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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】架橋型ポリシロキサン接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 183/05 20060101AFI20240308BHJP
   C09J 183/07 20060101ALI20240308BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C09J183/05
C09J183/07
C09J11/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020083441
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021178893
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國武 雅司
(72)【発明者】
【氏名】深町 巴
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-143026(JP,A)
【文献】特開2017-014320(JP,A)
【文献】特開2010-116464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
C08G 77/00 - 77/62
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記シロキサンポリマー(A)およびシロキサン架橋剤(B)を含む、接着剤であり、シロキサンポリマー(A)がRとして水素原子を含むときはシロキサン架橋剤(B)は末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を2つ以上含むシロキサン化合物であり、シロキサンポリマー(A)がRとして末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むときはシロキサン架橋剤(B)はSiH基を2つ以上含むシロキサン化合物である、接着剤。
【化1】

は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
2は、独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であり、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
xは1~30の整数を表し、mが重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表す。
【請求項2】
シロキサンポリマー(A)の構成単位-(OSi(R22-は、下記の構成単位(I-1)と構成単位(I-2)を含む、請求項1に記載の接着剤。
【化2】

(I-1)

(I-2)
21は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
22は、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を表し、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよい。
【請求項3】
請求項1に記載のシロキサンポリマー(A)において、
0が独立してフェニル又はシクロヘキシルであり、
1が独立してメチル又はフェニルであり、
構成単位(I-1)と構成単位(I-2)において
21が独立してメチル又はフェニルであり、
22が独立して水素、ビニル又はアリルである、
請求項2に記載の接着剤。
【請求項4】
下記シロキサンポリマー(A’)であって末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)およびシロキサン架橋剤(B)(ただし、構造(V)を有するものを除く。)を含む接着剤であって、置換基(II)がRとして水素原子を含むときはシロキサン架橋剤(B)は末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を2つ以上含むシロキサン化合物であり、置換基(II)がRとして末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むときはシロキサン架橋剤(B)はSiH基を2つ以上含むシロキサン化合物である、接着剤。
【化3】


は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
21は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
は独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であり、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
xは1~30の整数を表し、mが重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表す。
【請求項5】
シロキサン架橋剤(B)が(III)または(IV)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤。
【化4】

(III)

(IV)
5は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
6は、独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を表し、前記末端アルケンあるいはアルキンを含む炭素数2~40のアルキル任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく;
pは0~30の整数を表し、qは2~30の整数を表す。
【請求項6】
5が独立して、メチル又はフェニルを表し、R6が独立して、水素、ビニル又はアリルを表す、請求項5に記載の接着剤。
【請求項7】
さらに溶剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項8】
さらに触媒を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤。
【請求項9】
ガラス基板、金属酸化物基板、セラミック基板、プラスチックフィルム、フッ素樹脂基板、フッ素樹脂積層基板、金属基板、またはシリコンウェハに接着可能である、請求項1~8のいずれか一項に記載に記載の接着剤。
【請求項10】
引張せん断強度が1MPa以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋型ポリシロキサン接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な接着剤は溶剤の揮発や化学反応等により硬化し接着性を示すのに対し、ホットメルト接着剤は加熱溶融・冷却固化のサイクルで接着でき、短時間で接着を完了することが出来る。ホットメルト接着剤は、一般的には、オレフィン系であるポリエステル系、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、合成ゴム、ポリアミド系、ウレタン系ポリマーなどを主成分として構成されている。
一般的に、直鎖状のシロキサンポリマーは、表面自由エネルギーの低い基材に対する濡れ性が良好で、耐熱性に優れるものの、オイルまたはワックス状であり、接着力が非常に弱いため、接着剤として用いる場合、シロキサンポリマーの末端を変性し、例えばビニル基とシランによるヒドロシリル化反応、イソシアネートとアルコール性水酸基によるウレタン化反応、湿気硬化等により積極的に架橋することで接着を達成してきた。
【0003】
シリコーン系接着剤としては、例えば、特許文献1には、(A)加熱硬化型のオルガノポリシロキサン組成物100重量部、(B)補強性シリカ微粉末1~100重量部、(C)接着性付与成分0.1~50重量部、を含有してなることを特徴とする移動体用シリコーンゴム接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、表面の凹凸の大きい被着体に対して、低圧での熱圧着においても良好な隙間充填性を示し、硬化して、前記被着体に強固に接着する反応性ホットメルト型シリコーン系接着剤を提供することを課題とし、(A)軟化点が40~250℃のオルガノポリシロキサンレジン、(B)25℃で液状または生ゴム状のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(C)(i)ケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンおよび(ii)ケイ素原子結合アルコキシ基含有有機ケイ素化合物、または(iii)ケイ素原子結合水素原子およびケイ素原子結合アルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサン、(D)ヒドロシリル化反応用触媒、および(E)ヒドロシリル化反応抑制剤から少なくともなるホットメルト型シリコーン系接着剤が提案されている。
【0004】
一方、本発明者らは、ダブルデッカー型シルセスキオキサンから誘導したかご型2官能性シルセスキオキサンと直鎖状シロキサンを結合した構造を有するシロキサンポリマーであって、ガラス転移温度が30℃以上200℃以下であるシロキサンポリマーを含む、接着剤を開発した。この接着剤は架橋剤を使用せず、加温により可逆的に着脱可能なホットメルト型ポリシロキサン接着剤である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-331820号公報
【文献】特開2006-274007号公報
【文献】特開2019-044107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、不可逆的に接着可能なポリシロキサン接着剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ケイ素に結合した水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを
含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むシロキサンポリマーに対し、前記水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンにシロキサン架橋剤を反応させて架橋反応を行うことにより不可逆的に接着可能な接着剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の実施形態には、以下の構成が含まれる。
[1]下記シロキサンポリマー(A)およびシロキサン架橋剤(B)を含む、接着剤であり、シロキサンポリマー(A)がRとして水素原子を含むときはシロキサン架橋剤(B)は末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を2つ以上含むシロキサン化合物であり、シロキサンポリマー(A)がRとして末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むときはシロキサン架橋剤(B)はSiH基を2つ以上含むシロキサン化合物である、接着剤。
【化1】

は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
2は、独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であり、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
xは1~30の整数を表し、mが重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表す。
[2]シロキサンポリマー(A)の構成単位-(OSi(R22-は、下記の構成単位(I-1)と構成単位(I-2)を含む、[1]に記載の接着剤。
【化2】
(I-1)
(I-2)
21は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
22は、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を表し、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよい。
[3]R0が独立してフェニル又はシクロヘキシルを表し、
1が独立してメチル又はフェニルを表し、
21が独立してメチル又はフェニルを表し、
22が独立して水素、ビニル又はアリルを表す、
[2]に記載の接着剤。
[4]下記シロキサンポリマー(A’)であって末端に置換基(II)を有するシロキサン
ポリマー(A’)およびシロキサン架橋剤(B)を含む接着剤であって、置換基(II)がRとして水素原子を含むときはシロキサン架橋剤(B)は末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を2つ以上含むシロキサン化合物であり、置換基(II)がRとして末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むときはシロキサン架橋剤(B)はSiH基を2つ以上含むシロキサン化合物である、接着剤。
【化3】


(II)
は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
21は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素
原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
は独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であり、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、
xは1~30の整数を表し、mが重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表す。
[5]シロキサン架橋剤(B)が(III)または(IV)である、[1]~[4]のいずれかに記載の接着剤。
【化4】
(III)
(IV)
5は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
6は、独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を表し、前記末端アルケンあるいはアルキンを含む炭素数2~4
0のアルキル任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく;
pは0~30の整数を表し、qは2~30の整数を表す。
[6]R5が独立して、メチル又はフェニルを表し、R6が独立して、水素、ビニル又はアリルを表す、[5]に記載の接着剤。
[7]さらに溶剤を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の接着剤。
[8]さらに触媒を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の接着剤。
[9]ガラス基板、金属酸化物基板、セラミック基板、プラスチックフィルム、フッ素樹脂基板、フッ素樹脂積層基板、金属基板、シリコンウェハに接着可能である、[1]~[8]のいずれかに記載に記載の接着剤。
[10]引張せん断強度が1MPa以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、高い引張せん断強度で不可逆的に接着可能な接着剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。また、本発明の実施態様は適宜組み合わせることもできる。
なお、本明細書で用いる用語は、次のように定義される。アルキルおよびアルキレンは、いずれの場合も直鎖の基であってもよく、分岐された基であってもよい。このことは、これらの基において任意の水素がハロゲンや環式の基などと置き換えられた場合も、任意の-CH-が-O-、-CH=CH-、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、フェニレンなどで置き換えられた場合も同様である。本発明で用いる「任意の」は、位置のみならず個数も任意であることを示す。そして、個数が複数であるときには、それぞれ異なる基で置き換えられてもよい。例えば、アルキルにおいて2個の-CH-が-O-と-CH=CH-で置き換えられる場合には、アルコキシアルケニル又はアルケニルオキシアルキルを示すことになる。この場合のアルコキシ、アルケニレン、アルケニルおよびアルキレンのいずれの基も、直鎖の基であってもよく、分岐された基であってもよい。但し、任意の-CH-が-O-で置き換えられると記述するときには、連続する複数の-CH-が-O-で置き換えられることはない。すなわち、例えば、-CH-CH-が-O-O-に置き換えられることはない。
【0011】
本発明の接着剤は、下記シロキサンポリマー(A)およびシロキサン架橋剤(B)を含む接着剤であり、シロキサンポリマー(A)がRとして水素原子を含むときはシロキサン架橋剤(B)は末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を2つ以上含むシロキサン化合物であり、シロキサンポリマー(A)がRとして末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むときはシロキサン架橋剤(B)はSiH基を2つ以上含むシロキサン化合物である、接着剤である。
【0012】
シロキサンポリマー(A)
シロキサンポリマー(A)は、下記式で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする。
【化5】
【0013】
式(A)中、
は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく;
は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
は、それぞれ独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であり、
前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
xは1~30の整数を表し、mが重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表す。
【0014】
(R
は、独立して、炭素数6~20のアリール又は炭素数5~6のシクロアルキルを表す。
炭素数6~20のアリールとしては、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、トリフェニレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ペリレニルなどがあげられる。これらの中では、フェニル、ナフチル、アントリル、およびフェナントリルが好ましく、フェニル、ナフチルおよびアントリルがより好ましい。
炭素数5~6のシクロアルキルとしては、シクロペンチル、シクロヘキシルが挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール及び前記炭素数5~6のシクロアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよい。
は、好ましくは、フェニル又はシクロヘキシルである。
【0015】
(R
は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表す。
炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキルは、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数7~40のアリールアルキルとしては、例えば、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル、2,2-ジフェニルエチル、3-フェニルプロピル、4-フェニルブチル、5-フェニルペンチルが挙げられる。
炭素数1~40のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、ドデシル、オクタデシルが挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
は、好ましくは、フェニル、シクロヘキシル、及び炭素数1~5のアルキルから選ばれ、好ましくはフェニルまたはメチルである。
【0016】
(R
は、それぞれ独立して、水素原子または末端アルケン末端もしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基である。
の少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であることにより、後述のシロキサン架橋剤を用いて架橋することが可能である。
【0017】
末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基としては特に制限はないが、炭素数2~10であることが好ましく、具体的には、ビニル、アリル
が好ましい。なお、炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は末端以外に二重結合または三重結合を1つ以上含んでもよい。
【0018】
炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキルは、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数7~40のアリールアルキルとしては、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数1~40のアルキルとしては、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられもよい。
【0019】
「Rの少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基である。」とは、ポリマーに含まれるR基のうち少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であることを意味するが、式(A)に含まれる構成単位-(OSi(R22-が1種類のときはこの構成単位に含まれる2つのRのうち1つまたは2つ、好ましくは1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であればよい。一方、構成単位-(OSi(R22-は2種類以上含まれてもよく、その場合は、いずれか1種以上の構成単位において、Rとして水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基が含まれてよい。
【0020】
好ましくは、シロキサンポリマー(A)の構成単位-(OSi(R22-は下記(I-1)と(I-2)を含む。
【化6】
(I-1)
(I-2)
【0021】
21は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、
前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
21は、好ましくは、フェニル、シクロヘキシル、及び炭素数1~5のアルキルから選ばれ、より好ましくは、フェニル及びメチルから選ばれる。
【0022】
22は、独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を表し、前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基は、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよい。
22は、好ましくは、水素原子、ビニル、およびアリルから選ばれる。
【0023】
(x、m)
式(A)で表される繰り返し単位において、xは1~30の実数を表すが、製造、取り扱いの観点から、xは好ましくは20以下、より好ましくは8以下である。
mは重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表し、好ましくは10,000~1000,000を表す。
【0024】
本発明に係る式(A)で表される繰り返し単位を含むシロキサンポリマーの末端は、特に限定されず、水酸基であってもよいが、下記の基を有してもよい。
【化7】
(II)
ここで、Rはそれぞれ独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表す。
末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基としては、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキルは、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数7~40のアリールアルキルとしては、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
炭素数1~40のアルキルとしては、Rで説明したものと同様のものが挙げられる。
は好ましくはメチル、水素、ビニル又はアリルである。
【0025】
シロキサンポリマー(A’)
また、本発明の別の態様によれば、本発明の接着剤に含まれるシロキサンポリマーは末端のみに架橋性官能基(ケイ素に結合した水素原子または末端アルケンもしくは末端アル
キンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基)を有してもよい。
すなわち、本発明の接着剤の別の態様は、下記シロキサンポリマー(A’)であって末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)およびシロキサン架橋剤(B)を含む接着剤であって、置換基(II)がRとして水素原子を含むときはシロキサン架橋剤(B)は末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を2つ以上含むシロキサン化合物であり、置換基(II)がRとして末端アルケンまたはアルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を含むときはシロキサン架橋剤(B)はSiH基を2つ以上含むシロキサン化合物である、接着剤である。
【化8】


【化9】
(II)
【0026】
は式(A)におけるRと同様に定義される基であり、好ましい例も同様である。
は式(A)におけるRと同様に定義される基であり、好ましい例も同様である。
【0027】
21は式(II-1)におけるRと同様に定義される基であり、好ましい例も同様である。
【0028】
末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)においては、Rは独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、少なくとも1つが水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基であり、前記末端アルケンもしくはアルキンを含む炭素数2~40のアルキルは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく
、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
シロキサンポリマー(A’)は、末端に存在する、ケイ素に結合した水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を介してシロキサン架橋剤(B)により架橋される。
【0029】
式(A’)において、xは1~30の整数を表し、mが重量平均分子量2,000~10,000,000を満たす数字を表す。
【0030】
なお、シロキサンポリマー(A)および末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)においては、式(A)または(A’)で表される繰り返し単位が占める質量%は、通常10%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上であり、通常100未満、好ましくは99%以下である。すなわち、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、式(1)で表される繰り返し単位以外のユニットを含んでいてもよい。そのようなユニットとしては、例えば、-(CH-CH)-、-(CH=CH)-、-(O-SiMe-C-SiMe
-が挙げられる。
【0031】
シロキサンポリマー(A)および末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)の重量平均分子量(Mw)は特に限定されないが、好ましくは2,000以上、より好ましくは10,000以上であり、好ましくは10,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下である。重量平均分子量は、後述の実施例に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて得られたクロマトグラムを、分子量標準サンプルにて得られた検量線により計算して求める。
【0032】
シロキサンポリマーの製造方法
式(A)または(A’)で表されるシロキサンポリマーを製造する方法は特に限定されないが、例えば、以下の工程(i)または以下の工程(ii)を含む方法により製造することができる。
(i):式(a)で表される化合物と式(b)で表される化合物とを反応させる工程。
(ii):式(a)で表される化合物と式(b1)で表される化合物と、式(b2)で表される化合物とを反応させる工程。
【0033】
式(A)または(A’)で表されるシロキサンポリマーはまた、以下の工程(iii)を含む製造方法により製造することができる。
(iii):式(a)で表されるケイ素化合物と式(c)で表されるケイ素化合物とを反応させる工程。
【0034】
また、上記工程(i)、(ii)又は(iii)において得られるシロキサンポリマーに式(d)で表される化合物を添加して反応させることにより、末端を修飾してもよい。
【0035】
(式(a)で表される化合物)
【化10】

は式(A)におけるRと同様に定義される基であり、好ましい例も同様である。
は式(A)におけるRと同様に定義される基であり、好ましい例も同様である。
式(a)で表される化合物は、例えば、特開2006-022207号公報の記載を参照して合成することができ、以下に示される化合物が好ましい。
【0036】
【化11】
【0037】
(式(b)、(b1)、(b2)、(c)で表される化合物)
【化12】
(b)
【化13】
(b1)
【化14】
(b2)

【化15】
(c)
【0038】
式(b)におけるRは式(A)におけるRと同様に定義される基であり、好ましい例も同様である。nは2~30の整数である。
【0039】
式(b1)におけるR21の定義は式(I-1)と同様であり、好ましいR21の種類も式(I-1)と同様である。n1は2~30の整数である。
【0040】
式(b1)で表される化合物としては、例えば、2,2,4,4,6,6-ヘキサメチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチル-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサエチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチル-2,4,6-トリプロピルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチル-2,4,6-トリス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリブチル-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリブチル-2,4,6-トリエチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサブチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,46-トリエチル-2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)-2,4,6-トリプロピルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(トリフルオロメチル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリフェニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリシクロへキシル-2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサシクロへキシルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサビニルシクロトリシロキサ
ン、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリビニルシクロトリシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタエチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタプロピルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(1-メチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラキス(1-メチルエチル)シクロテトラシロキサン2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(1-メチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラブチル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラブチル-2,4,6,8-テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタブチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチル-2,4,6,8-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-2,4,6,8-テトラプロピルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(1,1-ジメチルエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(トリフルオロメチル)シクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラシクロへキシル-2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタシクロへキシルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8-オクタビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,6-ジエチニル-2,4,4,6,8,8-ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカエチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8.10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカプロピルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタキス(1-メチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタキス(1-メチルエチル)シクロペンタシロキサン2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(1-メチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタブチル-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタブチル-2,4,6,8,10-ペンタエチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカブチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10,10-ペンタキス(1,1-ジメチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチル-2,4,6,8,10-ペンタキス(1,1-ジメチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタキス(1,1-ジメチルエチル)-2,4,6,8,10-ペンタプロピルシクロペンタシロキサン、2,2,4,
4,6,6,8,8,10,10-デカキス(1,1-ジメチルエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタキス(トリフルオロメチル)シクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10.10-デカキス(トリフルオロメチル)シクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(1,1,2,2,2-ペンタフルオロエチル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10,10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカキス(3,3,3-トリフルオロプロピル)シクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8-ペンタフェニルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカフェニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタシクロへキシル-2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカシクロへキシルシクロペンタシロキサン、2,2,4,4,6,6,8,8,10,10-デカビニルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチル-2,4,6,8,10-ペンタビニルシクロペンタシロキサンが挙げられ、中でも、Rが炭素数1~40のアルキルである低分子環状シロキサンが好ましく、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)等の環状シロキサンがより好ましく、入手の容易さ、コスト面、取扱いの観点から、オクタメチルシクロテトラシロキサンが特に好ましい。
【0041】
式(b2)におけるR21、R22の定義は式(I-2)と同様であり、好ましいR21、R22の種類も式(I-2)と同様である。n2は2~30の整数である。
【0042】
式(b2)で表される化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリエチルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1-メチルエチル)シクロトリシロキサン、トリプロピルシクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6-トリス(1,1-ジメチルエチル)シクロトリシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、2,4,6,8,10-ペンタエチルシクロペンタシロキサンが挙げられる。
【0043】
式(c)におけるR21、R22の定義は式(I-1)、(II-2)と同様であり、好ましいR21、R22の種類も式(I-1)、(II-2)と同様である。n1、n2は2~30の整数である。
【0044】
式(c)で表される化合物としては、例えば、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7-ノナメチルテトラシロキサン、1,1,1,3,5,5,5-ヘプタフェニルトリシロキサン、1,1,1,3,5,5,7,7,7-ノナフェニルテトラシロキサン、Gelest製 HMS-031、HMS-071、HMS-151、HMS-301、HMS-501、HAM-301、(d=1の場合):Gelest製 HMS-991、HMS-992、HMS-993、が挙げられる。
【0045】
(式(d)で表される化合物)
式(d)で表される化合物を用いて、シロキサンポリマーの末端を修飾することができる。
【化16】
(d)
式(d)中、Rは、それぞれ独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
は独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記末端アルケンもしくはアルキンを含む炭素数2~40のアルキルは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよく、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
nは1~30の整数を表す。
式(d)で表される化合物としては、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、オクタフェニルトリシロキサン、デカフェニルテトラシロキサン、Gelest製 DMA-T07Rが挙げられる。
【0046】
上記工程(i)、(ii)又は(iii)においては、テトラヒドロフラン、トルエン、酢酸エチル等の溶剤を用いてもよい。硫酸のような酸の存在下で反応を行うことが好ましい。窒素(N)等の不活性雰囲気下で反応を行うことが好ましい。また、攪拌しながら反応を行うことが好ましい。
【0047】
(シロキサン架橋剤)
本発明で用いられるシロキサン架橋剤(B)としては、シロキサンポリマー(A)および末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)に含まれるケイ素に結合した水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基と反応する基を2つ以上有するシロキサン化合物であれば特に限定されないが、シロキサンポリマー(A)または末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)がケイ素に結合した水素原子を含む場合には末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基と反応する基を2つ以上有するシロキサン化合物を含む架
橋剤を選択し、シロキサンポリマー(A)または末端に置換基(II)を有するシロキサンポリマー(A’)が末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基と反応する基を含む場合にはケイ素に結合した水素原子を2つ以上有するシロキサン化合物を含む架橋剤を選択する。
【0048】
架橋剤としては、例えば、下記の式(III)または(IV)で表されるシロキサン化合物を用いることができる。
【化17】
(III)
(IV)
【0049】
5は、独立して、炭素数6~20のアリール、炭素数5~6のシクロアルキル、炭素数7~40のアリールアルキル、又は炭素数1~40のアルキルを表し、前記炭素数6~20のアリール、前記炭素数5~6のシクロアルキル及び前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアリールは、任意の水素原子が独立してフッ素原子又は炭素数1~20のアルキルで置き換えられてもよく、前記炭素数7~40のアリールアルキル中のアルキレンは、任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-、-CH=CH-、又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく、前記炭素数1~40のアルキルは、任意の水素原子が独立してフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-又は炭素数5~20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
6は、独立して、水素原子または末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基を表し、前記末端アルケンもしくは末端アルキンを含む炭素数2~40の脂肪族炭化水素基においては任意の水素原子がフッ素原子で置き換えられてもよく、任意の-CH-が独立して-O-で置き換えられてもよい。
pは0~30の整数を表し、qは2~30の整数を表す。
5は、フェニル、シクロヘキシル、及び炭素数1~5のアルキルから選ばれ、より好ましくは、炭素数1~5のアルキルから選ばれる。
は、水素原子、ビニルまたはアリルが好ましい。
【0050】
架橋剤は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
架橋剤の添加量は、シロキサンポリマーに対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。架橋剤を2種以上使用する場合は、合計含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0051】
(溶剤)
本発明の接着剤は、溶剤を含むことが好ましい。
溶剤としては、前記シロキサンポリマーおよび/またはシロキサン架橋剤を溶解可能であれば、特に限定されない。好ましい溶剤は、ブタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソールなどの芳香族炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶剤、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶剤;酢酸エチルなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのグリコールエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、ピリジンなどの含窒素系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶剤などである。好ましくは、トルエン、メシチレン、アニソール、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸2-(2-エトキシエトキシ)エチルであり、より好ましくはトルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。溶剤は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。また、溶剤は脱水して用いてもよい。溶剤の使用量は、特に限定されないが、前記シロキサンポリマーに対して、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上であり、通常1000質量%以下、好ましくは500質量%以下で用いることができる。
【0052】
(触媒)
前記シロキサンポリマーとシロキサン架橋剤との反応には触媒を用いることが好ましい。したがって、本発明の接着剤は触媒を含むことが好ましい。本実施形態で用いられる触媒は、架橋剤に応じて、適宜選択すればよいが、例えば、スズ、チタン、ジルコニウム、亜鉛およびビスマスなどの金属を含有する有機金属化合物;酸性化合物;塩基性化合物等を用いることができる。
このような金属化合物としては、好ましくは、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシド、オクタン酸スズ等の有機スズ触媒;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、及びチタンテトラアセチルアセトネート等のアルコキシチタン;が挙げられる。
酸性化合物としては、例えば、リン酸、トルエンスルホン酸、硫酸、硝酸、酢酸及び安息香酸が挙げられる。
塩基性化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ビス(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン及びN-エチルモルホリニンが挙げられる。
触媒は1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
触媒の添加量は、前記シロキサンポリマーに対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。触媒を2種以上使用する場合は、合計含有量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0053】
本発明の接着剤としては、前記シロキサンポリマーと架橋剤が別々に含まれ、使用時に混合するような態様でもよいし、前記シロキサンポリマーと架橋剤があらかじめ混合されている態様でもよい。また、前記シロキサンポリマーや架橋剤は溶剤に溶解されている態様でもよいし、使用時に溶剤に溶解して使用するような態様でもよい。触媒は使用時に添
加するような態様が好ましい。
【0054】
(使用態様)
本発明の接着剤の使用態様は、特に制限されないが、前記シロキサンポリマーと架橋剤を溶剤中で混合し、好ましくは触媒を添加したうえで、加熱することで架橋反応を進行させることにより、接着機能を発揮することができる。
加熱処理工程は、具体的には、前記シロキサンポリマーと架橋剤の混合物を基材に塗工した後、オーブン等を用いて加熱すればよい。
加熱処理工程の温度、時間は、前記シロキサンポリマーを所望の架橋体とすることができれば特に限定されないが、例えば、50~250℃である。加熱時間は好ましくは10分~3時間である。
接着対象となる基材は、加熱処理工程の温度に耐え、基材上に形成した架橋体を基材から引き剥がして自立膜として取り出せるものであれば特に限定されず、例えば、石英、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板;フッ化カルシウム基板、;ITO(酸化インジウム・スズ)などの金属酸化物基板;セラミック基板;ポリカーボネート(PC)フィルム、シリコーン系フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、アクリルポリマーフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリイミド(PI)フィルム等のプラスチックフィルム;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂基板;ガラス等にフッ素樹脂を塗布した積層基板;SUS、銅等の金属基板;シリコンウェハ等を用いることができる。
【0055】
(本発明の接着剤の特性)
本発明の接着剤は高い接着特性と透明性を有する。例えば、本発明の接着剤を使用して接着された基材は引張せん断強度が1MPa以上であり、全光線透過率が90%以上である。
引張せん断強度と全光線透過率は例えば、以下の実施例記載の方法により測定される。
【実施例
【0056】
以下において、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、これらの記載により本発明の範囲が限定されることはない。
【0057】
実施例で用いた試薬を以下に示す。
・オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4、東京化成工業(株)製)
・2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(東京化成工業(株)製)
・トルエン(ナカライテスク(株)製)
・硫酸(ナカライテスク(株)製)
・ヘキサメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製)
・炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク(株)製)
・ヘキサン(ナカライテスク(株)製)
・キョーワード500SN(協和化学工業(株)製)
・メタノール(富士フィルム和光純薬(株)製)
・THF(ナカライテスク(株)製)
・1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン (東京化成工業(株)製)
・PT-VTSC-3.0X(商品名、ユミコアジャパン製)
・1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン(東京化成工業(株)製)
・クロム(III)アセチルアセトナート (Cr(acac) 、東京化成工業(株)製)
【0058】
【化18】

化合物(α)は、以下の化合物(4)と化合物(5)とを反応させ、さらに加水分解することにより合成した(例えば、特開2006-022207号公報の0032段落参照。)。
【化19】
【0059】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)によって求めることができ、より具体的には下記の条件で求めることができる。
<GPC測定条件>
カラム:昭和電工(株)製 Shodex KF-806M
移動相:THF(ナカライテスク(株)製)
流速:1ml/min
温度:45℃
検出器:UV
分子量標準サンプル:分子量既知のポリスチレン
【0060】
5%重量減少温度は熱重量分析(TGA)によって求めることができ、より具体的には下記の条件で求めることができる。
<TGA測定条件>
装置名:Rigaku corp. Thermo olus Evo II 差動型示差熱天秤 TG-DTA TG 8120
雰囲気:空気(0.5MPa)
昇温速度:10℃/ min.
測定温度:25~800℃
【0061】
<H-NMR測定条件>
装置:JEOL製 JNM-EX400
積算回数:64
【0062】
<29Si-NMR測定条件>
装置:JEOL製 JNM-EX400
積算回数:800
Relaxation Delay: 0.1s
緩和試薬: Cr(acac)3 10wt%
【0063】
合成例 シロキサンポリマー(β)
【化20】


ディーンスターク管、還流管、温度計を設置した四つ口丸底フラスコにスターラーチップ入れ、化合物(α)50.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4、東京化成工業(株)製) 25.0mL、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン(東京化成工業(株)製) 5.8 mL、トルエン(ナカライテスク製)125mLを加え、1時間還流脱水した。硫酸(ナカライテスク製)2.1mLを加え、3時間還流後、80℃まで冷却しヘキサメチルジシロキサン(東京化成工業(株)製) 0.7mL加え、さらに3時間撹拌した。加熱を停止し、純水を加え分液後、有機層に飽和炭酸水素ナトリウム(ナカライテスク製)水溶液を加え中和洗浄した。その後数回純水で洗浄し、有機層をフィルターでろ過し、ロータリーエバポレーターで
濃縮した。トルエン 20mL、ヘキサン(ナカライテスク製)2000mLを加え撹拌することで白色沈殿を析出させた。沈殿を乾燥させシロキサンポリマー(β)16.8gを得た。1H-NMRよりビニル基の存在が確認され、29Si-NMR測定により求めた(p, p’)は、平均4.2、(q, q’)は、平均0.70であった。GPCによる重量平均分子量は、45,000であった。TGAによる5%重量減少温度は483℃であった。
【0064】
H-NMR測定結果)
1H-NMR(400MHz, CO(CD3)2)δ(ppm): 7.12~7.66(Ph)、5.70~6.13(SiCH=CH)、0.22~0.46(Me)、-0.04~-0.19(Me)
29Si-NMR測定結果)
29Si-NMR(79MHz, THF-d8) δ(ppm): -18.5~-22.0、-34.5~-35.8、-64.6~65.1、-78.8、-78.9、-79.2、-79.4
【0065】
合成例(比較例) シロキサンポリマー(γ)
【化21】

オクタメチルシクロテトラシロキサン 30 g、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン 5.0g、 ヘキサメチルジシロキサン 0.38g、トルエン 55.6gを200mL 4つ口丸底フラスコに加え、還流管、スターラー、オイルバスをセット。窒素をフローし、撹拌した。硫酸1.7 gを加え5時間還流した。加熱を停止し、多量の飽和食塩水を加え、水層を捨て、数回飽和食塩水で洗浄し分液した。有機層に、キョーワード500SNを加え1時間撹拌後、減圧ろ過によりキョーワード500SNを除き、50 ℃程度で濃縮した。濃縮液にメタノールを撹拌しながら加え、上層をデカンテーションで除去し、下層を数回メタノールで洗浄した。下層を60 ℃で減圧乾燥し、6.5gの無色透明液体、シロキサンポリマー(γ)を得た。29Si-NMRより求めたpは、平均6.2、qは、平均1であった。GPCより重量平均分子量は8,200であった。TGAによる5%重量減少温度は358℃であった。
【0066】
H-NMR測定結果)
H-NMR(500MHz, CDCl)δ(ppm): 6.02~6.14(SiCH=CH)、5.88~5.93(SiCH=CH)、0.25~0.26(SiMe)、0.18~0.20(SiMe)。
【0067】
29Si-NMR測定結果)
29Si-NMR(99MHz, CDCl)δ(ppm): 7.3、-21.4~-21.3、-21.9~-21.8、-35.5、-35.8。
【0068】
接着剤の調製
シロキサンポリマー(βまたはγ) 0.5g、1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン 136μL、トルエン 0.5mLを室温で撹拌溶解し、さらにPT-VTSC-3.0X(商品名、ユミコアジャパン製) をトルエンで2000倍に希釈した溶液を1.69μL加え均一になるまで撹拌した。
【0069】
試験片作成
長さ約45mm、幅7mm、厚み0.5mmのアルミニウム基板をアセトンで30分間、超音波洗浄し、乾燥させた後、10分間UVオゾン処理し、被着材(第一の基材)として使用した。このアルミ基板の端から長さ5mm×幅7mmの領域上に接着剤を載せ、同種の別の基板の端から長さ5mm×幅7mmの部分を張り合わせ、目玉クリップで固定した。70℃で20分間、100℃で20分間、200℃で2時間、オーブン中で加熱した。加熱後、オーブンから取り出し、大気雰囲気下、室温で5分間放冷後、目玉クリップを取り除き試験片とした。
【0070】
長さ約50mm、幅10mm、厚み0.5mmのステンレス基板をアセトンで30分間、超音波洗浄し、乾燥させた後、10分間UVオゾン処理し、被着材(第一の基材)として使用した。このステンレス基板の端から長さ6mm×幅10mmの領域上に接着剤を載せ、同種の別の基板の端から長さ6mm×幅10mmの部分を張り合わせ、目玉クリップで固定した。70℃で20分間、100℃で20分間、200℃で2時間、オーブン中で加熱した。加熱後、オーブンから取り出し、大気雰囲気下、室温で5分間放冷後、目玉クリップを取り除き試験片とした。
【0071】
長さ約40mm、幅8mm、厚み1mmのガラス基板をアセトンで30分間超音波洗浄し、乾燥させた後、10分間UVオゾン処理し、被着材(第一の基材)として使用した。このガラス基板の端から長さ5mm×幅8mmの領域上に接着剤を載せ、同種の別のガラス基板の端から長さ5mm×幅8mmの部分を張り合わせ、目玉クリップで固定した。70℃で20分間、100℃で20分間、200℃で2時間、オーブン中で加熱した。加熱後、オーブンから取り出し、大気雰囲気下、室温で5分間放冷後、目玉クリップを取り除き試験片とした。
【0072】
疎水化ガラスにおける疎水化は、上記と同様の化ガラス基板を一日以上1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザンに浸漬させた後、取り出して、水で洗浄後、100℃で一時間焼成することよって作製した。
【0073】
得られた試験片を用いてJIS K6850の方法に準じて、EZ-LX(島津製作所製)を使用し、引張せん断応力を測定した。引張速度は1mm/min、試験温度は25~27℃の室温であった。ポリマーの厚みは表に示す。結果を表1および表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
透明性評価
長さ50mm、幅50mm、厚さ0.7mmの2枚のガラスで、シロキサンポリマー(β)からなる接着剤を挟み、目玉クリップで押さえた後、70℃で20分間、100℃で20分間、200℃で2時間、オーブン中で加熱した。加熱後、オーブンから取り出して大気雰囲気下で放冷した後、目玉クリップを取り除いて、サンプル(固化させた接着剤)を作製した。ヘーズメーター(日本電色工業(株)製 NDH 5000)を用いて、このサンプルの全光線透過率を測定した。ポリマー(接着剤層)の膜厚は150μmであった。リファレンスは同じ種類の基材のガラスを2枚重ねたものを使用した。サンプルの全光線透過率は91%であった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る接着剤は、高い接着性と固化後の透明性加え、かご型シルセスキオキサンを鎖状シロキサンで結合した構造が耐熱性に優れるため、同種接着だけでなく、異種接着を要するエレクトロニクス分野等で好適に使用できる。