例えば、突発的な搬送速度変動の検出結果を制御部200の記憶手段に記憶しておき、読取装置50で読み取った読取印刷画像中の突発的な搬送速度変動に対応する画像部分(伸びた部分や縮んだ部分)を、記憶手段に記憶された検出結果に基づいて副走査方向に変倍処理して補正し、補正後の読取印刷画像とマスター画像とを比較処理させる方法が挙げられる。なお、マスター画像側を変倍処理して補正してもよい。
【0050】
また、更に他の是正処理の方法としては、例えば、突発的な搬送速度変動の検出結果を制御部200の記憶手段に記憶しておき、印刷画像が形成された転写紙P1の読取時において、読取装置50の読取デバイス51における読取タイミング(読取周期)を、記憶手段に記憶された検出結果に基づいて調整し、読取印刷画像上での突発的な搬送速度変動による画像の伸びや縮をキャンセルするように是正する方法が挙げられる。
【0051】
また、更に他の是正処理の方法としては、例えば、突発的な搬送速度変動の検出結果を制御部200の記憶手段に記憶しておき、読取装置50で読み取った読取印刷画像とマスター画像とを比較する処理において、記憶手段に記憶された検出結果に基づいて、読取印刷画像中の突発的な搬送速度変動に対応する画像部分(伸びた部分や縮んだ部分)が比較結果に影響しにくいように、是正する方法が挙げられる。例えば、読取装置50で読み取った読取印刷画像とマスター画像とを所定の探索範囲ごとに比較するマッチング処理を行う場合、突発的な搬送速度変動に対応する画像部分を含む探索範囲を相対的に広く設定するなどして、突発的な搬送速度変動に対応する画像部分がマッチング処理の結果に影響しにくいようにする。
【0052】
一方、突発的な搬送速度変動が検出されない場合には(S105のNo)、是正処理を実施せずに、そのまま読取画像情報とマスター画像とを比較して画像異常を検出する画像異常検出処理を実施する(S107)。なお、画像異常対応処理で画像異常が検出された場合には、例えば、ユーザーに画像異常が発生している旨の報知処理を行い、画像異常の原因を解消するための作業を促すようにする。
【0053】
また、転写紙Pが読取装置50の読取領域を通過している間に生じる突発的に大きな搬送速度変動は、転写紙Pの特性(転写紙の厚み、コシの強さ、平滑度など)や、転写紙Pのサイズなどによっても変わってくる。したがって、検出用パターンを読取装置50で読み取って得た突発的な搬送速度変動の検出結果は、その検出に用いた転写紙Pの特性やサイズなどの転写紙情報ごとに、制御部200の記憶手段に記憶しておくのが好ましい。このように、転写紙情報ごとに記憶しておくことで、使用される転写紙Pに対応する転写紙情報に対応した突発的な搬送速度変動の検出結果を利用して是正処理を実施できるので、より適切に画像異常の誤検出を是正することができる。
【0054】
〔変形例1〕
次に、上述した実施形態における画像異常検出動作の一変形例(以下、本変形例を「変形例1」という。)について説明する。
上述した実施形態においては、突発的な搬送速度変動を検出するための検出用パターンのみを転写紙上に形成し、これを読取装置50で読み取る例であったが、本変形例1では、検出用パターンとは別の画像(別用途の画像)が形成される転写紙上に検出用パターンも形成し、当該別の画像と検出用パターンとを読取装置50で一括して読み取る例である。
【0055】
上述した別の画像は、特に制限はないが、本変形例1では、一例として、変換パラメータを決定する際に用いるパラメータ生成チャート(テスト画像)を形成する転写紙P上に、突発的な搬送速度変動を検出するための検出用パターンも形成する例を説明する。
なお、この変換パラメータは、上述したとおり、制御部200がマスター画像と読取印刷情報とを比較するために、マスター画像として用いるCMYK色空間の元画像情報を、読取情報と同じRGB色空間の情報に変換するときに用いる変換パラメータである。
【0056】
図10は、本変形例1におけるパラメータ生成チャートG1と検出用パターンG2の一例を示す説明図である。
本変形例1におけるパラメータ生成チャートG1は、色や階調の水準の異なる複数のテストパターンが副走査方向に並べられたものであり、パラメータ生成チャートG1を読取装置50の読取デバイス51により読み取り、そのパラメータ生成チャートG1の読取情報から、既知の方法にて、CMYK色空間の元画像情報をRGB色空間の情報へ変換する変換パラメータを算出する。
【0057】
算出した変換パラメータは、制御部200の記憶手段に記憶され、読取情報に基づく読取印刷画像と当該印刷情報のマスター画像(元画像情報による理想画像)とを比較する際には、記憶手段から読み出されて、CMYK色空間の元画像情報をRGB色空間の情報へ変換する変換パラメータとして用いられる。
【0058】
なお、転写紙の特性(転写紙の色など)によって印刷画像の色味は異なってくることから、変換パラメータは転写紙情報ごとに、制御部200の記憶手段に記憶しておくのが好ましい。このように、転写紙情報ごとに記憶しておくことで、使用される転写紙Pに対応する転写紙情報に対応した適切な変換パラメータを用いてCMYK色空間の元画像情報をRGB色空間の情報へ変換することができ、より適切に画像異常の検出を行うことができる。
【0059】
また、本変形例1における検出用パターンG2は、
図10に示すように、主走査方向に延びる複数のラインが副走査方向(転写紙搬送方向)に等間隔に配置されたラダーパターンからなる。また、検出用パターンG2は、例えば、
図11に示すように、主走査方向に対して傾斜する方向に延びる複数のラインが副走査方向(転写紙搬送方向)に等間隔に配置されたパターであってもよい。
【0060】
〔変形例2〕
次に、上述した実施形態における画像異常検出動作の他の変形例(以下、本変形例を「変形例2」という。)について説明する。
本変形例2においても、上述した変形例1と同様に、検出用パターンとは別の画像が形成される転写紙上に検出用パターンも形成し、当該別の画像と検出用パターンとを読取装置50で一括して読み取る例である。ただし、本変形例2においては、当該別の画像がユーザー画像である点で、上述した変形例1と相違する。
【0061】
図12(a)及び(b)は、本変形例2におけるユーザー画像G3と検出用パターンG4の一例を示す説明図である。
本変形例2におけるユーザー画像G3は、ユーザーが指定した絵柄や文字等の画像であり、そのユーザー画像G3が形成された転写紙は印刷物としてユーザーの利用に供する。一方、本変形例2における検出用パターンG4は、
図10に示した変形例1の検出用パターンG2と同様、主走査方向に延びる複数のラインが副走査方向(転写紙搬送方向)に等間隔に配置されたラダーパターンからなる。もちろん、上述した変形例1と同様、検出用パターンG4は、例えば、
図11に示すように、主走査方向に対して傾斜する方向に延びる複数のラインが副走査方向(転写紙搬送方向)に等間隔に配置されたパターンであってもよい。
【0062】
本変形例2においては、読取装置50と排紙装置60との間に裁断装置を設け、読取装置50を通過した
図12(a)に示す裁断前の転写紙Pを裁断装置により裁断ラインFに沿って裁断する。これにより、裁断ラインFの外側部分が裁断された
図12(b)に示す転写紙P’が最終印刷物として排紙装置60に排紙される。本変形例2の検出用パターンG4は、裁断ラインFの外側部分に形成され、最終印刷物に残ることはない。したがって、本変形例2では、ユーザー画像G3と同じ転写紙Pに検出用パターンG4を形成することが可能である。
【0063】
〔変形例3〕
次に、上述した実施形態における画像形成システムの一変形例(以下、本変形例を「変形例3」という。)について説明する。
図13は、本変形例3の画像形成システムの一部の概略構成を示す模式図である。
本変形例3における画像形成システムは、上述した実施形態の画像形成システムにおける読取装置50と排紙装置60との間に、デカーラ装置70を配置したものである。
【0064】
本変形例3のデカーラ装置70は、デカーラ中継ローラ71と、デカーラ反転ローラ72と、反転ローラ73と、搬送切替器75とを備える。読取装置50を通過した転写紙Pは、制御部200の制御の下、搬送切替器75により、デカーラ中継ローラ71又はデカーラ反転ローラ72のいずれかに送られる。
【0065】
デカーラ中継ローラ71に送られる転写紙Pは、
図13中符号D1に示すように、デカーラ装置70内を略直線状に進んでデカーラ中継ローラ71に進入し、排紙装置60の排紙ローラ対61へと送られる。
【0066】
一方、デカーラ反転ローラ72に送られる転写紙Pは、
図13中符号D2に示すように、搬送切替器75によりデカーラ装置70内の下方へ送られ、デカーラ反転ローラ72に進入し、正逆回転可能な反転ローラ73へ送られる。反転ローラ73は、送られてきた転写紙Pを正回転してそのまま所定量だけ搬送した後、逆回転して、転写紙Pの搬送方向を逆向きにしてスイッチバックさせる。スイッチバックした転写紙Pは、
図13中符号D3に示すように、排紙装置60の排紙ローラ対61へと送られる。これにより、排紙装置60には、表裏を逆にした転写紙Pが排紙されることになる。
【0067】
また、本変形例3では、スイッチバックさせる転写紙Pの搬送方向を切り替えることで、
図13中符号D4に示す反転戻し搬送路へ送ることもできる。反転戻し搬送路を通じて搬送された転写紙Pは、再び、作像装置100の二次転写ローラ23へ送られ、転写紙Pの裏面側に中間転写ベルト21上のトナー像が二次転写される。これにより、両面に画像が形成された転写紙Pを排紙装置60へ排紙することができる。
【0068】
本変形例3においては、転写紙Pの搬送方向長さをL1とし、検出用パターンを読取装置50により読み取る読取位置からデカーラ中継ローラ71までの搬送距離をL2とし、当該読取位置からデカーラ反転ローラ72までの搬送距離をL3としたとき、L2<L1、L3<L1となるように構成されている。このように、読取位置から各ローラ71,72までの搬送距離が短いため、読取装置50やデカーラ装置70を小型化でき、画像形成システム全体の小型化を図ることができる。
【0069】
ただし、この場合、転写紙Pの先端がデカーラ装置70のデカーラ中継ローラ71やデカーラ反転ローラ72に進入するタイミングでは、まだ読取装置50において当該転写紙Pの検出用パターンの読み取りが行われている。そのため、検出用パターンの読み取り中に転写紙Pに突発的に大きな搬送速度変動が生じるので、本変形例3においては、このような突発的に大きな搬送速度変動を検出することができる。
【0070】
本実施形態(変形例を含む。以下同じ。)においては、
図2で例示したようなサイズ(副走査方向長さ)の転写紙でなくても、具体的には、これよりも小サイズ又は大サイズの転写紙であっても、同様に実施できる。本実施形態の画像形成システムは、特に、複数の搬送手段にまたがって搬送されているサイズの転写紙に適用されるものではあるが、本画像形成システムに用いる転写紙すべてがこのようなサイズに限定されるわけではない。
【0071】
また、本実施形態では、読取装置50の読取中の転写紙に突発的な搬送速度変動を生じさせる原因となる搬送手段が、当該読取装置50とは別の装置(モジュール)の搬送手段を含んでいるが、当該別の装置と当該読取装置50とが1つの装置として構成される場合であっても、同様である。
【0072】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、搬送中の記録材(例えば転写紙P,P1,P2)上のパターン画像(例えば検出用パターン)を読み取る読取手段(例えば読取デバイス51)を備えた読取装置50であって、複数の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56、排紙装置60の排紙ローラ対61)にまたがって搬送されている記録材(例えば転写紙P1あるいは転写紙P2)の後端が該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55)を抜けるタイミングを含む期間に、該記録材(例えば転写紙P1)上のパターン画像又は該記録材(例えば転写紙P2)と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材(例えば転写紙P1)上のパターン画像を、前記読取手段により読み取ることを特徴とするものである。
本態様においては、複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材の後端が当該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングで読み取られたパターン画像の読取情報が得られる。よって、読み取ったパターン画像の読取情報から、このタイミングで記録材に付与される搬送力又は搬送負荷が変動するときの搬送速度変動を検出することができる。したがって、記録材が複数の搬送手段にまたがって搬送される期間から、搬送方向下流側の搬送手段のみによって搬送される期間へと切り替わるタイミング、すなわち、記録材の後端が搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングで生じる搬送速度変動を検出することができる。
特に、当該複数の搬送手段が、画像形成装置と後処理装置又は前処理装置との間のように別々の装置にそれぞれ設けられている構成においては、各搬送手段の駆動系が別構成となっていることから、記録材の後端が搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングにおいて大きな搬送力又は搬送負荷の変動が生じやすい。よって、このような構成において本態様を適用することで、より有利な効果をもたらすことになる。
【0073】
[第2態様]
第2態様は、搬送中の記録材(例えば転写紙P,P1,P2)上のパターン画像(例えば検出用パターン)を読み取る読取手段(例えば読取デバイス51)を備えた読取装置50であって、搬送方向上流側の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56)によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段(例えば、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56、排紙装置60の排紙ローラ対61)に進入するタイミングを含む期間に、該記録材(例えば転写紙P1)上のパターン画像又は該記録材と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材上のパターン画像を、前記読取手段により読み取ることを特徴とするものである。
本態様においては、搬送方向上流側の搬送手段によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングで読み取られたパターン画像の読取情報が得られる。よって、読み取ったパターン画像の読取情報から、このタイミングで記録材に付与される搬送力又は搬送負荷が変動するときの搬送速度変動を検出することができる。したがって、記録材が搬送方向上流側の搬送手段によって搬送される期間から、当該搬送方向上流側の搬送手段とその搬送方向下流側の搬送手段とによって搬送される期間へと切り替わるタイミング、すなわち、記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段へ進入するタイミングで生じる搬送速度変動を検出することができる。
特に、当該複数の搬送手段が、画像形成装置と後処理装置又は前処理装置との間のように別々の装置にそれぞれ設けられている構成においては、各搬送手段の駆動系が別構成となっていることから、記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段へ進入するタイミングにおいて大きな搬送力又は搬送負荷の変動が生じやすい。よって、このような構成において本態様を適用することで、より有利な効果をもたらすことになる。
【0074】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、該読取手段の読取タイミングを調整する読取タイミング調整手段(例えば制御部200)を有することを特徴とするものである。
読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報においては、上述した搬送速度変動が発生したタイミングで読み取られたパターン画像部分で、本来は存在していない画像の伸びや縮みが生じる。したがって、このようなパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて読取手段の読取タイミングを調整することで、本来は存在していない画像の伸びや縮みが生じないような読取情報が取得できるようになる。
【0075】
[第4態様]
第4態様は、第1乃至第3態様のうちのいずれかにおいて、前記複数の搬送手段のうち、搬送方向上流側の搬送手段は、画像形成装置の定着装置30の定着搬送部材(例えば定着ベルト33及び加圧ローラ34)を含み、搬送方向下流側の搬送手段は、前記定着装置を通過した記録材を冷却する冷却装置40の冷却搬送部材(例えば冷却ベルト41,42)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、記録材の後端が定着装置の定着搬送部材を抜けるタイミングで生じる突発的に大きな搬送速度変動や、記録材の先端が冷却装置の冷却搬送部材へ進入するタイミングで生じる搬送速度変動を検出して、対象画像の適切な処理を実現することができる。
【0076】
[第5態様]
第5態様は、記録材上に形成された対象画像(例えば印刷画像)の異常を検出する画像異常検出手段(例えば制御部200)を備えた画像異常検出装置(例えば制御部200と読取装置50とから構成される装置)であって、第1乃至第4態様のいずれかの読取装置50を有し、前記読取手段は、前記記録材上に形成された前記対象画像と該記録材上の前記パターン画像とを読み取り、前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報に基づいて得られる搬送速度変動情報を用い、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報に基づいて該対象画像の異常を検出することを特徴とするものである。
記録材上の対象画像を読取手段によって読み取る期間中に上述したような搬送速度変動が生じる場合、対象画像の読取情報に誤った情報が含まれ得る結果、対象画像の異常の誤検出を引き起こすおそれがある。本態様によれば、記録材上の対象画像を読取手段によって読み取る期間中に上述したような搬送速度変動が生じ得る場合であっても、その搬送速度変動を検出できるので、対象画像の異常の誤検出を是正することが可能である。
【0077】
[第6態様]
第6態様は、第5態様において、前記画像異常検出手段は、前記対象画像を形成するときの元画像情報(例えばCMYK色空間)を、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報の色空間(例えばRGB色空間)に対応する画像情報に変換し、変換後の画像情報と前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報とを比較して、該対象画像の異常を検出することを特徴とするものである。
本態様によれば、元画像情報と対象画像の読取情報とが互いに色空間の異なる情報であっても、両者を比較して対象画像の異常を検出することが可能となる。
【0078】
[第7態様]
第7態様は、第5又は第6態様において、前記画像異常検出手段は、前記対象画像を形成するときの元画像情報又はこれを変換した画像情報と、前記読取手段が読み取った対象画像の読取情報とを、所定の探索範囲ごとに比較して、該対象画像の異常を検出するものであり、前記読取手段が読み取ったパターン画像の読取情報から得られる搬送速度変動情報に基づいて、前記所定の探索範囲を調整する探索範囲調整手段(例えば制御部200)を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、読取手段で読み取った読取情報と元画像情報とを所定の探索範囲ごとに比較するマッチング処理を行う際に、上述した搬送速度変動に対応する画像部分を含む探索範囲を相対的に広く設定するなどの調整を行うことで、そのような搬送速度変動に対応する画像部分がマッチング処理の結果に影響しにくいようにすることができる。よって、対象画像の異常の誤検出を是正することが可能である。
【0079】
[第8態様]
第8態様は、記録材上に対象画像(例えば印刷画像)を形成する画像形成手段(例えば作像装置100)を備えた画像形成システムであって、第5乃至第7態様のいずれかの画像異常検出装置を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、記録材上の対象画像を読取手段によって読み取る期間中に上述したような搬送速度変動が生じ得る場合であっても、その搬送速度変動を検出して、対象画像の異常の誤検出を是正することが可能な画像形成システムを提供できる。
【0080】
[第9態様]
第9態様は、第8態様において、第6態様に係る画像異常検出装置を有し、前記読取手段は、前記画像形成手段により形成した記録材上のテスト画像(例えばパラメータ生成チャートG1)を読み取り、前記画像異常検出手段は、前記読取手段が読み取ったテスト画像の読取情報に基づいて、前記変換に用いる変換パラメータを取得することを特徴とするものである。
本態様によれば、使用環境などに適合した適切な変換パラメータを取得することができるので、元画像情報と対象画像の読取情報とが互いに色空間の異なる情報である場合でも、両者を比較して対象画像の異常を適切に検出することができる。
【0081】
[第10態様]
第10態様は、第9態様において、前記画像形成手段は、前記テスト画像が形成される記録材上に前記パターン画像も形成することを特徴とするものである。
本態様によれば、テスト画像とパターン画像をそれぞれ別々の記録材上に形成する場合よりも、両画像を読み取るために要する合計時間を短縮でき、また、使用する記録材の数が少なくなるといメリットがある。
【0082】
[第11態様]
第11態様は、第8乃至第10態様のいずれかにおいて、前記画像異常検出手段は、前記搬送速度変動情報を用いて、前記記録材の搬送速度変動が低減されるように前記搬送手段(例えば第一読取搬送ローラ対55、第二読取搬送ローラ対56)を制御することを特徴とするものである。
本態様によれば、対象画像が形成された記録材の読取中に、その記録材に生じ得る搬送速度変動を前記搬送手段の制御によって低減できることから、対象画像の読取情報に含まれる誤った情報を減らして、対象画像の異常の誤検出が引き起こされるのを抑制することができる。
【0083】
[第12態様]
第12態様は、第8乃至第10態様のいずれかにおいて、前記画像異常検出手段は、前記搬送速度変動情報を用いて画像補正パラメータを生成し、生成した画像補正パラメータを用いて前記対象画像の異常を検出することを特徴とするものである。
本態様によれば、対象画像が形成された記録材の読取中にその記録材に上述した搬送速度変動が生じた場合でも、その搬送速度変動に対応する画像部分(伸びた部分や縮んだ部分)について、対象画像の読取情報あるいはこれと比較される元画像情報などを画像補正パラメータによって補正できる。よって、対象画像の異常の誤検出が引き起こされるのを抑制することができる。
【0084】
[第13態様]
第13態様は、第8乃至第12態様のいずれかにおいて、前記画像異常検出手段は、前記記録材の情報を取得し、取得した記録材情報も用いて、前記対象画像の異常を検出することを特徴とするものである。
上述した搬送速度変動には、記録材の厚みやコシの強さなどが影響する。本態様によれば、上述した搬送速度変動に影響を及ぼす記録材の厚みなどの情報を取得して対象画像の異常を検出するので、対象画像の異常の誤検出が引き起こされるのを抑制することができる。
また、上述した変換パラメータも、記録材の色味などが影響する。本態様によれば、上述した変換パラメータに影響を及ぼす記録材の色味などの情報を取得して対象画像の異常を検出するので、対象画像の異常の誤検出が引き起こされるのを抑制することができる。
【0085】
[第14態様]
第14態様は、記録材(例えば転写紙P,P1,P2)を搬送する複数の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56、排紙装置60の排紙ローラ対61)と、前記複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材(例えば転写紙P1あるいは転写紙P2)の後端が該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55)を抜けるタイミングを含む期間に、該記録材(例えば転写紙P1)上のパターン画像又は該記録材(例えば転写紙P2)と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材(例えば転写紙P1)上のパターン画像を読み取る読取手段(例えば読取デバイス51)とを備えることを特徴とするものである。
本態様においては、複数の搬送手段にまたがって搬送されている記録材の後端が当該複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングで読み取られたパターン画像の読取情報が得られる。よって、読み取ったパターン画像の読取情報から、このタイミングで記録材に付与される搬送力又は搬送負荷が変動するときの搬送速度変動を検出することができる。したがって、記録材が複数の搬送手段にまたがって搬送される期間から、搬送方向下流側の搬送手段のみによって搬送される期間へと切り替わるタイミング、すなわち、記録材の後端が搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングで生じる搬送速度変動を検出することができる。
特に、当該複数の搬送手段が、画像形成装置と後処理装置又は前処理装置との間のように別々の装置にそれぞれ設けられている構成においては、各搬送手段の駆動系が別構成となっていることから、記録材の後端が搬送方向上流側の搬送手段を抜けるタイミングにおいて大きな搬送力又は搬送負荷の変動が生じやすい。よって、このような構成において本態様を適用することで、より有利な効果をもたらすことになる。
【0086】
[第15態様]
第15態様は、記録材(例えば転写紙P,P1,P2)を搬送する複数の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56、排紙装置60の排紙ローラ対61)と、前記複数の搬送手段のうちの搬送方向上流側の搬送手段(例えば、定着装置30の定着ベルト33及び加圧ローラ34、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56)によって搬送されている記録材の先端が、該複数の搬送手段のうちの搬送方向下流側の搬送手段(例えば、冷却装置40の冷却ベルト41,42、読取装置50の2つの搬送ローラ対55,56、排紙装置60の排紙ローラ対61)に進入するタイミングを含む期間に、該記録材(例えば転写紙P1)上のパターン画像又は該記録材と同じ搬送手段に搬送されている他の記録材上のパターン画像を読み取る読取手段(例えば読取デバイス51)とを備えることを特徴とするものである。
本態様においては、搬送方向上流側の搬送手段によって搬送されている記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段に進入するタイミングで読み取られたパターン画像の読取情報が得られる。よって、読み取ったパターン画像の読取情報から、このタイミングで記録材に付与される搬送力又は搬送負荷が変動するときの搬送速度変動を検出することができる。したがって、記録材が搬送方向上流側の搬送手段によって搬送される期間から、当該搬送方向上流側の搬送手段とその搬送方向下流側の搬送手段とによって搬送される期間へと切り替わるタイミング、すなわち、記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段へ進入するタイミングで生じる搬送速度変動を検出することができる。
特に、当該複数の搬送手段が、画像形成装置と後処理装置又は前処理装置との間のように別々の装置にそれぞれ設けられている構成においては、各搬送手段の駆動系が別構成となっていることから、記録材の先端が搬送方向下流側の搬送手段へ進入するタイミングにおいて大きな搬送力又は搬送負荷の変動が生じやすい。よって、このような構成において本態様を適用することで、より有利な効果をもたらすことになる。
【0087】
[第16態様]
第16態様は、第14又は第15態様において、前記複数の搬送手段のうち、搬送方向上流側の搬送手段は、画像形成装置の定着装置30の定着搬送部材(例えば定着ベルト33及び加圧ローラ34)を含み、搬送方向下流側の搬送手段は、前記定着装置を通過した記録材を冷却する冷却装置40の冷却搬送部材(例えば冷却ベルト41,42)を含むことを特徴とするものである。
これによれば、記録材の後端が定着装置の定着搬送部材を抜けるタイミングで生じる突発的に大きな搬送速度変動や、記録材の先端が冷却装置の冷却搬送部材へ進入するタイミングで生じる搬送速度変動を検出して、対象画像の適切な処理を実現することができる。
【0088】
[第17態様]
第17態様は、記録材上に対象画像(例えば印刷画像)を形成する画像形成手段(例えば作像装置100)を備えた画像形成システムであって、第14乃至第16のいずれかの搬送装置を有することを特徴とするものである。
本態様によれば、記録材上の対象画像を読取手段によって読み取る期間中に上述したような搬送速度変動が生じ得る場合であっても、その搬送速度変動を検出して、対象画像の異常の誤検出を是正することが可能な画像形成システムを提供できる。
【符号の説明】
【0089】
1~4 :光書込ユニット
5~8 :感光体
9~12 :現像装置
13~16:一次転写ローラ
17~20:一次転写高圧電源
21 :中間転写ベルト
22 :二次転写対向ローラ
23 :二次転写ローラ
24 :二次転写高圧電源
30 :定着装置
33 :定着ベルト
34 :加圧ローラ
40 :冷却装置
41,42:冷却ベルト
50 :読取装置
51 :読取デバイス
52 :照明ユニット
53 :コンタクトガラス
54 :背景部材
55 :第一読取搬送ローラ対
56 :第二読取搬送ローラ対
60 :排紙装置
61 :排紙ローラ対
62 :排紙トレイ
100 :作像装置
200 :制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0090】