(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-06
(45)【発行日】2024-03-14
(54)【発明の名称】基板上にモリブデン膜を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/14 20060101AFI20240307BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240307BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20240307BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20240307BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20240307BHJP
【FI】
C23C16/14
H01L21/28 301R
H01L21/285 P
H01L29/58 G
(21)【出願番号】P 2021521480
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 US2019056435
(87)【国際公開番号】W WO2020086344
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-02
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バウム, トーマス エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス, ブライアン シー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン, フィリップ エス.エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ジュニア, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ウェケナー, ジェームズ
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0294187(US,A1)
【文献】特開2019-044266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/14
H01L 21/28
H01L 21/285
H01L 29/423
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にモリブデン含有材料を形成するための方法であって、約300℃~約400℃の温度における蒸着条件下で基板をモリブデンジオキシジクロリド(MoO
2Cl
2)蒸気と接触させて、基板上にモリブデン含有材料を堆積させることを含み、基板が、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(SiN)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化ルテニウム(RuO
2)、酸化イリジウム(IrO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、および酸化イットリウム(Y
2O
3)から選択される、方法。
【請求項2】
基板が窒化チタンであり、モリブデンジオキシジクロリド蒸気との窒化チタン基板の接触が、約350℃~約400℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
基板が酸化アルミニウムであり、モリブデンジオキシジクロリド蒸気との酸化アルミニウム基板の接触が、約350℃~約400℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
基板が二酸化ケイ素であり、モリブデンジオキシジクロリド蒸気との二酸化ケイ素基板の接触が、約350℃~約400℃の温度で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
蒸着条件が、堆積されたモリブデン含有材料の抵抗率が約20μΩ・cm未満であるように選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
蒸着条件がH
2をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
蒸着条件がパルス化学蒸着条件である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
モリブデン含有材料が、75%~100%の段差被覆で基板上に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
モリブデン膜を基板上に堆積させた半導体デバイスであって、前記膜が、99%超のモリブデン、1%未満の酸素、99%超のコンフォーマリティを含み、
膜厚35Å
で抵抗率が20μΩ・cm未満であり、基板が、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
2)、酸化ハフニウム(HfO
2)、二酸化ケイ素(SiO
2)、窒化ケイ素(SiN)、酸化ランタン(La
2O
3)、酸化ルテニウム(RuO
2)、酸化イリジウム(IrO
2)、酸化ニオブ(Nb
2O
5)、および酸化イットリウム(Y
2O
3)から選択され、
半導体デバイスが、2:1~40:1の範囲の深さ対横寸法のアスペクト比(L/W)を有する、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデン含有材料の蒸着に関する。特に、本発明は、そのような堆積のための前駆体としてのモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンは、その極めて高い融点、低熱膨張係数、低抵抗率、および高熱伝導率の特性のために、拡散障壁、電極、フォトマスク、パワーエレクトロニクス基板、低抵抗率ゲート、および相互接続における使用を含む半導体デバイスの製造においてますます利用されている。
【0003】
そのような有用性は、効率的な大量生産事業に対応する堆積した膜の高いコンフォーマリティおよび高い堆積速度を特徴とする、そのような用途のためのモリブデン膜の堆積を達成する取り組みの動機となっている。これは、さらに、蒸着操作に有用な改善されたモリブデン源試薬、並びにそのような試薬を利用する改善されたプロセスパラメーターを開発するための取り組みに活気を与えている。
【0004】
五塩化モリブデンは、モリブデン含有材料の化学蒸着のためのモリブデン源として最も一般に使用されている。しかし、効率的な大量生産事業に対応するより高い堆積速度でモリブデン含有材料の堆積を達成する必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、モリブデン含有材料の蒸着に関し、より詳細にはそのような蒸着のための源試薬としてのモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)の使用、並びに源試薬としてモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)を使用する方法およびデバイスに関する。
【0006】
一態様では、本発明は、基板上にモリブデン含有材料を形成するための方法であって、蒸着条件下で基板をモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気と接触させて、基板上にモリブデン含有材料を堆積させることを含む、方法を提供する。
【0007】
種々の実施形態では、本発明は、基板上にモリブデン含有材料を形成する方法であって、モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)前駆体を水素などの還元性化合物と共に利用する蒸着プロセスによりモリブデンおよび/または酸化モリブデンを堆積させて、基板上にモリブデン含有材料を生成することを含む、方法に関する。
【0008】
有利には、本発明の方法では、モリブデンは、約400℃未満の温度で堆積させることができ、これにより、方法が論理装置の製造に使用可能になる。このような論理装置は、モリブデン堆積前の既存の装置構造との互換性のために課題を提起する。
【0009】
その上、高いモリブデン堆積速度により、ツール時間および処理コストが削減される。この方法により、モリブデン前駆体(MoO2Cl2)への曝露による窒化チタンエッチングの減少がもたらされることも判明している。モリブデン堆積ステップ中にエッチングされた任意のTiNを補償するための余分なTiNの必要性がより少なくなるため、装置内の伝導に必要な断面積を減らすことができるので、TiNエッチングの減少が望ましい。最後に、装置性能が不均一になる可能性があるので、TiNエッチングは、回避することが望ましい。一実施形態では、TiNエッチングの程度は、毎分10Å未満である。
【0010】
このように形成された膜は、1%未満の酸素、または0.1%未満の酸素を有し、99%超のモリブデンからなり、例えば断面透過型電子顕微鏡イメージング技術によって決定されたように、95超、99超、または100%に近いコンフォーマリティ、および膜厚35Åで20μΩ・cm以下の抵抗率をもつ。
【0011】
本開示の他の態様、特徴および実施態様は、次の説明および添付の特許請求の範囲から、より十分に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】開示された方法によるマイクロエレクトロニックデバイス上のモリブデン(Mo)膜形成のアスペクト比およびコンフォーマリティを示す膜の説明図である。
【
図2】種々のモリブデン前駆体の膜抵抗率対膜厚の比較を示すグラフ図である。
【
図3】200Å D-TiNクーポンへのモリブデン化学蒸着の窒化チタン(TiN)エッチング速度対基板温度のプロットを示すグラフ図である。
【
図4】パルスCVD Mo蒸着の基板温度の関数としてMo厚さおよび抵抗率を示すグラフ図である。
【
図5】MoO
xおよびMo金属対水素(H
2)流量およびチャンバー圧のプロットを示すグラフ図である。この図は、膜の個性、元素状モリブデン金属対酸化モリブデンに対するH
2流量の重要性と影響を示している。
【
図6】μΩ・cm単位でのMo抵抗率対基板温度のプロットを示すグラフ図である。
【
図7】パルス化学蒸着プロセスの説明図である。圧力は、自動スロットルバルブによって制御されている。アンプルは、チャンバーに1秒間パルス「オン」され、その後サイクルの残りの59秒の間に加圧する。アンプルがチャンバーにパルスで開かれると、チャンバー内の圧力は、圧力設定点よりも高い圧力値に急上昇する。
【
図8】3000sccmのH
2共反応体流を使用した、30Å TiNコーティング基板上のMoO
2Cl
2からのMo堆積膜を示す膜断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、モリブデンの蒸着、特に、例えば、優れたコンフォーマリティおよび電気的性能特性のモリブデン膜が望ましい半導体デバイスの製造における、そのような堆積のためのモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)の使用に関する。本発明によれば、モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)は、化学蒸着(CVD)などの蒸着プロセスにおいて、高度にコンフォーマルな特徴の低抵抗率、高い堆積速度の膜をもたらすことが判明した。一態様では、本発明は、基板上にモリブデン含有材料を形成するための方法であって、蒸着条件下で基板をモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気と接触させて、基板上にモリブデン含有材料を堆積させることを含む、方法に関する。
【0014】
本発明の種々の実施形態では、基板上にモリブデン含有材料を蒸着させるための前駆体としてモリブデンジオキシジクロリド(MoO
2Cl
2)を使用すると、断面透過型電子顕微鏡イメージング技術によって決定されたように、100%コンフォーマリティに近い、高度のコンフォーマリティ(
図1に示したt
2/t
1)をもたらすことができる(
図1参照)。有利には、モリブデンジオキシジクロリド(MoO
2Cl
2)の堆積は、五塩化モリブデン(MoCl
5)による堆積より高い速度で進行する可能性がある。3D NAND構造の場合には、MoO
2Cl
2は、MoOCl
4よりも高い圧力、大きな水素流および低いアンプル温度 が必要である。さらに、モリブデンジオキシジクロリド(MoO
2Cl
2)の構造内の酸素の存在にも関わらず、そのように堆積されたモリブデン含有材料は、抵抗率および酸素含有量が低い可能性がある。
【0015】
図2は、3つの異なるMo前駆体の膜抵抗率対膜厚の比較を示すプロットを示す。プロットでは、アンプルが70℃の温度に加熱され、TiN層をコーティングしたシリコン基板上に膜を堆積させた。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、前駆体は、パルス蒸着条件を使用して堆積させることができる。これにより、堆積の段差被覆を改善できることが判明した。適切には、パルス堆積の「パルス」および「パージ」時間は、基板構造および反応器設計に応じて、それぞれ独立して 、1~120秒、1~60秒、または1~20秒の範囲内であり得る。
【0017】
種々の実施形態では、蒸気条件は、堆積されたモリブデン含有材料の抵抗率が、100μΩ・cm未満、50μΩ・cm未満、最大20μΩ・cm、任意選択で最大15~20μΩ・cmであるように選択され、他の実施形態では、8μΩ・cmとできるだけ低い。
【0018】
モリブデン含有材料は、350℃~750℃の範囲内、または300℃~600℃の範囲内、または300℃~575℃範囲内の(基板)温度で堆積され得る。
【0019】
種々の実施形態では、蒸着条件は、水素などの還元剤の任意選択の存在を除いて、不活性雰囲気を含む。いくつかの実施形態では、モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気は、他の金属蒸気の実質的な不在下で堆積され得る。
【0020】
本発明の方法は、モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)を揮発させて、蒸着操作のためのモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気を生成することを含んでもよい。蒸着条件は、任意の適当なタイプであってもよく、例えば、モリブデン含有材料が、堆積した膜中に元素状モリブデン材料を含むように、水素ガスなどの還元周囲(蒸気)を含んでいてもよい。このように堆積されたモリブデン含有材料は、元素状モリブデン、または酸化モリブデン、または他のモリブデン含有材料を含むか、あるいはそれらからなるか、または本質的にそれらからなっていてもよい。還元剤のレベル、例えば、水素濃度に応じて、酸化モリブデンに対してより高い比率の元素状モリブデンを優先的に堆積させることが可能である。
【0021】
本発明の追加の利点は、高いモリブデン堆積速度により、ツール時間および処理コストが削減されることである。したがって、この方法の結果、モリブデン前駆体(MoO2Cl2)への曝露による窒化チタンエッチングが減少する。試験した全ての基板温度範囲にわたって、TiN基板のエッチングは、5Å未満であったことが判明した。
【0022】
本発明の一態様では、
図3は、基板温度の関数として堆積されたMoOCl
4およびMoO
2Cl
2前駆体のTiNエッチング速度の比較を示す。
図3が示すとおり、MoOCl
4と比較したとき、MoO
2Cl
2は、TiNのより低いエッチング速度を示す。
図3のプロットで使用した堆積条件は、T
アンプル=60℃(アンプルの温度)、200A TiN基板、アルゴン(Ar)流量=50sccm、MoO
2Cl
2のH
2流量=4000sccmおよびMoOCl
4のH
2流量=2000sccmであった。
【0023】
本発明の他の実施形態では、記載された方法に利用される基板は、任意の適当なタイプであってよく、例えば半導体デバイス基板、例えば、シリコン基板、二酸化ケイ素基板、または他のシリコン系基板を含んでいてもよい。種々の実施形態では、基板は、1種または複数の金属または誘電体基板、例えば、TiN、Mo、MoC、SiO2、W、SiN、WCN、Al2O3、AlN、ZrO2、HfO2、SiO2、酸化ランタン(La2O3)、窒化タンタル(TaN)、酸化ルテニウム(RuO2)、酸化イリジウム(IrO2)、酸化ニオブ(Nb2O3)、および酸化イットリウム(Y2O3)を含んでいてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、例えば二酸化ケイ素などの酸化物基板、あるいはシリコンまたはポリシリコン基板の場合には、基板は、その後に堆積される材料のために、その上にバリア層、例えば窒化チタンを含むように処理または製造することができる。
【0025】
一実施形態では、基板表面に堆積されたモリブデン含有層は、核形成層を事前に形成することなく、したがって直接モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気を用いて、例えばパルス化学蒸着(CVD)または原子層堆積(ALD)または他の蒸着技術によって形成することができる。それぞれのモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気接触ステップは、モリブデン膜の所望の厚さを形成するために望ましいサイクル数で交互に繰り返し実行することができる。種々の実施形態では、モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気との基板(例えば、窒化チタン)層の接触は、350°とできるだけ低い温度で実施され、他の実施形態では、(MoO2Cl2)蒸着について本明細書で定義された、300℃~750℃の範囲で実施される。
【0026】
図4は、MoO2Cl2からのMoのパルスCVD蒸着について基板温度の関数として測定された堆積されたMo膜厚および膜抵抗率のプロットを示す。使用した
図4の堆積条件は、80T、流量=50sccmおよびH
2流量=4000sccmにおける100サイクルのパルス化(1秒オン/59秒オフ)であった。
【0027】
さらに、
図6は、MoO
2Cl
2からのMoのCVDおよびパルス堆積の両方を比較するための、Mo膜抵抗率対基板温度を示すプロットを示す。膜抵抗率によって明らかになったMo膜の品質は、CVDではT
sub=570℃未満に低下するが、パルスCVDプロセスは、T
sub=約380℃で良好なMo膜を生じる。
図6を参照すると、使用した堆積条件は、T
アンプル=60℃、200A TiN厚さ、圧力=80T、Ar流量=50sccm、H
2流量=4000sccm、前駆体のパルス堆積シーケンスは、オン1秒、オフ59秒であった。より低い温度では、Mo膜厚がより薄いことに留意されたい。
【0028】
さらに、
図7は、MoO
2Cl
2からのMo堆積に使用されるパルスCVD法およびタイミングシーケンスの概略図を提供し、前駆体導入パルス、H
2流および圧力を示す。前駆体が反応器チャンバーにパルスされると、60Tベース圧力を超える圧力急上昇が認められる。
【0029】
モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気を用いて、モリブデン含有材料は、基板上に直接堆積させて、元素状モリブデンまたは酸化モリブデンまたは他のモリブデン含有化合物もしくは組成物のバルク堆積物を形成することができる。金属形成には4モル当量超または過剰のH2が必要なので、H2の濃度は、モリブデン金属または酸化物の形成に重要である。4モル当量未満のH2は、様々な量のモリブデン酸化物の形成をもたらし、したがって、このように形成した酸化モリブデンを還元するために、H2へのさらなる曝露が必要になるだろう。
【0030】
図5は、2つの反応器圧力(60および80T)のH
2流量の関数としてMoO
2Cl
2から堆積された膜について、X線回折によって検証されたように、測定された膜抵抗率および膜組成物を表すプロットを示す。
図5が示すとおり、MoOxおよびMo(金属)の形成は、H
2流量に強く依存している。
図5で使用した堆積条件は、T
アンプル=60℃、40A TiN厚さ、Ar流量=50sccm、T
sub=10分間656℃であった。
【0031】
種々の実施形態では、モリブデン含有材料は、300℃~750℃の範囲または(MoO2Cl2)蒸着について上記で定義された別の範囲の温度で表面に堆積される。方法は、蒸着条件により、モリブデン含有材料としての元素状モリブデンの基板上への堆積がもたらされるように、実行することができる。蒸着条件は、任意の適当な特徴のものであってよく、かつ例えば基板上に元素状モリブデンのバルク層を形成するために、水素または他の還元ガスの存在を含んでいてもよい。
【0032】
より一般的に、本開示に基づく基板上にモリブデン含有材料を形成する広範な方法は、水素または他の還元ガスの存在を含む蒸着条件を含んでいてもよい。モリブデン含有材料は、水素の存在下または不在下でバリア層または表面に堆積させることができる。例えば、バリア層は、窒化チタンによって構成されていてよく、窒化チタン層は、水素の存在下でモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気と接触させることができる。
【0033】
本開示の方法は、多くの代替方法で、多種多様なプロセス条件下で実施されてもよいことを理解されたい。本発明の方法は、例えば、基板上に半導体デバイスを作製するための方法において実施されてもよい。半導体デバイスは、任意の適当なタイプのものであってもよく、例えば、DRAMデバイス、3-D NANDデバイス、または他のデバイスもしくはデバイス集積構造を含んでいてもよい。種々の実施形態では、基板は、モリブデン含有材料が内部に堆積されるビアを含んでいてもよい。デバイスは、例えば、2:1~40:1の範囲の深さ対横寸法のアスペクト比(L/W)を有していてもよい(
図1参照)。
【0034】
本開示に基づくモリブデン含有材料を堆積させるためのプロセス化学は、反応2MoO2Cl2+6H2→2Mo+4HCl+4H2Oによる元素状モリブデン、Mo(0)の堆積を含んでもよい。中間反応が存在していてもよく、当技術分野でよく知られている。本発明の方法に基づく堆積されたモリブデン含有材料は、モリブデン含有材料の堆積速度、堆積されたモリブデン含有材料の膜抵抗率、堆積されたモリブデン含有材料の膜形態、堆積されたモリブデン含有材料の膜応力、材料の段差被覆、および適切なプロセス条件のプロセスウィンドウまたはプロセスエンベロープなどの任意の適切な評価メトリックスおよびパラメーターにより特徴付けることができる。対応する半導体製品の大量生産を可能にするため、堆積される材料を特徴付け、それを特定のプロセス条件と関係付けるために、任意の適切な評価メトリックスおよびパラメーターを使用することができる。有利には、本発明の方法は、半導体デバイス上に高純度モリブデンの膜を堆積させることが可能である。したがって、他の態様では、本発明は、前記膜が99%超のモリブデンを含む、上にモリブデン膜を堆積させた半導体デバイスを提供する。
【0035】
いくつかの実施形態では、本開示は、基板上にモリブデン含有材料を形成する方法であって、モリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)前駆体を利用する化学蒸着(CVD)プロセスにより、モリブデンを基板表面に堆積させて、基板上にモリブデン含有材料を生成することを含む、方法に関する。
【0036】
そのような方法は、本明細書に様々に記載されているような任意の適当な方法で実施することができる。特定の実施形態では、そのような方法は、化学蒸着、例えば、パルス化学蒸着を含む蒸着プロセスで実施することができる。この方法は、得られたモリブデン含有材料が元素状モリブデンから本質的に構成されるように実施されてもよく、種々の実施態様では、モリブデンは、水素または他の適当な還元性ガスの存在下で基板表面に堆積されていてもよい。本発明の他の実施形態では、MoO2Cl2および還元ガスは、順次パルスして、パルスの際モリブデン膜を堆積させ、パルスシーケンスを膜コンフォーマリティおよび膜抵抗率について最適化することができる。この方法は、DRAMデバイスまたは3-D NANDおよび論理装置などの半導体デバイス製品の製造において実施することができる。
【0037】
一般に、基板上にモリブデン含有材料を形成するための本開示の方法は、高いレベルの段差被覆、例えば、75%~100%の段差被覆でモリブデン含有材料の堆積を達成するために実施されてもよい。
【0038】
基板上に形成したモリブデン含有膜は、良好な接着特性を示す。一実施形態では、堆積が、二酸化ケイ素基板の前処理なしで実施され、得られたモリブデン膜が、ASTM D 3359-02-テープ試験による接着性を測定するための標準試験法によって95%を超える接着性を示す。
【0039】
本発明は、その好ましい実施形態の以下の実施例によってさらに例示可能であるが、これらの実施例は、単に例示の目的のために含まれており、特に指示がない限り、本発明の範囲を限定することを意図しないことが理解されるであろう。
【0040】
実験の項
一般手順:
半導体デバイスは、以下のプロセスステップの順序で、二酸化ケイ素ベース層上に窒化チタンバリア層を含む基板上に製作することができる。
【0041】
ステップ1:堆積チャンバーのパージを行なうこと;
ステップ2:基板のバリア層(TiN層)をモリブデンジオキシジクロリド(MoO2Cl2)蒸気のパルスと、水素(H2)またはアルゴン(Ar)または不活性ガスの存在下、例えば500℃程度の温度で接触させること;
ステップ3;システムをH2または不活性ガス(例えば、Ar)下でパージして、MoO2Cl2前駆体とH2共反応体および基板との完全な反応を可能にする。
ステップ4:所望の特性のモリブデン膜層を形成するために、ステップ1~3(任意選択)を繰り返すこと。
【実施例】
【0042】
実施例1
以下の範囲のプロセスパラメーター;
1)毎分1標準立方センチメートル(sccm)から1000sccmの範囲の前駆体流。
2)1~10000sccmの範囲の不活性前駆体キャリヤガス流
3)25sccm~25000sccmの範囲のH2共反応体流
4)0.1T~250Tの範囲の圧力
5)300~1000℃の基板温度
6)a)0.1秒~120秒間の前駆体パルス「オン」時間、b)1秒~120秒間の前駆体パルス「オフ」時間を含むパルスCVDサイクル時間
7)1~10000サイクルの堆積サイクル
【0043】
Al2O3基板に関する例1
400°~700℃の基板温度、1秒「オン」および39秒「オフ」の20~200堆積サイクル、4000sccm(4lpm)H2流、チャンバー圧力80TでのパルスCVD Mo堆積;Mo金属堆積速度は、0.1~5オングストローム/サイクルであり、抵抗率は10~33μΩ・cmであった。2~3オングストロームのAl2O3エッチングは、主に部分的にMo最上層でのXRFシグナルの損失によって測定され、Al2O3の実際のエッチングに起因しない可能性が高い。
【0044】
SiO2基板に関する例2
450°~700℃の基板温度、1秒「オン」および39秒「オフ」の20~200堆積サイクル、4lpm H2流、チャンバー圧力80TでのパルスCVD Mo堆積;Mo金属堆積速度は、0.4~6オングストローム/サイクルであり、抵抗率は10~70μΩ・cmであった。SiO2エッチング速度は測定されなかった。
【0045】
TiN基板に関する例3
360°~700℃の基板温度、1秒「オン」および39秒「オフ」の25~200堆積サイクル、4lpm H2流、チャンバー圧力80TでのパルスCVD Mo堆積;Mo金属堆積速度は、0.2~2.8オングストローム/サイクルであり、抵抗率は12~1200μΩ・cmであった。0~2.3オングストロームのTiNエッチングを測定した。