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特許7450334エッチング液、及び半導体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】エッチング液、及び半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240308BHJP
【FI】
H01L21/308 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018244958
(22)【出願日】2018-12-27
(65)【公開番号】P2020107724
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-06
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】菅原まい
(72)【発明者】
【氏名】大橋 卓矢
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】松永 稔
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-519674(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0034036(KR,A)
【文献】特開2019-165218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si及びその酸化物に対して一般式Si1-xGeで表される化合物(ただし、xは0超1未満である。)を選択的にエッチング処理するためのエッチング液であって、
過ヨウ素酸と、フッ化物と、pH調整剤とを含み、
前記pH調整剤は、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸二水和物、クエン酸、酒石酸、ピコリン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、スルホコハク酸、安息香酸、プロピオン酸、ギ酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、マンデル酸、ヘプタン酸、酪酸、吉草酸、グルタル酸、フタル酸、次亜リン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、塩酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸、硫酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸テトラメチルアンモニウム及び他の酢酸テトラアルキルアンモニウム、酢酸ホスホニウム、酪酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸、リン酸水素ジアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ビス(テトラメチルアンモニウム)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ジテトラアルキルアンモニウム、リン酸二水素ジテトラアルキルアンモニウム、リン酸水素ジホスホニウム、リン酸二水素ホスホニウム、ホスホン酸アンモニウム、ホスホン酸テトラアルキルアンモニウム、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸ホスホニウム、エチドロン酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記pH調整剤の含有量が、エッチング液の全質量に対し、0.01~10質量%である、エッチング液(ただし、ジオール化合物を含有するものを除く)。
【請求項2】
請求項1に記載のエッチング液を用いて、一般式Si1-xGeで表される化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程を含む、半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング液、及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、集積回路内の構成のスケーリングは、半導体チップ上の機能ユニットの高密度化を可能にしてきた。例えば、トランジスタサイズの縮小は、より多くのメモリ素子をチップ上に取り込むことを可能にし、容量が増えた製品の製造につながる。
【0003】
集積回路デバイスのための電界効果トランジスタ(FET)の製造において、シリコン以外の半導体結晶材料としては、Geが用いられている。Geは、高い電荷キャリア(正孔)移動度、バンドギャップオフセット、異なる格子定数、及びシリコンとの合金になって、SiGeの半導体二元合金を生成する能力など、場合によってはシリコンに比べて有利ないくつかの特徴を持つ。
【0004】
しかしながら、Ge材料(特に一般式Si1-xGeで表される化合物。ただし、xは0超1未満である。以下、単に「SiGe化合物」という場合がある。)に対する選択性の高いエッチング液が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、少なくとも1つのジオール化合物、少なくとも1つのフッ化物種及び少なくとも1つの酸化種を含むエッチング組成物が記載されている。
また、特許文献2には、過酢酸、フッ化酸及び酸化物を含むエッチング組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-519674号公報
【文献】米国特許第7176041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1又は2に記載されるような従来のエッチング液は化学的に不安定で、経時と共にSiGe化合物に対するエッチングレートが変動する場合があり、製造プロセスの制御が困難な場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、一般式Si1-xGeで表される化合物に対するエッチングレートの経時安定性が向上したエッチング液、並びに前記エッチング液を用いた被処理体の処理方法及び半導体素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0008】
本発明の第1の態様は、Si、Ge、及びこれらの酸化物に対して一般式Si1-xGeで表される化合物(ただし、xは0超1未満である。)を選択的にエッチング処理するためのエッチング液であって、過ヨウ素酸と、フッ化物とを含む、エッチング液である。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記エッチング液を用いて、一般式Si1-xGeで表される化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程を含むことを特徴とする、被処理体の処理方法である。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記エッチング液を用いて、一般式Si1-xGeで表される化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程を含むことを特徴とする、半導体素子の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一般式Si1-xGeで表される化合物に対するエッチングレートの経時安定性が向上したエッチング液、並びに前記エッチング液を用いた被処理体の処理方法及び半導体素子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(エッチング液)
本発明の第1の態様にかかるエッチング液は、過ヨウ素酸と、フッ化物とを含む。本態様にかかるエッチング液は、Si、Ge、及びこれらの酸化物に対して一般式Si1-xGeで表される化合物(以下、単に「SiGe化合物」という場合がある。)を選択的にエッチング処理するために用いられる。
【0013】
<過ヨウ素酸>
本実施形態にかかるエッチング液は、過ヨウ素酸を含む。過ヨウ素酸としては、オルト過ヨウ素酸(HIO)、メタ過ヨウ素酸(HIO)のいずれでもよいが、オルト過ヨウ素酸(HIO)が好ましい。
SiGe化合物は、酸化させることにより溶解可能とすることができる。過ヨウ素酸は、SiGe化合物を酸化するための酸素原子を放出する酸化剤であり、過ヨウ素酸の酸化還元電位は、SiGe化合物を酸化に十分な電位を有しているため、SiGe化合物を効率良く酸化することができる。
【0014】
本実施形態のエッチング液中の過ヨウ素酸の含有量は、特に限定されないが、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.02~5質量%が例示され、0.05~4.5質量%が好ましく、0.1~4質量%がより好ましく、0.20~3質量%がさらに好ましい。過ヨウ素酸の含有量が前記範囲内であると、SiGe化合物に対するエッチングレートの経時安定性が向上しやすい。
【0015】
<フッ化物>
本実施形態にかかるエッチング液は、フッ化物を含む。
フッ化物としては、特に限定されず、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロジルコン酸、テトラフルオロホウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウムなどのテトラフルオロホウ酸テトラアルキルアンモニウム(NRBF)、ヘキサフルオロリン酸テトラアルキルアンモニウム(NRPF)、フッ化テトラメチルアンモニウムなどのフッ化テトラアルキルアンモニウム(NRF)(その無水物又は水和物)、重フッ化アンモニウム、フッ化アンモニウム(式中、R、R、R、Rは、互いに同じでも、異なっていてもよく、水素、直鎖又は分岐鎖のC-Cアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル)、C-Cアルコキシ基(例えば、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル)、或いは置換又は非置換のアリール基(例えば、ベンジル)からなる群から選択される。)等が挙げられる。
なかでも、フッ化物としては、フッ化水素酸(DHF)及び/又はフッ化アンモニウム(NHF)が好ましい。
【0016】
本実施形態のエッチング液において、フッ化物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液中のフッ化物の含有量は、特に限定されないが、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.02~5質量%が例示され、0.025~3.00質量%が好ましく、0.03~2.50質量%がより好ましく、0.04~2.00質量%がさらに好ましい。フッ化物の含有量が前記範囲内であると、SiGe化合物に対するエッチングレートがより向上しやすい。
また、本実施形態のエッチング液のフッ素イオン濃度は、特に限定されないが、例えば、0.0052.50mol/Lが例示され、0.0071.50mol/Lが好ましく、0.008~1.25mol/Lがより好ましく、0.010~1.00mol/Lがさらに好ましい。フッ素イオン濃度が前記範囲内であると、SiGe化合物に対するエッチングレートがより向上しやすい。
【0017】
<他の成分>
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分に加えて他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、水、水溶性有機溶剤、pH調整剤、酸化剤、パッシベーション剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
・水
本実施形態のエッチング液は、上記成分の溶媒として水を含むことが好ましい。水は、不可避的に混入する微量成分を含んでいてもよい。本実施形態のエッチング液に用いられる水は、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。
本実施形態のエッチング液中の水の含有量は、特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、94質量%以上がさらに好ましい。また、上限値は、特に限定はないが、99.95質量%未満が好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.5質量%以下がさらに好ましい。本実施形態のエッチング液は、過ヨウ素酸及びフッ化物を含有する水溶液であることが好ましい。
【0019】
・水溶性有機溶剤
本実施形態のエッチング液は、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性有機溶剤を含有ししてもよい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、フルフリルアルコール、及び2-メチル-2,4-ペンタンジオール等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル)等が挙げられる。
【0020】
本実施形態のエッチング液において、水溶性有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液が水溶性有機溶剤を含む場合、水溶性有機溶剤の含有量は、水の量と水溶性有機溶剤の量との合計に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
・pH調整剤
本実施形態のエッチング液は、SiGe化合物に対するエッチングレートを更に向上させるために、pH調整剤を含んでいてもよい。
pH調整剤としては、酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。具体的には、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、シュウ酸二水和物、クエン酸、酒石酸、ピコリン酸、コハク酸、酢酸、乳酸、スルホコハク酸、安息香酸、プロピオン酸、ギ酸、ピルビン酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、マンデル酸、ヘプタン酸、酪酸、吉草酸、グルタル酸、フタル酸、次亜リン酸、サリチル酸、5-スルホサリチル酸、塩酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、モノフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、臭化水素酸(62重量%)、硫酸、酢酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸テトラメチルアンモニウム及び他の酢酸テトラアルキルアンモニウム、酢酸ホスホニウム、酪酸アンモニウム、トリフルオロ酢酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸、リン酸水素ジアンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ビス(テトラメチルアンモニウム)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ジテトラアルキルアンモニウム、リン酸二水素ジテトラアルキルアンモニウム、リン酸水素ジホスホニウム、リン酸二水素ホスホニウム、ホスホン酸アンモニウム、ホスホン酸テトラアルキルアンモニウム、ホスホン酸ナトリウム、ホスホン酸カリウム、ホスホン酸ホスホニウム、エチドロン酸これらの塩等が挙げられる。
なかでも、酸としてのpH調整剤としては、メタンスルホン酸又はシュウ酸が好ましい。
【0022】
また、本実施形態のエッチング液は、pH調整剤として、塩基性化合物を含んでいてもよい。このような塩基性化合物としては、有機アルカリ性化合物および無機アルカリ性化合物を用いることができ、有機アルカリ化合物としては、有機第四級アンモニウム水酸化物をはじめとする四級アンモニウム塩、トリメチルアミン及びトリエチルアミンなどのアルキルアミン及びその誘導体の塩、が好適な例として挙げられる。
また、無機アルカリ性化合物は、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属を含む無機化合物及びその塩が挙げられる。例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムなどが挙げられる。
【0023】
本実施形態のエッチング液において、pH調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液がpH調整剤を含む場合、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.01~10質量%が例示され、0.02~4.5質量%が好ましく、0.03~4質量%がより好ましく、0.05~3質量%がさらに好ましい。pH調整剤の含有量が前記範囲内であると、SiGe化合物に対するエッチングレートがより向上しやすい。
【0024】
・酸化剤
本実施形態のエッチング液は、過ヨウ素酸に加えて、他の酸化剤を含んでいてもよい。酸化剤としては、例えば、過酸化水素、FeCl、FeF、Fe(NO、Sr(NO、CoF、MnF、オキソン(2KHSO・KHSO・KSO)、ヨウ素酸、酸化バナジウム(V)、酸化バナジウム(IV,V)、バナジン酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、亜塩素酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、ヨウ素酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、過ホウ酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、過ヨウ素酸アンモニウム、過硫酸アンモニウム、次亜塩素酸アンモニウム、次亜臭素酸アンモニウム、タングステン酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、過マンガン酸カリウム、過硫酸カリウム、硝酸、過硫酸カリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、塩素酸テトラメチルアンモニウム、ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過ホウ酸テトラメチルアンモニウム、過塩素酸テトラメチルアンモニウム、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム、過硫酸テトラメチルアンモニウム、ペルオキソ一硫酸テトラブチルアンモニウム、ペルオキソ一硫酸、硝酸第二鉄、過酸化尿素、過酢酸、メチル-1,4-ベンゾキノン(MBQ)、1,4-ベンゾキノン(BQ)、1,2-ベンゾキノン、2,6-ジクロロ-1,4-ベンゾキノン(DCBQ)、トルキノン、2,6-ジメチル-1,4-ベンゾキノン(DMBQ)、クロラニル、アロキサン、N-メチルモルホリンN-オキシド、トリメチルアミンN-オキシド等が挙げられる。
【0025】
本実施形態のエッチング液において、酸化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液が酸化剤を含む場合、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.01~10質量%が好ましく、0.1~7質量%がより好ましい。
【0026】
・パッシベーション剤
本実施形態のエッチング液は、ゲルマニウムのためのパッシベーション剤を含んでいてもよい。
パッシベーション剤としては、アスコルビン酸、L(+)-アスコルビン酸、イソアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、ホウ酸、二ホウ酸アンモニウム、ホウ酸塩(例えば、五ホウ酸アンモニウム、四ホウ酸ナトリウム及び二ホウ酸アンモニウム)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ルビジウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、式NRBr(式中、R、R、R及びRは、互いに同じであることも、又は異なることもできて、水素、及び分岐鎖又は直鎖のC-Cアルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル)からなる群から選択される。)を有する臭化アンモニウム等が挙げられる。
【0027】
本実施形態のエッチング液において、パッシベーション剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態のエッチング液がパッシベーション剤を含む場合、例えば、エッチング液の全質量に対し、0.01~5質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
【0028】
・界面活性剤
本実施形態のエッチング液は、被処理体に対するエッチング液の濡れ性の調整の目的等のために、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、又は両性界面活性剤を用いることができ、これらを併用してもよい。
【0029】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
【0030】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、脂肪酸アミドスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、アルキルホスホン酸、脂肪酸の塩等が挙げられる。「塩」としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0031】
カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、又はアルキルピリジウム系界面活性剤等が挙げられる。
【0032】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
【0033】
これらの界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく。2種以上を併用してもよい。
【0034】
<被処理体>
本実施形態のエッチング液は、SiGe化合物のエッチングのために用いられるものであり、SiGe化合物を含む被処理体をエッチング処理の対象とする。被処理体は、SiGe化合物を含むものであれば特に限定さないが、SiGe化合物含有層(SiGe化合物含有膜)を有する基板等が挙げられる。前記基板は、特に限定されず、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板が挙げられる。前記基板としては、半導体デバイス作製のために使用される基板が好ましい。前記基板は、SiGe化合物含有層及び基板の基材以外に、適宜、種々の層や構造、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、及び非磁性層等を有していてもよい。また、基板のデバイス面の最上層がSiGe化合物含有層である必要はなく、例えば、多層構造の中間層がSiGe化合物含有層であってもよい。
基板の大きさ、厚さ、形状、層構造等は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0035】
前記SiGe化合物含有層は、SiGe化合物を含有する層であることが好ましく、SiGe化合物膜であることがより好ましい。基板上のSiGe化合物含有層の厚さは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。SiGe化合物含有層の厚さとしては、例えば、1~500nmや1~300nmの範囲が挙げられる。
【0036】
本実施形態のエッチング液は、基板におけるSiGe化合物含有層の微細加工を行うために用いられてもよく、基板に付着したSiGe化合物含有付着物を除去するために用いられてもよく、表面にSiGe化合物含有層を有する被処理体からパーティクル等の不純物を除去するために用いられてもよい。
【0037】
以上説明した本実施形態のエッチング液によれば、酸化剤として過ヨウ素酸を含むため、SiGe化合物に対するエッチングレートの経時安定性を高めることができる。その理由は定かではないが、これは、過ヨウ素酸が酸化剤として非常に安定であることから、本実施形態のエッチング液は、SiGe化合物に対するエッチングレートが経時劣化しないと推測される。例えば、本実施形態のエッチング液は、3日以上又は7日以上室温で保存した後であっても、SiGe化合物に対するエッチングレートがほとんど変化しない。そのため、本実施形態のエッチング液により、SiGe化合物のエッチング工程を含む製造プロセスを安定的に制御できると推測される。
【0038】
(被処理体の処理方法)
本発明の第2の態様にかかる被処理体の処理方法は、上記第1の態様にかかるエッチング液を用いて、SiGe化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程を含むことを特徴とする。
【0039】
SiGe化合物を含む被処理体としては、上記「(エッチング液)」における「<被処理体>」で説明したものと同様のものが挙げられ、SiGe化合物含有層を有する基板が好ましく例示される。基板上にSiGe化合物含有層を形成する方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、及び原子層堆積法(ALD:Atomic layer deposition)等が挙げられる。基板上にSiGe化合物含有層を形成する際に用いるSiGe化合物含有層の原料も、特に限定されず、成膜方法に応じて適宜選択することができる。
【0040】
<被処理体をエッチング処理する工程>
本工程は、上記第1の態様にかかるエッチング液を用いてSiGe化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程であり、前記エッチング液を前記被処理体に接触させる操作を含む。エッチング処理の方法は、特に限定されず、公知のエッチング方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、スプレー法、浸漬法、液盛り法等が例示されるが、これらに限定されない。
スプレー法では、例えば、被処理体を所定の方向に搬送もしくは回転させ、その空間に上記第1の態様にかかるエッチング液を噴射して、被処理体に前記エッチング液を接触させる。必要に応じて、スピンコーターを用いて基板を回転させながら前記エッチング液を噴霧してもよい。
浸漬法では、上記第1の態様にかかるエッチング液に被処理体を浸漬して、被処理体に前記エッチング液を接触させる。
液盛り法では、被処理体に上記第1の態様にかかるエッチング液を盛って、被処理体と前記エッチング液とを接触させる。
これらのエッチング処理の方法は、被処理体の構造や材料等に応じて適宜選択することができる。スプレー法、又は液盛り法の場合、被処理体への前記エッチング液の供給量は、被処理体における被処理面が、前記エッチング液で十分に濡れる量であればよい。
【0041】
エッチング処理の目的は特に限定されず、被処理体のSiGe化合物を含む被処理面(例えば、基板上のSiGe化合物含有層)の微細加工であってもよく、被処理体(例えば、SiGe化合物含有層を有する基板)に付着するSiGe化合物含有付着物の除去であってもよく、被処理体のSiGe化合物を含む被処理面(例えば、基板上のSiGe化合物含有層)の洗浄であってもよい。
エッチング処理の目的が、被処理体のSiGe化合物を含む被処理面の微細加工である場合、通常、エッチングされるべきでない箇所をエッチングマスクにより被覆したうえで、被処理体とエッチング液とを接触させる。
エッチング処理の目的が、被処理体に付着するSiGe化合物含有付着物の除去である場合、上記第1の態様にかかるエッチング液を被処理体に接触させることで、SiGe化合物含有付着物が溶解し、被処理体からSiGe化合物付着物を除去することができる。
エッチング処理の目的が、処理体のSiGe化合物を含む被処理面の洗浄である場合、上記第1の態様にかかるエッチング液を被処理体に接触させることで前記被処理面が速やかに溶解し、被処理体の表面に付着するパーティクル等の不純物が短時間で被処理体の表面から除去される。
【0042】
エッチング処理を行う温度は、特に限定されず、前記エッチング液にSiGe化合物が溶解する温度であればよい。エッチング処理の温度としては、例えば、15~60℃が挙げられる。スプレー法、浸漬法、及び液盛り法のいずれの場合も、エッチング液の温度を高くすることで、エッチングレートは上昇するが、エッチング液の組成変化を小さく抑えることや、作業性、安全性、コスト等も考慮し、適宜、処理温度を選択することができる。
【0043】
エッチング処理を行う時間は、エッチング処理の目的、エッチングにより除去されるSiGe化合物の量(例えば、SiGe化合物含有層の厚さ、SiGe化合物付着物の量など)、及びエッチング処理条件に応じて、適宜、選択すればよい。
【0044】
以上説明した本実施形態の被処理体の処理方法によれば、酸化剤として過ヨウ素酸を含む上記第1の態様にかかるエッチング液を用いて、被処理体のエッチング処理を行う。当該エッチング液は、SiGe化合物に対するエッチングレートの経時安定性が高いためため、SiGe化合物のエッチング工程を含む製造プロセスを安定的に制御できる。
【0045】
(半導体素子の製造方法)
本発明の第3の態様にかかる半導体素子の製造方法は、上記第1の態様にかかるエッチング液を用いて、SiGe化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程を含むことを特徴とする。
【0046】
SiGe化合物を含む被処理体をエッチング処理する工程は、上記「(被処理体の処理方法)」において説明した方法と同様に行うことができる。SiGe化合物を含む被処理体は、SiGe化合物含有層を有する基板であることが好ましい。前記基板としては半導体素子の作製に通常用いられる基板を用いることができる。
【0047】
<他の工程>
本実施形態の半導体素子の製造方法は、上記エッチング処理工程に加えて、他の工程を含んでいてもよい。他の工程は、特に限定されず、半導体素子を製造する際に行われる公知の工程が挙げられる。かかる工程としては、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、及び非磁性層等の各構造の形成工程(層形成、上記エッチング処理以外のエッチング、化学機械研磨、変成等)、レジスト膜形成工程、露光工程、現像工程、熱処理工程、洗浄工程、検査工程等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの他の工程は、必要に応じ、上記エッチング処理工程の前又は後に、適宜行うことができる。
【0048】
以上説明した本実施形態の半導体素子の製造方法によれば、酸化剤として過ヨウ素酸を含む上記第1の態様にかかるエッチング液を用いて、被処理体のエッチング処理を行う。当該エッチング液は、SiGe化合物に対するエッチングレートの経時安定性が高いためため、SiGe化合物のエッチング工程を含む製造プロセスを安定的に制御できる。
【実施例
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0050】
<エッチング液の調製>
(実施例1~4、比較例1~3)
表1に示す各成分を混合し、各例のエッチング液を調製した。
【0051】
【表1】
【0052】
表1中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量%)である。
DHF:フッ化水素酸
NHF:フッ化アンモニウム
PAA:過酢酸
PIA:過ヨウ素酸(HIO
AA:酢酸
MSA:メタンスルホン酸
【0053】
<被処理体のエッチング処理(1)>
シリコン基板上にSiGe膜をエピタキシャル成長させ、SiGe膜が形成された被処理体(1)を得た。得られた被処理体(1)から試験片を切り取り、蛍光X線分析によりSiGe膜の膜厚を測定したところ、膜厚は50nmであった。
各例のエッチング液をビーカーに入れ、室温(23℃)で5分間前記試験片を各例のエッチング液に浸漬することによりエッチング処理を行った。前記エッチング処理後、試験片を窒素ブローにより乾燥し、蛍光X線分析によりSiGe膜の膜厚を測定した。エッチング処理前後のSiGe膜の膜厚から、SiGeに対するエッチングレート(Å/min)を算出した。結果を表2に示す。
【0054】
<被処理体のエッチング処理(2)>
SOI(100)基板から試験片を切り取り、被処理体(2)を得た。得られた被処理体(2)を、分光エリプソメトリーによりSi膜の膜厚を測定したところ、膜厚は100nmであった。
各例のエッチング液をビーカーに入れ、室温(23℃)で5分間前記試験片を各例のエッチング液に浸漬することによりエッチング処理を行った。前記エッチング処理後、試験片を窒素ブローにより乾燥し、分光エリプソメトリーによりSi膜の膜厚を測定した。エッチング処理前後のSi膜の膜厚から、Siに対するエッチングレート(Å/min)を算出した。結果を表2に示す。
【0055】
<被処理体のエッチング処理(3)>
シリコン基板上に化学蒸着法(CVD)によりシリコン酸化膜を製膜し、被処理体(3)を得た。得られた被処理体(3)から試験片を切り取り、分光エリプソメトリーによりシリコン酸化膜の膜厚を測定したところ、膜厚は100nmであった。
各例のエッチング液をビーカーに入れ、室温(23℃)で5分間前記試験片を各例のエッチング液に浸漬することによりエッチング処理を行った。前記エッチング処理後、試験片を窒素ブローにより乾燥し、分光エリプソメトリーによりシリコン酸化膜の膜厚を測定した。エッチング処理前後のシリコン酸化膜の膜厚から、Siに対するエッチングレート(Å/min)を算出した。結果を表2に示す。
【0056】
<エッチング選択比の評価>
上記の「被処理体のエッチング処理(1)」、「被処理体のエッチング処理(2)」及び「被処理体のエッチング処理(3)」で得られたエッチングレートの結果に基づいて、被処理体(1)/被処理体(2)のエッチング選択比及び被処理体(1)/被処理体(3)のエッチング選択比を算出した。結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示す結果から、実施例1~4のエッチング液は、比較例1~3のエッチング液と同等以上のSiGeエッチング選択比が得られることが確認された。
特に、pH調製剤を配合した実施例3及び4のエッチング液は、比較例1~3のエッチング液に比べてSiGeエッチング選択比が向上していることが確認された。
【0059】
<SiGeエッチングレートの経時安定性の評価>
実施例2のエッチング液及び比較例3のエッチング液をそれぞれボトルに保管し、保管開始から3日後の各エッチング液について、上記の「被処理体のエッチング処理(1)」と同様の操作により、SiGeに対するエッチングレートER3(Å/min)を算出した。
また、保管開始から7日後の各エッチング液について、上記の「被処理体のエッチング処理(1)」と同様の操作により、SiGeに対するエッチングレートER7(Å/min)を算出した。
上記の「被処理体のエッチング処理(1)」で得られたエッチングレートを、保管開始から0日後のSiGeに対するエッチングレートER0とした。
エッチングレートER3及びエッチングレートER7のそれぞれについて、エッチングレートER0からの変動率(%)を算出した。結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示す結果から、実施例2のエッチング液は、保管開始から7日経過後でもSiGeに対するエッチングレートがほとんど変動しないことが確認された。