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特許7450388電子装置用基板の封止方法及び封止された電子装置用基板
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  • 特許-電子装置用基板の封止方法及び封止された電子装置用基板 図1
  • 特許-電子装置用基板の封止方法及び封止された電子装置用基板 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】電子装置用基板の封止方法及び封止された電子装置用基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/14 20060101AFI20240308BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L23/14 R
B29C39/10
C08L83/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019238731
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108319
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】719000328
【氏名又は名称】ダウ・東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 真一
(72)【発明者】
【氏名】山崎 亮介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 伸
【審査官】井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219638(JP,A)
【文献】特開2016-082156(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14
B29C 39/10
C08L 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
工程1:減圧チャンバー内で、前記チャンバー内に配置した基材に対して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを、前記シート又はフィルムが後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置する工程、あるいは、減圧チャンバー内で前記チャンバー内に配置した基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載置する工程、あるいは、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムが基材と予め接するように載置した基材を減圧チャンバー内に設置する工程、
工程2:前記減圧チャンバー内を所定の圧力まで減圧する工程、
工程3:減圧下で、減圧チャンバー内を加熱して硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを溶融させて基材と密着させ、さらに必要に応じて、当該密着後の基材および前記のシート又はフィルムのいずれか又は両方を加圧して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを前記基材に圧着させる工程、及び
工程4:前記減圧チャンバー内の減圧を解除して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層、その硬化層および半硬化層からなる群から選ばれる層と、前記層と接した基材を含む積層体を前記チャンバーから取り出す工程、
を含む、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層と前記層と接した基材とを含む積層体を製造する方法であって、
前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、下記成分(A’)、(B1’)、(C’)、及び(D’)を必須成分として以下の割合で含み、組成物全体としてホットメルト性を示し:
(A’)下記の(A1-1’)成分および(A2-1’)成分を0:100~90:10の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂 100質量部
(A1-1’)下記平均単位式:
(R SiO 1/2 (R SiO 2/2 (R SiO 3/2 (SiO 4/2 (R 1/2
(式中、各R は独立して1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり、但し1分子中の全R の1~12モル%がアルケニル基であり;各R は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0≦d≦0.65、0≦e≦0.05、但し、c+d>0.20、かつa+b+c+d=1)
で表される、それ単独ではホットメルト性を有しない、25℃で固体のオルガノポリシロキサン樹脂である;
(A2-1’)下記平均単位式:
(R SiO 1/2 (R SiO 2/2 (R SiO 3/2 (SiO 4/2 (R 1/2)j
(式中、各R は独立して1~10個の炭素原子を有するアルキル基;R は水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;f、g、h、i及びjは、以下を満たす数である:0.35≦f≦0.55、0≦g≦0.20、0≦h≦0.20、0.45≦i≦0.65、0≦j≦0.05、かつf+g+h+i=1)
で表される、それ単独ではホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂である;
(B1’)下記構造式:
SiO(SiR O) SiR
(式中、各R は独立して1~10個の炭素原子を有するアルキル基又は2~10個の炭素原子を有するアルケニル基であり、但し1分子中のR の少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される、分子鎖両末端に各々1個ずつアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン 10~100質量部;
(C’)下記平均組成式(2’)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(HR SiO 1/2 (R SiO 2/2 (SiO 4/2 (2’)
式(2’)中、R はそれぞれ独立に炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換されたアルキル基であり、e、f、及びgは、0.01≦e≦0.6、0≦f≦0.9、0.2≦g≦0.9、及びe+f+g=1の条件を満たす数である;
及び/又は、下記平均組成式(3’)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
(HR SiO 1/2 (R SiO 2/2 (R SiO 3/2 (3’)
式(3’)中、R 及びR はそれぞれ独立に炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換された一価炭化水素基であり、全てのR のうち少なくとも10モル%はアリール基であり、かつ、h、i、及びjは、0.01≦h≦0.6、0≦i≦0.9、0.2≦j≦0.9、及び、h+i+j=1の条件を満たす数である(ここで、成分(C)の量は、組成物全体に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当たりのケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5~20.0個となる量)、及び
(D’)ヒドロシリル化反応触媒 本組成物を硬化させるのに十分な量;
ただし、前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの100℃においてフローテスターによって2.5MPaの圧力で測定される(極限シェアレートでの)溶融粘度が5000Pa・s以下である、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記の減圧チャンバー内で、前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを、前記シート又はフィルムが後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置する工程、又は減圧チャンバー内で前記チャンバー内に配置した基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載置する工程を減圧下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記の減圧チャンバー内で、前記チャンバー内に配置した基材に、前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを、前記シート又はフィルムが後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置する工程、又は減圧チャンバー内で前記チャンバー内に配置した基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載置する工程を大気圧下で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物が熱硬化性であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記の工程1において、後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置された又は前記基材に予め載置された硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの前記基材と後の工程で接することになる面又は前記基材と接している面とは別の面に、前記基材と同一または異なる基材が、前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムと後の工程において接するようにすることができるようにさらに配置されているか、あるいは前記別の面に前記基材と同一または異なる基材がさらに前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムと予め接するように載置されていることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記の工程1~4を含む請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法により得られた、基材とその一つの面に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムに由来する硬化性ホットメルトシリコーン組成物層が積層された積層体の、硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の前記基材と接していない側の外面に対して、工程1~4と同様にして、前記基材と同一または異なる基材をさらに積層することを特徴とする、同一又は異なる2つの基材とその間に介装された硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を有する積層体の製造方法。
【請求項7】
硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを基材に圧着させる時の温度が50℃以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡便かつ、低コストで基材、特に電子装置用基板、例えば半導体素子を搭載する半導体装置を硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムで封止する方法、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムと基材、特に電子装置用基板からなる積層体、並びに、当該積層体からなる電子部品に関する。電子装置用基板には、電子回路基板及び電子回路実装基板も含まれる。
【背景技術】
【0002】
電子部品に利用される素子が搭載された電子装置用基板(例えば半導体素子を搭載する半導体装置)は、その素子を外部から守り耐久性を向上させるために封止剤を用いて封止されることがある。また、電子部品や電子装置用基板を接合させるために、接着剤が使われることもある。優れた耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、耐候性、撥水性、及び透明性を有する硬化物を形成することから、硬化性のシリコーン組成物が封止剤として使用されることが多い。
【0003】
ここで、封止面積や接着面積が大きくない場合は、室温で液状の硬化性シリコーンをディスペンスにより基材に塗布し、続いて当該組成物を硬化させて封止層や接着層とすることが一般的である。
【0004】
一方、封止・接着すべき面積が大きくなると、室温で液状の硬化性シリコーン封止剤を用いることが難しくなることが知られており、例えば、封止剤として用いる場合、特許文献1で開示されている様なコンプレッション成形を用いたり、特許文献2で開示されている様なダム材を用いて液状の封止剤が流れるの堰き止めて封止する方法などがある。しかし、コンプレッション成形では基板の外に封止剤が漏れ出て、成形後にいわゆるバリが形成され、その除去が煩雑である、または成形用の金型自体が高額であるといった問題がある。
【0005】
また、ダム材を用いたディスペンス処方は2種類の材料が必要であることや、大面積を封止する場合、ディスペンス後に発生する泡を除去する工程が煩雑であるという問題がある。
【0006】
一方、接着剤としてシリコーン組成物を用いる場合も同様で、接着面積が大きくなると、液状の硬化性シリコーン組成物を用いると、得られる接着層から完全に泡を除去するのが難しいという問題がある。
【0007】
また、特許文献3及び4にはホットメルト性のシリコーンフィルムを用いて真空ラミネーションにより半導体素子を封止する工程が提案されている。しかしながら、ここで開示されているシリコーンフィルムは高温状態で軟化するだけで、完全に溶融するわけではないので、液状化することによって、細かい凹凸を有する電子装置用基板の上に平坦な表面を形成しつつ封止することができず、いわゆるコンフォーマルコーティングが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4607429号公報
【文献】特開2014-237834号公報
【文献】国際公開第2019/049794A1号
【文献】国際公開第2019/049791A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ホットメルト性に優れた硬化性シリコーン組成物シート又はフィルムを用いて基材、特に電子装置用基板を所定の方法で処理する事により、ボイドなどを含まない平坦なシリコーン封止及び/又は接着層を簡易、迅速、かつ低コストで基材、特に電子装置用基板上に形成する方法、並びにシリコーン組成物により封止及び/又は接着された信頼性に優れた電子装置を提供することにある。本発明において、ホットメルト性とは、その物の軟化点が50℃~200℃の範囲内であり、加熱により軟化して形状を変えることができる、あるいは加熱によって流動可能になることをいう。「硬化性ホットメルトシリコーン組成物」とは、ホットメルト性を有する硬化性のシリコーン組成物をいう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
鋭意検討の結果、本発明者らは、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを用いて、以下の工程を含む方法を用いることにより、基材、例えば、電子装置用基板、特に電子回路基板又は電子回路実装基板の上に、ボイドなどを含まないシリコーン封止及び/又は接着層を形成でき、それによって信頼性に優れた電子装置を提供できることを見出した。したがって、本発明は、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層とその層と接した基材、特に電子装置用基板とを含む積層体を製造する方法を提供し、その方法は以下の工程:
工程1:減圧チャンバー内で、前記チャンバー内に配置した基材に対して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを、前記シート又はフィルムが後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置する工程、あるいは、減圧チャンバー内で前記チャンバー内に配置した基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載置する工程、あるいは、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムが基材と予め接するように載置した基材を減圧チャンバー内に設置する工程、
工程2:前記減圧チャンバー内を所定の圧力まで減圧する工程、
工程3:減圧下で、減圧チャンバー内を加熱して硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを溶融させて基材と密着させ、さらに必要に応じて、当該密着後の基材および前記のシート又はフィルムのいずれか又は両方を加圧して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを前記基材に圧着させる工程、及び
工程4:前記減圧チャンバー内の減圧を解除して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層、その硬化層および半硬化層からなる群から選ばれる層と、前記層と接した基材を含む積層体を前記チャンバーから取り出す工程、
を含み、
ただし、前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの100℃においてフローテスターによって2.5MPaの圧力で測定される(極限シェアレートでの)溶融粘度が5000Pa・s以下である、ことを特徴とする。
【0011】
なお、JIS包装用語規格では、厚さが250μm未満のものをフィルム、250μm以上のものをシートとよび、本明細書においてもシート及びフィルムという用語を用いているが、本明細書ではこれらをあわせて単に「シート」ともいう。したがって、本明細書において単に[シート]といった場合でもその厚さは250μm以上のもののみならず250μm未満のものも含む。
【0012】
ここで、「前記シート又はフィルムが後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置する」とは、当該基材とシート又はフィルムとを減圧チャンバーに入れる際には互いに直接接していないものの、工程2以降において減圧チャンバー内で基材にシート又はフィルムが直接接するようにすることができる任意の手段を介して、減圧チャンバー内で当該基材とシート又はフィルムを配置することをいい、そのような手段としてコンプレッション成形機、リフトピン昇降式真空ラミネーター、又は専用治具を用いた真空熱プレスやダイヤフラム式真空ラミネーター等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0013】
また、「減圧チャンバー内で前記チャンバー内に配置した基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載置する」とは、減圧チャンバー内で、基材に直接接するように硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載せることを意味する。
【0014】
また、「硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムが基材と予め接するように載置した基材を減圧チャンバー内に設置する」とは、当該シート又はフィルムと基材を予め直接接するようにした状態で、減圧チャンバー内に設置することを意味する。この場合、当該シート又はフィルムと基材との位置関係は上下、左右等がいずれの状態であってもよい。
【0015】
また、本発明において大気圧とは、本発明の硬化性シリコーン組成物を実験室又は工場等で取り扱う環境における大気圧をいい、特定の圧力に限定されないが、通常は、1気圧(1013.25hPa)からマイナス100hPaからプラス100hPaの範囲に入る気圧をいい、特に1気圧(1013.25hPa)をいう。
また、本明細書において、室温とは、本発明の硬化性シリコーン組成物を取り扱う者がいる環境の温度をいう。室温は、一般的には、0℃~40℃、特に15~30℃、とりわけ18℃~25℃をいう。
【0016】
本発明の一態様では、上記工程1において、減圧チャンバー内で、前記チャンバー内に配置した基材に対して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを、前記シート又はフィルムが後の工程、具体的には例えば工程3において前記基材と接するようにすることができるように、前記基材に対して配置する工程は減圧下で行うことができ、別の態様では大気圧下で行うことができる。同様に、工程1において、減圧チャンバー内で基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを基材に接するように載置する工程は、適切な手段を用いて減圧下で行うことができ、別の態様では大気圧下で行うことができる。
【0017】
上記硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、UV硬化性、及び/又は熱硬化性であることができるが、熱硬化性であることが好ましい。
【0018】
本発明の一つの態様では、上記の工程1において後の工程において基材と接するようにすることができるように配置された硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの前記基材と後の工程で接することになる面、又は工程1において基材に予め載置された硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの前記基材と接している面とは別の面に、前記の基材と同一または異なる基材が、前記の硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムと後の工程において接するようにできるようにさらに配置されているか、あるいは基材に予め載置された硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの前記基材と接している面とは別の面に前記基材と同一または異なる基材がさらに前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムと予め接するように載置されている。この態様の製造方法によれば、最終的に、2つの同一又は異なる基材の間に硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムに由来する硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層が介装された構造、詳細には、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムに由来する硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層が2つの同一又は異なる基材の間に存在している構造、代表的には、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムに由来する硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層が2つの同一又は異なる基材の間に挟まれた構造の積層体が得られる。この態様は、同一又は異なる2つの基材がその間に介在するシリコーン接着剤で接着された積層体である。
【0019】
本発明の別の態様では、上述した工程1~4を含む製造方法により得られた、基材とその一つの面に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムに由来する硬化性ホットメルトシリコーン組成物層が積層された積層体の、硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の前記基材と接していない側の外面に対して、工程1~4と同様にして、前記基材と同一または異なる基材をさらに積層する、同一又は異なる2つの基材とその間に介装された硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を有する積層体の製造方法を提供する。
【0020】
本発明で用いる硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、RSiO3/2で表されるシロキサン単位及び/又はSiO4/2で表されるシロキサン単位、好ましくはSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂を含有することが好ましい。
【0021】
上述した式RSiO3/2において、Rは、独立に置換もしくは非置換のアルキル基、好ましくはC~C12アルキル基、特にメチル基、又は置換もしくは非置換のアリール基、好ましくはC~C20アリール基、特にフェニルを表し、アリール基、特にフェニル基であることが好ましい。
【0022】
本発明の積層体の製造方法においては、硬化性ホットメルトシリコーン組成物として、少なくとも、
(A)SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、好ましくは25℃において固体であるオルガノポリシロキサン樹脂、及び
(B)25℃において液状の又は可塑性を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン、
を含有する組成物を用いることが特に好ましい。
【0023】
上述した工程3において硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを基材に圧着させる時の温度は、50℃以上であることが好ましい。
【0024】
本発明は、上述した積層体の製造方法によって製造された積層体も提供する。
【0025】
本発明の上記積層体は、基材に積層された硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層が、未硬化の状態であるもの、及び半硬化状態であるものの両方を包含する。
1つの基材に未硬化又は半硬化の状態の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層が積層された積層体は、その硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の外面にさらに別の基材を積層させて、(第一の基材-硬化性ホットメルトシリコーン組成物層-第二の基材)の構成の積層体を製造ために用いることもできる。
【0026】
本発明は、上記の、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層を硬化させて得られる、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層が硬化した状態である積層体も提供する。
【0027】
本発明は上記の製造方法によって製造した積層体を含む電子部品も提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の積層体の製造方法を用いることによって、簡便かつ低コストで、基板、特に電子装置用基板、例えば電子回路基板又は電子回路実装基板、特に、半導体素子を搭載する半導体装置基板を、ボイドなどの欠陥の発生を抑制しつつシリコーン樹脂で封止及び/又は接着でき、その結果、高い信頼性を持った電子部品を安定して製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、ダイヤフラム型真空ラミネーター及びラミネーション治具を用いて実施される、本発明に係る積層体の製造方法の一例を示す模式的な断面図である。
図2図2は、実施例において使用した、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを製造するための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下において、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0031】
[基材と硬化性ホットメルトシリコーン組成物層からなる積層体の製造方法]
本発明に係る積層体の製造方法は、以下の工程:
工程1:減圧チャンバー内で、前記チャンバー内に配置した基材に対して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを、前記シート又はフィルムが後の工程において前記基材と接するようにすることができるように配置する工程、あるいは、減圧チャンバー内で前記チャンバー内に配置した基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを載置する工程、あるいは、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムが基材と予め接するように載置した基材を減圧チャンバー内に設置する工程、
工程2:前記減圧チャンバー内を所定の圧力まで減圧する工程、
工程3:減圧下で、減圧チャンバー内を加熱して硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを溶融させて基材と密着させ、さらに必要に応じて、当該密着後の基材および前記のシート又はフィルムのいずれか又は両方を加圧して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを前記基材に圧着させる工程、及び
工程4:前記減圧チャンバー内の減圧を解除して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層、その硬化層および半硬化層からなる群から選ばれる層と、前記層と接した基材を含む積層体を前記チャンバーから取り出す工程、
を含む。
ここで、本発明においては、前記硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムとして、100℃においてフローテスターによって2.5MPaの圧力で測定される(極限シェアレートでの)溶融粘度が5000Pa・s以下である硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムを用いる。
この方法によって、ボイド等の欠陥を抑制して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層と前記層と接した基材とを含む積層体を製造することができる。
【0032】
本発明の方法によれば、減圧下で硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルム(以下、単に「シート」と記載しても別段の規定がないかぎりシートにはフィルムも含まれる)を加熱して当該シートを溶融させ、基材、例えば、電子装置用基板と圧着させる工程により、シリコーン組成物シートと基板との間に気泡が入ることなく、基板をシリコーン組成物層で覆うことができ、基板をシリコーン組成物で封止すること、又は2つの基板をシリコーン組成物で接着して、2つの基板がその間に介在するシリコーン組成物で接着された積層体ができる。これにより、簡便に表面が平坦な封止層を持った電子装置基板、例えば電子回路基板又は電子回路実装基板、特に、半導体素子を製造できる。また、簡便に、2つの同一又は異なる基材を、接着面にボイドなどの欠陥がない又は欠陥がきわめて少ない状態で、シリコーン組成物で接着することができる。特に本発明の方法では、基板に対して硬化性ホットメルトシリコーン組成物を加熱かつ圧着させるときに、シリコーン組成物の溶融粘度が十分に低くなるホットメルトシリコーン組成物シートを用いるため、基材が細かい凹凸を有する基板、特に大面積の基板であっても、基板とシリコーン組成物の間に気泡が入ることなく、素早く簡便に基板を硬化性シリコーン組成物で封止することができ、あるいは2つの基板を硬化性シリコーン組成物で接着することができる。さらにこの硬化性シリコーン組成物を硬化させることによって、硬化したシリコーン組成物層が基板に積層された、すなわち基板が硬化したシリコーン組成物で封止された積層体、又は2つの基板がそれらの間に介在した硬化したシリコーン組成物で接着された積層体を得ることができる。以下、上記各工程について詳細に説明する。
【0033】
[工程1及び工程2]
工程1は、減圧チャンバー内に配置した基材、通常は基板であり、特定の基板に限定されないが、好ましくは電子装置用基板、例えば電子回路基板又は電子回路実装基板など、及び硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート(以下シートにはフィルムも含む)を、後の工程においてその基材と硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシートが接するようにすることができるように減圧チャンバー内に適切に配置する工程、あるいは、減圧チャンバー内に基材を配置し、その基材上に硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシートを載置する工程、又は硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシートを基材上に予め載置した基材を減圧チャンバー内に設置する工程である。この工程1は基材の形状により、以下に示す工程1-1と工程1-2のいずれかであってよい。工程1-1と工程1-2のいずれが好ましいかは、基材表面に硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを接触させ、そのシートを加熱溶融して基材表面に圧着するときに、基材の形状によって基材と硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートの間から気泡が抜けやすいか否かによって異なる。
【0034】
工程1-1:基材表面に凹凸が多い場合。
硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートをその上に接触させ、その後密着させる基材表面、例えば電子装置用基板の表面に凹凸がある場合は、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを基材表面に圧着させる際に基材表面とシリコーン組成物シートの間から気泡が抜ける経路が多くなって気泡が抜けやすくなるために、特別な操作をしなくても、減圧下で加熱することによりシリコーン組成物シート(以下、簡単のためにこれを「封止シート」ともいう)を溶融させて基材表面に圧着させるときに、ほぼすべての泡が基板と封止シートの間から外へ抜ける。このため、表面に凹凸が多い基材を本発明の封止シートで封止する場合は、減圧チャンバーに基材及び封止シートを入れる前に、予め、任意の温度、例えば室温にて当該基材表面に封止シートを載置して付着させることができ、それは好ましい実施態様の一つである。この時、基板と封止シートの間に若干の空気層、いわゆるボイドが残っていても問題ないが、任意の方法、例えば、ゴムローラーを使用して基板と封止シートの間に残っている空気層を押し出して取り除いてもよい。
なお、封止シートを付着させる基材表面は、基材表面全体の一部又は全部であってよく、例えば、基材である基板の片面、あるいはさらにその一部であってもよい。
【0035】
次に、上記の様に封止シートが表面に載置された基材を、加熱手段を備えた減圧チャンバーの中に設置する。この様な減圧チャンバーとしては、例えばコンプレッション成形機、真空プレス、真空ラミネート装置などが例示されるが、真空ラミネート装置を好適に使用できる。減圧チャンバーは基材をチャンバー内に設置する前に所定の温度に加熱しておくことが好ましい。つまり、この場合、封止シートが表面に付着された基材を、加熱された減圧チャンバー内に設置した時点から封止シートは加熱され始め、所定の温度に達すると封止シートは溶融し始める。減圧チャンバー内の好適な温度は、使用する封止シートの溶融特性に依存するが、減圧チャンバー内の温度を50℃以上に設定することが好ましく、70℃以上に設定することがさらに好ましい。後述する工程3において、シリコーン組成物シートの硬化も併せて行う場合は、短時間で硬化できるという観点から減圧チャンバー内の温度を150℃以上に設定することが好ましい。
【0036】
上で説明した、基材上に封止シートを基材表面と少なくとも一部が接するように載置する工程は、減圧チャンバー内で行うこともできる。
【0037】
工程1-1に続く工程2:
次に、封止シートがその表面上に載置された基材が入った減圧チャンバー内を所定の圧力に減圧にする。チャンバー内の減圧は、従来公知の減圧手段によって行うことができ、例えば、減圧チャンバーの内部を減圧できるように減圧チャンバーに接続された真空ポンプを稼働させることにより、減圧を行うことができる。通常、減圧チャンバー内の気圧は300Pa以下、好ましくは、200Pa以下、あるいは133Pa以下まで減圧される。
【0038】
工程1-2:基材表面に凹凸が少ない場合
使用する基材表面に凹凸が少ない場合は、減圧下で、封止シートと基材表面の間に存在する泡が抜ける経路が少なくなり、封止シートと基材を加熱し圧着したときに、それらの間に存在する泡、いわゆるボイドが封止シートと基材の界面から完全に抜けきらない場合がある。工程1-2はそのような場合に使用するのに好ましい工程であり、加熱圧着した後の封止シートと基材との間に気泡、いわゆるボイドが残ることを防止することを目的として、封止シートを基材表面に載置させる工程自体を減圧下、特に減圧チャンバー内にて減圧下で行うことが好ましい。この場合、減圧チャンバー内で、減圧チャンバー内に配置した基材に対して、封止シートを、封止シートが後の工程、特に、封止シートを加熱溶解させて基材に密着させるときに基材と接するようにすることができるように配置しておくことが好ましい。そのためには、例えば、減圧チャンバーの上部に基板を吸着させる機構、専用の治具、リフトピン昇降機構などの後で述べる適切な手段を用いて、基材と封止シートを互いに直接接していない状態で減圧チャンバー内に配置することができる。
【0039】
この場合、基材表面に封止シートを載置して接触させる時に、基材、例えば基板はその温度が、封止シートが溶融可能な温度に達していることが好ましい。これは減圧下で、封止シートを溶融させながら、基板表面に載置して密着させることで、封止シートと基材の間に空気の層、例えばボイドが実質的に発生しないため、封止シートと基材との間に残るボイドが生じないからである。この場合、たとえ減圧下で封止シートと基材表面の間にボイドがあったとしても、その後の溶融した封止シートと基材を加圧して密着させる工程で、ボイドは消失する。この方法を実施するためには、減圧下で基材表面に封止シートを載置して接触させることができる任意の手段を用いることができる。例えば、そのような手段を備えた特殊な減圧チャンバーを用いることができ、その手段は特に限定されないが、例えば、チャンバーの上部に基板を吸着させる機構、リフトピン昇降機構を有する減圧チャンバー、又は専用の治具の使用などが挙げられる。減圧機構、加熱機構、圧着機構が揃った機器ならばどの様な機器を用いても良いが、加える圧力が低く、基板に掛かる負荷が少ないという観点からダイアフラム式の真空ラミネーターが好適に使用できる。実施が簡便であるという理由から専用のラミネーション治具を用いた、ダイアフラム型真空ラミネーターの使用が好ましい。例えば、ラミネーション治具は、スプリング等の弾性体で封止シートを支える構造を有しており、ダイアフラムゴム膜が定常位置にある場合は、封止シートを加熱手段から離しておくことができ、ダイアフラムゴム膜に圧力がかかった場合、ラミネーション治具に備えられた弾性体を押圧して封止シートを加熱手段に接することができるように設計できる。また、ラミネーション治具は、ダイアフラムゴム膜がラミネーション治具を押圧する場合であっても、ダイアフラムゴム膜が基材、例えば基板及び封止シートに直接接しないように基材及び封止シートを保護する構造を有していてもよい。
工程1-2は、減圧チャンバー内で基材上に封止シートを載置し接触させる場合と、予め基材上に封止シートを載置したものを減圧チャンバー内に設置する場合の両方で採用することができる。
【0040】
工程1-2に続く工程2:
上述した工程1-2に続いて、減圧チャンバー内を目標とする所定の圧力まで減圧する。この場合、減圧チャンバー内において減圧下で基材上に封止シートを載置して接触させ、減圧チャンバー内が減圧になっている場合には、工程2は減圧チャンバーが所定の圧力に減圧されているかどうか確認するだけでもよい。
【0041】
[工程3]
工程3:熱圧着工程
本工程は、工程1、すなわち工程1-1又は工程1-2において、基材表面の一部又は全部に封止シートを載置した積層体の封止シートを加熱によって溶融状態とし、低い圧力で、溶融した封止シートを基材に押圧し密着させることで、封止シートと基材を仮接着又は接着硬化させる工程である。封止シートは後述するホットメルト性を有するシリコーン組成物からなるが、封止シートを基材に圧着させる時はシートが溶融している必要があり、したがって、ホットメルトシリコーン組成物の溶融温度以上の温度で行われ、その温度は50℃以上、好ましくは70℃以上である。本工程は減圧下で行われるため、工程1-1又は1-2及び工程2の条件を適切に選択することによって、基材に封止シートを加熱圧着した後で封止シートから形成された封止層に、特に封止層と基材の界面に泡が残らないようにすることが可能である。
【0042】
封止シートの加熱は、減圧チャンバーに備えられた加熱手段により行われる。例えば、加熱手段としては、減圧チャンバー内に備えられた熱板を利用できる。通常、封止シートは、封止シートが載置されたあるいは後工程で封止シートが載置されることなる基材、例えば、半導体基板を加熱することにより加熱される。例えば、加熱手段として熱板を利用する場合、基材と熱板を接触させることにより、基材を介して封止シートに熱が伝わり、それによって封止シートが加熱される。
【0043】
熱圧着工程において基材と封止シートに加える圧力を提供する方法は特に限定されないが、例えば、圧縮空気を用いてゴムを膨らませるダイアフラム方式や、油圧や空圧によりプレスを動かすことで加えるプレス方式などが例示される。だた、加える圧力が高すぎると、基材として電子装置用基板を用いた場合に基板上に実装された素子等の備品を変形・破損させてしまう恐れがあり、また、封止シートは熱圧着時に溶融しているので、封止したい範囲外に、溶融した封止シートが流れ出てしまう恐れがあるため、低圧力で基材に溶融した封止シートを圧着させることが好ましい。具体的には基材と封止シートに加える圧力は、1.2MPa以下、好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。
【0044】
通常、封止シートを基材に熱圧着するだけなら、圧着に要する時間は1分以内である。しかし、使用する封止シートを基材と圧着させるとともに硬化性ホットメルトシリコーン組成物の硬化もさせたい場合は、熱圧着温度を150℃以上に設定し、5~10分程度、基材と封止シートを圧着させることが好ましい。
このときに、封止シートを構成する硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化するために必要な条件を満たさないようにすることによって、封止シートが未硬化又は半硬化の状態の、基材とそれに密着した封止シートから構成される積層体が得られる。
このようにして得られた積層体の封止シート表面、すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層はその表面の平坦性が良好でありうる。ここで、平坦とは、得られたシート又はフィルムの厚さが±100μm以下の範囲内、好ましくは、±50μm以下の範囲内、さらに好ましくは±30μm以下の範囲内であることを意味する。
【0045】
工程4:減圧の解除
工程4は、減圧チャンバー内の減圧を解除して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層とその層に接した基材を含む積層体、すなわち、上述した封止シートにより封止された基材、例えば半導体基板などの電子装置用基板を減圧チャンバーから取り出す工程である。封止シートが減圧時の温度で溶融せずに軟化するだけの場合は、本工程は、減圧チャンバー内の減圧時の圧力と減圧解除後の外気との気圧差によって封止シートを基板に対して圧着させる工程となりうる。しかし、本発明の方法では、用いる封止シートをチャンバー内の温度で溶融し、減圧下において基材と熱圧着させるので、本工程は、熱圧着工程で得られた基材と基材に密着した封止シートからなる積層体を取り出す工程である。「減圧チャンバー内の減圧を解除する」とは、通常、減圧チャンバー内に外気を入れて、減圧チャンバー内の圧力を大気圧まで戻すことを意味する。減圧から大気圧まで戻す速度に制限はなく、通常、減圧チャンバー内の減圧は10kPa/秒の速度、好ましくは、50kPa/秒の速度、あるいは100kPa/秒の速度で大気圧まで戻される。
【0046】
本発明の積層体の一つの態様は、積層体を構成する封止シートに由来する硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層が未硬化又は半硬化状態のものであるが、本発明は、上記の積層体を構成する硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化された状態の積層体、すなわち硬化した硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層とその層に接した基材を含む積層体も提供する。積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を硬化させるためには、上述した方法によって得られる積層体を、硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化する条件下で硬化反応を進行させることによって実施できる。また、上記の工程3における基材に封止シートを熱圧着する工程において、熱圧着とともに、あるいは熱圧着の後、硬化性ホットメルトシリコーン組成物の硬化反応が進行する条件で硬化反応を進行させることもできる。
【0047】
また、上述した積層体の製造方法において、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる封止シートを用いる場合、当該シートは使用前にはその両面又は片面に、その剥離面が接するように配置された剥離フィルムを有する積層体の形態であることが好ましい。ここで、剥離フィルムの厚さは特定のものに限定されず、したがって剥離フィルムには通常シートといわれる厚さのものも含まれる。具体的には、そのような積層体は、(i) 剥離フィルム/硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート、又は(ii)剥離フィルム/硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート/剥離フィルム、という構成を有することが好ましい。剥離フィルムは当技術分野で公知であり、表面に剥離処理を施した、板紙、ダンボール紙、クレーコート紙、ポリオレフィンラミネート紙、特にポリエチレンラミネート紙、合成樹脂フィルム又はシート、天然繊維布、合成繊維布、人工皮革布、及び金属箔が例示される。特に、剥離フィルムとして、その片面又は両面に剥離処理を施した合成樹脂フィルム又はシートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアミドが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、及びポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等の封止において剥離フィルムを通してデバイスの視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及びPEN等の透明材料が剥離フィルムの材料として好適である。このような剥離フィルムが貼り合わされた封止シートを用いる場合には、封止シートの両面に剥離フィルムが貼りあわされている場合には、少なくとも一方の剥離シートを剥がして、封止シートをそれが直接基材に接するように載置するか、あるいは上述した工程1以降の工程において封止シートの剥離フィルムが貼付されていない面が直接基材に接することができるように減圧チャンバー内に配置する。そのとき、封止シートの基材と接する面と反対側の面上の剥離シートは剥離せずにそのままの状態で基材と封止シートを含む積層体を形成してもよいし、任意の段階でその剥離シートを封止シートから剥離してもよい。剥離シートを封止シートから剥離しないまま、封止シートと基材からなる積層体を調製した場合に得られる積層体の構成は、剥離フィルム/封止シート/基材となる。また、剥離フィルムに代えて別の基材を有する積層体、剥離フィルムと封止シートの間にさらに別の層、例えば、封止シートを構成する硬化性ホットメルトシリコーン組成物とは別の組成を有するシリコーンポリマー層が存在していてもよく、それらも本発明の積層体の範囲内である。
【0048】
上述した本発明の積層体の製造方法において封止シートを用いる場合、剥離フィルムを有しない封止シートを用いてもよいが、その片面のみに剥離フィルムが張り合わされた状態の封止シートを用いることが好ましい。したがって、封止シートがその両面に剥離フィルムを有する場合には、封止シートを用いるときに、封止シートの一つの面の剥離フィルムを剥がし、他方の面の剥離フィルムを残したまま封止シートを減圧チャンバー内に入れることが好ましい。これは、例えば、ダイヤフラム式の真空ラミネーターを使用する場合、溶融温度以上の加熱により封止シートが溶融するため、ダイヤフラムにより封止シートを基板に押圧するときに、ダイフラムと封止シートが直接接触すると両者が接着してしまうという問題が生じるためである。ダイヤフラムと封止シートとの間に剥離フィルムが介在していることにより、このようなダイヤフラムに封止シートが接着するという問題が生じない。これは、予め基材に封止シートを載置した状態のものを減圧チャンバーに入れる場合でも同様であり、基材と接していない側の封止シートの外面に剥離フィルムがあってもよい。
【0049】
また、上記方法により得られた積層体は、封止シートを構成する硬化性ホットメルトシリコーン組成物を前述した工程3において、及び/又は工程3の後かつ工程4の前に、硬化性ホットメルトシリコーン組成物が硬化しうる温度、例えば100℃以上の温度に加熱することによって半硬化(すなわち不完全硬化)の状態まで硬化反応を進めても、又は完全に硬化をさせてもよい。あるいは、硬化性ホットメルトシリコーン組成物を硬化させるための加熱処理を行わずに、積層体に含まれる硬化性ホットメルトシリコーン組成物が未硬化又は半硬化の状態のままの積層体を得ることもできる。積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を硬化させずに、未硬化または半硬化状態のシリコーン層からなる積層体を得る場合、当該積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の表面の平坦性を可能な限り高めるために、封止シートにおいて基材と接する面の反対側の面に貼りつけられた剥離フィルムは剥がさずに上記方法を用いて積層体を調製して、積層体に密着した硬化性ホットメルトシリコーン組成物層に剥離フィルムが付着したままの積層体を得、硬化性ホットメルトシリコーン組成物を硬化させた後に硬化シリコーン層から剥離フィルムを剥がすことが好ましい。これは硬化性ホットメルトシリコーン組成物層が未硬化の状態のうちに剥離フィルムを剥がしてから当該組成物層の硬化を行うと、加熱によって当該組成物層が溶融してしまい、当該組成物層の表面の平坦性が損なわれ、その結果、硬化後の封止シリコーン層の平坦性が損なわれる可能性があるからである。
【0050】
一方、上記の方法で得られた(剥離フィルム-未硬化の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層-基材(これを第1の基材という))の構成を有する積層体から剥離フィルムを剥がし、第2の基材に対して、前述の工程1~4において硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムに代えて、第1の基材と未硬化の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を有する前記の積層体を用い、その硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を上述した封止シートに読み替えて、上述した方法により、前記の積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を第2の基材に圧着させることで、(第1の基材-未硬化の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層-第2の基材)という構造の、ホットメルトシリコーン組成物層を接着剤層として2つの同種または異種の基材を貼り合わせることも可能である。
また、第1の基材に積層された未硬化の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層が、第1の基材と反対側の外面に剥離フィルムを有しない積層体を用いて、上述した方法により、その硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の外面に第2の基材を接着させて、同種又は異種の基材がシリコーン接着剤層によって接着された積層体を得ることもできる。
【0051】
[同種又は異種の2つの基材が硬化性ホットメルトシリコーン組成物によって接着された積層体の製造方法]
上述した方法によって、先ず第1の基材及び未硬化又は半硬化の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層からなる積層体を中間体として調製し、その硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の外面に第2の基材を接着させて積層体を得る方法の他に、上述した工程1において、第1の基材、第2の基材、及び硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを減圧チャンバー内に配置することによって、上述した工程1~工程4と同様の一連の工程によって2つの基材の間に硬化性ホットメルトシリコーン組成物層が介在した積層体、すなわち2つの基材がシリコーン組成物層で接着された積層体を製造することもできる。そのためには、上述した工程1において、後の工程、特に工程3において第1の基材と接するようにすることができるように配置された硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート又はフィルムの第1の基材と後の工程で接することになる面とは反対側の面に、後の工程、特に工程3において第2の基材が接するようにすることができるように、第1の基材、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルム、及び第2の基材を適切な手段を用いて配置することができる。また、第1の工程において、減圧チャンバー内で、第1の基材に硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを載置し、かつ当該シート又はフィルムの第1の基材とは反対側の面に第2の基材を載置してもよい。また、第1の工程において、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムに第1及び第2の基材を当該シート又はフィルムの2つの面にそれぞれ接するように予め載置したものを減圧チャンバーに入れてもよい。さらに、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムと第1の基材に関しては、上述した工程1で説明した3つの配置方法のいずれか1つを採用し、硬化性ホットメルト組成物シート又はフィルムと第2の基材に関してはそれとは別の方法を採用することもできる。
このように減圧チャンバー内に第1及び第2の基材並びに硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを配置することによって、上述した工程1~工程4により、(第1の基材-硬化性ホットメルトシリコーン組成物層-第2の基材)という構成の積層体を製造することができる。そして、この硬化性ホットメルトシリコーン組成物を硬化させて、硬化したシリコーン組成物を接着剤層として同一又は異なる種類の基材が接着された積層体を得ることができる。
【0052】
積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を熱硬化させるために、その硬化系に応じて最適な硬化温度を選択できる。硬化性ホットメルトシリコーン組成物がヒドロシリル化反応によって硬化する場合は、硬化温度は150℃以上が好ましい。硬化性ホットメルトシリコーン組成物が有機過酸化物によって硬化する場合は、硬化温度は170℃以上であることが好ましい。また、硬化性ホットメルトシリコーン組成物をUV硬化させる場合は、積層体を減圧チャンバーから取り出した後で、硬化性ホットメルトシリコーン組成物層にUV照射を行うことが好ましい。上記工程1~4によって得られる積層体の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の表面に剥離フィルムが付着したままの状態で、当該組成物層をUV硬化させる場合には、剥離フィルムとして紫外線を十分に透過させうる材料からなるものを用いることが好ましい。
また、第1及び第2の基材が硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を介して接着された積層体の場合、硬化性ホットメルトシリコーン組成物をUV硬化させる場合、第1又は第2の基材が、硬化性ホットメルトシリコーン組成物を硬化させることができる程度にUV透過性であることが好ましい。
【0053】
[基材]
本発明に使用される、封止フィルムが積層される基材はどのようなものでもよく、特に制限されないが、シリコーンの優れた耐熱性、透明性等の特性を生かすことができることから、基材として電子装置用基板を用いることが好ましい。電子装置用基板には、電子回路基板及び電子回路実装基板が含まれ、特に、半導体素子を搭載する半導体装置基板、例えば、光半導体基板を挙げることができる。
例えば光半導体基板は光半導体素子を搭載又は実装している基板である。こうした基板の封止材としては、光透過率が高いか反射率が高い材料が好ましい。光半導体素子を搭載する基板としては、例えば、銀、金、および銅等の導電性金属;アルミニウム、およびニッケル等の非伝導性の金属;PPA、およびLCP等の白色顔料を混合した熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、BT樹脂、ポリイミド樹脂、及びシリコーン樹脂等の白色顔料を含有する熱硬化性樹脂;アルミナ、および窒化アルミナ等のセラミック等からなる基板が挙げられる。
【0054】
[基材の表面処理]
本発明に使用される基材および上記の封止フィルム/シート(基材間の接着機能を有する場合を含む)との密着性を向上させるため、所望により、かつ、本発明の技術的効果を損なわない範囲において、上記の基材の表面に、酸化法または凸凹化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施した後に、上記の封止フィルムを積層してもよい。ここで、酸化法としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン処理、および紫外線照射処理などが挙げられ、また、凸凹化法としては、例えば、サンドブラスト法、及び溶射処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は、基材の種類および求められる密着性に応じて適した方法を選択することができるが、表面処理によって得られる効果、特に密着性の改善効果が高いこと及び操作が簡便であることから、コロナ放電処理法が好ましい方法としてあげられる。当該表面処理により、積層後の接触界面密着力、特にホットメルト性を有する封止フィルム/シートの硬化反応前における密着性を改善できる場合がある。
【0055】
[封止シート(基材間の接着シートとしての用法を含む)]
封止シートは、封止対象である基材、例えば電子装置用基板を封止するためのものであり、硬化性ホットメルトシリコーン組成物をシート又はフィルム状に加工したものである。封止シートは単独で用いてもよいし、2枚以上を組み合わせて用いてもよい。2枚以上の封止シートを用いる場合、同じ種類の封止シートを2枚以上用いてもよいし、異なる種類の封止シートを組み合わせてもよい。2枚以上の封止シートを組み合わせる場合、一般的には、シートを重ねるようにして組み合わせることが好ましい。封止シートはその使用前には、剥離フィルムの上に積層された状態、あるいは2枚の剥離フィルムの間に介装された状態であってよく、2枚の剥離フィルムで封止シートが介装されている場合には、通常、使用時に少なくとも1枚の剥離フィルムを剥離してから封止シートを使用する。本発明の封止シートはホットメルト性の硬化性シリコーンシートであり、その100℃でのフローテスターにより2.5MPaの圧力で測定される(極限シェアレートでの)溶融粘度が5000Pa・s以下であることを特徴とし、好ましくは3000Pa・s、より好ましくは1000Pa・s、さらに好ましくは500Pa・s以下である。これは上述した、減圧下において封止シートを基板に熱圧着させる時に封止シートが十分に溶融しない場合には、基材上にボイドのない、すなわち泡噛みのない平坦な封止層を形成することが難しく、かつ基板に凹凸がある場合凹凸間のギャップを隙間なく埋めるのが難しいからである。100℃における溶融粘度が5000Pa・s以下の硬化性ホットメルトシリコーン組成物から調製した封止シートを用いることによって、基材上に存在する凹凸間を隙間なく埋め、ボイドのない平坦なシリコーン封止層を形成することができる。なお、本明細書において、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート又はフィルムを2つの基材の接着剤として用いる場合もこれを封止シートという。
【0056】
[硬化性ホットメルトシリコーン組成物]
上記の封止シートである、ホットメルト性を有する硬化性シリコーン組成物シート、すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを構成する成分は前述の熱溶融特性を有するものであればよく、その他に特に制限はないが、例えば、当該組成物は、少なくとも(A)硬化性オルガノポリシロキサン樹脂と(C)硬化剤及び/又は(D)硬化触媒からなり、必要に応じて(B)直鎖状又は分岐状のポリオルガノシロキサンや(E)硬化遅延剤、さらに(F)機能性無機フィラーなどのその他の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
[成分(A)]
成分(A)は、本組成物の主剤であり、硬化剤及び/又は硬化触媒(C)により硬化する、オルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、成分(A)は、硬化反応性の官能基を有することが好ましく、官能基は、縮合反応性基、ヒドロシリル化反応性基、ラジカル反応性基および過酸化物硬化性基から選ばれる1種類以上の官能基であるが、ヒドロシリル化反応性基およびラジカル反応性基から選択される反応性基が好ましく、特に、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基であることが好ましい。成分(A)の官能基がヒドロシリル化反応性基のうち例えばアルケニル基である場合、硬化剤(C)はケイ素結合水素原子を有する化合物、特にオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましく、硬化触媒(D)としてヒドロシリル化反応触媒を用いることが好ましい。また、成分(A)の官能基がラジカル反応性基である場合には、硬化剤(C)として有機過酸化物などのラジカル反応開始剤を用いることが好ましい。また、成分(A)の官能基がシラノール又は加水分解性ケイ素基などの縮合性シリル基である場合には、硬化触媒としてシラノール縮合反応を触媒できる化合物を成分(C)として用いることが好ましい。
【0058】
成分(A)が有しうるヒドロシリル化反応性基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基、およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このヒドロシリル化反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。成分(A)は、一分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基を有することが好ましい。
【0059】
成分(A)中のヒドロシリル化反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示される。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基等のアリール基;フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの基に結合している水素原子の一部または全部を塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子で置換した基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。
【0060】
また、成分(A)中のラジカル反応性基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等の炭素数1~20のアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基等の炭素数2~20のアルケニル基;3-アクリロキシプロピル基、4-アクリロキシブチル基等のアクリル含有基;3-メタクリロキシプロピル基、4-メタクリロキシブチル基等のメタクリル含有基;およびケイ素原子結合水素原子が例示される。このラジカル反応性基としては、アルケニル基が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、ビニル基、ヘキセニル基である。成分(A)は、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有することが好ましい。
【0061】
成分(A)中のラジカル反応性基以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、および水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。特に、フェニル基、水酸基が好ましい。特に、成分(A)は、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0062】
本発明において、成分(A)は、好適には、硬化反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を含むものであるが、当該オルガノポリシロキサン樹脂微粒子は、分子全体としてホットメルト性であってもよく、分子全体としてホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を含んでも。なお、当該オルガノポリシロキサン樹脂微粒子がホットメルト性を有しない場合、さらなる成分(B)として直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンを用い、それとの混合物であることが好ましい。さらに、硬化反応性の官能基を有さず、分子全体としてホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂微粒子を併用してもよく、かつ、好ましい。
【0063】
すなわち、成分(A)の少なくとも一部または全部が、
(A1)軟化点が30℃以上であり、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子
であってもよく、あるいは、
下記の(A2-1)成分および(A2-2)成分を0:100~90:10、好ましくは0:100~75:25の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂微粒子(成分(A2))であってもよい。
(A2-1)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、
(A2-2)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂。
【0064】
[成分(A1)]
成分(A1)は、それ自体がホットメルト性を有し、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するため、後述する硬化剤(C)により硬化する。このような成分(A1)は、
(A)樹脂状オルガノポリシロキサン、
(A)少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるオルガノポリシロキサン架橋物、及び
(A)樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマー、
並びに、これらの少なくとも2種の混合物、
からなるオルガノポリシロキサン樹脂であることが好ましい。
【0065】
成分(A)はヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンであり、T単位又はQ単位を多く有し、アリール基を有するホットメルト性の樹脂状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。このような成分(A)としては、トリオルガノシロキシ単位(M単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、ジオルガノシロキシ単位(D単位)(オルガノ基はメチル基のみ、メチル基とビニル基またはフェニル基である。)、モノオルガノシロキシ単位(T単位)(オルガノ基はメチル基、ビニル基、またはフェニル基である。)及びシロキシ単位(Q単位)の任意の組み合わせからなるMQ樹脂、MDQ樹脂、MTQ樹脂、MDTQ樹脂、TD樹脂、TQ樹脂、及びTDQ樹脂が例示される。なお、成分(A)は、分子中に少なくとも2個のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基を有し、分子中の全有機基の10モル%以上がアリール基、特に、フェニル基であることが好ましい。
【0066】
成分(A)は、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンを架橋してなるものであって、硬化剤(C)により硬化する際にクラックが発生しにくく、硬化収縮を小さくすることができる。ここで、「架橋」とは、原料であるオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応、縮合反応、ラジカル反応、及び/又は高エネルギー線反応等により、前記オルガノポリシロキサンを連結することである。このヒドロシリル化反応性基やラジカル反応性基(高エネルギー線反応性基を含む)としては、前記と同様の基が例示され、縮合反応性基としては、ヒドロキシル基、アルコキシ基、及びアシルオキシ基が例示される。
【0067】
成分(A)を構成する単位は限定されず、シロキサン単位、シルアルキレン基含有シロキサン単位が例示され、また、得られる硬化物に十分な硬度と機械的強度を付与することから、同一分子内に樹脂状ポリシロキサン単位と鎖状ポリシロキサン単位を有することが好ましい。すなわち、成分(A)は、樹脂状(レジン状)オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンとの架橋物であることが好ましい。成分(A)中に、樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造を導入することで、成分(A)は良好なホットメルト性を示すと共に、硬化剤(C)により、良好な硬化性を示す。
【0068】
成分(A)は、
(1)一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンのヒドロシリル化反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をアルキレン結合により連結したもの、
(2)一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの有機過酸化物によるラジカル反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン結合またはアルキレン結合により連結したもの、
(3)少なくとも2種のオルガノポリシロキサンの縮合反応を経て、分子中に樹脂状オルガノポリシロキサン構造-鎖状オルガノポリシロキサン構造をシロキサン(-Si-O-Si-)結合により連結したもの、
のいずれかである。このような成分(A)は、樹脂構造-鎖状構造のオルガノポリシロキサン部分がアルキレン基または新たなシロキサン結合により連結された構造を有するので、ホットメルト性が著しく改善される。
【0069】
上記(1)および(2)において、成分(A)中に含まれるアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数2~20のアルケニル基が例示され、これらは直鎖状でも分岐鎖状でもよく、好ましくは、エチレン基、ヘキシレン基である。
【0070】
樹脂状オルガノポリシロキサンと鎖状(直鎖状または分岐鎖状を含む)オルガノポリシロキサンの架橋物は、例えば、以下のシロキサン単位およびシルアルキレン基含有シロキサン単位により構成される。
M単位:R SiO1/2で表されるシロキサン単位、
D単位:RSiO2/2で表されるシロキサン単位、
M/RD単位:R 1/2 SiO1/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位およびR 1/2SiO2/2で表されるシルアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位、ならびに
T/Q単位:RSiO3/2で表されるシロキサン単位およびSiO4/2で表されるシロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位
【0071】
上記式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。Rは、メチル基、ビニル基、及びフェニル基から選択される基であることが好ましい。ただし、全シロキサン単位のうち、少なくとも2個のRはアルケニル基であることが好ましい。
【0072】
また、上記式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。Rは、メチル基、フェニル基が好ましい。
【0073】
また、上記式中、Rは他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合した、直鎖状または分岐鎖状の炭素数2~20のアルキレン基である。アルキレン基としては、前記と同様の基が例示され、エチレン基、ヘキシレン基が好ましい。
【0074】
M単位は成分(A)の末端を構成するシロキサン単位であり、D単位は直鎖状のポリシロキサン構造を構成するシロキサン単位である。なお、これらのM単位またはD単位、特に、M単位上にアルケニル基があることが好ましい。一方、RM単位およびRD単位はシルアルキレン結合を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合し、かつ、酸素原子を介して他のシロキサン単位中のケイ素原子に結合するシロキサン単位である。T/Q単位はポリシロキサンに樹脂状の構造を与える分岐のシロキサン単位であり、成分(A)がRSiO3/2で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましい。特に、成分(A)のホットメルト性を向上させ、成分(A)中のアリール基の含有量を調整することから、成分(A)はRSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むことが好ましく、特に、Rがフェニル基であるシロキサン単位を含むことが好ましい。
【0075】
M/RD単位は、成分(A)の特徴的な構造の1つであり、Rのアルキレン基を介して、ケイ素原子間が架橋された構造を表す。具体的には、R 1/2 SiO1/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位およびR 1/2SiO2/2で表されるアルキレン基含有シロキサン単位から選ばれる少なくとも1種のシロキサン単位であり、成分(A)を構成する全シロキサン単位の少なくとも二つはこれらのアルキレン基含有シロキサン単位であることが好ましい。Rのアルキレン基を有するシロキサン単位間の好適な結合形態は前記の通りであり、二つのアルキレン基含有シロキサン単位間のRの数は、M単位における酸素等と同様に結合価「1/2」として表現している。仮にRの数を1とすれば、[O1/2 SiRSiR 1/2]、[O1/2 SiRSiR2/2]および[O2/2SiRSiR2/2]で表されるシロキサンの構造単位から選ばれる少なくとも1以上が成分(A)中に含まれ、各酸素原子(O)は、前記のM,D,T/Q単位に含まれるケイ素原子に結合する。かかる構造を有することで、成分(A)は、D単位からなる鎖状ポリシロキサン構造、T/Q単位を含む樹脂状ポリシロキサン構造を分子内に有する構造を比較的容易に設計可能であり、その物理的物性において著しく優れたものである。
【0076】
上記(1)において、一分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(硬化剤(C))とを、[アルケニル基のモル数]/[ケイ素原子結合水素原子のモル数]>1となる反応比でヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
【0077】
上記(2)において、一分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基を有する少なくとも2種のオルガノポリシロキサンを、系中の全てのラジカル反応性基が反応するには足りない量の有機過酸化物(硬化剤(C))によりラジカル反応させることにより得ることができる。
【0078】
上記(1)および(2)において、成分(A)は、樹脂状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンと、鎖状シロキサン構造を有するオルガノポリシロキサンをヒドロシリル化反応またはラジカル反応したものである。
【0079】
例えば、成分(A)は、
(A)分子中にRSiO3/2(式中、Rは、前記と同様の基である。)で表されるシロキサン単位および/またはSiO4/2で表されるシロキサン単位を含有し、かつ、炭素数2~20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子あるいはラジカル反応性の基を有する、少なくとも1種の樹脂状オルガノポリシロキサン、および
(A)分子中にR SiO2/2で表されるシロキサン単位(式中、Rは、前記と同様の基である。)を含有し、かつ、前記の(A)成分とヒドロシリル化反応またはラジカル反応可能な基であって、炭素数2~20のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子を有する少なくとも1種の鎖状オルガノポリシロキサンを、
成分(A)または成分(A)中のヒドロシリル化反応性基および/またはラジカル反応性基が反応後に残存するように設計された比率で反応させて得たオルガノポリシロキサンである。
【0080】
上記(1)において、成分(A)の少なくとも一部が、炭素数2~20のアルケニル基を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、成分(A)の少なくとも一部はケイ素原子結合水素原子を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0081】
同様に、成分(A)の少なくとも一部が、ケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノポリシロキサンである場合、成分(A)の少なくとも一部は炭素数2~20のアルケニル基を有する鎖状オルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0082】
このような成分(A)は、
成分(a):下記成分(a1-1)および/または下記成分(a1-2)からなる分子中に炭素数2~20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンを有機過酸化物でラジカル反応させたもの、または
成分(a)と、
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(a)を、
ヒドロシリル化反応用触媒の存在下において、上記成分(a)に含まれる炭素原子数2~20のアルケニル基に対して、上記成分(a)中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2~0.7モルとなる量でヒドロシリル化反応させたものが好ましい。
【0083】
成分(a1-1)は、分岐単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表される一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。Rは、メチル基、ビニル基、またはフェニル基であることが好ましい。ただし、Rの少なくとも2個はアルケニル基である。また、ホットメルト性が良好であることから、全Rの10モル%以上、あるいは20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。また、式中、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、前記と同様のアルキル基が例示される。
【0084】
また、式中、aは0~0.7の範囲内の数、bは0~0.7の範囲内の数、cは0~0.9の範囲内の数、dは0~0.7の範囲内の数、eは0~0.1の範囲内の数、かつ、c+dは0.3~0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1であり、好ましくは、aは0~0.6の範囲内の数、bは0~0.6の範囲内の数、cは0~0.9の範囲内の数、dは0~0.5の範囲内の数、eは0~0.05の範囲内の数、かつ、c+dは0.4~0.9の範囲内の数、a+b+c+dは1である。これは、a、b、およびc+dがそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物の硬度や機械的強度が優れたものとなるからである。
【0085】
このような(a1-1)成分としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、Viはそれぞれメチル基、フェニル基、ビニル基を表す。
(ViMeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.02
(ViMeSiO1/2)0.25(PhSiO3/2)0.75
(ViMeSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80
(ViMeSiO1/2)0.15(MeSiO1/2)0.38(SiO4/2)0.47(HO1/2)0.01
(ViMeSiO1/2)0.13(MeSiO1/2)0.45(SiO4/2)0.42(HO1/2)0.01
(ViMeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.85(HO1/2)0.01
(MeSiO2/2)0.15(MeViSiO2/2)0.10(PhSiO3/2)0.75(HO1/2)0.04
(MeViPhSiO1/2)0.20(PhSiO3/2)0.80(HO1/2)0.05
(ViMeSiO1/2)0.15(PhSiO3/2)0.75(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.02
(PhSiO2/2)0.25(MeViSiO2/2)0.30(PhSiO3/2)0.45(HO1/2)0.04
(MeSiO1/2)0.20(ViMePhSiO1/2)0.40(SiO4/2)0.40(HO1/2)0.08
【0086】
成分(a1-2)は、鎖状シロキサン単位の量が比較的多いポリシロキサンであり、平均単位式:
(R SiO1/2)a'(R SiO2/2)b'(RSiO3/2)c'(SiO4/2)d'(R1/2)e'
で表される、一分子中に炭素数2~20のアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。
【0087】
また、式中、a'は0.01~0.3の範囲内の数、b'は0.4~0.99の範囲内の数、c'は0~0.2の範囲内の数、d'は0~0.2の範囲内の数、e'は0~0.1の範囲内の数、かつ、c'+d'は0~0.2の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1であり、好ましくは、a'は0.02~0.20の範囲内の数、b'は0.6~0.99の範囲内の数、c'は0~0.1の範囲内の数、d'は0~0.1の範囲内の数、j'は0~0.05の範囲内の数、かつ、c'+d'は0~0.1の範囲内の数、a'+b'+c'+d'は1である。これは、a'、b'、c'、d'がそれぞれ上記範囲内の数であると、得られる硬化物に強靭性を付与できるからである。
【0088】
このような成分(a1-2)としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Ph、及びViはそれぞれメチル基、フェニル基、及びビニル基を表す。
ViMeSiO(MePhSiO)18SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.90
ViMeSiO(MePhSiO)30SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.063(MePhSiO2/2)0.937
ViMeSiO(MePhSiO)150SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.013(MePhSiO2/2)0.987
ViMeSiO(MeSiO)18SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.10(MeSiO2/2)0.90
ViMeSiO(MeSiO)30SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.063(MeSiO2/2)0.937
ViMeSiO(MeSiO)35(MePhSiO)13SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.04(MeSiO2/2)0.70(MePhSiO2/2)0.26
ViMeSiO(MeSiO)10SiMeVi、すなわち、(ViMeSiO1/2)0.17(MeSiO2/2)0.83
(ViMeSiO1/2)0.10(MePhSiO2/2)0.80(PhSiO3/2)0.10(HO1/2)0.02
(ViMeSiO1/2)0.20(MePhSiO2/2)0.70(SiO4/2)0.10(HO1/2)0.01
HOMeSiO(MeViSiO)20SiMeOH
MeViSiO(MePhSiO)30SiMeVi
MeViSiO(MeSiO)150SiMeVi
【0089】
成分(a1-1)は得られる硬化物に硬度と機械的強度を付与するという観点から好ましく用いられる。成分(a1-2)は得られる硬化物に強靭性を付与できるという観点から任意成分として添加できるが、以下の成分(a)で鎖状シロキサン単位を多く有する架橋剤を用いる場合はそちらで代用してもよい。いずれの場合においても、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分の質量比が50:50~100:0の範囲内、あるいは60:40~100:0の範囲内であることが好ましい。これは、分岐状シロキサン単位を多く有する成分と鎖状シロキサン単位を多く有する成分との質量比が上記範囲内の値であると、得られる硬化物の硬度ならびに機械的強度が良好となるからである。
【0090】
なお、成分(a)を、有機過酸化物によるラジカル反応する場合、成分(a1-1)と成分(a1-2)を10:90~90:10の範囲内で反応させ、成分(a)を用いなくてもよい。
【0091】
成分(a)は、ヒドロシリル化反応において、成分(a1-1)および/または成分(a1-2)を架橋するための成分(硬化剤(C))であり、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個含有するオルガノポリシロキサンである。成分(a)中の水素原子以外のケイ素原子に結合する基としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、アルコキシ基、エポキシ基含有基、または水酸基が例示され、前記と同様の基が例示される。
【0092】
このような成分(a)は限定されないが、好ましくは、平均組成式:
SiO(4-k-m)/2
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、Rは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示され、好ましくは、メチル基、またはフェニル基である。
【0093】
また、上記式中、kは1.0~2.5の範囲の数、好ましくは、1.2~2.3の範囲の数であり、mは0.01~0.9の範囲の数、好ましくは、0.05~0.8の範囲の数であり、かつ、k+mは1.5~3.0の範囲の数、好ましくは、2.0~2.7の範囲の数である。
【0094】
成分(a)は、分岐状シロキサン単位を多く有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよく、鎖状シロキサン単位を多く有する鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサンであってもよい。具体的には、成分(a)は、下記(a2-1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、下記(a2-2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、またはこれらの混合物が例示される。
【0095】
成分(a2-1)は、平均単位式:
[R SiO1/2][R SiO2/2][RSiO3/2][SiO4/2](R1/2)
で表されるケイ素原子結合水素原子を有する樹脂状オルガノハイドロジェンポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または水素原子であり、前記Rと同様の基が例示される。また、式中、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。
【0096】
また、上記式中、fは0~0.7の範囲内の数、gは0~0.7の範囲内の数、hは0~0.9の範囲内の数、iは0~0.7の範囲内の数、jは0~0.1の範囲内の数、かつ、h+iは0.3~0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1であり、好ましくは、fは0~0.6の範囲内の数、gは0~0.6の範囲内の数、hは0~0.9の範囲内の数、iは0~0.5の範囲内の数、jは0~0.05の範囲内の数、かつ、h+iは0.4~0.9の範囲内の数、f+g+h+iは1である。
【0097】
成分(a2-2)は、平均単位式:
(R SiO1/2)f'(R SiO2/2)g'(RSiO3/2)h'(SiO4/2)i'(R1/2)j'
で表される、一分子中にケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。
【0098】
また、上記式中、f'は0.01~0.3の範囲内の数、g'は0.4~0.99の範囲内の数、h'は0~0.2の範囲内の数、i'は0~0.2の範囲内の数、j'は0~0.1の範囲内の数、かつ、h'+i'は0~0.2の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1であり、好ましくは、f'は0.02~0.20の範囲内の数、g'は0.6~0.99の範囲内の数、h'は0~0.1の範囲内の数、i'は0~0.1の範囲内の数、j'は0~0.05の範囲内の数、かつ、h'+i'は0~0.1の範囲内の数、f'+g'+h'+i'は1である。
【0099】
上記のとおり、成分(a)において、分岐状シロキサン単位を多く有するレジン状のオルガノポリシロキサンは、硬化物に硬度と機械的強度を付与し、鎖状シロキサン単位を多く有する得られるオルガノポリシロキサンは、硬化物に強靭性を付与するものであるので、成分(a)として成分(a2-1)と成分(a2-2)を適宜用いることが好ましい。具体的には、成分(a)中に分岐状シロキサン単位が少ない場合には、成分(a)として成分(a2-1)を主に用いることが好ましく、成分(a)中に鎖状シロキサン単位が少ない場合には、成分(a2-2)を主に用いることが好ましい。成分(a)は、成分(a2-1)と成分(a2-2)の質量比が50:50~100:0の範囲内、あるいは60:40~100:0の範囲内であることが好ましい。
【0100】
このような成分(a)としては、次のオルガノポリシロキサンが例示される。式中、Me、Phはそれぞれメチル基、フェニル基を表す。
PhSi(OSiMeH)、すなわち、Ph0.67Me1.330.67SiO0.67
HMeSiO(MeSiO)20SiMeH、すなわち、Me2.000.09SiO0.95
HMeSiO(MeSiO)55SiMeH、すなわち、Me2.000.04SiO0.98
PhSi(OSiMeH)、すなわち、Ph0.25Me1.500.75SiO0.75
(HMeSiO1/2)0.6(PhSiO3/2)0.4、すなわち、Ph0.40Me1.200.60SiO0.90
【0101】
成分(a)の添加量は、成分(a)中のアルケニル基に対して、成分(a)中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.2~0.7となる量であり、好ましくは、0.3~0.6となる量である。これは、成分(a)の添加量が上記範囲内であると、得られる硬化物の初期の硬度および機械的強度が良好となるためである。
【0102】
成分(a)をラジカル反応させるために用いる有機過酸化物(硬化剤(C))は特定のものに限定されないが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-ビス(2,5-t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーベンゾエート、及び、1,6-ヘキサンジオール-ビス-t-ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p-メチルベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-ビス(2,5-t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及び2,4-ジクミルパーオキサイドが好ましい。有機過酸化物の量は、硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量であればよい。なお、有機過酸化物は成分(a)を反応させる場合に限らず、本発明の硬化性シリコーン組成物をラジカル反応によって硬化させるいずれの場合にも用いることができる
有機過酸化物を用いてラジカル反応をさせる際、成分(a)は、成分(a1-1)と成分(a1-2)の質量比が10:90~90:10の範囲内の混合物であることが好ましい。なお、有機過酸化物の添加量は限定されないが、成分(a)100質量部に対して、0.1~5質量部の範囲内、0.2~3質量部の範囲内、あるいは0.2~1.5質量部の範囲内であることが好ましい。
【0103】
また、成分(a)と成分(a)とをヒドロシリル化反応するために用いるヒドロシリル化反応用触媒は限定されず、公知のヒドロシリル化反応用触媒(成分(D))を用いることができる。ヒドロシリル化反応用触媒として、当技術分野で公知のヒドロシリル化触媒作用を有する化合物あるいは金属を用いることができるが、例として、白金系触媒、ロジウム系触媒、及びパラジウム系触媒が挙げられ、本発明の組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、ヒドロシリル化反応用触媒として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを用いることが好ましく、当該錯体のアルケニルシロキサン溶液の形態で硬化性シリコーン組成物を構成する他の成分に添加することが好ましい。加えて、白金触媒の取扱作業性および硬化性シリコーン組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、及び鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
ヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、成分(a)と成分(a)の合計量に対して、ヒドロシリル化反応用触媒中の白金系金属原子が質量単位で、0.01~500ppmの範囲内、0.01~100ppmの範囲内、あるいは0.01~50ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
また、(a)成分と(a)成分に限らず、本発明の硬化性シリコーン組成物がヒドロシリル化反応によって硬化させるものである場合、任意の組成物において上述したヒドロシリル化反応触媒を用いることができる。
【0104】
上記(A)は、下記成分(a)および下記成分(a)を、縮合反応用触媒により縮合反応させたものである。
【0105】
成分(a)は、平均単位式:
(R SiO1/2)(R SiO2/2)(RSiO3/2)(SiO4/2)(R1/2)
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中のRは水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数2~5のアシル基であり、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アシルオキシ基が例示される。成分(a)は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基であり、全Rの10モル%以上、または20モル%以上がフェニル基であることが好ましい。
【0106】
上記式中、pは0~0.7の範囲内の数、qは0~0.7の範囲内の数、rは0~0.9の範囲内の数、sは0~0.7の範囲内の数、tは0.01~0.10の範囲内の数、かつ、r+sは0.3~0.9の範囲内の数、p+q+r+sは1であり、好ましくは、pは0~0.6の範囲内の数、qは0~0.6の範囲内の数、rは0~0.9の範囲内の数、sは0~0.5の範囲内の数、tは0.01~0.05の範囲内の数、かつ、r+sは0.4~0.9の範囲内の数である。これは、p、q、およびr+sがそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0107】
成分(a)は、平均単位式:
(R SiO1/2)p'(R SiO2/2)q'(RSiO3/2)r'(SiO4/2)s'(R1/2)t'
で表される縮合反応性のオルガノポリシロキサンである。式中、RおよびRは前記と同様の基である。成分(a)は、一分子中に少なくとも1個のケイ素原子結合水酸基、ケイ素原子結合アルコキシ基、またはケイ素原子結合アシロキシ基を有する。また、式中、p'は0.01~0.3の範囲内の数、q'は0.4~0.99の範囲内の数、r'は0~0.2の範囲内の数、s'は0~0.2の範囲内の数、t'は0~0.1の範囲内の数、かつ、r'+s'は0~0.2の範囲内の数、p'+q'+r'+s'は1であり、好ましくは、p'は0.02~0.20の範囲内の数、q'は0.6~0.99の範囲内の数、r'は0~0.1の範囲内の数、s'は0~0.1の範囲内の数、t'は0~0.05の範囲内の数、かつ、r'+s'は0~0.1の範囲内の数である。これは、p'、q'、r'、s'がそれぞれ上記範囲内の数であると、25℃において柔軟性を持ちつつも、非流動性で、表面粘着性が低く、高温での溶融粘度が十分に低いホットメルト性のシリコーンが得られるからである。
【0108】
成分(a)と成分(a)を縮合反応するための縮合反応用触媒は特に限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示され、好ましくは、有機錫化合物、有機チタン化合物である。成分(a)と成分(a)を用いる場合に限らず、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物が縮合反応によって硬化させるタイプの組成物である場合、上記縮合反応用触媒を硬化触媒(成分(D))として用いることができる。
【0109】
また、成分(A)は、樹脂状オルガノシロキサンブロックと鎖状オルガノシロキサンブロックからなるブロックコポリマーである。このような成分(A)は、好ましくは、40~90モル%の式[R SiO2/2]のジシロキシ単位、10~60モル%の式[RSiO3/2]のトリシロキシ単位からなり、0.5~35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。ここで、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。一分子中、少なくとも2個のRはアルケニル基である。また、前記ジシロキシ単位[R SiO2/2]は、1つの直鎖ブロック当たり平均して100~300個のジシロキシ単位を有する直鎖ブロックを形成し、前記トリシロキシ単位[RSiO3/2]は、少なくとも500g/モルの分子量を有する非直鎖ブロックを形成し、少なくとも30%の非直鎖ブロックが互いに結合しており、各直鎖ブロックは、少なくとも1つの非直鎖ブロックと-Si-O-Si-結合を介して結合しており、少なくとも20000g/モルの質量平均分子量を有し、0.5~4.5モル%の少なくとも1つのアルケニル基を含む、樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体である。
【0110】
成分(A)は、(a)樹脂状オルガノシロキサンまたは樹脂状オルガノシロキサンブロック共重合体と、(a)鎖状オルガノシロキサン、さらに必要に応じて(a)シロキサン化合物を縮合反応して調製される。
【0111】
成分(a)は、平均単位式:
[R SiO1/2][RSiO2/2]ii[RSiO3/2]iii[RSiO3/2]iv[SiO4/2]
で表される樹脂状オルガノシロキサンである。式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Rは、各々独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のハロゲン置換アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン置換アリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、前記Rと同様の基が例示される。
【0112】
また、上記式中、i、ii、iii、iv、およびvは、各シロキシ単位のモル分率を表し、iは0~0.6の数であり、iiは0~0.6の数であり、iiiは0~1の数であり、ivは0~1の数であり、vは0~0.6の数であり、ただし、ii+iii+iv+v>0であり、かつ、i+ii+iii+iv+v≦1である。また、(a)成分は、一分子中に0~35モル%のシラノール基[≡SiOH]を含むことが好ましい。
【0113】
成分(a)は、一般式:
3-α(X)αSiO(R SiO)βSi(X)α 3-α
で表される直鎖状のオルガノシロキサンである。式中、Rは前記と同じであり、前記と同様の基が例示される。また、式中、Xは、-OR、F、Cl、Br、I、-OC(O)R、-N(R、または-ON=CR (ここで、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基である。)から選択される加水分解性基である。また、式中、αは、各々独立して、1、2、または3であり、βは50~300の整数である。
【0114】
成分(a)は、一般式:
SiX
で表されるシロキサン化合物である。式中、R、R、およびXは前記と同様の基である。
【0115】
成分(a)と成分(a)および/または成分(a)を縮合反応するための縮合反応用触媒は限定されず、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、オクテン酸錫、ジブチル錫ジオクテート、ラウリン酸錫等の有機錫化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、ジブトキシビス(エチルアセトアセテート)等の有機チタン化合物;その他、塩酸、硫酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の酸性化合物;アンモニア、水酸化ナトリウム等のアルカリ性化合物;1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等のアミン系化合物が例示される。
【0116】
成分(A1)は、ホットメルト性を示し、具体的には、25℃において非流動性であり、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下であることが好ましい。非流動性とは、無負荷の状態で流動しないことを意味し、例えば、JIS K 6863-1994「ホットメルト接着剤の軟化点試験方法」で規定されるホットメルト接着剤の環球法による軟化点試験方法で測定される軟化点未満での状態を示す。すなわち、25℃において非流動性であるためには、軟化点が25℃よりも高い必要がある。
【0117】
成分(A1)は、100℃の溶融粘度が8000Pa・s以下、5000Pa・s以下、あるいは10~3000Pa・sの範囲内であることが好ましい。100℃の溶融粘度が上記の範囲内であると、ホットメルト後、25℃に冷却した後の密着性が良好であり、後述の成分と混合指定ホットメルト性の組成物としたときの150℃での溶融粘度が十分に低くなる。
【0118】
[成分(A2)]
成分(A2)は以下の成分(A2-1)と成分(A2-2)を0:100~90:10、好ましくは0:100~75:25の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂混合物である。
(A2-1)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂、および
(A2-2)分子全体としてホットメルト性を有さず、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂。
本混合物は微粒子の形状であってよく、平均一次粒子径が1~20μmの真球状のシリコーン微粒子であることが特に好ましい。
【0119】
成分(A2-1)は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有するものを使用することで、得られる硬化物の弾性率を制御することができる。このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性または有機過酸化物によって、あるいはその他のラジカル機構によって反応しうる硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基またはアクリル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基;3-メタクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0120】
成分(A2-1)は、分子全体としてホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A2-1)成分である樹脂がそれ単独では200℃以下において加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、200℃以下において軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。(A2-1)成分において、このような物性は特に構造的に制限されるものではないが、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等を大量に含む場合、当該成分はホットメルト性となる場合があり、かつ、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0121】
好適には、成分(A2-1)中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基およびビニル基等のアルケニル基及び(メタ)アクリル基((メタ)アクリルはアクリル及び/又はメタクリルを意味する)から選ばれる基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル~99モル%がメチル基であることが好ましく、80~99モル%がメチル基であることがより好ましく、88~99モル%がメチル基あり、その他のケイ素原子に結合した官能基がビニル基等のアルケニル基又は(メタ)アクリル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、(A2-1)成分はホットメルト性ではなく、その硬化物の高温下における耐着色性等に特に優れる成分として設計可能である。なお、当該成分(A2-1)中には、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0122】
成分(A2-1)は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内にSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、これらの分岐シロキサン単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~90モル%の範囲であることが特に好ましい。また、Rは一価有機基であり、好適には炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびアルケニル基から選ばれる官能基であり、技術的効果の見地から、Rにはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。
【0123】
好適には、(A2-1)成分が、(A2-1-1)下記平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(R1/2)e
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中の全Rの1~12モル%がアルケニル基又は(メタ)アクリル基であり;各Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0≦d≦0.65、0≦e≦0.05、但し、c+d>0.20、かつa+b+c+d=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0124】
上記の平均単位式において、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;(メタ)アクリル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中の全Rの1~12モル%がアルケニル基で、好ましくは1分子中の全Rの2~10モル%がアルケニル基である。アルケニル基の含有量が前記範囲の下限未満では、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が不十分となる場合がある。他方、アルケニル基の含有量が前記範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。なお、各Rはメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、発明の技術的効果の見地から、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、(A2-1-1)成分自体がホットメルト性となって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、硬化物において、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0125】
式中、Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。Rのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル又はヘキシルで例示される。当該Rを含む官能基R1/2は、成分(A2-1-1)中の水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0126】
上記式中、aは一般式:R SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度、伸び率等)が低くなりすぎない。
【0127】
上記式中、bは一般式:R SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦b≦0.70、好ましくは0≦b≦0.60を満たす。bが前記の範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。
【0128】
上記式中、cは、一般式:RSiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦c≦0.80、好ましくは0≦c≦0.75を満たす。cが前記の範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない、タックフリーの組成物を得ることができる。本発明において、cは0であってよく、かつ好ましい。
【0129】
上記式中、dは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.00≦d≦0.65であることが必要であり、0.20≦d≦0.65であることが好ましく、0.25≦d≦0.65であることが特に好ましい。当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現でき、得られる硬化物は十分な柔軟性を有するためである。
【0130】
本発明において、cまたはdは0であってよいが、c+d>0.20であることが必要である。c+dの値が前記下限未満では、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現できず、本発明の技術的効果が十分に達成できない場合がある。
【0131】
式中、eは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦e≦0.05、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0132】
成分(A2-1)は、上記の特徴を有するオルガノポリシロキサン樹脂であり、取り扱い性の観点から、好適には、レーザー回折・散乱法等を用いて測定される平均一次粒子径が1~20μmの真球状のオルガノポリシロキサン樹脂微粒子である。かかる微粒子成分を用いることで、本組成物を取り扱い作業性およびホットメルト性に優れた硬化性粒状組成物として調製ないし生産することができる。ここで、(A2-1)成分を製造する方法は前述の通りである。
【0133】
[成分(A2-2)]
成分(A2-2)は、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物の主剤の一つであり、単独ではホットメルト性を有しない硬化反応性の官能基を含有するオルガノポリシロキサン樹脂であり、前記の成分(A2-1)および後述の成分(B)と所定の量的範囲で併用することで、組成物全体としてのホットメルト性および硬化物の優れた応力緩和性を実現する成分である。このような成分(A2-2)は、単独又は他の成分(例えば、非反応性のオルガノポリシロキサン樹脂である成分(A2-1)、以下で説明する成分(B)の一部)と組み合わされて粒子の形態であることが好ましく、平均一次粒子径が1~20μmの真球状のシリコーン微粒子であることが特に好ましい。
【0134】
成分(A2-2)は、分子全体としてホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、(A2-2)成分である樹脂がそれ単独では加熱溶融挙動を示さないことであり、具体的には、軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。成分(A2-2)において、このような物性は特に構造的に制限されるものではないが、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等を大量に含む場合、当該成分はホットメルト性となる場合があり、かつ、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0135】
成分(A2-2)は、成分(A2-1)同様に固体状であり、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂であるが、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有しないことを特徴とする。すなわち、成分(A2-2)はオルガノポリシロキサン樹脂中の官能基としてビニル基等のアルケニル基を含まないことを特徴とする。本オルガノポリシロキサン中の官能基としては炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基が挙げられ、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。
【0136】
好適には、成分(A2-2)中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基であり、全てのケイ素原子に結合した官能基の70モル~100モル%がメチル基であることが好ましく、80~100モル%がメチル基あることがより好ましく、88~100モル%がメチル基ある事が特に好ましい。かかる範囲において、成分(A2)はホットメルト性ではなく、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を含む硬化物の補強効果に特に優れる成分として設計可能である。なお、当該(A2-2)成分中には、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでもよい。
【0137】
成分(A2-2)は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有しないので、それ自体では、硬化物を形成しないが、組成物全体としてのホットメルト性の改善や硬化物に対する補強効果を有する。また、必要に応じて、硬化反応性基を有する成分(A2-1)と併用することで、本発明の技術的効果を達成するために必要な成分である。
【0138】
成分(A2-2)は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内に分岐シロキサン単位であるSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、当該シロキサン単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~65モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0139】
好適には、成分(A2-2)は、(A2-2-1)下記平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(R1/2)j
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基;Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;f、g、h、i及びjは、以下を満たす数である:0.35≦f≦0.55、0≦g≦0.20、0≦h≦0.20、0.45≦i≦0.65、0≦j≦0.05、かつf+g+h+i=1)
で表される非ホットメルト性のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0140】
上記の平均単位式において、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。ここで、1分子中の全Rの70モル%以上がメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、88モル%以上がメチル基であることが、工業生産上および発明の技術的効果の見地から、特に好ましい。一方、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、(A2)成分自体がホットメルト性となって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。
【0141】
式中、Rは前記同様の基である。
【0142】
式中、fは、一般式:R SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0.35≦f≦0.55、好ましくは0.40≦f≦0.50を満たす。fが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、fが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が低くなりすぎない。
【0143】
式中、gは、一般式:R SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦g≦0.20、好ましくは0≦g≦0.10を満たす。gが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。本発明において、gは0であってよく、かつ好ましい。
【0144】
式中、hは、一般式:RSiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。この数は、0≦h≦0.20、好ましくは0≦h≦0.10を満たす。hが範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。本発明において、hは0であってよく、かつ好ましい。
【0145】
式中、iは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.45≦i≦0.65であることが必要であり、0.40≦i≦0.65であることが好ましく、0.50≦i≦0.65であることが特に好ましい。当該数値範囲内において、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能でき、得られる硬化物の機械的強度に優れ、かつ、組成物全体としてべたつきのない、取扱作業性の良好な組成物が実現できる。
【0146】
式中、jは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。この数は、0≦j≦0.05、好ましくは0≦j≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、最終的には、各シロキサン単位の総和であるe、f、g及びhの合計は1に等しい。
【0147】
[成分(B)]
成分(B)は、成分(A2-1)や成分(A2-2)とともに使用して本組成物の主剤を構成する成分の一つであり、25℃において液状又は可塑性を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するものである。このような硬化反応性の鎖状オルガノポリシロキサンは、前述の固体状オルガノポリシロキサン樹脂粒子と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。
【0148】
成分(A2-1)と同様に、成分(B)は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが必要である、このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性、ラジカル反応性または有機過酸化物硬化性の官能基であり、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性基は、アルケニル基または(メタ)アクリル基であり、前記同様の基が例示され、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0149】
成分(B)は、上述したとおり、25℃(室温)において液状又は可塑性を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、室温で固体状の成分(A2-1)と、あるいは成分(A2-1)及び成分(A2-2)と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現する。その構造は、少数の分岐のシロキサン単位(例えば、一般式:RSiO3/2で表されるT単位(Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるQ単位)を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよいが、好適には、
(B-1)下記構造式:
SiO(SiR O)SiR
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のRの少なくとも2個はアルケニル基又は(メタ)アクリル基であり、kは20~10,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである。好適には、分子鎖両末端に各々1個ずつアルケニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0150】
上記式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、又は類似のアルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、又は類似のアルケニル基;フェニル、トリル、キシリル、又は類似のアリール基;ベンジル、フェネチル、又は類似のアラルキル基;及びクロロメチル、3-クロロプロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、又は類似のハロゲン化アルキル基等である。更に、1分子中のRの少なくとも2個がアルケニル基、好ましくはビニル基である。また、各Rはメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、全てのRのうち、少なくとも2個がアルケニル基であり、残りのRがメチル基であることが好ましい。なお、発明の技術的効果の見地から、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。特に好適には、分子鎖両末端に一つずつビニル基等のアルケニル基を有し、他のRがメチル基であるものが好ましい。
【0151】
上記式中、kは、20~10,000、好ましくは30~9,000、特に好ましくは45~8,000の数である。kが前記の範囲の下限以上であれば、室温でべたつきの少ない粒状組成物を得ることができる。他方、kが前記の範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。
【0152】
[成分(A2-1)、成分(A2-2)、と成分(B)の質量比]
得られる硬化物の弾性率等の特性を適宜調整できるという観点から、成分(A2-1)と(A2-2)成分の比率は0:100~90:10、好ましくは75:25の範囲である。成分(A2-2)はそれ自体硬化性を有しないが、本組成物においては成分(A2-1)を添加して併用することで、本組成物から成る硬化物の高温においての弾性率を制御することが可能であり、本組成物に後述の機能性無機フィラーを添加する場合は、その添加量と成分(A2-1)の使用量を適宜調節することで、好適な弾性率並びに柔軟性を達成することが可能となる。例えば、機能性無機フィラーの添加量が多い場合や可能な限り得られる硬化物の弾性率を低減させたい場合などは、成分(A2-1)は添加せず、成分(A2-2)のみで組成物を配合することも可能である。一方で、後述の機能性無機フィラーを添加しない場合は、成分(A2-1)の添加量を増やす事で室温並びに高温での弾性率を所望の値とすることが可能である。
また、組成物全体としてホットメルト性を実現するために、オルガノポリシロキサン樹脂である成分(A2)100質量部に対し、直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである成分(B)の質量比は、10~100質量部の範囲であり、10~70質量部の範囲であることが好ましく、15~50質量部の範囲であることがより好ましい。成分(B)の含有量が前記範囲であれば、得られる硬化性シリコーン組成物は、良好なホットメルト性を実現し、かつ、得られる硬化物の機械的強度を増大することができ、かつ、得られる組成物の室温でのべたつきを低減することができ、その取扱作業性が改善される。
【0153】
上述した成分(A2-1)又は成分(A2-1)及び(A2-2)と、成分(B)を含むホットメルト特性を示す混合物は、それらが有する反応性官能基の種類に応じて、硬化剤(C)及び/又は硬化触媒(D)、さらに任意選択により硬化遅延剤(E)を用いて架橋させ、硬化させることができる。例えば、これらが有する反応性官能基がアルケニル基である場合には、硬化剤としてヒドロシリル化反応可能なケイ素結合水素原子を有する硬化剤(C)と組み合わせてヒドロシリル化反応により硬化可能な組成物を得ることができる。また、それらの反応性官能基が(メタ)アクリル基及び/又はビニル基のようにラジカル反応可能な基である場合には、硬化剤(C)として上述した有機過酸化物を用いることによって、硬化性のシリコーン組成物を得ることができる。また、それらの反応性官能基が(メタ)アクリル、特にアクリル基である場合には、光ラジカル開始剤を硬化剤(C)として用いて、UV硬化型の硬化性シリコーン組成物を得ることもできる。これらのいずれも本発明の硬化性組成物の範囲内である。
【0154】
本発明で使用される硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートは上記の様な構成で製造すると透明なフィルムとして得ることが可能であるが、得られる硬化物に機能性を付与したい場合、上記の成分に加えて、さらに(E)機能性フィラーを含有してもよい。
【0155】
[その他の添加剤]
成分(E)である機能性フィラーは、硬化物の機械的特性やその他の特性を付与する成分であり、無機フィラー、有機フィラー、およびこれらの混合物が例示される。この無機フィラーとしては、補強性フィラー、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、蛍光体、およびこれらの少なくとも2種の混合物が例示され、有機フィラーとしては、シリコーン樹脂系フィラー、フッ素樹脂系フィラー、ポリブタジエン樹脂系フィラーが例示される。なお、これらのフィラーの形状は特に制限されるものではなく、球状、紡錘状、扁平状、針状、不定形等であってよい。
【0156】
本組成物を封止剤、保護剤、接着剤等の用途で使用する場合には、硬化物の機械的強度、保護性および接着性の改善の見地から、成分(E)の少なくとも一部に、補強性フィラーを含むことが好ましい。
【0157】
補強性フィラーは硬化物の機械的強度を向上させ、保護性および接着性を改善させるほか、硬化前の硬化性シリコーン組成物のバインダーフィラーとして固体粒子状を維持する目的で添加してもよい。このような補強性フィラーとしては、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ヒュームド二酸化チタン、石英、炭酸カルシウム、ケイ藻土、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及び炭酸亜鉛が例示される。また、これらの補強性フィラーを、メチルトリメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン;トリメチルクロロシラン等のオルガノハロシラン;ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;α,ω-シラノール基封鎖ジメチルシロキサンオリゴマー、α,ω-シラノール基封鎖メチルフェニルシロキサンオリゴマー、及びα,ω-シラノール基封鎖メチルビニルシロキサンオリゴマー等から選択されるシロキサンオリゴマー等により表面処理してもよい。この補強性フィラーの粒子径は限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定によるメジアン径が1nm~500μmの範囲内であることが好ましい。さらに、補強性フィラーとして、メタケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、セピオライト、ゾノライト、ホウ酸アルミニウム、ロックウール、ガラスファイバー等の繊維状フィラーを用いてもよい。
【0158】
さらに、本組成物を用いて得られる硬化物に他の機能を付与する目的で、白色顔料、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、または蛍光体を配合してもよい。また、硬化物の応力緩和特性の改善等の目的でシリコーンエラストマー微粒子等の有機フィラーを配合してもよい。
【0159】
白色顔料は硬化物に白色度を付与し、光反射性を向上させること成分であり、当該成分の配合により本組成物を硬化させてなる硬化物を発光/光学デバイス用の光反射材として利用することができる。この白色顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物;ガラスバルーン、ガラスビーズ等の中空フィラー;その他、硫酸バリウム、硫酸亜鉛、チタン酸バリウム、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、及び酸化アンチモンが例示される。光反射率と隠蔽性が高いことから、酸化チタンが好ましい。また、UV領域の光反射率が高いことから、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、及びチタン酸バリウムが好ましい。この白色顔料の平均粒径や形状は限定されないが、平均粒径は0.05~10.0μmの範囲内、あるいは0.1~5.0μmの範囲内であることが好ましい。また、この白色顔料をシランカップリング剤、シリカ、及び酸化アルミニウム等から選択されるものを用いて表面処理してもよい。
【0160】
熱伝導性フィラーまたは導電性フィラーは、硬化物に熱伝導性/導電性(電気伝導性)を付与する目的で添加され、具体的には、金、銀、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属微粉末;セラミック、ガラス、石英、有機樹脂等の微粉末表面に金、銀、ニッケル、銅等の金属を蒸着またはメッキした微粉末;酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化亜鉛等の金属化合物;グラファイト、およびこれらの2種以上の混合物が例示される。本組成物に電気絶縁性が求められる場合には、金属酸化物系粉末、または金属窒化物系粉末が好ましく、特に、酸化アルミニウム粉末、酸化亜鉛粉末、または窒化アルミニウム粉末が好ましく、これらを熱伝導性/導電性の要求に応じて種類、粒子径、粒子形状等を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
蛍光体は、硬化物を波長変換材料に用いる場合に、光源(光半導体素子)からの発光波長を変換するために配合される成分である。この蛍光体としては、特に制限はなく、発光ダイオード(LED)に広く利用されている、酸化物系蛍光体、酸窒化物系蛍光体、窒化物系蛍光体、硫化物系蛍光体、酸硫化物系蛍光体等からなる黄色、赤色、緑色、および青色発光蛍光体が例示される。
【0162】
シリコーン微粒子は、非反応性のシリコーンレジン微粒子およびシリコーンエラストマー微粒子が挙げられるが、硬化物の柔軟性または応力緩和特性の改善の見地から、シリコーンエラストマー微粒子が好適に例示される。
【0163】
シリコーンエラストマー微粒子は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物である。シリコーンエラストマー微粒子は、ヒドロシリル化反応やシラノール基の縮合反応等によるジオルガノポリシロキサンの架橋反応により調製することができ、中でも、側鎖又は末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖又は末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー微粒子は、球状、扁平状、及び不定形状等種々の形状を取りうるが、分散性の点から球状であることが好ましく、中でも真球状であることがより好ましい。こうしたシリコーンエラストマー微粒子の市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製の「トレフィルEシリーズ」、「EPパウダーシリーズ」、信越化学工業社製の「KMPシリーズ」等を挙げることができる。
【0164】
以上のような機能性フィラーを本組成物中に安定的に配合する目的等で、特定の表面処理剤を成分(E)全体の質量に対して、0.1~2.0質量%、0.1~1.0質量%、0.2~0.8質量%の範囲で用いて、フィラー表面処理がなされていてもよい。これらの表面処理剤の例としては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリコーンレジン、金属石鹸、シランカップリング剤、パーフルオロアルキルシラン、及びパーフルオロアルキルリン酸エステル塩等のフッ素化合物等であってよい。
【0165】
特に、成分(E)が熱伝導性フィラーであり、本発明の硬化性シリコーン組成物中に大量に配合する場合、熱伝導性フィラーとして、好適な平均粒径が0.1~30μmである板状の窒化ホウ素粉末、平均粒径が0.1~50μmである顆粒状の窒化ホウ素粉末、平均粒径が0.01~50μmである球状及び/若しくは破砕状の酸化アルミニウム粉末、又は平均粒径が0.01~50μmである球状及び/若しくは破砕状グラファイト、或いはこれらの2種類以上の混合物であることが特に好ましい。最も好適には、平均粒径が0.01~50μmである球状および破砕状の酸化アルミニウム粉末の2種類以上の混合物である。特に、粒径の大きい酸化アルミニウム粉末と粒径の小さい酸化アルミニウム粉末を最密充填理論分布曲線に従う比率で組み合わせることにより、充填効率が向上して、低粘度化及び高熱伝導化が可能になる。
【0166】
さらに、前記の熱伝導性フィラーは、1種類以上の有機ケイ素化合物によりその表面の少なくとも一部が処理されていることが特に好ましい。処理量の好適な範囲は、前記のとおりである。ここで、表面処理剤である有機ケイ素化合物の例は、シラン、シラザン、シロキサン、又は同様物などの低分子量有機ケイ素化合物、及びポリシロキサン、ポリカルボシロキサン、又は同様物などの有機ケイ素ポリマー又はオリゴマーである。好ましいシランの例は、いわゆるシランカップリング剤である。このようなシランカップリング剤の代表例としては、アルキルトリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン又は同様物など)、有機官能基含有トリアルコキシシラン(グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、又は同様物など)である。好ましいシロキサン及びポリシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、1,3-ジヘキシル-テトラメチルジシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化(single-terminated)ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化ジメチルビニル単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル単末端化有機官能基単末端化ポリジメチルシロキサン、トリアルコキシシリル両末端化(doubly terminated)ポリジメチルシロキサン、有機官能基両末端化ポリジメチルシロキサン、又は同様物が挙げられる。シロキサンを使用するとき、シロキサン結合の数nは、好ましくは2~150の範囲である。好ましいシラザンの例は、ヘキサメチルジシラザン、1,3-ジヘキシル-テトラメチルジシラザン、又は同様物である。好ましいポリカルボシロキサンの例は、ポリマー主鎖内にSi-C-C-Si結合を有するポリマーである。
【0167】
成分(E)の含有量は限定されないが、得られる硬化物の硬さや機械的強度が優れることから、(A)成分および(B)成分の和(100質量部)に対して10~2000質量部の範囲内、10~1500質量部の範囲内、あるいは10~1000質量部の範囲内であることが好ましい。
【0168】
本発明の硬化性シリコーン組成物は上記の(A)~(D)成分から選択される成分を適宜組み合わせて含有してなるホットメルト性を有するものであるが、その溶融特性をさらに改善する見地から、(E’)滴点が50℃以上であり、150℃での回転粘度計により測定される溶融粘度が10Pa・s以下であるホットメルト性の粒子を添加してもよい。
【0169】
上記の滴点の条件及び150℃における溶融時の動粘度の条件を満たす限り、成分(E)の種類は特に制限されるものではなく、各種のホットメルト性の合成樹脂、ワックス類、脂肪酸金属塩等から選ばれる1種類以上が使用できる。当該成分(E)は、高温(150℃)において低い動粘度を呈し、流動性に優れた溶融物を形成する。さらに上記の(A)~(D)成分から硬化機構に適した成分を選択して併用することにより、本組成物からなる溶融物内の成分(E)は、高温下で組成物全体に速やかに広がることにより、溶融した組成物が適用された基材面と組成物全体の粘度を低下させると共に、基材および溶融組成物の表面摩擦を急激に低下させ、組成物全体の流動性を大幅に上昇させる効果を呈する。このため、他の成分の総量に対して、ごく少量添加するだけで、溶融組成物の粘度および流動性を大きく改善することができる。
【0170】
成分(E)は、上記の滴点及び溶融時の動粘度の条件を満たす限り、パラフィン等の石油系ワックス類であってもよいが、本発明の技術的効果の見地から、脂肪酸金属塩やエリスリトール誘導体の脂肪酸エステルからなるホットメルト成分であることが好ましく、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、イソノナン酸等の高級脂肪酸の金属塩やペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル、グリセリントリ-18-ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトールフルステアレートが特に好ましい。ここで、上記の脂肪酸金属塩の種類も特に制限されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;または亜鉛塩が好適に例示される。
【0171】
成分(E)として、特に好適なものは、(E0)遊離脂肪酸量が5.0%以下の脂肪酸金属塩であり、4.0%以下であり、0.05~3.5%の脂肪酸金属塩やエリスリトール誘導体である。このような成分として、例えば、少なくとも1種以上のステアリン酸金属塩やが例示される。具体的には、ステアリン酸カルシウム(融点150℃)、ステアリン酸亜鉛(融点120℃)、およびステアリン酸マグネシウム(融点130℃)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(融点60-70℃)、ペンタエリスリトールアジピン酸ステアリン酸エステル(融点55-61℃)、ペンタエリスリトールフルステアレート(融点62-67℃)等から選ばれる、融点が150℃以下のホットメルト成分の使用が最も好ましい。
【0172】
成分(E)の使用量は、組成物全体を100質量部とした場合、(E0)成分の含有量が0.01~5.0質量部の範囲であり、0.01~3.5質量部、0.01~3.0質量部であってよい。成分(E)の使用量が前記の上限を超えると、本発明の硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の接着性および機械的強度が不十分となる場合がある。また、成分(E)の使用量が前記の下限未満では、加熱溶融時の十分な流動性が実現できない場合がある。
【0173】
また、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、硬化遅延剤や接着性付与剤を含有してもよい。
【0174】
組成物の硬化がヒドロシリル化反応で進行する場合には、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。これらのうち、大気圧下で沸点が200℃以上の化合物を用いることが特に好ましい。硬化性シリコーン組成物中の硬化遅延剤の含有量は特に限定されないが、組成物に対して、質量単位で、1~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0175】
本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物には接着性付与剤を添加してもよい。接着性付与剤としては、ケイ素原子に結合したアルコキシ基を一分子中に少なくとも1個有する有機ケイ素化合物が好ましい。このアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示され、特に、メトキシ基が好ましい。また、有機ケイ素化合物中のアルコキシ基以外のケイ素原子に結合する基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基等のハロゲン置換もしくは非置換の一価炭化水素基;3-グリシドキシプロピル基、4-グリシドキシブチル基等のグリシドキシアルキル基;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基等のエポキシシクロヘキシルアルキル基;3,4-エポキシブチル基、7,8-エポキシオクチル基等のエポキシアルキル基;3-メタクリロキシプロピル基等のアクリル基含有一価有機基;水素原子が例示される。この有機ケイ素化合物は本組成物中のアルケニル基またはケイ素原子結合水素原子と反応し得る基を有することが好ましく、具体的には、ケイ素原子結合水素原子またはアルケニル基を有することが好ましい。また、各種の基材に対して良好な接着性を付与できることから、この有機ケイ素化合物は一分子中に少なくとも1個のエポキシ基含有一価有機基を有するものであることが好ましい。このような有機ケイ素化合物としては、オルガノシラン化合物、オルガノシロキサンオリゴマー、アルキルシリケートが例示される。このオルガノシロキサンオリゴマーあるいはアルキルシリケートの分子構造としては、直鎖状、一部分枝を有する直鎖状、分枝鎖状、環状、網状が例示され、特に、直鎖状、分枝鎖状、網状であることが好ましい。有機ケイ素化合物としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のシラン化合物;一分子中にケイ素原子結合アルケニル基もしくはケイ素原子結合水素原子、およびケイ素原子結合アルコキシ基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物、ケイ素原子結合アルコキシ基を少なくとも1個有するシラン化合物またはシロキサン化合物と一分子中にケイ素原子結合ヒドロキシ基とケイ素原子結合アルケニル基をそれぞれ少なくとも1個ずつ有するシロキサン化合物との混合物、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物、一分子中に少なくとも二つのアルコキシシリル基を有し,かつそれらのシリル基の間にケイ素-酸素結合以外の結合が含まれている有機化合物、一般式: R Si(OR)4-n
(式中、Rは一価のエポキシ基含有有機基であり、Rは炭素原子数1~6のアルキル基または水素原子である。nは1~3の範囲の数である)
で表されるエポキシ基含有シランまたはその部分加水分解縮合物、ビニル基含有シロキサンオリゴマー(鎖状または環状構造のものを含む)とエポキシ基含有トリアルコキシシランとの反応混合物、メチルポリシリケート、エチルポリシリケート、エポキシ基含有エチルポリシリケートが例示される。この接着性付与剤は低粘度液状であることが好ましく、その粘度は限定されないが、25℃において1~500mPa・sの範囲内であることが好ましい。また、この接着性付与剤の含有量は限定されないが、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物の合計100質量部に対して0.01~10質量部の範囲内であることが好ましい。
【0176】
本発明において、特に好適な接着性付与剤として、アミノ基含有オルガノアルコキシシランとエポキシ基含有オルガノアルコキシシランとの反応混合物が例示される。このような成分は、硬化性シリコーン組成物が硬化途上で接触している各種基材に対する初期接着性、特に未洗浄被着体に対しても低温接着性を改善する成分である。また、本接着促進剤を配合した硬化性シリコーン組成物が縮合硬化系である場合など、硬化系によっては、架橋剤としても作用する場合もある。このような反応混合物は、特公昭52-8854号公報や特開平10-195085号公報に開示されている。
【0177】
このような接着性付与剤の成分を構成するアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとしては、アミノメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)アミノメチルトリブトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリエトキシシランが例示される。
【0178】
また、エポキシ基含有オルガノアルコキシシランとしては、3-グリシドキシプロリルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランが例示される。
【0179】
これらアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとの比率はモル比で、(1:1.5)~(1:5)の範囲内にあることが好ましく、(1:2)~(1:4)の範囲内にあることが特に好ましい。この成分(e1)は、上記のようなアミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを混合して、室温下あるいは加熱下で反応させることによって容易に合成することができる。
【0180】
特に、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物においては、特開平10-195085号公報に記載の方法により、アミノ基含有有機基を有するアルコキシシランとエポキシ基含有有機基を有するアルコキシシランとを反応させる際、特に、アルコール交換反応により環化させてなる、一般式:
【化1】
{式中、R1はアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基であり、R2は同じかまたは異なる一般式:
【化2】
(式中、R4はアルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基であり、R5は一価炭化水素基であり、R6はアルキル基であり、R7はアルキレン基であり、R8はアルキル基、アルケニル基、またはアシル基であり、aは0、1、または2である。)
で表される基からなる群から選択される基であり、R3は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基である。}
で表されるカルバシラトラン誘導体を含有することが特に好ましい。このようなカルバシラトラン誘導体として、以下の構造で表される1分子中にケイ素原子結合アルコキシ基またはケイ素原子結合アルケニル基を有するカルバシラトラン誘導体が例示される。
【化3】
(式中、Rcはメトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基)
【0181】
また、本発明においては、下記構造式で表される、シラトラン誘導体を接着性付与剤として用いてもよい。
【化4】
式中のR1は同じかまたは異なる水素原子もしくはアルキル基であり、特に、R1としては、水素原子、またはメチル基が好ましい。また、上式中のR2は水素原子、アルキル基、および一般式:-R4-Si(OR5)x6 (3-x)で表されるアルコキシシリル基含有有機基からなる群から選択される同じかまたは異なる基であり、但し、R2の少なくとも1個はこのアルコキシシリル基含有有機基である。R2のアルキル基としては、メチル基等が例示される。また、R2のアルコキシシリル基含有有機基において、式中のR4は二価有機基であり、アルキレン基またはアルキレンオキシアルキレン基が例示され、特に、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチレンオキシプロピレン基、メチレンオキシペンチレン基であることが好ましい。また、式中のR5は炭素原子数1~10のアルキル基であり、好ましくは、メチル基、エチル基である。また、式中のR6は置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、好ましくは、メチル基である。また、式中のxは1、2、または3であり、好ましくは、3である。
【0182】
このようなR2のアルコキシシリル基含有有機基としては、次のような基が例示される。
-(CH)Si(OCH)-(CH)Si(OCH)CH
-(CH)Si(OC)-(CH)Si(OC)(CH)
-CHO(CH)Si(OCH)
-CHO(CH)Si(OC)
-CHO(CH)Si(OCH)CH
-CHO(CH)Si(OC)CH
-CHOCHSi(OCH)-CHOCHSi(OCH)(CH)
【0183】
上の式中のR3は置換もしくは非置換の一価炭化水素基、炭素原子数1~10のアルコキシ基、グリシドキシアルキル基、オキシラニルアルキル基、およびアシロキシアルキル基からなる群から選択される少なくとも一種の基であり、R3の一価炭化水素基としては、メチル基等のアルキル基が例示され、R3のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示され、R3のグリシドキシアルキル基としては、3-グリシドキシプロピル基が例示され、R3のオキシラニルアルキル基としては、4-オキシラニルブチル基、8-オキシラニルオクチル基が例示され、R3のアシロキシアルキル基としては、アセトキシプロピル基、3-メタクリロキシプロピル基が例示される。特に、R3としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基であることが好ましく、さらには、アルキル基またはアルケニル基であることが好ましく、メチル基、ビニル基、アリル基およびヘキセニル基から選ばれる基が特に好適に例示される。
【0184】
さらに、本組成物には、本発明の目的を損なわない限り、その他任意の成分として、酸化鉄(ベンガラ)、酸化セリウム、セリウムジメチルシラノレート、脂肪酸セリウム塩、水酸化セリウム、ジルコニウム化合物等の耐熱剤;その他、染料、白色以外の顔料、難燃性付与剤等を含有してもよい。
【0185】
本発明において用いる硬化性ホットメルトシリコーン組成物として特に好ましいものとして、以下で説明するヒドロシリル化硬化型の組成物を挙げることができる。
【0186】
[硬化性シリコーン組成物の好ましい態様]
本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する炭素-炭素二重結合含有オルガノポリシロキサン樹脂(下記成分(A’))及び25℃において液状の又は可塑性を有する炭素-炭素二級結合含有直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン(下記成分(B’))を主成分とし、架橋剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサン(下記成分(C’))、及びヒドロシリル化反応触媒(下記成分(D’))を含有するヒドロシリル化反応を用いて熱硬化可能なシリコーン組成物であることが好ましい。本発明の硬化性シリコーン組成物は、特に、架橋剤であるケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、特定の化学構造を有し、且つ大気圧下で100℃に1時間曝露した後の質量減少率が曝露前の質量に対して10%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることが好ましい。また、本発明の硬化性シリコーン組成物には、任意選択によってヒドロシリル化反応遅延剤いわゆる硬化遅延剤を用いてもよいが、その場合、沸点が200℃以上の硬化遅延剤を使用することが好ましい。また、本発明の組成物は、成分(A1’)及び(A2’)としてホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂を用いるが、成分(B’)~(D’)をも含む組成物全体としてホットメルト性を有することを特徴とする。なお、以下で述べる好ましい態様の硬化性ホットメルトシリコーン組成物について、特に別段の記載がない限り、「ホットメルト性を有する」とは、組成物の軟化点が50~200℃の間にあり、組成物が150℃において溶融粘度(好適には、1000Pa・s未満の溶融粘度)を有し、流動可能な性質を有することをいう。本明細書において、硬化性ホットメルトシリコーン組成物とは、ホットメルト性を有する硬化性シリコーン組成物の意味である。
【0187】
[特に好ましい硬化性ホットメルトシリコーン組成物]
本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、(A1’)分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を有しない25℃において固体のオルガノポリシロキサン樹脂、及び(A2’)分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を有しない25℃において固体のオルガノポリシロキサン樹脂を、(A1’):(A2)=0:100~90:10、好ましくは0:100~75:25の質量比で組み合わせたもの(成分(A’))及び25℃において液状の又は可塑性を有する炭素-炭素二級結合含有直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン(成分(B’))を主成分とし、架橋剤としてオルガノハイドロジェンポリシロキサン(成分(C’))、及びヒドロシリル化反応触媒(成分(D’))を含有するヒドロシリル化反応を用いて熱硬化可能なシリコーン組成物である。本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、特に、架橋剤であるケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、特定の化学構造を有し、且つ大気圧下で100℃に1時間曝露した後の質量減少率が曝露前の質量に対して10%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることを特徴とする。また、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物には、任意選択によってヒドロシリル化反応遅延剤いわゆる硬化遅延剤を用いてもよいが、その場合、沸点が200℃以上、特に沸点が1気圧下(1013.25hPa)で200℃以上の硬化遅延剤を使用することが好ましい。また、本発明の組成物は、成分(A1’)及び(A2’)としてそれ単独ではホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂を用いるが、成分(B’)~(D’)をも含む組成物全体としてホットメルト性を有することをさらなる特徴とする。なお、本発明において、特に別段の記載がない限り、「ホットメルト性を有する」とは、組成物の軟化点が50~200℃の間にあり、組成物が150℃において溶融粘度(好適には、1000Pa・s未満の溶融粘度)を有し、流動可能な性質を有することをいう。したがって、本明細書において、本発明のホットメルト性を有する硬化性シリコーン組成物は、硬化性ホットメルトシリコーン組成物とも記す。
【0188】
[揮発しにくい成分を組み合わせることの意義]
本発明の組成物は組成物を構成する成分として、大気圧下、特に1気圧(1013.25hPa)下で100℃程度では揮発しにくい成分、あるいは揮発性成分含有量が少ない成分を組み合わせて用いることを特徴としているが、これは後述する本発明の硬化性ホットメルトシリコーンシート又はフィルムの生産工程において、ボイド等を含有しないシート又はフィルムを得るためには減圧下50~150℃の温度範囲で硬化性シリコーン組成物の各成分、さらにそれから得られる組成物を溶融混錬することが必要だからであり、本発明の各成分を用いることによって、ボイド等を含まないシート又はフィルムを製造できる。各成分が減圧下所定の温度にさらされるのはごく短時間であるが、この混錬条件下で有効成分が多量に揮発してしまうと設計通りの特性の組成物を得ることができないという問題が生じる。特に、架橋剤であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンや硬化遅延剤等の、硬化性シリコーン組成物の全質量に対して添加量が少ないものはそれらの成分の揮発により組成物の特性(硬化特性、硬化物の物性等)が、意図した値から大きく変わってしまう。このため、本発明の構成成分、特に成分(C’)及び任意成分(E’)として、揮発しにくいものを使用する必要がある。
【0189】
[硬化性シリコーン組成物のホットメルト性および構成]
本発明にかかる硬化性シリコーン組成物は、組成物全体としてホットメルト性を有し、加熱条件下で流動可能であることを特徴とする。特に、本発明の硬化性シリコーン組成物はその軟化点が50℃以上であり、150℃において溶融粘度(好適には、1000Pa・s未満の溶融粘度)を有することが好ましい。なお、本発明では、組成物全体としてホットメルト性を有していればよく、当該組成物を構成する個別の成分はホットメルト性を有しなくてもよい。
【0190】
より具体的には、本発明にかかる硬化性シリコーン組成物、すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、下記成分(A’)、(B’)、(C’)、及び(D’)を必須成分として以下の割合で含み、組成物全体としてホットメルト性を示す。
(A’)下記の(A1’)成分および(A2’)成分を0:100~90:10、好ましくは0:100~75:25の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂 100質量部
(A1’)分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を有しない、25℃において固体のオルガノポリシロキサン樹脂、
(A2’)分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を有しない、25℃において固体のオルガノポリシロキサン樹脂;
(B’)分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、25℃において液状の又は可塑性を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサン 10~100質量部;
(C’)下記平均組成式(1’):
(R SiO1/2a(R SiO2/2b(RSiO3/2c(SiO4/2d (1’)
(式中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換された一価炭化水素基であり、全R中少なくとも2個は水素原子であり、a、b、c、及びdは、0.01≦a≦0.6、0≦b、0≦c≦0.9、0≦d≦0.9、及び、a+b+c+d=1かつc+d≧0.2の条件を満たす数である。)
で表され、大気圧下、特に1気圧下で100℃に1時間暴露した後の暴露前に対する質量減少率が10質量%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサン (組成物全体に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基1個当りのケイ素原子に結合した水素原子の数が0.5~20.0個となる量);及び
(D’)ヒドロシリル化反応触媒 本組成物を硬化させるのに十分な量。
さらに、上記硬化性シリコーン組成物は、任意成分として、下記成分(E’)を含んでいてもよい:
(E’)大気圧下、特に1気圧下で沸点が200℃以上のヒドロシリル化反応用の硬化遅延剤。
さらに、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、本発明が目的とする特性を維持できる範囲で、当分野で公知のその他の添加剤を添加してもよい。
【0191】
なお、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物の形状は特に限定されないが、例えば、シート又はフィルム状に成形された形態であってもよく、シート又はフィルム状の形態であることが特に好ましい。以下、本発明の組成物に含まれる成分および任意成分について説明する。
【0192】
[成分(A’)]
本発明にかかる硬化性シリコーン組成物は、成分(A’)として、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を示さない、25℃で固体のオルガノポリシロキサン樹脂と、炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を示さない、25℃で固体のオルガノポリシロキサン樹脂とを0:100~90:10の質量比の組み合わせ物を含む。当該オルガノポリシロキサン樹脂は、さらに、RSiO1/2、RSiO2/2、RSiO3/2(Rは一価有機基、特に炭素数1~10の一価炭化水素基を表す)で表されるシロキサン単位や、R1/2(Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基)で表される水酸基またはアルコキシ基を含んでもよいが、好適には、全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上、好ましくは40モル%以上、特に、40~90モル%の範囲でSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むものである。SiO4/2で表されるシロキサン単位の含有量が20モル%未満では、たとえオルガノポリシロキサン樹脂がその他の分岐シロキサン単位(たとえば、RSiO3/2)を多量に含んでいても、本発明の技術的効果を達成できない場合がある。
【0193】
このような成分(A’)のオルガノポリシロキサン樹脂は、
(A1’)分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有し、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を有しない、25℃で固体のオルガノポリシロキサン樹脂、および
(A2’)分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有する、それ単独ではホットメルト性を有しない、25℃で固体のオルガノポリシロキサン樹脂
を0:100~90:10、好ましくは0:100~75:25(成分(A1’):成分(A2’))の質量比で含むオルガノポリシロキサン樹脂混合物であることが好ましい。なお、成分(A1’)は成分(A’)における任意選択成分であり、後述する成分(A2’)のみを成分(A’)として用いてもよい。
なお、硬化反応性とは、成分(C’)のオルガノハイドロジェンシロキサンとヒドロシリル化反応をすることができ、それによって組成物全体が硬化可能であることを意味する。
【0194】
上記の成分(A’)はそれ単独ではホットメルト性を示さないが、後述する成分(B’)と所定の量比の範囲内で併用することで、本発明の組成物全体としてホットメルト性を有するようにすることができる。
【0195】
[硬化反応性官能基を有するオルガノポリシロキサン樹脂(A1’)]
上記成分(A1’)は、本組成物の主剤の一つであり、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有し、単独ではホットメルト性を有さず、また、分子内に炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0196】
成分(A1’)は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性基を有することが必要である。このような硬化反応性基は、ヒドロシリル化反応性の官能基であり、成分(C’)とのヒドロシリル化架橋反応によって、硬化物を形成しうる。このような硬化反応性基は、特にアルケニル基であることが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基などの炭素数2~10のアルケニル基が挙げられ、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0197】
成分(A1’)は、それ単独ではホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、成分(A1’)であるオルガノポリシロキサン樹脂がそれ単独では200℃以下において加熱溶融挙動を示さないということであり、具体的には、200℃以下において軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。成分(A1’)がこのような物性を示すためには、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないこと、例えば全ケイ素結合有機基に占めるアリール基の割合が5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下であることが好ましく、アリール基を全く含まないことが特に好ましい。成分(A1’)が有機基としてフェニル基等のアリール基を大量に含む場合、当該成分はそれ単独でホットメルト性となる場合があり、かつ、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0198】
好適には、成分(A1’)のオルガノポリシロキサン樹脂のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基およびビニル基等のアルケニル基から選ばれる基であり、全てのケイ素原子に結合した有機基の70モル~99モル%がメチル基であることが好ましく、80~99モル%がメチル基であることがより好ましく、88~99モル%がメチル基あり、その他のケイ素原子に結合した有機基がビニル基等のアルケニル基であることが特に好ましい。かかる範囲において、成分(A1’)はそれ単独ではホットメルト性ではなく、本発明の硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の高温下における耐着色性等に特に優れた成分として有用である。なお、当該成分(A1’)のオルガノポリシロキサン樹脂は、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでいてもよい。
【0199】
成分(A1’)は、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内にSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、SiO4/2単位は、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~90モル%の範囲であることが特に好ましい。また、成分(A1’)のオルガノポリシロキサン樹脂が有する有機基Rは一価有機基であり、好適には炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびアルケニル基から選ばれる官能基であり、技術的効果の見地から、基Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましいことは上述した通りである。
【0200】
好適には、成分(A1’)は、
(A1-1’)下記平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(R1/2
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中の全Rの1~12モル%がアルケニル基であり;各Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;a、b、c、d及びeは、以下を満たす数である:0.10≦a≦0.60、0≦b≦0.70、0≦c≦0.80、0≦d≦0.65、0≦e≦0.05、但し、c+d>0.20、かつa+b+c+d=1)
で表される、それ単独ではホットメルト性を有しない、25℃で固体のオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0201】
上記の平均単位式において、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びヘプチル、等のアルキル基、特に好ましくはメチル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニル等のアルケニル基、特に好ましくはビニル基及び/又は1-ヘキセニル基;フェニル、トリル、及びキシリル等のアリール基、特に好ましくはフェニル基;ベンジル、及びフェネチル等のアラルキル基からなる群から選択される基である。更に、1分子中の全Rの1~12モル%がアルケニル基であり、好ましくは1分子中の全Rの2~10モル%がアルケニル基、特に好ましくはビニル基である。アルケニル基の含有量が前記範囲の下限未満では、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が不十分となる場合がある。他方、アルケニル基の含有量が前記範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。なお、各Rはメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基およびビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基から選ばれる官能基であることが好ましく、本発明の技術的効果の観点から、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、成分(A’)自体がホットメルト性を有することになって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、硬化物において、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0202】
上記式中、Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。Rのアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルが例示できる。当該Rを含む基R1/2は、成分(A’)のオルガノポリシロキサン樹脂が有する水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0203】
上記式中、aは一般式:R SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。aは、0.1≦a≦0.60、好ましくは0.15≦a≦0.55を満たす。aが前記の範囲の下限以上であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、aが前記範囲の上限以下であれば、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的強度(硬度、伸び率等)が低くなりすぎない。
【0204】
上記式中、bは一般式:R SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。bは、0≦b≦0.70、好ましくは0≦b≦0.60を満たす。bが前記の範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。
【0205】
上記式中、cは、一般式:RSiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。cは、0≦c≦0.80、好ましくは0≦c≦0.75を満たす。cが前記の範囲の上限以下であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない、低タック又はタックフリーの組成物を得ることができる。本発明において、cは0であってよく、かつcは0であることが好ましい。
【0206】
上記式中、dは、式SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.00≦d≦0.65であることが必要であり、0.20≦d≦0.65であることが好ましく、0.25≦d≦0.65であることが特に好ましい。dが前記の数値範囲内であれば、本成分を含む組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、組成物を硬化させて得られる硬化物が十分な柔軟性を有することができる。
【0207】
本発明において、上記式中、cまたはdは0であってよいが、c+d>0.20であることが必要である。c+dの値が0.20以下では、組成物全体として良好なホットメルト性能が実現できず、本発明の技術的効果が十分に達成できない場合がある。
【0208】
上記式中、eは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうる、ケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。eは、0≦e≦0.05であり、好ましくは0≦e≦0.03を満たす。eが範囲の上限以下であれば、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現する材料を得ることができる。なお、上記式中、各シロキサン単位の総和であるa、b、c及びdの合計は1に等しい。
【0209】
成分(A1’)は、上記の特徴を有するオルガノポリシロキサン樹脂であるが、室温においては固体であるため、後述する成分(B’)と物理的に混合するためにはトルエン、キシレン、及びメシチレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン及びジプロピルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、及びデカメチルテトラシロキサン等のシリコーン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン類などからなる群から選択される溶剤又は溶剤混合物に溶かした状態で使用することが好ましい。ここで使用する溶剤は、後述する工程において効率良く除去することが可能である。
【0210】
[成分(A2’)]
成分(A2’)は、本組成物の主剤の一つであり、それ単独ではホットメルト性を有しない、硬化反応性の官能基を含有しない、25℃において固体のオルガノポリシロキサン樹脂であり、前記の成分(A1)および成分(B)と所定の量的範囲内で併用することで、硬化性シリコーン組成物全体としてのホットメルト性および硬化性シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物の優れた応力緩和性を実現するための成分である。
【0211】
成分(A2’)は、それ単独ではホットメルト性を有さず、無溶媒の状態で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂である。ここで、ホットメルト性を有しないとは、成分(A2)であるオルガノポリシロキサン樹脂がそれ単独では200℃以下で加熱溶融挙動を示さないということであり、具体的には、200℃以下において軟化点および溶融粘度を有さないことを意味する。成分(A2’)がこのような物性を示すためには、オルガノポリシロキサン樹脂中の官能基が炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基から選ばれる官能基であり、フェニル基等のアリール基を実質的に含まないこと、例えば全ケイ素結合有機基に占めるアリール基の割合が5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下であることが好ましく、アリール基を全く含まないことが特に好ましい。成分(A2)が有機基としてフェニル基等のアリール基を大量に含む場合、当該成分はホットメルト性となる場合があり、かつ、SiO4/2基特有の硬化物を補強する効果が低下する場合がある。
【0212】
成分(A2’)は、成分(A1’)同様に25℃において固体状であり、SiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有するオルガノポリシロキサン樹脂であるが、分子内に少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有しないことを特徴とする。すなわち、成分(A2’)はオルガノポリシロキサン樹脂中の官能基としてビニル基等のアルケニル基を含まないことを特徴とする。成分(A2’)のオルガノポリシロキサン樹脂が有する基としては炭素原子数1~10の一価炭化水素基、特にメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基が挙げられ、このオルガノポリシロキサン樹脂はフェニル基等のアリール基を実質的に含まないこと、例えば全ケイ素結合有機基に占めるアリール基の割合が5モル%以下、さらに好ましくは2モル%以下であることが好ましく、アリール基を全く含まないことが特に好ましい。
【0213】
好適には、成分(A2’)中のケイ素原子に結合した官能基は、メチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基であり、全てのケイ素原子に結合した有機基の70モル~100モル%がメチル基であることが好ましく、80~100モル%がメチル基あることがより好ましく、88~100モル%がメチル基あることが特に好ましい。かかる範囲において、成分(A2’)はそれ単独ではホットメルト性を示さず、かつ、SiO4/2で表されるシロキサン単位を含む硬化物の補強効果に特に優れる成分であることができる。なお、当該成分(A2’)のオルガノポリシロキサン樹脂は、少量の水酸基またはアルコキシ基を含んでいてもよい。
【0214】
成分(A2’)は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性官能基を有しないので、それ自体では、成分(C’)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンと組み合わせても硬化物を形成しないが、本発明の硬化性シリコーン組成物全体としてのホットメルト性の改善や硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物に対する補強効果を有する。また、必要に応じて、硬化反応性官能基を有する成分(A1’)と併用することで、得られる硬化性シリコーン組成物の加熱溶融特性、及び組成物の硬化後の物性などを調節することができる。
【0215】
成分(A2’)は、無溶媒の状態で25℃において固体状のオルガノポリシロキサン樹脂であり、分子内に分岐シロキサン単位であるSiO4/2で表されるシロキサン単位を全シロキサン単位の少なくとも20モル%以上含有することを特徴とする。好適には、成分(A2)のオルガノポリシロキサンは、SiO4/2単位が、全シロキサン単位の少なくとも40モル%以上であり、50モル%以上、特に、50~65モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0216】
好適には、成分(A2’)は、(A2-1’)下記平均単位式:
(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2(SiO4/2(R1/2)j
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基;Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基であり;f、g、h、i及びjは、以下を満たす数である:0.35≦f≦0.55、0≦g≦0.20、0≦h≦0.20、0.45≦i≦0.65、0≦j≦0.05、かつf+g+h+i=1)
で表される、それ単独ではホットメルト性を有しないオルガノポリシロキサン樹脂である。
【0217】
上記の平均単位式において、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有し、炭素-炭素二重結合を含まない一価炭化水素基、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びヘプチル等のアルキル基、特に好ましくはメチル基;フェニル、トリル、及びキシリル等のアリール基、特に好ましくはフェニル基;ベンジル、及びフェネチル等のアラルキル基からなる群から選択される基である。ここで、1分子中の全Rの70モル%以上がメチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、88モル%以上が炭素原子数1~10のアルキル基、特にメチル基であることが、工業生産上および発明の技術的効果の見地から、特に好ましい。一方、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、成分(A2)自体がホットメルト性を有することになって、本発明の技術的効果を達成できなくなる場合があるほか、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化して得られる硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。
【0218】
上記式中、Rは上述したとおりであるが、Rがアルキル基である場合、アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルが挙げられる。
【0219】
上記式中、fは、一般式:R SiO1/2のシロキサン単位の割合を示す数である。fは、0.35≦f≦0.55、好ましくは0.40≦f≦0.50を満たす。fが前記範囲の下限以上であれば、本成分を含む硬化性シリコーン組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。他方、fが前記範囲の上限以下であれば、得られる硬化物の機械的強度(硬度等)が低くなりすぎない。
【0220】
上記式中、gは、一般式:R SiO2/2のシロキサン単位の割合を示す数である。gは、0≦g≦0.20、好ましくは0≦g≦0.10を満たす。gが範囲の上限以下であれば、本成分を含む硬化性シリコーン組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。本発明において、gは0であってよく、かつgは0であることが好ましい。
【0221】
上記式中、hは、一般式:RSiO3/2のシロキサン単位の割合を示す数である。hは、0≦h≦0.20、好ましくは0≦h≦0.10を満たす。hが範囲の上限以下であれば、本成分を含む硬化性シリコーン組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、かつ室温にてべたつきの少ない組成物を得ることができる。本発明において、hは0であってよく、かつhは0であることが好ましい。
【0222】
上記式中、iは、SiO4/2のシロキサン単位の割合を示す数であり、0.45≦i≦0.65であることが必要であり、0.50≦i≦0.65であることが特に好ましい。iが当該数値範囲内において、本成分を含む硬化性シリコーン組成物が、組成物全体として良好なホットメルト性能を実現でき、硬化性シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的強度に優れ、かつ、組成物全体としてべたつきのない、取扱作業性の良好な組成物が実現できる。
【0223】
上記式中、jは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。jは、0≦j≦0.05、好ましくは0≦j≦0.03を満たす。jが前記の範囲の上限以下であれば、硬化性シリコーン組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。なお、上記式中、各シロキサン単位の総和であるf、g、h、及びiの合計は1に等しい。
【0224】
成分(A2’)は、上記の特徴を有するオルガノポリシロキサン樹脂であり、取り扱い性に関しては前述の成分(A1’)と同様である。すなわち、成分(A2’)は室温(例えば25℃)において固体であるため、成分(A1’)と同様、成分(B’)と混合するためには上述した溶剤又は溶剤混合物に溶かした状態で使用し、その後、溶媒を除去して硬化性シリコーン組成物を調製できる。
【0225】
[成分(A’)における揮発性の低分子量成分の除去]
成分(A1’)や成分(A2’)については、それぞれの生産工程において、揮発性の低分子量成分が生成する。揮発性低分子量成分は、具体的にはMQの構造体であり、Mユニット(R SiO1/2)とQユニット(SiO4/2)からなるオルガノポリシロキサン樹脂を重合するときに副生成物として現れる。本構造体は、本発明の硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の硬度を著しく下げる効果がある。成分(A1’)及び成分(A2’)のオルガノポリシロキサン樹脂はこれらと相溶性の高い有機溶剤の存在下で原料モノマーの重合反応によって製造され、その有機溶剤を減圧乾燥等により取り除くことで固体状のオルガノポリシロキサン樹脂を得ることができるが、MQの構造体はオルガノポリシロキサン樹脂との相容性が高く、有機溶剤を取り除くような乾燥条件では除去することは困難である。MQ構造体はそれを含むオルガノポリシロキサン樹脂を200℃以上の温度に短時間暴露することによって除去できる事は知られていたが、MQ構造体を含む硬化性シリコーン組成物を半導体等の基材と一体成型した後に、高温に暴露してMQ構造体を除去すると、硬化性シリコーン組成物から生じる硬化物の体積減少並びに顕著な硬度上昇が起こり、成型物の寸法が変化し、反りなどが発生してしまうおそれがある。このため、本発明の硬化性シリコーン組成物を半導体等の基材と積層させる用途に適用するためには基材と積層して硬化性シリコーン組成物を硬化させる成型工程の前、できれば、硬化性シリコーン組成物を調製する前の原料の時点でオルガノポリシロキサン樹脂からMQ構造体を除去しておくことが好ましい。
【0226】
Q構造体をオルガノポリシロキサン樹脂から除去する方法としては、オルガノポリシロキサン樹脂の製造工程において、粒子状のオルガノポリシロキサン樹脂を得た後に、それをオーブンなどで乾燥してMQ構造体を取り除く方法や後述する二軸混錬機にて前述した有機溶剤と一緒に取り除く方法などが挙げられる。
【0227】
より具体的には、成分(A1’)や成分(A2’)は有機溶剤の存在下で製造され、製造工程中にMQ構造体等の揮発成分は副生成物として現れる。得られた粗原料であるオルガノポリシロキサン樹脂を、200℃程度の高温で短時間処理することで揮発成分は除去できるので、200℃以上の温度に設定した二軸混錬機などで成分(A1’)や成分(A2’)から有機溶剤とMQ構造体等の揮発成分とを同時に除去することが可能である。本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物を効率的に生産するという観点から、有機溶剤に溶解した成分(A2’)もしくは成分(A1’)と成分(A2’)の混合物に、後述する成分(B’)を添加して液体の状態で混合したものを200℃以上に設定した二軸押出機にフィードし、有機溶剤と一緒にMQ構造体等の揮発成分を取り除くという工程を行うことが好ましい。この方法によりホットメルト性の成分(A’)と成分(B’)の混合物を得ることができ、これを後述する工程において、硬化性シリコーン組成物を構成する残りの成分との混錬に使用できる。
【0228】
[成分(A’)における成分(A1’)と成分(A2’)の質量比]
本組成物全体としてホットメルト性を有するようにするために、成分(A2’)、または成分(A1’)と成分(A2’)の混合物を、後述の成分(B’)と所定の比率で混ぜ合わせる必要があるが、成分(A1)と成分(A2)の比率は0:100~90:10の範囲であってよく、0:100~85:25の範囲であることが好ましく、0:100~80:20であることがさらに好ましく、0:100~75:25であることが特に好ましい。成分(A2’)は、それ自体は硬化反応性官能基を有さないので硬化性を有しないが、本組成物においては成分(A2’)を成分(A1’)と組み合わせて使用することで、本硬化性組成物を硬化させて得られる硬化物の貯蔵弾性率、損失弾性率、及びこれらの比から計算されるtanδをある程度調節することが可能であり、それによって硬化物の好適な弾性率、柔軟性、及び応力緩和性を達成することが可能である。
【0229】
[成分(B’)]
成分(B’)は、本硬化性シリコーン組成物の主剤の一つであり、25℃において液状の又は可塑性を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであって、分子内に少なくとも2個の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性の官能基を有するものである。このような硬化反応性の鎖状オルガノポリシロキサンは、前述の成分(A’)の固体状オルガノポリシロキサン樹脂と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現できる。
【0230】
成分(B’)は、分子内に炭素-炭素二重結合を有する硬化反応性官能基を有することが必要である。このような硬化反応性官能基は、ヒドロシリル化反応性を有しており、他の成分との架橋反応によって、硬化物を形成する。このような硬化反応性官能基は、成分(A1’)が有するものと同様のアルケニル基、好ましくは炭素数2~10のアルケニル基であり、アルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニルが例示され、特にビニル基またはヘキセニル基であることが好ましい。
【0231】
成分(B’)は、25℃(室温)において液状の又は可塑性を有する直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであり、室温で固体状の成分(A’)と混合することで、組成物全体としてホットメルト特性を発現することができる。成分(B’)のオルガノポリシロキサンの化学構造は、直鎖状であっても、あるいは少数の分岐のシロキサン単位(例えば、一般式:RSiO3/2で表されるT単位(Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基)またはSiO4/2で表されるQ単位)を有する分岐鎖状のオルガノポリシロキサンであってもよいが、好適には、
(B1’)下記構造式:
SiO(SiR O)SiR
(式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基であり、但し1分子中のRの少なくとも2個はアルケニル基であり、kは20~5,000の数である)
で表される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである。好適には、分子鎖両末端に各々1個ずつアルケニル基、特にビニル基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0232】
上記式中、各Rは独立して1~10個の炭素原子を有する一価炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びヘプチル等のアルキル基、特に好ましくはメチル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、及びヘキセニル等のアルケニル基、特に好ましくはビニル基及び/又はヘキセニル基;フェニル、トリル、及びキシリル等のアリール基、特に好ましくはフェニル基;ベンジル、及びフェネチル等のアラルキル基からなる群から選択される基である。更に、1分子中のRの少なくとも2個がアルケニル基、好ましくはビニル基である。また、各Rは、メチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基、並びにビニル基及びヘキセニル基等のアルケニル基からなる群から選ばれる官能基であることが好ましく、全てのRのうち、1分子あたり少なくとも2個がアルケニル基であり、残りのRがメチル基であることが好ましい。なお、発明の技術的効果の観点から、Rはフェニル基等のアリール基を実質的に含まないことが好ましい。フェニル基等のアリール基を大量に含む場合、硬化性シリコーン組成物から得られる硬化物の高温下での耐着色性が悪化する場合がある。特に好適には、分子鎖両末端に一つずつビニル基等のアルケニル基を有し、他のRがメチル基であるものが好ましい。
【0233】
上記式中、kは、20~5,000、好ましくは30~3,000、特に好ましくは45~800の数である。kが前記の範囲の下限以上であれば、室温でべたつきの少ない硬化性シリコーン組成物を得ることができる。他方、kが前記の範囲の上限以下であれば、硬化性シリコーン組成物全体として良好なホットメルト性能を実現できる。
【0234】
ここで、組成物全体としてホットメルト性を示すようにするためには、オルガノポリシロキサン樹脂である成分(A’)100質量部に対し、直鎖状または分岐鎖状のオルガノポリシロキサンである成分(B’)は、10~100質量部の範囲であり、10~70質量部の範囲であることが好ましく、15~50質量部の範囲であることがより好ましい。成分(B’)の含有量が前記の範囲内であれば、得られる硬化性シリコーン組成物は、良好なホットメルト性を示し、かつ、硬化性シリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的強度を増大することができ、かつ、得られる硬化性シリコーン組成物の室温でのべたつきを低減することができ、それによって組成物の取扱作業性が改善される。
【0235】
[成分(C’)]
成分(C’)は、上記の成分(A’)および成分(B’)に含まれる炭素―炭素二重結合とヒドロシリル化反応用触媒の存在下で架橋可能なケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、具体的には、下記平均組成式(1’)、
(R SiO1/2a(R SiO2/2b(RSiO3/2c(SiO4/2d(R1/2)e(1’)
(式中、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換された一価炭化水素基であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換された一価炭化水素基であり、全R中少なくとも2個は水素原子であり、a、b、c、及びdは、0.01≦a≦0.6、0≦b、0≦c≦0.9、0≦d≦0.9、及び、a+b+c+d=1かつc+d≧0.2の条件を満たす数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、大気圧下で100℃に1時間暴露した後の暴露前に対する質量減少率が10質量%以下であるという特徴を有するものである。
【0236】
上記式中、各Rはそれぞれ同じか又は異なる、脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~12の一価炭化水素基もしくは水素原子であり、但し、一分子中、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個のRは水素原子である。水素原子以外のRである一価炭化水素基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、及びヘプチル等のアルキル基、特にメチル基;フェニル、トリル、及びキシリル等のアリール基、特にフェニル基;ベンジル、及びフェネチル等のアラルキル基からなる群から選択される基である。工業的見地からは、Rが表す一価炭化水素基は、独立に、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0237】
式中、Rは脂肪族不飽和炭素結合を有さない炭素原子数1~12の一価炭化水素基であり、上述したRの一価炭化水素基と同様の基が例示される。Rは、メチル基及びフェニル基から選択される基であることが好ましい。
【0238】
式中、a、b、c、及びdは以下の条件:0.01≦a≦0.6、0≦b、0≦c≦0.9、0≦d≦0.9、及び、a+b+c+d=1かつc+d≧0.2、を満たす数である。具体的な例としては、MMT樹脂、MT樹脂、MMTQ樹脂、MMQ樹脂、MDQ樹脂、及びMQ樹脂等が挙げられる。前記樹脂の表記中、M、D、T、QはそれぞれM単位、D単位、T単位、及びQ単位を表し、MHは水素原子を有するM単位を表す。
【0239】
上記式(1’)中、Rは水素原子又は1~10個の炭素原子を有するアルキル基である。Rのアルキル基として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、及びヘキシルが例示できる。当該Rを含む基R1/2は、成分(C’)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが有する水酸基又はアルコキシ基に該当する。
【0240】
上記式(1’)中、eは一般式:R1/2の単位の割合を示す数であり、同単位はオルガノポリシロキサン樹脂中に含まれうるケイ素原子に結合した水酸基またはアルコキシ基を意味する。eは、0≦j≦0.05、好ましくは0≦j≦0.03を満たす。なお、上述のとおり、上記式(1)中、各シロキサン単位の総和であるa、b、c、及びdの合計は1に等しい。
【0241】
成分(C’)のケイ素原子結合水素原子(SiH)はM単位に存在する必要があるが、これはM単位に存在するSiH基はヒドロシリル化反応性が高いことに由来する。SiH基がD及びT単位などのM単位以外に存在する場合、そのヒドロシリル化反応性が極端に低下し、硬化阻害物質が存在するとヒドロシリル化反応が進まない、もしくは反応が極端に遅くなるといった問題が生じうる。さらに、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを直鎖状の構造ではなく、TもしくはQ単位を含む分岐状の構造とすることで、一分子中のSiH基の数が増えて、分子全体としてのヒドロシリル化反応性はさらに上がる。この様な反応性が非常に高いオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することで、硬化阻害に強い硬化系を構築することができる。
【0242】
その一方で、SiH基を有するM単位をある程度多く含んだ架橋剤はその生産工程において、比較的多くの低分子量の有効成分が生じることが知られおり、この様な架橋剤を添加して後述する脱気下での溶融混錬工程を行うと、有効成分が揮発してしまい、硬化性シリコーン組成物として設計通りの特性が得られないという問題が生じうる。これを避けるために本発明では大気圧下で100℃に1時間暴露した後の暴露前に対する質量減少率が10質量%以下であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用する必要がある。成分(C’)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体的な分子構造としてはMQレジンのM単位とQ単位の比率を変えて、M単位を少なくしたり、MQレジンにD単位を導入したものが挙げられる。また、MTレジンのT単位の官能基としてフェニル基など比較的大きな官能基を導入してもよい。MPh(TPhはフェニル基置換T単位を表す)はその分子量が高くなりすぎない限り、本発明の組成物中で他の成分と相溶し、組成物から分離することもない。
【0243】
成分(C’)は下記平均組成式(2’)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
(HR SiO1/2(R SiO2/2(SiO4/2 (2’)
式(2’)中、Rはそれぞれ独立に炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換された一価炭化水素基であり、e、f、及びgは、0.01≦e≦0.6、0≦f≦0.9、0.2≦g≦0.9、及びe+f+g=1の条件を満たす数である。
この一価炭化水素基の具体例は、上記平均組成式(1’)においてRが表す一価炭化水素基の具体例として示したものと同じである。Rは、それぞれ独立に、メチル基及びフェニル基から選択される基であることが好ましい。
【0244】
また、成分(C’)は下記平均式(3’)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
(HR SiO1/2(R SiO2/2(RSiO3/2 (3’)
式(3’)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1~12の脂肪族不飽和結合を含まない非置換の又は置換された一価炭化水素基であり、全てのRのうち少なくとも10モル%はアリール基であり、かつ、h、i、及びjは、0.01≦h≦0.6、0≦i≦0.9、0.2≦j≦0.9、及び、h+i+j=1の条件を満たす数である。
この一価炭化水素基の具体例は、上記平均組成式(1’)においてRが表す一価炭化水素基の具体例として示したものと同じである。Rは、全てのRのうち少なくとも10モル%がフェニル基であることを条件として、それぞれ独立に、メチル基及びフェニル基から選択される基であることが好ましい。
【0245】
上記平均組成式(2’)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと平均組成式(3’)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、それぞれ単独で用いても、併用してもよい。
【0246】
本発明の硬化性シリコーン組成物中の成分(C’)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの含有量は、硬化性シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量であり、成分(A’)と成分(B’)中の炭素-炭素二重結合を含む硬化反応性官能基(例えば、ビニル基等のアルケニル基)に対して、成分(C’)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中の珪素原子結合水素原子の量が、硬化性シリコーン組成物全体に含まれるケイ素原子に結合したアルケニル基に対してアルケニル基1個当りのケイ素原子結合水素原子の数が0.5~20.0個となる量、特に1.0~10個の範囲となる量であることが好ましい。
【0247】
[成分(D’)]
成分(D’)は、成分(A’)及び(B’)に含まれるヒドロシリル化反応性の炭素-炭素二重結合と、成分(C’)に含まれるケイ素原子結合水素原子、すなわちSi-H基とをヒドロシリル化反応により架橋させて、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化させるためのヒドロシリル化反応用触媒である。成分(D’)のヒドロシリル化反応用触媒としては、当技術分野で公知のヒドロシリル化触媒作用を有する化合物あるいは金属を用いることができるが、例として、白金系触媒、ロジウム系触媒、及びパラジウム系触媒が挙げられ、本組成物の硬化を著しく促進できることから白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、白金-アルケニルシロキサン錯体、白金-オレフィン錯体、白金-カルボニル錯体、およびこれらの白金系触媒を、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した触媒が例示され、特に、白金-アルケニルシロキサン錯体が好ましい。このアルケニルシロキサンとしては、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのメチル基の一部をエチル基、フェニル基等で置換したアルケニルシロキサン、これらのアルケニルシロキサンのビニル基をアリル基、ヘキセニル基等で置換したアルケニルシロキサンが例示される。特に、この白金-アルケニルシロキサン錯体の安定性が良好であることから、ヒドロシリル化反応用触媒として1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンを用いることが好ましく、当該錯体のアルケニルシロキサン溶液の形態で硬化性シリコーン組成物を構成する他の成分に添加することが好ましい。加えて、白金触媒の取扱作業性および硬化性シリコーン組成物のポットライフの改善の見地から、熱可塑性樹脂で分散あるいはカプセル化した微粒子状の白金含有ヒドロシリル化反応触媒を用いてもよい。なお、ヒドロシリル化反応を促進する触媒としては、鉄、ルテニウム、及び鉄/コバルトなどの非白金系金属触媒を用いてもよい。
【0248】
成分(D’)であるヒドロシリル化反応用触媒の添加量は、本発明の硬化性シリコーン組成物を硬化させる条件下で目標とする時間内に硬化させることができる量であればよく特に限定されない。一般的には、ヒドロシリル化触媒が白金などの金属化合物である場合、組成物全体に対して、金属原子が質量単位で0.01~100ppmの範囲内となる量、0.01~50ppmの範囲内となる量、あるいは、0.01~10ppmの範囲内となる量であることが好ましい。
【0249】
[成分(E’)]
本発明の硬化性シリコーン組成物は、上記の成分(A’)~(D’)に加えて、さらに任意選択により硬化遅延剤(E’)を含有してもよい。
【0250】
硬化遅延剤の構造は特に限定されないが、その沸点が大気圧下で200℃以上であることが好ましい。これは、後述する硬化性シリコーン組成物シートの生産工程において減圧下で原料を溶融混錬する際に、沸点が低い化合物を遅延硬化剤として使用すると、溶融混錬工程中に硬化遅延剤の一部又は全部が揮発してしまい、硬化性シリコーン組成物に対する目標とした硬化遅延効果が得られなくなるおそれがあるからである。
【0251】
本発明の組成物に用いる硬化性硬化遅延剤は特に限定されないが、例えば、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2-フェニル-3-ブチン-2-オール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール等のアルキンアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のエンイン化合物;テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラヘキセニルシクロテトラシロキサン等のアルケニル基含有低分子量シロキサン;メチル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン、ビニル-トリス(1,1-ジメチルプロピニルオキシ)シラン等のアルキニルオキシシランが例示される。これらのうち、大気圧下で沸点が200℃以上の化合物を用いることが特に好ましい。硬化性シリコーン組成物中の硬化遅延剤の含有量は特に限定されないが、組成物に対して、質量単位で、1~10000ppmの範囲内であることが好ましい。
【0252】
[その他の添加剤]
本発明の硬化性シリコーン組成物には、上述した成分に加えて、シリコーン組成物に用いてもよい添加剤として当分野で公知の材料を添加してもよく、用いることができる添加剤として上述したものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0253】
[硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートの用途]
また、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートは、半導体基板(ウェハ含む)の大面積封止に利用できる。また、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートは、ダイアタッチフィルム、フレキシブルデバイスの封止、二つの違う基材を接着する応力緩和層等に使用することができる。
【0254】
[硬化性ホットメルトシリコーン組成物の高温での粘度特性(チキソ性)]
本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物はホットメルト性を有し、100℃以上の温度では流動性を有し、粘度を測定することが可能である。また、その粘度は測定時に加えられるシェア(剪断力)に強く依存し、低シェアでは粘度は高く、高シェアでは粘度は低くなるというチキソ性を有する。具体的にはレオメーターにより測定される100℃と150℃において、シェアレート1s-1での粘度はそれぞれ5000Pa・s以下と1000Pa・s以下であり、極限シェアレートと考えられるフローテスターを用いた時の100℃と150℃での粘度はそれぞれ500Pa・s以下と100Pa・s以下となる。この様な粘度特性は、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(封止シート)を基板に対して真空ラミネーターや真空低圧プレスなどで仮圧着した後、オーブンなどで静置硬化させる工程において有利である。つまり、仮圧着時は一定の温度条件で瞬間的に圧力を加えて封止シートを基材と圧着させるが、この時は圧力が加えられるので、粘度が下がり、凹凸が多い基板などへのギャップフィル性に優れる一方、その後オーブンなどで静置硬化させる時には圧力はかからないので、150℃以上の温度にて硬化しても、粘度は高いので硬化が始まるまでに組成物の液ダレは起こらないという特性を示す。
【0255】
[硬化性ホットメルトシリコーン組成物の硬化条件]
本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物は、室温放置や、加熱により硬化が進行する。基材に仮圧着させた又は2つの基材間に介在する硬化性ホットメルトシリコーン組成物層の硬化反応を完結させるためには150℃以上の温度で1時間以上硬化させることが好ましい。
【0256】
[シリコーン硬化物の硬度]
本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物を硬化させて得られる硬化物の好適な硬さはその用途により二つに分類され、本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートの両面で被着体と接着させて積層体とする場合は、JIS K 7215-1986「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に規定のタイプAデュロメータ硬さが40以上であることが好ましい。これは硬度が上記下限以下であると、硬化物が柔らかすぎてもろくなる傾向にあるからである。一方で、その用途が基板の封止、すなわち1つの基材の表面をシリコーンで被覆する場合、タイプAデュロメータ硬さが60以上であることが好ましい。これは、硬度が上記下限以下であると、硬化物の表面がべたつきを帯びてハンドリング性が低下するためである。
【0257】
[硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(封止シート)の製造方法]
本発明の積層体の製造方法には、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(本明細書において、「封止シート」ともいう)を用いる。封止シートの製造は、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができ、特定の方法に限定されない。
【0258】
本発明に係る上記の硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートは、オルガノポリシロキサン樹脂微粒子を原料として製造してもよく(方法A)、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを有機溶剤中に分散させ、有機溶剤を除去した後のホットメルト性の固形分を原料として製造(ホットバルク法)してもよい(方法B)。
【0259】
具体的には、前者(方法A)は以下の工程:
工程1:オルガノポリシロキサン樹脂微粒子、硬化剤および任意選択により場合によっては機能性フィラーを混合する工程;
工程2:工程1で得た混合物を、120℃以下の温度で加熱溶融しながら混練する工程;
工程3:工程2で得た加熱溶融し混錬した後の混合物を、それぞれが少なくとも1の剥離面を備えた2枚のフィルム間に積層して積層体を形成する工程;
工程4:工程3で得た積層体中の混合物をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性ホットメルトシリコーンシートを成型する工程、
を含む製造方法である。
【0260】
一方、後者(方法B)は、以下の工程:
工程1:有機溶剤中に、室温で固体状のオルガノポリシロキサン樹脂、および、任意で鎖状のジオルガノポリシロキサンを分散乃至溶解させた溶液から、150℃以上の温度で有機溶剤の除去を行い、ホットメルト性の固形分を得る工程;
工程2:工程1で得たホットメルト性の固形分に、すべての硬化剤を加えた後、その混合物を120℃以下の温度で加熱溶融しながら混練する工程;
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、それぞれが少なくとも1の剥離面を備えた2枚のフィルム間に積層して積層体を形成する工程;
工程4:工程3で得た積層体中の混合物をロール間で延伸し、特定の膜厚を有する硬化性ホットメルトシリコーンシートを成型する工程
を含む製造方法である。
【0261】
なお、いずれの製造方法(方法Aまたは方法B)においても、工程3および工程4は連続的かつ一体化した工程であってよく、例えば、工程2で得た加熱溶融後の混合物は、ロール間の直下において、少なくとも1の剥離面を備えたフィルム間に吐出乃至塗布されることで積層され、それと同時にロール間の間隙調整により、特定の膜厚に延伸成型されてもよい。このように、工程3および工程4が実質的に統合された工程を有する製造方法も、上記の製造方法の範囲内に含まれる。
すなわち、工程3及び工程4は、工程2で得た混合物を2枚の剥離フィルムの間へ吐出乃至塗布して2枚の剥離フィルム間、例えば2枚の長尺の剥離フィルム間に前記の混合物を挟む工程と、それによって得られる2枚の剥離フィルム及びそれらの間に介装された前記の混合物からなる積層体を続けてロール間に通して剥離フィルム間の混合物を延伸成型し、所定の膜厚に調節して、目的とする積層体を得る工程とを連続して一体的に行ってもよい。このような工程3と工程4を一体的に行う方法も上述した製造方法に含まれる。
【0262】
また、上記の方法Aまたは方法Bにおける工程3において、加熱溶融後の混合物をフィルム間に積層する工程は特に制限されず、(i) 剥離面を備えた第一の剥離フィルム上に工程2からの加熱溶融後の混合物を吐出乃至塗布した後、同混合物の第一の剥離フィルムと接する面とは反対側の面に対して第二の剥離フィルムを接触させて第一の剥離フィルムと第二の剥離フィルム間に加熱溶融後の混合物を介装する、すなわち挟む工程であってもよく、あるいは(ii) 剥離面を備えた第一の剥離フィルムおよび第二の剥離フィルム間に工程2からの加熱溶融後の混合物を吐出乃至塗布することで、両剥離フィルム間に加熱溶融後の混合物を介装する工程であってもよい。(ii)は、第一及び第二の剥離フィルムを適切な手段、たとえば2ロールなどにより接近させ、2つの剥離フィルムが接近した箇所に工程2からの混合物を吐出乃至塗工して、混合物を同時乃至ほぼ同時に2枚の剥離フィルム間の間隙に挟む方法が例示できる。上記工程3及び4は、連続的な工程であることが特に好ましい。
【0263】
なお、これらの製造方法については、出願人らは日本国への特願2019-167832、日本国への特願2019-167833、およびこれらの優先権主張出願において硬化性シリコーンシートの製造方法およびそれに用いる製造装置等のプロセス全体を提案しており、本発明においても、硬化性ホットメルトシリコーン組成物のシート化またはフィルム化にあたり、当該方法および製造装置を適用することができる。
【0264】
より詳細には、以下のとおり、上述した成分(A’)、(B’)、(C’)、及び(D’)を必須成分とし、任意選択により成分(E’)を用いて調製した硬化性ホットメルトシリコーン組成物を例に用いて、封止シートの製造方法の例を説明する。しかし、上で説明したいずれの硬化性ホットメルトシリコーン組成物を用いても、下で説明する方法に準拠して封止シートを製造することができる。
上述したように、本発明にかかる封止シートは、ホットメルト性を有するものである。本発明に用いる硬化性ホットメルトシリコーン組成物の好ましい例は、上述した成分(A’)、(B’)、(C’)、及び(D’)を必須成分として含むものである。一つの態様では、本発明の封止シートの製造方法は、以下の工程1~4を含むものである。
工程1:硬化性ホットメルトシリコーン組成物の構成成分を、好ましくは50℃以上の温度で混合する工程、
工程2:工程1で得た混合物を、加熱溶融しながら混練する工程、
工程3:工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えた2つの剥離フィルム間に、前記の混合物が剥離面と接するように積層して積層体を形成する工程、及び
工程4:工程3で得た積層体をロール間で加圧して、特定の膜厚を有する硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを成形する工程。
【0265】
本発明に用いる硬化性ホットメルトシリコーン組成物、及びその組成物を一定に形状にしたもの、例えば、ペレット、シート、及びフィルムなどはホットメルト性を有するものである。ここで、「ホットメルト性を有する」とは、その物の軟化点が50℃~200℃の範囲内であり、加熱により軟化して形状を変えることができる、あるいは加熱によって流動可能になることをいう。また、本発明にかかる封止シートは、その構成成分であるオルガノポリシロキサン樹脂成分(A’)自体は単独ではホットメルト性を有しないものの、成分(B’)及び(C’)と組み合わせることによって、ホットメルト性を示す。
【0266】
以下では上述した封止シートの製造方法の各工程についてより詳細に説明する。
[工程1]
上記の工程1は硬化性ホットメルトシリコーン組成物の構成成分である、オルガノポリシロキサン樹脂(成分A’、好適には微粒子の状態)、25℃で液状又は可塑性を有するオルガノポリシロキサン(成分B’)、硬化剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(成分C’)、及びヒドロシリル化触媒(成分D’)、さらに所望によりさらなる添加剤(例えば、成分E’)を混合して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物、好ましくは粒状あるいは粉状の形態の組成物を製造する工程である。これら各成分は既に説明したとおりである。
【0267】
工程1によって得られる混合物、好ましくは粒状の混合物は、粒状の硬化性ホットメルトシリコーン組成物であり、組成物全体としてホットメルト性を有する。一方、当該混合物は、25℃において非流動性である。ここで、非流動性とは、外力がない状態で実質的に変形及び/又は流動しないことを意味し、好適には、工程1で得られた粒状の組成物をさらにペレットまたはタブレット等に成形した場合に、25℃かつ外力のない状態で実質的に変形及び/又は流動しないものである。このような非流動性は、例えば、25℃のホットプレート上に成形した本組成物を置き、組成物に対して外力がない状態または一定の加重をかけても、実質的に組成物が変形及び/又は流動しないことにより評価可能である。25℃において非流動性であると、該温度での組成物の形状保持性が良好で、その表面粘着性が低いので、組成物が未硬化状態でも容易に取り扱うことができる。
【0268】
工程1によって得られる混合物の軟化点は200℃以下であり、150℃以下であることが好ましい。このような軟化点は、ホットプレート上で、高さ22mmの組成物を100グラム重の荷重で上から10秒間押し続け、荷重を取り除いたときに、組成物の高さ方向の変形量が1mm以上となる温度を意味する。
【0269】
工程1によって得られる混合物を、後述する工程2において当該混合物の軟化点以上の温度に加熱することにより、混合物を軟化又は溶融させて、混合物に一定の流動性を与えることができる。当該軟化物または溶融物を成形することで、工程1で得られる、例えば粒状の硬化性ホットメルトシリコーン組成物から、ホットメルト性を有する封止シートを製造することができる。
【0270】
本発明の成分(A’)~(D’)及びその他の任意選択成分、例えば成分(E’)を、混合する工程は、特に制限されるものではないが、得られる混合物全体の軟化点、好適には、成分(A’)の軟化点未満の温度で粉体混合することにより行うことができる。本製造方法で用いる粉体混合機は特に限定されず、一軸または二軸の連続混合機、二本ロール、ロスミキサー、ホバートミキサー、デンタルミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダーミキサー、ラボミルサー、小型粉砕機、及びヘンシェルミキサーが例示され、ラボミルサー、小型粉砕機、及びヘンシェルミキサーが好ましい。
【0271】
[工程2]
工程2は、工程1で得た加熱溶融性を有する混合物を、加熱溶融しながら混練する工程であり、加熱溶融性を有する混合物をその軟化点以上の温度、好適には、50℃~200℃の温度範囲で加熱混練することで、組成物全体を溶融乃至軟化させて混合することで、混合物に含まれる成分を均一に混ぜることができる。工程2で得られた混合物を、工程3を経て工程4において、当該混合物を加圧装置、例えば2本ロールを使用してシート状に加圧成形する場合、一回の加圧でその厚さが均一な薄層状のシートを形成することができ、成形不良やシート自体の亀裂の発生を回避できる実益がある。一方、混合物を加熱する温度が前記下限未満では、混合物の軟化が不十分となって、機械力を用いても各成分が全体に均一に混合された、溶融乃至軟化した混合物を得ることが困難となる場合がある。このような成分が均一に混合されていない混合物を、工程3を経て工程4において当該混合物をシート状に加圧成形した場合、均一な厚さの薄層状の成形シートを形成できず、シートの破損及び/又は亀裂が生じる場合がある。逆に、混合物を加熱する温度が前記上限を超えると、ヒドロシリル化反応が混合時に起こり、混合物全体が著しい増粘又は硬化してホットメルト性を失い、あるいは硬化物を形成してしまう場合があるため、好ましくない。このため、成分(D’)のヒドロシリル化反応触媒は、工程1において初めから他の成分とは混合せずに、工程2において他の成分の混合物が十分に混合された後で成分(D’)を添加する、さらに成分(D’)を添加する場合には混錬可能な範囲で温度を低くするなどの方法を用いることができ、そのような方法が好ましい。あるいは、成分(D’)は、熱可塑性樹脂中に分散させたあるいは熱可塑性樹脂でカプセル化した微粒子状にしたヒドロシリル化反応触媒を使用することができ、そのような方法が好ましい。
【0272】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、流動性に富む場合は、後述する工程3において予め混合物の仮成形を行った後、例えばシートに近い形状に仮成形した混合物を剥離フィルム上に積層することができ、かつ好ましい、具体的には、工程2で得た加熱溶融し、混錬して得られた混合物の150℃での高化式フローテスターにより2.5MPaの圧力で測定される溶融粘度が1~1,000Pa・sの範囲であれば、工程3において混合物を剥離フィルムに積層する前に、混合物の仮成型を行うことができる。
【0273】
一方、工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が高く、溶融したものも流動性に乏しい場合、工程2において、工程1で得た混合物を、その軟化点以上の温度で溶融混練して均一な組成物の形態にした後、仮成型を行うことなくそのまま工程3において剥離フィルム上に積層してよい。
【0274】
工程2で使用する混錬装置は限定されず、加熱及び冷却機能を備えたニーダー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、2ロールミル、3ロールミル、ロスミキサー、ラボプラストミル等の回分(バッチ)式、加熱及び冷却機能を備えた単軸押出機、2軸押出機等の連続式の加熱混練装置であればよく、特に限定されず、処理時間からみた作業効率とせん断発熱の制御能力に応じて選択できる。処理時間を短くできる点からみると、単軸押出機、2軸押出機等連続式の加熱混練装置であってもよく、ラボプラストミル等のバッチ式の混合機であってもよいが、作業効率が良いことから、単軸押出機、2軸押出機等連続式の加熱混練装置が好ましく使用される。
【0275】
[工程3]
工程3は、工程2で得た加熱溶融後の混合物を、少なくとも1の剥離面を備えた2つのフィルム間に介装してこれらを積層する工程であり、この積層体を工程4においてさらに加圧成形するための予備工程である。工程2で得た混合物が剥離フィルム間に挟み込まれた積層体を形成することで当該剥離フィルム上からロールによる加圧成形を行って、硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなるシート状成形物を得ることができる。さらに、積層体の成形後には剥離シートの剥離面の性質を利用して、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを含む積層体から剥離フィルムのみを除去することができる。
【0276】
工程2で得た加熱溶融後の混合物を、2枚の剥離フィルム間に介装して積層体を形成する。得られる硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(フィルムを含む)の使用形態によるが、2枚の剥離フィルムは共に剥離面を有することが好ましく、工程3において、工程2で得た混合物を各々の剥離フィルムの剥離面と接するように2枚の剥離フィルムの間に配置して、積層体を形成することが特に好ましい。積層体がこのような構成を有することで、工程4における剥離シートに介装された硬化性ホットメルトシリコーン組成物の加圧成形により、さらに所望により積層体を裁断することによって、薄層状の硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートが剥離性フィルム間に介装された、硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートの両面から剥離フィルムを剥離することができる積層体(積層シートともいう)を得ることができる。したがって、硬化性シリコーン組成物シートを使用する場合には、形成した硬化性ホットメルトシリコーン樹脂シートを破損させる懸念なく、硬化性ホットメルトシリコーン樹脂シートの両面に配置された剥離フィルムの一方を剥がして硬化性ホットメルトシリコーン樹脂シート面を露出させ、あるいは両方の剥離フィルムを剥がして硬化性ホットメルトシリコーン樹脂シートのみを露出させて、それを使用することができる。
【0277】
工程3で使用する剥離フィルムの基材は特には限定されるものではなく、板紙、ダンボール紙、クレーコート紙、ポリオレフィンラミネート紙,特にはポリエチレンラミネート紙、合成樹脂フィルム・シート、天然繊維布、合成繊維布、人工皮革布、及び金属箔が例示される。特に、合成樹脂フィルム又はシートが好ましく、合成樹脂として、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンが例示される。特に耐熱性が要求される場合には、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリアリレート、ポリアミドイミド、及びポリエーテルスルフォン等の耐熱性合成樹脂のフィルムが好適である。一方、表示デバイス等の視認性が求められる用途においては、透明基材、具体的にはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、及びPEN等の透明材料が好適である。なお、基材として板紙等を用いることができることを記載しているように、剥離フィルムという用語は、その厚さについては特に限定されない。
【0278】
上述した通り、剥離フィルムの厚さは特に制限されないが、通常5~300μm程度である。
【0279】
剥離フィルムはその表面に少なくとも1つの剥離層を備えており、剥離フィルムは、工程3において、当該剥離層が工程2で得た混合物と接触するように用いられることが好ましい。これにより、工程3および工程4を経て加圧成形されて得られた硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを剥離フィルムから容易に剥離することができる。剥離層は剥離ライナー、セパレーター、離型層或いは剥離コーティング層と呼ばれることもあり、好適には、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離剤、アルキド系剥離剤、又は、フルオロシリコーン系剥離剤等の剥離コーティング能を有する材料を用いて形成された剥離層であってよい。あるいは、基材フィルム表面に物理的に微細な凹凸を形成することによって、あるいは基材フィルムの材料として本発明の硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートと付着しにくい基材を用いることによって、剥離フィルムが封止シート、すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートから容易に剥離できるようにしてもよい。
【0280】
工程3において、工程2で得た混合物を2枚の剥離フィルム間に介装させて積層体を形成する。その工程は特に制限されるものではないが、工程2で得た混合物は、一つの剥離フィルムの剥離層上に、吐出乃至塗布されることで供給されて剥離層上に混合物が配置され、さらに当該混合物上から、当該混合物にもう一つの剥離フィルムの剥離層を貼り合わせることで積層体が形成される。一つの剥離シート上に混合物を配置し、その混合物の上にさらにもう一つの剥離シートを重ねて積層する工程を連続的に行って、硬化性シリコーン組成物シートを連続的に製造するためには、各剥離フィルムは回転式のロールを介して工程2から得られる混合物の供給位置に運搬され、2つの剥離フィルム間へ混合物が供給され、2つの剥離フィルムと混合物が積層されて、剥離フィルム/混合物(すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物)層/剥離フィルムの積層構造が形成される。
【0281】
上述した連続法において、工程3における、工程2で得た混合物の剥離フィルム間への供給量は、積層体の製造速度及び製造規模に応じて設計することができる。一例として、1~10kg/時間の供給量で、工程2で得た混合物を剥離フィルム間に供給することができるが、いうまでもなく、これに限定されるものではない。ただし、工程3において、工程2で得た混合物を剥離フィルム間に介装させて積層体を形成するときの混合物の供給量あるいは供給速度は、工程4において設計している硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートの平均厚みに応じて決定する必要があり、かつ、工程4において、工程3で得られた積層体をさらに加圧して硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートの厚さを所望の厚さにできるように加工することができる範囲の混合物の供給量あるいは供給速度であることが必要である。
【0282】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、溶融物が流動性に富む場合、工程3において、工程2で得た加熱溶融後の混合物を、ダイを用いてフィルム状に成型しながら一つの剥離フィルム上に吐出し、吐出した混合物の上に別の剥離フィルムを重ねて、積層体を形成することが好ましい。ここで、ダイは当該混合物を仮成型するために使用され、その種類や仮成型時の混合物の厚みは特に制限されるものではないが、T型ダイを用いて、100~2000μm(=2mm)の範囲の厚みを有する略シート状となるように混合物を仮成型することができ、かつ、好ましい。
【0283】
工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が低く、溶融物が流動性に富む場合、上記の仮成型後に、工程4の前工程としてまたは工程4において、工程3で得た積層体全体を冷却または温度調節する工程を含むことが好ましい。これは、加熱溶融物を冷却して粘度の高い状態あるいは固体状にすることで、工程4における加圧成形を効果的に行うためである。当該冷却工程は特に制限されるものではないが、冷却ロール等により剥離フィルム上に供給乃至積層された混合物を空冷あるいは冷却溶媒等の冷却手段を用いて-50℃~室温の範囲内で冷却することで行うことができる。なお、温度調節の詳細については、工程4において説明する。
【0284】
一方、工程1で得た混合物の加熱溶融粘度が高く、流動性に乏しい場合、工程3において、流動性が乏しい、例えば半固体状の混合物を、仮成形を行うことなく、フィルム上に供給し、剥離フィルムと積層してよい。
【0285】
[工程4]
工程4は、上記の工程3で得た積層体をロール間で加圧し、特定の膜厚を有する硬化性シリコーン組成物シートに成形する工程であり、工程3で得られた積層体の剥離フィルム上から工程2で得た混合物を加圧延伸し、厚さが実質的に均一な封止シートの形態に成形する工程である。
【0286】
工程4における、剥離フィルムに介装された封止シートの加圧延伸成形は、工程3で得た積層体に対して、ロール圧延等の公知の圧延方法を用いて行うことができる。特に、ロール圧延の場合、ロール間の隙間を調整することで、所望の厚さの封止シートを設計することができる利点がある。例えば、平均厚みが10~2000μmの範囲でロール間の隙間を一定に調整して積層体を加圧して封止シートを圧延することで、平坦性に優れ、かつ、シート表面およびシート内部の欠陥、例えばボイドが極めて少ない封止シートを得ることができる。より詳細には、ロール圧延の場合、目標とする封止シートの平均厚みに対して1.5~4.0倍の範囲でロール間の隙間が調整されていることが特に好ましい。
【0287】
工程4において積層体を加圧し、積層体中の封止シート、すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを延伸することにより、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmの封止シートを得ることができる。工程2における加熱溶融後の混合物を、工程3により剥離フィルム間に介装した形態でロール延伸することにより、低欠陥でありかつ剥離シートから剥離容易であることによって取扱作業性に優れる、ホットメルト性を有する封止シートを含み、封止シートから剥離フィルムを容易に剥離できる剥離性積層体を得ることができる。
【0288】
[工程4における温度調節]
工程4において、工程3で得た積層体をロール間で加圧して硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート、すなわち封止シートを延伸する場合、当該ロールがさらに、温度調節機能を備え、ロール圧延時に積層体全体の温度調節、必要に応じて加熱または冷却を行うことが好ましい。当該温度調節により、ロール間の間隙を安定して保ち、得られる封止シートの平坦性および均一性(膜厚の均一性)を改善できる実益がある。具体的な温度調節の範囲は、用いる剥離フィルムの耐熱性や封止シートの厚さ(設計厚み)、封止シートの成分である硬化性ホットメルトシリコーン組成物の反応性等に応じて適宜設計可能であるが、概ね、5~150℃の範囲内である。
【0289】
[裁断工程]
工程4により、剥離フィルム間に封止シートが介装された剥離性積層体を得ることができる。本発明の積層体の製造方法では、所望により、当該封止シートを含む積層体を裁断する工程をさらに有していてもよい。また、当該封止シートは、裁断工程に代えて、あるいは裁断工程とともに、巻取り装置により例えばロール状に積層体を巻取る工程を有してもよい。これにより、所望のサイズの封止シート、すなわち硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートを含む剥離性積層体を得ることができる。
【0290】
[積層体]
以上の工程により得られる積層体は、必須成分として上述した成分(A’)~(D’)及び任意選択成分として場合によっては成分(E’)を含む、実質的に平坦な、厚さ10~2000μmの硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる封止シートが、少なくとも1の剥離面を備えた2つの剥離フィルム間に積層された構造を備えた積層体である。なお、当該フィルムは、共に、剥離面を高めた表面構造又は表面処理がされた剥離面を備えいることが好ましい。
【0291】
上述のようにして得られた、剥離フィルムをその両面又は片面に有する封止シートを、上述した基材、例えば電子装置用基板には、電子回路基板及び電子回路実装基板とそれに積層された硬化性ホットメルトシリコーン組成物層を含む積層体、又は基材とその上に積層された硬化したシリコーン組成物層を含む積層体を製造するために用いることが好ましい。
【実施例
【0292】
本発明の基材と硬化性ホットメルトシリコーン組成物からなる層を含む積層体に関して実施例と比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、用いた硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート、すなわち封止シートに関してその成分の式中の記号、Me、Vi、及びPhは、それぞれメチル基、ビニル基、及びフェニル基を表す。また、各実施例、比較例で使用した製造プロセスのサイクルタイム、製造された半導体基板と封止シートからなる積層体に関して、積層体中の封止シート由来の硬化性ホットメルトシリコーン組成物層(封止層ともいう)の厚さ、封止層の基材と反対側の表面の平坦性とタック性、封止層を硬化させた後の積層体の反りを以下の方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0293】
[製造プロセスのサイクルタイム]
以下に示す各プロセスにおいて、封止シートと基板が離れた状態、もしくは、室温で単純に封止シートを基板に張り付けただけの状態から、封止シートと基板の界面にボイドがなく、封止シートから形成される基板上の封止層が基板に完全に圧着した積層体を得るまでにかかった時間を測定した。具体的には、減圧チャンバー内に基板又は封止シートをその上に載置した基板を設置した時点から、得られた積層体を減圧チャンバーから取り出せるようになった時間を各製造プロセスのサイクルタイムとした。
【0294】
[積層体の反り]
実施例、比較例のなかで、基板と封止層からなる2層構造の積層体について、積層体の一端をテープで表面が平な机に固定し、積層体の固定していない端部の机の表面からの浮き上がりを、机の表面から浮いた端部までの垂直方法の距離(浮き上がり長さ)を、定規を使用して測定した。浮き上がり長さが1mm以下の場合を〇、3mm以下の場合を△、5mm以上の場合を×とした。
【0295】
[封止層の厚みの均一性]
厚さが一定の平坦な基材を用いて、以下のプロセスによって得られた積層体の封止層の膜厚さを、接触式膜厚計(ニコン製のデジマイクロヘッド)によりを使用して、ランダムに5点測定し、その最大値と最小値の差が、30μm以下の場合を◎、40μm以下の場合を〇、50μm以下の場合を△、50μm以上の場合を×とした。
【0296】
[封止層の表面の平坦性]
以下のプロセスによって得られた積層体の封止層の表面の平坦性をレーザー顕微鏡(オリンパス社製の3D MEASURING LASER MICROSCOPE OLS4000)を使用して評価した。封止層表面の平坦性の評価は、積層体の封止層の表層の基板底面からの距離をランダムに5点測定し、5つの測定値の差の最大値が1μm以下を〇、5μm以上を×とすることによって行った。
【0297】
[封止層の表面タック]
以下のプロセスによって得られた積層体の封止層の表面タックを評価した。評価は、何の表面処理もしていないPETフィルムを封止層に乗せ、その上に100g/cmの重しを30秒間押し付け、その後PETフィルムを封止層からスムーズに剥がせた場合は〇、スムーズに剥がせなかった場合は×とすることによって行った。
【0298】
[参考例1及び2]
以下の参考例1及び2に示す方法で、オルガノポリシロキサン樹脂と直鎖状のオルガノポリシロキサンのホットメルト性を有する混合物を調製した。
【0299】
(参考例1)
25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeViSiO1/2)0.05(MeSiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂(ビニル基の含有量=1.9質量%) 3.09kg、
25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeSiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂(ビニル基の含有量=0質量%) 3.77kg、及び式:
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 2.69kg、
をペール缶内でスリーワンモーターを用いて4.00kgのキシレンに溶解した。得られた溶液を、最高到達温度を230℃に設定した二軸押出機にフィードし、真空度-0.08MPaの条件でキシレン及び低分子量のオルガノポリシロキサン成分の除去を行ったところ、ホットメルト性の透明な混合物1が得られた。混合物1をずん胴ペール缶に受けそのまま冷却し固体化させた。この混合物の揮発成分量を200℃×1時間の条件で測定したところ0.7質量%であった。
【0300】
得られたホットメルト性の混合物1を、ずん胴ペール缶用のホットメルター(ノードソン社製のVersaPailメルター)を使用して、170℃にて二軸押出機に図2に示すライン1から9.56kg/hrの量でフィードした。
次に、
式:
(HMeSiO1/2)0.52(MeSiO2/20.15(SiO4/2)0.33で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン (100℃のオーブンにて1時間エージングした時の揮発成分量は2.9質量%)0.295kg/hr、及び
メチルトリス-1,1-ジメチル-2-プロピニロキシシラン(沸点=245℃) 本組成物全体に対して3500ppmとなる量、
からなる混合物を図に示すライン3-aからフィードした。投入部の設定温度は150℃であった。
続いて、式:
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%)0.15kg/hrと
白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(最終的に得られる硬化性ホットメルトシリコーン組成物全体に対して白金金属として質量単位で4.0ppmとなる量)からなる混合物を図2のライン3-bからフィードし(投入部の設定温度は80℃)、二軸押出機内の真空度は-0.08MPaで、押出機に投入した成分の脱気溶融混錬を行った。
二軸押出機の出口温度は80℃とし、混合物は半固体状の軟化物の形態で、幅330mm、125μm厚の剥離フィルム(株式会社タカラインコーポレーション社製、FL2-01)を1.0m/分の速度で搬送しながら、供給量5kg/hrとなるように混合物をフィルム上に供給し、混合物が2枚の剥離フィルム間に剥離フィルムの剥離面が混合物と接するように介装して積層体とした。続いて、当該積層体を、90℃に温度制御されたロール間で加圧して前記の混合物を延伸することで、厚さ300μmの硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートが2枚の剥離フィルム間に介装された積層体を形成させ、続いて空冷により積層体全体を冷却した。当該製造装置の構成を、図2に示す。得られた積層体から剥離フィルムを剥がしたところ、泡がなく平坦で均質なタックフリーの透明な硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート1を得た。フローテスター(CFT-500EX、島津製作所製)により、100℃の温度でノズル径=1mm、圧力2.5MPaで得られた組成物シート溶融粘度を測定したところ、120Pa・sであった。
【0301】
(参考例2)
25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeViSiO1/2)0.05(MeSiO1/2)0.39(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂(ビニル基の含有量=1.9質量%) 3.76kg、
25℃において白色固体状で、平均単位式:
(MeSiO1/2)0.44(SiO4/2)0.56(HO1/2)0.02
で表されるオルガノポリシロキサン樹脂(ビニル基の含有量=0質量%) 3.08kg、及び式:
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 2.56kg、
をペール缶内でスリーワンモーターを用いて4.00kgのキシレンに溶解した。得られた溶液を、最高到達温度を230℃に設定した二軸押出機にフィードし、真空度-0.08MPaの条件でキシレン及び低分子量のオルガノポリシロキサン成分の除去を行ったところ、ホットメルト性の透明な混合物2が得られた。混合物2をずん胴ペール缶に受けそのまま冷却し固体化させた。この混合物の揮発成分量を200℃×1時間の条件で測定したところ0.7質量%であった。
【0302】
得られたホットメルト性の混合物2をずん胴ペール缶用のホットメルター(ノードソン社製のVersaPailメルター)により170℃にて二軸押出機に図2に示すライン1から9.40kg/hrの量でフィードした。
次に、
式:
(PhSiO3/2)0.4(HMeSiO1/2)0.6で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン (100℃のオーブンにて1時間エージングした時の揮発成分量は3.4質量%だった)0.452kg/hrと
メチルトリス-1,1-ジメチル-2-プロピニロキシシラン(沸点=245℃)本組成物全体に対して3500ppmとなる量、
からなる混合物を図2に示すライン3-aからフィードした。投入部の設定温度は150℃であった。
続いて、
ViMeSiO(MeSiO)800SiViMe
で表される、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン(ビニル基の含有量=0.09質量%) 0.15kg/hr、及び
白金の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(本組成物全体に対して白金金属として質量単位で4.0ppmとなる量)、からなる混合物を図2のライン3-bからフィードし(投入部の設定温度は80℃)、押出機内の真空度は-0.08MPaの条件で、混合物の脱気溶融混錬を行った。
二軸押出機の出口温度は80℃とし、混合物は半固体状の軟化物の形態であり、幅330mm、125μm厚の剥離フィルム(株式会社タカラインコーポレーション社製、FL2-01)を1.0m/分の速度で搬送しながら、供給量5kg/hrとなるように混合物をフィルム上に供給し、混合物を2枚の剥離フィルム間に剥離フィルムの剥離面が混合物と接するように介装して積層体とした。続いて、当該積層体を、90℃に温度制御されたロール間で加圧して前記の混合物を延伸することで、厚さ300μmの硬化性ホットメルトシリコーン組成物シートが2枚の剥離フィルム間に介装された積層体を形成させ、続いて空冷により積層体全体を冷却した。当該製造装置の構成を、図2に示す。得られた積層体から剥離フィルムを剥離したところ、泡がなく平坦で均質なタックフリーの透明な硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート2を得ることができた。フローテスター(CFT-500EX、島津製作所製)により、100℃の温度でノズル径=1mm、圧力2.5MPaで得られた組成物シートの溶融粘度を測定したところ、130Pa・sであった。
【0303】
[実施例1]
参考例1で得た2枚の剥離フィルムで介装された硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(封止シート)1を4.5cm×4.5cmのサイズ(正方形)に裁断し、2枚の剥離フィルムの一方を封止シート1から剥がした。その後、6.0cm×6.0cmの大きさで厚みが0.2mmの半導体基板(35μm厚の銅箔パターンが上に載ったもの)に封止シート1の剥離フィルムのない側の面を重ねて、半導体基板に封止シート1を手で張り合わせた。得られた、剥離フィルム-未硬化シリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体を真空ラミネーター装置(ニッコーマテリアルズ社製のV-130)内に置き、真空設定値が5.0hPa、減圧チャンバー内の上下熱板の温度が110℃の条件で、30秒間ラミネーションを行った後に減圧チャンバー内の減圧を解除して大気圧に戻したところ、泡などの混入のないしっかり密着した剥離フィルム-未硬化シリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体を得ることができた。次に、こうして得られた積層体を160℃に設定したオーブンに入れて、2時間、硬化性シリコーン封止層を熱硬化させた。積層体をオーブンから取り出した後、シリコーン封止層の表面にある剥離フィルムを剥がすことにより、表面が平坦な硬化したシリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体1を得た。当該積層体1の特性を表1に示す。
【0304】
[実施例2]
参考例1で得た硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(封止シート)1を4.5cm×4.5cmのサイズ(正方形)に裁断し、2枚の剥離フィルムの一方を封止シート1から剥がした。その後、6.0cm×6.0cmの大きさ(正方形)で厚みが0.2mmの半導体基板(35μm厚の銅箔パターンが上に載ったもの)に封止シート1の剥離フィルムのない側の面を重ねて、半導体基基板に封止シート1を手で張り合わせた。得られた、剥離フィルム-未硬化シリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体を真空ラミネーター装置(ニッコーマテリアルズ社製のV-130)の減圧チャンバーのステージに設置した。半導体基板上のシリコーン封止層の両隣に厚さ300μmのシムスペーサーを設置し、真空設定値が5.0hPa、減圧チャンバー内の上下熱板の温度が180℃の条件で、5分間ラミネーションを行った後に減圧チャンバー内の減圧を解除して大気圧に戻したところ、泡などの混入のないしっかり密着した剥離フィルム-硬化したシリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体を得ることができた。次に、こうして得られた積層体を160℃に設定したオーブンに2時間入れてシリコーン封止層を完全に硬化させた。積層体をオーブンから取り出した後、シリコーン封止層の表面の剥離フィルムを剥がすことにより、表面が平坦な硬化したシリコーン封止層-半導体基板からなる積層体2を得た。当該積層体2の特性を表1に示す。
【0305】
[実施例3]
参考例2で得た硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(封止シート)2を4.5cm×4.5cmのサイズに裁断し、2枚の剥離フィルムの一方を封止シート2から剥がした。封止シート2の片面に残っている剥離フィルムが減圧チャンバーのステージ側を向くように、封止シート2を真空ラミネーター装置(ニッコーマテリアルズ社製のV-130)に設置した。次いで、封止シート2の両隣にくの字形に折り曲げた厚み300μmのシムスペーサーを、その頂部が封止シート2よりも高い山型になるように設置し、その山型のシムスペーサーの上に6.0cm×6.0cmのサイズ(正方形)の厚さ1mmのガラス板を載せた。これにより、減圧チャンバー内での減圧工程が終了するまで、ガラス板と封止シート2が接触しないという状況を作り出すことができる。そして、ガラス板の上側から圧力がかかり、ガラス板によってシムスペーサーが押されてつぶれることによって、初めてガラス板と封止シート2が接触するようにできる。この状態で、真空設定値が5.0hPa、減圧チャンバー内の上下熱板の温度が110℃の条件で、30秒間減圧チャンバー内を加熱し、次に減圧チャンバーの減圧を解除して大気圧に戻したところ、泡などの混入のない剥離フィルム-未硬化シリコーン封止層-ガラス板という構成の積層体を得ることができた。得られた積層体を160℃に設定したオーブンに入れて2時間硬化性シリコーン封止層を熱硬化させた。積層体をオーブンから取り出した後、シリコーン封止層の表面の剥離フィルムを剥がすことにより、表面が平坦な硬化したシリコーン封止層-ガラス板という構成の積層体3を得た。当該積層体3の特性を表1に示す。
【0306】
[実施例4]
参考例2で得た硬化性ホットメルトシリコーン組成物シート(封止シート)2を4.5cm×4.5cmのサイズ(正方形)に裁断し、2枚の剥離フィルムの一方を封止シート2から剥がした。封止シート2の片面に残っている剥離フィルムが減圧チャンバーのステージ側を向くように、封止シート2を真空ラミネーター装置(ニッコーマテリアルズ社製のV-130)に設置した。次いで、封止シート2の両隣にくの字型の折り曲げた厚み300μmシムスペーサーを、その頂部が封止シート2よりも高い山型になるように設置し、その山型のシムスペーサーの上に6.0cm×6.0cmのサイズ(正方形)の厚さ1mmのガラス板1を載せた。これにより、減圧チャンバー内での減圧工程が終了するまで、ガラス板1と封止シート2が接触しないという状況を作り出すことができる。そして、ガラス板1の上側から圧力がかかり、ガラス板1よってシムスペーサーが押されてつぶれることによって、初めてガラス板1と封止シート2が接触するようにできる。この状態で真空設定値が5.0hPa、減圧チャンバー内の上下熱板の温度が110℃の条件で、30秒間減圧チャンバー内を加熱し、次に減圧チャンバー内の減圧を解除して大気圧に戻したところ、泡などの混入のない剥離フィルム-未硬化シリコーン封止層-ガラス板1からなる積層体4を得ることができた。
次いで、得られた積層体4から剥離フィルムを剥がし、ガラス板1が減圧チャンバーのステージ側を向く様に積層体4を真空ラミネーター装置(ニッコーマテリアルズ社製のV-130)に設置した。ガラス板1上の未硬化シリコーン封止層の両隣にくの字形に折り曲げた厚み300μmのシムスペーサーを、その頂部が未硬化シリコーン封止層よりも高い山型になるように設置し、その山型のシムスペーサーの上に6.0cm×6.0cmのサイズ(正方形)の厚さ1mmのガラス板2を載せた。封止シート2にガラス板1をラミネーションしたのと同じ方法で未硬化シリコーン封止層にガラス板2のラミネーションを行ったところ、泡などの混入のないガラス板1-未硬化シリコーン封止層-ガラス板2という構成の積層体を得ることができた。
得られた積層体を160℃に設定したオーブンに入れて2時間未硬化シリコーン封止層を熱硬化させることで、ガラス板1-硬化したシリコーン接着層-ガラス板2という構成の積層体5を得た。積層体5の特性を表1に示す。
【0307】
[比較例1]
6.0cm×6.0cmの大きさ(正方形)で厚みが0.2mmの半導体基板(35μm厚の銅箔パターンが載ったもの)の縦横の端のラインに沿って、VE-6001(東レ・ダウコーニング社製の光硬化型の液状シリコーン製品)をディスペンサーにより約300μmの壁厚でダム状に基板の外縁に塗布し、波長365nmのLED光源を用いて照射量4J/cmの条件で10秒間光照射を行って、ダム状に硬化させた。次いで、MS-1002(東レ・ダウコーニング社製の熱硬化型の液状シリコーン製品)約1.1gをディスペンサーにより半導体基板上に塗布し、MS-1002の液体が自然にダム状のシリコーン硬化物に到達するのを待った。目視にて、MS-1002が、半導体基板の外縁のダム状シリコーン硬化物で囲まれた内部全体に広がったことを確認してから、当該半導体基板を150℃に設定したオーブンに入れてMS-1002を4時間かけて硬化させて、オーブンから取り出すことで、硬化したシリコーン封止層-半導体基板からなる積層体6を得た。積層体6の特性を表1に示した。
【0308】
[比較例2]
MS-1002(東レ・ダウコーニング社製の熱硬化型の液状シリコーン製品)を110℃に設定したオーブンに5分入れることで半硬化させた。当該半硬化物をガラス板に塗布して傾けたところ、自重では流れなかった。次いで、このMS-1002の半硬化物を、6.0cm×6.0cmの大きさ(正方形)の厚みが0.2mmの半導体基板(35μm厚の銅箔パターンが載ったもの)にその全面を300μmの厚みで覆うようにスクリーンコーティングを行った。得られたMS-1002の半硬化物-半導体基板という構成の積層体を、150℃に設定したオーブンに入れてMS-1002を4時間かけて完全硬化させてからオーブンから取り出すことで、硬化したシリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体7を得た。積層体7の特性を表1にし示した。
【0309】
[比較例3]
6.0cm×6.0cmの大きさ(正方形)で厚みが0.2mmの半導体基板(35μm厚の銅箔パターンが載ったもの)の縦横の端のラインに沿って、VE-6001(東レ・ダウコーニング社製の光硬化型の液状シリコーン製品)をディスペンサーにより約300μmの壁厚でダム状に基板の外縁に塗布し、波長365nmのLED光源を用いて照射量4J/cmの条件で10秒間光照射を行って、ダム状に硬化させた。次いで、約1.1gのVE-6001をディスペンサーにより半導体基板上に塗布し、VE-6001の液体が自然にダム状のシリコーン硬化物に到達するのを待った。目視にてVE-6001が、半導体基板外縁のダム材シリコーン硬化物で囲まれた内部全体に広がったことを確認してから、波長365nmのLED光源を用いて照射量4J/cmの条件で10秒間光照射をしてVE-6001を硬化させて封止層を形成させることで、硬化したシリコーン封止層-半導体基板という構成の積層体8を得た。積層体8の特性を表1に示した。
【0310】
[比較例4]
厚みが200μmのLF-1200(東レ・ダウコーニング社製の硬化性シリコーンシート製品)を4.5cm×4.5cmのサイズ(正方形)に裁断し、それを6.0cm×6.0cmの大きさ(正方形)で厚みが0.2mmの半導体基板(35μm厚の銅箔パターンが載ったもの)に手で張り合わせた。尚、LF-1200は高温で軟化するが溶融しないタイプの製品であり、フローテスター(CFT-500EX、島津製作所製)では100℃では溶融粘度を測定することができなかった。得られたLF-1200-半導体基板という構成を有する積層体を真空ラミネーター装置(ニッコーマテリアルズ社製のV-130)にて真空設定値が5.0hPa、減圧チャンバー内の上下熱板の温度が130℃という条件で、3分間加熱し、続いて減圧チャンバー内の減圧を解除して大気圧に戻してから積層体を取り出したところ、泡などの混入のない未硬化シリコーン封止層-半導体基板からなる積層体を得ることができた。得られた積層体を180℃に設定したオーブンに入れて、2時間、未硬化シリコーン封止層を熱硬化させた。積層体をオーブンから取り出して、硬化したシリコーン封止層-半導体基板からなる積層体9を得た。当該積層体9の特性を表1に示す。
【0311】
【表1】
【符号の説明】
【0312】
1:ホットメルター
2:押出機
3-a:ポンプ
3-b:ポンプ
3-c:真空ポンプ
4-a:剥離シート
4-b:剥離シート
5-a:延伸ロール(任意で温度調節機能をさらに備えてもよい)
5-b:延伸ロール(任意で温度調節機能をさらに備えてもよい)
6:冷却ロール
7:膜厚計
8:シートカッター
9:異物検査機
図1
図2