(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】送信アンテナ選択装置、送信アンテナ選択方法、及び送信アンテナ選択プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H04B7/06 102
(21)【出願番号】P 2021037772
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正文
(72)【発明者】
【氏名】福園 隼人
(72)【発明者】
【氏名】栗山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】宮城 利文
(72)【発明者】
【氏名】前原 文明
【審査官】大野 友輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-194812(JP,A)
【文献】特表2020-529138(JP,A)
【文献】特開2008-228306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0191215(US,A1)
【文献】国際公開第2014/073522(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0256246(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナによりMIMO伝送を行う送信側で使用する送信アンテナの組み合わせを選択する送信アンテナ選択装置において、
前記送信アンテナの数は、受信側が備えるM個(M≧2)の受信アンテナより多いN個(N>M)であり、
N個の前記送信アンテナからM個の前記送信アンテナを選択する場合のすべての組み合わせを抽出して各組み合わせのPAPRまたは最大電力を推定する推定部と、
前記推定部により推定されたPAPRまたは最大電力が最小となる前記送信アンテナの組み合せを決定し、決定した組み合わせの前記M個の前記送信アンテナを選択する選択部と
を有することを特徴とする送信アンテナ選択装置。
【請求項2】
請求項1に記載の送信アンテナ選択装置において、
前記推定部は、受信側で測定された前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間のチャネルごとのチャネル状態情報に基づいて伝搬路応答を推定し、チャネルごとの前記伝搬路応答から前記M個の前記送信アンテナの組み合わせごとのPAPRまたは最大電力を推定する
ことを特徴とする送信アンテナ選択装置。
【請求項3】
請求項2に記載の送信アンテナ選択装置において、
前記推定部は、通信開始時および前記チャネル状態情報の変動時のうち少なくとも通信開始時に、前記M個の前記送信アンテナの組み合わせごとのPAPRまたは最大電力を推定する
ことを特徴とする送信アンテナ選択装置。
【請求項4】
複数のアンテナによりMIMO伝送を行う送信側で使用する送信アンテナの組み合わせを選択する送信アンテナ選択方法であって、
前記送信アンテナの数は、受信側が備えるM個(M≧2)の受信アンテナより多いN個(N>M)であり、
N個の前記送信アンテナからM個の前記送信アンテナを選択する場合のすべての組み合わせを抽出して各組み合わせのPAPRまたは最大電力を推定する推定処理と、
前記推定処理により推定されたPAPRまたは最大電力が最小となる前記送信アンテナの組み合せを決定し、決定した組み合わせの前記M個の前記送信アンテナを選択する選択処理と
を行うことを特徴とする送信アンテナ選択方法。
【請求項5】
請求項4に記載の送信アンテナ選択方法において、
前記推定処理では、受信側で測定された前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間のチャネルごとのチャネル状態情報に基づいて伝搬路応答を推定し、チャネルごとの前記伝搬路応答から前記M個の前記送信アンテナの組み合わせごとのPAPRまたは最大電力を推定する
ことを特徴とする送信アンテナ選択方法。
【請求項6】
請求項5に記載の送信アンテナ選択方法において、
前記推定処理では、通信開始時および前記チャネル状態情報の変動時のうち少なくとも通信開始時に、前記M個の前記送信アンテナの組み合わせごとのPAPRまたは最大電力を推定する
ことを特徴とする送信アンテナ選択方法。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の送信アンテナ選択装置で行う処理をコンピュータで実行することを特徴とする送信アンテナ選択プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SC-MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)伝送を行う無線通信システムにおいて、低PAPR(Peak-to-Average Power Ratio)となる送信アンテナの組み合わせを選択する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける大容量化の技術として複数のアンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO伝送は、セルラ通信システムや無線LANシステムなどをはじめとして様々な無線通信システムに採用されている。
【0003】
従来、周波数選択性フェージングがある通信環境下で広帯域SC-MIMO(Single Carrier)伝送を行う場合、FIR(Finite Impulse Response)型送信ビーム形成が行われている(例えば、非特許文献1参照)。FIR型送信ビーム形成では、チャネル推定により得られたCIR(Channel Impulse Response)を表す伝達関数行列H(z)の逆行列を送信ウェイトとして使用する。そして、逆行列の各要素をFIRフィルタの係数として送信ビーム形成が行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】栗山圭太,福園隼人,吉岡正文,立田努,“広帯域シングルキャリアMIMO伝送のためのFIR型送信ビーム形成”信学技報,Jan.2019.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、SC-MIMO伝送におけるFIRフィルタによるプレコーディングは、過去および現在の複数の信号に係数を乗じた値の和であるため、一般的にPAPRが大きくなるという問題がある。PAPRが大きくなると、より多くの電力を使用し、サイズが大きく費用も高いアンプが必要になる。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、SC-MIMO伝送において、送信アンテナを必要数以上に準備し、PAPRまたは最大電力が最小になる送信アンテナの組み合わせを選択して使用することにより、PAPRを低減し、低電力、小型、および安価な無線通信システムを実現できる送信アンテナ選択装置、送信アンテナ選択方法、及び送信アンテナ選択プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数のアンテナによりMIMO伝送を行う送信側で使用する送信アンテナの組み合わせを選択する送信アンテナ選択装置において、前記送信アンテナの数は、受信側が備えるM個(M≧2)の受信アンテナより多いN個(N>M)であり、N個の前記送信アンテナからM個の前記送信アンテナを選択する場合のすべての組み合わせを抽出して各組み合わせのPAPRまたは最大電力を推定する推定部と、前記推定部により推定されたPAPRまたは最大電力が最小となる前記送信アンテナの組み合せを決定し、決定した組み合わせの前記M個の前記送信アンテナを選択する選択部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、複数のアンテナによりMIMO伝送を行う送信側で使用する送信アンテナの組み合わせを選択する送信アンテナ選択方法であって、前記送信アンテナの数は、受信側が備えるM個(M≧2)の受信アンテナより多いN個(N>M)であり、N個の前記送信アンテナからM個の前記送信アンテナを選択する場合のすべての組み合わせを抽出して各組み合わせのPAPRまたは最大電力を推定する推定処理と、前記推定処理により推定されたPAPRまたは最大電力が最小となる前記送信アンテナの組み合せを決定し、決定した組み合わせの前記M個の前記送信アンテナを選択する選択処理とを行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の送信アンテナ選択プログラムは、前記送信アンテナ選択装置で行う処理をコンピュータで実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る送信アンテナ選択装置、送信アンテナ選択方法、及び送信アンテナ選択プログラムは、SC-MIMO伝送において、送信アンテナを必要数以上に準備し、PAPRまたは最大電力が最小になる送信アンテナの組み合わせを選択して使用することにより、PAPRを低減し、低電力、小型、および安価な無線通信システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】送信アンテナ選択方法の処理手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る送信アンテナ選択装置、送信アンテナ選択方法、及び送信アンテナ選択プログラムの実施形態について説明する。
【0013】
図1は、送信装置101の一例を示す。
図1において、送信装置101は、複数(N個)の送信アンテナ(アンテナAt(1)からAt(N))を有する。ここで、Nは3以上の整数である。なお、アンテナAt(1)からAt(N)に共通する説明は(番号)を省略してアンテナAtと記載する。
【0014】
本実施形態では、送信装置101は、N個のアンテナAtから、PAPRが最小となるM個のアンテナAtを選択して、受信装置102(1)から受信装置102(M)との間でSC-MIMO伝送による無線通信を行う。ここで、Mは、M<Nの2以上の整数である。なお、受信装置102(1)から受信装置102(M)に共通する説明は(番号)を省略して受信装置102と記載する。M個の受信アンテナ(アンテナAr(1)からアンテナAr(M))についても同様である。
【0015】
ここで、SC-MIMO伝送では、送受信装置が伝送したい空間上のストリーム数以上のアンテナを備えることで、複数の空間上のストリームが混在した状態で受信される信号に対して、適切なMIMO復調処理を行って所望のストリームを受信できることが知られている。本実施形態では、送信装置101は、N個のアンテナAtから選択したM個のアンテナAtを使用して、M個のストリーム信号をM個の受信装置102(1個のアンテナArを有する)にそれぞれ送信する場合について説明する。なお、本実施形態では、各受信装置102が1個のアンテナArを有する場合について説明するが、1台の受信装置102が複数のアンテナArを有し、複数のストリームの信号を受信する場合でも同様に本実施形態で説明する技術の適用が可能である。
【0016】
SC-MIMO伝送を行う場合、ストリーム間干渉を除去するために、送信装置101側において、時間領域の線形等化器を構成するFIR型の送信ビーム形成処理が行われる。送信ビーム形成処理では、CSI(Channel State Information)から推定されたCIR(Channel Impulse Response)の伝達関数行列H(z)に基づいて生成された送信ウェイトW(z)が用いられる。送信ビーム形成処理により、受信装置102は、ストリーム間干渉が除去された信号を受信して、符号間干渉を除去するための等化処理を行って受信データを復調することができる。なお、送信ウェイトW(z)の算出方法については後述する。
【0017】
以下、
図1に示す送信装置101の構成について説明する。
図1において、送信装置101は、信号送信部201、ビーム形成部202、アンテナ切替部203、信号受信部204、送信ウェイト算出部205、送信アンテナ選択部206、および制御部207を有する。ここで、送信アンテナ選択部206は、送信装置101に含まれるものとして説明するが、送信装置101とは別に送信アンテナ選択装置206として設けてもよい。さらに、送信ウェイト算出部205を含めて送信アンテナ選択装置206としてもよい。
【0018】
図1において、信号送信部201は、M個の受信装置102のそれぞれに対応するM個のストリームの送信データをそれぞれ変調してビーム形成部202に出力する。なお、信号送信部201は、受信装置102がチャネル状態情報(CSI)を測定するための既知信号(トレーニング信号、パイロット信号など)を各アンテナAtから順番に送信する。これにより、各受信装置102は、送信装置101の各アンテナAtとの間のCSIを測定することができる。
【0019】
ビーム形成部202は、送信ウェイト算出部205が算出した送信ウェイトW(z)を用いてストリーム間干渉を除去するための送信ビーム形成処理を行う。
【0020】
アンテナ切替部203は、アンテナAtを介して信号の送信または受信を行うための高周波回路、送信アンテナ選択部206から出力される選択信号に基づいてN個のアンテナAtから送信に使用するM個のアンテナを選択するためのスイッチ回路などを有する。
【0021】
信号受信部204は、アンテナAtで受信したM個の受信装置102のそれぞれに対応するM個のストリームの信号を復調してM個の受信データを出力する。また、信号受信部204は、アンテナAtとアンテナArとの間の伝達関数行列H(z)を推定するための情報を受信装置102から受信する。本実施形態では、信号受信部204は、受信装置102が測定したCSIを受信して、送信ウェイト算出部205に出力する。CSIは、例えばアンテナAt(1)から送信された既知信号がアンテナAr(1)で受信されたときの受信電力、振幅、位相などの情報であり、既知信号とのずれにより、伝搬路応答CIRの推定が可能である。
【0022】
送信ウェイト算出部205は、H(z)推定部211およびW(z)推定部212を有する。H(z)推定部211は、CSIに基づいて送信装置101のアンテナAtと各受信装置102のアンテナArとの間のCIRを推定する(H(z)の推定処理)。ここで、CIRは伝達関数行列H(z)で表される。具体的には、H(z)は、受信装置102が測定した送信側のN個のアンテナAtと、受信側のM個のアンテナArとのそれぞれのアンテナ間のCSIに基づいて推定される。W(z)推定部212は、送信に使用するM個のアンテナAtの組み合わせごとに、ストリーム間干渉を除去するための送信ウェイトW(z)をH(z)から推定する(W(z)の推定処理)。そして、推定された送信ウェイトW(z)は、ビーム形成部202に出力されるとともに、送信アンテナ選択部206にも出力される。
【0023】
送信アンテナ選択部206は、PAPR推定部213およびアンテナ決定部214を有する。PAPR推定部213は、送信に使用するアンテナAtの組み合わせごとに推定されたそれぞれのW(z)から、W(z)を表す行列で取り得るピーク電力と平均電力とを推定し、PAPRを推定する(PAPRの推定処理)。ここで、ピーク電力と平均電力とを推定するための送信電力は、例えば、送信データの取り得る値の全ての組み合わせの各々について算出し、平均電力は全ての組み合わせの各々で算出された送信電力の平均値、ピーク電力は全ての組み合わせの各々で算出された送信電力の最大値とすればよい。アンテナ決定部214は、PAPR推定部213から得られた結果に基づいて使用するアンテナAtの組み合わせを決定し、決定したアンテナの組み合わせを選択するための選択信号をアンテナ切替部203に出力する(送信アンテナの選択処理)。本実施形態では、アンテナ決定部214は、PAPRが最小となる(PAPRが最も抑制される)アンテナAtの組み合わせを選択する。なお、アンテナAtの組み合わせを具体的に選択する方法については後述する。ここで、PAPRの代わりにピーク電力(最大電力)を用いてもよい。この場合、PAPR推定部213は、最大電力のみを推定すればよい。そして、アンテナ決定部214は、最大電力が最小となるアンテナAtの組み合わせを選択する。以降の説明においても、PAPRを最大電力に置き換えて適用することができる。
【0024】
制御部207は、送信装置101の全体の動作を制御する。例えば、制御部207は、送信装置101の各ブロック間の信号の受け渡しなどの処理を制御する。また、制御部207は、通信開始時や通信中に信号送信部201から既知信号を送信させ、受信装置102から送信されるCSIを信号受信部204で受信する処理を制御する。本実施形態では、制御部207は、PAPRを推定する頻度を制御する。また、PAPRの推定は、通信開始時に行うものとするが、例えば、CSIの変動時(伝達関数行列H(z)の変動時)に実施されてもよい。ここで、CSIの変動時は、言い換えると、PAPRが変動した時に対応し、適宜、PAPRが最小となるようにアンテナAtの組み合わせを更新することができる。このように、PAPR推定部213は、通信開始時およびCSIの変動時のうち少なくとも通信開始時にPAPRの推定を行い、必要であればCSIの変動時にもM個の送信アンテナの組み合わせごとのPAPRを推定し、アンテナAtの組み合わせを更新する。
【0025】
このように、本実施形態に係る送信装置101は、受信装置102が測定したCSIに基づいてCIRおよび送信ウェイトを推定し、送信ウェイトからアンテナAtの組み合わせごとのPAPRを推定することにより、PAPRが最小となるアンテナAtの組み合わせを選択し、ストリーム間干渉を除去した信号を受信装置102に送信することができる。
図1の例では、x
1,x
2,・・・,x
MのM個の送信データに対応するM個のストリーム信号は、ビーム形成部202でストリーム間干渉が除去され、N個のアンテナAtのうちPAPRが最小となる組み合わせのM個のアンテナAtによりそれぞれ送信される。
【0026】
図2は、受信装置102の構成例を示す。
図2では、送信装置101で送信に使用されるM個のアンテナAtにそれぞれ対応するM台の受信装置102(1)から受信装置102(M)の例が示されている。なお、各受信装置102を構成する複数の同じブロック(RF部301(1)からRF部301(M)、等化部302(1)から302(M)、および送受信処理部303(1)から303(M))のそれぞれに共通する説明は、符号末尾の(番号)を省略して、RF部301、等化部302、および送受信処理部303と記載する。
【0027】
図2において、M台の受信装置102は、アンテナAr、RF部301、等化部302、および送受信処理部303を有する。
【0028】
アンテナArは、送信装置101のアンテナAtとの間で電波を送受信する。
【0029】
RF部301は、受信時において、アンテナArで受信された高周波信号をベースバンド信号に変換して等化部302を介して送受信処理部303に出力し、送信時において、送受信処理部303が出力するベースバンド信号を高周波信号に変換してアンテナArから送信する。
【0030】
等化部302は、送信装置101側のビーム形成処理によりストリーム間干渉が除去された受信信号から符号間干渉を除去するための等化処理を行う。等化部302が等化処理で用いる受信ウェイトは、送信ウェイトと同様に、送信装置101から送信される既知信号により測定されたCSIにより取得した伝達関数行列H(z)に基づいて算出される。なお、受信ウェイトについては後述する。
【0031】
送受信処理部303は、等化部302により符号間干渉が除去された自装置宛のストリームのベースバンド信号を受信データに復調して出力する。また、送受信処理部303は、送信データをベースバンド信号に変調してRF部301に出力し、RF部301およびアンテナArから送信装置101に送信する。さらに、本実施形態では、送受信処理部303は、送信装置101が送信する既知信号に基づいてCSIを測定し、測定したCSIを送信装置101に送信する。
【0032】
このように、受信装置102は、送信装置101との間でMIMO伝送による無線通信を行うとともに、送信装置101が送信する既知信号に基づいてCSIを測定し、送信装置101に送信する。
【0033】
ここで、送信装置101は、
図1に示したx
1,x
2,・・・,x
MのM個の送信データに対応するM個のストリーム信号のストリーム間干渉をビーム形成部202で除去して送信し、M台の受信装置102は、自装置宛のストリーム信号のマルチパスなどによる符号間干渉を等化部302により除去し、y
1,y
2,・・・,y
MのM個の受信データをそれぞれ復調する。本実施形態では、送信装置101は、M台の受信装置102のM個のアンテナArよりも多いN個のアンテナAtを有し、N個のアンテナAtからPAPRが最小となるM個のアンテナAtを選択して、M個のストリーム信号を送信する。
【0034】
図3は、送信アンテナの選択方法の一例を示す。
図3において、
図1と同符号のブロックは
図1と同様に動作する。また、
図3の例では、受信装置102が2台の例を示し、各受信装置102に対応する送信データx
1,x
2の2個のストリーム信号が、3個のアンテナAtから選択されたPAPRが最小となる2個のアンテナAtにより、それぞれ送信される。ここで、アンテナAtから送信される信号のストリーム間干渉はビーム形成部202で除去されるので、受信装置102(1)は、送信データx
1に対応するストリーム信号を受信し、符号間干渉を除去する等化処理を行って受信データy
1を復調する。同様に、受信装置102(2)は、送信データx
2に対応するストリーム信号を受信し、符号間干渉を除去する等化処理を行って受信データy
2を復調する。
【0035】
図3において、アンテナ切替部203は、SW部231およびRF部232を有する。
【0036】
SW部231は、ビーム形成部202により送信ビーム形成処理されたx1,x2に対応する2つの信号を入力する。そして、SW部231は、送信アンテナ選択部206から入力する選択信号に基づいて、アンテナAt(1)からアンテナAt(3)の3個のアンテナAtから2個のアンテナAtを選択し、ビーム形成部202から入力する2つの信号を選択したアンテナAtに対応するRF部232にそれぞれ出力する。例えば、SW部231は、ビーム形成部202が出力するビーム形成後のx1に対応する信号をRF部232(1)、RF部232(2)、またはRF部232(3)に出力するための切り替えスイッチaと、ビーム形成後のx2に対応する信号をRF部232(1)、RF部232(2)、またはRF部232(3)に出力するための切り替えスイッチbとを有し、切り替えスイッチaと切り替えスイッチbとは排他的に制御される。つまり、切り替えスイッチaと切り替えスイッチbの出力先が同じRF部232になることはない。
【0037】
RF部232は、SW部231から出力される各ストリームのベースバンド信号を高周波信号に変換してアンテナAtから送信する。なお、受信時は、逆に動作するものとする。
【0038】
このようにして、送信アンテナ選択部206が決定したPAPRが最小となるアンテナAtの組み合わせを選択して通信を行うことができる。なお、
図3の例では、ベースバンド信号で切り替えを行うので、SW部231の構成が容易になる。
【0039】
図4は、送信アンテナの選択方法の他の例を示す。
図3と異なる部分はアンテナ切替部203aのみであり、アンテナ切替部203aは、
図3で説明したアンテナ切替部203のSW部231とRF部232の配置が異なる。
図3に示すアンテナ切替部203は、ベースバンド信号の出力先をSW部231で切り替えることにより、送信するアンテナAtの組み合わせを選択する。これに対して、
図4に示すアンテナ切替部203aは、RF部232a(1)およびRF部232a(2)の高周波信号の出力先をSW部231aで切り替えることにより、使用するアンテナAtの組み合わせを選択する。例えば、SW部231aは、RF部232a(1)が出力する信号をアンテナAt(1)、アンテナAt(2)、またはアンテナAt(3)に出力するための切り替えスイッチaと、RF部232a(2)が出力する信号をアンテナAt(1)、アンテナAt(2)、またはアンテナAt(3)に出力するための切り替えスイッチbとを有し、切り替えスイッチaと切り替えスイッチbとは排他的に制御される。つまり、切り替えスイッチaと切り替えスイッチbの出力先が同じアンテナAtになることはない。
【0040】
このように、
図4に示すアンテナ切替部203aは、送信アンテナ選択部206が決定したPAPRが最小となるアンテナAtの組み合わせを選択して通信を行うことができる。
【0041】
(送信アンテナの組み合わせについて)
次に、送信装置101が使用するアンテナAtの組み合わせを選択する例について説明する。
【0042】
ここで、本実施形態では、受信装置102が備えるM個(M≧2)のアンテナArより多いN個(N>M)のアンテナAtを送信装置101が有する。そして、送信装置101は、N個のアンテナからPAPRが最小となるM個のアンテナAtを選択して使用する。
【0043】
例えば
図3の場合、アンテナAt(1)、アンテナAt(2)、およびアンテナAt(3)の3個のアンテナAtから2個のアンテナAtが選択される。この場合、選択される2個のアンテナAtのすべての組み合わせは、アンテナAt(1)とアンテナAt(2)、アンテナAt(2)とアンテナAt(3)、アンテナAt(3)とアンテナAt(1)の3組である。
【0044】
例えば、アンテナAt(1)とアンテナAt(2)が選択された場合、信号x1’がアンテナAt(1)から送信され、信号x2’がアンテナAt(2)から送信される。この場合、アンテナAt(3)は選択されないので、信号x3’は0である。同様に、アンテナAt(2)とアンテナAt(3)が選択された場合、信号x2’がアンテナAt(2)から送信され、信号x3’がアンテナAt(3)から送信され、選択されないアンテナAt(1)の信号x1’は0である。アンテナAt(3)とアンテナAt(1)が選択された場合も同様に、信号x3’がアンテナAt(3)から送信され、信号x1’がアンテナAt(1)から送信され、選択されないアンテナAt(2)の信号x2’は0である。
【0045】
このようにして、本実施形態では、3個のアンテナAtから2個のアンテナAtを選択して、MIMO伝送が行われる。特に、本実施形態では、選択されるアンテナAtの組み合わせは、すべての組み合わせの中でPAPRが最小となる組み合わせのアンテナAtが選択される。
【0046】
ここで、ZF(Zero Forcing)法において、送信装置101のアンテナAtと受信装置102のアンテナArとの間の伝搬路応答CIRをH(z)で表すと、その逆行列H(z)-1の一部分を送信ウェイトとして事前に乗ずることで、ストリーム間干渉(アンテナ間干渉とも呼ばれる)の除去された信号の受信が可能になる。なお、逆行列H(z)-1の残りの部分は、各ストリーム信号の符号間干渉成分に対応し、受信ウェイトとして受信装置102での等化処理に使用される。なお、H(z)は一意に定まるため、H(z)-1も一意に定まる。
【0047】
次に、伝達関数行列H(z)の推定方法、送信ウェイトW(z)の推定方法、およびPAPRの推定方法について、数式を用いて説明する。
【0048】
伝達関数行列H(z)の逆行列H(z)-1は、式(1)で表される。
【0049】
【0050】
式(1)において、det(・)、adj(・)はそれぞれ行列式、転置余因子行列を表す。ここで、転置余因子行列は、随伴行列(adjugate matrix)とも呼ばれる。なお、adjはエルミート転置を表す随伴行列(adjoint matrix)とは異なる。
【0051】
転置余因子行列adj(H(z))を送信ビーム形成の送信ウェイトW(z)に用いることで、伝達関数行列H(z)が対角化され、ストリーム間干渉が除去される。そして、各対角要素は行列式det(H(z))と等しくなり、ストリーム間干渉が除去された後の各ストリームの符号間干渉に対応する。つまり、受信装置102は、1/det(H(z))を等化部302の受信ウェイトとして用いることにより、ストリームごとの符号間干渉が除去される。ここで、送信ウェイトW(z)は式(2)、受信ウェイトWR(z)は式(3)でそれぞれ表される。
【0052】
【0053】
【0054】
ここで、周知技術として、送信側のアンテナの数および受信側のアンテナの数がそれぞれ2個の2×2MIMOの場合について説明する。なお、MIMO伝送の最小構成は、2×2MIMO(送信側のアンテナの数および受信側のアンテナの数がそれぞれ2個)である。
【0055】
2×2MIMOの場合、伝達関数行列H(z)は式(4)で表される。
【0056】
【0057】
式(4)において、h11はアンテナAt(1)とアンテナAr(1)との間のチャネルのCIR、h12はアンテナAt(2)とアンテナAr(1)との間のチャネルのCIRをそれぞれ示す。同様に、h21はアンテナAt(1)とアンテナAr(2)との間のチャネルのCIR、h22はアンテナAt(2)とアンテナAr(2)との間のチャネルのCIRをそれぞれ示す。なお、チャネルごとのCIRは、アンテナAtとアンテナArとの間のチャネルごとのCSIに基づいて推定される。
【0058】
ここで、送信側のアンテナAt(1)から送信される信号をx1’、アンテナAt(2)から送信される信号をx2’とし、受信側のアンテナAr(1)で受信される信号をy1’、アンテナAr(2)で受信される信号をy2’とすると、式(4)の伝達関数行列H(z)を用いて、式(5)で表すことができる。
【0059】
【0060】
一方、本実施形態では、
図3に示すように、送信側のアンテナAtは3個、受信側のアンテナArは2個であり、この場合の伝達関数行列H(z)は、式(6)で表される。
【0061】
【0062】
式(6)において、h11はアンテナAt(1)とアンテナAr(1)との間のチャネルのCIR、h12はアンテナAt(2)とアンテナAr(1)との間のチャネルのCIR、h13はアンテナAt(3)とアンテナAr(1)との間のチャネルのCIRをそれぞれ示す。同様に、h21はアンテナAt(1)とアンテナAr(2)との間のチャネルのCIR、h22はアンテナAt(2)とアンテナAr(2)との間のチャネルのCIR、h23はアンテナAt(3)とアンテナAr(2)との間のチャネルのCIRをそれぞれ示す。なお、チャネルごとのCIRは、アンテナAtとアンテナArとの間のチャネルごとのCSIに基づいて推定される。
【0063】
ここで、送信側のアンテナAt(1)から送信される信号をx1’、アンテナAt(2)から送信される信号をx2’、アンテナAt(3)から送信される信号をx3’とし、受信側のアンテナAr(1)で受信される信号をy1’、アンテナAr(2)で受信される信号をy2’とすると、式(6)の伝達関数行列H(z)を用いて、式(7)で表すことができる。
【0064】
【0065】
式(7)において、本実施形態では、送信側の3個のアンテナAtのうち、実際に使用するのはPAPRが最小となる2個のアンテナAtである。例えば、アンテナAt(2)とアンテナAt(3)を使用し、アンテナAt(1)を使用しない場合、信号x1’が送信されないので、x1’=0となり、伝達関数h11およびh21は、どのような特性であっても、受信信号y1’およびy2’に影響を与えない。この場合、式(7)は、式(8)で表される。
【0066】
【0067】
ここで、x1’=0のときの伝達関数行列H(z)をH(z)xn’=0と表記する。nは、x1’、x2’、x3’のアンテナAtの番号1,2,3にそれぞれ対応し、送信側のアンテナAtがN個ある場合、nは1からNまでの整数となる。つまり、H(z)xn’=0は、アンテナAt(n)から送信される信号が0であり、アンテナAt(n)が使用されないことを示す。例えば、x1’=0のときの伝達関数行列H(z)x1’=0は、式(9)で表される。
【0068】
【0069】
このとき、式(8)は、式(9)を用いて式(10)で表される。
【0070】
【0071】
ここで、3個のアンテナAtと2個のアンテナArのそれぞれのアンテナ間のCIRは、トレーニング信号やパイロット信号などの既知信号を送信して受信装置102側で測定されるCSIに基づいて推定される。
【0072】
上述の場合、先述の式(1)に対応する伝達関数行列H(z)の逆行列H(z)-1は、使用しないアンテナAtを示すxn’=0を用いて、式(11)で表される。
【0073】
【0074】
このとき、送信ウェイトW(z)は式(12)、受信ウェイトWR(z)は式(13)でそれぞれ表される。
【0075】
【0076】
【0077】
このようにして、本実施形態では、送信ウェイトW(z)および受信ウェイトWR(z)が推定される。ここで、送信ウェイトW(z)の推定は、W(z)推定部212により行われる。なお、受信ウェイトWR(z)の推定は、送信装置101側で行って受信装置102側に送信してもよいし、受信装置102側で行ってもよい。本実施形態では、受信ウェイトWR(z)についての説明は省略する。
【0078】
(PAPRの推定について)
次に、PAPRの推定方法について説明する。なお、以降で説明する処理は、PAPR推定部213により実行される。PAPR推定部213は、N個のアンテナAtからM個のアンテナAtを選択する全ての組み合わせについて、それぞれのPAPRを推定する。
【0079】
図3の例では、PAPR推定部213は、3個のアンテナAtから2個のアンテナAtを選択する全ての組み合わせについて、それぞれのPAPRを推定する。この場合、nは1から3なので、x
1’=0、x
2’=0、x
3’=0のそれぞれについてPAPRの推定が行われる。
【0080】
例えばn=1の場合、x1’=0(例えばアンテナAt(1)に接続するスイッチを切る)となり、先に説明した式(9)に示す伝達関数行列H(z)が推定される。
【0081】
そして、W(z)推定部212は、伝達関数行列H(z)に基づいて、式(12)に示す送信ウェイトW(z)を推定する。
【0082】
例えばx1’=0の場合、送信ウェイトW(z)は、式(14)で示されるように、各アンテナ間のストリームごとのadj(H(z))を要素とする。この場合、各要素は、w12=adj(H(z))12、w13=adj(H(z))13、w22=adj(H(z))22、w23=adj(H(z))23)となる。
【0083】
【0084】
次に、PAPR推定部213は、送信ウェイトW(z)の行列で取り得るピーク電力と平均電力を算出して、PAPRを推定する。
【0085】
ここで、x1’=0の場合、アンテナAt(2)およびアンテナAt(3)から送信される信号x2’およびx3’は、式(15)で表される。
【0086】
【0087】
上式において、x2’およびx3’は、式(16)および式(17)で表される。
【0088】
【0089】
【0090】
このとき、x2’のピーク電力(x2’)PKは、例えば過去の値を含むx1とx2の組み合わせの中でx2’の最大値に対応する電力である。
【0091】
また、x2’の平均電力(x2’)AVEは、例えば過去の値を含むx1とx2の取り得る値のすべての組み合わせで算出される平均値に対応する電力である。
【0092】
そして、x1’=0の場合のx2’およびx3’のPAPRは次式で推定できる。
PAPRx2’(x1’=0)=(x2’)PK/(x2’)AVE
PAPRx3’(x1’=0)=(x3’)PK/(x3’)AVE
【0093】
このようにして、x1’=0の場合のアンテナAtごとのPAPRを推定することができる。
【0094】
同様に、x2’=0の場合のx1’およびx3’のPAPRは次式で推定できる。
PAPRx1’(x2’=0)=(x1’)PK/(x1’)AVE
PAPRx3’(x2’=0)=(x3’)PK/(x3’)AVE
【0095】
同様に、x3’=0の場合のx1’およびx2’のPAPRは次式で推定できる。
PAPRx1’(x3’=0)=(x1’)PK/(x1’)AVE
PAPRx2’(x3’=0)=(x2’)PK/(x2’)AVE
【0096】
次に、上述の結果からx1’=0とx2’=0とx3’=0の3つのアンテナAtの組み合わせのうちPAPRが最小となる組み合わせを選択する。
【0097】
ここで、説明が分かり易いように、上述の結果を下記のように整理する。
・x1’=0の場合に推定されるPAPR
(a)PAPRx2’(x1’=0)
(b)PAPRx3’(x1’=0)
・x2’=0の場合に推定されるPAPR
(c)PAPRx1’(x2’=0)
(d)PAPRx3’(x2’=0)
・x3’=0の場合に推定されるPAPR
(e)PAPRx1’(x3’=0)
(f)PAPRx2’(x3’=0)
【0098】
上記の(a)から(f)までの各PAPRの大小関係が例えば、(a)<(b)<(c)<(d)<(e)<(f)である場合、アンテナAtの組み合わせごとの個々のアンテナAtのPAPRが最も抑えられる組み合わせとして、PAPRが小さい方の(a)と(b)に対応するx1’=0の組み合わせが選択される。
【0099】
また、PAPRの大小関係を容易に判別できない場合の例として、例えば、(a)<(c)<(e)<(d)<(f)<(b)である場合、大きいPAPRを含む組み合わせを排除する処理、または、小さいPAPRから順番に選んでいく処理、を行いつつ、アンテナAtの組み合わせごとの個々のアンテナAtのPAPRが最も抑えられる組み合わせを選択する。上記の場合、PAPRの大きい方から見ると、大きいPAPRを持つ(b)と(f)を排除して、(b)と(f)を含まないx2’=0のアンテナAtの組み合わせが選択される。また、PAPRの小さい方から見た場合でも、小さい方から順に(a)、(c)、(e)までは未だ組み合わせが決まらないが、次の(d)まで来た段階で、(c)と(d)の両方を含むx2’=0のアンテナAtの組み合わせが選択される。
【0100】
このようにして、3つのアンテナAtの組み合わせのうちPAPRが最小となる組み合わせを選択することができる。ここで、PAPRが最小となる組み合わせとは、上述の通り、アンテナAtの組み合わせごとの個々のアンテナAtのPAPRが最も抑えられる組み合わせに相当する。
【0101】
なお、上述の処理は、送信アンテナ選択部206のPAPR推定部213およびアンテナ決定部214により行われる。ここで、先に述べたように、PAPRの代わりにピーク電力(最大電力)を用いてもよい。この場合、最大電力が最小となるアンテナAtの組み合わせが選択される。最大電力を用いた場合でも、上述の例の(a)から(f)の大小関係は同じになり、PAPRで行う場合と同じ結果が得られる。
【0102】
図5は、送信アンテナ選択方法の処理手順の一例を示す。なお、
図5の処理は、
図1で説明した各ブロックにより実行される。ここで、本実施形態では、送信装置101は、受信装置102のM個のアンテナArの数よりも多いN個のアンテナAtを有し、N個のアンテナAtからM個(M<N)のアンテナAtを選択する。
【0103】
ステップS101において、送信装置101の制御部207は、通信開始時または通信中に既知信号を送信し、受信装置102は、既知信号に基づいてCSIを測定し、測定結果を送信装置101に送信する。
【0104】
ステップS102において、送信装置101のH(z)推定部211は、受信装置102から受け取るCSIに基づいて、アンテナAtとアンテナArとの間のCIRを示す伝達関数行列H(z)を推定する。
【0105】
ステップS103において、送信装置101のW(z)推定部212は、伝達関数行列H(z)に基づいて、送信ウェイトW(z)を推定する。
【0106】
ステップS104において、送信装置101のPAPR推定部213は、送信ウェイトW(z)に基づいて、N個のアンテナAtからストリーム数に対応するM個のアンテナAtのすべての組み合わせごとのPAPRを推定する。
【0107】
ステップS105において、送信装置101のアンテナ決定部214は、アンテナAtのすべての組み合わせの中で、PAPRが最も抑制されるアンテナAtの組み合わせを選択する。
【0108】
このようにして、本実施形態に係る送信アンテナ選択方法では、送信装置101は、受信装置102のM個のアンテナArの数よりも多いN個のアンテナAtを有し、N個のアンテナAtからM個(M<N)のアンテナAtを選択する場合のすべての組み合わせを抽出して各組み合わせのPAPRを推定し、推定されたPAPRが最小となるアンテナAtの組み合せを選択することができる。なお、
図5の処理においても、PAPRの代わりに最大電力を用いてもよい。
【0109】
以上、実施形態で説明したように、本実施形態に係る送信装置101は、受信アンテナの数より多く、実際に使用する数(必要数)以上の送信アンテナを搭載することを前提としている。そして、搭載する送信アンテナから使用する送信アンテナを選択するときのすべての組み合わせの中からPAPRまたは最大電力が最小となる送信アンテナの組み合わせを選択することにより、PAPRを低減し、低電力、小型、および安価な無線通信システムの実現が可能になる。
【0110】
なお、前述した実施形態において、送信ウェイト算出部205および送信アンテナ選択部206が受信装置102から受信するCSIに基づいて使用すべきアンテナAtを選択する処理、または、送信装置101全体の処理は、専用装置による実現に限らず、入出力インターフェース、演算処理装置、およびメモリなどを有する汎用コンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、上述の処理を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、コンピュータシステムが該プログラムを実行する。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであってもよい。
【0111】
また、上記実施の形態は本発明の例示に過ぎず、本発明が上記実施の形態に限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の技術思想及び範囲を逸脱しない範囲で構成要素の追加、省略、置換、その他の変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0112】
101・・・送信装置;102・・・受信装置;201・・・信号送信部;202・・・ビーム形成部;203,203a・・・アンテナ切替部;204・・・信号受信部;205・・・送信ウェイト算出部;206・・・送信アンテナ選択部;207・・・制御部;211・・・H(z)推定部;212・・・W(z)推定部;213・・・PAPR推定部;214・・・アンテナ決定部;231,231a・・・SW部;232,232a・・・RF部;302・・・等化部;303・・・送受信処理部;At・・・アンテナ;Ar・・・アンテナ