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特許7450411ナフタレンジアミン、ナフタレンジアミド第4族金属錯体、オレフィン重合体製造用触媒及びオレフィン重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ナフタレンジアミン、ナフタレンジアミド第4族金属錯体、オレフィン重合体製造用触媒及びオレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/74 20060101AFI20240308BHJP
   C07D 213/76 20060101ALI20240308BHJP
   C07D 215/38 20060101ALI20240308BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20240308BHJP
   C08F 4/64 20060101ALI20240308BHJP
   C07F 7/28 20060101ALN20240308BHJP
   C07F 7/00 20060101ALN20240308BHJP
【FI】
C07D213/74 CSP
C07D213/76
C07D215/38
C08F10/00 510
C08F4/64
C07F7/28 F
C07F7/00 A
C07F7/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020039618
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021138666
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】多田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】曽根 誠
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-100390(JP,A)
【文献】国際公開第98/034961(WO,A1)
【文献】特表平11-508635(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0069044(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08F
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】
(式中、Arは同一又は相異なって炭素数1から3のアルキル基若しくは炭素数1から3のアルコキシ基で置換されていても良いピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表す。)で示される化合物であることを特徴とするナフタレンジアミン。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】
(式中、Mは第4族金属原子を表す。Arは同一又は相異なって、炭素数1から3のアルキル基若しくは炭素数1から3のアルコキシ基で置換されていても良いピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表す。Xは同一又は相異なって、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を表す。Lは中性配位子を表す。nは0、1又は2を表す。nが2の場合、Lは同一又は相異なっていてもよい。)で示される金属錯体化合物であることを特徴とするナフタレンジアミド第4族金属錯体。
【請求項3】
Arがピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基である金属錯体化合物であることを特徴とする請求項2に記載のナフタレンジアミド第4族金属錯体。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のナフタレンジアミド第4族金属錯体及び活性化助触媒を含むことを特徴とするオレフィン重合体製造用触媒。
【請求項5】
さらに有機金属化合物を含むものであることを特徴とする請求項4に記載のオレフィン重合体製造用触媒。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のオレフィン重合体製造用触媒の存在下、オレフィンの重合反応を行うことを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフタレンジアミン、その誘導体及びそれよりなるオレフィン重合体製造用触媒に関するものであり、特に新規なナフタレンジアミン、そのナフタレンジアミド第4族金属錯体、該ナフタレンジアミド第4族金属錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該オレフィン重合体製造用触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合体の製造触媒は、チーグラー触媒や、クロム触媒が広く用いられ、さらに、メタロセン系触媒の発見により、ポリマー設計の自由度が高い金属錯体を用いた触媒系の採用が進んできている。そして、メタロセン化合物へ高い機能を付与させることを目的として、架橋構造を有する等の複雑なシクロアルカジエニル系の配位子が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、合成が容易で、配位子の構造設計に対する自由度が高いオレフィン重合用金属錯体に関する検討がなされ、ナフタレンジアミド金属錯体として、ナフタレン-1,8-ビス(トリアルキルシリル)ジアミド配位チタン錯体、ナフタレン-1,8-ビス(トリメチルシリル)ジアミド配位ジルコニウム錯体が提案されている(例えば、特許文献3,非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-130314号公報
【文献】特開昭61-264010号公報
【文献】特開平11-100390号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】Organometallics,第19巻,344ページ(2000年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に提案された架橋構造を有する等の複雑なシクロアルカジエニル系の配位子は、その合成ルートが煩雑なものとなり、金属錯体の製造コストがかさむことが工業化の大きな課題であった。
【0007】
また、特許文献3,非特許文献1に提案されたナフタレン-1,8-ビス(トリアルキルシリル)ジアミド配位チタン錯体、ナフタレン-1,8-ビス(トリメチルシリル)ジアミド配位ジルコニウム錯体は、その合成方法、オレフィン重合体製造用触媒としての性能等について十分に満足できるものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、合成が容易で、分子設計の自由度が高くオレフィン重合体の製造用触媒としての有用性が期待される新規化合物、錯体、該新規錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、新規なナフタレンジアミン、そのナフタレンジアミド第4族金属錯体が上記課題を解決することができることを見出しし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、一般式(1)
【0011】
【化1】
【0012】
(式中、Arは同一又は相異なって炭素数1から3のアルキル基若しくは炭素数1から3のアルコキシ基で置換されていても良いピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表す。)で示されるナフタレンジアミン、ナフタレンジアミド第4族金属錯体及びそれよりなるオレフィン重合体製造用触媒に関するものである。
【0013】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
【0014】
本発明のナフタレンジアミンは、上記一般式(1)で示される新規なナフタレンジアミンであり、Arは、炭素数1から3のアルキル基若しくは炭素数1から3のアルコキシ基で置換されていても良いピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基であり、同一又は異なっていてもよい。該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びシクロプロピル基を例示することが出来、該アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロピルオキシ基及びシクロプロピルオキシ基を例示することが出来る。そして、該ナフタレンジアミンの具体的例示として、以下のものを挙げることができる。
【0015】
【化2】
【0016】
【化3】
【0017】
そして、特にオレフィン重合体製造用触媒とした時の重合活性が高い触媒となることから、Arとしてはピリジン-2-イル基、3-メトキシピリジン-2-イル基、6-メトキシピリジン-2-イル基、キノリン-2-イル基が好ましく、特にピリジン-2-イル基、キノリン-2-イル基が好ましい。
【0018】
本発明のナフタレンジアミンの製造方法としては、新規な該ナフタレンジアミンの製造が可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば、以下に示す製造法Aによって製造することが出来る。
【0019】
製造法Aとしては、パラジウム触媒及び塩基の存在下で一般式(2)に示されるハロゲン化アリールと1,8-ジアミノナフタレンをカップリングさせることにより、ナフタレンジアミン(1)を製造する方法を挙げることができる。
【0020】
【化4】
【0021】
(式中、一般式(2)におけるArは一般式(1)におけるそれぞれの定義と同義である。Xはハロゲン原子を表す。)
一般式(2)のXで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を例示することが出来、特に効率よくナフタレンジアミン(1)の製造を行うことが可能となることから塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0022】
そして、該パラジウム触媒としては、ハロゲン化アリール(2)と1,8-ジアミノナフタレンとのカップリング反応が進行すれば特に制限は無く、中でもナフタレンジアミン(1)を効率よく製造することが可能となることから、0価パラジウム化合物と二座ホスフィン配位子とを組み合わせて用いるのが好ましい。具体的には、0価パラジウム化合物としては例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(以下、Pd(dba)と記す場合がある)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(以下、Pd(dba)と記す場合がある)等を例示することが出来、二座ホスフィン配位子としては、例えば1,3-ジフェニルホスフィノプロパン(以下、dpppと記す場合がある)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(以下、BINAPと記す場合がある)等を例示することが出来る。0価パラジウム化合物と二座ホスフィン配位子のモル比は、パラジウム原子1モル当たり1から1.5モルの二座ホスフィン配位子を用いるのがナフタレンジアミン(1)の収率に優れる点で好ましい。また0価パラジウム化合物と二座ホスフィン配位子を混合して調製したPd(BINAP)(dba)等の二座ホスフィン配位パラジウム錯体を製造法Aの触媒として用いることも出来る。
【0023】
その際のパラジウム触媒の使用量には特に制限は無く、通常はナフタレン-1,8-ジアミン1モル当量に対して、0.001から0.2モル当量用いるのが好ましく、0.01から0.1モル当量用いるのが更に好ましい。
【0024】
該塩基としては、当業者がパラジウム触媒を用いてハロゲン化アリールとアリールアミンをカップリングするときに通常用いる塩基を挙げることが出来、収率に優れる点でナトリウムtert-ブトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドが好ましく、ナトリウムtert-ブトキシドが更に好ましい。また、該ハロゲン化アリール(2)、該1,8-ジアミノナフタレン及び該塩基のモル比には特に制限は無く、通常は1,8-ジアミノナフタレンに対して2から2.6モル当量のハロゲン化アリール(2)及び2から3モル当量の塩基を用いることによって収率良くナフタレンジアミン(1)を得ることが出来る。
【0025】
製造法Aは、ナフタレンジアミン(1)の収率に優れる点で、不活性ガス雰囲気中で実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガス等を例示することが出来る。安価な点で窒素ガス又はアルゴンが好ましい。また、製造法Aは、ナフタレンジアミン(1)の収率に優れる点で、有機溶媒中で実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(以下、CPMEと記す場合がある)、シクロペンチルエチルエーテル(以下、CPEEと記す場合がある)、tert-ブチルメチルエーテル(以下、MTBEと記す場合がある)、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す場合がある)、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;を挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いることが出来、複数を任意の比率で混合して用いることも出来る。ナフタレンジアミン(1)の収率に特に優れることから、有機溶媒としてはトルエン又は1,4-ジオキサンが好ましく、トルエンが更に好ましい。
【0026】
製造法Aの反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者がパラジウム触媒を用いたN-アリール化反応を実施するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、50℃から180℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1時間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってナフタレンジアミン(1)を収率良く製造することが出来る。
【0027】
製造法Aによって製造したナフタレンジアミン(1)は、当業者が芳香族アミンを精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、洗浄、結晶化、カラムクロマトグラフィー、分取液体クロマトグラフィー等を挙げることが出来る。
【0028】
本発明は、下記一般式(3)
【0029】
【化5】
【0030】
(式中、Mは第4族金属原子を表す。Arは同一又は相異なって、炭素数1から3のアルキル基若しくは炭素数1から3のアルコキシ基で置換されていても良いピリジン-2-イル基又はキノリン-2-イル基を表す。Xは同一又は相異なって、ハロゲン原子、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を表す。Lは中性配位子を表す。nは0、1又は2を表す。nが2の場合、Lは同一又は相異なっていてもよい。)で示される新規なナフタレンジアミド第4族金属錯体に関するものである。
【0031】
上記一般式(3)で示されるナフタレンジアミド第4族金属錯体におけるMは、第4族金属元素を表すものであり、例えばチタン、ジルコニウム、ハフニウムを例示することが出来る。また、Arは、一般式(1)のものと同様のものを挙げることができ、Xがハロゲン原子である場合、上記ハロゲン化アリール(2)のXと同様のものを挙げることができ、特にオレフィン重合体製造用触媒とした際に重合活性が高いものとなることから、塩素原子又はジメチルアミノ基が好ましい。
【0032】
さらに、Lは中性配位子であり、該中性配位子は、中心金属に単座配位する中性配位子である。具体的にはテトラヒドロフラン、ジメチルアミン等を例示することが出来る。
【0033】
本発明のナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)の具体例としては、以下のものを挙げることができる。
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
【0036】
【化8】
【0037】
【化9】
【0038】
【化10】
【0039】
【化11】
【0040】
【化12】
【0041】
【化13】
【0042】
【化14】
【0043】
【化15】
【0044】
【化16】
【0045】
【化17】
【0046】
【化18】
【0047】
また、これらの中心金属にはテトラヒドロフランやジメチルアミン等の中性配位子Lが一つ又は二つ配位していても良い。そして、本発明におけるMe、Et、Pr、Pr及びthfは、それぞれメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基及びテトラヒドロフラン配位子を表す。
【0048】
そして、該ナフタレンジアミド第4族金属錯体の中でも、特に高い重合活性を示すオレフィン重合体製造用触媒の調製が可能となることから、(3-Ti-1)、(3-Ti-2)、(3-Ti-5)、(3-Ti-33)、(3-Ti-65)、(3-Ti-66)、(3-Zr-1)、(3-Zr-33)、(3-Zr-65)、(3-Zr-66)、(3-Hf-1)、(3-Hf-33)、(3-Hf-65)又は(3-Hf-66)で示されるナフタレンジアミド第4族金属錯体が好ましく、特に(3-Ti-1)、(3-Ti-65)、(3-Zr-33)、(3-Hf-1)、(3-Hf-65)で示されるナフタレンジアミド第4族金属錯体が好ましい。また、(3-Hf-1)、(3-Hf-65)で示されるナフタレンジアミド第4族金属錯体はオレフィン重合体製造用触媒とした際に複数の融点を有するポリマーを生成することが可能なものとなり、特に優れた特徴を有するオレフィン重合体製造用触媒を調製することができる。
【0049】
本発明のナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)の製造方法については、該ナフタレンジアミド第4族金属錯体の製造が可能であれば如何なる方法をも用いることが可能であり、例えば下記の製造法1又は製造法2により製造することが出来る。
【0050】
製造法1は、一般式(4)で示される第4族金属ジアルキルアミド錯体と一般式(1)で示されるナフタレンジアミン(1)とを反応させることにより、ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3a)を製造する方法である。
【0051】
【化19】
【0052】
(式中、Ar、L及びnは一般式(3)におけるそれぞれの定義と同義である。Mは第4族金属原子を表す。Xはジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基を表す。)
ここで、一般式(4)のMで表される第4族金属原子としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムを例示することが出来、収率に優れる点でチタン又はハフニウムが好ましい。また、一般式(4)のXとしては、収率に優れる点でジメチルアミノ基が好ましい。そして、該4族金属ジアルキルアミド錯体(4)の例としては、例えばテトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)チタン、テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム、テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム等を例示することが出来、特に収率に優れる点でテトラキス(ジメチルアミノ)チタン、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム又はテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムが好ましく、テトラキス(ジメチルアミノ)チタン又はテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウムが更に好ましい。
【0053】
製造法1を実施するときの第4族金属ジアルキルアミド錯体(4)とナフタレンジアミン(1)のモル比には特に制限は無く、第4族金属ジアルキルアミド錯体(4)1モル当量に対してナフタレンジアミン(1)を0.9~1.1モル当量用いることが、収率に優れる点で好ましい。
【0054】
製造法1は、収率に優れる点で、不活性ガス雰囲気中にて実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガス等を例示することが出来る。安価な点で窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0055】
製造法1は、収率に優れる点で、有機溶媒中にて実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類は、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、CPME、CPEE、MTBE、THF、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;を挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いても、複数の有機溶媒を任意の比率で混合して用いても良い。収率に優れる点で、有機溶媒としては芳香族炭化水素溶媒又はエーテル溶媒が好ましく、トルエン又はTHFが更に好ましい。
【0056】
製造法1において、M、Ar、X及び有機溶媒の種類を適宜選択することにより、中性配位子Lを二つ有するナフタレンジアミド第4族金属錯体(3a)を製造することが出来る。例えばMとしてチタン、Arとして3-メトキシピリジン-2-イル基、Xとしてジメチルアミノ基、溶媒としてテトラヒドロフランをそれぞれ選択した場合には中性配位としてTHFを二つ有するナフタレンジアミド第4族金属錯体(3a)を得ることが出来、Mとしてハフニウム、Arとしてピリジン-2-イル基、Xとしてジメチルアミノ基、溶媒としてトルエンをそれぞれ選択した場合には中性配位としてジメチルアミンを二つ有するナフタレンジアミド第4族金属錯体(3a)を得ることが出来る。
【0057】
製造法1では、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者が前周期遷移金属錯体を製造するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-80℃から120℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、10分間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間を選択することによってナフタレンジアミド第4族金属錯体(3a)を収率良く製造することが出来る。
【0058】
製造法1によって製造したナフタレンジアミド第4族金属錯体(3a)は、当業者が前周期遷移金属錯体を精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、洗浄、結晶化等を挙げることが出来る。
【0059】
次に、製造法2について説明する。製造法2は、ナフタレンジアミン(1)をシリル化して得たジシリルナフタレンジアミン(6)と第4族金属ハロゲン化物(5)とを反応させることにより、本発明のナフタレンジアミド第4族金属錯体(3b)を製造する方法である。
【0060】
【化20】
【0061】
(式中、Arは一般式(1)におけるそれぞれの定義と同義である。Mは第4族金属原子を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
ここで、一般式(5)のMで表される第4族金属原子としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウムを例示することが出来、収率が良い点でジルコニウムが好ましい。また、一般式(5)のXで表されるハロゲン原子としては、収率に優れる点で塩素原子が好ましい。
【0062】
製造法2で用いることが出来る第4族金属ハロゲン化物(5)の例としては、例えば四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、四塩化ハフニウム、四臭化チタン、四臭化ジルコニウム、四臭化ハフニウム、四ヨウ化チタン、四ヨウ化ジルコニウム、四ヨウ化ハフニウム等を例示することが出来、ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)の収率に優れる点で四塩化ジルコニウム又は四臭化ジルコニウムが好ましく、四塩化ジルコニウムが更に好ましい。また第4族金属ハロゲン化物(5)として、テトラヒドロフランや1,2-ジメトキシエタン等のエーテル配位子、アセトニトリルやプロピオニトリル等のニトリル配位子を有するものも支障なく用いることが出来る。
【0063】
製造法2において、M、Ar、X及び有機溶媒の種類を適宜選択することにより、中性配位子Lを二つ有するナフタレンジアミド第4族金属錯体(3b)を製造することが出来る。例えばMとしてジルコニウム、Arとしてピリジン-2-イル基、Xとして塩素原子、溶媒としてテトラヒドロフランをそれぞれ選択した場合には中性配位としてTHFを二つ有するナフタレンジアミド第4族金属錯体(3b)を得ることが出来る。
【0064】
製造法2で用いるジシリルナフタレンジアミン(6)は、下記の製造法Bによって入手することが出来る。製造法Bは、ナフタレンジアミン(1)をジリチオ化した後でクロロトリメチルシランを反応させることによりジシリルナフタレンジアミン(6)を製造する方法である。
【0065】
【化21】
【0066】
(式中、Arは一般式(1)におけるそれぞれの定義と同義である。)
製造法Bで用いることが出来るアルキルリチウムは、ナフタレンジアミン(1)をジリチオ化出来るものであれば特に制限は無く、例えばメチルリチウム、ブチルリチウム等を例示することが出来る。
【0067】
製造法Bは、収率が良い点で、不活性ガス雰囲気中にて実施するのが好ましい。該不活性ガスとして具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、窒素ガス等を例示することが出来る。安価な点で窒素ガス又はアルゴンが好ましい。
【0068】
製造法Bは、収率に優れる点で、有機溶媒中にて実施することが好ましい。使用可能な有機溶媒の種類には、反応を阻害しない限り特に制限は無い。使用可能な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)等の芳香族炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(以下、CPMEと記す場合がある)、CPEE、MTBE、THF等のエーテル溶媒を挙げることが出来る。これら有機溶媒のうち一種類を単独で用いても、複数を任意の比率で混合して用いても良い。ジシリルナフタレンジアミン(6)の収率が良い点で、ヘキサンとTHFの混合溶媒が好ましい。
【0069】
製造法Bでは、反応温度及び反応時間には特に制限はなく、当業者がジアミンのジリチオ化及びジシリル化を実施するときの一般的な条件を用いることが出来る。具体例としては、-80℃から80℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1時間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間をかけてジリチオ化した後、0℃から110℃の温度範囲から適宜選択した反応温度において、1時間から120時間の範囲から適宜選択した反応時間をかけてジシリル化することによってジシリルナフタレンジアミン(6)を収率良く製造することが出来る。
【0070】
製造法Bによって製造したジシリルナフタレンジアミン(6)は、当業者がN-トリアルキルシリルアミンを精製するときの一般的な精製方法を適宜選択して用いることによって精製することが出来る。具体的な精製方法としては、ろ過、抽出、遠心分離、洗浄、結晶化等を挙げることが出来る。
【0071】
次に、本発明のオレフィン重合体製造用触媒について説明する。本発明のオレフィン重合体製造用触媒は、該ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)及び活性化助触媒、場合によってはさらに有機金属化合物を含んでなるものである。その際の活性化助触媒としては、ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)または該ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)と後述の有機金属化合物との混合物と作用することにより、オレフィン重合が可能な活性種を形成することが出来る化合物であれば特に制限はなく、また活性化助触媒は、単独で用いても、2種類以上を同時に用いても良い。該活性化助触媒の例としては、(i)有機アルミニウムオキシ化合物、(ii)ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)と、若しくは該錯体(3)と後述の有機金属化合物との混合物と作用することにより、該錯体(3)の中心金属上にカチオンを生じさせることが出来る化合物、(iii)粘土化合物等を挙げることが出来る。
【0072】
上記の活性化助触媒のうち、有機アルミニウムオキシ化合物としては、市販あるいは公知の化合物を使用することができ、(a)トリアルキルアルミニウムと芳香族カルボン酸化合物との反応で得られるアルキルアルミニウム化合物の熱分解で得られる有機アルミニウムオキシ化合物、(b)有機アルミニウム化合物と水との反応により得られる有機アルミニウムオキシ化合物、(c)ポリメチルアルミノキサンとトリメチルアルミニウム化合物を芳香族系溶媒中で、加熱析出させて製造する固体状の有機アルミニウムオキシ化合物等を例示することが出来る。上記の(a)有機アルミニウムオキシ化合物として好ましくは、工業的に入手が容易な、メチル、イソブチル等のアルキル基を含むポリメチルアルミノキサン、ポリエチルアルミノキサン、ポリイソブチルアルミノキサン、変性ポリメチルアルミノキサン(アルキル基としてメチル基、イソブチル基等を含む)、固体状のポリメチルアルミノキサン等を例示することが出来る。本発明で使用される有機アルミニウムオキシ化合物は、無機酸化物に担持されたものも使用することが可能である。無機酸化物としては、例えばシリカ、アルミナ、マグネシア等の典型元素の無機酸化物;チタニア、ジルコニア等の遷移金属元素の無機酸化物及び、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア等の混合物を例示することが出来る。無機酸化物に担持させる場合の有機アルミニウムオキシ化合物として好ましくは、担体形状の制御性が良い点や、高い重合活性が発現することから固体状のポリメチルアルミノキサン、より高い重合活性が発現することからポリメチルアルミノキサン、変性ポリメチルアルミノキサン等を例示することが出来る。
【0073】
上記の活性化助触媒のうち、(b)ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)と、若しくは該錯体(3)と後述の有機金属化合物との混合物と、作用することにより、該錯体(3)の中心金属上にカチオンを生じさせることが出来る化合物について説明する。該化合物としては、ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)をカチオン性の化合物に変換させることが可能な化合物であれば特に制限はなく、具体的には、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のオニウムボレート;リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等の金属ボレート;トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のトリチルボレート;トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン等のルイス酸性化合物及び、これらのペンタフルオロフェニル基を3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル基に置換した化合物等を例示することが出来る。特に好ましくは、工業的に入手が容易な、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン及び、これらのペンタフルオロフェニル基を3,5-ビストリフルオロメチル-フェニル基に置換した化合物を例示することが出来る。
【0074】
(iii)粘土化合物としては、例えばモンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。本発明においては、天然の粘土化合物及び人工合成により得られる粘土化合物が使用可能であり、また、上記に例示がないものにおいても粘土化合物の定義に属するものであれば用いることが出来る。さらに、上記粘土化合物は複数混合して用いることも出来る。
【0075】
また、(iii)粘土化合物としては、酸処理、無機イオン処理及び、または有機イオン処理等を施したものも使用することが出来る。酸処理としては、塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸処理等を例示することが出来る。なお無機イオン処理及び、または有機イオン処理とは、粘土化合物層間に無機イオン化合物及び、または有機イオン化合物を導入し、イオン複合体を形成することであり、無機イオン処理で用いられる無機イオン化合物としては、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、マグネシウム、アルミニウム等の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等を例示することが出来、有機イオン処理で用いられる有機イオン化合物としては、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機スルホニウムオキシ塩、有機リン酸塩等を例示することが出来る。
【0076】
特に好ましい粘土化合物としては、担体形状の制御性が良い点や、高い触媒活性が発現することから有機アンモニウム塩により有機イオン化合物処理された変性粘土化合物等を例示することが出来る。
【0077】
本発明においてオレフィン重合体製造用触媒は、特に重合活性に優れるものとなることから、ナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)、上記の活性化助触媒に加え、有機金属化合物をその構成とすることが出来る。この有機金属化合物は、炭素数1~24の有機アルミニウム化合物及び/又は炭素数1~16の有機亜鉛化合物を挙げることができ、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム等のアルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等を例示することが出来る。これら有機金属化合物は、一種類を単独で用いても、複数を任意の比率で混合して用いても良い。特に好ましい有機金属化合物としては、工業的に入手が容易な、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチル亜鉛等を例示することが出来る。
【0078】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を構成するナフタレンジアミド第4族金属錯体(3)(以下(A)成分ということもある。)及び上記の活性化助触媒(以下、(B)成分ということもある。)、さらに場合によっては、上記の有機金属化合物(以下、(C)成分ということもある。)を用いる際の使用割合に関しては、オレフィン重合体製造用触媒としての使用が可能であれば如何なる制限を受けるものでなく、その中でも、特にオレフィン重合体を効率よく製造することが可能なオレフィン重合体製造用触媒となることから、(A)成分と(B)成分の重量比が(A成分):(B成分)=10:1~1:10,000にあることが好ましく、特に3:1~1:1000の範囲であることが好ましい。
また、場合によっては、(C)成分を用いる際には、(A)成分と(C)成分の金属原子当たりのモル比は(A成分):(C成分)=100:1~1:100000の範囲にあることが好ましく、特に1:1~1:10000の範囲であることが好ましい。
【0079】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒の調製方法に関しては、該(A)成分及び該(B)成分、場合によっては、該(C)成分を含むオレフィン重合体製造用触媒を調製することが可能であれば如何なる方法を用いてもよく、例えば各(A)成分、(B)成分、(C)成分に関して不活性な溶媒中あるいは重合を行うモノマーを溶媒として用い、混合する方法等を挙げることが出来る。また、これらの成分を反応させる順番に関しても特に制限はなく、この処理を行う温度、処理時間も特に制限はない。また、(A)成分、(B)成分、(C)成分は、それぞれを単独で用いても2種類以上の複数を組み合わせて用いても、オレフィン重合体製造用触媒を調製することが可能である。
【0080】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を用いて重合することができるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;スチレン等のスチレン誘導体;ブタジエン、1,4-ヘキサジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン等の共役及び、非共役ジエン;シクロブテン等の環状オレフィン;等を例示することが出来る。さらに、エチレンとプロピレン、エチレンと1-ブテン、エチレンと1-ヘキセン、エチレンとプロピレンとスチレン、エチレンと1-ヘキセンとスチレン、エチレンとプロピレンとエチリデンノルボルネン等の、2種以上の成分を用いた共重合体とすることも出来る。
【0081】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒を用いオレフィン重合体を製造する際の製造方法としては、例えば溶液重合法、塊状重合法、気相重合法、スラリー重合法等の方法等を例示することが出来、好ましくは粒子形状の整ったオレフィン重合体を効率よく安定的に製造することが可能となることからスラリー重合法を例示することが出来る。また、スラリー重合法に用いる溶媒としては、重合反応を阻害しない限り特に制限はない。使用可能な溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、石油エーテル等を例示することが出来る。さらにプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のオレフィンを溶媒として用いることも出来る。
【0082】
本発明のオレフィン重合体製造用触媒によりオレフィン重合体を製造する重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度等の重合条件には特に制限はなく、任意に選択可能であり、その中でも、重合温度30℃から300℃、重合時間10秒から20時間、重合圧力常圧から100MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素等を用いて分子量の調節を行うことも可能である。重合はバッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて、2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られるオレフィン重合体は、従来既知の方法により重合溶媒から分離回収され、乾燥して得ることができる。
【0083】
また、本発明のオレフィン重合体製造用触媒を用いオレフィン重合体を製造する際には、重合反応を阻害する触媒毒の影響を低減するために、有機金属化合物を用いてもよい。その際の有機金属化合物としては、上記した有機金属化合物と同様のものでよく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム等のアルミニウム化合物;ジエチル亜鉛、ジ-n-プロピル亜鉛、ジ-n-ブチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の亜鉛化合物;等を例示することが出来る。これら有機金属化合物は、一種類を単独で用いても、複数を任意の比率で混合して用いても良い。特に好ましい有機金属化合物としては、工業的に入手が容易な、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチル亜鉛等を例示することが出来る。
【発明の効果】
【0084】
本発明は、合成が容易で、分子設計の自由度が高くオレフィン重合体の製造用触媒としての有用性を有する新規化合物、錯体、該新規錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供するものであり、より容易に効率よくオレフィン重合体を得ることができる。
【実施例
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。反応等は、特に記載のない限りにおいて不活性雰囲気中で実施しており、実施例及び合成例に記載の化合物の製造は全てアルゴン雰囲気下で、オレフィン重合体製造用触媒の調製及びオレフィンの重合反応は窒素雰囲気下で実施した。用いたTHF、トルエン及びヘキサンは関東化学社製の脱水品である。それ以外の試薬については市販品をそのまま用いた。
【0086】
実施例に記載したオレフィン重合体の諸物性は、以下に示す方法で測定した。
【0087】
~メルトインデックス(HLMI)の測定~
荷重21.6kgfのメルトインデックス(以下、HLMIと称す)は、ASTM D1238条件Fに準拠し測定した値を用いた。
【0088】
~融点の測定~
示差走査型熱量計(以下、DSCと記す場合もある。)(日立ハイテクノロジーズ(株)社製、商品名:DSC6220)を用いて融点を測定した。0℃から230℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、5分間230℃で保持し、オレフィン重合体を溶融させた後、10℃/分の降温速度で-20℃まで降温、続いて-20℃で5分間保持することで該オレフィン重合体を結晶化させ、その後、-20℃から230℃まで10℃/分の昇温速度で昇温する際に観測される融点を測定した。
【0089】
H-NMRの測定~
合成した化合物の同定は、重水素化溶媒に溶解し、400MHz、H-NMR(ブルカーバイオスピン社製、(商品名)BRUKER ULTRASHIELD PLUSTM AVANCE III又はBRUKER AscendTM AVANCE III HD)測定により実施した。合成した化合物の同定は、重水素化溶媒に溶解し、400MHz、H-NMR(日本電子(株)製、(商品名)JNMGX400)測定により実施した。
【0090】
実施例1
下記反応スキームに準じ、N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-1)の製造を行った。
【0091】
【化22】
【0092】
300mLナスフラスコにPd(dba)(501mg,0.547mmol)、dppp(472mg,1.14mmol)、及びトルエン40mLを加えて80℃で10分間撹拌したところ、黄色の均一溶液となった。さらに2-ブロモピリジン(21.30g,135mmol)、ナトリウムtert-ブトキシド(以下、NaOBuと記す場合もある。)(15.00g,156mmol)、トルエン100mL及び1,8-ジアミノナフタレン(8.91g,56.3mmol)を加えて18時間還流した。得られたスラリーを水浴で冷却しながら、4N塩酸75mLを加えて1時間撹拌した。更にヘキサン140mL及びジエチルアミン30.4g(416mmol)を加えて室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ別し、トルエン洗浄(10mL×2)、水洗浄(20mL×3)を行い、減圧下で乾燥することにより、灰白色固体としてN,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-1)を13.83g(44.2mmol)得た。収率78%。
【0093】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:8.49(brs,2H),8.14(ddd,J=5.0,2.0,1.0Hz,2H),7.85(dd,J=7.5,1.0Hz,2H),7.66(dd,J=8.3,1.0Hz,2H),7.46(dd,J=8.3,7.5Hz,2H),7.29(ddd,J=8.3,7.2,2.0Hz,2H),6.64(ddd,J=7.2,5.0,1.0Hz,2H),6.41(d,J=8.3Hz,2H)。
【0094】
実施例2
下記反応スキームに準じ、N,N’-ビス(6-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-2)の合成を行った。
【0095】
【化23】
【0096】
100mLナスフラスコにPd(dba)(198mg,0.216mmol)、dppp(184mg,0.447mmol)、及びトルエン10mLを加えて80℃で10分間撹拌したところ、黄色の均一溶液となった。さらに2-ブロモ-6-メトキシピリジン(8.11g,43.1mmol)、NaOBu(5.37g,55.9mmol)、トルエン45mL及び1,8-ジアミノナフタレン(3.40g,21.5mmol)を加えて12時間還流した。得られたスラリーを水浴で冷却しながら、4N塩酸36mLを加えて1時間撹拌した。更にヘキサン100mL及びジエチルアミン15mLを加えて室温で1時間撹拌した。有機層を減圧乾固し、残った固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、N,N’-ビス(6-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-2)を4.45g(11.9mmol)得た。収率55%。
【0097】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:8.24(brs,2H),7.85(d,J=7.0Hz,2H),7.64(d,J=7.2Hz,2H),7.44(dd,J=7.9,7.8Hz,2H),7.23(d,J=7.9Hz,2H),6.14(d,J=7.7Hz,2H),5.99(d,J=7.8Hz,2H),3.89(s,6H)。
【0098】
実施例3
下記反応スキームに準じ、N,N’-ビス(3-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-5)の合成を行った。
【0099】
【化24】
【0100】
100mLナスフラスコにPd(dba)(193mg,0.211mmol)、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチルのラセミ体(以下、rac-BINAPと記す場合もある。)(277mg,0.445mmol)、及びトルエン10mLを加えて80℃で5分間撹拌したところ、黄色の均一溶液となった。さらに2-ブロモ-3-メトキシピリジン(8.20g,43.6mmol)、NaOBu(5.84g,60.8mmol)、トルエン60mL及び1,8-ジアミノナフタレン(3.45g,21.8mmol)を加えて21時間還流した。得られたスラリーを水浴で冷却しながら、4N塩酸36mLを加えて1時間撹拌した。更にヘキサン100mL及びジエチルアミン15mLを加えて室温で1時間撹拌した。有機層を減圧乾固し、残った固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製することにより、N,N’-ビス(3-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-5)を7.15g(11.9mmol)得た。収率88%。
【0101】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:8.65(brs,2H),8.15(d,J=7.5Hz,2H),7.79(dd,J=5.1,1.1Hz,2H),7.59(dd,J=8.1,1.1Hz,2H),7.43(dd,J=7.9,7.8Hz,2H),6.83(dd,J=7.8,1.4Hz,2H),6.67(dd,J=7.8,5.1Hz,2H),3.68(s,6H)。
【0102】
実施例4
下記反応スキームに準じ、N,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-34)の合成を行った。
【0103】
【化25】
【0104】
500mLナスフラスコにPd(dba)(289mg,0.316mmol)、dppp(267mg,0.647mmol)、トルエン50mLを加えて80℃で10分間撹拌した。さらに2-クロロキノリン(10.4g,63.6mmol)、NaOBu(8.50g,88.4mmol)及びトルエン150mLを加え、更に1,8-ジアミノナフタレン(5.00g,31.6mmol)を加えて14時間還流した。得られたスラリーを水浴で冷却しながら、4N塩酸25mLを加えて1時間撹拌した。更にヘキサン200mL、ジエチルアミン7.40g(101mmol)を加えて室温で1時間撹拌し、析出した固体をろ別した。得られた固体をトルエン130mLに懸濁させ、30分加熱還流後、室温で3時間撹拌した。得られた固体をろ別し、減圧下で乾燥することにより、白色固体としてN,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1-34)を得た。収量8.02g、収率61%。
【0105】
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:7.85(d,J=8.3Hz,2H),7.72(d,J=7.2Hz,2H),7.54(m,4H),7.42(m,4H),7.23(d,J=7.1Hz,2H),7.11(d,J=7.4Hz,2H),6.76(brd,J=8.1Hz,2H)。
【0106】
実施例5
下記反応スキームに準じ、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]チタン(3-Ti-1)の製造を行った。
【0107】
【化26】
【0108】
THF5mLにテトラキス(ジメチルアミノ)チタン(以下、Ti(NMeと記す場合もある。)(1.99g,8.88mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(2.77g,8.87mmol)のTHF(20mL)溶液を投入した。室温で17時間撹拌した後、体積が約10mLになるまで減圧濃縮した。濃縮液にヘキサン25mLを加え、析出した固体をろ別した。得られた固体をヘキサン10mLで2回洗浄した後で減圧乾燥することにより、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]チタン(3-Ti-1)を黄褐色固体として得た。収量2.75g、収率69%。
【0109】
H-NMR(400MHz,C)δ:7.77(ddd,J=5.2,1.9,1.0Hz,2H),7.40(dd,J=7.5,1.7Hz,2H),7.31-7.25(m,4H),7.00(d,J=8.7Hz,2H),6.91(m,2H),6.19(m,2H),3.14(s,12H)。
【0110】
実施例6
下記反応スキームに準じ、[N,N’-ビス(6-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミド)チタン(3-Ti-2)の製造を行った。
【0111】
【化27】
【0112】
THF20mLにTi(NMe1.31g,5.85mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ビス(6-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(2.18g,5.85mmol)のTHF(20mL)溶液を投入した。室温で15時間撹拌した後、減圧下で乾固した。得られた固体をヘキサン10mLで2回洗浄した後で減圧乾燥することにより、[N,N’-ビス(6-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミド)チタン(3-Ti-2)を黄橙色固体として得た。収量2.95g、収率99%。
【0113】
H-NMR(400MHz,C)δ:7.39(d,J=7.2Hz,2H),7.27(dd,J=8.0,7.6Hz,2H),7.07(dd,J=8.0,7.9Hz,2H),6.99(dd,J=7.6,1.2Hz,2H),6.69(dd,J=8.0,0.6Hz,2H),5.84(dd,J=8.0,0.6Hz,2H),3.48(s,6H),3.08(s,12H)。
【0114】
実施例7
下記反応スキームに準じ、[N,N’-ビス(3-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミド)ビス(テトラヒドロフラン)チタン(3-Ti-5のthf配位錯体)の合成を行った。
【0115】
【化28】
【0116】
THF20mLにTi(NMe(1.25g,5.57mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ビス(3-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1.87g,5.02mmol)のTHF(20mL)溶液を投入した。室温で16時間撹拌した後、減圧下で乾固した。得られた固体をあらためてTHF20mLに溶かし、撹拌しながらヘキサン25mLを加えて14時間室温で撹拌した。析出した固体をろ別してヘキサン10mLで2回洗浄した後、減圧乾燥することにより、[N,N’-ビス(3-メトキシピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミド)ビス(テトラヒドロフラン)チタン(3-Ti-5のthf配位錯体)を黄橙色固体として得た。収量2.69g、収率88%。
【0117】
H-NMR(400MHz,C)δ:7.71(d,J=4.8Hz,2H),7.38(d,J=8.0Hz,2H),7.28(dd,J=7.9,7.6Hz,2H),6.58(d,J=7.9Hz,2H),6.52(dd,J=7.9,1.4Hz,2H),6.37(dd,J=7.9,4.8Hz,2H),3.58(m,8H),3.12(s,6H),3.02(s,12H)、1.41(m,8H)。
【0118】
実施例8
下記反応スキームに準じ、N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)-N,N’-ビス(トリメチルシリル)ナフタレン-1,8-ジアミンの合成を行った。
【0119】
【化29】
【0120】
N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(2.43g,7.78mmol)をTHF30mLに懸濁させ、ドライアイスメタノール浴で冷却し、2.67MのBuLiヘキサン溶液6.0mLを加えた。室温で15時間撹拌後、ドライアイスメタノール浴で冷却し、クロロトリメチルシラン1.80g(16.6mmol)を加えて室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、残渣にトルエンを加えて可溶成分を抽出した。可溶成分からトルエンを減圧留去することにより、白色固体としてN,N’-ジ(ピリジン-2-イル)-N,N’-ビス(トリメチルシリル)ナフタレン-1,8-ジアミンを得た。収量3.48g、収率98%。
【0121】
H-NMR(400MHz,C)δ:8.16(ddd,J=4.9,2.0,0.9Hz,2H),7.62(dd,J=8.1,1.5Hz,2H),7.15-7.17(重溶媒のシグナルと重複),7.10(dd,J=7.2,1.5Hz,2H),6.80(ddd,J=9.2,7.2,2.0Hz,2H),6.30(ddd,J=7.2,4.9,0.9Hz,2H),5.79(d,J=8.4Hz,2H),0.15(s,18H)。
【0122】
実施例9
下記反応スキームに準じ、ジクロロ[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム(3-Zr-33のthf配位錯体)の合成を行った。
【0123】
【化30】
【0124】
THF10mLにN,N’-ジ(ピリジン-2-イル)-N,N’-ビス(トリメチルシリル)ナフタレン-1,8-ジアミンを2.53g(5.40mmol)溶かした(溶液A)。別の容器にZrCl1.27g(5.44mmol)をトルエン5mLに懸濁させ、ドライアイスメタノール浴にてTHF5mLをゆっくり投入し、室温まで徐々に温めることにより白色スラリーを得た(スラリーB)。ドライアイスメタノール浴にて冷却しながらスラリーBに溶液Aを滴下投入した後、室温で14時間撹拌した。生成したスラリーをろ過し、得られた固体をヘキサン10mLで洗浄して減圧乾燥することにより、ジクロロ[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム(3-Zr-33のthf配位錯体)を黄褐色固体として得た。収量2.54g、収率76%。
【0125】
H-NMR(400MHz,C)δ:8.58(ddd,J=5.3,2.0,1.0Hz,2H),7.41-7.31(m,4H),7.08-6.96(m,4H),6.90(m,2H),6.05(m,2H),3.58(m,8H),1.41(m,8H)。
【0126】
実施例10
下記反応スキームに準じ、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミン)ハフニウム(3-Hf-1のジメチルアミン配位錯体)の合成を行った。
【0127】
【化31】
【0128】
トルエン25mLにテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(以下、Hf(NMeと記す場合もある。)1.04g(2.94mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(918mg,2.94mmol)を投入した。室温で14時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去して約10mLまで濃縮後、ヘキサン10mLを加え室温で1時間撹拌した。析出した固体をろ別し、減圧下で乾燥することにより、黄色固体としてビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミン)ハフニウム(3-Hf-1のジメチルアミン配位錯体)を得た。収量1.28g、収率81%。
【0129】
H-NMR(400MHz,C)δ:8.10(ddd,J=5.4,1.9,0.9Hz,2H),7.40-7.31(m,6H),7.19(ddd,J=8.9,0.9,0.9Hz,2H),6.92(ddd,J=8.9,7.0,1.9Hz,2H),6.10(ddd,J=6.4,5.4,0.9Hz,2H),3.30(s,12H),1.89(brs,12H)。
【0130】
実施例11
下記反応スキームに準じ、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]チタン(3-Ti-65)の合成を行った。
【0131】
【化32】
【0132】
トルエン25mLにTi(NMe634mg(2.83mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1.16g,2.81mmol)を投入した。室温で14時間撹拌した後、80℃で1時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去して約10mLまで濃縮後、ヘキサン10mLを加え室温で1時間撹拌した。得られた固体をろ別し、減圧下で乾燥することにより、赤橙色固体としてビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]チタン(3-Ti-65)を得た。収量1.07g、収率70%。
【0133】
H-NMR(400MHz,C)δ:7.60(m,2H),7.44(m,2H),7.31-7.20(m,4H),7.15-7.08(m,2H),7.00(dd,J=7.6,1.0Hz,1H),6.90(ddd,J=7.5,7.4,1.0Hz,1H),6.85(d,J=9.2Hz,1H),6.81-6.76(m,3H),6.70(d,J=9.2Hz,1H),6.59(ddd,J=7.4,7.3,1.0Hz,1H),3.31(s,6H),2.17(s,6H)。
【0134】
実施例12
下記反応スキームに準じ、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ハフニウム(3-Hf-65)の合成を行った。
【0135】
【化33】
【0136】
トルエン30mLにHf(NMe1.57g(4.42mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1.82g,4.41mmol)を投入した。室温で14時間撹拌した後、80℃で2時間撹拌した。減圧下で溶媒を留去して約10mLまで濃縮後、ヘキサン10mLを加え室温で1時間撹拌した。得られた固体をろ別し、減圧下で乾燥することにより、赤橙色固体としてビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ハフニウム(3-Hf-65)を得た。収量2.10g、収率70%。
【0137】
H-NMR(400MHz,C)δ:7.95(d,J=8.4Hz,2H),7.44(m,4H),7.28-7.18(m,8H),7.15(m,一部重溶媒のシグナルと重複),6.98(ddd,J=7.4,7.4,1.0Hz,2H),3.00(s,12H)。
【0138】
実施例13
下記反応スキームに準じ、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ジルコニウム(3-Zr-1)の合成を行った。
【0139】
【化34】
【0140】
トルエン25mLにテトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(以下、Zr(NMeと記す場合もある。)947mg(3.54mmol)を溶かし、ドライアイスメタノール浴で冷やしながらN,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミン(1.10g,3.52mmol)を投入した。室温で16時間撹拌した後、減圧下で溶媒を留去した。あらためてトルエン30mLを加え、セライトろ過することにより不溶物を除去した。ろ液を減圧乾固することにより、暗黄色固体としてビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ジルコニウム(3-Zr-1)を得た。収量1.04g、収率60%。
【0141】
H-NMR(400MHz,C)δ:8.03(ddd,J=5.4,2.0,1.0Hz,2H),7.41(dd,J=7.3,2.0Hz,2H),7.37-7.30(m,4H),7.20(d,J=8.9Hz,2H),6.90(ddd,J=8.9,7.0,2.0Hz,2H),6.08(m,2H),3.19(s,12H)。
【0142】
実施例14
(1)オレフィン重合体製造用触媒の調製
300mL三口フラスコに、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]チタン(0.15g)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.09g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及びヘキサン(100mL)を加えて室温で撹拌し、別途300mL三口フラスコで調製した固体メチルアルミノオキサンのヘキサン/オクタン溶液(37.5g、Al濃度:12.1重量%、東ソー・ファインケム社製)のヘキサン(100mL)希釈品を投入し、室温で2時間撹拌し、オレフィン重合体製造用触媒を得た。
【0143】
(2)エチレンの重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:5μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(11g)を得た。重合活性:2200000g/molTi原子。その他分析値等を表1に示す。
【0144】
実施例15
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び実施例14の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:10μmol相当)を順に加え、90℃に昇温後、撹拌しながら1-ブテン(11g)をエチレンで圧入し、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。未反応のエチレン及び1-ブテンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでエチレン-1-ブテン共重合体(9g)を得た。重合活性:900000g/molTi原子。その他分析値等を表1に示す。
【0145】
実施例16
(1)オレフィン重合体製造用触媒の調製
300mL三口フラスコに、ジクロロ[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム(0.15g)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.96g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及びヘキサン(100mL)を加えて室温で撹拌し、別途300mL三口フラスコで調製した固体メチルアルミノオキサンのヘキサン/オクタン溶液(27.1g、Al濃度:12.1重量%、東ソー・ファインケム社製)のヘキサン(100mL)希釈品を投入し、室温で17時間撹拌し、オレフィン重合体製造用触媒を得た。
【0146】
(2)エチレンの重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:10μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(18g)を得た。重合活性:1800000g/molZr原子。その他分析値等を表1に示す。
【0147】
実施例17
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び実施例16の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:10μmol相当)を順に加え、90℃に昇温後、撹拌しながら1-ブテン(11g)をエチレンで圧入し、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。未反応のエチレン及び1-ブテンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでエチレン-1-ブテン共重合体(16g)を得た。重合活性:1600000g/molZr原子。その他分析値等を表1に示す。
【0148】
実施例18
(1)オレフィン重合体製造用触媒の調製
500mL三口フラスコに、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ジルコニウム(0.5g)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(4.04g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及びトルエン(10mL)を加えて室温で撹拌し、別途500mL三口フラスコで調製した変性ポリメチルアルミノオキサンのトルエン溶液(111g、Al濃度:12.1重量%、東ソー・ファインケム社製、商品名:TMAO-341)のトルエン(100mL)希釈品を投入し、室温で17時間撹拌し、オレフィン重合体製造用触媒を得た。
【0149】
(2)エチレンの重合
2Lオートクレーブにトルエン(1L)及び(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:114μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう90分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(28g)を得た。重合活性:250000g/molZr原子。その他分析値等を表1に示す。
【0150】
実施例19
2Lオートクレーブにトルエン(1L)及び実施例18の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:201μmol相当)を順に加え、90℃に昇温後、撹拌しながら1-ブテン(11g)をエチレンで圧入し、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう90分間、連続的に供給した。未反応のエチレン及び1-ブテンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでエチレン-1-ブテン共重合体(38g)を得た。重合活性:190000g/molZr原子。その他分析値等を表1に示す。
【0151】
実施例20
(1)オレフィン重合体製造用触媒の調製
300mL三口フラスコに、ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミン)ハフニウム(0.15g)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(0.72g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)、及びヘキサン(100mL)を加えて室温で撹拌し、別途300mL三口フラスコで調製した固体メチルアルミノオキサンのヘキサン/オクタン溶液(25.1g、Al濃度:12.1重量%、東ソー・ファインケム社製)のヘキサン(100mL)希釈品を投入し、室温で2時間撹拌し、オレフィン重合体製造用触媒を得た。
【0152】
(2)エチレンの重合
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:50μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(11g)を得た。重合活性:160000g/molHf原子。その他分析値等を表1に示す。
【0153】
実施例21
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液(1.25g、アルミニウム化合物濃度:20重量%、東ソー・ファインケム社製)及び実施例20の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:50μmol相当)を順に加え、90℃に昇温後、撹拌しながら1-ブテン(11g)をエチレンで圧入し、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう120分間、連続的に供給した。未反応のエチレン及び1-ブテンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでエチレン-1-ブテン共重合体(9g)を得た。重合活性:180000g/molHf原子。DSCの測定から92℃の低融点成分を含む、2つの融点が観測され、単一の錯体により複数の組成を有するポリエチレンが得られた。その他分析値等を表1に示す。
【0154】
実施例22~23
ビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(ピリジン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]ビス(ジメチルアミン)ハフニウムをビス(ジメチルアミド)[N,N’-ジ(キノリン-2-イル)ナフタレン-1,8-ジアミド]チタンに変更した以外、実施例20と同様の方法でオレフィン重合体製造用触媒の調製、重合評価を行った。結果を表1に示す。
【0155】
【表1】
【0156】

実施例24
2Lオートクレーブにヘキサン(1.2L)、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(5mL、Zn濃度:1.0mol/L、東京化成工業株式会社製)及び実施例15の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:10μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう60分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(3g)を得た。重合活性:300000g/molTi原子。その他分析値等を表2に示す。
【0157】
実施例25
2Lオートクレーブにトルエン(1L)、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(5mL、Zn濃度:1.0mol/L、東京化成工業株式会社製)及び実施例18の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:53μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう90分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(10g)を得た。重合活性:190000g/molZr原子。その他分析値等を表2に示す。
【0158】
実施例26
2Lオートクレーブにトルエン(1L)、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(27mL、Zn濃度:1.0mol/L、東京化成工業株式会社製)及び実施例19の(1)で調製したオレフィン重合体製造用触媒(金属錯体:53μmol相当)を順に加え、90℃で撹拌しながら、エチレンをエチレン分圧が0.87MPaとなるよう90分間、連続的に供給した。未反応のエチレンを脱圧し、得られたスラリーをろ別、乾燥することでポリエチレン(8g)を得た。重合活性:150000g/molZr原子。その他分析値等を下表2に示す。
【0159】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0160】
合成が容易で、分子設計の自由度が高くオレフィン重合体の製造用触媒として有用な新規錯体、その支持配位子、該新規錯体を含むオレフィン重合体製造用触媒、及び該触媒を用いたオレフィン重合体の製造方法を提供する。