(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】フルオロアニーリング膜でコーティングされた物品
(51)【国際特許分類】
C23C 16/40 20060101AFI20240307BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C23C16/40
C23C16/455
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021106302
(22)【出願日】2021-06-28
(62)【分割の表示】P 2019537785の分割
【原出願日】2018-01-15
【審査請求日】2021-07-26
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リン, イクアン
(72)【発明者】
【氏名】ウォルドフリード, カルロ
(72)【発明者】
【氏名】ホウ, チアナン
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0273095(US,A1)
【文献】国際公開第2016/131024(WO,A1)
【文献】特表2018-511943(JP,A)
【文献】特表2018-506859(JP,A)
【文献】国際公開第2013/191224(WO,A1)
【文献】特許第5911036(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099491(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/40
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
基板の少なくとも一部を覆う保護膜であって、0.01ミクロンと0.7ミクロン未満の間の厚さを有し、イットリウムを含有するフッ素化金属酸化物を含む保護膜と
を含む物品であって、
保護膜は、オキシフッ化イットリウムを含む外側部分からイットリアを含む内側部分に向かって、又はオキシフッ化イットリウムアルミニウムを含む外側部分から酸化イットリウムアルミニウムを含む内側部分に向かって、膜の厚さにわたって減少する、フッ素含量を有する勾配膜である、物品。
【請求項2】
保護膜の内側部分が基板に直接接触する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
基板上にイットリウムを含有する金属酸化物を原子層堆積させることであって、金属酸化物が、基板を覆う0.01ミクロンと0.7ミクロン未満の間の厚さを有する膜を形成する、金属酸化物を原子層堆積させることと;
フッ素含有雰囲気中、約150℃から約300℃未満の間の温度で膜をフルオロアニーリング
して保護膜を形成することと
を含む、保護膜を形成する方法であって、
保護膜は、外側部分から内側部分に向かって、膜の厚さにわたって減少する、フッ素含量を有する勾配膜である、方法。
【請求項4】
フルオロアニーリングを、フッ素含有雰囲気中、約200℃から約250℃の間の温度に保持した基板上で行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
保護膜が柱状構造である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
保護膜が、オキシフッ化イットリウム又はオキシフッ化イットリウムアルミニウムである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
膜のフッ素含量が、オキシフッ化イットリウムを含む外側部分から酸化イットリウムを含む内側部分に向かって、膜の厚さにわたって減少する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
膜のフッ素含量が、オキシフッ化イットリウムアルミニウムを含む外側部分から酸化イットリウムアルミニウムを含む内側部分に向かって、膜の厚さにわたって減少する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
保護膜の内側部分が基板に直接接触する、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して、保護フッ素化イットリウム金属酸化物膜を含む半導体製造部品、及び半導体製造部品の表面上に保護フッ素化イットリウム金属酸化物膜を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造部品は、高純度で、耐薬品性であり、良好な温度安定性及び構造的完全性を有する必要がある。部品の寿命を延ばし、純度及び温度安定性を改善するために、種々の部品にコーティングを施すことができる。しかしながら、コーティング自体が、コーティングを堆積させるために高温処理を必要とする。耐薬品性であるにもかかわらず、コーティングは使用中又は洗浄中及び定期整備中に分解を受けるおそれがある。エッチャントガス、洗浄液、及び熱サイクルは、コーティングされた部品の寿命を短くする可能性があり、また部品を製造ツールに再度取り付ける際に汚染をもたらし得る。半導体製造部品用の改善されたコーティングが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本開示は概して、保護フッ素化イットリウム、金属酸化物膜を含む半導体製造部品、及び最初に原子層堆積(ALD)を介して部品の表面上にイットリウムを含有する金属酸化物膜を堆積させ、引き続いて低い処理温度でイットリウムを含有するALD金属酸化物膜をフルオロアニーリングして、半導体製造部品の表面上に保護フッ素化イットリウム金属酸化物膜を形成することによって、半導体製造部品の表面上に保護フッ素化イットリウム金属酸化物膜を形成する方法に関する。
【0004】
種々の実施態様によると、物品は、基板と、基板の少なくとも一部を覆う保護膜とを含む。物品は、半導体製造システム内の部品、例えば、チャンバー、チャンバー部品、ウエハサセプタ、チャック、シャワーヘッド、ライナ、リング、ノズル、バッフル、ファスナ、又はウエハ搬送部品であり得、半導体製造に適した石英、アルミナ、アルミニウム、鋼、金属、金属合金、セラミック又はプラスチックから形成され得る。一実施態様では、物品が反応性イオンエッチングチャンバーであり得る。
【0005】
保護膜は、0.01ミクロンと1ミクロン未満の間の厚さを有するフッ素化イットリウム金属酸化物膜であり得る。保護膜を完全フッ素化又は部分フッ素化することができる。いくつかの実施態様では、膜がオキシフッ化イットリウム又はオキシフッ化イットリウムアルミニウムであり得る。
【0006】
いくつかの実施態様では、保護膜の外側部分が基板と直接接触する膜の内側部分よりも高いフッ素含量を有するように、膜が、膜の厚さにわたって膜のフッ素含量が減少する勾配膜であり得る。例えば、いくつかの実施態様では、膜が、オキシフッ化イットリウムである外側部分及びイットリアである内側部分を有することができ、フッ素含量が外側部分から内側部分に向かって徐々に減少する。他の実施態様では、膜が、フッ素化イットリウムアルミニウムオキシド(すなわち、オキシフッ化イットリウムアルミニウム)である外側部分及び(未フッ素化)イットリウムアルミニウムオキシドである内側部分を有することができる。
【0007】
別の実施態様では、方法が、原子層堆積を介して基板の表面上にイットリウムを含有する金属酸化物を堆積させて、イットリウムを含有するALD金属酸化物膜を得ることと、イットリウムを含有するALD金属酸化物膜をフルオロアニーリングして、イットリウムを含有するフッ素化金属酸化物膜を形成することとを含む。
【0008】
フルオロアニーリングは、約150℃から約300℃未満の温度、より具体的には約200℃から250℃の温度で実施することができる。フッ素化プロセスは、フッ素イオン注入、引き続いてアニーリング、フッ素プラズマ処理、フルオロポリマー燃焼、高温でのフッ素ガス反応、フッ素ガスを用いたUV処理、又はこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0009】
上記の概要は、本開示に特有の革新的な特徴のいくつかの理解を容易にするために提供されており、完全な説明であることを意図するものではない。本開示の十分な理解は、明細書全体、特許請求の範囲、図面、及び要約を全体として考えることによって得ることができる。
【0010】
本開示は、添付の図面に関連して種々の例示的実施態様の以下の説明を考慮してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施態様による、フルオロアニーリングを受ける前の原子層堆積(ALD)イットリア膜のX線回折(XRD)グラフである。
【
図2】本開示の実施態様による、より低い処理温度でのフルオロアニーリング後の原子層堆積(ALD)イットリア膜のX線回折(XRD)グラフである。
【0012】
本開示は種々の修正形態及び代替形態に適しているが、その詳細は例として図面に示されており、詳細に説明される。しかしながら、本開示の態様を記載される特定の例示的な実施態様に限定することを意図していないことを理解すべきである。それどころか、その意図は、本開示の精神及び範囲に入る全ての修正形態、等価形態、及び代替形態を網羅することである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の言及を含むことにも留意しなければならない。よって、例えば、「膜」への言及は、1個又は複数の膜及び当業者に知られているそれらの等価物への言及などである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本発明のバージョンの実施又は試験に使用することができる。本明細書で言及される全ての刊行物は、全体が出典明示により援用される。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明のためにこのような開示に先行する権利がないことの自認として解釈されるべきではない。「任意選択の」又は「任意選択的に」は、後に記載される事象又は状況が発生してもしなくてもよく、その記載にその事象が発生した場合及び発生しなかった場合が含まれることを意味する。本明細書における全ての数値は、明示的に示されているかどうかにかかわらず、「約」という用語によって修飾され得る。「約」という用語は、一般に、当業者が列挙された値と等価である(すなわち、同じ機能又は結果を有する)と見なすであろう数の範囲を指す。いくつかのバージョンでは、「約」という用語が表示値の±10%を指し、他のバージョンでは「約」という用語が表示値の±2%を指す。組成物及び方法を種々の構成要素又は工程を「含む」(「それだけに限らないが、含む」を意味すると解釈される)という点で記載しているが、組成物及び方法は、種々の構成要素及び工程「から本質的になる」又は「からなる」こともでき、このような用語は本質的に閉じた要素群として解釈されるべきである。
【0014】
種々の実施態様によると、例えば半導体製造システム内の部品などの物品は、基板の少なくとも一部を覆う保護膜を有する基板を含む。基板は、半導体製造システム内の部品、例えば、チャンバー、チャンバー部品、ウエハサセプタ、チャック、シャワーヘッド、ライナ、リング、ノズル、バッフル、ファスナ、又はウエハ搬送部品であり得、半導体製造に適した石英、アルミナ、アルミニウム、鋼、金属、金属合金、セラミック又はプラスチックから形成され得る。一実施態様では、物品が反応性イオンエッチング(RIE)チャンバーであり得る。他の実施態様では、基板が真空適合基板であり得る。多くの場合、保護膜は、例えば、オキシフッ化イットリウム膜、フッ素化イットリウムアルミニウムオキシド膜又はオキシフッ化アルミニウム膜などのフッ素化金属酸化物イットリウム含有膜であり得る。これらはごく一部の例である。保護膜を完全フッ素化又は部分フッ素化することができる。
【0015】
種々の実施態様によると、保護膜は、最初に原子層堆積(ALD)を介して部品の表面上にイットリウムを含有する金属酸化物膜を堆積させ、引き続いて低い処理温度でイットリウムを含有するALD金属酸化物膜をフルオロアニーリングして、例えば、RIE部品などの半導体部品の表面上に保護フッ素化イットリウム含有金属酸化物膜を形成することによって、部品の表面上に形成される。
【0016】
フルオロアニーリングイットリウム含有金属酸化物膜は、いくつかの利点を提供し、高いフッ素プラズマエッチング耐性(例えば、約0.1から約0.2ミクロン/時)、高い湿式化学エッチング耐性(例えば、5%HCl中約5から約120分)、チャンバー部品への良好な接着性(例えば、約5Nから約15Nの二次臨界荷重(second critical load)(LC2)接着性)、及びびコンフォーマルコーティング(conformal coating)能力を含むいくつかの望ましい特性を有する。さらに、フルオロアニーリングイットリウム含有金属酸化物膜は、材料、機械特性及び微細構造に関して調整可能である。例えば、フッ素化イットリアのエッチング耐性は、膜中のフッ素含量と共に増加する。フルオロアニーリングイットリウム含有金属酸化物膜は、非フッ素化イットリア膜と比較して、優れた耐クラック性(crack resistance)及び高温での改善された完全性というさらなる利点も提供する。
【0017】
原子層堆積(ALD)を介して形成されたフルオロアニーリングイットリウム含有金属酸化物膜は、高温での熱サイクル後に耐クラック性であるというさらなる利点、及びPVD堆積金属酸化物イットリウム含有膜から製造されたフルオロアニーリング膜と比較して低い処理温度で製造される能力も提供する。低い処理温度でイットリウム含有金属酸化物膜を処理することができると、膜と基板との間に生じる熱応力を減少させることによってクラッキングが防止される。いくつかの基板材料は高温で適合性でない場合があるので、低い処理温度は、イットリウム含有金属酸化物膜を堆積し、次いで、フルオロアニーリングによってフッ素化することができる基板材料の範囲を増加させる。さらに、原子層堆積フルオロアニーリングイットリウム含有金属酸化物膜は、実質的にピンホールがない、非常に薄く、高密度で、高度にコンフォーマルな膜となり得る。
【0018】
本開示の種々の実施態様によると、イットリア及び酸化イットリウムアルミニウムなどのイットリウムを含有する金属酸化物の膜を最初に基板上に堆積させる。金属酸化物膜の堆積は、原子層堆積(ALD)、又はプラズマアシストALDによって起こり得る。イットリウムを含有する金属酸化物コーティングは、基板を100℃と350℃の間の温度、場合によっては140℃と200℃の間の温度に保持して調製することができ、これは感温性基板にとって有益である。イットリウムを含有する金属酸化物、例えばイットリアコーティングの厚さは、約0.001ミクロン(1nm)から1ミクロン未満;約0.01ミクロン(10nm)から1ミクロン未満;約0.01ミクロン(10nm)から約0.7ミクロン;約0.01ミクロン(10nm)から約0.5ミクロン;場合によっては、約0.01ミクロン(10nm)から0.25ミクロン(250nm)に及び得る。
【0019】
堆積後、イットリウムを含有する金属酸化物の膜を、フッ素を含有する環境中、約150℃から約300℃未満の範囲の温度でフルオロアニーリングする。場合によっては、イットリウムを含有する金属酸化物の膜を、フッ素を含有する環境中、約150℃から約300℃未満;約200℃から約300℃未満;約200℃から約275℃未満;より具体的には、約200℃から約250℃の範囲の温度でフルオロアニーリングする。フルオロアニーリングプロセスの加熱傾斜速度は、1時間当たり50℃から1時間当たり200℃の間であり得る。いくつかのバージョンでは、フルオロアニーリングプロセスが、フッ素含有雰囲気中、200℃から300℃未満の間で膜をアニーリングすることによって金属酸化物イットリウム含有膜にフッ素を導入することを含む。フッ素化プロセスは、例えば、フッ素イオン注入、引き続いてアニーリング、300℃未満でのフッ素プラズマ処理、フルオロポリマー燃焼法、高温でのフッ素ガス反応、及びフッ素ガスを用いたUV処理、又は上記の任意の組み合わせを含むいくつかの方法によって行うことができる。
【0020】
使用されるフルオロアニーリング法に応じて、種々のフッ素源を使用することができる。フルオロポリマー燃焼法では、フッ素ポリマー材料が必要であり、これは例えば、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA、MFA(パーフルオロアルコキシポリマー)、FEP(フッ素化エチレン-プロピレン)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)、FFPM/FFKM(パーフルオロ化エラストマー[パーフルオロエラストマー])、FPM/FKM(フルオロカーボン[クロロトリフルオロエチレンビニリデンフルオリド])、PFPE(パーフルオロポリエーテル)、PFSA(パーフルオロスルホン酸)及びパーフルオロポリオキセタンであり得る。
【0021】
フッ素イオン注入、引き続いてアニーリング、300℃未満でのフッ素プラズマ処理、高温でのフッ素ガス反応、及びフッ素ガスを用いたUV処理を含む他のフルオロアニーリング法では、フッ素化ガス及び酸素ガスが反応に必要である。フッ素化ガスは、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF6)、HF蒸気、NF3、及びフルオロポリマー燃焼からのガスであり得る。
【0022】
イットリア又は酸化イットリウムアルミニウム膜は、好ましくは、構造が、フッ素がフルオロアニーリングプロセス中に粒界を通して膜を透過することを可能にするように、柱状構造である。非晶質イットリア構造(すなわち、非柱状、又はあまり柱状でない)は、フッ素がフルオロアニーリングプロセス中に容易に透過することを可能にしない。
【0023】
フルオロアニーリング膜は調整可能であり、フルオロアニーリング処理は膜のフッ素化の深さ及び密度の変動を可能にする。本発明の1つのバージョンでは、フルオロアニーリング膜が完全にフッ素化(完全飽和)されており、フッ素が膜の深さ全体にわたって位置している。本発明の別のバージョンでは、フルオロアニーリング膜が部分的にフッ素化されており、フッ素が膜の外側部分に沿って位置しているが、膜の深さ全体にわたっては位置していない。さらに、膜が、フッ素含量が膜の深さにわたって変化する勾配膜であることもできる。例えば、膜の最上部(最外部)部分が最も高いフッ素含量を含むことができ、フッ素含量が膜の深さにわたって、基板に最も近く、基板と界面を接する膜の最下部(最内部)部分に向かって徐々に減少する。膜の最外部部分は、エッチング環境に面する部分である。
【0024】
膜は、基板を覆う保護層を提供し、保護層は、例えば真空チャンバー内部の環境などの、半導体部品内部の環境と接触しているコーディングされた物品の最外層である。
【実施例】
【0025】
実施例1
原子層堆積蒸着イットリアのフッ素化
ALDイットリア膜を、ALD堆積中に140℃と200℃の間の温度に保持したアルミニウム基板クーポン上に調製した。種々のクーポン上のイットリア膜の厚さを、0.01ミクロンから1ミクロン未満の間で変化させた。
図1は、フルオロアニーリング前の(ALD)イットリア膜のX線回折(XRD)パターンを示す。
【0026】
次いで、ALDイットリア膜を有するクーポンを、フッ素源を含む炉内でクーポンをフルオロアニーリングすることによってフッ素化した。試料を、フッ素源を用いて炉内の空気中で5回サイクルさせた。各サイクルは、1時間当たり100℃でのランプアップ(ramp up)、温度250℃で1時間の浸漬、100℃/時間での温度のランプダウン(ramp down)、及び250℃までの次のランプアップの前の温度100℃で10分間の浸漬を含んでいた。
【0027】
フッ素化ALDイットリア膜は優れた耐クラック性を有する。フッ素化処理なしでアルミニウム上に成長させたイットリアを含む対照クーポンの室温と250℃の間の熱サイクルはイットリア膜のクラッキングを有したが、上記の調製したフッ素化ALDイットリア膜は同じ熱サイクル下でクラッキングを生じなかった。
図2は、フルオロアニーリング後の原子層堆積(ALD)イットリア膜のX線回折パターンを示す。フルオロアニーリングALD膜のXRD膜は、イットリア膜が、フッ素化イットリウムアルミニウムオキシド(すなわち、オキシフッ化イットリウムアルミニウム)である外側部分及び(未フッ素化)イットリウムアルミニウムオキシドである内側部分を有する勾配膜となることを示している。
【0028】
この実施例の結果は、ALDプロセスによって形成されるイットリウム及び酸素を含有する耐クラック性膜が、CVD又はPVD堆積イットリウム及び酸素含有膜に使用される300℃から650℃などの高温と比較して、150℃と300℃未満の間の低温でフッ素化され得ることを示している。より低いALD堆積温度及びより低いフルオロアニーリング温度は、ポリマーなどの感温性基板及び膜に対して大きなCTE(熱膨張係数)不整合を有する基板をコーティングするのに有利である。
【0029】
本開示のいくつかの例示的な実施態様をこのように説明してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の範囲内でさらに他の実施態様を作製及び使用できることを容易に理解するだろう。この文書によって網羅される開示の多数の利点は、前記の説明において示されている。しかしながら、この開示は多くの点で例示的なものにすぎないことが理解されるであろう。本開示の範囲を超えることなく、細部、特に部品の形状、サイズ、及び配置の点で変更を加えることができる。開示の範囲は、当然、添付の特許請求の範囲が表現されている言語で定義される。