(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240308BHJP
C08L 23/16 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/16
(21)【出願番号】P 2020049393
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019067277
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】荒川 雅幸
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051626(JP,A)
【文献】特開2013-256597(JP,A)
【文献】特開2007-297505(JP,A)
【文献】特開2016-204649(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025864(WO,A1)
【文献】特開2011-111587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 255/02
C08F 2/44
C08L 23/10
C08L 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)固体触媒成分を含む触媒
(ただしメタロセン触媒を除く)の存在下、モノマーを重合して下記成分(I)を得る工程、
(2)成分(I)の存在下、モノマーを重合して下記成分(II)を得て、揮発成分、成分(I)、及び成分(II)を含む粒子を生成する工程、及び、
(3)前記粒子を不活性ガス含有流と接触させて、前記粒子から前記揮発成分を除去する工程を含む、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法であって、
前記粒子は、成分(I)を20~70質量%含み、成分(II)を30~80質量%含み、
前記不活性ガス含有流と接触する際の前記粒子の温度をT[℃]、前記粒子と前記不活性ガス含有流との接触時間をt[h]、(1)工程の開始時点での前記固体触媒成分の中位径をd[μm]、前記固体触媒成分1gあたりの前記粒子の質量[g]をP[g/g]、及び、前記粒子中の成分(II)の含有量をC[質量%]としたときに、下記(1)式を満たす、方法。
19.5≦T
1.12・t
0.17・(C/100)
0.61/(d・(0.85・P)
1/3)
0.13≦51.4…(1)
ただし、Tは60~110℃であり、tは0.5~5hである。
成分(I):下記成分(I-1)、及び/又は、下記成分(I-2)
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(I-2):プロピレンに由来する構造単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位と、を含有する共重合体であって、該共重合体の質量に占める前記少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合が15質量%未満であるプロピレン共重合体。
成分(II):プロピレンに由来する構造単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位と、を含有する共重合体であって、該共重合体の質量に占める前記少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合が15~80質量%であるプロピレン共重合体。
【請求項2】
前記粒子と前記不活性ガス含有流とを向流接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、下記(2)式を満たす、請求項1又は2に記載の方法。
26.5≦T
1.12・t
0.17・(C/100)
0.61/(d・(0.85・P)
1/3)
0.13…(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、プロピレンの単独重合の後に、エチレン及びプロピレンの共重合を行うことなどによりヘテロファジックプロピレン重合材料粒子を製造する方法が知られている。得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子には、モノマー、或いは、溶媒などの揮発成分が含まれるため、特許文献1及び2には、不活性ガスを粒子に接触させて、粒子から揮発成分を除去する乾燥方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-256897号公報
【文献】特開2015-71661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、揮発成分を除去した後に、粒子の粘着性が高くなって、サイロでの閉塞等のハンドリング性が低下する場合があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、揮発成分を十分に除去でき、かつ、揮発成分の除去後の粒子の粘着性の増加を抑制できる、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法は、
(1)固体触媒成分を含む触媒の存在下、モノマーを重合して下記成分(I)を得る工程、
(2)成分(I)の存在下、モノマーを重合して下記成分(II)を得て、揮発成分、成分(I)、及び成分(II)を含む粒子を生成する工程、及び、
(3)前記粒子を不活性ガス含有流と接触させて、前記粒子から前記揮発成分を除去する工程を含む。
【0007】
前記粒子は、成分(I)を20~70質量%含み、成分(II)を30~80質量%含む。
【0008】
前記不活性ガス含有流と接触する際の前記粒子の温度をT[℃]、前記粒子と前記不活性ガス含有流との接触時間をt[h]、(1)工程の開始時点での前記固体触媒成分の中位径をd[μm]、前記固体触媒成分1gあたりの前記粒子の質量[g]をP[g/g]、及び、前記粒子中の成分(II)の含有量をC[質量%]としたときに、下記(1)式を満たす。
19.5≦T1.12・t0.17・(C/100)0.61/(d・(0.85・P)1/3)0.13≦51.4…(1)
【0009】
成分は以下の通りである。
成分(I):下記成分(I-1)、及び/又は、下記成分(I-2)
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(I-2):プロピレンに由来する構造単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位と、を含有する共重合体であって、該共重合体の質量に占める前記少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合が15質量%未満であるプロピレン共重合体。
成分(II):プロピレンに由来する構造単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位と、を含有する共重合体であって、該共重合体の質量に占める前記少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合が15~80質量%であるプロピレン共重合体。
【0010】
また、上記方法では、前記粒子と前記不活性ガス含有流とを向流接触させることができる。
【0011】
また、上記方法では、さらに、下記(2)式を満たすことができる。
26.5≦T1.12・t0.17・(C/100)0.61/(d・(0.85・P)1/3)0.13…(2)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、揮発成分を十分に除去でき、かつ、揮発成分の除去後の粒子の粘着性の増加を抑制できる、粒子の乾燥方法等が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態で説明する乾燥装置100の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施例で使用した乾燥装置200の概略断面図である。
【
図3】
図3は、実施例で使用した粘着性評価装置300の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について説明する。
(乾燥の対象となるヘテロファジックプロピレン重合材料粒子)
本実施形態において乾燥の対象となるヘテロファジックプロピレン重合材料粒子は、成分(I)、少なくとも一種の成分(II)、及び、揮発成分を含む。
【0015】
(成分(I))
成分(I)は、成分(I-1)、及び/又は、成分(I-2)である。
【0016】
(成分(I-1))
成分(I-1)とは、プロピレンに由来する構造単位のみからなるプロピレンの単独重合体である。
【0017】
(成分(I-2))
成分(I-2)は、プロピレンに由来する構造単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位と、を含有する共重合体である。成分(I-2)の質量に占める、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合は15質量%未満である。
成分(I-2)の質量に占める、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合は、0.01質量%以上であることができ、好ましくは0.01質量%以上、12質量%以下、より好ましくは3質量%以上、10質量%以下である。一態様として、上記質量割合は、好ましくは1質量%以上、10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上、3質量%以下である。成分(I-2)の質量に占める、プロピレンに由来する構造単位の含有量は、85質量%以上であることができ、90質量%以上であることもできる。
【0018】
(成分(II))
成分(II)は、プロピレンに由来する構造単位と、エチレンおよび炭素原子数4~12のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位と、を含有する共重合体である。成分(II)の質量に占める少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合は15~80質量%である。
成分(II)の質量に占める少なくとも一種のオレフィンに由来する構造単位の質量割合は、好ましくは20~70質量%、より好ましくは25~60質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%であり、さらに好ましくは40~50質量%である。成分(II)の質量に占めるプロピレンに由来する構造単位の質量割合は、20質量%以上、85質量%以下であることができる。
【0019】
成分(I-2)および成分(II)の例は、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-1-デセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-デセン共重合体であり、好ましくは、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体である。
【0020】
成分(I)の極限粘度は、0.1~10dL/gであることが好ましく、0.6~3dL/gであることがより好ましく、0.8~1.5dL/gであることがさらに好ましい。
【0021】
成分(II)の極限粘度は、0.1~10dL/gであることが好ましく、1~5dL/gであることがより好ましく、1.5~4dL/gであることがさらに好ましく、2~3.5dL/gであることがさらに好ましく、2~3dL/gであることがさらに好ましい。
【0022】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料において、ヘテロファジックプロピレン重合材料の質量に占める全成分(I)の質量割合は、70質量%以下であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。この質量割合の下限は、20質量%であり、好ましくは35質量%である。
【0023】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料において、ヘテロファジックプロピレン重合材料の質量に占める全成分(II)の質量割合は、30質量%以上であり、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。この質量割合の上限は、80質量%であり、好ましくは65質量%である。
【0024】
本実施形態において、成分(I-2)及び成分(II)に用いられる、炭素原子数4~12のα-オレフィンの例は、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテンであり、好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、より好ましくは1-ブテンである。
【0025】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の具体例は、
(i)成分(I-1)と成分(II)とを含むプロピレン重合材料、
(ii)成分(I-2)と成分(II)とを含むプロピレン重合材料、及び
(iii)成分(I-1)と成分(I-2)と成分(II)とを含むプロピレン重合材料である。
【0026】
本実施形態に係るヘテロファジックプロピレン重合材料としては、(ポリプロピレン)-(エチレン-プロピレン共重合体:成分(II))ヘテロファジック重合材料、(プロピレン-エチレン共重合体:成分(I-2))-(エチレン-プロピレン共重合体:成分(II))ヘテロファジック重合材料、(ポリプロピレン)-(エチレン-プロピレン共重合体:成分(I-2))-(エチレン-プロピレン共重合体:成分(II))ヘテロファジック重合材料等が挙げられる。
【0027】
(揮発成分)
揮発成分とは、上記の成分(I)及び成分(II)のモノマー、オリゴマー、並びに/又は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の重合等の製造過程で用いられる溶媒(モノマー以外)である。
【0028】
モノマーの例は、プロピレン、及び、上記のα-オレフィンである。
【0029】
モノマー以外の溶媒の例は、ブタン、ヘキサンである。
【0030】
乾燥前のヘテロファジックプロピレン重合材料粒子中の揮発成分の含有量は、1000~10000質量ppmであることができる。
乾燥後のヘテロファジックプロピレン重合材料粒子中の揮発成分の含有量は、100質量ppm以下であることができる。
【0031】
ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の平均粒子径に特に限定はないが、1000~5000μmとすることができ、好ましくは1500~4000μmであり、より好ましくは2000~3500μmであり、さらに好ましくは2000~3000μmである。ここで、平均粒子径とは、レーザ回折式乾式粒度分布測定装置により得られる体積基準の粒度分布のD50である。
【0032】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法)
ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の製造方法の一例を説明する。
この方法は、工程(1)~工程(3)を含む。以下、各工程について具体的に説明する。
【0033】
〔工程(1)〕
本実施形態に係る工程(1)は、オレフィン重合用触媒の存在下、プロピレン、及び必要に応じて添加されるα-オレフィンを含む単量体を重合し、上述した成分(I)、すなわち、成分(I-1)及び/または成分(I-2)を製造する工程である。オレフィン重合用触媒としては、チーグラー・ナッタ型触媒やメタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくは、チーグラー・ナッタ型触媒である。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン原子とマグネシウム原子とを含む固体触媒成分を含む触媒が挙げられる。前記固体触媒成分は、さらにハロゲン原子を含むことが好ましい。前記固体触媒成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物とを接触させることにより得ることができる。前記チタン化合物は、ハロゲン化チタン化合物が好ましい。
【0034】
チーグラー・ナッタ型触媒は、前記固体触媒成分以外に、有機アルミニウム化合物および/または電子供与性化合物を含んでもよい。チーグラー・ナッタ型触媒は、前記固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを含む触媒、前記固体触媒成分と有機アルミニウム化合物と電子供与性化合物とを含む触媒が好ましい。
【0035】
本明細書において、工程(1)の開始時における固体触媒成分の中位径(D50)は、ISO13320:2009に従い、レーザ回折・散乱法により求められる体積基準の粒度分布における中位径(D50)である。工程(1)の開始時における固体触媒成分の中位径は、好ましくは40~80μmであり、より好ましくは50~70μmである。
固体触媒成分の中位径は、マグネシウム化合物の粒子径を変更する等により調整できる。
【0036】
本実施形態において、成分(I-1)は、プロピレンを単独重合することによって得ることができる。成分(I-2)は、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンとを共重合することによって得ることができる。その際、重合方法としては、例えばバルク重合を採用することができる。バルク重合とは、プロピレン単量体を重合溶媒とし、この重合溶媒中にオレフィン重合用触媒を分散させて、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない状態で重合を行う方法である。その際、重合は、重合溶媒が液状に保たれ、生成する重合体が重合溶媒に溶解しない温度および圧力で行う。重合温度は、通常、30~100℃であり、好ましくは50~80℃である。重合圧力は、通常、常圧~10MPaであり、好ましくは0.5~5MPaGである。
【0037】
バルク重合には、公知の重合反応装置、例えば、特公昭41-12916号公報、特公昭46-11670号公報、および特公昭47-42379号公報に記載の撹梓槽型反応装置やループ型反応装置等を用いることができる。
また、重合体の分子量を調整するために、例えば、水素等の連鎖移動剤を用いてもよい。
【0038】
本実施形態において、成分(I-1)及び/または成分(I-2)は、同一の反応装置内で逐次重合により製造してもよく、直列に連結された複数の反応装置を有する多段重合反応装置において連続的に逐次重合により製造してもよい。
工程(1)では、バルク重合の後に、さらに気相重合を行って、成分(I)を製造してもよい。
工程(1)の初期段階において、オレフィン重合用触媒に対して少量のオレフィンを接触させて成分(I-1)及び/または成分(I-2)を得る、いわゆる予備重合工程を行ってもよい。工程(1)において予備重合工程を行う場合、固体触媒成分の中位径とは、予備重合を行う前の固体触媒成分の粒径である。
【0039】
〔工程(2)〕
本実施形態に係る工程(2)は、工程(1)で得られた成分(I)、すなわち、成分(I-1)及び/または成分(I-2)の存在下、1以上の気相重合反応装置を用いて、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合し、上述した成分(II)を製造する工程である。これにより、成分(I)、成分(II)、及び、揮発成分を含むヘテロファジックプロピレン重合材料粒子が得られる。
【0040】
工程(2)では、気相重合反応装置に、工程(1)で得られた成分(I)の粒子を連続的に供給し、その成分(I)の存在下で、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとの共重合を、気相で行う。
【0041】
気相重合反応装置における重合温度は、通常、0~120℃であり、好ましくは20~100℃であり、より好ましくは40~100℃である。重合圧力は、気相重合反応装置内でオレフィンが気相として存在し得る範囲内であればよく、通常常圧~10MPaG、好ましくは0.2~8MPaG、より好ましくは0.5~5MPaGである。
【0042】
1以上、好ましくは2以上の気相重合反応装置を用いて、共重合を行うことができる。
気相重合反応装置には、公知の重合反応装置、例えば、特開昭58-201802号公報、特開昭590126406号公報、および特開平2-233708号公報等に記載の反応装置を用いることができる。
【0043】
工程(2)においても、粒子内の固体触媒成分を利用した重合が行われる。工程(2)の終了後に最終的に得られるヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量(工程(1)及び工程(2)での生産量)Pは、好ましくは、固体触媒成分1gあたり20000~90000g/gであり、より好ましくは、固体触媒成分1gあたり25000~70000g/gである。
【0044】
前記Pは、次の方法により調節することができる。工程(1)および/または工程(2)における滞留時間を長くすると、Pを大きくすることができる。工程(1)および/または工程(2)における重合温度を高くすると、Pを大きくすることができる。工程(1)および/または工程(2)における重合圧力を高くすると、Pを大きくすることができる。
【0045】
(工程(3):乾燥工程)
続いて、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の乾燥を行う。ここでは、成分(I)、成分(II)、及び、揮発成分を含むヘテロファジックプロピレン重合材料粒子を、不活性ガス含有流と接触させて、当該粒子から揮発成分を除去する。
【0046】
ここで、不活性ガス含有流と接触する際の粒子の温度をT[℃]、粒子と不活性ガス含有流との接触時間をt[h]、工程(1)の開始時における固体触媒成分の中位径をd[μm]、固体触媒成分の1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量(生産量)をP[g/g]、及び、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子中の成分(II)の含量をC[質量%]としたときに、下記(1)式を満たす。
19.5≦T1.12・t0.17・(C/100)0.61/(d・(0.85・P)1/3)0.13≦51.4…(1)
【0047】
さらに、本実施形態にかかる方法は、下記(2)式を満たすことができる。
26.5≦T1.12・t0.17・(C/100)0.61/(d・(0.85・P)1/3)0.13…(2)
【0048】
不活性ガスの例は、窒素、アルゴンである。不活性ガス含有流は、乾燥させるヘテロファジックプロピレン重合材料粒子中の揮発成分量に応じて、不活性ガス以外のガスを含有してもよい。不活性ガス以外のガスを含有する不活性ガス含有流としては、空気が挙げられる。不活性ガス含有流中の不活性ガスの体積分率は、75%以上であることが好適であり、78%以上であることが好適である。不活性ガス含有流中の不活性ガスの体積分率は100%であってもよい。
【0049】
温度T、接触時間t、工程(1)の開始時における固体触媒成分の中位径d、固体触媒成分1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量P、及び、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子中の成分(II)の含量Cは(1)式を満たす範囲で適宜設定できるが、温度Tの典型的な範囲は60~110℃であり、好ましくは60~90℃であり、接触時間tの典型的な範囲は0.5~5時間であり、好ましくは1~4.5時間であり、より好ましくは1.5~4.0時間である。中位径d、質量P、及び、含量Cは、上述した各範囲内において適宜設定できる。
【0050】
粒子の温度Tは、粒子が不活性ガス含有流と接触しているときの温度である。乾燥工程は、通常、後述の通り乾燥装置内において行われる。乾燥工程において、乾燥装置内の粒子の温度は、定常状態であれば、乾燥装置内の不活性ガス含有流の温度と同じとみなすことができるため、本明細書において、Tは、乾燥装置内に、少なくとも3以上の温度計を設置し、それらの温度計で測定された温度の平均値とする。
【0051】
Tは、粒子と接触させる不活性ガス含有流の温度を調整することにより、制御できる。
乾燥工程がバッチ式で行われる場合は、接触時間tは、粒子と不活性ガス含有流とが接触している時間である。乾燥工程が連続式で行われる場合、乾燥装置へ供給される粒子の供給速度と乾燥装置から排出される粒子の排出速度は等しい。乾燥工程が連続式で行われる場合、接触時間は、下記(10)式で定義される。
接触時間t(時間)=β/α・・・(10)
α:乾燥装置から排出される粒子の排出速度(kg/時間)
β:乾燥装置内で乾燥されている粒子の全質量(kg)
【0052】
粒子と、不活性ガス含有流との接触様式に限定はなく、粒子が静止した固定層に対して不活性ガス含有流を接触させてもよく、容器の頂部から容器内に連続的に粒子を供給しつつ容器の底部から粒子を連続的に抜き出すことにより、容器内で重力によって粒子を降下させる移動層を形成し、移動層に対して不活性ガス含有流を接触させてもよく、粒子を不活性ガス含有流で流動化させる流動層を形成してもよい。
中でも、粒子が下向きに移動する移動層を採用し、かつ、不活性ガス含有流を向流接触させる、すなわち、下向きの粒子の移動層に対して上向きに不活性ガス含有流を接触させることが好適である。
【0053】
具体的には、
図1のような乾燥装置100を用いて、乾燥を行うことができる。
この乾燥装置100は、ホッパー10、及び、ガス流入管20を主として備える。ホッパー10は、下方に向かうほど内径が小さくなるコーン部10aと、コーン部10aの上に接続された筒状部10bとを有している。ガス流入管20は、コーン部10aの外と中とを連通する。
【0054】
筒状部10bの上端はふさがれており、上部開口10tを有する。ホッパー10の上方には粒子ガス分離装置5が設けられており、ホッパー10の上部開口10tは、ラインL2を介して、粒子ガス分離装置5の下部開口5bに接続されている。
【0055】
粒子ガス分離装置5の側方入口5sには、粒子供給源PSがラインL1で接続されている。粒子ガス分離装置5の上部出口5tには、ラインL5が接続されている。ホッパー10のコーン部10aの底部出口10bbには、ラインL3が接続されている。
【0056】
ガス流入管20には、不活性ガス源IGがラインL4を介して接続されており、ラインL4には、ガスを加熱して一定の温度Tにする熱交換器40が設けられている。
【0057】
つぎに、具体的な乾燥方法について説明する。粒子供給源(例えば、上述の気相重合反応装置)PSからラインL1を介して粒子ガス分離装置5に粒子を供給する。粒子供給源PSが気相重合反応装置の場合、ラインL1を介して粒子とともに、未反応のモノマーガスが粒子ガス分離装置5に供給されるため、粒子ガス分離装置5にて、粒子とガスとを分離する。
【0058】
供給された粒子は、重力によりラインL2を介して、ホッパー10内に供給され、ホッパー10内に粒子層Paを形成する。さらに、ラインL3を介して、ホッパー10内の粒子を連続的に排出する。一方、ラインL4を介して、温度Tに調整された不活性ガスをガス流入管20を介してホッパー10内の粒子層Paに連続的に供給する。ホッパー10内の粒子層Paの上面の位置は、ガス流入管20の上端よりも十分上にする。
【0059】
ホッパー10内の粒子は、矢印Pのように上から下に向かって移動する一方、ガス流入管20から流入した不活性ガスはホッパー10内を矢印Gのように下から上に向かって移動し、粒子層Paの粒子とガスとが向流接触する。従って、効率よく粒子中の揮発成分を、ガス側に除去することが可能となる。
【0060】
揮発成分を含んだ不活性ガスは、ホッパー10の上端に設けられた排ガスラインL6を通して排出される。
【0061】
(作用)
本実施形態に係る乾燥方法によれば、乾燥条件が上記の(1)式を満たしているため、揮発成分を十分に除去でき、かつ、除去後の粒子の粘着性の増加を抑制できる。
【0062】
本発明は、上記実施形態に限定されず、様々な変形態様が可能である。例えば、乾燥装置は、上述の実施形態に限定されない。
【実施例】
【0063】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの製造〕
(オレフィン重合用固体触媒成分Eの合成)
撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた100mLのフラスコ内を窒素で置換した。
その後、該フラスコに、トルエン36.0mL、及び四塩化チタン22.5mLを供給し、撹拌した。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムエトキシド1.88gを30分おきに4回供給した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に供給した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを供給した。次いで、フラスコ内の温度を1.2K/分の速度で昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル3.15mLを供給し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内に供給した成分を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
【0064】
次に、洗浄後の固体にトルエン38.3mLを供給し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、及び2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.75mLを供給して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分Eを得た。この固体触媒成分Eについて、チタン原子含有量は2.47質量%であり、エトキシ基含有量は0.55質量%であり、内部電子供与体含有量は12.8質量%であり、またレーザ回折・散乱法による中位径は67.0μmであった。
【0065】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの製造)
(1-1a)予備重合
撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn-ヘキサン、トリエチルアルミニウム(以下、「TEA」と記載する。)20ミリモル/L、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン1.0ミリモル/Lを収容させた。その中に上述のようにして製造した固体触媒成分E 8g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン8g/Lを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン、固体触媒成分Eおよびプロピレンの量は、それぞれ、n-ヘキサン1Lあたりの量である。その後、予備重合スラリーを攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタンを加えて、0.055g/Lの予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0066】
(1-1b)本重合
スラリー重合リアクターと、多段気相重合リアクターと、2つの流動層型リアクターとが全て直列に接続された装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I-1)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程III-1および下記重合工程III-2においてエチレン-プロピレン共重合体である成分(II)を製造した。
【0067】
[重合工程I:スラリー重合リアクターによるプロピレン単独重合]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレン単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0068】
重合温度:50℃、
攪拌速度:150rpm、
プロピレン供給量に対する水素供給量:2.0NL/kg、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するTEAの供給量:5790ppm、 重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するtert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:177ppm、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対する予備重合触媒成分のスラリー中の固体触媒成分の供給量:0.00061g/g、
重合圧力:2.70MPa(ゲージ圧)。
【0069】
[重合工程II:多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを準備した。
【0070】
前記スラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0071】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にポリプロピレン粒子を溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0072】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレン単独重合をさらに行った。反応条件は以下の通りとした。
【0073】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.00MPa(ゲージ圧)
【0074】
多段気相重合リアクター内ガスの濃度比は、(水素/(水素+プロピレン))が6.9モル%であった。
【0075】
[重合工程III-1:流動層型リアクター(1)によるエチレン-プロピレン共重合] 前記多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型リアクター(1)に連続的に供給した。重合工程III-1の流動層型リアクター(1)は鉛直方向に1つの流動層の反応領域を有しており、前記多段気相重合リアクターから流動層型リアクター(1)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0076】
流動層型リアクター(1)にプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0077】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.96MPa(ゲージ圧)
【0078】
流動層型リアクター(1)内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が41.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.32モル%であった。
【0079】
[重合工程III-2:流動層型リアクター(2)によるエチレン-プロピレン共重合] 重合工程III-1の流動層型リアクター(1)から排出されるポリプロピレン粒子をさらに下流の流動層型リアクター(2)に連続的に供給した。重合工程III-2の流動層型リアクター(2)は鉛直方向に1つの流動層の反応領域を有しており、重合工程III-1の流動層型リアクター(1)から重合工程III-2の流動層型リアクター(2)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0080】
以下の条件以外は、上記重合工程III-1と同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aを得た。
重合温度:70℃、
重合圧力:1.92MPa(ゲージ圧)
【0081】
流動層型リアクター(2)内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が31.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が1.77モル%であった。
【0082】
固体触媒成分1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの質量Pは、68734g/gであった。
【0083】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの分析結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
ここで、[η]
Tはヘテロファジックプロピレン重合材料全体の極限粘度、(C’2)
Tはヘテロファジックプロピレン重合材料全体におけるエチレン単位含有量(質量%)、[η]
Iは成分(I-1)または成分(I-2)の極限粘度、[η]
IIは成分(II)の極限粘度、(C’2)
I-2は成分(I-2)におけるエチレン単位含有量(質量%)、(C’2)
IIは成分(II)におけるエチレン単位含有量(質量%)である。
【0085】
ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの平均粒子径は以下のようにして測定した。
ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの平均粒子径は、HELOSのレーザ回折式乾式粒度分布測定装置を用い、体積基準の粒度分布のD50を平均粒子径とした。
【0086】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料中の成分(II)の含量Cは、成分(I-1)または成分(I-2)の結晶融解熱量とヘテロファジックプロピレン重合材料全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示差走査型熱分析(DSC)により測定した。
C=100×{1-(ΔHf)T/(ΔHf)P}
(ΔHf)T:ヘテロファジックプロピレン重合材料全体の融解熱量(J/g)
(ΔHf)P:成分(I-1)または成分(I-2)の融解熱量(J/g)
【0087】
ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度[η]T(単位:dl/g)、および、成分(I-1)の極限粘度[η]I(単位:dl/g)を以下のようにして求めた。
所定の濃度となるように重合体を1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン溶媒に溶解させ、3種類の試料を調製した。それぞれの試料の重合体濃度は、0.1g/dl、0.2g/dlおよび0.5g/dlとした。温度135℃の条件下、これらの試料の還元粘度をウベローデ型粘度計を用いて測定した。「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年、共立出版会社刊)の第491頁に記載の計算法に従い、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿することによって極限粘度を求めた。
【0088】
ヘテロファジックプロピレン重合材料のエチレン単位含有量(C’2)T(単位:質量%)、および、成分(I-2)のエチレン単位含有量(C’2)I-2(単位:質量%)は以下のようにして求めた。
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店刊)の第619頁に記載のIRスペクトル測定に準拠し、IRスペクトル法によってエチレン単位含有量を求めた。なお、ここでいう「エチレン単位」とはエチレンに由来する構造単位を意味する。
【0089】
[η]II及び(C’2)IIは、ヘテロファジックプロピレン重合材料中の成分(II)の含量C、[η]T、(C’2)T、[η]I及び、(C’2)I-2から下式で求めた。
[η]II={100[η]T-[η]I(100-C)}/C
(C’2)II={100(C’2)T-(C’2)I-2・(100-C)}/C
なお、ヘテロファジックプロピレン重合材料が成分(I-2)を含まない場合は、(C’2)I-2が0であるとして計算する。
【0090】
予備重合前の固体触媒成分Eの中位径(D50)は以下のようにして求めた。
ISO13320:2009に従い、レーザ回折・散乱法により固体触媒成分の中位径を分析した。測定装置としてレーザ回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製「マスターサイザー3000」)を用い、屈折率はトルエンを1.49、固体触媒成分を1.53-0.1iとした。アルミナ等で予め水分除去しておいたトルエン溶媒を、開口部を窒素シールした分散装置(ハイドロMV)に投入して測定セルを含めた循環系内部を溶媒で満たした。撹拌速度は2,000rpmに設定し、かつ超音波分散処理せずに測定セル内の溶媒を循環させながら散乱強度3~10%となるように粉末試料を投入して粒度を測定した。得られた粒度体積基準分布図(チャート)より中位径(D50)を求めた。試料は大気および水分と接触しないように取扱い、前処理は実施しなかった。
【0091】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Bの製造〕
(1-1a)予備重合
撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn-ヘキサン、TEA20ミリモル/L、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン2.0ミリモル/Lを収容させた。その中に、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aの製造に用いたものと同じ固体触媒成分E 5g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン26g/Lを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタンを加えて、0.028g/Lの予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0092】
(1-1b)本重合
スラリー重合リアクターと、多段気相重合リアクターと、2つの流動層型リアクターとが全てを直列に接続された装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I-1)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程III-1および下記重合工程III-2においてエチレン-プロピレン共重合体である成分(II)を製造した。
【0093】
[重合工程I:スラリー重合リアクターによるプロピレン単独重合]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレン単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0094】
重合温度:50℃、
攪拌速度:150rpm、
プロピレン供給量に対する水素供給量:2.8NL/kg、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するTEAの供給量:8260ppm、 重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するtert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:2680ppm、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対する予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.00070g/g、
重合圧力:2.68MPa(ゲージ圧)。
【0095】
[重合工程II:多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを準備した。
【0096】
前記スラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0097】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にポリプロピレン粒子を溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0098】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレン単独重合をさらに行った。反応条件は以下の通りとした。
【0099】
重合温度:70℃、
重合圧力:2.00MPa(ゲージ圧)
【0100】
多段気相重合リアクター内ガスの濃度比は、(水素/(水素+プロピレン))が10.1モル%であった。
【0101】
[重合工程III-1:流動層型リアクター(1)によるエチレン-プロピレン共重合] 前記多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型リアクター(1)に連続的に供給した。重合工程III-1の流動層型リアクター(1)は鉛直方向に1つの流動層の反応領域を有しており、前記多段気相重合リアクターから流動層型リアクター(1)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0102】
流動層型リアクター(1)にプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0103】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.97MPa(ゲージ圧)
【0104】
流動層型リアクター(1)内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が39.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.58モル%であった。
【0105】
[重合工程III-2:流動層型リアクター(2)によるエチレン-プロピレン共重合] 重合工程III-1の流動層型リアクター(1)から排出されるポリプロピレン粒子をさらに下流の流動層型リアクター(2)に連続的に供給した。重合工程III-2の流動層型リアクター(2)は鉛直方向に1つの流動層の反応領域を有しており、重合工程III-1の流動層型リアクター(1)から重合工程III-2の流動層型リアクター(2)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
【0106】
以下の条件以外は、上記重合工程III-1と同様の方法でプロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Bを得た。
重合温度:70℃、
重合圧力:1.93MPa(ゲージ圧)
【0107】
流動層型リアクター(2)内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が39.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.52モル%であった。
【0108】
揮発分除去性および排出性評価にあたり、得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Bを篩い径2360mmのステンレス製の篩い(JIS STANDRAD SIEVE、MANABE KOGYO)を用いて篩った。篩い後に得られた篩い通過品の分析結果を表1に示す。分析方法は、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aと同じである。
【0109】
固体触媒成分1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量Pは、39209g/gであった。
【0110】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Cの製造〕
(オレフィン重合用固体の合成)
内容積200Lの攪拌機付きのSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モルおよびテトラブトキシシラン98.9モルを供給し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.6kg/Lになるようにトルエンを抜き出した後、n-ブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加えた後、更にフタル酸クロライドを20.8モル加え110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃のトルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n-ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、95℃のトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、n-ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6kg/Lに調整した後、n-ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、更にヘキサン90Lで3回洗浄した後、減圧乾燥して固体触媒成分F 11.0kgを得た。固体触媒成分Fは、チタン原子1.89質量%、マグネシウム原子20質量%、フタル酸エステル8.6質量%、エトキシ基0.05質量%、ブトキシ基0.21質量%を含有した微紛のない良好な粒子性状を有していた。この固体触媒成分Fのレーザ回折・散乱法による中位径は29.0μmであった。
【0111】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Cの製造)
(1-1a)予備重合
撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理した液状ブタン、TEA25ミリモル/L、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシラン3.3ミリモル/Lを収容させた。その中に固体触媒成分F 15g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を約25℃に保ちながらプロピレン53g/Lを約10分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタンを加えて、3.8g/Lの予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0112】
(1-1b)本重合
スラリー重合リアクターと、流動層型リアクターとが直列に接続された装置において、下記重合工程I、下記重合工程II-1および下記重合工程II-2において成分(I-1)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程IIIにおいてエチレン-プロピレン共重合体である成分(II)を製造した。
【0113】
[重合工程I:スラリー重合リアクターによるプロピレン単独重合]
SUS304製ループタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレン単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0114】
重合温度:70℃、
プロピレン供給量に対する水素供給量:4.2NL/kg、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するTEAの供給量:330ppm、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するtert-ブチルノルマルプロピルジメトキシシランの供給量:90ppm、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対する予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.00007g/g、
重合圧力:4.50MPa(ゲージ圧)。
【0115】
[重合工程II-1:流動層型リアクターによるプロピレン単独重合]
前記スラリー重合リアクターから流動層型リアクターに、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0116】
上記流動層型リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、流動層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレン単独重合をさらに行った。反応条件は以下の通りとした。
【0117】
重合温度:80℃、
重合圧力:2.10MPa(ゲージ圧)
【0118】
リアクター内ガスの濃度比は、(水素/(水素+プロピレン))が7.5モル%であった。
【0119】
[重合工程II-2:流動層型リアクターによるプロピレン単独重合]
重合工程II-1の流動層型リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を重合工程II-2の流動層型リアクターに連続的に供給した。
【0120】
上記の流動層型リアクターにプロピレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレン重合を行った。反応条件は以下の通りとした。
【0121】
重合温度:80℃、
重合圧力:1.70MPa(ゲージ圧)
【0122】
リアクター内ガスの濃度比は、(水素/(水素+プロピレン))が7.5モル%であった。
【0123】
[重合工程III:流動層型リアクターによるエチレン-プロピレン共重合]
重合工程II-2の流動層型リアクターから排出されるポリプロピレン粒子をさらに下流の流動層型リアクターに連続的に供給した。
【0124】
流動層型リアクターにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Cを得た。反応条件は以下の通りとした。
重合温度:70℃、
重合圧力:1.35MPa(ゲージ圧)
【0125】
リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が31.0モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が2.10モル%であった。
【0126】
固体触媒成分1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量Pは、38980g/gであった。
【0127】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Cの分析結果を表1に示す。分析方法は、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aと同じである。
【0128】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Dの製造)〕
(1-1a)予備重合
撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn-ヘキサン、TEA30ミリモル/L、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン3.0ミリモル/Lを収容させた。その中に、固体触媒成分Eと同様にして合成した固体触媒成分Hの12g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン12g/Lを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタンを加えて、0.094g/Lの予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0129】
(1-1b)本重合
スラリー重合リアクターと、多段気相重合リアクターと、1つの流動層型リアクターとが全てを直列に接続された装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I-1)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程IIIにおいてエチレン-プロピレン共重合体である成分(II)を製造した。
【0130】
[重合工程I:スラリー重合リアクターによるプロピレン単独重合]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレン単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0131】
重合温度:50℃、
攪拌速度:150rpm、
プロピレン供給量に対する水素供給量:2.8NL/kg、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するTEAの供給量:5336ppm、 重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するtert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:1835ppm、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対する予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.00134g/g、
重合圧力:3.50MPa(ゲージ圧)。
【0132】
[重合工程II:多段気相重合リアクターによるプロピレン単独重合]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを準備した。
【0133】
前記スラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0134】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にポリプロピレン粒子を溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0135】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらプロピレン単独重合をさらに行った。反応条件は以下の通りとした。
【0136】
重合温度:59℃、
重合圧力:1.80MPa(ゲージ圧)
【0137】
多段気相重合リアクター内ガスの濃度比は、(水素/(水素+プロピレン))が10.2モル%であった。
【0138】
[重合工程III:流動層型リアクター(1)によるエチレン-プロピレン共重合]
前記多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型リアクター(1)に連続的に供給した。重合工程IIIの流動層型リアクター(1)は鉛直方向に1つの流動層の反応領域を有しており、前記多段気相重合リアクターから流動層型リアクター(1)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0139】
流動層型リアクター(1)にプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Dを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0140】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.75MPa(ゲージ圧)
【0141】
流動層型リアクター(1)内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が40.4モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が3.13モル%であった。
【0142】
固体触媒成分1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量Pは、27041g/gであった。
【0143】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Dの分析結果を表1に示す。分析方法は、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aと同じである。
【0144】
〔ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Gの製造〕
(1-1a)予備重合
撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn-ヘキサン、TEA20ミリモル/L、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン2.0ミリモル/Lを収容させた。その中に、固体触媒成分Eと同様にして合成した固体触媒成分Iの7g/Lを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン7g/Lを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタンを加えて、0.060g/Lの予備重合触媒成分のスラリーとした。
【0145】
(1-1b)本重合
スラリー重合リアクターと、多段気相重合リアクターと、1つの流動層型リアクターとが全てを直列に接続された装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I-2)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程IIIにおいてエチレン-プロピレン共重合体である成分(II)を製造した。
【0146】
[重合工程I:スラリー重合リアクターによるエチレンープロピレン共重合]
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、エチレンープロピレン共重合を行った。すなわち、プロピレン、エチレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子及び液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0147】
重合温度:50℃、
攪拌速度:150rpm、
プロピレン供給量に対するエチレン供給量:0.0015kg/kg
プロピレン供給量に対する水素供給量:1.5NL/kg、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するTEAの供給量:6610ppm、重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対するtert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:2250ppm、
重合工程Iにおけるポリプロピレン生産量に対する予備重合触媒成分のスラリーの供給量(重合触媒成分換算):0.0006
8g/g、
重合圧力:3.83MPa(ゲージ圧)。
【0148】
[重合工程II:多段気相重合リアクターによるエチレンープロピレン共重合]
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを準備した。
【0149】
前記スラリー重合リアクターから上記多段気相重合リアクターの最上段である流動層に、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを失活させることなく連続供給した。
【0150】
多段気相重合リアクター内でのポリプロピレン粒子の段間移送は、ダブル弁方式により行った。この移送手段は、上段の反応領域と下段の反応領域を1インチサイズの配管で接続し、配管に二つの開閉弁を設け、下側の弁を閉じた状態で上側の弁を開け、上段の反応領域から弁の間にポリプロピレン粒子を溜め込み、その後、上側の弁を閉じた後に下側の弁を開けることで下段の反応領域にポリプロピレン粒子を移送するものである。
【0151】
上記構成の多段気相重合リアクターの下部からプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した。これにより、各反応領域にそれぞれ流動層または噴流層を形成させ、ガス組成および圧力を一定に保つようプロピレンと水素の供給量をコントロールし、過剰ガスをパージしながらエチレンープロピレン共重合をさらに行った。反応条件は以下の通りとした。
【0152】
重合温度:60℃、
重合圧力:1.80MPa(ゲージ圧)
【0153】
多段気相重合リアクター内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が1.3モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が6.4モル%であった。
【0154】
[重合工程III:流動層型リアクター(1)によるエチレン-プロピレン共重合] 前記多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を流動層型リアクター(1)に連続的に供給した。重合工程IIIの流動層型リアクター(1)は鉛直方向に1つの流動層の反応領域を有しており、前記多段気相重合リアクターから流動層型リアクター(1)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
【0155】
流動層型リアクター(1)にプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給し、ガス組成および圧力を一定に保つようにガス供給量の調整および過剰ガスをパージしながら、ポリプロピレン粒子の存在下、プロピレンとエチレンとの共重合を行い、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Gを得た。反応条件は以下の通りとした。
【0156】
重合温度:70℃、
重合圧力:1.50MPa(ゲージ圧)
【0157】
流動層型リアクター(1)内ガスの濃度比は、エチレン/(水素+プロピレン+エチレン)が41.7モル%であり、水素/(水素+プロピレン+エチレン)が3.31モル%であった。
【0158】
固体触媒成分1gあたりのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の質量Pは、41776g/gであった。
【0159】
得られたヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Gの分析結果を表1に示す。分析方法は、ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aと同じである。
【0160】
(ヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の乾燥)
(実施例1)
図2に示す粒子の乾燥装置200を用意した。乾燥装置200は、底面210bを有する筒状の容器210、容器210の内部に底面210bと対向して設けられた多孔質の分散板230、容器210の上部開口を覆うフタ220、容器210の周面に設けられたオイルバス240を有する。容器210の底面210bの開口210aにはガス供給用のラインL210が接続され、フタ220の開口220bにはガス排出用のラインL220が接続されている。容器210の容量は2Lであり、80gのヘテロファジックプロピレン重合材料を貯蔵することができる。
【0161】
この乾燥装置200の容器210に、上記のようにして製造したヘテロファジックプロピレン重合材料粒子Aを容器210の上部の開口から50g供給してフタ220を閉め、オイルバス240により容器210内の粒子の温度を90℃に調整した状態で静置した。
その後、90℃に加熱した窒素をラインL210及び開口210aを介して容器210内に0.1Nm3/hの流量で2時間通気させ、粒子から揮発成分を除去し、粒子を乾燥させた。
【0162】
(実施例2)
粒子と窒素ガスとの接触時間を3時間とする以外は実施例1と同様とした。
【0163】
(実施例3)
窒素ガス及び粒子の温度を100℃とする以外は実施例1と同様とした。
【0164】
(実施例4)
窒素ガス及び粒子の温度を70℃とする以外は実施例1と同様とした。
【0165】
(実施例5)
粒子と窒素ガスとの接触時間を3.5時間とする以外は実施例4と同様とした。
【0166】
(実施例6)
粒子と窒素ガスの温度を80℃とする以外は実施例2と同様とした。
【0167】
(実施例7)
粒子Aに代えて粒子Bを用いること、及び、窒素ガス及び粒子の温度を80℃とする以外は実施例1と同様とした。
【0168】
(実施例8)
粒子と窒素ガスとの接触時間を3時間とする以外は実施例7と同様とした。
【0169】
(実施例9)
粒子と窒素ガスとの接触時間を1時間とする以外は実施例4と同様とした。
【0170】
(実施例10)
粒子Aに代えて粒子Dを用いること、及び、窒素ガス及び粒子の温度を65℃とする以外は実施例1と同様とした。
【0171】
(実施例11)
粒子と窒素ガスとの接触時間を3時間とする以外は実施例10と同様とした。
【0172】
(実施例12)
粒子Dに代えて粒子Gを用いること以外は実施例10と同様とした。
【0173】
(実施例13)
粒子Dに代えて粒子Gを用いること以外は実施例11と同様とした。
【0174】
(比較例1)
粒子Aに代えて粒子Cを用いること、粒子及びガスの温度を70℃とすること、及び、粒子と窒素ガスとの接触時間を0.5時間とすること以外は実施例1と同様とした。
【0175】
(比較例2)
粒子と窒素ガスとの接触時間を1時間とすること以外は比較例1と同様とした。
【0176】
(比較例3)
粒子と窒素ガスとの接触時間を3時間とすること以外は実施例3と同様とした。
【0177】
(比較例4)
粒子と窒素ガスの温度を40℃とすること以外は比較例3と同様とした。
乾燥時の温度T及び乾燥時の接触時間等の実験条件を表2及び表3に示す。
【表2】
【表3】
【0178】
(揮発成分除去率の測定)
乾燥前の粒子中の揮発成分の質量濃度C0、及び、乾燥後の粒子中の揮発成分の質量濃度C1をそれぞれ測定し、揮発成分除去率を以下の式で求めた。
揮発分除去率=100(1-C1/C0)
【0179】
揮発成分の質量濃度C0及びC1は、以下のようにして求めた。
粒子をオートサンプラーで温度120℃で1時間加熱し、粒子中の揮発成分を揮発させ、オートサンプラーに接続したガスクロマトグラフィー装置にて揮発させられた成分の濃度を測定した。揮発成分は、主にヘキサン、オクタン、デカン、及びドデカンであった。
ガスクロマトグラフィー装置として、島津製作所 GC-2010AFを使用し、カラムとして DB-WAX (Agilent Technologies)を使用した。各実施例及び比較例の揮発分除去率を表2及び表3に示す。
【0180】
なお、実施例1~3については、揮発分除去率の実測は行っていないが、温度Tが実施例4よりも高く、かつ、接触時間tが実施例4と同じか実施例4よりも長いため、99%を超えることは明らかである。
【0181】
(乾燥後のヘテロファジックプロピレン重合材料粒子の粘着性の評価)
図3に示す粘着性評価装置300を用いて、ホッパー内で、乾燥後のヘテロファジックプロピレン重合材料粒子を、各実施例及び比較例の温度T及び接触時間tで荷重条件下において静置した後の粘着性の評価を行った。130gのヘテロファジックプロピレン重合材料粒子を貯蔵させることができる、容量3Lの排出ホッパー310を用意した。ホッパー310は、下方に行くほど内径が小さくなるコーン部312と、コーン部312の上に接続された筒状部314を有する。コーン部312の下端には、粒子排出用の排出管320が設けられ、排出管320とコーン部312との間には、ゲートバルブ330が設けられている。筒状部314の上端は開放されており、内部に収容される粒子層Paに荷重をかけるべく、錘350を載せたピストン340を挿入できる。
【0182】
(圧密工程)
乾燥後のヘテロファジックプロピレン重合材料粒子130gをホッパー310に供給した後、ホッパー310を恒温槽内に保管して粒子の温度を各実施例及び比較例の温度Tと同じ温度にし、各実施例及び比較例の接触時間tと同じ時間だけ静置した。静置時には、ホッパー310の粒子の上に1.5~1.8kgの総重量となるように錘350及びピストン340を載せて、粒子を圧密した。圧密時に、ゲートバルブ330にかかる圧力をJannsenの式で推算したところ、表2及び表3に示すように、約150kg/m2であった。
【0183】
(排出工程)
圧密工程後、錘350及びピストン340をホッパー310から除去し、その後、ゲートバルブ330を開けた。粒子が圧密されているので、ゲートバルブ330を開けても、通常、排出管320から粒子は排出されない。続いて、ゲートバルブ330を開けた状態を維持しつつ、総重量が100gとなるように錘350及びピストン340を粒子に載せ、粒子が排出されるか否かを確認する。1分間経過しても粒子が排出されない場合には、順次100gの錘を追加し、粒子の排出が開始されるまで、100gの錘の追加を行った。このようにして、粒子の排出を開始させるのに必要な荷重を、各実施例及び比較例について取得した。この荷重が大きいほど、粘着性が高く、閉塞トラブルを起こし易いと評価される。結果を、表2及び表3に示す。
【0184】
実施例は揮発成分が十分に除去される条件であるが、粒子排出に必要な荷重の増加が抑制された。