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特許7450493マスクアライメント方法、成膜方法、マスクアライメント装置、及び成膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】マスクアライメント方法、成膜方法、マスクアライメント装置、及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/04 20060101AFI20240308BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20240308BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20240308BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020132998
(22)【出願日】2020-08-05
(65)【公開番号】P2021028419
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0097887
(32)【優先日】2019-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富井 広樹
(72)【発明者】
【氏名】谷 和憲
(72)【発明者】
【氏名】鳥潟 光太郎
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081950(JP,A)
【文献】特開2008-004358(JP,A)
【文献】特開平10-199784(JP,A)
【文献】特開2007-046099(JP,A)
【文献】国際公開第2007/023553(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
H05B 33/10
H10K 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク載置台とマスクとの相対位置を調整するマスクアライメント方法であって、
前記マスク載置台上での前記マスクの相対的な位置ずれ量を計測する計測工程と、
前記マスク載置台から前記マスクを離隔させた状態で、前記マスク載置台の載置面と平行な面内で、前記計測された位置ずれ量に相当する移動指示量分、前記マスク載置台に対し前記マスクを相対移動させる位置調整工程と、
相対移動された前記マスクを、前記マスク載置台上に載置する載置工程とを含み、
所定の条件に基づいて、前記移動指示量を補正し、補正後の移動指示量を使用して前記位置調整工程を行うことを特徴とするマスクアライメント方法。
【請求項2】
前記移動指示量の補正は、前記計測工程で計測される位置ずれ量の2倍に相当する移動指示量に補正することを特徴とする請求項1に記載のマスクアライメント方法。
【請求項3】
前記計測工程、前記位置調整工程、及び前記載置工程を順次に繰り返し行うことにあたって、前記マスク載置台上での前記マスクの位置ずれ量が所定の規定値を超えるずれ量として繰り返され、かつ、その位置ずれ量の変化が所定の基準値以下になったら、前記所定の条件が成立したと判定して、次回の前記位置調整工程の際に前記補正後の移動指示量を使用し、補正された位置調整を行うことを特徴とする請求項2に記載のマスクアライメント方法。
【請求項4】
前記マスク載置台上での前記マスクの位置ずれ量に相当する移動指示量としての直前の移動指示量の差分が2回連続で前記所定の基準値以下になると、前記位置ずれ量の変化が前記所定の基準値以下となったと判定することを特徴とする請求項3に記載のマスクアライメント方法。
【請求項5】
前記マスク載置台上での前記マスクの位置ずれ量に相当する移動指示量としての直前2回の移動指示量の差分が前記所定の基準値以下になると、前記位置ずれ量の変化が前記所定の基準値以下となったと判定し、次回の前記位置調整工程の際に前記補正後の移動指示量を使用して1回目の補正された位置調整を行うことを特徴とする請求項3に記載のマスクアライメント方法。
【請求項6】
2回目以降の補正された位置調整は、前記1回目の補正された位置調整を行うときに前記差分の比較対象となった移動指示量の一方と、前記2回目以降の補正された位置調整に入る直前の移動指示量とを比較して、その差分が前記所定の基準値以下となったときに行うことを特徴とする請求項5に記載のマスクアライメント方法。
【請求項7】
前記基準値は、前記規定値よりも小さい値であることを特徴とする請求項3~6のいずれか一つに記載のマスクアライメント方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一つに記載のマスクアライメント方法を使用して、マスクをマスク載置台との相対位置が調整された状態で、マスク載置台上に載置する第1アライメント工程と、
マスク載置台上に載置された前記マスクに対し、基板の相対位置を調整する第2アライメント工程と、
位置調整された前記基板と前記マスクとを密着させた後、蒸発源からの蒸着材料を、前記マスクを介して前記基板に成膜する工程とを含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項9】
マスク載置台とマスクとの相対位置を調整するためのマスクアライメント装置であって、
前記マスク載置台上に前記マスクを載置する前後に、前記マスクを一時的に支持するマスク支持ユニットと、
前記マスク支持ユニットを昇降させるマスク支持ユニット昇降機構と、
前記マスク載置台上での前記マスクの相対的な位置ずれ量を計測する計測手段と、
前記マスク載置台から前記マスクを離隔させた状態で、前記マスク載置台の載置面と平行な面内で、前記計測された位置ずれ量に相当する移動指示量分、前記マスク載置台に対し前記マスクを相対移動させる位置調整機構と、
前記位置調整機構による位置調整時の前記移動指示量を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、所定の条件に基づいて、前記移動指示量を補正し、補正後の移動指示量を使用して前記位置調整を行うように、前記位置調整機構を制御することを特徴とするマスクアライメント装置。
【請求項10】
前記移動指示量の補正は、前記計測手段により計測される位置ずれ量の2倍に相当する移動指示量に補正することを特徴とする請求項9に記載のマスクアライメント装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記計測手段による前記位置ずれ量の計測工程、前記位置調整機構による位置調整工程、及び前記マスク支持ユニット昇降機構により前記マスク支持ユニットを下降させ、位置調整された前記マスクを前記マスク載置台に再び載置する載置工程を順次に繰り返して行うことにあたって、前記マスク載置台上での前記マスクの位置ずれ量が所定の規定値を超えるずれ量として繰り返され、かつ、その位置ずれ量の変化が所定の基準値以下となったら、前記所定の条件が成立したと判定して、次回の前記位置調整工程の際に前記補正後の移動指示量を使用し、補正された位置調整を行うように、前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項10に記載のマスクアライメント装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記マスク載置台上での前記マスクの位置ずれ量に相当する移動指示量としての直前の移動指示量の差分が2回連続で前記所定の基準値以下となると、前記位置ずれ量の変化が前記所定の基準値以下となったと判定することを特徴とする請求項11に記載のマスクアライメント装置。
【請求項13】
前記制御部は、
前記マスク載置台上での前記マスクの位置ずれ量に相当する移動指示量としての直前2回の移動指示量の差分が前記所定の基準値以下となると、前記位置ずれ量の変化が前記所定の基準値以下となったと判定し、次回の前記位置調整工程の際に前記補正後の移動指示量を使用して1回目の補正された位置調整を行うように、前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項12に記載のマスクアライメント装置。
【請求項14】
前記制御部は、
2回目以降の補正された位置調整を、前記1回目の補正された位置調整を行うときに前記差分の比較対象となった移動指示量の一方と、前記2回目以降の補正された位置調整に入る直前の移動指示量とを比較して、その差分が前記所定の基準値以下となったときに行うように、前記位置調整機構を制御することを特徴とする請求項13に記載のマスクアライメント装置。
【請求項15】
前記基準値は、前記規定値よりも小さい値であることを特徴とする請求項11~14のいずれか一つに記載のマスクアライメント装置。
【請求項16】
請求項9~15のいずれか一つに記載のマスクアライメント装置と、
基板を保持する基板支持ユニットと、
蒸着材料を収容する蒸発源とを含む成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクをマスク載置台に対して位置決めするためのマスクアライメント方法、成膜方法、マスクアライメント装置、及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを早いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は、2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機EL表示装置の素子の有機物層と電極金属層は,成膜装置内で、画素パターンが形成されたマスクを介して基板に蒸着物質を成膜することで製造される。このような成膜工程の精度を向上させるためには、基板への成膜が行われる前にマスクと基板の相対的な位置関係を高精度に合わせる必要がある。
【0004】
そのため、基板とマスク上にはマーク(以下、アライメントマークと称する)が形成され、これらのアライメントマークを成膜装置に設置されたカメラで撮影することで、基板とマスクとの相対的な位置ずれ量が計測される。
【0005】
そして、計測された基板とマスクとの相対的な位置ずれ量に基づいて、基板が載置された基板ホルダを、マスクが載置されたマスク台に対して相対的に移動させることで、基板のマスクに対する相対的な位置関係が調整される。
【0006】
一方、基板のマスクに対する相対的な位置ずれ量の計測及び位置調整を行う前に、マスク自体がマスク台上の基準位置からずれた位置又は向きに載置されていると、マスクのアライメントマークがカメラの視野から外れたり、基板のマスクに対するアライメント工程時間が延びたり、基板アライメント工程の精度が低下したりするなどの問題が生じ得る。そこで、基板のマスクに対する相対的な位置ずれ量の計測及び位置調整を行う前に、成膜装置内に搬入されたマスクをマスク台に対して位置決めするマスクアライメントも行われる。
【0007】
しかしながら、マスクによっては、マスクアライメントによる位置調整を何回も繰り返して行っても、一定量の位置ずれが引き続き発生する場合がある。このような場合、マスクアライメントが正常に完了されず、成膜装置の全体的なタクトタイムが増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-81950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、マスクの位置ずれを迅速に規定値以内に収束させて、マスクアライメ
ントを短時間で完了させ、成膜装置の全体的なタクトタイムの遅延を防止することができる、マスクアライメント方法、成膜方法、マスクアライメント装置、及び成膜装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0011】
すなわち、本発明のマスクアライメント方法は、
マスク載置台とマスクとの相対位置を調整するマスクアライメント方法であって、
前記マスク載置台上での前記マスクの相対的な位置ずれ量を計測する計測工程と、
前記マスク載置台から前記マスクを離隔させた状態で、前記マスク載置台の載置面と平行な面内で、前記計測された位置ずれ量に相当する移動指示量分、前記マスク載置台に対し前記マスクを相対移動させる位置調整工程と、
相対移動された前記マスクを、前記マスク載置台上に載置する載置工程とを含み、
所定の条件に基づいて、前記移動指示量を補正し、補正後の移動指示量を使用して前記位置調整工程を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の成膜方法は、
上記のマスクアライメント方法を使用して、マスクをマスク載置台との相対位置が調整された状態で、マスク載置台上に載置する第1アライメント工程と、
マスク載置台上に載置された前記マスクに対し、基板の相対位置を調整する第2アライメント工程と、
位置調整された前記基板と前記マスクとを密着させた後、蒸発源からの蒸着材料を、前記マスクを介して前記基板に成膜する工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明のマスクアライメント装置は、
マスク載置台とマスクとの相対位置を調整するためのマスクアライメント装置であって、
前記マスク載置台上に前記マスクを載置する前後に、前記マスクを一時的に支持するマスク支持ユニットと、
前記マスク支持ユニットを昇降させるマスク支持ユニット昇降機構と、
前記マスク載置台上での前記マスクの相対的な位置ずれ量を計測する計測手段と、
前記マスク載置台から前記マスクを離隔させた状態で、前記マスク載置台の載置面と平行な面内で、前記計測された位置ずれ量に相当する移動指示量分、前記マスク載置台に対し前記マスクを相対移動させる位置調整機構と、
前記位置調整機構による位置調整時の前記移動指示量を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、所定の条件に基づいて、前記移動指示量を補正し、補正後の移動指示量を使用して前記位置調整を行うように、前記位置調整機構を制御することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の成膜装置は、
上記のマスクアライメント装置と、
基板を保持する基板支持ユニットと、
蒸着材料を収容する蒸発源とを含む。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、マスクの位置ずれを迅速に規定値以内に収束させて、マスクアライメントを短時間で完了させ、成膜装置の全体的なタクトタイムの遅延を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る成膜装置の模式図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るマスク載置台及びマスク支持ユニットの模式図である。
図4図4は、マスクアライメントの基本動作を説明する概念図である。
図5図5は、マスクアライメントの基本動作時に、位置調整を繰り返しても、一定量のずれが続けて生じる状況を説明する模式図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るマスクアライメント動作を概念的に説明するための模式図である。
図7a図7aは、本発明の第1実施形態に係るオフセット補正タイミングを説明するためのフローチャートである。
図7b図7bは、本発明の第1実施形態に係るオフセット補正タイミングを説明するためのフローチャートである。
図8a図8aは、本発明の第2実施形態に係るオフセット補正タイミングを説明するためのフローチャートである。
図8b図8bは、本発明の第2実施形態に係るオフセット補正タイミングを説明するためのフローチャートである。
図9図9は、電子デバイスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0018】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に望ましく適用することができる。基板の材料としては、硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択してもよく、また、蒸着材料としても、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもよい。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置においては、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL表示素子を形成しているので、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0019】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。図1に示す製造装置は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に、有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板が切断されて複数の小さなサイズのパネルに製作される。
【0020】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、隣り合うクラスタ装置1同士を繋ぐ中継装置とを備えている。クラスタ装置1は、基板Sに対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13とを備えている。
【0021】
搬送室13内には、複数の成膜装置11に対して基板Sを搬送し、成膜装置11とマスクストック装置12に対してマスクを搬送する搬送ロボット14が設置されている。搬送
ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板S又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0022】
成膜装置11(蒸着装置とも呼ばれる)では、蒸発源に収納された蒸着材料が、ヒータによって加熱されることで蒸発又は昇華されて、マスクMを介して基板上に蒸着される。搬送ロボット14との基板Sの受け渡し、基板SとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板Sの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって行われる。
【0023】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納されている。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットに収納された新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0024】
クラスタ装置1には、基板Sの流れ方向において上流側からの基板Sを当該クラスタ装置1に搬送するパス室15と、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板Sを下流側の他のクラスタ装置に搬送するためのバッファー室16とが連結されている。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Sを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、当該クラスタ装置1での成膜処理が完了した基板Sを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11b)から受け取って、下流側に連結されたバッファー室16に搬送する。バッファー室16は、その上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置においての処理速度の差がある場合や、下流側でのトラブルの影響で、基板Sを正常に搬送することができない場合などに、複数の基板Sを一時的に収納することができるように構成されると好適である。
【0025】
バッファー室16とパス室15との間には、基板Sの向きを変える旋回室17が設置されている。旋回室17には、バッファー室16から基板Sを受け取って、基板Sを180°回転させ、パス室15に搬送するための搬送ロボット18が設けられている。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置で基板Sの向きが同じになり、基板処理が容易になる。
【0026】
パス室15、バッファー室16、旋回室17は、クラスタ装置間を連結する、いわゆる中継装置である。クラスタ装置の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室、バッファー室、旋回室のうち少なくとも1つを備えている。
【0027】
成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、バッファー室16、旋回室17などは、有機EL表示パネルの製造の過程で、高真空状態に維持される。パス室15は、通常は低真空状態に維持されるが、必要に応じて高真空状態に維持されてもよい。
【0028】
本実施例では、図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバー間の配置が変わってもよい。例えば、電子デバイス製造装置の一部のクラスタ装置に繋がる中継装置においては、バッファー室を設けず、旋回室17の上流側と下流側にそれぞれパス室を設けてもよい。また、旋回室17を設けずに、パス室15に基板の向きを変える基板回転装置を設けてもよい。以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
【0029】
<成膜装置>
図2は、本発明の実施例に係る成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、鉛直方向をZ方向とするXYZ直交座標系を用いる。成膜時に基板S又はマスクMが水平面(XY平面)と平行となるよう固定された場合、基板S又はマスクMの短手方向(短辺に平行な方向)をX方向(第1方向)、長手方向(長辺に平行な方向)をY方向(第2方向)とする。また、Z方向(第3方向)を軸とする回転角をθ(回転方向)で表す。
【0030】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器20と、真空容器20内に設けられる、基板支持ユニット21と、マスク支持ユニット22と、マスク載置台23と、冷却板24と、蒸発源25などを備えている。
【0031】
基板支持ユニット21は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14により搬送される基板Sを受け取って支持する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。
【0032】
マスク支持ユニット22は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14により搬送されるマスクMを受け取って支持する手段であり、マスクホルダとも呼ばれる。マスク支持ユニット22は、基板支持ユニット21によって支持された基板Sの鉛直方向の下側でマスクMを支持することができるように設けられている。
【0033】
マスク支持ユニット22は、マスクMの長辺側の周縁部を支持する支持具221を備えている。支持具221は、マスクMを安定的に支持することができるように、マスクMの長辺側の周縁部それぞれに沿って、複数個箇所に設置される。
【0034】
マスクMは、基板S上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンを有する。特に、スマートフォン用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ばれる。
【0035】
支持具221の鉛直方向の下側には、フレーム形状のマスク載置台23が設置されている。マスク支持ユニット22に渡されたマスクMは、後述するマスクのアライメント工程が完了した後、マスク支持ユニット22の下降によってマスク支持ユニット22からマスク載置台23に渡され、マスク載置台23上に載置される。
【0036】
マスク載置台23の長辺側の周縁部には、マスク支持ユニット22の支持具221に対応する位置に支持具収容溝231が設けられている。マスク支持ユニット22が下降して、マスク載置台23に接近すると、マスク支持ユニット22の支持具221は、マスク載置台23における支持具収容溝231の開口部を通して支持具収容溝231内に入り、マスク支持ユニット22からマスク載置台23にマスクMが載置される(図3)。なお、本実施例では、マスク載置台23にマスクMを載置する際に、支持具221がマスク載置台23に接することのないように、マスク載置台23に支持具221が退避可能な支持具収容溝231を設ける構成を示した。しかしながら、このような構成に限らず、マスク支持ユニット22の支持具221がマスク載置台23に接しない限り、様々な形状や構造を採用することができる。例えば、マスク載置台23を貫通する貫通孔を設けることで、マスク載置台23にマスクMを載置する際に、支持具221を貫通孔内に退避させる構成を採用することもできる。
【0037】
冷却板24は、基板Sの温度上昇を抑える冷却手段であり、基板Sに成膜された有機材料の変質や劣化を抑制する役割を担っている。この冷却板24は、基板支持ユニット21によって支持された基板Sの鉛直方向の上面側に昇降可能に設置される。冷却板24は、マスク載置台23に載置されたマスクM上に基板Sを固定するとき、基板Sの上面を、そ
の自重によりマスクM側に加圧することで、基板SとマスクMを密着させる。
【0038】
冷却板24は、マグネット板としての機能を兼ね備えさせることも好適である。マグネット板は、磁力によってマスクMを引き付けることで、成膜時において、基板SとマスクMとの密着性を高める機能を発揮する。
【0039】
また、図2には示していないが、基板支持ユニット22の支持具221の鉛直方向の上側から基板Sの上面を静電引力によって吸着して固定するための静電チャックを設置することも好適である。このような構成を採用すれば、基板Sがその自重によって中央部が撓んでしまうことを抑制することができる。
【0040】
蒸発源25は、基板Sに成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)と、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)と、蒸発源25からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板Sに飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを備えている。蒸発源25は、点蒸発源や線形蒸発源など、用途に従って多様な構成を採用し得る。特に、電極金属層を成膜するための成膜装置の場合、円周上に配置された複数のるつぼそれぞれが蒸発位置に回転移動するリボルバータイプの蒸発源が用いられる。
【0041】
また、成膜装置11は、基板Sに蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)も備えている。
【0042】
真空容器20の鉛直方向の上面の外側(大気側)には、基板支持ユニット昇降機構26、マスク支持ユニット昇降機構27、冷却板昇降機構28、位置調整機構29などが設けられている。
【0043】
基板支持ユニット昇降機構26は、基板支持ユニット21を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。マスク支持ユニット昇降機構27は、マスク支持ユニット22を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。冷却板昇降機構28は、冷却板24を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。これらの昇降機構は、例えば、モータとボールねじ、或いはモータとリニアガイドなどで構成される。
【0044】
位置調整機構29は、基板S、マスクM、冷却板24などのアライメントのための駆動手段である。この位置調整機構29は、基板支持ユニット昇降機構26、マスク支持ユニット昇降機構27、冷却板昇降機構28などが搭載されるステージ部と、ステージ部をXYθ方向に駆動させるための駆動部を備えている。
【0045】
位置調整機構29の駆動部は、例えば、ステージ部をX方向に水平駆動させることができるX方向サーボモータと、ステージ部をY方向に水平駆動させることができるY方向サーボモータとを含む複数のサーバモーターで構成される。より具体的な例としては、2つのX方向サーボモータと、2つのY方向サーボモータとを備え、これらサーボモータの組み合わせ動作により、ステージ部をX方向及びY方向に水平駆動させたり、θ方向に回転駆動させたりすることができる。サーボモータの駆動力をステージ部に伝達するための動力伝達手段としては、例えば、ボールねじやリニアガイドなどを使用することができる。
【0046】
位置調整機構29により、基板支持ユニット21、マスク支持ユニット22、及び冷却板24を、真空容器20に固定されているマスク載置台23に対し、X方向移動、Y方向移動、及び/又はθ回転させることで、基板SのマスクMに対するアライメント、マスクMのマスク載置台23に対するアライメントなどを行うことができる。特に、本実施形態では、マスク支持ユニット22に連結されたマスク支持ユニット昇降機構27が位置調整機構29のステージ部に搭載されるので、位置調整機構29の駆動部によってステージ部
をXYθ方向に駆動することで、マスク支持ユニット22、及びこのマスク支持ユニット22上に支持されたマスクMを、成膜装置11の真空容器20に固定されたマスク載置台23に対して相対的に位置調整することができる。
【0047】
真空容器20の鉛直方向の上面の外側(大気側)には、上述した昇降機構及び位置調整機構の他に、真空容器20の上面に設けられた透明の窓を通して、基板S及び/又はマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラ30が設置されている。アライメント用カメラ30は、基板S及び/又はマスクMのXYθ方向への位置情報を取得するための位置情報取得手段として機能する。アライメント用カメラ30は、例えば、基板S及びマスクMにおいて、短辺中央の位置、または、4つのコーナー部に対応する位置に設置させるとよい。
【0048】
位置調整機構29は、アライメント用カメラ30によって取得した基板S及びマスクMの位置情報に基づいて、マスク載置台23に対するマスクMの相対位置を調整するマスクアライメント(第1アライメント工程)と、基板SとマスクMとの間の相対位置を調整する基板アライメント(第2アライメント工程)とを行う。
【0049】
成膜装置11は、制御部を備えている。制御部は、基板Sの搬送、基板Sのアライメント、マスクMのアライメント、蒸発源の制御、成膜の制御など、各種の制御を行うの機能を有している。制御部は、例えば、プロセッサ、メモリー、ストレージ、I/Oなどを持つコンピューターによって構成可能である。この場合、制御部の機能は、メモリーまたはストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピューターとしては、汎用のパーソナルコンピューターを使用してもよく、組込み型のコンピューターまたはPLC(programable logic controller)を使用してもよい。または、制御部の機能の一部または全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0050】
<マスクアライメント(第1アライメント)の基本動作>
以下、マスクMをマスク載置台23に対して相対的に位置調整するマスクアライメント方法及びマスクアライメント装置について説明する。図4は、マスクアライメントの基本動作を説明する概念図である。なお、マスクアライメント装置は、成膜装置に備えられる装置であって、マスクアライメントに携わる構成からなる装置である。
【0051】
マスクアライメントは、マスク載置台23に載置されたマスクMのマスク載置台23上での位置ずれ量を計測する工程(計測工程:図4(a))と、マスク載置台23からマスクMを持ち上げて離隔させた状態で、マスク載置台23の載置面と平行な面内で、計測された位置ずれ量を相殺する分(移動指示量分)、マスクMをマスク載置台23に対して相対移動させて位置を調整する工程(位置調整工程:図4(b))と、位置調整されたマスクMをマスク台23に載置させて(載置工程)、位置ずれ量を再度計測し、計測されたずれ量が規定値以内に収まったかを検証する工程(図4(c))とを含む。計測されたずれ量が規定値以内に入っていない場合は、上記位置調整動作が繰り返される。
【0052】
本実施形態に係る成膜装置11は、このような位置ずれ量の計測および位置調整を行うために、上記の通り、位置情報取得手段としてのアライメント用カメラ30と、マスク載置台23に対しマスク支持ユニット22の相対位置を調整する位置調整機構29とを備えている。
【0053】
アライメント用カメラ30は、マスク載置台23に置かれたマスクMに対し、マスクMに形成されたアライメントマークを撮影して、マスクMの位置に関する情報を取得する。
成膜装置の制御部は、取得されたマスクMの位置とマスク載置台23上の基準位置を比較して、マスクMが基準位置に対してXYθ方向に相対的にずれた程度(相対位置ずれ量、ΔX、ΔY、Δθ)を計測する。また、制御部は、この位置ずれ量に基づいて、後述するマスク載置台23に対するマスクMの位置調整工程において、マスクMを相対移動させるための移動指示量を算出する。ここでの移動指示量は、基本的に、計測された位置ずれ量を相殺することができるように、位置ずれ量に相当する量だけ反対方向に、マスクMをマスク載置台23に対して水平面(XY平面)内で位置調整するための値である。より具体的には、この移動指示量は、マスク支持機構22の水平面(XY平面)内において、位置調整機構29のステージ部を、X軸とY軸方向にそれぞれ駆動する複数のX,Y方向のサーボモータ(本実施例の場合、2つのX方向サーボモータと、2つのY方向サーボモータとを含む計4軸のサーボモータ)によって、それぞれ駆動させる量である。
【0054】
位置ずれ量の計測の基準となる基準位置は、アライメント用カメラの撮像画像の中心点の位置に設定することができる。即ち、マスクMとマスク載置台23との相対位置ずれ量は、アライメント用カメラの撮像画像において、マスクMのアライメントマークから撮像画像の中心点までの距離に基づいて算出することができる。ただし、本発明はこれに限定されず、他の方法で基準位置を設定してもいい。例えば、マスク載置台23、または、真空容器20に固定設置された別途の基準マーク設置台に基準マークを形成し、これをアライメント用カメラで撮像して基準マークの撮像画像から基準位置を決めることもできる。また、マスクMのアライメントを行うたびに、基準マークを撮像して画像処理によって基準位置を算出する代わりに、成膜装置の最初のセッティングの際又はマスク交換の際などに基準位置を算出して、これを制御部のメモリーに格納しておき、マスクアライメントを行うときに読み出すようにしてもよい。
【0055】
計測された位置ずれ量に基づく移動指示量の算出が完了すると、制御部は、マスク支持ユニット昇降機構27によってマスク支持ユニット22を上昇させ、マスク台23からマスクMを離間させる。その後、制御部は、算出した移動指示量分だけ、位置調整機構29によってマスク支持ユニット22を水平面(XY平面)内でマスク載置台23に対し相対移動させ、マスク載置台23に対するマスクMの位置を調整する。
【0056】
つまり、マスク載置台23が真空容器20に対して固定設置されるのに対し、マスク支持ユニット22が連結されたマスク支持ユニット昇降機構27は、位置調整機構29のステージ部に搭載されて複数のサーボモータで構成された駆動部によって水平面(XY平面)内で移動可能になっている。これにより、この位置調整機構29のステージ部を上記算出された移動指示量分だけ駆動し移動させることで、マスク支持ユニット22に保持されているマスクMをマスク載置台23に対し位置調整(アライメント)することができる。
【0057】
また、マスクアライメントについては、後述の基板とマスクとのアライメントと同様に、ラフアライメント(例えば規定値ΔSpec200μm)後に、ファインアライメント(例えば規定値ΔSpec50μm)を行う構成としてもよい。この場合、後述するマスクアライメントのオフセット補正はファインアライメント時に行う。
【0058】
<マスクアライメントのオフセット補正>
以上、マスクアライメントの基本動作について説明した。しかしながら、マスクMによっては、上記のような位置調整動作を繰り返しても、一定量の位置ずれが引き続き発生する場合がある。図5は、そのような状況を説明する模式図である。
【0059】
図5(a)は、上記のマスクアライメントの基本動作に従って、マスク載置台23上での計測された位置ずれ量に基づいて移動指示量を算出し、マスク載置台23からマスクMを離隔させた状態で、算出された移動指示量分だけマスクMを移動させて位置を調整した
後の様子を示している。次いで、この位置調整されたマスクMをマスク載置台23に載置させて位置ずれ量が規定値以内に収束したかを検証した後、次の工程へと移行することになる。しかしながら、図5(b)に示すように、マスクMによっては、載置時に載置動作に伴いマスクMの位置が再びずれる場合がある。このような現象は、例えば、マスクホルダによって支持されるマスク面の平坦度が良好でないなどの加工精度が良くないマスクMを使用する場合に発生し得る。つまり、このようなマスクMは、マスクホルダによって持ち上げられる際に、マスク載置台23に対し傾いた状態となり、マスクMをマスク載置台23に再度載置させるときにマスクMを鉛直方向にそのまま降ろしても、常に一方向に位置がずれることがある。また、この載置時の位置ずれの量は、マスクMの持ち上げ、降ろす動作を行うたびに、そのずれ量が少しずつ変化し得るが、これはマスクMを持ち上げるときの支持面の位置が少しずつ変わるためである。マスクMの載置動作が所定回数繰り返され、マスクMが持ち上げられるときの支持面の位置がほぼ一定になると、その後は、載置するたびに、ほぼ一定量の位置ずれが繰り返し生じることになる。図5(c)は、このような状況を示している。このように、マスク載置台23に降ろされるときに一定量(Δ)の位置ずれが生じるマスクMに対しては、上記の通常通りのアライメント動作、つまり、単に計測されたずれ量Δに相当する分の移動指示量でマスクMを移動させて位置調整を行うだけでは、アライメント動作を何回繰り返してもマスク載置台23上で上記一定量(Δ)のマスク位置ずれが継続的に発生することになる。
【0060】
上記のようなアライメント動作を繰り返してもマスクMの位置が規定値以内に収束されず、位置ずれが繰り返して発生し、成膜装置11の全体的なタクトタイムが増加するなどの問題を解消する方法について、以下に説明する。
【0061】
図6は、本発明の実施形態に係るマスクアライメント動作を概念的に説明するための模式図である。上記の通り、計測された位置ずれ量Δに相当する分の移動指示量でマスクMの位置調整を行っても、載置するたびにほぼ一定の位置ずれ量Δが引き続き発生すると判定された場合には(図6(a))、制御部は、次のように制御する。すなわち、制御部は、次回のアライメント動作時、つまり、マスク載置台23からマスクMを再び持ち上げ離隔させた状態(図6(b))で、マスクMの位置を調整するときには、上記のずれ量Δに同じ量Δをさらに加えた合計2Δのずれ量に相当する分の移動指示量でマスクMを移動させて位置調整を行う(図6(c))。
【0062】
言い換えれば、制御部は、計測されたずれ量Δに同じ量Δ分のオフセットを付加して、合計2Δに相当する値に移動指示量を補正し、このオフセット補正された分だけ、マスクMをずれの反対方向へと、さらに移動させるように制御する。
【0063】
このような制御を行うことで、オフセット補正された分さらに移動したマスクMをマスク載置台23上に降ろすと、載置時に生じる一定のずれ量Δが加えられ、ちょうどマスク載置台23の中心位置に位置調整された状態で載置されることになる(図6(d))。すなわち、例えば、マスクの現在位置が中心位置(0位置)から決まった位置ずれ量-Δだけずれているとすると、+Δ動かすと0位置、そこからさらに+Δ動かすと+Δ位置となる。この+Δ位置からマスクを降ろすと-Δだけずれ、丁度0位置に来るため、移動指示量は(+Δ)+(+Δ)となり、結果として決まった位置ずれ量Δの2倍(2Δ)になる。
【0064】
このように、本実施形態においては、計測された位置ずれ量に基づく移動指示量でマスクMの位置調整を行う場合に、マスク載置台23上でのマスクMの位置ずれがほぼ一定量で繰り返して発生するようになったとき、次回のアライメント動作時にオフセット補正された移動指示量でアライメント(マスクの位置調整)が行われる。
【0065】
要するに、ほぼ一定量のマスクMの位置ずれが繰り返されると判定されれば、通常通りのアライメントでは、これ以上の位置調整が不可能と判断し、オフセット補正された移動指示量によってアライメント動作が行われる。
【0066】
以下、このようなオフセット補正を行うタイミング、つまり、オフセット補正を行うための条件(所定の条件)が成立したと判定するタイミングに関して、具体的な実施形態について説明する。図7a及び図7bは、本発明の第1実施形態に係るオフセット補正のタイミングを説明するためのフローチャートである。
【0067】
制御部は、マスクMを搬送ロボット14により成膜装置11の真空容器20内に搬入されせ(S1)、マスク支持ユニット22によりマスクMを受け取らせて、マスクMをマスク載置台23に着座(載置)させる(S2)。
【0068】
次いで、制御部は、アライメント用カメラ30によりマスクMに形成されたアライメントマークを撮影させ、撮影された画像情報からマスク載置台23に対する水平面(XY平面)内におけるマスクMの位置ずれ量Δ1(ΔX、ΔY、Δθ)を計測する(S3)。
【0069】
そして、制御部は、計測した位置ずれ量Δ1を所定の規定値ΔSpecと比較して(S4)、位置ずれ量Δ1が規定値ΔSpec以下に収まっていた場合には、マスクアライメントは完了とする。この場合には、後述する基板Sとのアライメントが行われた後に、成膜工程に移行される。マスクアライメントの規定値ΔSpecは、本実施形態では、例えば、50μmと設定しているが、これに限定されず、必要に応じて適切に設定することができる。
【0070】
また、計測された位置ずれ量Δ1が所定の規定値ΔSpecを超えていた場合、制御部は、マスク支持ユニット22を上昇させマスク載置台23からマスクMを離隔させる。その後、制御部は、位置ずれ量Δ1に相当する分の移動指示量d1で位置調整機構29のステージ部を水平面(XY平面)内で移動させ、マスク載置台23に対するマスクMの相対位置を調整する(S5:1回目の位置調整(Move1))。なお、上記の通り、移動指示量は、具体的には、位置調整機構29のステージ部を、X軸及びY軸方向にそれぞれ駆動する複数のX,Y方向のサーボモータ(本実施例の場合、2つのX方向サーボモータと、2つのY方向サーボモータとを含む総4軸のサーボモータ)によって、それぞれ駆動させる量である。
【0071】
次いで、制御部は、位置調整されたマスクMをマスク載置台23に再び載置させた後、位置ずれ量Δ2を計測し(S6)、計測された位置ずれ量Δ2を規定値ΔSpecと比較する(S7)。位置ずれ量Δ2が規定値ΔSpec以下の場合には、マスクアライメントは完了する。
【0072】
計測された位置ずれ量Δ2が規定値ΔSpecを超えていた場合には、制御部は、マスク載置台23からマスクMを再び離隔させる。その後、制御部は、位置ずれ量Δ2に相当する分の移動指示量d2で位置調整機構29のステージ部を水平面(XY平面)内で移動させることで、マスク載置台23に対するマスクMの相対位置を調整する(S8:2回目の位置調整(Move2))。
【0073】
次いで、制御部は、位置調整されたマスクMをマスク載置台23に再び載置させた後、位置ずれ量Δ3を計測し(S9)、計測された位置ずれ量Δ3を規定値ΔSpecと比較する(S10)。位置ずれ量Δ3が規定値ΔSpec以下の場合には、マスクアライメントは完了する。
【0074】
計測された位置ずれ量Δ3が規定値ΔSpecを超えていた場合には、制御部は、マスク載置台23からマスクMを再び離隔させる。その後、制御部は、位置ずれ量Δ3に相当する分の移動指示量d3で位置調整機構29のステージ部を水平面(XY平面)内で移動させることで、マスク載置台23に対するマスクMの相対位置を調整する(S11:3回目の位置調整(Move3))。
【0075】
次いで、制御部は、位置調整されたマスクMをマスク載置台23に再び載置させた後、位置ずれ量Δ4を計測し(S12)、計測された位置ずれ量Δ4を規定値ΔSpecと比較する(S13)。位置ずれ量Δ4が規定値ΔSpec以下の場合には、マスクアライメントは完了する。
【0076】
以上の3回の位置調整動作にも拘わらず、計測された位置ずれ量Δ4が依然として規定値ΔSpecを超えていた場合には、制御部は、直前の移動指示量の差分が2回連続基準値以下であるかを判断する(S14)。つまり、制御部は、1回目の位置調整(Move1)での移動指示量d1と、2回目の位置調整(Move2)での移動指示量d2との差分(|d1-d2|)が所定の基準値dref以下であり、かつ、2回目の位置調整(Move2)での移動指示量d2と、3回目の位置調整(Move3)での移動指示量d3との差分(|d2-d3|)も同様に所定の基準値dref以下であるかを判断する。
【0077】
ここで移動指示量の差分と基準値との比較は、前述したステージ部を駆動する4軸のサーボモータそれぞれに対して行う。基準値drefは、マスクアライメントの規定値ΔSpecよりも小さい値に設定するのが好ましい。本実施例では、前述のように、マスクアライメントの規定値ΔSpecは50μmとし、基準値drefは、それより小さい、例えば、30μmと設定している。しかしながら、これらの値は限定されるものではなく、必要に応じて適切に設定することができる。
【0078】
直前の過去の移動指示量の差分が2回連続で基準値以下であると判定されるまでは、制御には、以上説明した1~3回目の位置調整(Move1~3)と同様の通常の位置調整動作を続けて行うように制御する(S15-1)。
【0079】
4軸のサーボモータ全てにおいて、直前の過去の移動指示量の差分が2回連続で基準値以下になった場合には、制御部は、マスク載置台23上でのマスクMの位置ずれがほぼ一定に繰り返されると判定する。つまり、通常通りのアライメントでは、これ以上の位置調整は不可能で、制御部は、オフセット補正を行うための条件が整ったと判定する。その判定に基づいて、マスク載置台23からマスクMを再び離隔させた状態で行う4回目の位置調整(Move4)においては、制御部は、計測された位置ずれ量Δ4の2倍に相当する分の移動指示量(2×d4)で位置調整機構29のステージ部を水平面(XY平面)内で移動させて、マスク載置台23に対するマスクMの相対位置を調整する(S15:4回目の位置調整(Move4))。
【0080】
つまり、一回目のオフセット補正動作が行われる。殆どの場合、このオフセット補正により、以降、計測されるずれ量は規定値以内に収束する場合が多い。ただし、1回のオフセット補正によっても依然としてずれ量が規定値を超えた場合には、制御部は、同じプロセスを繰り返して、オフセット補正をもう一度行うように制御する。
【0081】
以上のように、本発明の第1実施形態では、マスクMの位置ずれがほぼ一定量で繰り返される場合、オフセット補正された移動指示量によってアライメントを行うことで、マスクMの位置ずれを迅速に規定値以内に収束させてアライメントを完了することができる。その結果、成膜装置11の全体的なタクトタイムの遅延を防止させることができる。また、本発明の第1実施形態では、このようなオフセット補正のタイミングとして、直前の過
去の移動指示量の差分が2回連続基準値以下となる場合に、オフセット補正を行うための条件が成立したと判定する場合を示した。
【0082】
図8a及び図8bは、本発明の第2実施形態に係るオフセット補正のタイミングを説明するためのフローチャートである。なお、2回目の位置調整(Move2)まで行った後、位置ずれ量Δ3を計測し、規定値ΔSpecと比較する段階(S1’~S’10)までは、上記の第1実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
【0083】
計測された位置ずれ量Δ3が規定値ΔSpecを超えていた場合には、制御部は、3回目の位置調整(Move3)の段階で、オフセット補正動作に入るか否かを判定する。つまり、2回の位置調整(Move1、Move2)を行った後に計測されたずれ量Δ3が規定値ΔSpecを超えていた場合、制御部は、直前2回の移動指示量の差分(1回目の位置調整(Move1)での移動指示量d1と、2回目の位置調整(Move2)での移動指示量d2との差分(|d1-d2|))が基準値dref以下であるかを判断する(S’11)。なお、移動指示量の差分と基準値との比較は、第1実施形態と同様に、ステージ部を駆動する4軸のサーボモータのそれぞれに対して行う。
【0084】
4軸のサーボモータ全てにおいて、直前2回の移動指示量の差分が基準値以下であった場合には、制御部は、マスクMの位置ずれがほぼ一定になったと判断し、オフセット補正のための条件が成立したと判定する。これにより、3回目の位置調整(Move3)においては、制御部は、計測された位置ずれ量Δ3の2倍に相当する分の移動指示量(2×d3)で位置調整機構29のステージ部を水平面(XY平面)内で移動させて、マスク載置台23に対するマスクMの相対位置を調整する(S’12:3回目の位置調整(Move3))。つまり、一回目のオフセット補正動作が行われる。一方、段階S’11において、直前2回の移動指示量の差分が基準値以下でないと判断された場合には、制御部は、この差分が基準値以下であると判定されるまで、1,2回目の位置調整(Move1,2)と同様の通常の位置調整動作を続けて行うように制御する(S’12-1)。
【0085】
段階S’12における一回目のオフセット補正後にもずれ量Δ4が規定値ΔSpec以下に収束しない場合には(S’13、S’14)、制御部は、計測されたずれ量Δ4に相当する移動指示量に応じて位置調整をする通常通りのアライメントを行わせる(S’15:4回目の位置調整(Move4))。そして、制御部は、続く次の位置調整段階で直ちにオフセット補正条件の成立有無を判定する。つまり、4回目の位置調整(Move4)後に計測されたずれ量Δ5が規定値ΔSpecを超えた場合(S’16、S’17)、制御部は、オフセット補正条件の成立の可否を判定する(S‘18)。この場合、直前の位置調整(Move4)での移動指示量d4と、1回目のオフセット補正条件の成立と判定されたときの移動指示量d2との差分(|d2-d4|)が基準値dref以下であるかによって、制御部は、オフセット補正条件の成立を判定する。要するに、1回目のオフセット補正条件の成立と判定されたときの移動指示量が比較対象となる。また、ここでは、1回目のオフセット補正条件の成立、つまり、|d1-d2|)≦dref以下と判定されたときの移動指示量として、移動指示量d2を比較対象としたが、他の一方である移動指示量d1を比較対象としてよい。
【0086】
これにより、オフセット補正条件の成立と判定されると、5回目の位置調整(Move5)において、制御部は、計測された位置ずれ量Δ5の2倍に相当する分の移動指示量(2×d5)でマスクMを移動させ、2回目のオフセット補正を行わせる(S’19)。この2回のオフセット補正によっても依然としてずれ量が規定値を超える場合は、制御部は、S’13~S’19の動作を繰り返して、更なるオフセット補正を行わせるように制御する。
【0087】
以上のように、本発明の第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、マスクMの位置ずれを迅速に規定値以内に収束させてアライメントを短時間で完了させることができ、成膜装置11の全体的なタクトタイムの遅延を防止させることができる。また、第2実施形態の場合には、直前2回の移動指示量の差分だけで最初のオフセット補正条件の成立が判定されるので、最初のオフセット補正のタイミングを第1実施形態よりも早くすることができる。また、2回目以降のオフセット補正においても、1回目のオフセット補正条件の成立と判定されたときの移動指示量を比較対象とするので、第1実施形態よりも、そのタイミングを早めることができ、第1実施形態に比べ、限られている動作回数内でオフセット補正の実施回数を増やすことができる利点がある。
【0088】
<基板アライメント(第2アライメント)>
マスクアライメントが完了すると、マスク載置台23上に載置されたマスクMに対して基板Sのアライメントが行われる。制御部は、基板支持ユニット21によって支持された基板Sを基板支持ユニット昇降機構26によってマスクMの上部の所定の位置まで移動させた状態で、アライメント用カメラ30によって基板SとマスクM上にそれぞれ形成されたアライメントマークを撮影させる。その後、制御部は、その撮像画像に基づいて基板SとマスクMの水平面(XY平面)内での相対位置ずれを調整させる。このようなマスクMに対する基板Sのアライメントは、その相対位置を大まかに調整する「ラフアライメント」と、ラフアライメントによって大まかに位置合わせされた基板SをマスクMに対し高精度で位置合わせする「ファインアライメント」の2段階で行うと好適である。この場合、アライメント用カメラ30は、ラフアライメントに使用される低解像で広視野なカメラと、ファインアライメントに使用される狭視野角で高解像度のカメラの2種類のカメラを設けるとよい。マスクMに対する基板Sのアライメントが完了すると、制御部は、基板支持ユニット21を下降させ、基板S全体がマスクM上に載置されるように制御する。
【0089】
以上の工程により、マスクM上への基板Sの載置処理が完了し、制御部は、冷却板24及び/又はマグネット板を基板Sの上面に下降させ、基板SとマスクMを密着固定させた後に、成膜工程(蒸着工程)が行われるように制御する。
【0090】
<成膜プロセス(成膜方法)>
アライメントが完了した基板SとマスクMとが密着/固定された状態で、制御部は、蒸発源25のシャッタを開け、蒸着材料を、マスクMを介して基板Sに蒸着させるように制御する。そして、制御部は、基板Sに所望の厚さまで成膜を行った後に、蒸発源25のシャッタを閉めるように制御する。次いで、制御部は、冷却板24及び/又はマグネット板を上昇させてから、基板支持ユニット21を上昇させ、基板SとマスクMを分離させる。その後、制御部は、搬送ロボット14のハンドを成膜装置11の真空容器20内に入り込ませて、成膜が完了した基板を真空容器20から搬出させる。このようにして、所定の枚数の基板Sの成膜工程が行われた後、制御部は、使用済みのマスクMを搬送ロボット14によって真空容器20から搬出させて、マスクストック装置12に搬送させる。
【0091】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態に係る成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図9(a)は有機EL表示装置60の全体図であり、図9(b)は1画素の断面構造を表している。
【0092】
図9(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後述するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実
施形態に係る有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0093】
図9(b)は、図9(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために、陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0094】
図9(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0095】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および陽極64が形成された基板63が準備される。陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂がスピンコートで形成され、アクリル樹脂に対して、リソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングされて絶縁層69が形成される。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0096】
絶縁層69がパターニングされた基板63が第1有機材料成膜装置に搬入され、基板支持ユニットにて基板が保持され、正孔輸送層65が、表示領域の陽極64の上に共通する層として成膜される。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63が第2有機材料成膜装置に搬入され、基板支持ユニットにて保持される。基板とマスクとのアライメントが行われ、基板がマスクの上に載置されて、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rが成膜される。
【0097】
発光層66Rの成膜と同様に、第3有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gが成膜され、さらに第4有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bが成膜される。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67が成膜される。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0098】
その後、電子輸送層67まで形成された基板が金属性蒸着材料の成膜装置に移動されて陰極68が成膜される。さらに、当該基板は、プラズマCVD装置に移動され、保護層70が成膜されて、有機EL表示装置60が得られる。
【0099】
絶縁層69がパターニングされた基板63が成膜装置に搬入されてから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。そのため、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われるのが望ましい。
【0100】
上記実施例は本発明の一例を示したに過ぎず、本発明は上記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形してもよい。
【符号の説明】
【0101】
20:真空容器、21:基板支持ユニット、22:マスク支持ユニット、26:基板支持ユニット昇降機構、27:マスク支持ユニット昇降機構、29:位置調整機構、30:アライメント用カメラ、221:支持具、231:支持具収容溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9