(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】被装着部材の固定構造及び係止部品
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20240307BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20240307BHJP
F16B 5/06 20060101ALI20240307BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/30
F16B5/06 C
B60R16/02 623U
(21)【出願番号】P 2020043537
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森田 悠希
(72)【発明者】
【氏名】鷹巣 正司
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-003935(JP,A)
【文献】特開平10-009236(JP,A)
【文献】特開2019-122114(JP,A)
【文献】特開2006-300325(JP,A)
【文献】特開2005-315369(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006735(WO,A1)
【文献】特開平08-140236(JP,A)
【文献】特開2006-183751(JP,A)
【文献】特開2018-017285(JP,A)
【文献】特開2007-181363(JP,A)
【文献】実開昭56-008908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/22-3/40
B60R 16/02
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の装着箇所に装着される被装着部材と、
該被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品とで構成され、
前記係止部品に、
前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、
該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、
前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、
前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付
け、
前記取付孔が複数設けられ、
前記挿入体は、
複数の前記取付孔のそれぞれに挿入される挿入片が前記取付孔に対応して複数設けられた
被装着部材の固定構造。
【請求項2】
前記凸部は、
複数の前記取付孔のそれぞれに挿入された2つの前記挿入片の先端を跨ぐ跨ぎ部で構成された
請求項1に記載の被装着部材の固定構造。
【請求項3】
前記跨ぎ部は、
2つの前記挿入片の一方に固定される固定部と、
2つの前記挿入片の他方の先端に対し、跨ぎ位置と挿入位置とを枢動支持されるヒンジ部とが設けられた
請求項2に記載の被装着部材の固定構造。
【請求項4】
所定の装着箇所に装着される被装着部材と、
該被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品とで構成され、
前記係止部品に、
前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、
該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、
前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、
前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付
け、
前記被装着部材は、樹脂シートで構成され、
前記樹脂シートで構成された前記被装着部材の肉厚内部に喰込む喰込み部が、前記凸部と前記規制体との間に設けられた
被装着部材の固定構造。
【請求項5】
前記被装着部材は、板状の前記樹脂シートを折り曲げて構成された立体構造体である
請求項4に記載の被装着部材の固定構造。
【請求項6】
前記規制体は、前記貫通方向に直交する直交方向における面積が、前記取付孔より大きい
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載の被装着部材の固定構造。
【請求項7】
前記被装着部材に板状部が形成されるとともに、前記板状部に前記取付孔が設けられ、
板状の前記周縁部を前記凸部と前記規制体が把持する
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載の被装着部材の固定構造。
【請求項8】
前記凸部は、前記挿入体において、前記交差方向の弾性を有する弾性凸部である
請求項1乃至請求項7のうちいずれかに記載の被装着部材の固定構造。
【請求項9】
前記凸部は、
前記挿入方向の前側から後ろ側に向かって、前記交差方向に徐々に広がるテーパ面が形成された
請求項1乃至請求項8のうちいずれかに記載の被装着部材の固定構造。
【請求項10】
前記被装着部材及び前記係止部品の一方に位置決め孔が設けられるともに、
前記被装着部材及び前記係止部品の他方に、前記位置決め孔に挿入し、前記被装着部材に対する前記係止部品の位置を規制する位置決め凸部が設けられた
請求項1乃至請求項9のうちいずれかに記載の被装着部材の固定構造。
【請求項11】
所定の装着箇所に装着される、板状部を有する被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品であって、
前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、
該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、
前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、
前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付
け、
前記取付孔が複数設けられ、
前記挿入体は、
複数の前記取付孔のそれぞれに挿入される挿入片が前記取付孔に対応して複数設けられた
係止部品。
【請求項12】
所定の装着箇所に装着される、板状部を有する被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品であって、
前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、
該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、
前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、
前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付
け、
前記被装着部材は、樹脂シートで構成され、
前記樹脂シートで構成された前記被装着部材の肉厚内部に喰込む喰込み部が、前記凸部と前記規制体との間に設けられた
係止部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両における所定の装着箇所に装着し、ワイヤーハーネスや電線を挿通させて保護するプロテクタなどを構成する被装着部材と、装着箇所に被装着部材を装着する係止部品とで構成される被装着部材の固定構造及び係止部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両等に配索される電線を挿通して保護したり、経路規制したりするプロテクタとして、例えば、特許文献1において、板材を折り曲げて四角筒状体を構成するとともに、四角筒状体の一面に設けた貫通孔に、車体に取り付けるための係止部品を装着して構成するものが提案されている。
【0003】
なお、上述の貫通孔は、板材の幅方向に沿って幅広な方形状の幅広部と、幅広部よりも幅狭で長手方向Lに延びる幅狭部により平面視T字状に形成され、係止部品は、車体に装着するクリップ部分と、貫通孔に挿入され、保持して係止する係止部とで構成している。
【0004】
係止部は、幅広部より幅狭で、幅狭部より幅広である一対の固定片を備え、貫通孔の幅広部から挿入し、幅狭部に挿入することで四角筒状体に取付けられる。このように、貫通孔に係止部品を取付けた四角筒状体を、車両の所定箇所に装着することができるとされている。
【0005】
しかしながら、車両への装着状態において、走行時の振動等によって、貫通孔の幅狭部に挿入して取付けた係止部が相対的に幅広部に移動し、係止部品が四角筒状体から外れ、車体への取付け状態が不安定になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題を鑑み、被装着部材における取付箇所に取付けられた係止部品が不用意に外れることを防止できる被装着部材の固定構造及び係止部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、所定の装着箇所に装着される被装着部材と、該被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品とで構成され、前記係止部品に、前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付け、前記取付孔が複数設けられ、前記挿入体は、複数の前記取付孔のそれぞれに挿入される挿入片が前記取付孔に対応して複数設けられた被装着部材の固定構造であることを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、所定の装着箇所に装着される、板状部を有する被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品であって、前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付け、前記取付孔が複数設けられ、前記挿入体は、複数の前記取付孔のそれぞれに挿入される挿入片が前記取付孔に対応して複数設けられたことを特徴とする。
【0010】
この発明により、被装着部材における取付箇所に取付けられた係止部品が不用意に外れることを防止できる。
詳述すると、所定の装着箇所に装着される被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品に備えられた挿入体を、前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入することができる。そして、挿入体を取付孔に挿入すると、該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体と、前記挿入体に設けた、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部とで前記取付孔の周縁部を把持することができる。
【0011】
上述のように、挿入体を取付孔に挿入することで、規制体と、前記挿入体に設けた凸部とで前記取付孔の周縁部を把持するため、被装着部材における取付箇所に容易に取付けた係止部品が不用意に外れることを防止できる。
なお、上述の取付箇所が設けられる板状部は、取付箇所の周辺のみが板状であれば、全体が板状であっても、部分的に板状であってもよい。
【0012】
また、前記取付孔が複数設けられ、前記挿入体は、複数の前記取付孔のそれぞれに挿入される挿入片が前記取付孔に対応して複数設けられている。これにより、複数の挿入片を複数の前記取付孔に挿入して前記係止部品を取り付けできるため、安定した取付状態を実現することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記凸部は、複数の前記取付孔のそれぞれに挿入された2つの前記挿入片の先端を跨ぐ跨ぎ部で構成されてもよい。
【0014】
この発明により、複数の前記取付孔に挿入され、挿入方向の前側で前記取付孔から抜け出た挿入片の先端に前記跨ぎ部が設けられているため、複数の挿入片、前記跨ぎ部、及び係止部品本体とで閉鎖された断面環状を構成することができる。よって、前記取付孔に取付けられた前記係止部品が不用意に抜け落ちることを確実に防止できる。
【0015】
またこの発明の態様として、前記跨ぎ部は、2つの前記挿入片の一方に固定される固定部と、2つの前記挿入片の他方の先端に対し、跨ぎ位置と挿入位置とを枢動支持されるヒンジ部とが設けられてもよい。
【0016】
この発明により、挿入片を前記取付孔に挿入する際に、挿入位置にヒンジ部で枢動した前記跨ぎ部が前記取付孔への挿入に支障することなく挿入できる。また、挿入片を前記取付孔に挿入した後、前記跨ぎ部をヒンジ部によって跨ぎ位置に枢動することで、上述したように、複数の挿入片、前記跨ぎ部、及び係止部品本体とで閉鎖された断面環状を構成することができる。よって、前記取付孔に前記係止部品を容易に取り付けできるとともに、前記取付孔に取付けられた前記係止部品が不用意に抜け落ちることを確実に防止できる。
【0017】
この発明の態様として、前記規制体は、前記貫通方向に直交する直交方向における面積が、前記取付孔より大きくてもよい。
この発明により、挿入体が前記取付孔を挿入する際に係止部品が突き抜けることを防止でき、確実に取付孔に係止部品を取付けることができる。また、凸部と、面積が前記取付孔より大きい規制体とで前記取付孔の周縁部を確実に把持することができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記被装着部材に板状部が形成されるとともに、前記板状部に前記取付孔が設けられ、板状の前記周縁部を前記凸部と前記規制体が把持してもよい。
この発明により、コンパクトな係止部品を構成できるととともに、より安定した取付状態を構成することができる。
【0019】
詳述すると、板状部に形成された取付孔に係止部品の挿入体を挿入して係止部品を取付けるが、挿入体に設けた凸部は取付孔を通過して、規制体と凸部とで取付孔の周縁部を把持することとなる。このとき、板状部は凸部が取付孔を通過する際に弾性変形しやすいため、容易に挿入体を取付孔に挿入して、係止部品を取付孔に取付けることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記凸部は、前記挿入体において、前記交差方向の弾性を有する弾性凸部であってもよい。
【0021】
この発明により、挿入体をより容易に取付孔に挿入することができる。交差方向の弾性を有する弾性凸部は、挿入体を前記取付孔に挿入する際、交差方向に撓み、弾性凸部が前記取付孔を通過すると、交差方向に撓んだ弾性凸部は弾性によって復元する。したがって、挿入体をより容易に取付孔に挿入し、弾性凸部と規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して、前記係止部品を前記取付孔に容易且つ安定的に取付けることができる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記凸部は、前記挿入方向の前側から後ろ側に向かって、前記交差方向に徐々に広がるテーパ面が形成されてもよい。
この発明により、前記凸部が前記取付孔を通過する際に、前記交差方向に徐々に広がるテーパ面によって前記取付孔の周縁部に撓み変形を促し、前記取付孔の周縁部に作用する撓み変形の負荷を軽減することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記被装着部材及び前記係止部品の一方に位置決め孔が設けられるともに、前記被装着部材及び前記係止部品の他方に、前記位置決め孔に挿入し、前記被装着部材に対する前記係止部品の位置を規制する位置決め凸部が設けられてもよい。
【0024】
この発明により、被装着部材に対して正確な位置に前記係止部品を取付けることができる。詳述すると、位置決め孔に位置決め凸部を挿入することで、前記被装着部材に対する前記係止部品の位置を規制することができる。そのため、被装着部材に対して正確な位置に前記係止部品を取付けることができる。したがって、前記係止部品によって、被装着部材を所定の装着箇所に対して高精度で装着することができる。
【0025】
またこの発明は、所定の装着箇所に装着される被装着部材と、該被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品とで構成され、前記係止部品に、前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付け、前記被装着部材は、樹脂シートで構成され、前記樹脂シートで構成された前記被装着部材の肉厚内部に喰込む喰込み部が、前記凸部と前記規制体との間に設けられた被装着部材の固定構造であることを特徴とする。
【0026】
さらにまたこの発明は、所定の装着箇所に装着される、板状部を有する被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品であって、前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入する挿入体と、該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体とが備えられ、前記挿入体に、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部を設け、前記凸部と前記規制体とで前記取付孔の周縁部を把持して取付け、前記被装着部材は、樹脂シートで構成され、前記樹脂シートで構成された前記被装着部材の肉厚内部に喰込む喰込み部が、前記凸部と前記規制体との間に設けられたことを特徴とする。
【0027】
この発明により、被装着部材における取付箇所に取付けられた係止部品が不用意に外れることを防止できる。
詳述すると、所定の装着箇所に装着される被装着部材における取付箇所に取付けられ、前記装着箇所に向かって突出し、前記装着箇所に前記被装着部材を装着する係止部品に備えられた挿入体を、前記取付箇所に設けられた取付孔に挿入することができる。そして、挿入体を取付孔に挿入すると、該挿入体の挿入方向の後方に配置され、前記取付孔への前記挿入体の挿入位置を規制する規制体と、前記挿入体に設けた、前記取付孔の貫通方向に交差する交差方向に突出する凸部とで前記取付孔の周縁部を把持することができる。
【0028】
上述のように、挿入体を取付孔に挿入することで、規制体と、前記挿入体に設けた凸部とで前記取付孔の周縁部を把持するため、被装着部材における取付箇所に容易に取付けた係止部品が不用意に外れることを防止できる。
なお、上述の取付箇所が設けられる板状部は、取付箇所の周辺のみが板状であれば、全体が板状であっても、部分的に板状であってもよい。
【0029】
また、前記被装着部材は、樹脂シートで構成されていることにより、樹脂シートは軽量であるとともに、変形性が高いため、取り扱い性が高く、且つ樹脂シートに設けた前記取付孔に挿入体を容易に挿入して、前記係止部品を取付けることができる。
上記樹脂シートは、樹脂シートは折り曲げが可能であれば、特に限定されず、熱可塑性樹脂シートおよび熱硬化性樹脂シートのいずれも含まれ。
【0030】
さらにまた、前記樹脂シートで構成された前記被装着部材の肉厚内部に喰込む喰込み部が、前記凸部と前記規制体との間に設けられている。これにより、前記取付孔への取付状態において、前記凸部と前記規制体との間に設けた喰込み部が、前記被装着部材の肉厚内部に喰込むため、前記取付孔への挿入体の挿入状態をより安定させることができる。
【0031】
またこの発明の態様として、前記被装着部材は、板状の前記樹脂シートを折り曲げて構成された立体構造体であってもよい。
【0032】
この発明により、樹脂シートは加工性が高いため、所望の立体形状の前記被装着部材を簡易に構成することができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明により、被装着部材における取付箇所に取付けられた係止部品が不用意に外れることを防止できる被装着部材の固定構造及び係止部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】第1実施形態のクリップをプロテクタ本体に取付けたプロテクタの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は第1実施形態のクリップ20をプロテクタ本体10に取付けたプロテクタ1の斜視図を示し、
図2(a)は第1実施形態のクリップ20の斜視図を示し、
図2(b)は取付状態のクリップ20の断面図を示し、
図3(a)はクリップ20をプロテクタ本体10における取付孔12に取付ける前の状態の斜視図を示し、
図3(b)はクリップ20を取付孔12に取付けた状態の斜視図を示している。
【0036】
なお、
図1では、プロテクタ本体10に設けた2つの取付孔12のうち一方の取付孔12に取付けられたクリップ20を透過状態で図示している。また、
図1において、プロテクタ本体10の内部空間13に挿通されたワイヤーハーネスWHを透過状態で図示している。
【0037】
プロテクタ1は、四角筒状のプロテクタ本体10における取付孔12に、クリップ20を取付けて構成している。
プロテクタ本体10は、側面視略正方形状の倒位の四角筒状体であり、内部に長手方向Lに貫通する内部空間13を有している。この内部空間13は、ワイヤーハーネスWHを長手方向Lに挿通する空間である。
【0038】
なお、
図1に示すように、倒位の四角筒状であるプロテクタ本体10の長手方向を長手方向Lとし、長手方向Lに直交する方向を幅方向Wとしている。また、プロテクタ本体10の取付孔12にクリップ20を挿着する方向を挿入方向Iとしている。
【0039】
プロテクタ本体10は、樹脂シートを折り曲げて構成している。詳述すると、側面視略正方形状の倒位の四角筒状体であるプロテクタ本体10は、各面を構成する部分が連続した樹脂シートを各辺部分で山折りし、一面を重ねて溶着して構成している。
【0040】
なお、本実施形態では、上面部材11を重ねて構成しているが、一対の側面の一方を重ねて構成してもよいし、底面を重ねて構成してもよい。また、連続する複数面を重ねて構成してもよい。
【0041】
プロテクタ本体10を構成する熱可塑性樹脂発泡シートの密度は、特に限定されないが、例えば、機械的特性の異方性を防止、すなわち、機械的特性を等方化して、プロテクタ本体10の設計の自由度を向上させ、また、プロテクタ本体10に収容されたワイヤーハーネスWH方向への応力に対する強度をより向上させる点から、200Kg/m3以上1000Kg/m3以下が好ましく、軽量性と機械的強度とのバランスをより向上させる点から、300Kg/m3以上600Kg/m3以下がより好ましく、350Kg/m3以上550Kg/m3以下が特に好ましい。
【0042】
プロテクタ本体10を構成する熱可塑性樹脂発泡シートの厚さは、特に限定されないが、例えば、折り曲げ容易性と機械的強度、特に、プロテクタ本体10に収容されたワイヤーハーネスWH方向への応力に対する機械的強度とのバランスをより向上させる点から、0.50mm以上4.0mm以下が好ましく、1.0mm以上2.5mm以下が特に好ましい。また、熱可塑性樹脂発泡シートには、両面または片面に、非発泡層が形成されていてもよい。すなわち、熱可塑性樹脂発泡シートは、発泡層と該発泡層上に形成された非発泡層とを有する構成としてもよい。熱可塑性樹脂発泡シートの表面に非発泡層が形成されていることにより、プロテクタ本体10の機械的強度が向上して、収容されるワイヤーハーネスWHの保護性能がより向上する。非発泡層の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上100μm以下が挙げられる。
【0043】
また、プロテクタ本体10を構成する熱可塑性樹脂発泡シートの発泡層の気泡数密度は、特に限定されず、その下限値は、機械的特性の異方性をより確実に防止する点から、800個/mm3以上が好ましく、1000個/mm3以上が特に好ましい。一方で、上記気泡数密度の上限値は、優れた機械的強度をより確実に得る点から、例えば、1010個/mm3以下を挙げることができる。
上述のような樹脂シートを折り曲げて構成したプロテクタ本体10の上面部材11を含む各面は板状に構成される。
【0044】
このように樹脂シートで構成された四角筒状であるプロテクタ本体10における上面部材11に複数の取付孔12を、長手方向Lに所定間隔を隔てて複数設けている。本実施形態では2つの取付孔12を設けているが、プロテクタ本体10の長さや、内部空間13に挿通するワイヤーハーネスWHの重量等の諸条件によって装着する適宜の数のクリップ20に対応する数の取付孔12を設ければよい。
取付孔12は、上面部材11を厚み方向、すなわち挿入方向Iに貫通する、平面視略正方形状の開口である。
【0045】
上面部材11における取付孔12に装着するクリップ20は、車両のエンジンルームなどの所定の装着箇所に設けたアンカー孔(図示省略)に挿着するアンカー部30と、取付孔12に挿通するクリップ本体部40とで構成している。
【0046】
アンカー部30は、アンカー部30をアンカー孔に装着した際に、車体パネルに押付けられる略皿状の皿部31と、皿部31の中央から延び、アンカー孔に挿入されて係止する挿入係止部32を有する。挿入係止部32の先端には、皿部31に向かって逆ハ字形に延びる係止アーム33を有する。このように構成されたアンカー部30は、アンカー部30をアンカー孔に装着した際に、係止アーム33が撓んでアンカー孔を通過し、皿部31と係止アーム33とで車体パネルを挟み込むように装着される。
【0047】
クリップ本体部40は、平面視正方形状で所定の高さに形成された台座部41と、台座部41の高さ方向の一端側(
図2において下端)において平面方向に拡がるフランジ部42とで構成している。
台座部41は、上面部材11に設けた取付孔12よりわずかに小さな相似形であり、上面部材11の厚みより高く形成している。このように形成された台座部41の高さ方向(挿入方向I)の一方の面(
図2(a)では上面)にアンカー部30を設けている。
【0048】
フランジ部42は、台座部41においてアンカー部30が設けられた側と反対側において、平面方向の全周に亘って外側に拡がるように構成している。
取付孔12よりわずかに小さな相似形で形成された台座部41の平面方向の全周に亘って外側に拡がるように形成されたフランジ部42は、取付孔12より大きな相似形となり、取付孔12の開口面積より大きな平面方向の面積で形成されている。
【0049】
平面視略正方形状に形成した台座部41の対向する一組の側面には、係止凸部43を備えるとともに、係止凸部43とフランジ部42との間に喰込み凸部46を備えている。
係止凸部43は、台座部41のアンカー部30が設けられた面からフランジ部42に向かって幅方向Wの外側に向かって傾斜する傾斜面44と、傾斜面44の先端から台座部41の側面に向かう係止面45とで、正面視略直角三角形状に形成している。
【0050】
係止面45は、フランジ部42と高さ方向に対向しているが、係止面45とフランジ部42との間は、板状の上面部材11の厚みと同じ、あるいはわずかに狭い間隔となるように配置されている。
なお、係止凸部43は、台座部41において、アンカー部30の挿入係止部32から延びる係止アーム33が配置された側の側面に配置される。つまり、係止凸部43と係止アーム33とは同方向(幅方向W)に配置される。
【0051】
上述のように構成された係止凸部43とフランジ部42との間には、喰込み凸部46を設けている。
喰込み凸部46は、台座部41の側面から幅方向Wの側方に向かって突出する先端が尖った凸状部である。なお、喰込み凸部46は、係止凸部43の台座部41の側面からの突出量に比べて低い高さで突出している。
【0052】
このように構成したクリップ20は、
図3(a)に示すように、上面部材11の取付孔12に対して、内部空間13から装着する。
具体的には、取付孔12から、内部空間13に向けて、挿入方向Iに移動させてアンカー部30を挿通させる。さらに、クリップ本体部40を取付孔12に挿入し、係止凸部43を取付孔12に通過させる。係止凸部43が取付孔12を通過する際、傾斜面44によって、板状の取付孔12の周縁部は撓み変形する。傾斜面44が取付孔12を貫通すると、
図3(b)に示すように、取付孔12の周縁部は係止面45とフランジ部42との間に配置されて、クリップ20を取付けることができる。
【0053】
このように、係止凸部43の係止面45と、フランジ部42とによって、板状である上面部材11における取付孔12の周縁部を把持するように、取付孔12にクリップ20を取付けてプロテクタ1を構成することができる(
図2(b)参照)。このとき、係止凸部43とフランジ部42との間に設けた喰込み凸部46が、取付孔12の周縁部の上面部材11の肉厚内部に喰込む態様となる。
【0054】
なお、クリップ20は、係止アーム33及び係止凸部43が、プロテクタ本体10に対して長手方向Lに交差する幅方向Wに向くように、クリップ20を取付孔12に取付けてプロテクタ1を構成している。
【0055】
上述のようにプロテクタ本体10の上面部材11にクリップ20を取付けたプロテクタ1は、プロテクタ本体10の内部空間13に、ワイヤーハーネスWHを挿通させる。そして、内部空間13にワイヤーハーネスWHを挿通したプロテクタ1を、車両のエンジンルームなどの所定の装着箇所に設けたアンカー孔(図示省略)にクリップ20のアンカー部30を挿入してプロテクタ1を所定の装着箇所に装着することができる。これにより、プロテクタ1の内部空間13を挿通するワイヤーハーネスWHを所定の配索経路で配索できるとともに、内部空間13を挿通するワイヤーハーネスWHを保護することができる。
【0056】
このようにプロテクタ1は、所定のアンカー孔に装着されるプロテクタ本体10と、プロテクタ本体10における取付孔12に取付けられ、アンカー孔に向かって突出し、アンカー孔にプロテクタ本体10を装着するクリップ20とで構成され、クリップ20に、取付孔12に挿入する台座部41と、台座部41の挿入方向Iの後方に配置され、取付孔12への台座部41の挿入位置を規制するフランジ部42とが備えられ、台座部41に、取付孔12の貫通方向(挿入方向I)に交差する幅方向Wに突出する係止凸部43を設け、係止凸部43とフランジ部42とで取付孔12の周縁部を把持して取付けるため、プロテクタ本体10における取付孔12に取付けられたクリップ20が不用意に外れることを防止できる。
【0057】
詳述すると、所定のアンカー孔に装着されるプロテクタ本体10における取付孔12に取付けられ、アンカー孔に向かって突出し、アンカー孔にプロテクタ本体10を装着するクリップ20に備えられた台座部41を、上面部材11に設けられた取付孔12に挿入することができる。そして、台座部41を取付孔12に挿入すると、台座部41の挿入方向Iの後方に配置され、取付孔12への台座部41の挿入位置を規制するフランジ部42と、幅方向Wに突出する係止凸部43とで取付孔12の周縁部を把持することができる。
【0058】
上述のように、台座部41を取付孔12に挿入することで、フランジ部42と、台座部41に設けた係止凸部43とで取付孔12の周縁部を把持するため、プロテクタ本体10における取付孔12に容易に取付けたクリップ20が不用意に外れることを防止できる。
【0059】
また、フランジ部42は、貫通方向(挿入方向I)に直交する直交方向における面積が、取付孔12より大きいため、台座部41が取付孔12を挿入する際にクリップ20が突き抜けることを防止でき、確実に取付孔12にクリップ20を取付けることができる。また、クリップ本体部40を構成する係止凸部43とフランジ部42とで取付孔12の周縁部を確実に把持することができる。
【0060】
また、上面部材11に取付孔12が設けられ、板状である取付孔12の周縁部を係止凸部43とフランジ部42とで把持しているため、コンパクトなクリップ20を構成できるととともに、より安定した取付状態を構成することができる。
【0061】
詳述すると、板状の上面部材11に形成された取付孔12にクリップ20の台座部41を挿入してクリップ20を取付けるが、台座部41に設けた係止凸部43は取付孔12を通過して、フランジ部42と係止凸部43とで取付孔12の周縁部を把持することとなる。このとき、板状部は係止凸部43が取付孔12を通過する際に弾性変形しやすく、容易に台座部41を取付孔12に挿入して、クリップ20を取付孔12に取付けることができる。
【0062】
また、係止凸部43は、挿入方向Iの前側から後ろ側に向かって、幅方向Wに徐々に広がる傾斜面44が形成されているため、係止凸部43が取付孔12を通過する際に、幅方向Wに徐々に広がる傾斜面44によって取付孔12の周縁部に撓み変形を促し、取付孔12の周縁部に作用する撓み変形の負荷を軽減することができる。
【0063】
また、プロテクタ本体10は、軽量であるとともに、変形性が高い樹脂シートで構成されているため、取り扱い性が高く、且つ台座部41を樹脂シートで構成されたプロテクタ本体10の上面部材11に設けた取付孔12に容易に挿入して、クリップ20を取付けることができる。
【0064】
また、取付孔12への取付状態において、係止凸部43とフランジ部42との間に設けた喰込み凸部46が、樹脂シートで構成されたプロテクタ本体10の上面部材11の肉厚内部に喰込み、取付孔12へのクリップ本体部40の挿入状態をより安定させることができる。
また、プロテクタ本体10は、加工性が高い板状の樹脂シートを折り曲げて構成されているため、所望の立体形状のプロテクタ本体10を簡易に構成することができる。
【0065】
続いて、第2実施形態のクリップ20aについて
図4及び
図5とともに説明する。
なお、
図4(a)は第2実施形態のクリップ20aの斜視図を示し、
図4(b)は取付状態のクリップ20aの断面図を示している。
図5(a)はクリップ20aをプロテクタ本体10における取付孔12に取付ける前の状態の斜視図を示し、
図5(b)はクリップ20aを取付孔12に取付けた状態の斜視図を示している。
【0066】
以下の説明において、クリップ20aにおいて上述のクリップ20と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略し、クリップ20aにおいてクリップ20と異なる構成について詳細に説明する。
【0067】
クリップ20aは、台座部41における幅方向Wの対向する一対の側面に備えた正面視略直角三角形状の係止凸部43と異なり、台座部41aにおける対向する一対の幅方向Wの弾性を有する弾性凸状部43aを具備するクリップ本体部40aを備えている。
【0068】
弾性凸状部43aは、台座部41aのアンカー部30が設けられた面側(
図4において上面側)を基点として、フランジ部42に向かって幅方向Wの外側に傾斜する係止アーム44aを備え、係止アーム44aの先端に、係止凹部45aを設けている。
なお、取付孔12を通過する際に撓む係止アーム44aで構成する弾性凸状部43aを備えた台座部41aは、側面に係止凸部43を備えたクリップ20の台座部41より高く形成される。
【0069】
このように、弾性凸状部43aを備えたクリップ20aは、クリップ20と同様に、
図5(a)に示すように、上面部材11の取付孔12に対して、内部空間13から装着する。
具体的には、内部空間13から、取付孔12に向けて、挿入方向Iに移動させてアンカー部30を挿通させる。さらに、クリップ本体部40aを取付孔12に挿入し、弾性凸状部43aを取付孔12に通過させる。取付孔12を通過する際、係止アーム44aは、台座部41に向かって撓み変形する。係止アーム44aが取付孔12を貫通すると、
図5(b)に示すように、撓み変形した係止アーム44aは復元し、取付孔12の周縁部は係止凹部45aとフランジ部42との間に配置されて、クリップ20aを取付けることができる。
【0070】
具体的には、
図4(b)に示すように、弾性凸状部43aの係止凹部45aと、フランジ部42とによって、板状である上面部材11における取付孔12の周縁部を把持するように、取付孔12にクリップ20aを取付けてプロテクタ1(図示省略)を構成することができる。
なお、クリップ20aは、係止アーム33及び弾性凸状部43aが、プロテクタ本体10の長手方向Lに交差する向き、つまりプロテクタ本体10の幅方向に係止アーム33及び弾性凸状部43aが向くようにクリップ20を取付孔12に取付けてプロテクタ1を構成している。
【0071】
このように構成されたクリップ20aは、上述の第1実施形態のクリップ20における作用効果に加え、台座部41aにおいて、幅方向Wの弾性を有する弾性凸状部43aを備えているため、台座部41aをより容易に取付孔12に挿入することができる。幅方向Wの弾性を有する弾性凸状部43aは、台座部41aを取付孔12に挿入する際、幅方向Wに撓み、弾性凸状部43aが取付孔12を通過すると、幅方向Wに撓んだ弾性凸状部43aは弾性によって復元する。
【0072】
したがって、台座部41aをより容易に取付孔12に挿入し、弾性凸状部43aとフランジ部42とで取付孔12の周縁部を把持して、クリップ20aを取付孔12に容易且つ安定的に取付けることができる。
【0073】
続いて、第3実施形態のクリップ20bについて
図6及び
図7とともに説明する。
なお、
図6(a)は第3実施形態のクリップ20bの斜視図を示し、
図6(b)は取付状態のクリップ20bの断面図を示している。
図7(a)はクリップ20bをプロテクタ本体10における取付孔12bに取付ける前の状態の斜視図を示し、
図7(b)はクリップ本体部40bの挿入壁部43b及び位置決め凸部48を取付孔12bに挿入した状態の斜視図を示し、
図7(c)はクリップ20bを取付孔12bに取付けた状態の斜視図を示している。
【0074】
以下の説明においても、クリップ20bにおいて上述のクリップ20と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略し、クリップ20bにおいてクリップ20と異なる構成及び取付孔12bについて詳細に説明する。
クリップ20bは、アンカー部30とクリップ本体部40bとで構成している。
【0075】
クリップ本体部40bは、板状の台座部41bと、台座部41bの幅方向Wの両端部から下方に延びる挿入壁部43b(431,432)と、挿入壁部43bの先端を跨ぐカバー部47と、挿入壁部43b同士の間から下方に延びる位置決め凸部48とで構成している。
【0076】
台座部41bは、平面視略正方形状に形成されており、台座部41bにおける幅方向Wの両端部から下方に延びる挿入壁部43bを備えている。
台座部41bにおいて幅方向Wの両端部から下方に延びる挿入壁部43bのうち一方を固定側挿入壁部431とし、他方をヒンジ側挿入壁部432としている。
【0077】
固定側挿入壁部431の下端には、後述するカバー部47の先端に備えた係止部47aを係止する係止固定部431aを備えている。
ヒンジ側挿入壁部432の下端には、カバー部47を枢動可能に連結するヒンジ部432aを備えている。
【0078】
ヒンジ部432aを介してヒンジ側挿入壁部432の先端側に備えられたカバー部47は、台座部41bと略同じ平板状であり、先端に係止固定部431aに係止する係止部47aを備えている。
位置決め凸部48は、固定側挿入壁部431,ヒンジ側挿入壁部432の間において、挿入壁部43bと平行な壁状であり、挿入壁部43bより低い高さで形成している。
【0079】
このように構成されたクリップ本体部40bは、ヒンジ部432aによって枢動可能に構成されたカバー部47を
図6(a)に示す開放位置と、
図6(b)に示す閉鎖位置とを枢動することができる。
【0080】
閉鎖位置にあるカバー部47は、先端の係止部47aを固定側挿入壁部431の係止固定部431aに係止して固定することができる。この状態では、固定側挿入壁部431,台座部41b,ヒンジ側挿入壁部432及びカバー部47で閉鎖環状状態を構成することができる。
なお、カバー部47が閉鎖位置にあると、位置決め凸部48の下端は、カバー部47と略当接状態となる。
【0081】
このようなクリップ本体部40bによってクリップ20bを取付ける取付孔12bは、
図7(a)に示すように、固定側挿入壁部431が挿入される第1挿入口121b、位置決め凸部48が挿入される第2挿入口122b、及びヒンジ側挿入壁部432が挿入される第3挿入口123bで構成されている。
【0082】
取付孔12bは、挿入されるそれぞれに応じた幅方向Wの開口幅と同じ長手方向Lの長さとで構成される長方形状開口であり、第1挿入口121b、第2挿入口122b、及び第3挿入口123bの順で配置されている。
【0083】
上述のように構成されたクリップ本体部40bを有するクリップ20bは、プロテクタ本体10の外側から、カバー部47を開放位置にした状態で、挿入方向Iに移動して取付孔12bにそれぞれ挿入する。具体的には、第1挿入口121bに固定側挿入壁部431を挿入し、第2挿入口122bに位置決め凸部48を挿入する。また、開放位置にあるカバー部47及びヒンジ側挿入壁部432を第3挿入口123bに挿入する(
図7(b)参照)。
【0084】
そして、第3挿入口123bを貫通し、内部空間13に突出するカバー部47をヒンジ部432aによって枢動させて閉鎖位置とする。閉鎖位置となったカバー部47は、係止部47aを固定側挿入壁部431の先端の係止固定部431aに係止して、固定する。このようにして、取付孔12bに取付けたクリップ本体部40bによってクリップ20bを取付けることができる。
【0085】
このとき、上述するように、固定側挿入壁部431、台座部41b、ヒンジ側挿入壁部432、及びカバー部47によって、取付孔12bを有する上面部材11を挟み込む閉鎖環状状態を構成することができる。また、第2挿入口122bに挿入された位置決め凸部48の下端はカバー部47に略当接するため、固定側挿入壁部431、台座部41b、位置決め凸部48、及びカバー部47、並びに位置決め凸部48、台座部41b、ヒンジ側挿入壁部432、及びカバー部47によっても、上面部材11を挟み込む略閉鎖環状状態を構成することができる。
【0086】
このように構成されたクリップ20bは、上述の第1実施形態のクリップ20における作用効果に加え、取付孔12bが複数設けられ、台座部41bは、複数の取付孔12bのそれぞれに挿入される挿入壁部43bが取付孔12bに対応して複数設けられているため、複数の挿入壁部43bを複数の取付孔12bに挿入してクリップ20bを取り付けできる。したがって、安定した取付状態を実現することができる。
【0087】
また、複数の取付孔12bに挿入され、挿入方向Iの前側で取付孔12bから抜け出た挿入壁部43bの先端にカバー部47が設けられているため、複数の挿入壁部43b、カバー部47、及び台座部41bとで閉鎖された断面環状を構成することができる。よって、取付孔12bに取付けられたクリップ20bが不用意に抜け落ちることを確実に防止できる。
【0088】
また、カバー部47は、ヒンジ側挿入壁部432の先端に対し、閉鎖位置と開放位置とを枢動支持されるヒンジ部432aが設けられているため、挿入壁部43bを取付孔12bに挿入する際に、開放位置にヒンジ部432aで枢動したカバー部47が取付孔12bへの挿入に支障することなく挿入できる。
【0089】
また、カバー部47は、固定側挿入壁部431に固定される係止部47aを備えているため、挿入壁部43bを取付孔12bに挿入した後、カバー部47をヒンジ部432aによって閉鎖位置に枢動し、係止部47aを係止固定部431aに係止することで、上述したように、複数の挿入壁部43b、カバー部47、及び台座部41bとで閉鎖された断面環状を構成することができる。よって、取付孔12bにクリップ20bを容易に取り付けできるとともに、取付孔12bに取付けられたクリップ20bが不用意に抜け落ちることを確実に防止できる。
【0090】
また、プロテクタ本体10に対するクリップ20bの位置を規制する位置決め凸部48を第2挿入口122bに挿入することで、プロテクタ本体10に対して正確な位置にクリップ20bを取付けることができる。
【0091】
詳述すると、第2挿入口122bに位置決め凸部48を挿入することで、プロテクタ本体10に対するクリップ20bの位置を規制することができる。そのため、プロテクタ本体10に対して正確な位置にクリップ20bを取付けることができる。したがって、クリップ20bによって、プロテクタ本体10を所定のアンカー孔に対して高精度で装着することができる。
【0092】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、この発明の装着箇所はアンカー孔に対応し、
以下同様に、
被装着部材はプロテクタ本体10に対応し、
係止部品はクリップ20に対応し、
取付孔は取付孔12,12bに対応し、
挿入体は台座部41,41a,41bに対応し、
規制体はフランジ部42に対応し、
凸部は係止凸部43に対応し、
弾性凸部は弾性凸状部43aに対応し、
テーパ面は傾斜面44に対応し、
挿入片は挿入壁部43bに対応し、
跨ぎ部は喰込み凸部46に対応し、
2つの挿入片の一方は固定側挿入壁部431に対応し、
2つの挿入片の他方はヒンジ側挿入壁部432に対応し、
跨ぎ位置は閉鎖位置に対応し、
挿入位置は開放位置に対応し、
ヒンジ部はヒンジ部432aに対応し、
被装着部材及び係止部品の一方は、固定側挿入壁部431に対応し、
位置決め孔は第2挿入口122bに対応し、
被装着部材及び係止部品の他方は、ヒンジ側挿入壁部432に対応し、
位置決め凸部は位置決め凸部48に対応し、
喰込み部が、凸部と規制体との間に設けられた喰込み凸部46に対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0093】
なお、上述の説明では、プロテクタ本体10の上面部材11に設けた取付孔12にクリップ20を取付けたが、プロテクタ本体10の側面や底面にクリップ20を取付けてもよい。さらには、プロテクタ本体10の異なる面にクリップ20を取付けてもよい。
【0094】
プロテクタ本体10は、倒位の四角筒状であったが、扁平な長方形断面の四角筒状や三角筒状などの多角筒状体であってもよいし、円筒状であってもよい。さらには、断面角形U字状断面であっても、断面L字状であってもよい。
また、係止凸部43をクリップ20に備え、位置決め凹部121を取付孔12に形成したが、係止凸部を取付孔12に備え、位置決め凹部をクリップ20に形成してもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…プロテクタ本体
13…取付孔
20,20a,20b…クリップ
41,41a,41b…台座部
42…フランジ部
43…係止凸部
43a…弾性凸状部
43b…挿入壁部
44…傾斜面
46…喰込み凸部
47…カバー部
48…位置決め凸部
132…第2挿入口
431…固定側挿入壁部
432…ヒンジ側挿入壁部
432a…ヒンジ部