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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240308BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 7/22 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 53/12 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 53/00 20060101ALI20240308BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
B24B9/00 601H
B24B7/22 Z
B24B53/12 Z
B24B53/00 K
B24B49/12
H01L21/304 622M
H01L21/304 631
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099581
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193711
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗村 茂也
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-59586(JP,A)
【文献】特開2017-69489(JP,A)
【文献】特開2016-127098(JP,A)
【文献】特開2018-206824(JP,A)
【文献】特開2011-249571(JP,A)
【文献】特開2018-148135(JP,A)
【文献】特開2019-166598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 9/00
B24B 7/22
B24B 53/12
B24B 53/00
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域を表面に備え、該外周余剰領域に該デバイスを形成する材料が不均一に積層され該デバイス領域よりも突出しているウェーハの加工方法であって、
切削ブレードの外周面が、装着するスピンドルの回転軸に対して3度以下の角度で傾斜する切削ブレードを準備するブレード準備ステップと、
切削装置のチャックテーブルの保持面でウェーハを裏面側から保持する保持ステップと、
該チャックテーブルに保持されたウェーハの該外周余剰領域に、該切削ブレードの傾斜した該外周面を切り込ませた状態で該チャックテーブルを回転させ、該外周余剰領域を円形に切削し突出した該材料を除去する除去ステップと、
該除去ステップを実施した後、該デバイス領域及び該外周余剰領域を含むウェーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、
研削装置のチャックテーブルで該保護部材を介してウェーハを吸引保持し、ウェーハの裏面を研削して薄化する研削ステップと、を備え、
該除去ステップを実施した後の該外周余剰領域は、該外周面の傾斜した傾斜面が転写され、該デバイス領域の周縁からウェーハの外周に向かって薄くなった傾斜領域とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該ブレード準備ステップは、該切削装置の該チャックテーブルでドレッシングボードを保持し、スピンドルに装着した該切削ブレードで該ドレッシングボードを切削し、該切削ブレードの該外周面に該傾斜面を形成する請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該ブレード準備ステップでは、該切削ブレードを該ドレッシングボードに所定量切り込む高さに位置付け、該除去ステップで該デバイス領域に面する一方の側面側から、該スピンドルの軸心方向に沿って該切削ブレードを移動させて該ドレッシングボードを切削し、該一方の側面側から他方の側面側に向かって該切削ブレードが拡径する形状に整形する請求項2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該ブレード準備ステップ実施後で、該除去ステップ実施前に、該チャックテーブルに保持された溝形成用ボードに該切削ブレードを切り込ませ、形成された切削溝の長手方向の端部形状から該切削ブレードの該傾斜面の角度が所定の角度になっているか否かを検査する形状検査ステップを備える請求項1、請求項2又は請求項3に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程においては、ウェーハの表面に複数のデバイスが形成され、ウェーハの裏面が研削装置で研削されてウェーハが薄化された後、ウェーハがデバイス毎に分割される。ウェーハの表面において、複数のデバイスが形成されたデバイス領域は、デバイスが形成されていない外周余剰領域により囲繞される。デバイス領域に積層されている金属や樹脂などの材料は、外周余剰領域にも積層される。
【0003】
外周余剰領域に積層されている材料は、デバイス領域に積層されている材料よりも不均一であり、その厚さは正確に制御されていない。そのため、外周余剰領域の表面は、デバイス領域の表面よりも突出している場合がある。
【0004】
外周余剰領域の表面がデバイス領域の表面よりも突出している状態で、ウェーハの表面に保護テープやサブストレート基板を貼着してウェーハの裏面を研削装置で研削した場合、外周余剰領域の突出に起因して、ウェーハの外周部が破損する場合がある。この問題に対処するため、ウェーハの裏面を研削する前に、ウェーハの外周部を円形に切削するエッジトリミングが実施される場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-043825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、金属などの材料を切削ブレードで切削すると、バリが発生し、逆に凹凸が発生してしまう恐れがある。また、エッジトリミングを実施すると、デバイス領域と外周余剰領域との間に段差が形成されるため、研削装置で外周余剰領域の吸引保持が安定せず、研削加工でエッジチッピング(欠け)が発生する恐れがある。即ち、ウェーハの外周部が破損する恐れがある。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ウェーハの外周部の破損を抑制しながらもウェーハを薄化することができるウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のウェーハの加工方法は、複数のデバイスが形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞する外周余剰領域を表面に備え、該外周余剰領域に該デバイスを形成する材料が不均一に積層され該デバイス領域よりも突出しているウェーハの加工方法であって、切削ブレードの外周面が、装着するスピンドルの回転軸に対して3度以下の角度で傾斜する切削ブレードを準備するブレード準備ステップと、切削装置のチャックテーブルの保持面でウェーハを裏面側から保持する保持ステップと、該チャックテーブルに保持されたウェーハの該外周余剰領域に、該切削ブレードの傾斜した該外周面を切り込ませた状態で該チャックテーブルを回転させ、該外周余剰領域を円形に切削し突出した該材料を除去する除去ステップと、該除去ステップを実施した後、該デバイス領域及び該外周余剰領域を含むウェーハの表面に保護部材を配設する保護部材配設ステップと、研削装置のチャックテーブルで該保護部材を介してウェーハを吸引保持し、ウェーハの裏面を研削して薄化する研削ステップと、を備え、該除去ステップを実施した後の該外周余剰領域は、該外周面の傾斜した傾斜面が転写され、該デバイス領域の周縁からウェーハの外周に向かって薄くなった傾斜領域とすることを特徴とする。
【0009】
前記ウェーハの加工方法において、該ブレード準備ステップは、該切削装置の該チャックテーブルでドレッシングボードを保持し、スピンドルに装着した該切削ブレードで該ドレッシングボードを切削し、該切削ブレードの該外周面に該傾斜面を形成しても良い。
【0010】
前記ウェーハの加工方法において、該ブレード準備ステップでは、該切削ブレードを該ドレッシングボードに所定量切り込む高さに位置付け、該除去ステップで該デバイス領域に面する一方の側面側から、該スピンドルの軸心方向に沿って該切削ブレードを移動させて該ドレッシングボードを切削し、該一方の側面側から他方の側面側に向かって該切削ブレードが拡径する形状に整形しても良い。
【0011】
前記ウェーハの加工方法において、該ブレード準備ステップ実施後で、該除去ステップ実施前に、該チャックテーブルに保持された溝形成用ボードに該切削ブレードを切り込ませ、形成された切削溝の長手方向の端部形状から該切削ブレードの該傾斜面の角度が所定の角度になっているか否かを検査する形状検査ステップを備えても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウェーハの加工方法は、ウェーハの外周部の破損を抑制しながらもウェーハを薄化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1中のII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示されたウェーハの加工方法のブレード準備ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図5図5は、図3に示されたウェーハの加工方法のブレード準備ステップを模式的に示す斜視図である。
図6図6は、図4中のVI部を拡大して示す図である。
図7図7は、図3に示されたウェーハの加工方法の保持ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図8図8は、図3に示されたウェーハの加工方法の除去ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図9図9は、図3に示されたウェーハの加工方法の除去ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。
図10図10は、図3に示されたウェーハの加工方法の保護部材配設ステップを模式的に示す断面図である。
図11図11は、図3に示されたウェーハの加工方法の研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。
図12図12は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
図13図13は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの上方に切削ブレードを位置付けた状態を一部断面で示す側面図である。
図14図14は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードに切削ブレードを切り込ませた状態を一部断面で示す側面図である。
図15図15は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの上方から切削ブレードを退避させる状態を一部断面で示す側面図である。
図16図16は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの切削溝を撮像する状態を一部断面で示す側面図である。
図17図17は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの切削溝の画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0015】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハの一例を示す斜視図である。図2は、図1中のII-II線に沿う断面図である。図3は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。
【0016】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、図1に示されたウェーハ1を加工する方法である。実施形態1に係るウェーハの加工方法の加工対象のウェーハ1は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板2とする円板状の半導体ウェーハ、又は光デバイスウェーハである。ウェーハ1は、図1に示すように、デバイス領域3と外周余剰領域4とを表面5に備える。
【0017】
デバイス領域3は、表面5に互いに交差する複数の分割予定ライン6が設定され、分割予定ライン6によって区画された各領域にデバイス7が形成されている。即ち、デバイス領域3は、複数のデバイス7が形成された領域である。
【0018】
デバイス7は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいはLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ等である。外周余剰領域4は、デバイス領域3を全周に亘って囲繞し、デバイス7が形成されていない領域である。
【0019】
また、ウェーハ1は、基板2の表面にデバイス7を形成する材料である機能層8が積層されている。機能層8は、SiOF、BSG(SiOB)等の無機物系の膜やポリイミド系、パリレン系等のポリマー膜である有機物系の膜からなる低誘電率絶縁体被膜(以下、Low-k膜と呼ぶ)と、導電性の金属により構成された導電体膜とを備えている。Low-k膜は、導電体膜と積層されて、デバイス7を形成する。導電体膜は、デバイス7の回路を構成する。このために、デバイス7は、互いに積層されたLow-k膜と、Low-k膜間に積層された導電体膜とにより構成される。
【0020】
デバイス領域3では、機能層8を構成するLow-k膜と導電体膜との厚みは、デバイス7等の設計により定めされた厚みに均一に形成されている。外周余剰領域4では、機能層8を構成するLow-k膜と導電体膜との厚みは、前述した定めされた厚みに形成されることなく、不均一に形成されている。このために、実施形態1では、外周余剰領域4の機能層8は、図2に示すように、基板2の表面に不均一に積層されて、デバイス領域3の機能層8よりもウェーハ1の厚み方向に突出している。
【0021】
実施形態1に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ1の外周余剰領域4のデバイス領域3の表面5よりも厚み方向に突出した機能層8を除去するとともに、ウェーハ1を研削して所定の厚みまで薄化する加工方法である。実施形態1に係るウェーハの加工方法は、図3に示すように、ブレード準備ステップ1001と、保持ステップ1002と、除去ステップ1003と、保護部材配設ステップ1004と、研削ステップ1005とを備える。
【0022】
(ブレード準備ステップ)
図4は、図3に示されたウェーハの加工方法のブレード準備ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。図5は、図3に示されたウェーハの加工方法のブレード準備ステップを模式的に示す斜視図である。図6は、図4中のVI部を拡大して示す図である。ブレード準備ステップ1001は、図4及び図5に示す切削装置10の切削ブレード11の外周面12が、装着するスピンドル13の回転軸14に対して3度以下の角度100(図6に示す)で傾斜する傾斜面15に形成された切削ブレード11を準備するステップである。
【0023】
実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、オペレータなどが図4に示す切削ブレード11を切削装置10のスピンドル13の先端に装着し、切削装置10のチャックテーブル16の保持面17にドレッシングボード20が載置される。ドレッシングボード20は、樹脂やセラミックスのボンド材に、WA(ホワイトアランダム、アルミナ系)、GC(グリーンカーボナイト、炭化ケイ素系)などの砥粒が混ぜ込まれて構成され、実施形態1では、平面形状が矩形状で厚みが一定の板状に形成されている。ドレッシングボード20は、切削ブレード11の切り刃が切り込むと、切削ブレード11の切り刃を消耗させるものである。
【0024】
また、実施形態1では、ドレッシングボード20は、図5に示すように、外縁部に環状フレーム21が装着された粘着テープ22に貼着され、粘着テープ22を介してチャックテーブル16の保持面17に載置される。また、実施形態1では、ドレッシングボード20は、ブレード整形用の切削溝23が形成されていてもよい。ブレード整形用の切削溝23は、ドレッシングボード20の表面から凹でかつ断面円弧状に形成されているとともに、軸心方向(以下、Y軸方向と記す)ある回転軸14と平行な直線にドレッシングボード20の全長に亘って形成されている。なお、Y軸方向は、水平方向と平行でかつ回転軸14の長手方向と平行な方向である。
【0025】
実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が、スピンドル13により切削ブレード11を回転軸14回りに回転し、吸引源18を動作させて粘着テープ22を介してチャックテーブル16の保持面17にドレッシングボード20を吸引保持し、図示しないクランプ部で環状フレーム21をクランプする。実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が、切削ブレード11の切り刃の下端をドレッシングボード20のブレード整形用の切削溝23と回転軸14に沿って並ぶ位置に位置付けるとともに、図4に実線で示すように、切削ブレード11の切り刃の下端をドレッシングボード20に所定量24切り込む高さに位置付ける。また、実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が、切削ブレード11の切り刃の除去ステップ1003においてデバイス領域3に面する一方の側面111を他方の側面112よりもドレッシングボード20寄りに位置付ける。
【0026】
実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が一方の側面111側から回転軸14に沿って切削ブレード11を移動させる。即ち、切削装置10が一方の側面111がドレッシングボード20に近づく方向に切削ブレード11とチャックテーブル16とを相対的に回転軸14(即ちY軸方向)に沿って移動させる。実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が図4に実線で示す位置から点線で示す他方の側面112がドレッシングボード20から離れた位置に亘って、切削ブレード11とドレッシングボード20とを相対的に移動させて、切削ブレード11の切り刃を切削溝23の内面に切り込ませる。実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が、スピンドル13に装着した切削ブレード11の切り刃でドレッシングボード20を切削するとともに、回転軸14に沿って切削ブレード11を移動させてドレッシングボード20の切削溝23の内面を全長に亘って切削する。
【0027】
実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10がスピンドル13に装着した切削ブレード11を図6に示すように一方の側面111側から他方の側面112側に向かって切削ブレード11が拡径する形状に整形する。こうして、実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削ブレード11の外周面12に回転軸14に対して傾斜した傾斜面15を形成する。実施形態1では、傾斜面15の回転軸14に対する角度100は、3度であるが、本発明では、0度を超えかつ3度以下であれば良い。即ち、実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、外周面12が回転軸14に対して3度以下の角度100で傾斜する傾斜面15に外周面12を形成する。このように、実施形態1において、ブレード準備ステップ1001の加工条件は、傾斜面15の角度100が0度を超えかつ3度以下となる加工条件であり、望ましくは、3度となる加工条件であるのが望ましい。
【0028】
実施形態1において、ブレード準備ステップ1001では、切削装置10が吸引源18の動作を停止してドレッシングボード20のチャックテーブル16への吸引保持を停止し、クランプ部の環状フレーム21のクランプを解除して、ドレッシングボード20をチャックテーブル16の保持面17上から搬出する。なお、図6は、角度100を実際の角度よりも誇張して大きく示している。
【0029】
(保持ステップ)
図7は、図3に示されたウェーハの加工方法の保持ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。保持ステップ1002は、切削装置10のチャックテーブル16の保持面17でウェーハ1を裏面9側から保持するステップである。
【0030】
実施形態1において、保持ステップ1002では、切削装置10のチャックテーブル16の保持面17にウェーハ1が載置される。なお、実施形態1では、ウェーハ1は、外縁部に環状フレームが装着された粘着テープ25に裏面9が貼着され、裏面9側が粘着テープ25を介してチャックテーブル16の保持面17に載置される。実施形態1では、ウェーハ1は、裏面9を粘着テープ25で固定するが、本発明では、裏面9を粘着テープ25で固定しなくてもよい。実施形態1において、保持ステップ1002では、切削装置10が、吸引源18を動作させて、図7に示すように、粘着テープ25を介してチャックテーブル16の保持面17にウェーハ1の裏面9側を吸引保持し、クランプ部で環状フレームをクランプする。
【0031】
(除去ステップ)
図8は、図3に示されたウェーハの加工方法の除去ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。図9は、図3に示されたウェーハの加工方法の除去ステップ後のウェーハを模式的に示す断面図である。除去ステップ1003は、チャックテーブル16に保持されたウェーハ1の外周余剰領域4に、切削ブレード11の傾斜した外周面12を切り込ませた状態でチャックテーブル16を回転させ、外周余剰領域4を円形に切削し、外周余剰領域4のデバイス領域3よりも突出した機能層8を除去するステップである。
【0032】
実施形態1において、除去ステップ1003では、切削装置10が、切削ブレード11の切り刃の下端をウェーハ1の外周余剰領域4と、加工送り方向であるX軸方向に並ぶ位置に位置付けるとともに、切削ブレード11の切り刃の下端をウェーハ1の表面5側から外周余剰領域4に所定量切り込む高さに位置付ける。X軸方向は、水平方向と平行でかつY軸方向に対して直交する方向である。なお、所定量とは、切削ブレード11の傾斜面15の一方の側面111側の端のZ軸方向の高さが、チャックテーブル16に保持されたウェーハ1のデバイス領域3の表面5のZ軸方向の高さと同一以上であり、外周余剰領域4でデバイス領域3よりも突出した機能層8を切削ブレード11の外周面が除去できる量である。なお、Z軸方向は、X軸方向とY軸方向との双方に対して直交する方向である。
【0033】
実施形態1において、除去ステップ1003では、切削装置10が、ウェーハ1に対して切削ブレード11が近づく方向に切削ブレード11とチャックテーブル16とを相対的にX軸方向に沿って移動させて、切削ブレード11の切り刃の下端を外周余剰領域4に切り込ませるとともに、図8に示すように、切削ブレード11の切り刃の下端が外周余剰領域4に切り込むと、チャックテーブル16を軸心19回りに回転させて、ウェーハ1を回転する。
【0034】
なお、実施形態1において、除去ステップ1003では、切削ブレード11の切り刃の下端が外周余剰領域4に切り込むと、一方の側面111が他方の側面112よりもデバイス領域3側即ちウェーハ1の内周側に位置する。実施形態1において、除去ステップ1003では、切削装置10が、外周余剰領域4の全周に亘って切削ブレード11を切り込ませると、切削ブレード11をチャックテーブル16から退避させ、吸引源18の動作を停止してウェーハ1のチャックテーブル16への吸引保持を停止し、クランプ部の環状フレーム21のクランプを解除して、ウェーハ1をチャックテーブル16の保持面17上から搬出する。
【0035】
こうして、実施形態1において、切削装置10が、ウェーハ1の外周余剰領域4を全周に亘って円形に切削し、図9に示すように、デバイス領域3よりも突出した機能層8を除去する。また、除去ステップ1003を実施した後のウェーハ1の外周余剰領域4は、切削ブレード11の外周面12の傾斜した傾斜面15が転写されて、デバイス領域3の外周縁からウェーハ1の外周に向かって徐々に薄くなった傾斜領域401となる。なお、傾斜領域401のデバイス領域3の表面5とのなす角度402は、前述した切削ブレード11の角度100と等しい。傾斜領域401のデバイス領域3の表面5とのなす角度402が切削ブレード11の角度100と等しいは、外周余剰領域4に切削ブレード11の外周面12の傾斜した傾斜面15が転写されたことを示している。なお、図9は、角度402を実際の角度よりも誇張して大きく示している。
【0036】
(保護部材配設ステップ)
図10は、図3に示されたウェーハの加工方法の保護部材配設ステップを模式的に示す断面図である。保護部材配設ステップ1004は、除去ステップ1003を実施した後、デバイス領域3及び外周余剰領域4を含むウェーハ1の表面5に保護部材30を配設するステップである。
【0037】
実施形態1において、保護部材配設ステップ1004では、図10に示すように、保護部材30としてウェーハ1と同径の円板状の保護テープをウェーハ1の表面5に貼着し、粘着テープ25を剥がす。実施形態1では、保護部材30である保護テープは、全体として可撓性を有し、非粘着性の合成樹脂で構成された基材層と、基材層に積層されかつ粘着性の合成樹脂で構成されてウェーハ1の表面5に貼着する粘着層とを備えている。また、本発明では、保護部材配設ステップ1004では、保護部材30として、保護テープの他にガラス又はシリコンなどの硬質な材料で構成された円板状のサブストレート基板をウェーハ1の表面5に貼着しても良い。
【0038】
(研削ステップ)
図11は、図3に示されたウェーハの加工方法の研削ステップを一部断面で模式的に示す側面図である。研削ステップ1005は、研削装置40のチャックテーブル41で保護部材30を介してウェーハ1を吸引保持し、ウェーハ1の裏面9を研削して、ウェーハ1を薄化するステップである。
【0039】
実施形態1において、研削ステップ1005では、図11に示すように、研削装置40がチャックテーブル41のポーラスセラミックで構成された保持面42に保護部材30を介してウェーハ1の表面5側を載置し、図示しない真空吸引源により保持面17を吸引して保護部材30を介してウェーハ1の表面5側を吸引保持する。研削ステップ1005では、研削装置40がチャックテーブル41を軸心回りに回転させつつ研削ユニット43の研削砥石44を軸心回りに回転させてウェーハ1の裏面9に接触させて、裏面9を研削する。研削ステップ1005では、研削装置40が所定の厚みになるまでウェーハ1を研削して薄化する。研削ステップ1005では、研削装置40が所定の厚みになるまでウェーハ1を薄化すると、ウェーハの加工方法を終了する。
【0040】
以上説明した実施形態1に係るウェーハの加工方法は、回転軸14に対する角度100が3度以下の非常に小さい角度でY軸方向に対して傾斜した切削ブレード11の傾斜面15で外周余剰領域4を切削するので、バリの発生を抑えつつ、段差が形成されることを抑制できる。また、ウェーハの加工方法は、除去ステップ1003において、ウェーハ1の外周余剰領域4に前述した傾斜領域401を形成するので、仮にバリを発生させても、発したバリが傾斜領域401に沿って延在することとなり、デバイス領域3の表面5から厚み方向に突出することを抑制できる。このために、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、研削ステップ1005中、ウェーハ1を確実に外周部まで固定出来、ウェーハ1の外周部の破損を抑制できるという効果を奏する。その結果、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、ウェーハ1の外周部の破損を抑制しながらもウェーハ1を薄化することができるという効果を奏する。
【0041】
また、実施形態1に係るウェーハの加工方法は、切削ブレード11の傾斜面15が切削装置10のスピンドル13に切削ブレード11を装着した後に形成されるため、回転軸14に対する角度100が3度以下の非常に小さい角度の傾斜面15でも確実に形成することができるという効果を奏する。
【0042】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係るウェーハの加工方法を図面に基づいて説明する。図12は、実施形態2に係るウェーハの加工方法の流れを示すフローチャートである。図13は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの上方に切削ブレードを位置付けた状態を一部断面で示す側面図である。図14は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードに切削ブレードを切り込ませた状態を一部断面で示す側面図である。図15は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの上方から切削ブレードを退避させる状態を一部断面で示す側面図である。図16は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの切削溝を撮像する状態を一部断面で示す側面図である。図17は、図12に示されたウェーハの加工方法の形状検査ステップにおいて、チャックテーブルに保持された溝形成用ボードの切削溝の画像の一例を示す図である。なお、図12図13図14図15図16及び図17は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0043】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、図12に示すように、ブレード準備ステップ1001実施後で、除去ステップ1003実施前に実施する形状検査ステップ1010を備えること以外、実施形態1と同じである。なお、実施形態2では、ウェーハの加工方法は、ブレード準備ステップ1001実施後で、保持ステップ1002実施前に形状検査ステップ1010を実施するが、本発明では、ブレード準備ステップ1001実施後で、除去ステップ1003実施前に形状検査ステップ1010を実施すれば、形状検査ステップ1010を保持ステップ1002実施前に実施することに限定されない。
【0044】
形状検査ステップ1010は、チャックテーブル16に保持された溝形成用ボード26に切削ブレード11を切り込ませ、形成された切削溝27(図14等に示す)の長手方向の端部28の形状から切削ブレード11の傾斜面15の角度100が所定の角度である0度を超えかつ3度以下になっているか否かを検査するステップである。
【0045】
実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10のチャックテーブル16の保持面17に溝形成用ボード26が載置される。溝形成用ボード26は、実施形態1では、平面形状が矩形状で厚みが一定の板状に形成されている。溝形成用ボード26は、切削ブレード11が切り込まれると、切削ブレード11を極力消耗させることなく切削溝27が形成される材料、例えばシリコンやウェーハ1の基板2と同じ材料で構成されている。
【0046】
実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10が、吸引源18を動作させてチャックテーブル16の保持面17に溝形成用ボード26を吸引保持し、図13に示すように、スピンドル13により回転された切削ブレード11をチャックテーブル16の保持面17に吸引保持された溝形成用ボード26の上方に位置付ける。実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10が、切削ブレード11をZ軸方向に沿って下降して、図14に示すように、切削ブレード11の切り刃の下端を溝形成用ボード26に切り込ませて、溝形成用ボード26に切削溝27を形成する。
【0047】
実施形態2において、形状検査ステップ1010では、図15に示すように、切削装置10が、切削ブレード11をZ軸方向に沿って上昇して、切削ブレード11の下方から溝形成用ボード26を保持したチャックテーブル16を退避する。実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10が、図16に示すように、切削装置10の撮像装置29をチャックテーブル16の保持面17に吸引保持された溝形成用ボード26の上方に位置付け、撮像装置29で溝形成用ボード26を撮像して、図17に示す切削溝27の両端部28(本発明では、少なくとも一方の端部28を含んでいればよい)を含む画像200を取得する。
【0048】
実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10が、図17に示す画像200から切削溝27の端部28において一方の側面111により切削された端と他方の側面112により切削された端とのX軸方向の距離271と、切削溝27の幅272を算出し、算出した距離271と幅272とから傾斜面15の角度100を算出する。実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10が、算出した傾斜面15の角度100が0度を超えかつ3度以下になっているか否かを判定する。実施形態2において、形状検査ステップ1010では、切削装置10が算出した傾斜面15の角度100が0度を超えかつ3度以下になっていると判定すると、ウェーハの加工方法を継続し、切削装置10が算出した傾斜面15の角度100が0度を超えかつ3度以下になっていないと判定すると、ウェーハの加工方法を一旦停止して、オペレータに報知する。
【0049】
実施形態2に係るウェーハの加工方法は、回転軸14に対する角度100が3度以下の非常に小さい角度でY軸方向に対して傾斜した切削ブレード11の傾斜面15で外周余剰領域4を切削するので、バリの発生を抑えつつ、段差が形成されることを抑制でき、実施形態1と同様に、ウェーハ1の外周部の破損を抑制しながらもウェーハ1を薄化することができるという効果を奏する。
【0050】
また、実施形態2に係るウェーハの加工方法は、ブレード準備ステップ1001実施後で、除去ステップ1003実施前に実施する形状検査ステップ1010を備えるので、傾斜面15の形状も切削装置10で検査するので、安定的な形状の維持ができるという効果を奏する。
【0051】
次に、本発明の発明者は、実施形態1に係るウェーハの加工方法の効果を確認した。結果を以下の表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
なお、表1の確認では、傾斜面15の角度100が互いに異なる本発明品1、本発明品2、比較例1及び比較例2の切削ブレード11を形成し、これらの切削ブレード11それぞれで除去ステップ1003を実施した後、研削ステップ1005でのウェーハ1の特に外周縁の破損の有無を確認した。
【0054】
本発明品1は、角度100が1度の切削ブレード11であり、本発明品2は、角度100が3度の切削ブレード11であり、比較例1は、角度100が0度(即ち、外周面12が回転軸14と平行で傾斜面15が形成されていない)の切削ブレード11であり、比較例2は、角度100が5度の切削ブレード11である。
【0055】
比較例1では、除去ステップ1003後、ウェーハ1の外周縁にデバイス領域3の表面5よりも厚み方向に突出したバリが形成されるので、研削ステップ1005中、ウェーハ1の外周縁をチャックテーブル16の保持面17に吸引保持できずに、ウェーハ1の外周縁が破損した。また、比較例1では、除去ステップ1003において切削ブレード11を外周余剰領域4に切り込ませて、外周余剰領域4がデバイス領域3よりも低い段差を形成すると、研削ステップ1005中、ウェーハ1の外周縁をチャックテーブル16の保持面17に吸引保持できずに、ウェーハ1の外周縁が破損した。また、比較例2では、ウェーハ1の外周縁と保護部材30とが密着せずに、研削ステップ1005中、ウェーハ1の外周縁をチャックテーブル16の保持面17に吸引保持できずに、ウェーハ1の外周縁が破損した。
【0056】
このような比較例1及び比較例2に対して、本発明品1及び本発明品2は、ウェーハ1の外周縁と保護部材30とが密着して、研削ステップ1005中、ウェーハ1の外周縁をチャックテーブル16の保持面17に吸引保持でき、ウェーハ1の外周縁が破損しなかった。よって、表1によれば、傾斜面15の角度100を0度を超えかつ3度以下とすることで、ウェーハ1の外周部の破損を抑制しながらもウェーハ1を薄化することができるという効果を奏することが明らかとなった。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 ウェーハ
3 デバイス領域
4 外周余剰領域
5 表面
7 デバイス
8 機能層(材料)
9 裏面
10 切削装置
11 切削ブレード
12 外周面
13 スピンドル
14 回転軸(軸心方向)
15 傾斜面
16 チャックテーブル
17 保持面
20 ドレッシングボード
24 所定量
26 溝形成用ボード
27 切削溝
28 端部
30 保護部材
40 研削装置
41 チャックテーブル
42 保持面
100 角度
111 一方の側面
112 他方の側面
401 傾斜領域
1001 ブレード準備ステップ
1002 保持ステップ
1003 除去ステップ
1004 保護部材配設ステップ
1005 研削ステップ
1010 形状検査ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17