(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 31/00 20060101AFI20240308BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240308BHJP
E02D 31/06 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
E02D31/00 B
E04G21/02 103B
E02D31/06 Z
(21)【出願番号】P 2021027461
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀治
(72)【発明者】
【氏名】糸田 香織
(72)【発明者】
【氏名】津田 和夏希
(72)【発明者】
【氏名】大庭 尚史
(72)【発明者】
【氏名】青山 克巳
(72)【発明者】
【氏名】堀田 敦
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-132963(JP,A)
【文献】特開平05-112993(JP,A)
【文献】特開2006-071543(JP,A)
【文献】特開平09-328811(JP,A)
【文献】特開昭60-175668(JP,A)
【文献】米国特許第04355453(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 31/00
E04G 21/02
E02D 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法であって、
型枠におけるコンクリート打ち込み側主面に、前記コンクリート打ち込み側主面から端部を張り出させた状態となるようにライニングを貼付するライニング貼付工程と、
前記ライニングを貼付した前記型枠を複数、前記ライニングの張り出し部が隣接するように配置する型枠配置工程と、
隣接配置された前記張り出し部の端部同士を接続するライニング接続工程と、
前記型枠に貼付され、複数接続された前記ライニングの敷設側にコンクリートを打ち込む打ち込み工程とを有することを特徴とするコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【請求項2】
コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法であって、
ブロック端部から端部を張り出させた状態となるようにライニングを敷設したプレキャストブロックを複数、前記ライニングの張り出し部が隣接するように配置するブロック配置工程と、
隣接配置された前記張り出し部の端部同士を接続するライニング接続工程と、
前記ライニングの敷設側に生じた
隣接配置された前記プレキャストブロック同士の隙間にコンクリートを打ち込む打ち込み工程とを有することを特徴とするコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【請求項3】
前記ライニング接続工程は、前記ライニングのコンクリート打ち込み面側に裏当て材を配置する裏当て材配置工程の後に行われることを特徴とする請求項1または2に記載のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【請求項4】
前記裏当て材配置工程と、前記ライニング接続工程との間に、前記ライニングを前記裏当て材に接着するライニング仮固定工程を含むことを特徴とする請求項3に記載のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【請求項5】
前記ライニングにおける打ち込み側主面には、コンクリートに対する係合強度を高めるための突起が備えられており、
前記裏当て材を配置する部位に備えられている突起を予め除去しておく突起除去工程を有することを特徴とする請求項3または4に記載のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【請求項6】
コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法であって、
既設コンクリートに敷設されている既設ライニングの一部を除去する既設ライニング部分除去工程と、
型枠におけるコンクリート打ち込み側主面に、前記コンクリート打ち込み側主面から端部を張り出させた状態となるようにライニングを貼付するライニング貼付工程と、
前記ライニング部分除去工程を経て露出された前記既設コンクリートの端部に対して、 前記既設ライニングの端部に隣接するようして前記型枠に貼付したライニングの張り出し部を配置し、前記既設コンクリートを裏当て材として前記既設ライニングの端部と前記張り出し部とを接続するライニング接続工程と、
前記型枠に貼付されたライニングの前記既設コンクリート側に新たなコンクリートを打ち込む打ち込み工程とを有することを特徴とするコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【請求項7】
前記既設ライニング、及び前記型枠に貼付したライニングにおける打ち込み側主面には、コンクリートに対する係合強度を高めるための突起が備えられており、
前記既設ライニングでは、前記ライニング部分除去工程により除去する部位の突起を予め削除し、前記型枠に貼付したライニングでは、前記既設コンクリートと接触する部位の突起を予め削除する突起除去工程を有することを特徴とする請求項6に記載のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、廃棄物処理場や貯留水槽、あるいは首都圏における河川の氾濫を防止するための地下空洞水槽などが多く設けられるようになってきている。こうした施設は、水槽外部への内容物の浸潤を嫌うため、水槽内部には樹脂製の遮水シートが貼られる事も多い。
【0003】
このような遮水シートは、貼付面に突起が形成されており、特許文献1に開示されているように、基礎となる岩盤と遮水シートとの間にコンクリートを打ち込むことで、突起がコンクリート面に食い込み、強固な貼付が可能となる。
【0004】
一方で、付加構造体を備える場合や、大きな面積を持つ壁面、床面、天井面などを持つ場合は、一枚の遮水シートで全体を覆う事ができず、複数の遮水シートを張り合わせてコンクリート表面を覆う必要がある。こうした実状の中特許文献1に開示されている技術では、次のような4つの段階を経てコンクリート表面を遮水シート部材で覆うようにしている。まず1段階として、遮水シートを区分けした上で、遮水シートを型枠に貼り付ける。この時、型枠の少なくとも一部が遮水シートからはみ出す部分を持つようにしている。2段階目は、コンクリートを打ち込む岩盤にアンカーを打ち、このアンカーに型枠を固定する事で打ち込み空間を確保する。この時、型枠は、上記はみ出し部分が、隣接する遮水シートの端部とオーバーラップするように配置される。3段階として、岩盤と遮水シートとの間にコンクリートを打ち込む。この時、型枠が遮水シートの隙間を覆っているため、遮水シートの隙間からコンクリートが漏れ出す事を防ぐことができる。最後に、コンクリートが硬化した後、型枠を外して遮水シートの隙間を遮水シートと同じ部材で溶着する事で、打ち込み面全体を遮水シート部材で覆う事が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているような手法によれば確かに、付加構造体を備えていたり、大きな面積を持つ床面などであっても、打ち込み面全体を遮水シート部材(ライニング)で覆う事が可能となる。
【0007】
しかし、特許文献1に開示されている技術は、壁面に対する施工には適用が困難となる。なぜなら、いかに型枠でライニングの隙間を抑えたとしても、荷重を受けた流動性の高いコンクリートは、ライニングと型枠の隙間から漏れ出して来てしまうからである。
【0008】
そこで本発明では、打ち込みするコンクリートの漏れを防ぎつつ、コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法は、コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法であって、型枠におけるコンクリート打ち込み側主面に、前記コンクリート打ち込み側主面から端部を張り出させた状態となるようにライニングを貼付するライニング貼付工程と、前記ライニングを貼付した前記型枠を複数、前記ライニングの張り出し部が隣接するように配置する型枠配置工程と、隣接配置された前記張り出し部の端部同士を接続するライニング接続工程と、前記型枠に貼付され、複数接続された前記ライニングの敷設側にコンクリートを打ち込む打ち込み工程とを有することを特徴とする。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明に係るコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法は、コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法であって、ブロック端部から端部を張り出させた状態となるようにライニングを敷設したプレキャストブロックを複数、前記ライニングの張り出し部が隣接するように配置するブロック配置工程と、隣接配置された前記張り出し部の端部同士を接続するライニング接続工程と、前記ライニングの敷設側に生じた隙間にコンクリートを打ち込む打ち込み工程とを有することを特徴とすることもできる。
【0011】
また、上記のような特徴を有するコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法において前記ライニング接続工程は、前記ライニングのコンクリート打ち込み面側に裏当て材を配置する裏当て材配置工程の後に行われるようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、裏当て材を反力受けとして、ライニングを溶着する際に必要とされる押圧力を作用させる事が可能となる。
【0012】
また、上記のような特徴を有するコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法では、前記裏当て材配置工程と、前記ライニング接続工程との間に、前記ライニングを前記裏当て材に接着するライニング仮固定工程を含むようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、ライニング接続工程時にライニングに生じる歪みを抑制することが可能となる。
【0013】
また、上記のような特徴を有するコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法において前記ライニングにおける打ち込み側主面には、コンクリートに対する係合強度を高めるための突起が備えられており、前記裏当て材を配置する部位に備えられている突起を予め除去しておく突起除去工程を有するようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、裏当て材に対してライニングを面で当接させる事が可能となる。
【0014】
また、上記目的を達成するための本発明に係るコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法は、コンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法であって、既設コンクリートに敷設されている既設ライニングの一部を除去する既設ライニング部分除去工程と、型枠におけるコンクリート打ち込み側主面に、前記コンクリート打ち込み側主面から端部を張り出させた状態となるようにライニングを貼付するライニング貼付工程と、前記ライニング部分除去工程を経て露出された前記既設コンクリートの端部に対して、前記既設ライニングの端部に隣接するようにして前記型枠に貼付したライニングの張り出し部を配置し、前記既設コンクリートを裏当て材として前記既設ライニングの端部と前記張り出し部とを接続するライニング接続工程と、前記型枠に貼付されたライニングの前記既設コンクリート側に新たなコンクリートを打ち込む打ち込み工程とを有することを特徴とするものであっても良い。
【0015】
さらに、上記特徴を有するコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法において前記既設ライニング、及び前記型枠に貼付したライニングにおける打ち込み側主面には、コンクリートに対する係合強度を高めるための突起が備えられており、前記既設ライニングでは、前記ライニング部分除去工程により除去する部位の突起を予め削除し、前記型枠に貼付したライニングでは、前記既設コンクリートと接触する部位の突起を予め削除する突起除去工程を有するようにすることが望ましい。このような特徴を有する事によれば、コンクリートに対する突起の噛み込みが無く、ライニングの部分除去を行うことが可能となる。また、露出した既設コンクリートの表面に対し、新たに設置するライニングの張り出し部を面で接触させる事が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
上記のような特徴を有するコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法によれば、壁面や天井面、傾斜面、および床面など種々のコンクリート表面に対する施工に適用することができ、打ち込むコンクリートの漏れを防ぎつつライニングの敷設を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法を適用する水槽型構造物の断面構成を示す図である。
【
図2】実施形態で用いるライニングの一例の構成を示す斜視図である。
【
図3】型枠にライニングを貼付した状態を示す斜視図である。
【
図4】ライニングを貼付した型枠を複数配置した状態を示す斜視図である。
【
図5】ライニングを貼付した型枠と、対向配置される型枠とをセパレータを介して繋ぎ止めた状態を示す側断面図である。
【
図6】隣接配置されたライニングにおける張り出し部のコンクリート打ち込み面側に裏当て材を配置した状態を示す図である。
【
図7】ライニングにおける張り出し部の突き合わせ部分を溶着した状態を示す図である。
【
図8】隣接配置された型枠の間であって、ライニングの張り出し部形成部分に後付け型枠を配置した状態を示す図である。
【
図9】ライニングを貼付した型枠と、対向配置される型枠との間にコンクリートを打ち込んだ状態を示す側断面図である。
【
図10】コンクリートが硬化した後、型枠を撤去した状態を示す側断面図である。
【
図11】ライニングを係合させた状態のプレキャストブロックを示す斜視図である。
【
図12】ライニングを係合させた状態のプレキャストブロックを複数隣接配置した状態を示す斜視図である。
【
図13】ライニングを敷設したコンクリート表面を示す側断面図である。
【
図14】既設のライニングを部分的に除去し、型枠に貼付された新たなライニングを既設コンクリート表面に当接させる状態を示す側断面図である。
【
図15】既設のライニングと、新たなに配置したライニングの張り出し部とを溶着した状態を示す側断面図である。
【
図16】新たに配置したライニングを貼付した型枠と、対向配置される型枠との間に新たなコンクリートを打ち込んだ状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を適用する上での好適な形態の一部であり、主体的な方法を含む限りにおいて、実施工程の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0019】
まず、
図1に、本実施形態に係るコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法(以下、単にライニングの施工方法と称す)を適用する敷設面の一例について示し、適宜図面を参照して敷設方法の詳細を説明する。
【0020】
[ライニング敷設現場の一例]
本実施形態に係るライニングの施工方法は、例えば
図1に示すような水槽を構成する底面や側面(側壁102)の他、天井面(蓋面)などに適用することができる。このため、ライニング10を敷設するコンクリート104は、構造物の基礎を構成するものに限らず、躯体の側壁102や天井面を構成するものも含むこととする。コンクリート104の表面に敷設するライニング10は、種々選択の余地があり、以下の説明では一例として、PE(ポリエチレン)などの合成樹脂により構成されたシートについて説明するが、同様の施工方法を実施可能であれば、その構成素材等を限定するものではない。よって、金属製のライニングを使用した場合であっても、本発明の一部とみなすことができる。
【0021】
[ライニングの形態]
本実施形態に用いるライニング10は上述したように、PEなどの樹脂により構成するものとしている。その具体的な形態は、
図2に一例を示すように、シート本体12の一方の主面に複数の突起14が形成されている、いわゆるスタッドライニングとしている。突起14が形成された主面をコンクリートの表面側に配置してコンクリート104を打ち込むことで、突起がコンクリート104に噛み込まれ、コンクリート硬化後に強固な係合状態を得る事ができるようになるからである。
【0022】
[施工:(第1実施形態)ライニング貼付工程]
第1実施形態に係るライニングの施工方法では最初に、
図3に示すようにライニング10を型枠20に貼り付ける。ここで、型枠20とは、ライニング10を貼付した状態でコンクリート104の打ち込みを行った際、コンクリート104の打ち込み圧力に耐え得るだけの強度を持つものであれば良い。なお、具体的な構成は限定するものではなく、コンクリート104の打ち込み規模や、ライニング10の大きさなどに基づいて適宜定めるようにすれば良い。このため、実施形態を説明するための図面上には、型枠20を仮想的なブロックとして示すこととする。
【0023】
このような構成の型枠20は、コンクリート104を打ち込む側に平坦面(型を構成する面としての“平坦”であり、実際には円弧状であったり、角を構成している場合も含む:打ち込み側主面)を有する。ライニング10は、この打ち込み側主面に貼付される。ライニング10の貼付は、型枠20の打ち込み側主面に対してライニング10の他方の主面が対向するようにして成される。このような貼付形態とすることで、突起14を有する一方の主面がコンクリート104を打ち込まれる側に位置することとなる。なお、型枠20に対するライニング10の貼付は、両面テープ等の貼付手段(不図示)によって行うようにすれば良い。なお、型枠20を設置、固定した際には、セパレータ30(
図5参照)やアンカー等(不図示)によってもライニングの位置規制が成される。
【0024】
本実施形態では、型枠20にライニング10を貼付する際、ライニング10の端部が、型枠20の打ち込み側主面から張り出し部12aを持つように成される。
図3に示す例では、型枠20の幅方向端部に張り出し部12aを持たせるようにしている。本実施形態では、ライニング10における張り出し部12aの少なくとも先端側について、一方の面に設けられている突起14を予め除去するようにしている(突起除去工程)。なお、ライニング10の張り出し部12aの長さは、貼付されるライニング10の大きさや素材、ならびに施工の作業性に応じて変化させるようにすると良い。すなわち、張り出し部12aの長さは一概に定まるものではなく、隣接配置される型枠20の間で、詳細を後述するライニング接続工程を実施可能な隙間を開ける事ができれば良い。
【0025】
[型枠配置工程]
型枠20に対するライニング10の貼付が完了した後、複数の型枠20をコンクリート104を打ち込む面の形態に沿うように配置する。ここで、型枠20は一般的な型枠とは異なり、
図4に示すように、隣接して配置される型枠20との間に隙間を開けるようにして配置される。隣接配置される型枠20間の隙間は、ライニング10の張り出し部12a同士が突き合わされる程度の距離であれば良い。
【0026】
型枠20は
図5に示すように、構造物の側壁102等の躯体を構成するために用いられる型枠20Aに対してセパレータ30を介して繋ぎ止められることで配置が完了する(型枠20の対向要素が基礎である場合は、アンカー(不図示)により固定)。このため、型枠20、並びにライニング10には、セパレータ30やアンカー(本実施形態では、一例としてセパレータ30と称す)を挿通させるための貫通孔が設けられている。
【0027】
セパレータ30を用いた型枠20,20Aの配置固定は、一般的な手法によれば良い。具体的には
図5に示すように、対面配置されている型枠20と20Aの間に、位置決めと打ち込み圧への対向要素としてのセパレータ30を挿通させると共に、セパレータの端部にPコン36を固定する。Pコン36には、型枠20,20Aを挿通するフォームタイ(登録商標)32が延設され、型枠20,20Aの外側面に単管パイプ34等のサポート部材を配置する。このような配置固定を行う事で、型枠20,20Aを確実に位置決めする事ができると共に、コンクリート104を打ち込んだ際の圧力で型枠20がズレる事を防ぐ事ができる。なお、
図5では、ライニング10の一方の面に形成されている突起14を省略している。
【0028】
[裏当て材配置工程]
型枠20の配置、並びに固定が完了した後、
図6に示すように、ライニング10における張り出し部12aの突き合せ部分に裏当て材40を配置する。裏当て材40は、張り出し部12aにおけるコンクリート104を打ち込む側、すなわちライニング10の一方の面に接触するように配置される。上述したように、本実施形態に係るライニング10は、張り出し部12aにおける裏当て材40に接触する部分に形成されていた突起14を予め除去している。このため、裏当て材40とライニング10の一方の面とが面で接触することとなる。
【0029】
裏当て材40は、ライニング10との接触面としての平坦面を有すると共に、所定の剛性を有する部材であれば良い。このため、その構成材料は限定的なものではなく、例えばH鋼などの鋼材や、これらの鋼材を樹脂(例えばライニング10の構成材料と同質のもの)で被覆したものなどを挙げることができる。また、裏当て材40の固定は、水槽100の底部からの立設の他、必要に応じて岩盤(基礎106)からのアンカーを介在させるなど、種々の形態を採ることができる。
【0030】
また、本実施形態のように裏当て材40を配置する場合、裏当て材40を配置した後、詳細を後述するライニング接続工程の前に、ライニング10を裏当て材40に接着する、ライニング仮固定工程を設けるようにすることが望ましい。このような処理を施す事により、ライニング接続工程時にライニング10に生ずる歪みを抑制することができるからである。
【0031】
[ライニング接続工程]
型枠20の配置固定、及びライニング10の張り出し部12aに対する裏当て材40の配置が完了した後、
図7に示すように、ライニング10における張り出し部12aの突き合せ部の接続を行う。ライニング10の接続は、溶着により行うようにすれば良い。例えばライニング10の素材がポリエチレンである場合には、加熱圧着や、押出し溶着などの手法によれば良い。加熱圧着は主に、張り出し部12aの突き合せ部に重なりを持たせた場合に採り得る手法であり、重なり部分を加熱しながら圧力を加える事で、重なり部分を溶着するというものである。
【0032】
一方、押出し溶着は、突き合せ部に重なりが無い場合に採り得る手法であり、ライニング10と同質の部材を溶かし出し、ライニング10と一体化させる接合を行うというものである。
【0033】
このようにして張り出し部12aの突き合わせ部に溶着部16を構成することで、隣接配置されたライニング10の接続が完了する。なお、実施形態に係る裏当て材40とライニング10とは、上述したように面で接触しているため、溶着部材が裏側から逃げてしまう事が無い。また、本実施形態では便宜上、ライニング10同士の接続部分を突き合せ部とし、上記説明では、隣接配置される型枠20間の隙間は、ライニング10の張り出し部12a同士が突き合わされる程度の距離としているが、隣接配置される型枠20間の隙間を若干狭め、張り出し部12a同士が重ね合わされている場合であっても、同様に接続が可能である。
【0034】
[後付け型枠配置工程]
隣接配置されたライニング10を接続した後、
図8に示すように、隣接配置されている型枠20の隙間に後付け型枠50を配置する。後付け型枠50は、コンクリート104を打ち込みした際にライニング10の張り出し部12aに付与される圧力を受けるためのものである。このため、型枠20と異なり、ライニング10の他方の面に接着させる必要は無く、単に接していれば良い。なお、後付け型枠50は、コンクリート104を打ち込みした際の圧力を受けるため、型枠20が反力受けとして機能するように固定されると良い。
【0035】
[打ち込み工程]
後付け型枠50を設置した後、
図9に示すようにしてコンクリート104の打ち込みを行う。コンクリート104の打ち込みは、セパレータ30を介して繋ぎ止められた型枠20Aとライニング10との間、すなわちライニング10の敷設側にコンクリート104を打ち込み、締固めを行った上で、硬化を待つ。コンクリート104が硬化した後、
図10に示すように、後付け型枠50と型枠20,20A、及びフォームタイ(登録商標)32や、外部に露出したPコン36などを撤去することで、コンクリート104の表面に対するライニング10の敷設が完了する。
【0036】
ここで、型枠20に対するライニング10の貼付は強固なものであるが、コンクリート104が硬化した後のライニング10は、突起14がコンクリート104の壁面に噛み込まれる事で強固な係合状態を維持される。よって、型枠20を撤去する際に剥離してしまう虞は無い。なお、ライニング10を貼付した面において、フォームタイ(登録商標)32を抜き取る事で生ずる開口には、必要に応じてライニング10と同質の材料による穴埋めを施すようにすると良い。また、ライニング10を貼付しない面に生ずる開口には、モルタル等による穴埋めを施し、セパレータ30が外部に露出する事が無いようにすると良い。
【0037】
[作用効果]
上記のようなライニングの施工方法によれば、隣接配置したライニング10同士を隙間なく溶着した上でコンクリート104の打ち込みを行うこととなる。このため、ライニング10の隙間から打ち込みするコンクリート104が漏れ出す事を防ぐ事ができる。よって、壁面に対する施工にも適用する事ができ、施工後の壁面を清浄な状態に保つ事もできる。
【0038】
また、ライニング10を型枠20に対して強固に貼付した上でコンクリート104の打ち込みを行うため、コンクリート104が硬化する際の収縮の影響によるライニング10の撓みを抑制することができる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法(ライニングの施工方法)に係る第2実施形態について説明する。本実施形態に係るライニングの施工方法は、ライニング10を貼付したプレキャストブロック60を用いて施工を行う点が、型枠20を用いる第1実施形態に係るライニングの施工方法と異なる(
図11参照)。なお、第1実施形態と同様な構成については、図面に同一符号を付して詳細な説明を省略することとする。
【0040】
本実施形態では、プレキャストブロック60に予めライニング10を貼付しているため、
図11に示すように、ライニング10の一方の面がプレキャストブロック60に対向配置された状態となる。また、第1実施形態と同様に、ライニング10の張り出し部12aに関しては、少なくとも先端側に配置された突起14(
図11には不図示)を除去する処理が施されている(突起除去工程)。
【0041】
[ブロック配置工程]
プレキャストブロック60は、所望する形態となるように、工場等で予めコンクリートが整形された状態で搬入される。このため、搬入されたプレキャストブロック60は、
図12に示すように設計図に従って配置され、固定される。プレキャストブロック60の配置は、上述した第1実施形態に係る剛性型枠20と同様に、隣接配置されるプレキャストブロック60との間に、ライニング10の張り出し部12aの突合せ距離に相当する隙間を設けるようにしている。
【0042】
ブロック配置工程後の工程は、上述した第1実施形態と同様である。すなわち、ライニング10の張り出し部12aの突き当て部分に接触させる裏当て材40を配置する裏当て材配置工程と、ライニング10の張り出し部12aの突き合せ部分を接続するライニング接続工程、後付け型枠配置工程、及び打ち込み工程を経る事で、コンクリート104の表面に対するライニング10の敷設が完了する。
【0043】
[作用効果]
上記のようなライニングの施工方法によっても、ライニング10の隙間から打ち込むコンクリート104が漏れ出す事を防ぐ事ができる。よって、壁面に対する施工にも適用する事ができる。
【0044】
また、予めライニング10を係合させたプレキャストブロック60を用いて施工を行うため、工期の短縮を図る事が可能となる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、本発明のコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法(ライニングの施工方法)に係る第3実施形態について説明する。本実施形態に係るライニングの施工方法は、コンクリート104の打ち込みを一度に行う事ができない場合、すなわちコンクリート104の施工が前後する場合に好適な方法である。なお、本実施形態においても、上記第1、第2実施形態と同様な構成については、図面に同一符号を付して説明を省略することとする。
【0046】
コンクリート104の打ち込みを一度に行う事ができない場合の例として、高さ方向に壁面の構築を行うような場合がある。上記第1、第2実施形態に係る敷設方法によりライニング10を敷設したコンクリート104の壁面は、断面視において
図13に示すような形態となる。ここで、本実施形態に係るライニングの施工方法を実施する場合には、予め二点鎖線Lで示す部分よりも上部に係合されることとなるライニング10の一方の面に形成される突起14を除去しておく。
【0047】
このような処理を施す事で、突起14を除去した部分はコンクリート104による噛み込み効果(楔効果)が無くなり、コンクリート104に対する係合状態が弱くなる。本実施形態では、コンクリート104が硬化した後に、二点鎖線で示す部分よりも上部に位置するライニング10(突起を除去した部分)を切断除去する。
【0048】
[ライニング貼付工程]
図14に示すように、コンクリート104に敷設された後のライニング10の一部(シート本体12)を切断除去した後、張り出し部12aを持たせた状態で、型枠20に貼付したライニング10を配置する。ここで、型枠20に対するライニング10の貼付については、上述した第1実施形態と同様な手法で行えば良い。なお、第1実施形態では型枠20の幅方向両端部に設けていた張り出し部12aを、本実施形態では型枠20の下端部に設ける構成としている。高さ方向に対するライニング10の接続を目的としているからである。
【0049】
本実施形態における張り出し部12aの長さd1は、必ずしも切り取られるシート本体12aの長さd2と一致させる必要は無いが、少なくともd2に相当する範囲で突起14を除去する処理を施すようにする。ライニング10の下端側において、長さd2に相当する部分が既設のコンクリート104の壁面と重なることとなるからである。ここで、さらに上部にコンクリート104の打ち込みを予定している場合には、
図14に示すように、二点鎖線Lより上部に位置するライニング10のシート本体12に形成されている突起14を、予め除去する処理を施すと良い(突起除去工程)。
【0050】
[ライニング接続工程]
上記のようにして型枠20に貼付したライニング10の張り出し部12aを既設のコンクリート104に敷設されたライニング10の端部に突き当てるように配置すると、既設のコンクリート104が裏当て材としての役割を担うようになる。このため、
図15に示すように、既設のコンクリート104に敷設されているライニング10の端部(上端部)と、型枠20に貼付されたライニング10の張り出し部12aの端部(下端部)を接続するように溶着部16を構成する。これにより、既設のコンクリート104に敷設されたライニング10と、新たに敷設するライニング10との接続が完了する。
【0051】
[後付け型枠配置工程]
ライニング接続工程を終えた後、
図15に示すように、ライニング10の接続部分であって、ライニング10の突起を除去した部分がコンクリート104に当接している部位に、後付け型枠50を配置する。
【0052】
[打ち込み工程]
既設のコンクリート104を裏当て材としてライニング10,10の接続を終え、後付け型枠50の配置を行った後、
図16に示すように、既設コンクリート104の上部に新たなコンクリート104の打ち込みを行う。打ち込みをした新たなコンクリート104が硬化した後、型枠20等を撤去することで、施工が前後するコンクリート104の表面に対するライニング10の敷設が完了する。
【0053】
[作用効果]
上記のようなライニングの施工方法によっても、ライニング10の隙間から打ち込みを行うコンクリート104が漏れ出す事を防ぐ事ができる。よって、壁面や、天井面に対する施工にも適用する事ができる。
【0054】
また、本実施形態に係る方法によれば、上下方向の敷設のみならず、幅方向の敷設であっても、コンクリート104の施工が前後する場合に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
上記実施形態では、本発明に係るコンクリート表面に敷設されるライニングの施工方法の適用面として、ほぼ垂直に示した壁面を例に挙げて説明しているが、天井面や傾斜面、及び床面等に施工するコンクリートに対するライニングの敷設にも適用することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
10………ライニング、12………シート本体、12a………張り出し部、14………突起、16………溶着部、20………型枠、20A………型枠、30………セパレータ、32………フォームタイ(登録商標)、34………単管パイプ、36………Pコン、40………裏当て材、50………後付け型枠、60………プレキャストブロック、100………水槽、102………側壁、104………コンクリート、106………基礎。