(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】グロメット、及び保持部材
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240307BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240307BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20240307BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
H02G3/22
H02G3/04 081
H01B17/58 C
B60R16/02 622
(21)【出願番号】P 2020103189
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信
(72)【発明者】
【氏名】石橋 慎一
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-225256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H02G 3/04
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に挿通される電線を保護するグロメットであって、
可撓性を有する筒状体で構成されたグロメット本体と、
前記グロメット本体に取り付けられる通気弁と、
前記通気弁を前記グロメット本体に対して保持する保持部材とで構成され、
前記グロメット本体は、筒状の外周面を貫通する貫通孔を有し、前記通気弁を取り付ける取付部が設けられ、
前記通気弁は、水分を通さずに、空気を通すように構成さ
れ、
前記取付部は、前記グロメット本体の外周面よりも外側に設けられ、
前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に突出する突出部が備えられ、
前記保持部材は、前記挿入方向の両側から、前記突出部と前記通気弁とを挟持する
グロメット。
【請求項2】
前記突出部は、前記挿入方向から視て矩形状に構成された
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記突出部は、
前記挿入方向の両側から前記保持部材により挟持され、
前記通気弁は、
前記保持部材で挟持された前記取付部及び前記保持部材とで、前記挿入方向の両側から挟持された
請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記突出部は、前記グロメット本体の外周面に対して所定の間隔を隔てて設けられ、
前記取付部には、前記グロメット本体側に向かうに伴い、前記挿入方向から視て前記貫通孔を縮径する内縁部が構成され、
前記内縁部の前方側端部が、前記挿入方向における前記外周面と前記突出部との間に配置された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項5】
前記通気弁の挿入方向の前方側端部に、
前記グロメット本体側と反対側に向かうに伴い、前記挿入方向と交差する方向に拡張する拡張部が設けられた
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項6】
前記通気弁の挿入方向の前方側端部が、前記グロメット本体の内周面よりも外側に配置された
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項7】
前記通気弁と前記取付部との間にシール部材が備えられた
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項8】
前記取付部において前記貫通孔を形成する内縁部に、前記シール部材を嵌め込む嵌込部が設けられた
請求項7に記載のグロメット。
【請求項9】
前記保持部材は、第一保持部材と、前記第一保持部材と嵌合する第二保持部材とで構成され、
前記通気弁の挿入方向と交差する方向から前記第一保持部材と前記第二保持部材とを嵌合させて、前記通気弁と前記取付部とを保持する
請求項1乃至請求項8のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項10】
前記保持部材に、前記通気弁を介して前記グロメット本体の内部と外部とを通気する通気路が設けられた
請求項1乃至請求項9のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項11】
前記保持部材と前記通気弁との間には、前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に隙間が設けられた
請求項1乃至請求項10のうちのいずれかに記載のグロメット。
【請求項12】
可撓性を有する筒状体で構成されたグロメット本体に、内部に挿通する電線の挿通方向と交差する方向に貫通する
とともに、通気弁の挿入する貫通孔を有する取付部が設けられ、
前記取付部は、前記グロメット本体の外周面よりも外側に設けられるとともに、前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に突出する突出部が備えられ、
水分を通させずに、空気を通すことができるように構成された
前記通気弁を前記貫通孔に挿入した状態で、
前記挿入方向の両側から、前記突出部と前記通気弁とを挟持して、前記通気弁を前記取付部に保持する
保持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両に配索されるワイヤーハーネスを内部に挿通させて保護するグロメット、及び、グロメットを構成するグロメット本体に取り付けられた保持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運転性能や安全性などを向上させるために様々な電子機器類が車両に搭載されている。これらの電子機器類を電気的に接続するワイヤーハーネスは、車両に対して三次元的に配策されており、外装部材の内部に挿通させることにより保護されている。
【0003】
このように内部に挿通させたワイヤーハーネスを保護する外装部材の一例として、ゴムやエラストマーなどの樹脂製の筒状体のグロメット本体における長手方向の中央部分に、グロメット本体の内部と外部とを挿通するとともに、通気弁を取り付けるための取付部が設けられたグロメットが特許文献1に開示されている。
【0004】
この特許文献1に開示されているグロメットは、グロメット本体における長手方向の中央部分に設けられた取付部に通気弁を取り付けることで、水や塵などの異物の侵入を防止できるとともに、通気性を確保して外装部材内の内部圧力の変化を抑制できるとされている。
【0005】
しかしながら、このグロメットでは、通気弁を取り付ける取付部やグロメット本体が変形した場合や、意図しない外力が通気弁などに作用した場合に、通気弁が取付部から離脱し、グロメットの内部に水や塵などが浸入するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上述した問題を鑑み、通気弁が離脱することを防止できるグロメット及び保持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、内部に挿通される電線を保護するグロメットであって、可撓性を有する筒状体で構成されたグロメット本体と、前記グロメット本体に取り付けられる通気弁と、前記通気弁を前記グロメット本体に対して保持する保持部材とで構成され、前記グロメット本体は、筒状の外周面を貫通する貫通孔を有し、前記通気弁を取り付ける取付部が設けられ、前記通気弁は、水分を通さずに、空気を通すように構成され、前記取付部は、前記グロメット本体の外周面よりも外側に設けられ、前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に突出する突出部が備えられ、前記保持部材は、前記挿入方向の両側から、前記突出部と前記通気弁とを挟持することを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、可撓性を有する筒状体で構成されたグロメット本体に、内部に挿通する電線の挿通方向と交差する方向に貫通するとともに、通気弁の挿入する貫通孔を有する取付部が設けられ、前記取付部は、前記グロメット本体の外周面よりも外側に設けられるとともに、前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に突出する突出部が備えられ、水分を通させずに、空気を通すことができるように構成された前記通気弁を前記貫通孔に挿入した状態で、前記挿入方向の両側から、前記突出部と前記通気弁とを挟持して、前記通気弁を前記取付部に保持する保持部材であることを特徴とする。
【0010】
前記保持部材は、取付部に対して通気弁を保持できれば、その構成については特に限定されない。例えば、取付部と通気弁の両方を挿入方向の両側から挟持する構成や、取付部に対して圧入することで通気弁を取付部に押し付けて保持する構成、取付部を介して通気弁に外力を作用させることで取付部に対して通気弁を保持する構成などを含む。
【0011】
この発明によると、保持部材により通気弁が取付部に保持されているため、例えば、取付部に意図しない外力が保持部に作用した場合や、グロメット本体の内部の温度変化などによる内部圧力の変化に起因してグロメット本体が変形した場合などであっても、通気弁が取付部から離脱することを防止できる。これにより、塵や水がグロメット本体の内部に侵入することを防止できるとともに、通気弁によりグロメット本体の内部圧力と外部圧力とが均等となるように調整できるため、グロメット本体の変形を抑制できる。
【0012】
また、前記取付部は、前記グロメット本体の外周面よりも外側に設けられ、前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に突出する突出部が備えられ、前記保持部材は、前記挿入方向の両側から、前記突出部と前記通気弁とを挟持している。
【0013】
これにより、グロメット本体の外周面よりも外側に取付部が設けられているため、グロメット本体の内部圧力の変化によって取付部が変形することを抑制できる。このため、取付部に取り付けられた通気弁の離脱を抑制できるとともに、取付部と通気弁とを保持する保持部材が取付部から離脱することを防止できる。
【0014】
また、突出部を挿入方向と交差する方向に突出させることにより、グロメット本体の変形による影響が突出部に反映されにくい構成とすることができる。したがって、突出部と通気弁とを保持部材で挟持することにより、例えば、内部圧力の変化やグロメット本体の変形により、取付部から通気弁が離脱することをより確実に防止できる。
【0015】
この発明の態様として、前記突出部は、前記挿入方向から視て矩形状に構成されてもよい。
この発明により、突出部と通気弁とを挟持した状態で保持部材が回転することを防止できるため、取付部に負荷が生じて損傷することを防止できる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記挿入方向の両側から前記保持部材により挟持され、前記通気弁は、前記保持部材で挟持された前記取付部及び前記保持部材とで、前記挿入方向の両側から挟持されてもよい。
【0017】
この発明によると、保持部材で通気弁と取付部とを保持するのみならず、グロメット本体に設けられた取付部を保持部材で保持することができるため、グロメット本体の変形などにより保持部材が取付部から外れることを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記突出部は、前記グロメット本体の外周面に対して所定の間隔を隔てて設けられ、前記取付部には、前記グロメット本体側に向かうに伴い、前記挿入方向から視て前記貫通孔を縮径する内縁部が構成され、前記内縁部の前方側端部が、前記挿入方向における前記外周面と前記突出部との間に配置されてもよい。
【0019】
この発明によると、内縁部は、グロメット本体側に向かうに伴い、挿入方向から視て貫通孔を縮径するように構成されているため、通気弁を貫通孔に挿入することにより、通気弁を内縁部で挟み込んで保持することができる。
【0020】
また、グロメット本体の外周面と突出部との間に保持部材の一部を挿入することで、グロメット本体の反対側から通気弁を、グロメット本体側から取付部を保持部材で挟み込むことができ、通気弁を取付部に取り付けた状態で確実に保持することができる。
【0021】
さらにまた、内縁部の前方側端部が、挿入方向における外周面と突出部との間に配置されていることにより、グロメット本体の外周面と突出部との間に挿入した保持部材が、交差方向に沿って取付部材を貫通孔側に押し込むこととなる。これにより、貫通孔側に向けて押し込まれた内縁部が通気弁を挟み込み、より確実に通気弁が離脱することを防止できる。
【0022】
このように、グロメット本体の外周面に対して所定の間隔を隔てて突出部が設けられるとともに、グロメット本体側に向かうに伴い挿通方向から視て貫通孔を縮径するように構成された内縁部の前方側端部が、挿入方向における外周面と突出部との間に配置されている。これにより、単に保持部材で取付部と通気弁とを挟み込んで保持するだけでなく、通気弁を挟み込んだ内縁部を貫通孔側に押し込んで、通気弁を内縁部でさらに挟み込むことができる。したがって、通気弁が取付部から離脱することをより確実に防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記通気弁の挿入方向の前方側端部に、前記グロメット本体側と反対側に向かうに伴い、前記挿入方向と交差する方向に拡張する拡張部が設けられてもよい。
この発明によると、通気弁は、前記グロメット本体側に向けてテーパ状に構成された拡張部を備えているため、貫通孔に通気弁を容易に挿入できるとともに、拡張部を内縁部の前方側端部に係止できる。これにより、通気弁を貫通孔に容易に挿入できるとともに、取付部から離脱することを抑制できる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記通気弁の挿入方向の前方側端部が、前記グロメット本体の内周面よりも外側に配置されてもよい。
この発明により、取付部に取り付けた通気弁がグロメット本体の内部に挿通させた電線と干渉することを防止できる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記通気弁と前記取付部との間にシール部材が備えられてもよい。
この発明により、通気弁と取付部との間をシール部材で封止することができるため、グロメットの止水性を向上させることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記取付部において前記貫通孔を形成する内縁部に、前記シール部材を嵌め込む嵌込部が設けられてもよい。
この発明により、シール部材を所望の位置に嵌め込むことができるため、通気弁と取付部との間をシール部材で正確に封止することができ、グロメットの止水性をより向上させることができる。
【0027】
またこの発明の態様として、前記保持部材は、第一保持部材と、前記第一保持部材と嵌合する第二保持部材とで構成され、前記通気弁の挿入方向と交差する方向から前記第一保持部材と前記第二保持部材とを嵌合させて、前記通気弁と前記取付部とを保持してもよい。
上述の前記保持部材は、第一保持部材と、第一保持部材と嵌合する第二保持部材とで構成されとは、第一保持部材と第二保持部材とが一体又は別体で構成されている場合を含む。
【0028】
この発明により、通気弁を貫通孔に挿入する挿入方向と交差する方向から保持部材を取り付けることができるため、通気弁と取付け部とを挟み込みやすくすることができ、保持部材の取り付け作業の作業性を向上させることができる。
【0029】
またこの発明の態様として、前記保持部材に、前記通気弁を介して前記グロメット本体の内部と外部とを通気する通気路が設けられてもよい。
この発明により、グロメット本体の内部と外部とを確実に通気させることができる。したがって、通気弁を介してグロメット本体の内部圧力と外部圧力とを確実に調整できるため、グロメット本体の変形を抑制できる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記保持部材と前記通気弁との間には、前記貫通孔に対する前記通気弁の挿入方向と交差する方向に隙間が設けられてもよい。
この発明により、通気弁と保持部材との間の隙間により、通気弁の取付け誤差を吸収できるとともに、通気弁を通らない水分を、隙間を介して保持部材の外部に放出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、通気弁が離脱することを防止できるグロメット及び保持部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
本実施形態のグロメット1は、車両に配索される高電圧用のワイヤーハーネス100を内部に挿通させて保護している。このようなグロメット1について、
図1乃至
図10に基づいて説明する。
【0034】
図1はワイヤーハーネス100を挿通させたグロメット1の概略斜視図を示し、
図2はグロメット1の概略分解斜視図を示す。
図3はグロメット本体10の構成を説明するための説明図を示し、
図4は
図3におけるα部の拡大図を示す。
【0035】
図5は通気弁20の構成を説明するための説明図を示し、
図6は保持部材30の概略斜視図を示し、
図7及び
図8は保持部材30の構成を説明するための説明図を示す。
図9及び
図10はグロメット本体10に通気弁20を組み付けて保持部材30で保持したグロメット1の断面図を示す。なお、
図10は
図9におけるβ部の拡大図を示す。
【0036】
図3、
図5、
図7及び
図8について詳述する。
図3(a)はグロメット本体10を長手方向Lから視たグロメット本体10の正面図を示し、
図3(b)は
図3(a)におけるA-A矢視断面図を示す。
図5(a)は通気弁20の正面図を示し、
図5(b)は
図5(a)におけるB-B矢視断面図を示す。
【0037】
図7(a)は保持部材30を構成する一対の第一保持部材30A及び第二保持部材30Bの平面図を示し、
図7(b)は第一保持部材30Aの側面図を示す。
図8(a)は第一保持部材30A及び第二保持部材30Bの断面図を示し、
図8(b)は第一保持部材30A及び第二保持部材30Bを係止させた保持部材30の断面図を示す。なお、
図8(a)及び
図8(b)は、
図7(b)におけるC-C矢視断面に対応する断面図を示す。
【0038】
ここで、
図1中の上下方向を上下方向Zとし、グロメット本体10の長手方向(
図1において左下と右上とを結ぶ方向)を長手方向Lとし、長手方向L及び上下方向Zと直交する方向(
図1において左上と右下とを結ぶ方向)を幅方向Wとする。
【0039】
また、上下方向Zにおいて上側を上方向Zuとするとともに、下側を下方向Zdとする。また、長手方向Lにおいて奥側(
図1において右上側)を前方側Lfとするとともに、手前側(
図1において左下側)を後方側Lbとする。そして、幅方向Wにおいて手前側(
図1において右下側)を右側Wrとするとともに、奥側(
図1において左上側)を左側Wlとする。
なお、
図1中で示した方向は、便宜上、
図2乃至
図9において同様とする。
【0040】
グロメット1は、上述のように、内部に挿通させたワイヤーハーネス100を保護する保護部材である。このグロメット1に保護されているワイヤーハーネス100は、電気自動車やハイブリッド車におけるバッテリーとモータとを繋いでいる高電圧用のものであり、例えば車両の床下部に配策されている。なお、本実施形態においてワイヤーハーネス100はバッテリーとモータとを繋いでいるが、これに限定されない。
【0041】
このようにワイヤーハーネス100を保護するグロメット1は、
図1及び
図2に示すように、円筒体で構成されたグロメット本体10と、グロメット本体10に対して上下方向Zから挿入された通気弁20と、通気弁20をグロメット本体10に保持する保持部材30とで構成されている。
【0042】
グロメット本体10は、可撓性を有する樹脂製の円筒体であり、長手方向Lに沿った円筒状の本体部11と、本体部11の外周面11aを上下方向Zに貫通する貫通孔Hを有する取付部12とで構成されている。
【0043】
本体部11は、両端が開口した円筒体であり、両端にはコルゲート110を組み付けることができる。また、この本体部11の長手方向Lの中央部分には、グロメット本体10を上下方向Zに貫通する円環状の貫通孔Hが設けられている。
【0044】
取付部12は、
図3及び
図4に示すように、貫通孔Hに挿入させた通気弁20をグロメット本体10に対して保持するように保持部材30を取り付ける部位であり、本体部11の外周面11aの外側に設けられている。
【0045】
以下、取付部12について詳述する。
取付部12は、
図3及び
図4に示すように、本体部11の外周面11aから上方向Zuに突出する土台部13と、土台部13の上面から上方向Zuに向けて延出する支持部14と、支持部14の上端から径方向外側に向けて延出する突出部15とで構成されている。また、取付部12の中央部分には、上下方向Zに沿って貫通する貫通孔Hを形成する内縁部16が構成されている。
【0046】
土台部13は、
図3及び
図4に示すように、上下方向Zと直交する平面を本体部11の上方向Zuに形成するように本体部11の外周面11aから上方向Zuに向けて延出した平面視正方形状の台座である。この土台部13は、正面視において外周面11aの上方向Zuの頂点と略同じ高さとなるように構成されている。また、土台部13の一片の長さは、本体部11の幅方向Wの外径のおよそ半分となるように構成されている。
【0047】
支持部14は、土台部13と同様に、平面視正方形状に構成されており、土台部13の中央部分から上方向Zuに向けて所定の長さだけ延出している。なお、支持部14の一片の長さは、土台部13の一片の長さのおよそ4分の3となるように構成されている。
【0048】
突出部15は、土台部13に対して所定の間隔を隔てて設けられた平面視正方形状の板状体である。具体的には、突出部15は、支持部14の上方向Zuの端部から貫通孔Hの径方向外側に向けて突出するように構成されており、突出部15の一片の長さは土台部13の一片の長さと同じとなるように構成されている。
【0049】
このように構成された土台部13と支持部14と突出部15により、取付部12の外縁には、
図4に示すように、凹部Sが形成されている。換言すると、取付部12の外縁は、上下方向Zの中央部分を貫通孔Hの径方向内側に窪ませた、断面『コ』の字状に構成されている。
【0050】
また、取付部12の中央部分において貫通孔Hを形成する内縁部16は、下方向Zdの端部が本体部11の内周面11bよりも上方向Zuに配置されるように構成されている。詳しくは、内縁部16の下方向Zdの端部は、凹部Sと対応する位置である外周面11aと突出部15との間に配置されるように、内周面11bを上方向Zuに窪ませて構成されている。
【0051】
この内縁部16は、
図4に示すように、内縁部16の上端部分に設けられたシール部材嵌合部16aと、シール部材嵌合部16aの下方向Zdにおいて下方向Zdに向かうに伴い貫通孔Hの径方向内側に向けて傾斜する被挿入部16bとで構成されている。
シール部材嵌合部16aは、貫通孔Hの径方向外側に向けて内縁部16を円弧状に窪ませて構成されており、後述する通気弁20に備えられたシール部材24を嵌合させることができる。
【0052】
貫通孔Hに挿入される通気弁20は、
図5に示すように、上端に構成される通気部21と、通気部21の下端側において円筒状に構成された挿入部22と、挿入部22の下端に設けられた拡張部23とで構成され、挿入部22の上端部分にはシール部材24が備えられている。
【0053】
通気部21は、シール部材嵌合部16aの外径よりも長く、突出部15の外径よりも短い外径で構成された略円環状の円柱体であり、内部には水分を挿通させずに、空気を挿通できるメッシュ材(図示省略)が備えられている。なお、通気部21は、このメッシュ材を介して上下方向Zに通気可能に構成されている。
【0054】
挿入部22は、外力により変形可能な樹脂製の円筒体であり、
図5(b)に示すように、通気部21の底面から下方向Zdに向けて延出している。なお、この挿入部22の外径は貫通孔Hの内径と略同じとなるように構成されている。
【0055】
拡張部23は、挿入部22の下端部分において、挿入部22の外周面から径方向外側に向けて突出している。このように挿入部22の外周面から径方向外側に突出する拡張部23は、上方向Zuに向かうに伴い径方向外側に向けて拡張するテーパ状で構成されている。
シール部材24は、挿入部22の外径と同じ長さの内径を有するゴム製のOリングであり、挿入部22の上方側端部に備えられている。
【0056】
このように構成された通気弁20は、取付部12に設けられた貫通孔Hに挿入可能に構成されているとともに、貫通孔Hに挿入することで、拡張部23が取付部12の下端と係止するように構成されている。また、通気部21の内部に備えられたメッシュ材により、水分を通さずに、空気を上下方向Zに通すように構成されている。
なお、通気弁20を貫通孔Hに挿入する挿入方向は上下方向Zと一致しており、挿入方向の前方側は下方向Zdに、挿入方向の後方側は上方向Zuに対応する。
【0057】
保持部材30は、上下方向Zに沿って開口した平面視略正方形状の筒状体であり、貫通孔Hに挿入した通気弁20を取付部12に保持する機能を有する。そして、
図6(a)に示すように、保持部材30は同一形状をした2つのパーツである第一保持部材30Aと第二保持部材30Bとで構成されている。
【0058】
以下、第一保持部材30Aと第二保持部材30Bの構成について簡単に説明する。なお、第一保持部材30Aと第二保持部材30Bとは同じ構成であるため、第一保持部材30Aの構成のみを説明し、第二保持部材30Bについては説明を省略する。また、同一の構成については同一の名称とする。
【0059】
第一保持部材30Aは、
図6乃至
図8に示すように、平面視略U字状に構成された保持枠31と、保持枠31の上方向Zuに設けられた上面側規制部32と、保持枠31の下方向Zdに設けられた底面側規制部33とで構成されている。
【0060】
保持枠31は、
図6(a)及び
図7(a)に示すように、平面視において各角部分が略直角に形成された略U字状に構成された枠体である。この保持枠31は、長手方向Lに沿った長手枠部311と、長手枠部311の一端側から幅方向Wに沿って伸びる後方幅枠部312と、前方幅枠部313とで構成されている。
【0061】
長手枠部311は、長手方向Lに沿った平板状で構成され、その中央部分には、幅方向Wに沿って貫通させた2つの排水口Pが所定の間隔を隔てて設けられている。
互いに対向するように構成されている後方幅枠部312と前方幅枠部313は、互いに幅方向Wに沿った長さが異なっている。詳しくは、後方幅枠部312は、前方幅枠部313よりもわずかに長くなるように構成されている。また、後方幅枠部312の端部には、幅方向Wに沿って延出する係止部34が設けられ、前方幅枠部313の端部には対となる係止部34を挿入可能に構成された被係止部35が設けられている。
なお、後方幅枠部312と前方幅枠部313の間隔は、通気部21の外径よりもわずかに長くなるように構成されている。
【0062】
係止部34は、
図6に示すように、後方幅枠部312の先端部分から幅方向Wに沿って突出する平板状の係止片341と、係止片341の先端から外側に向けて突出する係止爪342とで構成されている。
【0063】
被係止部35は、対となる係止部34を挿入可能に構成された挿入口であり、外側が開口する正面視でコの字状に構成された被係止枠351と、被係止枠351の開口部分において上下方向Zに沿って伸びる被係止片352とで構成されている。このように構成された被係止枠351と被係止片352とは、少なくとも係止片341が挿通できるように所定の間隔を隔てている。なお、被係止片352は、前方幅枠部313の端部よりも幅方向Wに沿ってわずかに外側に設けられている。
【0064】
上面側規制部32は、保持枠31の上方向Zuにおいて保持部材30の内側に向けて延出された平板で構成されている、すなわち、長手枠部311から後方幅枠部312及び前方幅枠部313の延出方向に向けて延出されている。また、この上面側規制部32の中央部分(第一保持部材30Aにおける右側Wrの中央部分)には、略半円状の貫通孔が上下方向Zに沿って形成されている。なお、この上面側規制部32に設けられた貫通孔の内径は、通気部21の外径よりも短く構成されている。
【0065】
底面側規制部33は、後方幅枠部312及び前方幅枠部313の内面側を窪ませて形成された、突出部15を嵌合可能な溝構造である。具体的には、底面側規制部33は、上下方向Zに沿った面で構成された溝底部331と、溝底部331の上端から保持部材30の内側に延出する上端部332と、溝底部331の下端から保持部材30の内側に延出する下端部333とで形成されている。
【0066】
溝底部331の高さは、突出部15の高さと略同じとなるように構成されている。また、上端部332及び下端部333に設けられた溝底部331,331の距離は突出部15の外径と略同一となるように構成されている。
下端部333は、後方幅枠部312及び前方幅枠部313の下端から内側に突出しており、外周面11aと突出部15との間に形成される凹部Sに対して嵌合可能に構成されている。
【0067】
このように構成された第一保持部材30Aと第二保持部材30Bは、幅方向Wに沿って係止部34と被係止部35を、係止部34と被係止部35を係止させることで、保持部材30とすることができる(
図6(b)参照)。この保持部材30は、上述のように、平面視略正方形状の筒状体を構成しており、上方向Zuには上下方向Zに貫通する通気路Dが第一保持部材30A及び第二保持部材30Bの上面側規制部32に設けられる。
【0068】
次にこのように構成されたグロメット本体10に対して通気弁20を挿入させ、保持部材30で通気弁20をグロメット本体10に保持する方法について説明する。
はじめに、取付部12の上方に、拡張部23が下方向Zdとなるように通気弁20を配置させ、通気弁20を下方向Zdに沿って移動させて貫通孔Hに挿入させる。このとき、拡張部23が下方向Zdに向かうに伴い縮径するように構成されているため、拡張部23は上下方向Zに沿って貫通孔Hに容易に挿入させることができる。
【0069】
このように通気弁20を貫通孔Hに対して挿入させることにより、拡張部23は内縁部16の下端と係止することとなる(
図9及び
図10参照)。また、拡張部23が内縁部16と係止した状態において、通気弁20に備えられたシール部材24がシール部材嵌合部16aに嵌合するととともに、挿入部22が被挿入部16bによって挟み込まれる。このため、通気弁20はグロメット本体10における所望の位置に固定されるとともに、通気弁20と取付部12との間にシール部材24が備えられることとなる。
【0070】
次に、通気弁20が固定されたグロメット本体10に対して、通気弁20の挿入方向(上下方向Z)と交差した方向である幅方向Wから第一保持部材30Aと第二保持部材30Bとで挟み込んで保持部材30を取付部12に組み付ける。
【0071】
具体的には、第一保持部材30Aを取付部12の左側Wlに、第二保持部材30Bを取付部12の右側Wrにそれぞれ配置する。そして、幅方向Wに沿って第一保持部材30Aと第二保持部材30Bを移動させて取付部12を挟み込み、係止爪342が被係止片352と係止するように、第一保持部材30A及び第二保持部材30Bの係止部34と被係止部35をそれぞれ係止させる。これにより、保持部材30を取付部12に組み付けることができ、保持部材30介して通気弁20を取付部12に対して保持させることができる(
図8(b)参照)。
【0072】
このように保持部材30を介して取付部12に通気弁20を保持したグロメット1は、本体部11の両端にコルゲート110を取り付けて、本体部11の内部にワイヤーハーネス100を挿通させることができる。このようにワイヤーハーネス100を挿通させたグロメット1の内部は密閉空間となる。
【0073】
このため、ワイヤーハーネス100に流れる高圧電流により、グロメット1の内部温度が上昇し、グロメット1の内部圧力が高くなることがある。しかしながら、取付部12に内部には水分を挿通させずに、空気を挿通できるメッシュ材(図示省略)が備えられた通気弁20を取り付けられているため、通気弁20を介してグロメット1の内部と外部とを通気させることができ、内部圧力と外部圧力とを調整することができる。
【0074】
また、上述のように通気弁20及び保持部材30が取り付けられたグロメット1において、取付部12に取り付けられた保持部材30と通気弁20とは、
図9及び
図10に示すように、通気部21の上面が上面側規制部32の底面が当接する。また、凹部Sに嵌合した下端部333が突出部15の底面と当接する。これにより、通気弁20と突出部15とを上面側規制部32と下端部333とで上下方向Zの両方から挟持することができる。
【0075】
また、
図10に示すように、通気部21は突出部15に比べて外径が小さいため、突出部15と通気部21とで断面視において段差構造を形成することとなる。これにより、突出部15の上面は上端部332と当接するとともに、突出部15の底面が下端部333と当接するため、上端部332と下端部333とで突出部15を挟持することができる。すなわち、保持部材30は、
図10に示すように、突出部15を上方向Zuと下方向Zdから挟持するとともに、取付部12を介して通気弁20を挟持することとなる。
【0076】
さらにまた、後方幅枠部312と前方幅枠部313の間隔は、通気部21の外径よりもわずかに長くなるように構成されているため、通気部21と長手枠部311との間には幅方向Wに沿って隙間Tが設けられている(
図10参照)。このように、通気部21と長手枠部311との間に隙間Tを設けることにより、通気部21の上方向Zuに付着した水滴をこの隙間Tを介して長手枠部311に設けられた排水口Pに逃がすことができ、確実に排水することができる。
【0077】
また、内縁部16は内周面11bを上方向Zuに窪ませて構成されており、通気弁20の下方向Zd端部である拡張部23の下端は、このように窪んで構成された内縁部16の下方向Zdに配置されている。より詳しくは、拡張部23の下端が内周面11bよりも上方向Zuに配置されるように、内縁部16と係止している。このため、グロメット1の内部に挿通させた電線が拡張部23と干渉することを防止することができる。
【0078】
このように内部に挿通されるワイヤーハーネス100を保護するグロメット1は、可撓性を有する筒状体で構成されたグロメット本体10と、グロメット本体10に取り付けられる通気弁20と、通気弁20をグロメット本体10に対して保持する保持部材30とで構成されている。そして、グロメット本体10は、筒状の外周面を貫通する貫通孔Hを有し、通気弁20を取り付ける取付部12が設けられている。また、通気弁20は、水分を通さずに、空気を通すように構成されている。
【0079】
このため、保持部材30により通気弁20が取付部12に保持されているため、例えば、取付部12に意図しない外力が保持部に作用した場合や、グロメット本体10の内部の温度変化などによる内部圧力の変化に起因してグロメット本体10が変形した場合などであっても、通気弁20が取付部12から離脱することを防止できる。これにより、塵や水がグロメット本体10の内部に侵入することを防止できるとともに、通気弁20を介してグロメット本体10の内部圧力と外部圧力とが均等となるように調整できるため、グロメット本体10の変形を抑制できる。
【0080】
また、取付部12は、グロメット本体10の外周面11aよりも外側に設けられ、貫通孔Hに対する通気弁20の挿入方向(上下方向Z)と交差する方向に突出する突出部15が備えられ、保持部材30は、挿入方向(上下方向Z)の両側から、突出部15と通気弁20とを挟持している。
【0081】
これにより、グロメット本体10の外周面11aよりも外側に取付部12が設けられているため、グロメット本体10の内部圧力の変化によって取付部12が変形することを抑制できる。したがって、取付部12に取り付けられた通気弁20の離脱を抑制できるとともに、取付部12と通気弁20とを保持する保持部材30が取付部12から離脱することを防止できる。
【0082】
また、突出部15を挿入方向(上下方向Z)と交差する方向に突出させることにより、グロメット本体10の変形による影響が突出部15に反映されにくい構成とすることができる。したがって、突出部15と通気弁20とを保持部材30で挟持することにより、例えば、内部圧力の変化やグロメット本体10の変形により、取付部12から通気弁20が離脱することをより確実に防止できる。
【0083】
また、突出部15は、挿入方向(上下方向Z)から視て矩形状に構成されていることにより、突出部15と通気弁20とを挟持した状態で保持部材30が回転することを防止できるため、取付部12に負荷が生じて損傷することを防止できる。
【0084】
さらにまた、突出部15は、挿入方向(上下方向Z)の両側から保持部材30により挟持され、通気弁20は、保持部材30で挟持された取付部12及び保持部材30とで、挿入方向(上下方向Z)の両側から挟持されている。
【0085】
これにより、保持部材30で通気弁20と取付部12とを保持するのみならず、グロメット本体10に設けられた取付部12を保持部材30で保持することができ、グロメット本体10の変形などにより保持部材30が取付部12から外れることを防止できる。
【0086】
また、突出部15は、グロメット本体10の外周面11aに対して所定の間隔を隔てて設けられ、取付部12には、グロメット本体10側に対応する挿入方向(上下方向Z)の前方側に向かうに伴い、挿通方向から視て貫通孔Hを縮小する内縁部16が構成されている。そして、内縁部16の前方側端部が、挿入方向(上下方向Z)における外周面11aと突出部15との間に配置されている。
【0087】
これにより、内縁部16は、挿入方向(上下方向Z)の前方側(下方向Zd)に向かうに伴い、挿通方向から視て貫通孔Hを縮小するように構成されているため、通気弁20を貫通孔Hに挿入することにより、通気弁20を内縁部16で挟み込んで保持することができる。
【0088】
また、グロメット本体10の外周面11aと突出部15との間に保持部材30の一部を挿入することで、挿入方向(上下方向Z)の後方側から通気弁20を、挿入方向(上下方向Z)の前方側から取付部12を保持部材30で挟み込むことができる。したがって、通気弁20を取付部12に取り付けた状態で確実に保持することができる。
【0089】
さらにまた、内縁部16の前方側端部が、挿入方向(上下方向Z)における外周面11aと突出部15との間に配置されている。これにより、グロメット本体10の外周面11aと突出部15との間に挿入した保持部材30が、交差方向に沿って取付部12材を貫通孔H側に押し込むこととなる。したがって、貫通孔H側に向けて押し込まれた内縁部16が通気弁20を挟み込み、より確実に通気弁20が離脱することを防止できる。
【0090】
このように、グロメット本体10の外周面11aに対して所定の間隔を隔てて突出部15が設けられるとともに、挿入方向(上下方向Z)の前方側に向かうに伴い挿通方向から視て貫通孔Hを縮小するように構成された内縁部16の前方側端部が、挿入方向(上下方向Z)における外周面11aと突出部15との間に配置されている。これにより、単に保持部材30で取付部12と通気弁20とを挟み込んで保持するだけでなく、通気弁20を挟み込んだ内縁部16を貫通孔H側に押し込んで、通気弁20を内縁部16でさらに挟み込むことができる。したがって、通気弁20が取付部12から離脱することをより確実に防止できる。
【0091】
さらにまた、通気弁20の挿入方向(上下方向Z)の前方側端部に、グロメット本体10の反対側に対応する挿入方向(上下方向Z)の後方側に向かうに伴い、挿入方向(上下方向Z)と交差する方向に拡張する拡張部23が設けられている。
【0092】
これにより、通気弁20は、挿通方向の前方に向けてテーパ状に構成された拡張部23を備えているため、貫通孔Hに通気弁20を容易に挿入できるとともに、拡張部23を内縁部16の前方側端部に係止できる。これにより、通気弁20を貫通孔Hに容易に挿入できるとともに、取付部12から離脱することを抑制できる。
【0093】
また、通気弁20の挿入方向(上下方向Z)の前方側端部が、グロメット本体10の内周面11bよりも外側に配置されているため、取付部12に取り付けた通気弁20がグロメット本体10の内部に挿通させたワイヤーハーネス100と干渉することを防止できる。
【0094】
また、通気弁20と取付部12との間にシール部材24が備えられていることにより、通気弁20と取付部12との間をシール部材24で封止することができるため、グロメット1の止水性を向上させることができる。
【0095】
さらにまた、取付部12において貫通孔Hを形成する内縁部16に、シール部材24を嵌め込むシール部材嵌合部16aが設けられていることにより、シール部材24を所望の位置に嵌め込むことができる。このため、通気弁20と取付部12との間をシール部材24で正確に封止することができ、グロメット1の止水性をより向上させることができる。
【0096】
また、保持部材30は、第一保持部材30Aと、第一保持部材30Aと嵌合する第二保持部材30Bとで構成され、挿入方向(上下方向Z)と交差する方向から第一保持部材30Aと第二保持部材30Bとを嵌合させて、通気弁20と取付部12とを保持している。
【0097】
これにより、通気弁20を貫通孔Hに挿入する挿入方向(上下方向Z)と交差する方向から保持部材30を取り付けることができるため、通気弁20と取付け部とを挟み込みやすくすることができ、保持部材30の取り付け作業の作業性を向上させることができる。
【0098】
また、保持部材30に、通気弁20を介してグロメット本体10の内部と外部とを通気する通気路Dが設けられていることにより、グロメット本体10の内部と外部とを確実に通気させることができる。したがって、通気弁20を介してグロメット本体10の内部圧力と外部圧力とを確実に調整できるため、グロメット本体10の変形を抑制できる。
【0099】
さらには、保持部材30と通気弁20との間には、交差方向に隙間Tが設けられている。これにより、通気弁20と保持部材30との間の隙間Tにより、通気弁20の取付け誤差を吸収できるとともに、通気弁20を挿通しない水分を、隙間Tを介して保持部材30の外部に放出することができる。
【0100】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、電線は、ワイヤーハーネス100に対応し、
グロメットは、グロメット1に対応し、
外周面は、外周面11aに対応し、
貫通孔は、貫通孔Hに対応し、
取付部は、取付部12に対応し、
グロメット本体は、グロメット本体10に対応し、
通気弁は、通気弁20に対応し、
保持部材は、保持部材30に対応し、
挿入方向は、上下方向Zに対応し、
突出部は、突出部15に対応し、
内縁部は、内縁部16に対応し、
拡張部は、拡張部23に対応し、
内周面は、内周面11bに対応し、
シール部材は、シール部材24に対応し、
嵌込部は、シール部材嵌合部16aに対応し、
第一保持部材は、第一保持部材30Aに対応し、
第二保持部材は、第二保持部材30Bに対応し、
通気路は、通気路Dに対応し、
隙間は、隙間Tに対応するも、この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0101】
例えば、保持部材30は、取付部12に対して通気弁20を保持できれば、その構成については特に限定されない。具体的には、本実施形態のように、取付部12と通気弁20の両方を挿入方向(上下方向Z)の両側から第一保持部材30Aと第二保持部材30Bとで挟持する構成としている。しかしながら、この構成のみならず、例えば、取付部12に対して圧入することで通気弁20を取付部12に押し付けて保持するような保持部材や、取付部12を介して通気弁20に外力を作用させることで取付部12に対して通気弁20を保持する保持部材としてもよい。
【0102】
また、本実施形態において、保持部材30は、第一保持部材30Aと、第一保持部材30Aと嵌合する第二保持部材30Bとが別体で構成されているが、第一保持部材30Aと第二保持部材30Bとがヒンジを介して一体で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 グロメット
10 グロメット本体
11a 外周面
11b 内周面
12 取付部
15 突出部
16 内縁部
16a シール部材嵌合部
20 通気弁
23 拡張部
24 シール部材
30 保持部材
30A 第一保持部材
30B 第二保持部材
100 ワイヤーハーネス
H 貫通孔
D 通気路
T 隙間
Z 上下方向