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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】保護部材形成装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240308BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240308BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240308BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
H01L21/68 N
B05C9/12
H01L21/304 622J
H01L21/78 N
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020121641
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018500
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 良典
(72)【発明者】
【氏名】右山 芳国
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-248544(JP,A)
【文献】特開平5-104050(JP,A)
【文献】特開2005-145031(JP,A)
【文献】特開平11-10694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B05C 9/12
H01L 21/304
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物の一方の面に所望の厚さの樹脂の層を形成する保護部材形成装置であって、
被加工物をシートを介して保持するチャックテーブルと、
外的刺激によって硬化する液状樹脂を貯留するタンクと、
該タンクから該チャックテーブルに保持されたシートに該液状樹脂を供給するポンプ及び配管を備える樹脂供給ユニットと、
該チャックテーブルに保持されたシートの一方の面に供給された該液状樹脂に被加工物の該一方の面を対面させて被加工物を押圧する押圧ユニットと、
該押圧ユニットで押圧された該液状樹脂に外的刺激を付与し該液状樹脂を硬化させる硬化ユニットと、
該液状樹脂の品質変化に伴う粘度の変化を検知する樹脂検査部と、
作業者に情報を伝達する報知ユニットと、を備え、
該樹脂検査部は、
該ポンプによって該配管を流れる該液状樹脂の流量、又は該液状樹脂を押圧する該押圧ユニットにかかる荷重を測定し、
測定値が予め設定した許容範囲を外れた場合、該測定値が許容範囲外であることを報知ユニットで報知する保護部材形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護部材形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップや各種電子部品を製造する過程で、各種デバイスが形成されたウェーハ等の板状の被加工物を薄くしたりチップに分割する工程がある。被加工物は、チャックテーブルに保持されて加工されるが、その際、被加工物が破損しないよう、被加工物の表面は粘着テープ等の樹脂シートや基板に貼られて保護されている。
【0003】
例えば、金属電極バンプなど凹凸が表面にある被加工物の場合、凹凸に粘着テープを密着させて貼着するのは難しく、隙間に加工屑や加工液が浸入し剥がれやすい。さらに、粘着テープが充分に凹凸を吸収できないため、被加工物を研削して薄化する際に、凹凸が被加工物に転写されてしまうという課題がある。
【0004】
そこで、紫外線などの外的刺激で硬化する液状樹脂を平坦に積層させて、保護部材とする加工方法が考案された(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6312343号公報
【文献】特開2017-168565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した特許文献1及び特許文献2に示された加工方法において用いられる液状樹脂は、保管方法(保管温度や保管日数)によって劣化(変化)しやすく、劣化した液状樹脂を使うと所望の固定力が得られない場合がある。
【0007】
特に、液状樹脂が保管中に固まると、所望の量が被加工物の表面に供給されずに、被加工物の表面全体を被覆できなくなる場合が生じたり、所望の厚さで液状樹脂を積層できなくなる場合が生じる。このように、前述した特許文献1及び特許文献2に示された加工方法において用いられる液状樹脂は、劣化により被加工物に積層させると不具合が生じることがあった。しかし、液状樹脂をみただけでは、液状樹脂の変化に気づくことは難しい。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液状樹脂を積層して構成される保護部材の積層時の不具合を抑制することができる保護部材形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の保護部材形成装置は、板状の被加工物の一方の面に所望の厚さの樹脂の層を形成する保護部材形成装置であって、被加工物をシートを介して保持するチャックテーブルと、外的刺激によって硬化する液状樹脂を貯留するタンクと、該タンクから該チャックテーブルに保持されたシートに該液状樹脂を供給するポンプ及び配管を備える樹脂供給ユニットと、該チャックテーブルに保持されたシートの一方の面に供給された該液状樹脂に被加工物の該一方の面を対面させて被加工物を押圧する押圧ユニットと、該押圧ユニットで押圧された該液状樹脂に外的刺激を付与し該液状樹脂を硬化させる硬化ユニットと、該液状樹脂の品質変化に伴う粘度の変化を検知する樹脂検査部と、作業者に情報を伝達する報知ユニットと、を備え、該樹脂検査部は、該ポンプによって該配管を流れる該液状樹脂の流量、又は該液状樹脂を押圧する該押圧ユニットにかかる荷重を測定し、測定値が予め設定した許容範囲を外れた場合、該測定値が許容範囲外であることを報知ユニットで報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、液状樹脂を積層して構成される保護部材の積層時の不具合を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る保護部材形成装置の構成例を一部断面で模式的に示す側面図である。
図2図2は、図1に示された保護部材形成装置により保護部材が形成される被加工物を示す斜視図である。
図3図3は、図2に示された被加工物の要部の断面図である。
図4図4は、図1に示された保護部材形成装置の樹脂供給ユニットの要部を模式的に示す断面図である。
図5図5は、図1に示された保護部材形成装置の押圧ユニットが液状樹脂に被加工物を押圧している状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
図6図6は、実施形態2に係る保護部材形成装置の構成例を一部断面で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る保護部材形成装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る保護部材形成装置の構成例を一部断面で模式的に示す側面図である。図2は、図1に示された保護部材形成装置により保護部材が形成される被加工物を示す斜視図である。図3は、図2に示された被加工物の要部の断面図である。図4は、図1に示された保護部材形成装置の樹脂供給ユニットの要部を模式的に示す断面図である。図5は、図1に示された保護部材形成装置の押圧ユニットが液状樹脂に被加工物を押圧している状態を一部断面で模式的に示す側面図である。
【0014】
実施形態1に係る図1に保護部材形成装置1は、図2に示された被加工物200の一方の面である表面203に所望の厚さの樹脂の層である図3に示す保護部材210を形成する装置である。実施形態1に係る保護部材形成装置1により保護部材210が形成される被加工物200は、シリコン(Si)、サファイア(Al)、ガリウムヒ素(GaAs)または炭化ケイ素(SiC)等を基板201とする円板状の半導体ウェーハ、光デバイスウェーハ等のウェーハである。
【0015】
被加工物200は、図2に示すように、交差する複数の分割予定ライン202で区画された表面203の各領域それぞれにデバイス204が形成されている。各デバイス204は、図3に示すように、各デバイス204の電極に接続して、表面203よりも突出したバンプ205を有している。デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、あるいやLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサ、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等である。バンプ205は、導電性の金属により構成され、実施形態1では、球状に形成されている。
【0016】
バンプ205は、デバイス204とこのデバイス204が実装される基板等の電極とを電気的に接続するものである。実施形態1において、被加工物200は、表面203よりも突出したバンプ205を有することで、表面203に凹凸が形成されている。また、実施形態1では、被加工物200は、バンプ205を有して表面203に凹凸が形成されているが、本発明では、バンプ205を備えていなくても良い。また、本発明では、被加工物200は、ウェーハに限らず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状の樹脂パッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0017】
実施形態1において、被加工物200は、表面203側に保護部材210が形成され、保護部材210を介して表面203側が研削装置のチャックテーブルに保持された状態で表面203の裏側の裏面207側が研削されて、所定の仕上げ厚さまで薄化される。被加工物200は、薄化された後、分割予定ライン202に沿って個々のデバイス204に分割される。
【0018】
実施形態1において、保護部材210は、図3に示すように、樹脂フィルム211、樹脂層212及び樹脂シート213(シートに相当)を備えて、2層以上の樹脂で形成されている。実施形態1では、樹脂フィルム211は、薄手の可撓性を有する合成樹脂(実施形態1では、PO(Polyolefin))により構成され、シート状に形成されている。樹脂フィルム211は、被加工物200の表面203及びバンプ205の表面に密着して、これらに貼着されている。
【0019】
実施形態1では、樹脂層212は、外的刺激が付与されることによって硬化する液状樹脂214(図1に示す)により構成され、樹脂フィルム211上に積層されている。樹脂層212を構成する液状樹脂214は、外的刺激として紫外線が照射されることによって硬化する紫外線硬化型の液状樹脂であるが、本発明では、これに限定されずに例えば、加熱されることによって硬化する液状樹脂でも良い。液状樹脂214は、例えば、DISCO株式会社製ResiFlat、又はデンカ株式会社製のTEMPLOCにより構成される。
【0020】
樹脂シート213は、紫外線を透過しかつ薄手の可撓性を有する合成樹脂(実施形態1では、PO(Polyolefin))により構成され、フィルム状に形成されている。樹脂シート213は、樹脂層212上に積層されている。樹脂層212は、樹脂フィルム211と樹脂シート213との間に積層された液状樹脂214が、外的刺激が付与されることによって硬化して構成されている。保護部材210と被加工物200を合わせた厚さは表面203の全体に亘って一様の厚さである。
【0021】
実施形態1に係る保護部材形成装置1は、図1に示すように、チャックテーブル10と、タンク20と、樹脂供給ユニット30と、押圧ユニット50と、硬化ユニット60と、樹脂検査部70と、報知ユニット103とを備える。
【0022】
チャックテーブル10は、被加工物200よりも大径な円盤状に形成され、上面11が水平方向に沿って平坦に形成されている。チャックテーブル10は、上面11に被加工物200よりも大径な円板状の樹脂シート213が載置される。チャックテーブル10は、上面11に図示しない吸引源に接続された吸引孔が複数開口しており、吸引源により吸引孔が吸引されることで、上面11に樹脂シート213を吸引保持する。また、実施形態1では、チャックテーブル10は、ガラス等の透光性を有する材料により構成されている。
【0023】
タンク20は、液状樹脂214を貯留するものである。実施形態1では、タンク20は、第1タンク21と、第2タンク23とを備える。第1タンク21は、上部に開口22を設け、内部に液状樹脂214を収容する容器である。第2タンク23は、上部に流入口24を設け、下部に排出口25を設けた、内部に液状樹脂214を収容する容器である。
【0024】
樹脂供給ユニット30は、タンク20からチャックテーブル10に保持された樹脂シート213の一方の面である表面215に液状樹脂214を供給するものである。樹脂供給ユニット30は、配管31と、ポンプ40とを備える。
【0025】
配管31は、供給側配管32と、排出側配管33とを備える。供給側配管32及び排出側配管33は、内側に液状樹脂214を通すことが可能な筒状(実施形態1では、円筒状)の配管である。供給側配管32は、一端が第1タンク21の開口22に接続し、他端が第2タンク23の上部に設けられた流入口24に接続している。供給側配管32は、第1タンク21内の液状樹脂214を第2タンク23内に導く。
【0026】
排出側配管33は、一端が第2タンク23の排出口25に接続し、他端がチャックテーブル10の上面11に対面可能なノズル34に接続している。排出側配管33は、第2タンク23内の液状樹脂214をノズル34に導く。ノズル34は、チャックテーブル10の上面11の中央と鉛直方向に沿って対向する樹脂供給位置と、チャックテーブル10の上面11上から退避する退避位置とに亘って図示しない移動機構により移動自在に設けられている。ノズル34は、樹脂供給位置に位置付けられて、チャックテーブル10の上面11に保持された樹脂シート213上に液状樹脂214を供給する。
【0027】
ポンプ40は、タンク20の第1タンク21からチャックテーブル10の上面11に保持された樹脂シート213上に液状樹脂214を供給するものである。ポンプ40は、第1ポンプ41と、第2ポンプ42とを備える。
【0028】
第1ポンプ41は、供給側配管32に設置され、第1タンク21内の液状樹脂214を第2タンク23に向けて供給側配管32を通して送り出す。第2ポンプ42は、排出側配管33に設置され、第2タンク23内の液状樹脂214をノズル34に向けて排出側配管33を通して送り出す。
【0029】
第2ポンプ42は、図4に示すように、シリンダ43と、第1弁44と、第2弁45と、ピストンユニット46とを備える。シリンダ43は、内部に空間431が形成され、排出側配管33に接続する流入口432及び排出口433とを備える。流入口432及び排出口433は、シリンダ43の内外を連通する開口であり、実施形態1では、互いに対向している。流入口432は、排出側配管33の第2タンク23側の部分が接続して、第2タンク23から液状樹脂214が流入する。排出口433は、排出側配管33のノズル34側の部分が接続して、シリンダ43内の液状樹脂214をノズル34に向けて排出する。
【0030】
第1弁44は、流入口24に設置され、流入口24を開閉する開閉弁である。第1弁44は、開くと、流入口24を通して第2タンク23から液状樹脂214がシリンダ43内に流入することを許容する。第1弁44は、閉じると、流入口24を通して第2タンク23から液状樹脂214がシリンダ43内に流入することを規制するとともに、シリンダ43内の液状樹脂214が流入口24を通して第2タンク23側に排出されることを規制する。
【0031】
第2弁45は、排出口433に設置され、排出口433を開閉する開閉弁である。第2弁45は、開くと、排出口433を通してシリンダ43内の液状樹脂214がノズル34に向けて排出することを許容する。第2弁45は、閉じると、排出口433を通してシリンダ43内の液状樹脂214がノズル34に向けて排出することを規制する。
【0032】
ピストンユニット46は、シリンダ43内を移動自在に設けられたピストン461と、駆動用シリンダ462とを備える。ピストン461は、シリンダ43内を移動することで、空間431の容積即ちシリンダ43内の容積を変化させる。ピストン461は、流入口24及び排出口433に近接する図4に示す近接位置と、近接位置よりも流入口24及び排出口433から離れた離間位置とに亘ってシリンダ43内を移動する。ピストン461は、近接位置では、シリンダ43内の容積を縮小させ、離間位置では、シリンダ43内の容積を近接位置よりも拡大させる。なお、ピストン461は、シリンダ43の内面との間が液密に保たれている。
【0033】
駆動用シリンダ462は、シリンダ本体463と、シリンダ本体463から伸縮自在でかつ先端にピストン461を接続した伸縮ロッド464とを備える。駆動用シリンダ462は、伸縮ロッド464をシリンダ本体463から伸縮することで、ピストン461を近接位置と離間位置とに亘って移動させる。実施形態1では、駆動用シリンダ462は、伸縮ロッド464をシリンダ本体463から伸長することで、ピストン461を近接位置に位置付け、伸縮ロッド464をシリンダ本体463に縮小することで、ピストン461を離間位置に位置付ける。
【0034】
第2ポンプ42は、駆動用シリンダ462が伸縮ロッド464を伸長して、ピストン461が近接位置に位置した状態で第2弁45を閉じ、第1弁44を開いて、駆動用シリンダ462が伸縮ロッド464を縮小して、ピストン461を離間位置に向けて移動させて流入口24を通してシリンダ43内に液状樹脂214を取り込む。第2ポンプ42は、駆動用シリンダ462が伸縮ロッド464を縮小して、ピストン461が離間位置に位置した状態で第1弁44を閉じ、第2弁45を開いて、駆動用シリンダ462が伸縮ロッド464を伸長して、ピストン461を近接位置に向けて移動させて排出口433を通してシリンダ43内の液状樹脂214をノズル34に向けて送り出す。
【0035】
押圧ユニット50は、チャックテーブル10に保持された樹脂シート213の表面215に供給された液状樹脂214に被加工物200の表面203を対面させて被加工物200を液状樹脂214に向けて押圧するものである。押圧ユニット50は、保持部材51と、保持部材51に取り付けられた昇降部材52と、送りユニット53とを備える。
【0036】
保持部材51は、被加工物200よりも大径な円盤状に形成され、下面511が水平方向に沿って平坦に形成されている。保持部材51は、下面511に図示しない吸引源に接続された吸引孔が複数開口しており、吸引源により吸引孔が吸引されることで、下面511に被加工物200を吸引保持する。実施形態1では、保持部材51は、外周縁に環状フレーム216が貼着されかつ被加工物200よりも大径な樹脂フィルム211が表面203及びバンプ205の表面に隙間なく密着した被加工物200の裏面207及び環状フレーム216を下面511に吸引保持する。
【0037】
昇降部材52は、保持部材51の上面などに固定されている。送りユニット53は、鉛直方向と平行に配置されかつ軸心回りに回転自在に設けられているとともに昇降部材52のねじ孔に螺合した周知のボールねじ54と、図示しない装置本体に取り付けられかつボールねじ54を軸心回りに回転させて保持部材51を鉛直方向に沿って昇降させるモータ55と、装置本体に取り付けられかつ昇降部材52を鉛直Z軸方向に移動自在に支持する周知の図示しないガイドレールと、モータ55に供給する電力を制御するモータ制御部56とを備える。モータ制御部56は、樹脂検査部70の制御ユニット100からの制御信号にしたがってモータ55に供給する電力を制御する所謂モータドライバである。モータ制御部56は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサー、又は並列プログラム化したプロセッサー等の専用の処理回路(ハードウェア)で構成されている。
【0038】
押圧ユニット50は、保持部材51の下面511に被加工物200を吸引保持し、送りユニット53がボールねじ54を軸心回りに回転することで、保持部材51に保持した被加工物200をチャックテーブル10に保持された樹脂シート213の表面215に供給された液状樹脂214に向けて押圧する。
【0039】
硬化ユニット60は、押圧ユニット50で押圧された液状樹脂214に外的刺激を付与し液状樹脂214を硬化させるものである。実施形態1では、硬化ユニット60は、液状樹脂214に外的刺激である紫外線を照射する紫外線照射ランプであり、チャックテーブル10内に設置されている。
【0040】
樹脂検査部70は、樹脂供給ユニット30がチャックテーブル10に保持された樹脂シート213の表面215に供給する液状樹脂214の品質変化に伴う粘度の変化を検知するものである。樹脂検査部70は、測定ユニット71と、制御ユニット100とを備える。
【0041】
測定ユニット71は、ポンプ40の第2ポンプ42によって配管31の排出側配管33内を流れてノズル34に供給される液状樹脂214の流量を測定する流量計である。実施形態1では、測定ユニット71は、排出側配管33の第2ポンプ42よりもノズル34寄りの位置に設置されている。測定ユニット71は、液状樹脂214の流量を測定し、測定値を制御ユニット100に出力する。測定ユニット71は、電磁式流量計、カルマン渦式流量計、羽車式流量計、浮き子式流量計、又は熱式流量計により構成される。
【0042】
制御ユニット100は、第2ポンプ42によって配管31の排出側配管33内を流れてノズル34に供給される液状樹脂214の流量の許容範囲を予め記憶している。許容範囲は、予め設定された範囲であって、押圧ユニット50で被加工物200を押圧した際に、液状樹脂214が所望の厚さで被加工物200全体を被覆することが可能な排出側配管33内を流れる液状樹脂214の流量の範囲である。
【0043】
制御ユニット100は、測定ユニット71の測定値が許容範囲を外れた場合、測定値が許容範囲外であることを作業員に情報を伝達する報知ユニット103で報知するものである。制御ユニット100は、測定ユニット71の測定値が許容範囲を外れたか否かを判定する。制御ユニット100は、測定ユニット71の測定値が許容範囲を外れた場合には、報知ユニット103を動作させて、作業員に測定値が許容範囲を外れた旨を報知する。
【0044】
また、制御ユニット100は、保護部材形成装置1を構成する各構成要素を制御して、被加工物200の表面203側に保護部材210を形成する保護部材形成動作を保護部材形成装置1に実行させるものである。制御ユニット100は、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0045】
制御ユニット100の演算処理装置は、ROMに記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、保護部材形成装置1を制御するための制御信号を生成する。制御ユニット100の演算処理装置は、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介して保護部材形成装置1の各構成要素に出力する。
【0046】
また、制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット101や、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニット102と、報知ユニット103とに接続されている。入力ユニット102は、表示ユニット101に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット103は、音と光とのうち少なくとも一方を発することで、作業員に情報を伝達し、作業員に報知するものである。また、本発明では、報知ユニット103は、情報を通線通信手段または無線通信手段で発信し、サーバーや端末等の電子機器を介して作業員に通知するものでも良い。
【0047】
前述した構成の保護部材形成装置1は、制御ユニット100が各構成要素を制御して、保護部材210を形成する保護部材形成動作を実行する。保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、樹脂供給ユニット30のノズル34を退避位置に位置付けて、第1ポンプ41を動作させて第1タンク21から第2タンク23に液状樹脂214を供給して、第2タンク23内に液状樹脂214を貯留する。保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、チャックテーブル10の上面11に樹脂シート213を吸引保持し、チャックテーブル10から離間した保持部材51の下面511に被加工物200の裏面207側及び環状フレーム216を吸引保持する。
【0048】
保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、樹脂供給ユニット30のノズル34を樹脂供給位置に位置付けて、第2ポンプ42等を動作させるなどして、第2タンク23内の所定の量の液状樹脂214をノズル34から樹脂シート213の表面215に供給する。保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、測定ユニット71が第2ポンプ42によって排出側配管33を流れる液状樹脂214の流量を測定し、測定値が許容範囲を外れたか否かを制御ユニット100が判定する。
【0049】
保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、測定値が許容範囲を外れたと制御ユニット100が判定すると、報知ユニット103を動作させて、作業員に測定値が許容範囲外であることを報知ユニット103で報知して、保護部材形成動作を停止する。保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、測定値が許容範囲を外れていないと制御ユニット100が判定すると、樹脂供給ユニット30のノズル34を退避位置に位置付けて、押圧ユニット50により保護部材210に吸引保持した被加工物200を、保護部材210が所望の厚さになる位置まで下降する。
【0050】
すると、被加工物200の表面203側が樹脂フィルム211を介して樹脂シート213の表面215上の液状樹脂214に接触し、被加工物200の下降とともに、液状樹脂214が樹脂シート213の外周に向かって押し広げられる。そして、被加工物200が、図5に示すように、保護部材210が所望の厚さになる位置まで下降すると、液状樹脂214が樹脂シート213及び樹脂フィルム211に密着して、被加工物200の表面203全体を樹脂フィルム211を介して被覆することとなる。
【0051】
保護部材形成動作では、保護部材形成装置1は、保護部材210が所望の厚さになる位置で被加工物200を停止させ、硬化ユニット60を動作させて、硬化ユニット60から紫外線を樹脂シート213と樹脂フィルム211との間の液状樹脂214に所定時間照射する。保護部材形成装置1は、液状樹脂214を硬化して、被加工物200の表面203に所望の厚さの保護部材210を形成する。保護部材形成装置1は、保持部材51の吸引保持を停止する。すると、チャックテーブル10が、被加工物200を樹脂シート213を介して吸引保持する。保護部材形成装置1は、押圧ユニット50により保持部材51を上昇させて、保護部材形成動作を終了する。
【0052】
以上説明した実施形態1に係る保護部材形成装置1は、液状樹脂214の粘度が変化する事によって生じる、配管31内での液状樹脂214の流量を樹脂検査部70の測定ユニット71で測定し、測定値が許容範囲を外れた場合にはその旨を報知ユニット103により報知する。このために、保護部材形成装置1は、劣化(変化)した液状樹脂214を誤って用いる事を抑制することができる。その結果、保護部材形成装置1は、液状樹脂214を積層して構成される保護部材210の積層時の不具合を抑制することができるという効果を奏する。
【0053】
〔実施形態2〕
実施形態2に係る保護部材形成装置を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態2に係る保護部材形成装置の構成例を一部断面で模式的に示す側面図である。図6は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
実施形態2に係る保護部材形成装置1は、樹脂検査部70-2が実施形態1と異なること以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係る保護部材形成装置1の樹脂検査部70-2は、図6に示すように、測定ユニット71-2と、制御ユニット100とを備える。
【0055】
樹脂検査部70-2は、押圧ユニット50が保持部材51に保持した被加工物200を下降させて被加工物200で液状樹脂214を押圧する際の押圧ユニット50にかかる荷重を測定するものである。実施形態2では、測定ユニット71は、昇降部材52に取り付けられ、前述した荷重に応じた歪みを測定する歪みゲージである。なお、本発明では、測定ユニット71が取り付けられるのは、昇降部材52に限定されない。測定ユニット71-2は、押圧ユニット50が保持部材51に保持した被加工物200を下降させて被加工物200で液状樹脂214を押圧する際の歪みを測定し、測定結果を制御ユニット100に出力する。
【0056】
制御ユニット100は、測定ユニット71の測定結果である歪みから押圧ユニット50にかかる荷重を算出し、測定値である算出した荷重が、予め記憶した荷重の許容範囲(押圧ユニット50で被加工物200を押圧した際に、液状樹脂214が所望の厚さで被加工物200全体を被覆することが可能な荷重の範囲)を外れたか否かを判定する。制御ユニット100は、測定値である算出した荷重が許容範囲を外れた場合には、報知ユニット103を動作させて、作業員に測定値が許容範囲外であることを報知ユニット103で報知する。
【0057】
実施形態2に係る保護部材形成装置1は、液状樹脂214の粘度が変化する事によって生じる、押圧ユニット50にかかる荷重を樹脂検査部70-2で測定し、測定値が許容範囲を外れた場合にはその旨を報知ユニット103により報知するため、劣化(変化)した液状樹脂214を誤って用いる事を抑制することができる。その結果、保護部材形成装置1は、実施形態1と同様に、液状樹脂214を積層して構成される保護部材210の積層時の不具合を抑制することができるという効果を奏する。
【0058】
また、本発明では、樹脂検査部70-2は、一定速度で保持部材51を下降させる際のモータ55の負荷電流値から押圧ユニット50にかかる荷重を算出して測定するもので良い。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 保護部材形成装置
10 チャックテーブル
20 タンク
30 樹脂供給ユニット
31 配管
40 ポンプ
50 押圧ユニット
60 硬化ユニット
70 樹脂検査部
103 報知ユニット
200 被加工物
203 表面(一方の面)
210 保護部材(樹脂の層)
213 樹脂シート(シート)
214 液状樹脂
215 表面(一方の面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6