(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】凝集沈殿装置、その制御方法及び沈殿槽
(51)【国際特許分類】
B01D 21/24 20060101AFI20240308BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240308BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20240308BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20240308BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20240308BHJP
B01F 27/90 20220101ALI20240308BHJP
B01F 35/75 20220101ALI20240308BHJP
B03B 5/28 20060101ALI20240308BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240308BHJP
【FI】
B01D21/24 R
B01D21/24 G
B01D21/01 H
B01D21/02 E
B01D21/08 F
B01D21/30 E
B01F27/90
B01F35/75
B03B5/28 B
C02F1/52 Z
(21)【出願番号】P 2018151717
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-03-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】増山 淳子
【審判官】松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-16092(JP,B1)
【文献】特開2014-237122(JP,A)
【文献】実開昭63-32604(JP,U)
【文献】特開昭58-74107(JP,A)
【文献】特公昭57-51325(JP,B1)
【文献】特開昭53-42441(JP,A)
【文献】特開2003-205206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 21/00-21/34
B01F 27/90,35/75
B03B 5/28
C02F 1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、
該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、
該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽であって、下方ほど縮径するテーパ形の底面を有し、該底面に沿って旋回するレーキ(14)を有し、該レーキ(14)の回転軸(14a)は該沈殿槽の軸心部に鉛直に設置されており、該回転軸を回転駆動するための駆動手段(M)が設けられている沈殿槽と、
該沈殿槽の底部に設けられたピットと、
該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプと、
該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置において、
該回転軸(14a)の下部は、該ピット内に配置されており、
該ピット内のスラリーを撹拌するピット撹拌手段が設けられており、
該ピット撹拌手段は、一端が該回転軸(14a)に固定され、他端が棒形または帯形の長尺部材として下方向に延伸して下端がピット内に位置する撹拌部材を有することを特徴とする凝集沈殿装置。
【請求項2】
前記撹拌部材は、前記回転軸から放射方向に延出したアームと、該アームから下方に延在する撹拌バーであることを特徴とする、請求項1に記載の凝集沈殿装置。
【請求項3】
前記アームは、前記回転軸の周方向に間隔をおいて複数本設けられており、
各アームに、アーム長手方向に間隔をおいて複数本の前記撹拌バーが設置されていることを特徴とする、請求項2に記載の凝集沈殿装置。
【請求項4】
前記撹拌バーは、垂直に交わる第1片及び第2片を備えた、L字形の水平断面形状を有しており、
該第1片が前記放射方向を指向していることを特徴とする、請求項3に記載の凝集沈殿装置。
【請求項5】
前記ピットの側周面は下方ほど小径となっており、
前記撹拌バーとして、下端がピットの底面の上方に位置する第1の撹拌バーと、下端が該側周面の上方に位置する第2の撹拌バーとが設けられており、
該第1の撹拌バーの下端は第2の撹拌バーの下端よりも下位となっていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の凝集沈殿装置。
【請求項6】
前記凝集沈殿装置による凝集沈殿処理運転の停止期間中に間欠的又は連続的に前記第2凝集槽の撹拌手段を作動させる撹拌制御手段を備えたことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の凝集沈殿装置。
【請求項7】
前記第1凝集槽への原水供給を停止し、所定時間が経過した後に前記引抜ポンプを停止する制御部を備えたことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の凝集沈殿装置。
【請求項8】
原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽の底部に設けられたピットと、
該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプを有した引抜ライン(18)と、該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置において、
該第1凝集槽への原水供給を停止した場合に、前記ピット、引抜ライン及びサイクロンから沈降促進材を排出した後に前記引抜ポンプを停止する制御部を備えた
ことを特徴とする凝集沈殿装置。
【請求項9】
原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、
該沈殿槽の底部に設けられたピットと、
該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプと、
該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置において、
該第1凝集槽への原水供給を停止し、所定時間が経過した後に前記引抜ポンプを停止する制御部を備えた凝集沈殿装置であって、
凝集沈殿処理運転の停止期間中に間欠的又は連続的に前記第2凝集槽内を撹拌することを特徴とする凝集沈殿装置。
【請求項10】
原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽の底部に設けられたピットと、
該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプを有した引抜ライン(18)と、該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置を制御する方法において、
該凝集沈殿装置を停止させるときに、該第1凝集槽への原水供給を停止し、その後、前記ピット、引抜ライン及びサイクロンから沈降促進材を排出した後に前記引抜ポンプを停止するよう制御することを特徴とする凝集沈殿装置の制御方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁物質を含む原水に沈降促進材と凝集剤を添加して凝集沈殿させて汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置およびその制御方法に関し、とくに沈殿槽から抜き出したスラリーをサイクロンにより汚泥と沈降促進材とに分離し、沈降促進材を凝集槽に返送するよう構成された凝集沈殿装置およびその制御方法に関する。また、本発明は、この凝集沈殿装置に用いるのに好適な沈殿槽に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁物質(以下、SS[Suspended Solid] と称することもある。)を原水中から凝集沈殿により分離除去する凝集沈殿装置として、原水に粒径10~200μm程度の粒状物(砂など)よりなる沈降促進材と凝集剤とを添加して凝集フロックを形成させる凝集槽と、凝集槽から流出する凝集フロックを沈降分離する沈殿槽と、沈殿槽から引き抜いたスラリーを粒状物と汚泥に分離するサイクロンとを備え、粒状物を凝集槽に返送し、汚泥を排出するよう構成された装置が知られている(特許文献1~3)。
【0003】
特許文献1~3の凝集沈殿装置にあっては、凝集槽に導入された原水に無機凝集剤を添加して攪拌機で攪拌し、次いで高分子凝集剤を添加して凝集槽に導入し、攪拌機で攪拌して粒状物(砂など)とともに凝集フロックを形成させる。この凝集処理水を沈殿槽に導入して沈降分離し、沈殿槽上部から処理水を流出させる。また、沈殿槽の下部から引抜ポンプによりスラリーを抜き出し、サイクロンに送る。サイクロンでは、汚泥と粒状物とを遠心分離し、分離された汚泥が凝集沈殿装置外に排出される。サイクロンで分離された粒状物は凝集槽に返送され、再度沈殿分離に利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-317220号公報
【文献】特開2002-355507号公報
【文献】特開2014-237122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような凝集沈殿装置の配管や沈殿槽のピットにあっては、スラリーが沈降促進材を含むところから、沈殿物等が固化し、閉塞が生じる恐れがある。
【0006】
沈殿槽のピットの閉塞を防止するために、ピット内に回転翼を設けることが考えられる。
【0007】
ピットに回転翼を設けた場合、翼とピット内の沈殿物との接触面積が大きい。そのため、沈殿物が固結した場合や、沈殿物が大量になったりした場合には、翼を駆動できなくなるおそれがある。また、それを防ぐために、トルクの大きい駆動装置を設置することが必要となる。
また、回転翼を用いると、ピット内の凝集フロックがピット内液ごと回転して共回りが発生する可能性がある。この場合、沈殿物の固結の抑制効果が弱くなることが懸念される。
【0008】
本発明は、沈殿槽のピット内における沈殿物を十分にほぐして固結しないよう分散させることができる凝集沈殿装置及び沈殿槽と、凝集沈殿装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の凝集沈殿装置は、原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽の底部に設けられたピットと、該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプと、該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置において、該ピット内のスラリーを撹拌するピット撹拌手段が設けられており、該ピット撹拌手段は、上下方向に延在する回転軸と、該回転軸を回転させる駆動手段と、一端が該回転軸に固定され、他端が棒形または帯形の長尺部材として下方向に延伸して下端がピット内に位置する撹拌部材とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記撹拌部材は、前記回転軸から放射方向に延出したアームと、該アームから下方に延在する撹拌バーである。
【0011】
本発明の一態様では、前記アームは、前記回転軸の周方向に間隔をおいて複数本設けられており、各アームに、アーム長手方向に間隔をおいて複数本の前記撹拌バーが設置されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記撹拌バーは、垂直に交わる第1片及び第2片を備えた、L字形の水平断面形状を有しており、該第1片が前記放射方向を指向している。
【0013】
本発明の一態様では、前記ピットの側周面は下方ほど小径となっており、前記撹拌バーとして、下端がピットの底面の上方に位置する第1の撹拌バーと、下端が該側周面の上方に位置する第2の撹拌バーとが設けられており、該第1の撹拌バーの下端は第2の撹拌バーの下端よりも下位となっている。
【0014】
本発明の一態様では、前記凝集沈殿装置による凝集沈殿処理運転の停止期間中に間欠的又は連続的に前記第2凝集槽の撹拌手段を作動させる撹拌制御手段を備える。
【0015】
本発明の一態様では、前記第1凝集槽への原水供給を停止し、所定時間が経過した後に前記引抜ポンプを停止する制御部を備える。
【0016】
第2発明の凝集沈殿装置の制御方法は、原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽の底部に設けられたピットと、該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプと、該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置において、該第1凝集槽への原水供給を停止し、所定時間が経過した後に前記引抜ポンプを停止する制御部を備えたことを特徴とする。
【0017】
第2発明の一態様では、前記凝集沈殿装置は、凝集沈殿処理運転の停止期間中に間欠的又は連続的に前記第2凝集槽内を撹拌する。
【0018】
第3発明の凝集沈殿装置の制御方法は、原水が導入され、第1凝集剤により凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽から排出された第1凝集処理水が導入され、第2凝集剤と沈降促進材により凝集処理する第2凝集槽と、該第2凝集槽から排出された第2凝集処理水が導入され、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽の底部に設けられたピットと、該ピットからスラリーを抜き出す引抜ポンプと、該ピットから抜き出したスラリーを分離汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を該第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置を制御する方法において、該凝集沈殿装置を停止させるときに、該第1凝集槽への原水供給を停止し、所定時間が経過した後に前記引抜ポンプを停止するよう制御することを特徴とする。
【0019】
第4発明の沈殿槽は、底部にピットを有する沈殿槽において、該ピット内のスラリーを撹拌するピット撹拌手段が設けられており、該ピット撹拌手段は、上下方向に延在する回転軸と、該回転軸を回転させる駆動手段と、一端が該回転軸に固定され、他端が棒形または帯形の長尺部材として下方向に延在して下端がピット内に位置する撹拌部材とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の凝集沈殿装置では、撹拌部材が下方向に延伸する棒形または帯形の長尺部材を含んでおり、ピット内のスラリーを十分に撹拌することができる。このため、凝集沈殿処理効果が悪化したときに、ピット内の閉塞を抑制しつつ、凝集剤や沈降促進材の添加量を多くする運転を行うことが可能となる。
【0021】
本発明の一態様では、凝集沈殿装置を停止させるときに、第1凝集槽への原水供給を停止した後、引抜ポンプを停止させることにより、ピット、引抜ライン、サイクロン内に沈降促進材が残ることが防止ないし抑制される。このため、凝集沈殿処理効果が悪化したときに、ピット、引抜ライン、サイクロン内の閉塞を抑制しつつ、凝集剤や沈降促進材の添加量を多くする運転を行うことが可能となる。
【0022】
本発明の一態様では、凝集沈殿装置の停止期間中に第2凝集槽内を撹拌することにより、第2凝集槽内での沈殿物の固化ないし固着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施の形態に係る凝集沈殿装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る凝集沈殿装置1を示している。この凝集沈殿装置1は、第1凝集槽2と、第2凝集槽3と、それに隣接配置された沈殿槽4を備えている。第1凝集槽2には、原水槽(図示略)から原水ポンプ5を介して原水が導入され、第1凝集剤として無機凝集剤(
図1ではPAC)が第1薬注装置6によって添加されて、攪拌機7によって攪拌される。第1凝集槽2においては、無機凝集剤が懸濁物質を凝集させて微細なフロックが生成する。図示は省略するが、第1凝集槽2には、pH計及びpH調整剤(苛性ソーダ、硫酸、塩酸など)の添加装置とを有するpH調整装置が設けられており、第1凝集槽2内のpHを所定範囲に維持できるよう構成されている。
【0025】
第1凝集槽2からの第1凝集処理水は移流口8を介して第2凝集槽3に導入され、第2凝集剤として高分子凝集剤(ポリマー)が第2薬注装置9によって添加される。第2凝集槽3内には、砂などの沈降促進材が添加されており、攪拌機10による攪拌により、沈降促進材を取り込んだ、比重の大きい凝集フロックが成長する。
撹拌機7,10(撹拌手段)は、それぞれ、回転軸と、その上部の駆動モータMと、下部の撹拌翼とで構成されている。
【0026】
沈降促進材としては、砂のほか、各種スラグの破砕物なども用いることができる。沈降促進材の平均粒径は0.01~0.5mm程度が好ましく、真比重は2以上特に2.5以上で4以下が好ましいが、これに限定されない。
【0027】
成長した凝集フロックを含む第2凝集処理水は、越流堰12を越流して沈殿槽4に導入される。沈殿槽4では、第2凝集処理水中の凝集フロックが沈殿する。沈殿槽4内の上部には、複数の傾斜板13よりなるセパレータが設置されており、凝集フロックの沈殿分離が促進される。セパレータを通り抜けた処理水は、流出室15を経て流出配管16から取り出される。沈殿槽4の底面は沈降促進材の安息角以上に傾斜して下方ほど縮径するテーパ形となっている。
【0028】
沈殿槽4には、底面に沿って旋回するレーキ14が設けられており、沈殿した凝集フロックがピット17に寄せ集められる。レーキ14の下辺部にはゴム製のヘラ(図示略)が設けられている。ピット17には撹拌部材30が設けられている。このピット17は、側周面17aと、底面17bとを有する。側周面17aは、下方ほど縮径するテーパー形となっている。
【0029】
この実施の形態では、沈殿槽4は側周面の水平断面は正方形、底面は下部ほど縮径するテーパ形であり、レーキ14の回転軸14aは沈殿槽4の軸心部に鉛直に設置されている。ピット17の底面には、回転軸14aを支持する軸受14bが設けられている。回転軸14aは上部駆動モータM(駆動手段)により回転駆動する。回転軸14aとその上部の駆動モータMと撹拌部材とでピット撹拌手段が構成されている。
【0030】
ピット17の側周面17aの下部(又は底面17b)には、沈殿した凝集フロックを含むスラリーを抜き出すための引抜ライン18が接続されている。この引抜ライン18の接続部は、ピット17内に残留する沈降促進材の量を少なくするために、可能な限り低い位置とすることが好ましい。引抜ライン18には、抜き出したスラリーをサイクロン20に送る引抜ポンプ19が設けられている。引抜ライン18内のスラリー流速が500m/h以上となるように設計されるのが好ましい。
【0031】
サイクロン20は、軸心方向を鉛直方向として設置されている。サイクロン20では、送られてきたスラリーを遠心分離により、サイクロン軸心部に集まる汚泥と、サイクロン側周面に集まる沈降促進材とに分離する。分離された沈降促進材は、サイクロン20の底部から、配管21によって再び第2凝集槽3内に戻されて循環使用される。
【0032】
サイクロン20で軸心側に集められた分離汚泥は、サイクロン20の上面中央部の汚泥出口に接続された配管22に流出する。
【0033】
この凝集沈殿装置は、原水ポンプ5、撹拌機7,10上部の駆動モータM、撹拌部材30(レーキ14)の上部の駆動モータM及び引抜ポンプ19を制御する制御器25が設置されている。
【0034】
撹拌部材30は、
図2,3に詳細に示される通り、レーキ14の回転軸14aに固設されたフランジ31と、基端側が該フランジ31に対しリベット、ボルト等の固着手段32によって固定され、放射方向に延設された複数本のアーム33と、該アーム33からピット17内を下方に向かって延設された棒形の長尺部材としての第1及び第2の撹拌バー34,35とを有する。
【0035】
この実施の形態では、フランジ31は、ピット17の上端付近の高さに設置されているが、それよりも若干上又は下に設置されてもよい。また、アーム33は回転軸14aの周方向に90°毎に合計4本設けられているが、その本数はこれに限定されない。
【0036】
撹拌バー35はアーム33の先端側に設けられている。撹拌バー35はピット17の側周面17aの上方に位置している。撹拌バー34は、撹拌バー35とフランジ31との間に設けられている。撹拌バー34はピット17の底面17bの上方に位置している。撹拌バー35の下端とピット17の側周面17aとの上下間隔、及び撹拌バー34の下端とピット17の底面17bとの間隔は、いずれも可能な限り小さいことが好ましい。
【0037】
各撹拌バー34,35は、水平断面がL字形のアングル材よりなる。撹拌バー34,35は、アーム33に重なる第1片34a,35aと、該第1片34a,35aに垂直な第2片34b,35bを有している。第1片34a,35a及び第2片34b,35bの幅は40~150mm特に60~90mm程度が好ましい。撹拌バー34,35の間隔は、80~200mm特に120~160mm程度が好ましい。
【0038】
この実施の形態では、撹拌バーは各アーム33に2本ずつ設けられているが、3本以上設けられてもよい。
【0039】
また、この実施の形態では、撹拌バー34,35の設置位置(回転軸14aからの距離)は各アーム33において同じとなっているが、撹拌バー34,35の設置位置を一部のアーム33で又は各アーム33毎に異ならせてもよい。
【0040】
撹拌部材30は、
図3において時計回り方向に回転駆動されるが、反時計回り方向に回転駆動されてもよい。
【0041】
この凝集沈殿装置1では、撹拌部材30が回転する際に、該撹拌バー34,35がピット17内の沈殿物から受ける反力は比較的小さい。また、撹拌バー34,35がアーム35の長手方向に間隔をおいて設けられているので、共回りを防止しつつピット17内の沈殿物の全体を十分に撹拌することができる。
【0042】
この実施の形態では、撹拌バー34,35は、第1片34a,35aに対し垂直な第2片34b,35bを備えているので、剛性が高く、撹拌部材30が回転する際に撓むことが防止される。
この実施の形態では、長尺部材として直線状の棒形のバーが鉛直方向に設けられているが、斜め方向に設けてもよいし、曲線状でもよく、また棒形でなく帯形のもの(例えばリボンスクリュー)でもよく、共回りが発生しにくく、かつピット内のスラリーの全体を十分にほぐすことができれば特に限定されない。
【0043】
この凝集沈殿装置1にあっては、原水槽(図示略)内の水位が規定水位よりも低下したときには、原水ポンプ5、第1及び第2薬注装置6,9と、撹拌機10とを停止させ、pH調整装置(図示略)と撹拌機7と引抜ポンプ19とは継続して稼働させる。
【0044】
凝集沈殿装置1の運転を停止するに際しては、まず原水ポンプ5の停止、第1及び第2薬注装置6,9の停止を行い、それから所定時間(例えば5~20分特に5~10分程度)が経過した後、撹拌機7,10、撹拌部材30及び引抜ポンプ19を停止させるようにするのが好ましい。このようにすれば、ピット17、引抜ライン18、サイクロン20内に残留する沈降促進材その他の沈殿物が少なくなり、沈降促進材等が固結ないし固着することが防止される。
【0045】
この凝集沈殿装置1にあっては、原水の処理を行わない運転停止期間中にも間欠的又は連続的に第2凝集槽3内を撹拌し、沈殿物の固着ないし固結を防止してもよい。なお、運転停止期間中に間欠的に撹拌する場合は、連続的に作動させる場合よりも動力コストが安価となる。
【0046】
本発明に係る凝集沈殿装置およびその制御方法は、製鉄所やセメント工場等のヤード排水の処理に好適であるが、その他の各種排水の処理にも適用可能である。
【0047】
本発明において使用する無機凝集剤や高分子凝集剤の種類はとくに限定されず、無機凝集剤としては、たとえばポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄などを使用できる。高分子凝集剤としては、たとえばノニオン性、カチオン性、アニオン性あるいは両性の高分子凝集剤を用いることができる。
【0048】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。例えば、上記実施の形態では、撹拌部材30はレーキ14と共に回転軸14a回りに回転するものとされているが、レーキ14とは別の回転軸及び駆動手段によって回転駆動されてもよい。
【0049】
上記説明は凝集沈殿装置に関するものであり、沈殿槽4は凝集沈殿装置1に組み込まれたものとなっているが、上記構成の沈殿槽4は凝集沈殿装置1から独立した固液分離設備として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 凝集沈殿装置
2 第1凝集槽
3 第2凝集槽
4 沈殿槽
5 原水ポンプ
6 第1薬注装置
9 第2薬注装置
19 引抜ポンプ
20 サイクロン
30 撹拌部材
33 アーム
34 第1の撹拌バー
35 第2の撹拌バー
34a,35a 第1片
34b,35b 第2片