(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20240308BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240308BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240308BHJP
B23Q 11/08 20060101ALI20240308BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B27/06 M
B23Q17/24 B
B23Q11/08 Z
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020003163
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 英明
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079833(JP,A)
【文献】特開2003-152349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/12
B24B 27/06
B23Q 17/24
B23Q 11/08
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、発光部と該発光部からの光を受光する受光部とを有し、該発光部と該受光部との間に該切削ブレードが位置付けられて遮蔽された該光の量で該切削ブレードの先端位置を検出する切削ブレード検出ユニットと、警告情報を報知する報知部と、を備え、
該切削ブレード検出ユニットは、
該発光部と該受光部とを有するセンサー部と、
該センサー部を覆って外部の空間から該センサー部を遮蔽する遮蔽位置と、該センサー部を露出する開放位置とに選択的に位置付けられる保護カバーと、
該保護カバーに設置され、該保護カバーが該遮蔽位置に位置付けられると該発光部と該受光部との間に挿入されて、該発光部からの光を受ける該受光部の受光量を減少させる遮光部材と、
該保護カバーを該遮蔽位置に位置付けた際の該受光量と予め設定された閾値とを比較し、該保護カバーが該センサー部を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まったか否かを判定する
とともに、該保護カバーが所定の位置まで閉まっていないと判定した場合に、該警告情報を該報知部から報知させる閉状態判定部と、を備え、
該閉状態判定部は、該切削ユニットによる該被加工物の切削加工中に、該受光量と予め設定された閾値とを比較し、該保護カバーが該センサー部を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まったか否かを判定する切削装置。
【請求項2】
該閉状態判定部は、該保護カバーが所定の位置まで閉まっていないと判定した場合に、該被加工物の切削加工を停止する請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該発光部は発光面を備え、該受光部は該発光面と対向する受光面とを備え、
該遮光部材は、該遮蔽位置に位置付けられると、該発光面と該受光面に密着する請求項1
又は請求項2に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種デバイスが形成されたシリコン、ガリウムヒ素、サファイア、セラミックス、ガラス、樹脂基板など各種板状の被加工物を切削ブレードで切削する切削装置が広く用いられている。このような切削装置では、発光部と受光部の間に切削ブレードの刃先を侵入させて、刃先の高さを検出する切削ブレード検出ユニットが使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削ブレードは、ボンドが砥粒で固定された極薄の環状部材であり、切削するに従い消耗することで自生発刃し、一定以上の切れ味が常に維持される。このため、切削ブレードの刃先の高さは、徐々に変動するため、定期的にその高さを測定しながら切削ブレードの高さを補正する必要がある。そこで、切削ブレードの刃先の高さを検出する切削ブレード検出ユニットが使用されている。このような切削ブレード検出ユニットは、受光量によって刃先を検出するため、発光部や受光部が切削屑等の付着により汚れてしまうと、検出結果がずれてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、発光部や受光部が切削屑等の付着により汚れてしまう可能性を低減するために、切削ブレード検出ユニットの使用時以外に、切削ブレード検出ユニットを保護カバーで覆う構成が使用されている。しかしながら、保護カバーの開閉部が雰囲気中の切削屑の付着等により開閉動作が不完全になり、発光部や受光部に汚れが付着してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削ブレード検出ユニットを覆う保護カバーの閉まり具合を判定できる切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削ブレードで切削する切削ユニットと、発光部と該発光部からの光を受光する受光部とを有し、該発光部と該受光部との間に該切削ブレードが位置付けられて遮蔽された該光の量で該切削ブレードの先端位置を検出する切削ブレード検出ユニットと、警告情報を報知する報知部と、を備え、該切削ブレード検出ユニットは、該発光部と該受光部とを有するセンサー部と、該センサー部を覆って外部の空間から該センサー部を遮蔽する遮蔽位置と、該センサー部を露出する開放位置とに選択的に位置付けられる保護カバーと、該保護カバーに設置され、該保護カバーが該遮蔽位置に位置付けられると該発光部と該受光部との間に挿入されて、該発光部からの光を受ける該受光部の受光量を減少させる遮光部材と、該保護カバーを該遮蔽位置に位置付けた際の該受光量と予め設定された閾値とを比較し、該保護カバーが該センサー部を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まったか否かを判定するとともに、該保護カバーが所定の位置まで閉まっていないと判定した場合に、該警告情報を該報知部から報知させる閉状態判定部と、を備え、該閉状態判定部は、該切削ユニットによる該被加工物の切削加工中に、該受光量と予め設定された閾値とを比較し、該保護カバーが該センサー部を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まったか否かを判定するものである。
該閉状態判定部は、該保護カバーが所定の位置まで閉まっていないと判定した場合に、該被加工物の切削加工を停止する構成としても良い。
【0008】
該発光部は発光面を備え、該受光部は該発光面と対向する受光面とを備え、該遮光部材は、該遮蔽位置に位置付けられると、該発光面と該受光面に密着する構成としても良い。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、切削ブレード検出ユニットを覆う保護カバーの閉まり具合を判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の切削ブレード検出ユニットの構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の切削ブレード検出ユニットにおける一状態の要部を示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の切削ユニットの構成及び
図2の切削ブレード検出ユニットの機能構成の一例を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図2の切削ブレード検出ユニットがブレード検出動作を実施したときに光電変換部から電圧比較部に出力される出力電圧のグラフの一例である。
【
図6】
図6は、
図2の切削ブレード検出ユニットの保護カバーが遮蔽位置まで閉まっている状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図6の状態でカバー遮蔽判定動作を実施したときに光電変換部から電圧比較部に出力される出力電圧のグラフの一例である。
【
図8】
図8は、
図2の切削ブレード検出ユニットの保護カバーが遮蔽位置まで閉まっていない状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8の状態でカバー遮蔽判定動作を実施したときに光電変換部から電圧比較部に出力される出力電圧のグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る切削装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態に係る切削装置1の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1の切削ブレード検出ユニット30の構成例を示す斜視図である。
図3は、
図2の切削ブレード検出ユニット30における一状態の要部を示す断面図である。
図4は、
図1の切削ユニット20の構成及び
図2の切削ブレード検出ユニット30の機能構成の一例を模式的に示す図である。切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と、切削ユニット20と、切削ブレード検出ユニット30と、報知部40と、を備える。
【0013】
切削装置1の切削対象である被加工物100は、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハである。被加工物100は、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にデバイス103が形成されている。被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されている。また、本発明では、被加工物100は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0014】
チャックテーブル10は、被加工物100を保持する。チャックテーブル10は、被加工物100を保持する平坦な保持面11が上面に形成されかつ多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から構成された円盤形状の吸着部と、吸着部を上面中央部の窪み部に嵌め込んで固定する枠体とを備えた円盤形状である。保持面11は、水平面であるXY平面に平行に形成されている。チャックテーブル10は、吸着部が、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面11全体で、被加工物100を吸引保持する。
【0015】
チャックテーブル10は、X軸移動ユニットにより水平方向の一方向であるX軸方向に移動自在に設けられている。チャックテーブル10は、不図示の回転駆動部が接続されており、回転駆動部によりXY平面に直交し鉛直方向に平行なZ軸周りに回転可能である。
【0016】
切削ユニット20は、
図4に示すように、切削ブレード21と、スピンドル22と、切削ブレード昇降部23と、を含む。切削ブレード21は、外周縁に設けられた切り刃21-1を有する。切り刃21-1は、例えば、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。切削ブレード21は、切削するに従い切り刃21-1が消耗することで自生発刃し、一定以上の切れ味が常に維持される。
【0017】
切削ブレード21は、水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向と平行な軸心周りの回転動作が加えられて、チャックテーブル10に保持された被加工物100を切削する。スピンドル22は、軸心がY軸方向に沿って設けられ、先端で軸心周りに回転可能に切削ブレード21を支持する。スピンドル22は、Y軸周りに回転駆動し、切削ブレード21の回転軸となる。切削ブレード昇降部23は、スピンドル22をZ軸方向に移動させることで、スピンドル22の先端で支持された切削ブレード21を昇降させる。
【0018】
切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物100に対して、Y軸移動ユニットによりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニットによりXY平面に直交し鉛直方向に平行なZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0019】
切削装置1は、切削ブレード21を回転させながら、X軸移動ユニット、Y軸移動ユニット及びZ軸移動ユニットにより、チャックテーブル10に保持された被加工物100と切削ブレード21とを分割予定ライン102に沿って相対的に移動させて、分割予定ライン102に沿って被加工物100を切削ブレード21で切削加工する。
【0020】
切削ブレード検出ユニット30は、
図2に示すように、センサー部31と、保護カバー32と、遮光部材33と、エアー供給ノズル35と、洗浄水供給ノズル36と、を備える。また、切削ブレード検出ユニット30は、
図4に示すように、閉状態判定部51と、光電変換部52と、基準電圧設定部53と、電圧比較部54と、端部位置検出部55と、算出部56と、位置補正部57と、光源60と、を備える。
【0021】
センサー部31は、
図2に示すように、切削ブレード検出ユニット30のユニット本体30-1から立設したセンサー本体31-1と、センサー本体31-1から立設した一対の側壁31-2とを有している。一対の側壁31-2は、Y軸方向に間隔をあけて配置され、互いの間の間隔が、切削ブレード21の切り刃21-1の厚みよりも広い幅を有している。一対の側壁31-2は、互いの間に回転する切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が侵入可能な溝部31-3を形成している。
【0022】
センサー部31は、
図2、
図3及び
図4に示すように、発光部38と、受光部39と、を有する。発光部38は、
図2、
図3及び
図4に示すように、一方の側壁31-2に設けられ、他方の側壁31-2に向けて光を発する。発光部38は、
図4に示すように、光源60が光ファイバー等により光学的に接続されており、光源60からの光を発する。発光部38は、光を発する発光面38-1を備える。発光面38-1は、一方の側壁31-2と概ね同一平面を形成している。
【0023】
受光部39は、
図2及び
図4に示すように、他方の側壁31-2に発光部38と対面する位置に設けられ、発光部38からの光を受光する。受光部39は、受光素子が光ファイバー等により光学的に接続されており、受光素子で受光部39に到達した光を検出する。受光部39は、光電変換部52に光ファイバー等により光学的に接続されており、発光部38から受光した光を光電変換部52に送る。受光部39は、光を受光する受光面39-1を備える。受光面39-1は、他方の側壁31-2と概ね同一平面を形成している。発光面38-1と受光面39-1とは、互いに平行であり、Y軸方向に対向している。
【0024】
切削ブレード検出ユニット30は、発光部38と受光部39の間、すなわち溝部31-3に切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2を侵入させて、下端部21-2の高さ(溝部31-3における深さ方向の位置)を検出する。
【0025】
保護カバー32は、
図2に示すように、センサー部31、エアー供給ノズル35及び洗浄水供給ノズル36を覆って外部の空間からセンサー部31等を遮蔽する遮蔽位置32-1(
図2中に二点鎖線で示す)と、センサー部31等を露出する開放位置32-2(
図2中に実線で示す)とに選択的に位置づけられる。実施形態1では、保護カバー32は、X軸方向の一端部に設けられたヒンジ32-3によりセンサー本体31-1に取り付けられ、ヒンジ32-3を中心に遮蔽位置32-1と開放位置32-2とに亘って回転自在である。保護カバー32は、不図示のエアーシリンダにより、遮蔽位置32-1と開放位置32-2とに亘って回転移動される。本実施形態では、切り刃21-1の下端部21-2の高さを検出する際に、保護カバー32が開放位置32-2に位置付けられて、切り刃21-1の下端部21-2の高さを検出することがない際には、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられる。
【0026】
遮光部材33は、
図2に示すように、保護カバー32の内側に設置されている。遮光部材33は、
図3に示すように、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられると、発光部38と受光部39との間に挿入されて、発光部38からの光を受ける受光部39の受光量を減少させる。遮光部材33は、本実施形態では、保護カバー32がセンサー部31を外部の空間から遮蔽する所定の位置である遮蔽位置32-1まで閉まっていない場合、すなわち遮蔽位置32-1よりも開放位置32-2側に位置する場合には、発光部38と受光部39との間の一部または全てを遮らない状態となる。また、遮光部材33は、本実施形態では、
図3に示すように、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まると、発光部38と受光部39との間を所定以上、または完全に遮る。
【0027】
遮光部材33は、本実施形態では、
図3に示すように、互いに平行な側面33-1,33-2を有し、側面33-1と側面33-2との間の幅が、溝部31-3の幅と同等または少し小さい。このため、遮光部材33は、
図3に示すように、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられると、溝部31-3に嵌め合わせられ、側面33-1が発光面38-1に密着し、側面33-2が受光面39-1に密着する。切削ブレード検出ユニット30は、このように保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられたときに遮光部材33が発光面38-1及び受光面39-1に密着することで、雰囲気中の切削屑等が発光面38-1及び受光面39-1に付着する可能性をさらに低減する。
【0028】
なお、遮光部材33は、本発明では上記形態に限定されず、側面33-1と側面33-2との間の幅が、溝部31-3の幅よりも十分に細くても良い。遮光部材33は、このような場合には、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられると、側面33-1と発光面38-1との間に所定の間隙が形成され、側面33-2と受光面39-1との間に所定の間隙が形成される。このように、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられたときに遮光部材33が発光面38-1及び受光面39-1との間に所定の間隙が形成されることで、遮光部材33が溝部31-3内を円滑に移動することができ遮光部材33が発光面38-1及び受光面39-1を傷つけてしまう可能性を抑制することができる。
【0029】
遮光部材33の遮蔽位置32-1に位置付けられた際の下端33-3は、発光部38及び受光部39の下端と同一平面上に位置している。なお、本発明では、遮光部材33の遮蔽位置32-1に位置付けられた際の下端33-3が発光部38及び受光部39の下端と同一平面上に位置しているとは、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置すると、光の回折を含めて遮光部材33が発光部38からの受光部39に受光される光を完全に遮って受光部39の受光量が0になり、保護カバー32が遮蔽位置32-1よりも開放位置32-2側に位置すると、遮光部材33が発光部38からの受光部39に受光される光を完全に遮ることなく受光部39の受光量が0を超えることを示している。
【0030】
なお、遮光部材33の遮蔽位置32-1に位置付けられた際の下端33-3は、本発明では上記形態に限定されず、発光部38及び受光部39の下端よりも溝部31-3の深さ方向に浅く位置付けられても良い。この場合、遮光部材33が発光部38からの受光部39に受光される光を完全に遮らず、受光部39の受光量が0より大きい値となる。この場合には、後述する閾値62(
図7及び
図9参照)は、後述の形態よりも高く設定される。また、遮光部材33の遮蔽位置32-1に位置付けられた際の下端33-3は、発光部38及び受光部39の下端よりも溝部31-3の深さ方向に深く位置付けられ、発光部38と受光部39との間を完全に遮るようにしても構わない。
【0031】
エアー供給ノズル35は、不図示の圧縮エアー供給源に接続されており、圧縮エアー供給源から供給されたエアーを発光面38-1及び受光面39-1に向けて吹き付ける。洗浄水供給ノズル36は、不図示の洗浄水供給源に接続されており、洗浄水供給源から供給された洗浄水を発光面38-1及び受光面39-1に向けて吹き付ける。切削ブレード検出ユニット30は、エアー供給ノズル35及び洗浄水供給ノズル36からそれぞれエアー及び洗浄水を発光面38-1及び受光面39-1に向けて吹き付けることで、発光面38-1及び受光面39-1を洗浄する。
【0032】
光電変換部52は、受光部39から送られる光の光量に対応した電圧を電圧比較部54へ出力する。切削ブレード21の切り刃21-1が溝部31-3に侵入するに従って、切削ブレード21の切り刃21-1が発光部38と受光部39との間を遮る量が増加すると、光電変換部52からの出力電圧が徐々に減少する。本実施形態において、光電変換部52は、受光率が100%の時には5V(最大電圧)、受光率が0%の時には0V(最小電圧)の電圧を出力する。光電変換部52は、受光部39の受光量が所定光量となったとき、すなわち切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が発光部38と受光部39との間の所定位置に達したときに、出力電圧が基準電圧61(
図5参照、本実施形態では、3V)になるように設定されている。所定位置は、例えば、切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が保持面11の上面に接触する位置として設定される。
【0033】
基準電圧設定部53は、設定された基準電圧61を電圧比較部54に出力する。本実施形態において基準電圧61は、上述したように、3Vである。電圧比較部54は、光電変換部52からの出力電圧と基準電圧設定部53によって設定された基準電圧61とを比較し、光電変換部52からの出力電圧が基準電圧61に達したとき、その旨の信号を端部位置検出部55に出力する。端部位置検出部55は、電圧比較部54から上記信号が出力された時点で、切削ブレード昇降部23から取得した切削ユニット20のZ軸方向における位置を切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置(原点位置)として検出する。つまり、端部位置検出部55は、受光部39の受光量が所定光量になったとき、すなわち切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2が発光部38と受光部39との間の所定位置に達したときに、切削ブレード昇降部23から取得した切削ユニット20のZ軸方向における位置を切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置として検出する。端部位置検出部55は、検出した切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置を算出部56に出力する。
【0034】
算出部56は、端部位置検出部55によって検出された基準位置に基づいて、Z軸方向の切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の位置の補正量を算出する。位置補正部57は、算出部56によって算出された補正量に基づいて、切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2のZ軸方向の位置を補正する。
【0035】
また、電圧比較部54は、保護カバー32を遮蔽位置32-1に位置付けた際の受光部39が受光した受光量と予め設定された閾値62(
図7及び
図9参照)とを比較し、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まったか否か(閉まり具合)を判定する閉状態判定部51としても機能する。ここで、保護カバー32が遮蔽位置32-1まで閉まったか否かを判定するとは、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられているか否かを判定することを示している。ここで、閾値62は、0Vよりも大きな値であり、遮蔽位置32-1よりも開放位置32-2側に位置するときに受光部39が受光する受光量を変換して得られる電圧値よりも小さな値である。
【0036】
閉状態判定部51として機能する電圧比較部54は、保護カバー32を遮蔽位置32-1に位置付けた際の光電変換部52からの出力電圧と閾値62とを比較し、光電変換部52からの出力電圧が閾値62以下である場合に、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まったと判定し、光電変換部52からの出力電圧が閾値62より大きい場合に、保護カバー32が当該遮蔽位置32-1まで閉まっていないと判定する。閉状態判定部51として機能する電圧比較部54は、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっていないと判定した場合に、この判定結果の旨の警告情報を報知部40から報知させる。
【0037】
報知部40は、閉状態判定部51が、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっていないと判定した場合に、この判定結果の旨の警告情報を報知する。報知部40は、例えば、液晶表示装置等により構成される画像を表示する画像表示ユニット、スピーカ等により構成される音声を発信する音声ユニット、及び、発光ダイオード等により構成される点灯する光報知ユニット等である。
【0038】
切削装置1は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御する制御部50を備える。制御部50は、切削装置1の各構成要素と情報通信可能に電気的に接続されている。制御部50は、切削装置1による切削処理、切削ブレード21の検出処理、及び、保護カバー32の閉まり具合の判定処理を実現する。制御部50は、例えばオペレータにより入力設定された被加工物100の切削条件に従って、切削ブレード21により被加工物100を切削する。また、制御部50は、オペレータにより入力設定された切削ブレード21の検出条件に従って、切削ブレード検出ユニット30により切削ブレード21を検出する。また、制御部50は、オペレータにより入力設定された保護カバー32の閉まり具合の判定条件に従って、切削ブレード検出ユニット30により保護カバー32の閉まり具合を判定する。
【0039】
制御部50は、本実施形態では、コンピュータシステムを含む。制御部50は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実行して、制御部50を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1の各構成要素に出力する。演算処理装置は、オペレータから不図示の入力装置に入力された切削装置1の各処理の条件を、入出力インターフェース装置を介して受け付ける。
【0040】
閉状態判定部51、光電変換部52、基準電圧設定部53、電圧比較部54、端部位置検出部55、算出部56及び位置補正部57の各機能は、本実施形態では、上記した制御部50の演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0041】
以上のような構成を有する実施形態に係る切削装置1の動作について以下に説明する。切削装置1は、切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の高さを検出するブレード検出動作を実施する際には、エアーシリンダで保護カバー32を開放位置32-2に位置付ける。切削装置1は、ブレード検出動作の完了後に、エアーシリンダで保護カバー32を開放位置32-2から遮蔽位置32-1まで回転させた後、受光部39の受光量に基づいて、保護カバー32が遮蔽位置32-1まで閉まったか否かを判定するカバー遮蔽判定動作を実施する。切削装置1は、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられていると判定すると、被加工物100の切削加工等を開始し、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられていない即ち遮蔽位置32-1よりも開放位置32-2側に位置すると判定すると、被加工物100の切削加工等を停止し、報知部40からその旨の警告情報を報知する。
【0042】
切削装置1は、例えば、切削ブレード21の消耗を考慮して、切削ブレード21により所定の枚数の被加工物100を切削するごとに、切削ブレード検出ユニット30でブレード検出動作を実施する。ブレード検出動作では、切削装置1は、切削ブレード昇降部23で切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2を徐々に溝部31-3に侵入させていきながら、切削ブレード検出ユニット30の発光部38から受光部39に向けて光を発生させ、光電変換部52から受光部39が受光した受光量に対応した電圧を電圧比較部54に出力させる。
【0043】
図5は、
図2の切削ブレード検出ユニット30がブレード検出動作を実施したときに光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧のグラフの一例である。本実施形態では、光電変換部52は、
図5に示すように、受光率が100%の時には5V(最大電圧)、受光率が0%の時には0V(最小電圧)の電圧を出力する。電圧比較部54は、光電変換部52からの出力電圧が基準電圧61(本実施形態では、3V)に達したとき(
図5に示すt=t1)、その旨の信号を端部位置検出部55に出力する。
【0044】
端部位置検出部55は、電圧比較部54から上記信号が出力された時点(t=t1)での切削ブレード昇降部23から取得した切削ユニット20のZ軸方向における位置を、切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の基準位置(原点位置)として検出し、検出した基準位置を算出部56に出力する。算出部56は、端部位置検出部55によって検出された基準位置に基づいて、Z軸方向の切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2の位置の補正量を算出する。位置補正部57は、算出部56によって算出された補正量に基づいて、切削ブレード昇降部23で切削ブレード21の切り刃21-1の下端部21-2のZ軸方向の位置を補正する。算出部56により補正量を算出し、位置補正部57による切削ブレード21の位置の補正がなされると、切削装置1によるブレード検出動作が完了する。
【0045】
切削装置1は、ブレード検出動作の完了後に、エアーシリンダで保護カバー32を開放位置32-2から遮蔽位置32-1まで回転させた後、カバー遮蔽判定動作を実施する。カバー遮蔽判定動作では、切削装置1は、発光部38から受光部39に向けて光を発生させ、光電変換部52から受光部39が受光した受光量に対応した電圧を電圧比較部54に出力させて、光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧に基づいて、保護カバー32が遮蔽位置32-1まで閉まったか否かを判定する。
【0046】
図6は、
図2の切削ブレード検出ユニット30の保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっている状態を示す断面図である。
図7は、
図6の状態でカバー遮蔽判定動作を実施したときに光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧のグラフの一例である。
図8は、
図2の切削ブレード検出ユニット30の保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっていない状態を示す断面図である。
図9は、
図8の状態でカバー遮蔽判定動作を実施したときに光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧のグラフの一例である。
【0047】
図6に示すように保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっている状態では、遮光部材33は、発光部38と受光部39との間をちょうど完全に遮る。このため、切削装置1は、
図6の状態でカバー遮蔽判定動作を実施すると、受光部39の受光率が0%となり、
図7に示すように、光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧は0V(最小電圧)となる。
【0048】
切削装置1は、例えば雰囲気中の切削屑の付着等により保護カバー32の遮蔽位置32-1と開放位置32-2との間での回転移動の動作が不完全になってしまった場合、
図8に示すように保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まらず、遮蔽位置32-1よりも開放位置32-2側に位置し、雰囲気中の切削屑等の侵入を許す隙間71を生じさせてしまう。そして、切削装置1は、
図8に示すように保護カバー32が当該遮蔽位置32-1まで閉まらない場合には、発光部38と受光部39との間において遮光部材33によって遮られない領域72を生じさせてしまう。
【0049】
このため、このため、切削装置1は、
図8の状態でカバー遮蔽判定動作を実施すると、領域72によって受光部39の受光率が0%よりも大きな値となり、
図9に示すように、光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧は0V(最小電圧)よりも大きな値の正電圧73となる。
【0050】
カバー遮蔽判定動作では、閉状態判定部51として機能する電圧比較部54は、光電変換部52から電圧比較部54に出力される出力電圧と閾値62とを比較する。
図6に示す状態では、この比較の結果、光電変換部52からの出力電圧が0V(最小電圧)であり、閾値62以下であるため、閉状態判定部51として機能する電圧比較部54は、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっていると判定する。また、
図8に示す状態では、この比較の結果、光電変換部52からの出力電圧が正電圧73であり、閾値62より大きいため、閉状態判定部51として機能する電圧比較部54は、保護カバー32が当該遮蔽位置32-1まで閉まっておらず、遮蔽位置32-1よりも開放位置32-2側に位置していると判定する。
【0051】
閉状態判定部51として機能する電圧比較部54は、保護カバー32が上記した遮蔽位置32-1まで閉まっていないと判定した場合、被加工物100の切削加工等を停止し、この判定結果の旨の警告情報を報知部40から報知させる。閉状態判定部51として機能する電圧比較部54により、保護カバー32が遮蔽位置32-1閉まったか否かを判定し、保護カバー32が遮蔽位置32-1まで閉まっていないと判定した場合に警告情報を報知部40から報知させると、切削装置1によるカバー遮蔽判定動作が完了する。
【0052】
以上のような構成を有する実施形態に係る切削装置1は、切削ブレード検出ユニット30が、保護カバー32に設置され、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられると、発光部38と受光部39との間に挿入されて、発光部38からの光を受ける受光部39の受光量を減少させる遮光部材33と、保護カバー32を遮蔽位置32-1に位置付けた際の受光部39が受光した受光量と予め設定された閾値62とを比較し、保護カバー32がセンサー部31を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まったか否かを判定する閉状態判定部51と、を備える。このため、実施形態に係る切削装置1は、切削ブレード検出ユニット30が持ち合わせている機能を活用して、新たにセンサーを設けることなく、切削ブレード検出ユニット30を覆う保護カバー32の閉まり具合を判定できるという作用効果を奏する。
【0053】
また、実施形態に係る切削装置1は、閉状態判定部51が、保護カバー32がセンサー部31を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まっていないと判定した場合に、被加工物100の切削加工等を停止する。このため、実施形態に係る切削装置1は、発光部38及び受光部39に切削屑等の汚れが付着してしまうことを未然に防ぐことができるという作用効果を奏する。
【0054】
また、実施形態に係る切削装置1は、閉状態判定部51が、保護カバー32がセンサー部31を外部の空間から遮蔽する所定の位置まで閉まっていないと判定した場合に、この判定結果の旨の警告情報を報知部40から報知させる。このため、実施形態に係る切削装置1は、切削ブレード検出ユニット30を覆う保護カバー32の閉まり具合の判定結果を切削装置1のオペレータに速やかに認識させ、切削ブレード検出ユニット30を覆う保護カバー32の閉まり具合の改善措置をオペレータに促すことができるという作用効果を奏する。
【0055】
また、実施形態に係る切削装置1は、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられると、遮光部材33の側面33-1,33-2がそれぞれ発光面38-1及び受光面39-1に密着する。このため、実施形態に係る切削装置1は、保護カバー32が遮蔽位置32-1に位置付けられたときに遮光部材33が発光面38-1及び受光面39-1に密着することで、雰囲気中の切削屑等が発光面38-1及び受光面39-1に付着する可能性をさらに低減することができるという作用効果を奏する。
【0056】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記実施形態では、切削装置1は、ブレード検出動作の完了後に、エアーシリンダで保護カバー32を開放位置32-2から遮蔽位置32-1まで回転させた後、受光部39の受光量に基づいて、カバー遮蔽判定動作を実施しているが、本発明では、保護カバー32を遮蔽位置32-1に位置付けた後に、例えば切削ユニット20による被加工物100の切削加工中に、定期的にカバー遮蔽判定動作を実施してもよい。このようにした場合、切削装置1は、保護カバー32を一旦上記した遮蔽位置32-1に位置付けた後で、例えば雰囲気中の切削屑の付着等に起因して、当該遮蔽位置32-1から開放位置32-2側に少し移動してしまって隙間71を生じさせてしまうような場合に、保護カバー32の閉まり具合に問題が生じていることを判定し、警告情報を報知することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
30 切削ブレード検出ユニット
31 センサー部
32 保護カバー
32-1 遮蔽位置
32-2 開放位置
33 遮光部材
38 発光部
38-1 発光面
39 受光部
39-1 受光面
40 報知部
50 制御部
51 閉状態判定部
100 被加工物