(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/4069 20060101AFI20240308BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
G05B19/4069
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2019148501
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宋 唯眞
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187707(JP,A)
【文献】特開2009-206206(JP,A)
【文献】特開2000-235407(JP,A)
【文献】特開2008-009661(JP,A)
【文献】特開平07-276206(JP,A)
【文献】特開平07-295619(JP,A)
【文献】特開昭60-126711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/4069
B23Q 15/00
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、該被加工物を加工する加工条件が登録される加工条件登録部と、入力ユニットで入力された該加工条件を表示する表示パネルと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備える切削装置であって、
該加工条件登録部には、該被加工物の形状及び大きさ、該切削ブレードの切り込み深さ、
前記被加工物において切削加工を施すことを禁止するカット禁止範囲が該加工条件として登録され、
該制御ユニットは、
該加工条件登録部に登録された該加工条件での該被加工物の加工をシミュレーションし、加工された該被加工物の3次元的な立体画像データを生成する立体画像データ生成部を有し、
該立体画像データを該表示パネルに表示させる切削装置。
【請求項2】
該立体画像データの表示倍率は、任意に調整できる請求項1記載の切削装置。
【請求項3】
該立体画像データの表示角度は、任意に調整できる請求項1又は2記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやガラス基板、樹脂パッケージ基板など各種板状の被加工物を切削ブレードで切削して分割したり溝を形成したりする切削装置が知られている(特許文献1参照)。切削装置には、被加工物を加工するための加工条件がオペレータによって登録され、その加工条件に従い被加工物を切削ブレードで加工する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この際、加工条件としては、被加工物の形状、サイズ(幅、厚さ)、ダイシングテープの厚さ、切削ブレードの切り込み深さ、溝のピッチサイズ(インデックスサイズ)等が登録される。しかし、登録する際の画面には、オペレータが数字を入力するため、実際に加工結果(加工後の形状等)をイメージしにくく、誤った加工条件が入力される可能性がある。従って、剥離しやすい表面側の機能層だけを特定のブレードで除去した後、異なるブレードで基板をフルカットする加工条件を設定しようとしたのに、数字を一桁誤って入力したために、実際に加工したら機能層の除去にとどまらず被加工物を完全切断して被加工物の機能層を剥離させてしまうなどの問題が生じる恐れがある。
【0005】
そこで、本願発明は、誤った加工条件が入力されることが抑制される切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルで保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、該被加工物を加工する加工条件が登録される加工条件登録部と、入力ユニットで入力された該加工条件を表示する表示パネルと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備える切削装置であって、該加工条件登録部には、該被加工物の形状及び大きさ、該切削ブレードの切り込み深さ、前記被加工物において切削加工を施すことを禁止するカット禁止範囲が該加工条件として登録され、該制御ユニットは、該加工条件登録部に登録された該加工条件での該被加工物の加工をシミュレーションし、加工された該被加工物の3次元的な立体画像データを生成する立体画像データ生成部を有し、該立体画像データを該表示パネルに表示させる。
【0007】
前述した切削装置において、該立体画像データの表示倍率は、任意に調整できるようにしてもよい。
【0008】
前述した切削装置において、該立体画像データの表示角度は、任意に調整できるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明に係る切削装置によれば、誤った加工条件が入力されることが抑制される効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る切削装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された切削装置の表示パネルに表示された加工条件登録画面を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された切削装置の表示パネルに表示された被加工物の3次元的な立体画像データを示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された立体画像データの一部を拡大して表示パネルが表示した図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された立体画像データの一部を更に拡大して表示パネルが表示した図である。
【
図7】
図7は、切削ブレードで被加工物を切削している状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、切削ブレードで被加工物の切削が完了した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る切削装置を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る切削装置の斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の加工対象の被加工物の一例を示す斜視図である。
図3は、
図1に示された切削装置の表示パネルに表示された加工条件登録画面を示す図である。
図4は、
図1に示された切削装置の表示パネルに表示された被加工物の3次元的な立体画像データを示す図である。
図5は、
図4に示された立体画像データの一部を拡大して表示パネルが表示した図である。
図6は、
図5に示された立体画像データの一部を更に拡大して表示パネルが表示した図である。
【0013】
実施形態に係る切削装置1は、例えば、
図2に例示する被加工物200を切削加工する装置である。実施形態において、切削装置1が切削する加工対象の被加工物200は、平面視が長方形の板形状を有する方形ワークであり、例えば、ガラス基板 又は樹脂パッケージ基板である。本発明では、被加工物200は、
図2に例示する方形ワークに限定されずに、例えば、円板状の半導体ウェーハ等でも良く、要するに各種板状のワークが含まれる。被加工物200は、
図1に示すように裏面に被加工物200よりも大きい円板状の粘着テープ210が貼着され、粘着テープ210の外周部の表面に環状フレーム211が固定される。このように、被加工物200は、粘着テープ210を介して環状フレーム211に支持されている。これらの被加工物200と、粘着テープ210と、環状フレーム211とを併せてフレームユニット220と称する。
【0014】
図1に示された切削装置1は、被加工物200を有するフレームユニット220をチャックテーブル10で保持し、被加工物200をX軸方向に平行に切削ブレード21で切削加工する装置である。具体的には、切削装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10が保持する被加工物200を切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像する撮像ユニット30と、各構成要素を制御する制御手段である制御ユニット100と、加工条件等を入力するための入力ユニット120と、入力ユニット120で入力された加工条件及び加工された3次元的な立体画像データを少なくとも表示する表示パネル130と、を備える。
【0015】
表示パネル130は、ディスプレイ等の画像表示装置であり、例えばタッチパネル式の表示装置である。表示パネル130は、制御ユニット100に接続されている。表示パネル130は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro-Luminescence Display)等の表示デバイスを含む。表示パネル130は、文字、画像、記号、及び図形等のオブジェクトを画面内に表示する。実施形態において、表示パネル130は、制御ユニット100の加工条件登録部110が加工条件を受け付ける際に
図3に示す加工条件登録画面300を表示し、制御ユニット100の立体画像データ生成部140が生成した
図4、
図5及び
図6に示す被加工物200の立体画像データ401を表示する。
【0016】
実施形態において、入力ユニット120は、表示パネル130の表示デバイスに重ねられて配置されたタッチスクリーンであるが、本発明では、入力ユニット120を構成するタッチスクリーンは、表示デバイスに並んで配置されても良いし、表示デバイスと別体でもよい。
【0017】
入力ユニット120は、タッチスクリーンに対する指、ペン、又はスタイラスペン等の接触又は近接を検出する。タッチスクリーンは、複数の指、ペン、又はスタイラスペン等がタッチスクリーンに接触又は近接したときのタッチスクリーン上の位置を検出することができる。以下の説明において、タッチスクリーンが検出する複数の指、ペン、及びスタイラスペン等がタッチスクリーンに接触又は近接した位置を「検出位置」と表記する。タッチスクリーンは、タッチスクリーンに対する指の接触又は近接を、検出位置とともに制御ユニット100に出力する。
【0018】
制御ユニット100は、入力ユニット120のタッチスクリーンにより検出された接触又は近接、検出位置、検出位置の変化、接触又は近接が継続した時間、接触又は近接が検出された間隔、及び接触が検出された回数の少なくとも1つに基づいて、入力ユニット120を操作するオペレータのジェスチャの種別を判別する。ジェスチャは、指を用いて、タッチスクリーンに対して行われる操作である。制御ユニット100が、タッチスクリーンを介して判別するジェスチャには、例えば、タッチ、ロングタッチ、リリース、スワイプ、タップ、ダブルタップ、ロングタップ、ドラッグ、フリック、ピンチイン、及びピンチアウトが含まれるが、本発明では、これらに限定されない。
【0019】
また、切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする図示しないX軸移動ユニットと、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りするY軸移動ユニット32と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りするZ軸移動ユニット33とを備える。
【0020】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態では、チャックテーブル10は、粘着テープ210を介して被加工物200を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の外周側には、クランプ12が2つ設けられている。クランプ12は、フレームユニット220の環状フレーム211を把持する。
【0021】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット32によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット33によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0022】
一方の切削ユニット20は、
図1に示すように、装置本体4から立設した門型の支持フレーム5の一方の柱部51に、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33などを介して支持されている。他方の切削ユニット20は、
図1に示すように、支持フレーム5の他方の柱部52に、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33などを介して支持されている。なお、支持フレーム5は、柱部51,52の上端同士を水平梁53により連結している。
【0023】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0024】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22内に軸心回りに回転自在に設けられたスピンドル23と、スピンドル23に装着される切削ブレード21とを備える。
【0025】
撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0026】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を収容するカセット41が載置されかつカセット41をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ40と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット50と、カセット41に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200をカセット41、チャックテーブル10及び洗浄ユニット50との間で搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0027】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0028】
また、制御ユニット100は、
図1に示すように、加工条件登録部110と、立体画像データ生成部140と、パネル制御部150とを備える。
【0029】
加工条件登録部110は、表示パネル130に
図3に示す加工条件登録画面300を表示して、切削装置1の加工条件の入力を受け付け、加工条件を登録するものである。加工条件登録部110は、入力ユニット120の検出結果に基づいて、オペレータからの加工条件を登録する操作を受け付けると、
図3に示す加工条件登録画面300を表示パネル130に表示する。
【0030】
加工条件登録画面300は、第1条件入力部310と、第2条件入力部320と、第3条件入力部330とが設定されている。第1条件入力部310は、被加工物200の形状(
図3には、ワーク形状と示す)と、被加工物200の各種寸法(
図3には、サイズと示す)を入力するためのものである。実施形態において、第1条件入力部310は、
図3に示すように、被加工物200が方形ワークであるため、被加工物200の形状を入力するためのワーク形状の入力欄311ではSQUARE(方形)が選択される。また、実施形態では、被加工物200は、X方向の長さ81が80mm、Y方向の長さ82が150mmである。従って、第1条件入力部310は、長さ81を入力するためのCh1の入力欄312には80mmと入力され、長さ82を入力するためのCh2の入力欄313には150mmと入力される。さらに、実施形態では、被加工物200のZ方向の厚さ83は2mmであり、粘着テープ210(
図1参照)の厚さ84(
図6参照)は1mmである。従って、第1条件入力部310は、厚さ83を入力するためのワークの厚さの入力欄314には2mmと入力され、厚さ84を入力するためのテープの厚さの入力欄315には1mmと入力される。
【0031】
さらに、加工条件登録画面300の第2条件入力部320は、被加工物200において切削加工を施すことを禁止するカット禁止範囲を入力するためのものである。カット禁止範囲とは、Y方向の両端部に設定された、切削しない範囲を意味する。具体的には、
図2に示すように、-Y方向側を前側と称し、+Y方向側を後側と称すると、実施形態では、前側(-Y方向側)におけるカット禁止範囲85は、
図2に二点鎖線のハッチングで示すように、-Y方向側(前側)の端から+Y方向側(後側)に向けて長さ86=20mmまでの範囲である。実施形態では、+Y方向側(後側)におけるカット禁止範囲87は、
図2に二点鎖線のハッチングで示すように、+Y方向側(後側)の端から-Y方向側(前側)に向けて長さ88の10mmまでの範囲である。従って、第2条件入力部320は、長さ86を入力するための入力欄321には20mmと入力され、長さ88を入力するための入力欄322には10mmと入力される。
【0032】
次に、加工条件登録画面300における第3条件入力部330は、被加工物200に切削加工を施す際の切削ブレード21の保持面11からの高さ、チャックテーブル10のX方向の加工送り速度、Y方向のインデックス送り量、切削回数、切削ブレード21の厚さなどを入力するためのものである。以下、具体的に説明する。
図3に示す第3条件入力部330は、切削ブレード21の保持面11からの高さ、チャックテーブル10のX方向の加工送り速度、Y方向のインデックス送り量、切削回数で定められる切削加工を複数段階入力することができ、これら複数段階の切削加工の順序が定める欄335が設定されている。
【0033】
第3条件入力部330は、切削ブレード21の保持面11からの高さを入力するためのハイト331には、
図6に示すように、各切削加工の切削ブレード21のチャックテーブル10の保持面11(粘着テープ210の下面215)から上側(-Z方向側)に向かった高さ91(
図6参照)が入力される。実施形態では、粘着テープ210の厚さ84を1mmとあるので、粘着テープ210の下面215から上面216までの距離が厚さ84=1mmである。よって、実施形態において、第3条件入力部330は、切削ブレード21のチャックテーブル10の保持面11からの高さ91が1.2mmである場合には、ハイト331には、1.2mmと入力される。
【0034】
換言すると、切削ブレード21のチャックテーブル10の保持面11からの高さが1.2mmである場合は、切削ブレード21が粘着テープ210の上面216から上側に0.2mmの高さに位置する。さらに換言すると、切削ブレード21のチャックテーブル10の保持面11からの高さ91が1.2mmである場合は、切削ブレード21が被加工物200の上面201から下側(+Z方向側)に向けて1.8mm下がった高さに位置する。従って、切削ブレード21のチャックテーブル10の保持面11からの高さ91が1.2mmである場合は、切削ブレード21の切り込み深さ及び被加工物200の切削溝235の深さは1.8mmである。
【0035】
また、
図3に示された第3条件入力部330の送り速度332は、切削加工中の切削ブレード21がX方向に向けて送られる際の速度が入力される。
図3に示された第3条件入力部330のYインデッックス333は、所定の1本の切削溝を加工した後に、Y方向に隣接する次の1本の切削溝を加工するために、切削ブレード21がY方向へ移動するY方向の距離を表す。即ち、切削加工は、X方向に沿って一本の切削溝230を形成したのち、次の切削溝230を加工する際に、切削ブレード21を被加工物200に対してY方向に移動させるが、Yインデッックス333に入力されるY方向の距離は、切削ブレード21の被加工物200に対するY方向の移動量である。第3条件入力部330の回数334は、同一のYインデッックス333の条件のもとで、切削ブレード21がY方向に移動する回数が入力される。
【0036】
実施形態において、以上の
図3に示す第3条件入力部330の第1段階(No.1)の切削加工の加工条件は、切削ブレード21の保持面11からの高さ91が1.2mmで、切削ブレード21の送り速度が100mm/sで、Y方向のインデックス送り量が1mmで切削ブレード21をY方向に5回送るという加工条件である。第2段階(No.2)の加工条件は、切削ブレード21の保持面11からの高さ91が1.1mmで、切削ブレード21の送り速度が100mm/sで、Y方向のインデックス送り量が3mmで切削ブレード21をY方向に2回送るという加工条件である。第3段階(No.3)の切削加工の加工条件は、切削ブレード21の保持面11からの高さ91が0.95mmで、切削ブレード21の送り速度が100mm/sで、Y方向のインデックス送り量が5mmで切削ブレード21をY方向に1回送るという加工条件である。また、実施形態では、第3条件入力部330は、切削ブレード21の厚さを入力するためのブレード刃厚の入力欄336に0.05mmと入力される。
【0037】
加工条件登録部110は、加工条件登録画面300の各欄311,312,313,314,315,321,322,331,332,333,334,336に入力された数値を加工条件として記憶する。加工条件登録部110の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムを演算処理装置が実行して、入力された数値を加工条件として記憶装置に記憶することで実現される。
【0038】
次に、立体画像データ生成部140を説明する。立体画像データ生成部140では、加工条件登録部110に登録された加工条件登録画面300での被加工物200の加工を
シミュレーションし、
図4から
図6に示すように、加工された被加工物200の3次元的な立体画像データ401を生成し、表示パネル130に表示するものである。
【0039】
まず、立体画像データ生成部140は、加工条件登録画面300において登録された第1条件入力部310及び第2条件入力部320に入力された数値に基づいて、前述したように、
図2に示す加工前の被加工物200を示す立体画像データ401を生成する。立体画像データ生成部140は、入力ユニット120の検出結果に基づいて、加工条件登録画面300に設定された加工前の被加工物200を示す立体画像データ400を表示パネル130に表示するための加工前シミュレーション画像表示340の操作を検出すると、表示パネル130に立体画像データ400を表示する。
【0040】
また、立体画像データ生成部140は、第1条件入力部310、第2条件入力部320及び第3条件入力部330に入力された数値に基づいて、
図4に示す加工後の被加工物200を示す立体画像データ401を生成する。立体画像データ生成部140の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。以下に、立体画像データ401の内容を具体的に説明する。
【0041】
立体画像データ生成部140は、第1段階(No.1)の切削加工の加工条件に基づいて、第1段階(No.1)の切削加工の加工条件で形成される切削溝230を立体画像データ401に合成する。
図4及び
図5に示すように、立体画像データ401における切削溝230は、-Y方向側(前側)から+Y方向側(後側)に向けて設けられた、5本の切削溝231,232,233,234,235である。切削溝230は、深さが1.8mmであり、Y方向に隣接する切削溝同士のY方向の距離は1mmであり、幅は切削ブレード21の厚さと同じ0.05mmである。
【0042】
立体画像データ生成部140は、第2段階(No.2)の切削加工の加工条件に基づいて、第2段階(No.2)の切削加工の加工条件で形成される切削溝240を立体画像データ401に合成する。
図4及び
図5に示すように、立体画像データ401における切削溝240は、-Y方向側(前側)から+Y方向側(後側)に向けて設けられた、2本の切削溝241,242である。切削溝240は、深さが1.9mmであり、幅は切削ブレード21の厚さと同じ0.05mmである。また、切削溝235と切削溝241とのY方向の距離は1mmであり、切削溝241と切削溝242とのY方向の距離は3mmである。
【0043】
立体画像データ生成部140は、第3段階(No.3)の切削加工の加工条件に基づいて、第3段階(No.3)の切削加工の加工条件で形成される切削溝250を立体画像データ401に合成する。
図4に示すように、立体画像データ401における切削溝250は、1本の切削溝250である。切削溝250は、深さが2.05mmであり、幅は切削ブレード21の厚さと同じ0.05mmである。即ち、切削溝250は、被加工物200を厚さ方向に切断している。また、切削溝242と切削溝250とのY方向の距離は3mmである。
【0044】
パネル制御部150は、表示パネル130に表示した画像を拡大又は縮小させて表示するとともに、表示パネル130に表示した画像の向きを変更して表示するためのものである。パネル制御部150は、入力ユニット120の検出結果に基づいて判別したジェスチャに基づいて、表示パネル130に表示した画像を拡大又は縮小させて表示するとともに、表示パネル130に表示した画像の向きを変更して表示する。
【0045】
このために、実施形態では、パネル制御部150は、
図4に示すように、立体画像データ401を表示した表示パネル130に重ねられた入力ユニット120の検出結果に基づいて、立体画像データ401の一部を拡大して表示するジェスチャを検出すると、
図5に例示するように、表示パネル130に立体画像データ401の一部を拡大して表示する。また、実施形態では、パネル制御部150は、
図4に示すように、立体画像データ401を表示した表示パネル130に重ねられた入力ユニット120の検出結果に基づいて、立体画像データ401の一部を拡大しかつ向きを逆向きにして表示するジェスチャを検出すると、
図6に例示するように、表示パネル130に立体画像データ401の一部を拡大しかつ向きを逆向きにして表示する。こうして、パネル制御部150により表示パネル130に表示される立体画像データ400,401の表示倍率は、任意に調整でき、表示パネル130に表示される立体画像データ400,401の表示角度は、任意に調整できる。パネル制御部150の機能は、記憶装置に記憶されたプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。
【0046】
こうして、
図6に示す立体画像データ401では、切削溝235の深さが1.8mm、切削溝235の幅が0.05mm、被加工物200の厚さが2.0mmであることが更に明瞭に視認可能となる。
【0047】
また、表示パネル130の表示画面は、
図4、
図5及び
図6に示す立体画像データ401を表示すると、加工条件登録画面300に戻るための戻る600が設定されている。制御ユニット100は、入力ユニット120の検出結果に基づいて、立体画像データ401の表示パネル130の表示画面の戻る600の操作を検出すると、加工条件登録画面300を表示パネル130に表示する。
【0048】
前述した構成の切削装置1は、
図3に示す加工条件登録画面300から各加工条件が登録され、加工条件が登録される際には、オペレータが
図4、
図5及び
図6に示す立体画像データ401を確認して行われる。切削装置1は、加工条件が登録され、加工前の被加工物200を備えるフレームユニット220を収容したカセット41がカセットエレベータ40に設置され、例えば、加工条件登録画面300の加工開始342の操作を検出すると加工動作を開始する。
【0049】
加工動作では、カセット41から被加工物200を備えるフレームユニット220が取り出されてチャックテーブル10に載置される。チャックテーブル10の保持面11に被加工物200が吸引保持され、環状フレーム211がクランプ12によって保持される。チャックテーブル10に保持された被加工物200は、撮像ユニット30によって撮像され、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントが遂行される。こののち、詳細に後述するように、切削ブレード21によって被加工物200が切削加工される。その後、切削加工後の被加工物200が洗浄ユニット50で洗浄されたのち、カセット41に戻される。このようにして、カセット41の内部の被加工物200全てを切削加工すると加工動作が終了する。
【0050】
切削ブレードで被加工物200に切削加工を施す工程を、以下に具体的に説明する。
図7は、切削ブレードで被加工物を切削している状態を示す断面図である。
図8は、切削ブレードで被加工物の切削が完了した状態を示す断面図である。
【0051】
図7に示すように、切削ブレード21は回転軸24を中心として回転する。被加工物200の上面201に対して回転軸24を平行に配置すると、被加工物200の上面201に対して切削ブレード21が直交して配置される。上面201に対して回転軸24を平行に保ったまま切削ユニット20を下降させると、被加工物200の上面201から下方に向かう切削溝が形成される。
図7では、切削溝533を加工している状態を示す。
図3で説明した加工条件登録画面300での加工条件で切削加工を行った場合、
図8で示す切削溝が形成される。
図4及び
図5に示す立体画像データ401の切削溝230は、
図8に示す切削溝530と対応する。切削溝530は、-Y方向側(前側)から+Y方向側(後側)に向けて設けられた、5本の切削溝531,532,533,534,535である。5本の切削溝531,532,533,534,535は、立体画像データ401である5本の切削溝231,232,233,234,235とそれぞれ対応する。
図4及び
図5に示す立体画像データ401の切削溝240は、
図8に示す切削溝540と対応する。2本の切削溝541,542は、立体画像データ401である2本の切削溝241,242とそれぞれ対応する。
図4に示す立体画像データ401の切削溝250は、
図8に示す切削溝550と対応する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る切削装置1は、被加工物200を保持面11で保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10で保持された被加工物200を切削ブレード21で切削する切削ユニット20と、被加工物200を加工する加工条件が登録される加工条件登録部110と、入力ユニット120で入力された加工条件を表示する表示パネル130と、各構成要素を制御する制御ユニット100と、を備える。加工条件登録部110には、被加工物200の形状及び大きさ、切削ブレード21の切り込み深さが登録され、制御ユニット100は、加工条件登録部110に登録された加工条件での被加工物200の加工をシミュレーションし、加工された被加工物200の3次元的な立体画像データ401を生成する立体画像データ生成部140を有し、立体画像データ401を表示パネル130に表示させる。
【0053】
このように、入力された加工条件で加工される被加工物200の3次元的な立体画像データ401が表示パネル130に表示されるため、その立体画像データ401をオペレータが視認することにより、入力した加工条件が正しいか誤っているかをオペレータが直感的に判断することができる。すなわち、誤った数値の加工条件が入力された場合、立体画像データ401の形状や大きさが正当なものと異なって表示されるため、直感的かつ容易に加工条件が誤っていることに気付くようになる。よって、実施形態によれば、誤った加工条件が入力及び登録されることが抑制される。
【0054】
立体画像データ401の表示倍率は、任意に調整できるため、小さい表示部分を拡大して見やすくすることにより、非常に微細な加工であっても、加工条件が正しいか誤っているかを更に直感的に判断することができる。例えば、前述したように、
図5に示す切削溝235を更に拡大したい場合、任意の倍率を指定してオペレータが指で切削溝235の部位をタッチすると、
図6に示す拡大図が表示される。よって、実施形態によれば、誤った加工条件が入力されることが更に抑制される。
【0055】
立体画像データ401の表示角度は、任意に調整できるため、特定の表示部分の表示角度を変えて見やすくすることにより、立体画像データ400の細部まで正確な把握ができ、加工条件が正しいか誤っているかを更に直感的に判断することができる。例えば、
図5に示す切削溝235の表示角度を変更したい場合、任意の表示角度を指定してオペレータが指で切削溝235の部位をタッチすると、
図6に示すように、
図5とは表示角度が変更された拡大図が表示される。よって、実施形態によれば、誤った加工条件が入力されることが更に抑制される。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 切削装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 切削ユニット
21 切削ブレード
100 制御ユニット
110 加工条件登録部
120 入力ユニット
130 表示パネル
140 立体画像データ生成部
200 被加工物
401 立体画像データ