(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240308BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/364
(21)【出願番号】P 2020053063
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊澤 哲
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-098318(JP,A)
【文献】特開2020-021786(JP,A)
【文献】特開2018-064072(JP,A)
【文献】特開2016-136558(JP,A)
【文献】特開平09-106981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、
被加工物の表面に水溶性保護膜を被覆する第1被覆ステップと、
該第1被覆ステップを実施した後、被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を被加工物の表面から該分割予定ラインに沿って照射し、該分割予定ラインに沿ったレーザー加工溝を被加工物の表面に形成するレーザー加工ステップと、
該レーザー加工ステップを実施した後、被加工物の表面を洗浄し、該水溶性保護膜とともに該レーザー加工ステップで発生したデブリを除去する保護膜洗浄ステップと、
該保護膜洗浄ステップを実施した後、再度、被加工物の表面
及び該レーザー加工溝に該水溶性保護膜を被覆する第2被覆ステップと、
該第1被覆ステップ、該レーザー加工ステップ、該保護膜洗浄ステップ及び該第2被覆ステップを連続して実施した後、
該水溶性保護膜が被覆された被加工物の表面に水を供給しながら、該レーザー加工溝の中央に切削ブレードで分割溝を形成しつつ、該水溶性保護膜を該水で除去する切削ステップと、
を備える被加工物の加工方法。
【請求項2】
被加工物を加工するレーザー加工ユニットと、被加工物に該水溶性保護膜を被覆する保護膜被覆ユニットと、被加工物を水で洗浄する洗浄ユニットと、を備えるレーザー加工装置を用いて、
該第1被覆ステップ、該レーザー加工ステップ、該保護膜洗浄ステップ及び該第2被覆ステップを連続して実施した後、
該レーザー加工装置から被加工物を搬出し、
被加工物に水を供給しながら切削ブレードで切削する切削装置を用いて
該水溶性保護膜が被覆された被加工物の表面に水を供給しながら、該レーザー加工溝の中央に該切削ブレードで分割溝を形成しつつ、該水溶性保護膜を該水で除去する
該切削ステップ
を実施する
請求項1に記載の被加工物の加工方法。
【請求項3】
該切削ステップを実施した後、該切削装置が備える洗浄ユニットで被加工物に水を供給し、被加工物の表面を洗浄する追加洗浄ステップ
を備える請求項2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該第2被覆ステップの後、かつ該切削ステップの前に、表面及び該レーザー加工溝に該水溶性保護膜が被覆された該被加工物を所定時間以上保管する
請求項1から3のいずれか1項に記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低誘電率の絶縁膜(Low-k膜)を用いてデバイスが形成されるデバイスウェーハが製造されている。Low-k膜は、機械的強度が弱いため、通常のウェーハの分割に用いられる切削ブレードでダイシングすると、ウェーハから剥離してしまう。このため、レーザーアブレーション加工によってLow-k膜を分割した後、切削ブレードでウェーハを分割する技術が知られている。レーザーアブレーション加工では、発生するデブリのデバイスへの付着を抑制するため、水溶性樹脂からなる保護膜をレーザー加工前に被覆し、加工終了後にデブリと共に保護膜を水で洗浄して除去する加工方法が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の加工方法について、高温なデブリによって保護膜が徐々に変質するため、レーザー加工直後に洗浄しないと、保護膜を被覆していてもデブリが除去しにくくなるという課題が発見された。レーザー加工直後に保護膜を洗浄すれば問題ないが、ダイシング加工が直ちに実施できない場合、ウェーハ表面を保護する目的で保護膜を被覆したまま保管する事がある。この場合、高温なデブリによって保護膜が変質して、ダイシング前にデブリが除去しにくくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、レーザー加工後に被加工物の表面に保護膜を被覆したまま一時保管する場合でも、レーザー加工によるデブリの除去を容易にすることができる被加工物の加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の被加工物の加工方法は、表面の分割予定ラインに区画された領域にデバイスが形成された被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、被加工物の表面に水溶性保護膜を被覆する第1被覆ステップと、該第1被覆ステップを実施した後、被加工物に対して吸収性を有する波長のレーザー光線を被加工物の表面から該分割予定ラインに沿って照射し、該分割予定ラインに沿ったレーザー加工溝を被加工物の表面に形成するレーザー加工ステップと、該レーザー加工ステップを実施した後、被加工物の表面を洗浄し、該水溶性保護膜とともに該レーザー加工ステップで発生したデブリを除去する保護膜洗浄ステップと、該保護膜洗浄ステップを実施した後、再度、被加工物の表面及び該レーザー加工溝に該水溶性保護膜を被覆する第2被覆ステップと、該第1被覆ステップ、該レーザー加工ステップ、該保護膜洗浄ステップ及び該第2被覆ステップを連続して実施した後、該水溶性保護膜が被覆された被加工物の表面に水を供給しながら、該レーザー加工溝の中央に切削ブレードで分割溝を形成しつつ、該水溶性保護膜を該水で除去する切削ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
被加工物を加工するレーザー加工ユニットと、被加工物に該水溶性保護膜を被覆する保護膜被覆ユニットと、被加工物を水で洗浄する洗浄ユニットと、を備えるレーザー加工装置を用いて、該第1被覆ステップ、該レーザー加工ステップ、該保護膜洗浄ステップ及び該第2被覆ステップを連続して実施した後、該レーザー加工装置から被加工物を搬出し、被加工物に水を供給しながら切削ブレードで切削する切削装置を用いて該水溶性保護膜が被覆された被加工物の表面に水を供給しながら、該レーザー加工溝の中央に該切削ブレードで分割溝を形成しつつ、該水溶性保護膜を該水で除去する該切削ステップを実施してもよい。また、該切削ステップを実施した後、該切削装置が備える洗浄ユニットで被加工物に水を供給し、被加工物の表面を洗浄する追加洗浄ステップを備えてもよい。
【0008】
さらに、該第2被覆ステップの後、かつ該切削ステップの前に、表面及び該レーザー加工溝に該水溶性保護膜が被覆された該被加工物を所定時間以上保管してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本願発明は、レーザー加工後に被加工物の表面に保護膜を被覆したまま一時保管する場合でも、レーザー加工によるデブリの除去を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る被加工物の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2に示す第1被覆ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図4】
図4は、
図3の第1被覆ステップ後の一状態を示す被加工物の要部の断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すレーザー加工ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図6】
図6は、
図5のレーザー加工ステップ後の一状態を示す被加工物の要部の断面図である。
【
図7】
図7は、
図2に示す保護膜洗浄ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図8】
図8は、
図7の保護膜洗浄ステップ後の一状態を示す被加工物の要部の断面図である。
【
図9】
図9は、
図2に示す第2被覆ステップの一例を一部断面で示す側面図である。
【
図10】
図10は、
図9の第2被覆ステップ後の一状態を示す被加工物の要部の断面図である。
【
図11】
図11は、変形例に係る被加工物の加工方法の流れを示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、
図11に示す第1被覆ステップ、レーザー加工ステップ、保護膜洗浄ステップ、及び第2被覆ステップを実施するレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図11に示す切削ステップ及び追加洗浄ステップを実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、
図16の追加洗浄ステップ後の一状態を示す被加工物の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る被加工物10の加工方法について、図面に基づいて説明する。まず、実施形態の加工対象である被加工物10の構成について説明する。
図1は、実施形態に係る被加工物10の一例を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すように、被加工物10は、シリコン(Si)、サファイア(Al
2O
3)、ガリウムヒ素(GaAs)又は炭化ケイ素(SiC)等を基板11とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物10は、基板11の表面12に形成される複数の分割予定ライン13と、格子状に交差する複数の分割予定ライン13によって区画された各領域に形成されるデバイス14とを有する。
【0014】
デバイス14は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、又はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。
【0015】
また、被加工物10は、基板11の表面12に機能層16が積層されている。機能層16は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(以下、Low-k膜と呼ぶ)と、導電性の金属により構成された導電体膜とを備えている。Low-k膜は、導電体膜と積層されて、デバイス14を形成する。導電体膜は、デバイス14の回路を構成する。このために、デバイス14は、互いに積層されたLow-k膜と、Low-k膜間に積層された導電体膜とにより構成される。なお、分割予定ライン13の機能層16は、Low-k膜により構成され、TEG(Test Element Group)を除いて導電体膜を備えていない。TEGは、デバイス14に発生する設計上や製造上の問題を見つけ出すための評価用の素子である。
【0016】
被加工物10は、環状フレーム30及び貼着テープ31に支持される。環状フレーム30は、被加工物10の外径より大きな開口を有する。環状フレーム30は、プラズマエッチングに対して耐性を有する金属や樹脂等の材質で構成される。貼着テープ31は、絶縁性の合成樹脂により構成された基材層と、基材層の表面及び裏面の少なくともいずれかに積層された粘着性を有する糊層とを含む。貼着テープ31は、外周が環状フレーム30の裏面側に貼着される。被加工物10は、環状フレーム30の開口の所定の位置に位置決めされ、裏面15が貼着テープ31に貼着されることによって、環状フレーム30及び貼着テープ31に固定される。
【0017】
次に、実施形態に係る被加工物10の加工方法を説明する。
図2は、実施形態に係る被加工物10の加工方法の流れを示すフローチャートである。被加工物10の加工方法は、第1被覆ステップ1と、レーザー加工ステップ2と、保護膜洗浄ステップ3と、第2被覆ステップ4と、を含む。
【0018】
(第1被覆ステップ1)
図3は、
図2に示す第1被覆ステップ1の一例を一部断面で示す側面図である。
図4は、
図3の第1被覆ステップ1後の一状態を示す被加工物10の要部の断面図である。
図3及び
図4に示すように、第1被覆ステップ1は、被加工物10の表面12に水溶性保護膜20を被覆するステップである。
【0019】
実施形態の第1被覆ステップ1では、保護膜被覆ユニット50によって、被加工物10の表面12を水溶性樹脂55で被覆する。保護膜被覆ユニット50は、実施形態において、スピンコーターを含む。保護膜被覆ユニット50は、保持テーブル51と、クランプ部材52と、回転軸部材53と、水溶性樹脂供給ノズル54と、を備える。
【0020】
第1被覆ステップ1では、まず、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル51に吸引保持し、環状フレーム30の外周部をクランプ部材52で固定する。第1被覆ステップ1では、次に、回転軸部材53によって保持テーブル51を軸心回りに回転させた状態で、水溶性樹脂供給ノズル54から水溶性樹脂55を被加工物10の表面12に滴下させる。この際、水溶性樹脂供給ノズル54は、被加工物10の半径方向に往復移動してもいい。滴下された水溶性樹脂55は、保持テーブル51の回転により発生する遠心力によって、被加工物10の表面12上を中心側から外周側に向けて流れていき、被加工物10の表面12の全面に塗布される。
【0021】
水溶性樹脂55は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol:PVA)又はポリビニルピロリドン(Polyvinylpyrrolidone:PVP)等の水溶性の液状樹脂である。水溶性樹脂55には、例えば、株式会社ディスコ製のHOGOMAX(登録商標)が用いられる。第1被覆ステップ1では、被加工物10の表面12の全面に塗布された水溶性樹脂55を乾燥及び硬化することによって、被加工物10の表面12の全面を覆う水溶性樹脂55の層を形成する。これにより、被加工物10の表面12は、水溶性樹脂55の層による水溶性保護膜20に被覆される。水溶性保護膜20は、実施形態において、透明である。これにより、後述のレーザー加工ユニット60、レーザー加工装置(例えば、
図12のレーザー加工装置100)又は切削装置(例えば、
図13の切削装置200)のカメラ(例えば、
図11の撮像ユニット140又は
図13の撮像ユニット260)によるアライメントが可能である。
【0022】
(レーザー加工ステップ2)
図5は、
図2に示すレーザー加工ステップ2の一例を一部断面で示す側面図である。
図6は、
図5のレーザー加工ステップ2後の一状態を示す被加工物10の要部の断面図である。レーザー加工ステップ2は、第1被覆ステップ1を実施した後に実施される。
図5及び
図6に示すように、レーザー加工ステップ2は、被加工物10に対して吸収性を有する波長のレーザー光線65を被加工物10の表面12から分割予定ライン13に沿って照射し、分割予定ライン13に沿ったレーザー加工溝21を被加工物10の表面12に形成するステップである。
【0023】
実施形態のレーザー加工ステップ2では、レーザー加工ユニット60によって、被加工物10の表面12に形成される分割予定ライン13に沿ってレーザー加工溝21を形成する。レーザー加工ユニット60は、保持テーブル61と、クランプ部材62と、保持テーブル61の回転軸部材63と、レーザー光線照射ユニット64と、保持テーブル61とレーザー光線照射ユニット64とを相対的に移動させる移動ユニットと、を備える。
【0024】
レーザー加工ステップ2では、まず、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル61に吸引保持し、環状フレーム30の外周部をクランプ部材62で固定する。レーザー加工ステップ2では、次に、分割予定ライン13に沿って保持テーブル61とレーザー光線照射ユニット64とを相対的に移動させながら、レーザー光線照射ユニット64からレーザー光線65を被加工物10の表面12の分割予定ライン13に照射させる。レーザー光線65は、被加工物10に対して吸収性を有する波長のレーザー光線である。
【0025】
図6に示すように、レーザー光線65によって、被加工物10の表面12の全面を覆う水溶性保護膜20のうち分割予定ライン13に相当する領域の水溶性保護膜20が除去されてレーザー加工溝21が形成される。レーザー加工溝21は、
図6に示すように、分割予定ライン13に相当する領域の水溶性保護膜20、機能層16及び基板11の一部を除去して基板11を露出させる。これにより、水溶性保護膜20は、被加工物10の表面12において、デバイス14を覆いかつ分割予定ライン13を露出させる。この際、水溶性保護膜20の表面には、レーザー加工により発生したデブリ22が付着する。
【0026】
(保護膜洗浄ステップ3)
図7は、
図2に示す保護膜洗浄ステップ3の一例を一部断面で示す側面図である。
図8は、
図7の保護膜洗浄ステップ3後の一状態を示す被加工物10の要部の断面図である。保護膜洗浄ステップ3は、レーザー加工ステップ2を実施した後に実施される。
図7及び
図8に示すように、保護膜洗浄ステップ3は、被加工物10の表面12を洗浄し、水溶性保護膜20とともにレーザー加工ステップ2で発生したデブリ22を除去するステップである。
【0027】
実施形態の保護膜洗浄ステップ3では、洗浄ユニット70によって、被加工物10の表面12を覆う水溶性保護膜20を水75で洗浄して除去する。洗浄ユニット70は、保持テーブル71と、クランプ部材72と、回転軸部材73と、洗浄ノズル74と、を備える。
【0028】
保護膜洗浄ステップ3では、まず、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル71に吸引保持し、環状フレーム30の外周部をクランプ部材72で固定する。保護膜洗浄ステップ3では、次に、回転軸部材73によって保持テーブル71を軸心回りに回転させた状態で、洗浄ノズル74から水75を被加工物10の表面12に向けて供給させる。水75は、洗浄ノズル74より上流の水路で10~12MPa程度に水圧が調整された加圧水である。水75は、例えば、純水である。水75は、エアーを混入させたバブル水であってもよい。また、水とエアーを合流させた所謂2流体で洗浄してもいい。
【0029】
洗浄ノズル74は、水75を供給しつつ、被加工物10の半径方向に往復移動する。供給された水75は、保持テーブル71の回転により発生する遠心力によって、被加工物10の各デバイス14の表面12上を中心側から外周側に向けて流れていき、各デバイス14の表面12を覆った水溶性保護膜20を洗浄する。被加工物10の各デバイス14の表面12を覆った水溶性保護膜20を洗浄することによって、デバイス14の表面12が露出する。
【0030】
洗浄ユニット70は、保護膜被覆ユニット50と兼用であってもよい。より詳しくは、洗浄ユニット70の保持テーブル71、クランプ部材72及び回転軸部材73は、保護膜被覆ユニット50の保持テーブル51、クランプ部材52及び回転軸部材53と兼用であってもよい。
【0031】
実施形態において、保護膜洗浄ステップ3は、レーザー加工ステップ2を実施した直後に実施される。なお、直後とは、レーザー加工ステップ2後で、かつレーザー加工ユニット60によってレーザー加工ステップ2が実施された被加工物10が洗浄ユニット70まで搬送されてくるまでの所要時間経過した後をいう。レーザー加工ステップ2を実施した直後に保護膜洗浄ステップ3を実施することによって、水溶性保護膜20が高温なデブリ22によって徐々に変質して除去しづらくなる前に溶解させることができる。
【0032】
(第2被覆ステップ4)
図9は、
図2に示す第2被覆ステップ4の一例を一部断面で示す側面図である。
図10は、
図9の第2被覆ステップ4後の一状態を示す被加工物10の要部の断面図である。第2被覆ステップ4は、保護膜洗浄ステップ3を実施した後に実施される。
図9及び
図10に示すように、第2被覆ステップ4は、再度、被加工物10の表面12に水溶性保護膜20を被覆するステップである。
【0033】
実施形態の第2被覆ステップ4では、第1被覆ステップ1で用いた保護膜被覆ユニット50によって、被加工物10の表面12及びレーザー加工溝21を水溶性樹脂55で被覆する。保護膜被覆ユニット50によって水溶性樹脂55を塗布する手順は、第1被覆ステップ1と同様であるため、説明を省略する。レーザー加工溝21が形成された被加工物10に水溶性樹脂55を改めて塗布することによって、被加工物10の表面12と、レーザー加工溝21によって露出した機能層16の側面及び基板11も、水溶性樹脂55の層による水溶性保護膜20に被覆される。
【0034】
実施形態において、第2被覆ステップ4は、保護膜洗浄ステップ3を実施した直後に実施される。なお、直後とは、保護膜洗浄ステップ3後で、かつ洗浄ユニット70によって保護膜洗浄ステップ3が実施された被加工物10が保護膜被覆ユニット50まで搬送されてくるまでの所要時間経過した後をいう。保護膜洗浄ステップ3を実施した直後に第2被覆ステップ4を実施することによって、被加工物10に異物が付着し、異物ごと水溶性保護膜20で被覆することを抑制できる。
【0035】
〔変形例〕
本発明の変形例に係る被加工物10の加工方法について、図面に基づいて説明する。
図11は、変形例に係る被加工物10の加工方法の流れを示すフローチャートである。変形例の被加工物10の加工方法は、第1被覆ステップ1と、レーザー加工ステップ2と、保護膜洗浄ステップ3と、第2被覆ステップ4と、切削ステップ5と、追加洗浄ステップ6と、を含む。変形例において、第1被覆ステップ1、レーザー加工ステップ2、保護膜洗浄ステップ3、及び第2被覆ステップ4は、レーザー加工装置100を用いて連続して実施される。また、変形例において、切削ステップ5及び追加洗浄ステップ6は、切削装置200を用いて実施される。
【0036】
(レーザー加工装置の構成)
第1被覆ステップ1、レーザー加工ステップ2、保護膜洗浄ステップ3、及び第2被覆ステップ4を実施するレーザー加工装置100の構成について説明する。
図12は、
図11に示す第1被覆ステップ1、レーザー加工ステップ2、保護膜洗浄ステップ3、及び第2被覆ステップ4を実施するレーザー加工装置100の構成例を示す斜視図である。以下の説明において、X軸方向は、水平面における一方向である。Y軸方向は、水平面において、X軸方向に直交する方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向である。変形例のレーザー加工装置100は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、集光点位置調整方向がZ軸方向である。
【0037】
レーザー加工装置100は、レーザー加工ユニット110と、X軸方向移動ユニット120と、Y軸方向移動ユニット130と、撮像ユニット140と、保護膜被覆及び洗浄ユニット150と、載置台170と、搬送ユニット180と、制御ユニット190と、を備える。
【0038】
レーザー加工ユニット110は、実施形態のレーザー加工ユニット60に相当し、被加工物10をレーザー加工するユニットである。レーザー加工ユニット110は、保持テーブル111と、レーザー光線照射ユニット114と、を備える。
【0039】
保持テーブル111は、被加工物10を保持面112で保持する。保持テーブル111の周囲には、被加工物10を支持する環状フレーム30を挟持するクランプ部材113が複数配置されている。保持テーブル111は、Z軸と平行な軸心回りに回転される。保持テーブル111は、X軸方向移動プレート121を介して、X軸方向移動ユニット120によりX軸方向に移動される。保持テーブル111は、Y軸方向移動プレート131を介して、Y軸方向移動ユニット130によりY軸方向に移動される。レーザー光線照射ユニット114は、保持テーブル111に保持された被加工物10に対してレーザービームを照射するユニットである。
【0040】
X軸方向移動ユニット120は、保持テーブル111とレーザー光線照射ユニット114とを加工送り方向であるX軸方向に相対移動させるユニットである。Y軸方向移動ユニット130は、保持テーブル111とレーザー光線照射ユニット114とを割り出し送り方向であるY軸方向に相対移動させるユニットである。レーザー加工装置100は、さらに、レーザー光線照射ユニット114の焦点位置を調整するために、保持テーブル111とレーザー光線照射ユニット114とをZ軸方向に相対移動させるZ軸方向移動ユニットを含んでもよい。
【0041】
レーザー加工装置100は、保持テーブル111とレーザー光線照射ユニット114とを相対的に移動させながら、レーザー光線照射ユニット114により被加工物10にレーザービームを照射することによって、被加工物10にレーザー加工を施す。レーザー加工装置100によるレーザー加工は、例えば、ステルスダイシングによって被加工物10の内部に改質層を形成する改質層形成加工、被加工物10の表面12にレーザー加工溝21を形成する溝加工、又は分割予定ライン13に沿って被加工物10を切断する切断加工等である。
【0042】
撮像ユニット140は、保持テーブル111に保持された被加工物10を撮像する。撮像ユニット140は、変形例において、レーザー光線照射ユニット114とX軸方向に並列する位置に固定される。撮像ユニット140は、保持テーブル111に保持された被加工物10を撮像するCCD又はCMOSイメージセンサを使ったカメラであり、赤外線カメラ等を含む。撮像ユニット140は、被加工物10を撮像して、被加工物10とレーザー光線照射ユニット114との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット190に出力する。
【0043】
保護膜被覆及び洗浄ユニット150は、保護膜被覆ユニット50及び洗浄ユニット70に相当し、被加工物10に水溶性保護膜20を被覆し、被加工物10を水で洗浄するユニットである。保護膜被覆及び洗浄ユニット150は、保持テーブル151と、クランプ部材152と、水溶性樹脂供給ノズル154と、洗浄ノズル156と、を保持テーブル151、水溶性樹脂供給ノズル154及び洗浄ノズル156を収容する塗布及び洗浄室と、備える。
【0044】
保持テーブル151は、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル51に吸引保持する。保持テーブル151は、Z軸に平行な回転軸回りに回転可能である。クランプ部材152は、環状フレーム30の外周部を固定する。
【0045】
水溶性樹脂供給ノズル154は、保持テーブル151の上方に位置する作動位置と、保持テーブル151の上方から離間した退避位置との間で、X-Y平面上を移動可能である。水溶性樹脂供給ノズル154は、保持テーブル151に保持された被加工物10の表面12に、水溶性樹脂を滴下させる。水溶性樹脂供給ノズル154は、水溶性樹脂を滴下しつつ、保持テーブル151に保持された被加工物10半径方向に往復移動する。
【0046】
洗浄ノズル156は、保持テーブル151の上方に位置する作動位置と、保持テーブル151の上方から離間した退避位置との間で、X-Y平面上を移動可能である。洗浄ノズル156は、保持テーブル151に保持された被加工物10の表面12に向けて、水を供給させる。洗浄ノズル156は、水を供給しつつ、保持テーブル151に保持された被加工物10半径方向に往復移動する。
【0047】
被加工物10に水溶性保護膜20を被覆する保護膜被覆ユニットと、被加工物10を水で洗浄する洗浄ユニットとは、変形例では兼用の保護膜被覆及び洗浄ユニット150であるが、本発明では別ユニットであってもよい。また、保護膜被覆及び洗浄ユニット150は、被覆後及び洗浄後の被加工物10を乾燥させるために被加工物10に対してエアーを噴出させるエアー供給部をさらに備えてもよい。
【0048】
載置台170は、上面の載置面171に収容カセット40が載置される。載置面171は、Z軸方向に昇降自在である。載置台170は、載置面171に載置された収容カセット40をZ軸方向に移動させる。収容カセット40は、各種の加工装置間を搬送され、各種の加工装置に設置される。収容カセット40は、変形例において、
図12に示すように、レーザー加工装置100の載置台170に載置される。また、収容カセット40は、後述の
図13に示す切削装置200に搬送された際には、切削装置200の載置台270に載置される。
【0049】
搬送ユニット180は、被加工物10を載置台170に載置された収容カセット40と、保持テーブル111と、保護膜被覆及び洗浄ユニット150との間で搬送するユニットである。搬送ユニット180は、X軸方向及びY軸方向に移動自在であるように、レーザー加工装置100の装置本体の天井を構成する壁等に設けられている。
【0050】
搬送ユニット180は、レーザー加工前の被加工物10を、載置台170に載置された収容カセット40から取り出して、保護膜被覆及び洗浄ユニット150の保持テーブル151に載置させる。搬送ユニット180は、保護膜被覆及び洗浄ユニット150により水溶性保護膜20を被覆した後の被加工物10を、保持テーブル151からレーザー加工ユニット110に搬送して、レーザー加工ユニット110の保持テーブル111に載置させる。搬送ユニット180は、レーザー加工後の被加工物10を、保持テーブル111から保護膜被覆及び洗浄ユニット150に搬送して、保護膜被覆及び洗浄ユニット150の保持テーブル151に載置させる。搬送ユニット180は、保護膜被覆及び洗浄ユニット150により洗浄し、水溶性保護膜20を再度被覆した後の被加工物10を、載置台170に載置された収容カセット40内に収容する。
【0051】
制御ユニット190は、レーザー加工装置100の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物10に対する加工動作をレーザー加工装置100に実行させる。制御ユニット190は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、レーザー加工装置100の制御を行う。制御ユニット190は、例えば、加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報等を登録する際に用いる操作手段等と接続する。
【0052】
変形例の第1被覆ステップ1では、保護膜被覆及び洗浄ユニット150によって、被加工物10の表面12を水溶性樹脂で被覆する。保護膜被覆及び洗浄ユニット150によって水溶性樹脂を塗布する手順は、実施形態の第1被覆ステップ1における保護膜被覆ユニット50による手順と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
変形例のレーザー加工ステップ2では、レーザー加工ユニット110によって、被加工物10の表面12に形成される分割予定ライン13に沿ってレーザー加工溝21を形成する。レーザー加工ユニット110によってレーザー加工溝21を形成する手順は、実施形態のレーザー加工ステップ2におけるレーザー加工ユニット60による手順と同様であるため、説明を省略する。
【0054】
変形例の保護膜洗浄ステップ3では、保護膜被覆及び洗浄ユニット150によって、被加工物10の表面12を覆う水溶性保護膜20を水で洗浄して除去する。保護膜被覆及び洗浄ユニット150によって水溶性保護膜20を水で洗浄して除去する手順は、実施形態の保護膜洗浄ステップ3における洗浄ユニット70による手順と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
変形例の第2被覆ステップ4では、保護膜被覆及び洗浄ユニット150によって、被加工物10の表面12及びレーザー加工溝21を水溶性樹脂で被覆する。保護膜被覆及び洗浄ユニット150によって水溶性樹脂を塗布する手順は、第1被覆ステップ1と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
(切削装置の構成)
切削ステップ5及び追加洗浄ステップ6を実施する切削装置200の構成について説明する。
図13は、
図11に示す切削ステップ5及び追加洗浄ステップ6を実施する切削装置200の構成例を示す斜視図である。変形例の切削装置200は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向であり、切り込み送り方向がZ軸方向である。
【0057】
切削装置200は、保持テーブル210と、切削ユニット220と、不図示のX軸方向移動ユニットと、Y軸方向移動ユニット230と、Z軸方向移動ユニット240と、洗浄ユニット250と、撮像ユニット260と、載置台270と、を備える。
【0058】
保持テーブル210は、被加工物10を保持面211で保持する。保持テーブル210の周囲には、被加工物10を支持する環状フレーム30を挟持するクランプ部材212(
図14参照)が複数配置されている。保持テーブル210は、保持テーブル210を支持する回転軸部材213(
図14参照)の軸心回りに回転される。保持テーブル210は、切削ユニット220の下方の加工領域と、切削ユニット220の下方から離間して被加工物10が搬入出される領域とに亘って、不図示のX軸方向移動ユニットによりX軸方向に移動される。
【0059】
切削ユニット220は、保持テーブル210に保持された被加工物10を切削して複数のチップ17に分割する切削ブレード221を着脱自在に装着した切削手段である。切削ユニット220は、Y軸方向移動ユニット230及びZ軸方向移動ユニット240を介して、装置本体から立設した柱に設けられる。切削ユニット220は、保持テーブル210に保持された被加工物10に対して、Y軸方向移動ユニット230によりY軸方向に移動自在、かつ、Z軸方向移動ユニット240によりZ軸方向に移動自在である。切削ユニット220は、Y軸方向移動ユニット230及びZ軸方向移動ユニット240により、保持テーブル210の保持面211の任意の位置に切削ブレード221を位置付け可能である。切削ユニット220は、切削ブレード221と、スピンドルハウジング222と、スピンドル223と(
図14参照)、スピンドル223に装着され切削ブレード221が固定されるマウントフランジ224(
図14参照)と、切削水供給ユニット225(
図14参照)と、を備える。
【0060】
切削ブレード221は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。切削ブレード221は、変形例において、いわゆるハブブレードであり、スピンドル223に固定されたマウントフランジ224に装着される円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設される所定厚みの円環状の切り刃とを備える。円形基台は、導電性の金属で構成される。切り刃は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなる。
【0061】
スピンドルハウジング222は、Y軸方向移動ユニット230及びZ軸方向移動ユニット240を介して、装置本体から立設した柱に支持される。スピンドルハウジング222は、Y軸方向移動ユニット230及びZ軸方向移動ユニット240によってZ軸方向に移動自在に設けられる。スピンドルハウジング222は、保持テーブル210に保持された被加工物10に対して、Y軸方向移動ユニット230によりY軸方向に移動自在、かつ、Z軸方向移動ユニット240によりZ軸方向に移動自在である。
【0062】
スピンドル223は、スピンドルハウジング222内に軸心回りに回転自在に設けられる。スピンドル223は、不図示のスピンドルモータ等が駆動することにより回転する。スピンドル223は、先端部にマウントフランジ224を介して切削ブレード221が装着される。切削ユニット220のスピンドル223及び切削ブレード221の軸心は、変形例において、Y軸方向と平行な方向に設定される。
【0063】
切削水供給ユニット225は、切削水供給ノズル226と、不図示の給水源と、を含む。切削水供給ノズル226は、スピンドルハウジング222と一体的に移動するように、スピンドルハウジング222に対して固定されている。切削水供給ノズル226は、不図示の給水源と接続する。給水源は、例えば、切削水を貯留するタンクと、タンクの切削水を切削水供給ノズル226に供給するポンプと、を含む。切削水供給ノズル226は、切削ユニット220による切削加工中に、給水源から供給される切削水を、被加工物10及び切削ブレード221に供給する。
【0064】
洗浄ユニット250は、切削加工後の被加工物10を水で洗浄するユニットである。洗浄ユニット250は、保持テーブル251と、クランプ部材252と、回転軸部材253と(
図16参照)、洗浄ノズル256と、を保持テーブル251及び洗浄ノズル256を収容する洗浄室と、備える。
【0065】
保持テーブル251は、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル51に吸引保持する。クランプ部材152は、環状フレーム30の外周部を固定する。保持テーブル251は、保持テーブル251を支持する回転軸部材253(
図16参照)の軸心回りに回転可能である。
【0066】
洗浄ノズル256は、保持テーブル251の上方に位置する作動位置と、保持テーブル251の上方から離間した退避位置との間で、X-Y平面上を移動可能である。洗浄ノズル256は、保持テーブル251に保持された被加工物10の表面12に向けて、水257(
図16参照)を供給させる。洗浄ノズル256は、水257を供給しつつ、保持テーブル251に保持された被加工物10半径方向に往復移動する。
【0067】
撮像ユニット260は、切削ユニット220と一体的に移動するように、切削ユニット220に固定されている。撮像ユニット260は、保持テーブル210に保持された被加工物10を撮像するCCD又はCMOSイメージセンサを使ったカメラであり、赤外線カメラ等を含む。撮像ユニット260は、被加工物10を撮像して、被加工物10と切削ブレード221との位置合わせを行うアライメントを遂行するための画像を得て、得た画像を制御ユニット290に出力する。
【0068】
載置台270は、上面の載置面271に収容カセット40が載置される。載置面271は、Z軸方向に昇降自在である。載置台270は、載置面271に載置された収容カセット40をZ軸方向に移動させる。
【0069】
制御ユニット290は、切削装置200の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物10に対する加工動作を切削装置200に実行させる。制御ユニット290は、演算手段としての演算処理装置と、記憶手段としての記憶装置と、通信手段としての入出力インターフェース装置と、を含むコンピュータである。演算処理装置は、例えば、CPU等のマイクロプロセッサを含む。記憶装置は、ROM又はRAM等のメモリを有する。演算処理装置は、記憶装置に格納された所定のプログラムに基づいて各種の演算を行う。演算処理装置は、演算結果に従って、入出力インターフェース装置を介して各種制御信号を上述した各構成要素に出力し、切削装置200の制御を行う。制御ユニット290は、例えば、加工動作の状態を表示する表示手段や、オペレータが加工内容情報等を登録する際に用いる操作手段等と接続する。
【0070】
(切削ステップ5)
図14は、
図11に示す切削ステップ5の一例を一部断面で示す側面図である。
図15は、
図14の切削ステップ5後の一状態を示す被加工物10の要部の断面図である。
図14及び
図15に示すように、切削ステップ5は、水溶性保護膜20が被覆された被加工物10の表面12に水227を供給しながら、レーザー加工溝21の中央に切削ブレード221で分割溝23を形成しつつ、水溶性保護膜20を水227で除去するステップである。切削ステップ5は、レーザー加工装置100から被加工物10を搬出した後、被加工物10に水227を供給しながら切削ブレード221で切削する切削装置200を用いて実施される。
【0071】
変形例の切削ステップ5では、切削水供給ユニット225によって、水溶性保護膜20が被覆された被加工物10の表面12に水227を供給する。また、変形例の切削ステップ5では、切削ユニット220の切削ブレード221によって、被加工物10のレーザー加工溝21の中央に分割溝23を形成する。
【0072】
切削ステップ5では、まず、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル210の保持面211に吸引保持し、環状フレーム30の外周部をクランプ部材212で固定する。切削ステップ5では、次に、切削ユニット220と被加工物10との位置合わせを行う。より具体的には、不図示のX軸方向移動ユニットが、保持テーブル210を切削ユニット220の下方の加工領域まで移動させ、撮像ユニット260で被加工物10を撮影しアライメントする事で、切削ブレード221の加工点を、被加工物10の分割予定ライン13に位置合わせさせる。
【0073】
切削ステップ5では、次に、切削水供給ユニット225の切削水供給ノズル226から、被加工物10の表面12向けての水227の供給を開始させる。切削ステップ5では、次に、Y軸方向移動ユニット230及びZ軸方向移動ユニット240によって、保持テーブル210と切削ユニット220の切削ブレード221とを分割予定ライン13に沿って相対的に移動させながら、切削ブレード221が貼着テープ31に到達するまで切り込ませて分割溝23を形成する。
【0074】
切削ブレード221による切削加工中に切削水供給ユニット225から供給された水227によって、被加工物10の表面12を覆う水溶性保護膜20は除去される。
図15に示すように、被加工物10の表面12の水溶性保護膜20の一部が除去しきれなかった場合であっても、追加洗浄ステップ6を実施することで、被加工物10の表面12から水溶性保護膜20を除去することができる。
【0075】
(追加洗浄ステップ6)
図16は、
図11に示す追加洗浄ステップ6の一例を一部断面で示す側面図である。
図17は、
図16の追加洗浄ステップ6後の一状態を示す被加工物10の要部の断面図である。追加洗浄ステップ6は、切削ステップ5を実施した後に実施される。
図16及び
図17に示すように、追加洗浄ステップ6は、切削装置200が備える洗浄ユニット250で被加工物10に水257を供給し、被加工物10の表面12を洗浄するステップである。
【0076】
変形例の追加洗浄ステップ6では、まず、貼着テープ31を介して被加工物10の裏面15側を保持テーブル251に吸引保持し、環状フレーム30の外周部をクランプ部材252で固定する。追加洗浄ステップ6では、次に、回転軸部材253によって保持テーブル251を軸心回りに回転させた状態で、洗浄ノズル256から水257を被加工物10の表面12に向けて供給させる。水257は、洗浄ノズル256より上流の水路で10~12MPa程度に水圧が調整された加圧水である。水257は、例えば、純水である。水257は、エアーを混入させたバブル水であってもよい。また、水とエアーを合流させた所謂2流体で洗浄してもいい。
【0077】
洗浄ノズル256は、水257を供給しつつ、被加工物10の半径方向に往復移動する。供給された水257は、保持テーブル251の回転により発生する遠心力によって、被加工物10の各デバイス14の表面12上を中心側から外周側に向けて流れていき、各デバイス14の表面12を覆った水溶性保護膜20を洗浄する。被加工物10の各デバイス14の表面12を覆った水溶性保護膜20を洗浄することによって、デバイス14の表面12が露出する。
【0078】
以上説明したように、実施形態及び変形例に係る被加工物10の加工方法は、レーザー加工後に、水溶性保護膜20を洗浄して除去してから、再度、被加工物10の表面12に水溶性保護膜20を被覆する。これにより、デブリ22を除去しつつ、レーザー加工装置から搬出して切削加工まで所定時間以上保管する場合でも、被加工物10の表面12を保護しておくことができる。さらに、保管用に被覆した水溶性保護膜20の除去は、切削水(水227)を供給する切削工程(例えば、変形例の切削ステップ5)で実施することができる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0080】
10 被加工物
12 表面
13 分割予定ライン
14 デバイス
20 水溶性保護膜
21 レーザー加工溝
22 デブリ
23 分割溝
50 保護膜被覆ユニット
55 水溶性樹脂
60 レーザー加工ユニット
65 レーザー光線
70 洗浄ユニット
75 水
100 レーザー加工装置
110 レーザー加工ユニット
150 保護膜被覆及び洗浄ユニット
200 切削装置
220 切削ユニット
221 切削ブレード
225 切削水供給ユニット
250 洗浄ユニット