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特許7450697樹脂組成物、樹脂フィルム、半導体積層体、半導体積層体の製造方法及び半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂フィルム、半導体積層体、半導体積層体の製造方法及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/62 20060101AFI20240308BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240308BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240308BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240308BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08G59/62
C08G59/20
C08L63/00 B
C08K5/5415
C08K5/544
C08K5/548
H01L23/30 R
H01L21/56 R
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022207102
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2021205663の分割
【原出願日】2019-01-21
(65)【公開番号】P2023040078
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】市岡 揚一郎
(72)【発明者】
【氏名】大和田 保
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102631(JP,A)
【文献】特開2013-194199(JP,A)
【文献】特開2018-188494(JP,A)
【文献】特開2016-204553(JP,A)
【文献】特開2017-145295(JP,A)
【文献】特開2016-141739(JP,A)
【文献】特開2008-115382(JP,A)
【文献】特開2018-172599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 2/00-2/60、251/00-283/00、
283/02-289/00、291/00-297/08
B32B 1/00-43/00
H01L 21/56、23/28-23/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(D)を含む半導体封止用樹脂組成物。
(A)エポキシ基を140~5000g/eqの範囲のエポキシ当量で含有するシリコーン変性エポキシ樹脂、
(B)フェノール性硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)下記式(0-4)~(0-)で示される中から少なくとも1つ選択される接着助剤(但し、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを除く。)
【化1】
(R’は加水分解性シリル基を含有する炭素数1~20の1価の有機基、R’ は水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基、Arは置換基を2つ持っていてもよい芳香環、もしくは複素環を示す。)
【請求項2】
更に、前記(A)成分以外の(E)エポキシ化合物が、前記(A)成分100質量部に対し、0.1~80質量部含まれるものであることを特徴とする請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(F)無機充填剤を含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記(F)無機充填剤が、シリカであり、前記樹脂組成物中20~96質量%含まれるものであることを特徴とする請求項3に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記式(0-5)中のR’ が炭素数1~20の1価の有機基であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記シリコーン変性エポキシ樹脂が、下記式(4)で表される構成単位を含み、重量平均分子量が3,000~500,000であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化2】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。また、a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0<d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。gは、0~300の整数である。Xは、下記式(5)で表される2価の有機基である。Yは、下記式(6)で表される2価のシロキサン骨格含有基である。Zは下記式(7)で表される2価の有機基である。]
【化3】
(式中、Eは、単結合、又は下記式
【化4】
から選ばれる2価の有機基である。R及びRは、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。t及びuは、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【化5】
(式中、vは、0~300の整数である。)
【化6】
(式中、Gは、単結合、又は下記式
【化7】
から選ばれる2価の有機基である。R及びR10は、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。w及びxは、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物がフィルム化されたものであることを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項8】
半導体ウエハ上に請求項7に記載の樹脂フィルムの硬化物を有するものであることを特徴とする半導体積層体。
【請求項9】
半導体装置であって、
請求項8に記載の半導体積層体が個片化されたものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
半導体積層体の製造方法であって、
請求項7に記載の樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程とを有することを特徴とする半導体積層体の製造方法。
【請求項11】
半導体装置の製造方法であって、
請求項10に記載の半導体積層体の製造方法によって製造した半導体積層体を個片化する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂フィルム、半導体積層体、半導体装置、半導体積層体の製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体業界ではスマートフォンなどのモバイル機器の小型化・高機能化・低コスト化に対応するため、チップ基板となるシリコンウエハの薄化や、製造効率向上を目的とした大型CCL基板やBT基板等への転換が進められている。しかし、薄基板や大型CCL基板・BT基板では反りが顕著になるため、封止材に大きな負荷がかかり、接着面と剥離が生じやすくなっており、封止材の接着力がまずます重要となってきている。これまでに、封止材の接着力向上のため、種々検討が進められてきたが、更なる高接着の封止材が求められている(特許文献1)。
【0003】
また、製造効率を上げるため、CCLやBT基板は角基板を用いることが多いが、これを封止する際、液状封止材では基板の内側と外側でムラが生じやすくなるため、これを容易に均一封止できるフィルムタイプが望まれていた。
【0004】
そこで、歪曲時も剥離の生じづらい高接着樹脂組成物、及びこれを用いた良好なウエハ保護性能を有するウエハモールド材の開発、及び、そのフィルム化が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-332662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、反りが小さく、接着力に優れる樹脂組成物、該組成物がフィルム化されたものである高接着樹脂組成物フィルム、該フィルムの硬化物を有する半導体積層体及びその製造方法、並びに該半導体積層体が個片化されたものである半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、下記(A)~(D)を含む樹脂組成物を提供する。
(A)エポキシ基を140~5000g/eqの範囲のエポキシ当量で含有する樹脂、
(B)フェノール性硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)下記式(0-1)~(0-5)で示される中から少なくとも1つ選択される化合物
【化1】
(R’は加水分解性シリル基を含有する炭素数1~20の1価の有機基、R’,R’はそれぞれ水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基、X’は酸素原子、もしくは硫黄原子、Arは置換基を2つ持っていてもよい芳香環、もしくは複素環を示す。)
【0008】
このような組成物であれば、反りが小さく、接着力に優れる。
【0009】
前記樹脂組成物は、更に、前記(A)成分以外の(E)エポキシ化合物が、前記(A)成分100質量部に対し、0.1~80質量部含まれるものであることができる。
【0010】
このような樹脂組成物は、より反りが小さく、接着力により優れる。
【0011】
前記樹脂組成物は、更に、(F)無機充填剤を含むものであることができる。
【0012】
このような樹脂組成物は、無機充填剤を含むことで、より好ましいウエハ保護性を与え、更に、耐熱性、耐湿性、強度等を向上させ、硬化物の信頼性を上げることができる。
【0013】
また、前記(F)無機充填剤が、シリカであり、前記樹脂組成物中20~96質量%含まれるものであることができる。
【0014】
このような樹脂組成物は、より硬化物の信頼性を上げることができる。
【0015】
また、前記一般式(0-1)~式(0-3)であらわされる化合物において、X’が酸素原子であることができる。
【0016】
このような化合物は、原料の入手容易性や、組成物の保存安定性の観点からさらに好ましい。
【0017】
また、前記(A)成分がシリコーン変性エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0018】
このような樹脂を用いることで、硬化前の樹脂組成物に柔軟性を与え、フィルム化を容易にし、さらに硬化後は十分な弾性率を示すことができる。
【0019】
また、前記シリコーン変性エポキシ樹脂が、下記式(4)で表される構成単位を含み、重量平均分子量が3,000~500,000であることが好ましい。
【化2】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。また、a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0<d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。gは、0~300の整数である。Xは、下記式(5)で表される2価の有機基である。Yは、下記式(6)で表される2価のシロキサン骨格含有基である。Zは下記式(7)で表される2価の有機基である。]
【化3】
(式中、Eは、単結合、又は下記式
【化4】
から選ばれる2価の有機基である。R及びRは、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。t及びuは、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【化5】
(式中、vは、0~300の整数である。)
【化6】
(式中、Gは、単結合、又は下記式
【化7】
から選ばれる2価の有機基である。R及びR10は、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。w及びxは、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【0020】
このような樹脂を用いることで、硬化前の樹脂組成物により柔軟性を与え、フィルム化を容易にし、さらに硬化後はより優れた弾性率を示すことができる。
【0021】
また、本発明は、上記樹脂組成物がフィルム化されたものである樹脂フィルムを提供する。
【0022】
このような樹脂フィルムであれば、接着力が高いため、これにより半導体ウエハ等が十分に保護される。
【0023】
また、本発明は、半導体ウエハ上に上記樹脂フィルムの硬化物を有する半導体積層体を提供する。
【0024】
このような半導体積層体であれば、樹脂フィルムの接着力が高いため、樹脂フィルムにより半導体ウエハが十分に保護されたものとなる。
【0025】
また、本発明は、半導体装置であって、上記半導体積層体が個片化されたものであることを特徴とする半導体装置を提供する。
【0026】
このような半導体装置であれば、高品質なものとなる。
【0027】
また、本発明は、半導体積層体の製造方法であって、上記樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程とを有することを特徴とする半導体積層体の製造方法を提供する。
【0028】
このような半導体積層体の製造方法であれば、樹脂フィルムにより半導体ウエハが十分に保護された半導体積層体を製造することができる。
【0029】
また、本発明は、半導体装置の製造方法であって、上記半導体積層体の製造方法によって製造した半導体積層体を個片化する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0030】
このような半導体装置の製造方法であれば、高品質な半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の樹脂組成物は、硬化物の接着力を大幅に上げることができ、低反り性に優れ、ウエハを一括してモールドすることが可能であるフィルムとなるため、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる。これらの発明を用いることで、歩留まりよく高品質な半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
上記のように、反りが小さく、接着力に優れる樹脂組成物、該組成物がフィルム化されたものである高強度樹脂フィルム、該樹脂フィルムの硬化物を有するものである半導体積層体及びその製造方法、並びに該半導体積層体が個片化されたものである半導体装置及びその製造方法が求められている。
【0033】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。その結果、(A)エポキシ基を140~5000g/eq範囲のエポキシ当量で含有する樹脂、(B)フェノール性硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)特定の構造の化合物を組み合わせることで、接着力も高く、反りも小さい樹脂組成物を得られることを見出した。更に、前記樹脂組成物をフィルム化することでより容易に取り扱えるウエハモールド材となることを見出し、本発明を完成させた。
【0034】
即ち、本発明は、下記(A)~(D)を含む樹脂組成物である。
(A)エポキシ基を140~5000g/eqの範囲のエポキシ当量で含有する樹脂、
(B)フェノール性硬化剤、
(C)硬化促進剤、
(D)下記式(0-1)~(0-5)で示される中から少なくとも1つ選択される化合物
【化8】
(R’は加水分解性シリル基を含有する炭素数1~20の1価の有機基、R’,R’はそれぞれ水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基、X’は酸素原子、もしくは硫黄原子、Arは置換基を2つ持っていてもよい芳香環、もしくは複素環を示す。)
なお、上記式(0-1)~(0-5)で示される中から少なくとも1つ選択される化合物を、以下、「接着助剤」ともいう。
【0035】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、以下の(A)~(D)成分を含むものである。
(A)エポキシ基を140~5000g/eqの範囲のエポキシ当量で含有する樹脂
(B)フェノール性硬化剤
(C)硬化促進剤
(D)接着助剤
以下、各成分について詳細に説明する。
【0037】
[(A)成分]
(A)成分は、エポキシ基を140~5000g/eqの範囲のエポキシ当量で含有する樹脂(以下、「エポキシ樹脂」ともいう)である。
前記樹脂(エポキシ樹脂)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジアリールスルホン型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。前記(A)成分は室温下で固体であれば、フィルム化が容易となる。固体の場合、フィルム状への成型が容易である上、カバーフィルムも剥がしやすくなる。また、エポキシ基を140~5000g/eq範囲のエポキシ当量で持つエポキシ樹脂は、十分な架橋を成すことができ、硬化物に耐薬品性や接着力を付与できる。これより少ないと硬化が不十分となり、耐薬品性が劣ったり、接着力が低下したりし、これより多いと反りが大きくなりやすくなる。
なお、エポキシ当量[g/eq]は、樹脂量[g]を樹脂中に含まれるエポキシ基の当量[eq]で割って計算する。エポキシ当量測定は、JIS K 7236による。
【0038】
(A)成分はシリコーン変性エポキシ樹脂であるとより好ましい。シリコーン変性エポキシ樹脂を使用することで、組成物の柔軟性が増し、フィルム化が容易になる。
【0039】
さらに、前記シリコーン変性エポキシ樹脂が、下記式(4)で表される構成単位を有し、重量平均分子量が3,000~500,000であることが好ましい。
【化9】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。また、a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0<d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。gは、0~300の整数である。Xは、下記式(5)で表される2価の有機基である。Yは、下記式(6)で表される2価のシロキサン骨格含有基である。Zは下記式(7)で表される2価の有機基である。]
【化10】
(式中、Eは、単結合、又は下記式
【化11】
から選ばれる2価の有機基である。R及びRは、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。t及びuは、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【0040】
【化12】
(式中、vは、0~300の整数である。)
【化13】
(式中、Gは、単結合、又は下記式
【化14】
から選ばれる2価の有機基である。R及びR10は、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。w及びxは、それぞれ独立に、0~2の整数である。)
【0041】
~Rは、それぞれ独立に、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。また、a、b、c、d及びeは、各繰り返し単位の組成比を表し、0<a<1、0≦b<1、0≦c<1、0<d<1、0≦e<1、0.67≦(b+d)/(a+c+e)≦1.67、かつa+b+c+d+e=1を満たす数である。
前記炭素数1~20の1価炭化水素基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基などが挙げられ、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、及びフェニル基などが挙げられる。中でもメチル基及びフェニル基が原料の入手の容易さから好ましい。前記アルコキシ基としては、上記1価炭化水素基に酸素原子が結合した基、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシル基、及びフェノキシ基などが挙げられる。a~eは上記条件を満たす数であれば特に限定されない。
【0042】
式(5)、(7)中、R、R、R及びR10は、炭素数1~20の1価炭化水素基又はアルコキシ基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。R~R10としては、好ましくは炭素数1~4、より好ましくは炭素数1~2のアルキル基又はアルコキシ基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、メトキシ基、エトキシ基等が好ましい。
【0043】
式(5)、(7)中、t、u、w及びxは、それぞれ独立に、0~2の整数であるが、0が好ましい。
【0044】
式(4)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3,000~500,000であるが、5,000~200,000が好ましい。式(4)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂は、ランダム共重合体でも、ブロック重合体でもよい。
【0045】
エポキシ樹脂は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
式(4)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂は、下記式(8)で表されるシルフェニレン化合物及び下記式(9)~(12)で表される化合物から選択される化合物を用いて、以下に示す方法により製造することができる。
【0047】
【化15】
(式中、R~R10、E、G、g、t、u、v、w及びxは、前記と同じ。)
【0048】
式(4)で表されるシリコーン変性エポキシ樹脂は、原料をヒドロシリル化させることで合成できる。その際、反応容器に全部の原料を入れた状態で反応させてもよく、また一部の原料を先に反応させて、その後に残りの原料を反応させてもよく、原料を1種類ずつ反応させてもよく、反応させる順序も任意に選択できる。各化合物の配合比は、上記式(10)及び式(11)及び式(12)で表される化合物が有するアルケニル基のモル数の合計に対する上記式(8)及び式(9)で表される化合物が有するヒドロシリル基のモル数の合計が0.67~1.67、好ましくは0.83~1.25となるように配合するのがよい。
【0049】
この重合反応は、触媒存在下で行う。触媒は、ヒドロシリル化が進行することが広く知られているものが使用できる。具体的には、パラジウム錯体、ロジウム錯体、白金錯体等が用いられるが、これらに限定されない。触媒は、Si-H結合に対し、0.01~10.0モル%程度加えることが好ましい。0.01モル%以上であれば、反応の進行が遅くならず、反応が十分に進行し、10.0モル%以下であれば、脱水素反応が進行しにくくなり、付加反応の進行を阻害するおそれがない。
【0050】
重合反応に用いる溶媒としては、ヒドロシリル化を阻害しない有機溶媒が広く使用できる。具体的には、オクタン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。溶媒は、溶質が10~70質量%になるように使用することが好ましい。10質量%以上であれば、反応系が薄くならず、反応の進行が遅くならない。また、70質量%以下であれば、粘度が高くならず、反応途中で系中を十分に攪拌できなくなるおそれがない。
【0051】
反応は、通常40~150℃、好ましくは60~120℃、特に好ましくは70~100℃の温度で行われる。反応温度が150℃以下であれば、分解等の副反応が起こりにくくなり、40℃以上であれば、反応の進行は遅くならない。また、反応時間は、通常0.5~60時間、好ましくは3~24時間、特に好ましくは5~12時間である。
【0052】
このような樹脂を用いることで、硬化前の樹脂組成物に柔軟性を与え、フィルム化を容易にし、さらに硬化後は十分な弾性率を示すことができ、その他、耐薬品性、耐熱性、耐圧性がより優れる硬化物を与えることができる。
【0053】
[(B)成分]
(B)成分のフェノール性硬化剤は、公知のものを広く使用可能である。硬化剤の構造としては、OH基を2~10個有する多価アルコールがよく、以下に示すものが例示できるが、これらに限定されない。
【0054】
【化16】
【0055】
(B)成分の含有量は、組成物中のエポキシ当量に対し、(B)成分中のフェノール性水酸基当量が60mol%~140mol%となるように配合するのが好ましく、90mol%~110mol%がより好ましい。前記範囲であれば、硬化反応が良好に進行し、エポキシ基やフェノール性水酸基が過度にあまることがなく、信頼性は悪化しにくくなる。
【0056】
[(C)成分]
(C)成分の硬化促進剤は、エポキシ基の開環に用いられるものであれば、広く使用可能である。前記硬化促進剤としては、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-エチル-4-メチルイミダゾール2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン類、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート等のテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。
【0057】
(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、0.01~20.0質量部が好ましく、0.1~5.0質量部がより好ましい。前記範囲であれば、硬化反応が過不足なく進行し、硬化物が脆くならず、信頼性が向上する。
【0058】
[(D)成分]
(D)成分は、本発明の必須成分であって、接着力を向上させるのに、有効な成分(接着助剤)である。(D)成分は、下記式(0-1)~(0-5)で示される中から少なくとも1つ選択される化合物である。
【化17】
(R’は加水分解性シリル基を含有する炭素数1~20の1価の有機基、R’,R’はそれぞれ水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基、X’は酸素原子、もしくは硫黄原子、Arは置換基を2つ持っていてもよい芳香環、もしくは複素環を示す。)
【0059】
R’は加水分解性シリル基を含有する炭素数1~20の1価の有機基である。該有機基は、加水分解性シリル基を有する炭化水素基であってよい。前記加水分解性シリル基としては、アルコキシシリル基、アシルオキシシリル基、アルケニルオキシシリル基、アリーロキシシリル基、ハロゲン化シリル基や、アミド基、アミノ基、アミノオキシ基、ケトキシメート基を有するシリル基などが挙げられ、前記炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基などのアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基などのアリーレン基、フェネチレン基、キシリレン基などのアラルキレン基などを挙げることができる。前記アルコキシシリル基中のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシル基、及びフェノキシ基などが挙げられる。
【0060】
R’,R’はそれぞれ水素原子又は炭素数1~20の1価の有機基である。炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0061】
Arは置換基を2つ持っていてもよい芳香環、もしくは複素環である。例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ピリジル基、キノリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピリミジル基等が挙げられる。
【0062】
X’は酸素原子、もしくは硫黄原子である。前記一般式(0-1)~式(0-3)で表される化合物においては、X’が酸素原子であるとき、原料の入手容易性や、組成物の保存安定性の観点から好ましい。
【0063】
(D)成分(接着助剤)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
【化18】
【0064】
【化19】
【0065】
(D)成分は(A)成分100質量部に対し、0.1~40質量部が好ましく、1.0~15質量部がより好ましい。前記範囲内であれば、硬化反応を阻害することなく、接着力が向上する。(D)成分は1種類単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
[(E)成分]
また、この樹脂組成物に(A)成分以外のエポキシ化合物(E)を加えることができる。加える際は(A)成分のエポキシ基含有樹脂100質量部に対し、0.1~80質量部、好ましくは0.5~50質量部、より好ましくは1~30質量部の範囲で加えることができる。この範囲であれば、エポキシ化合物の効果が表れ、反り量が増加することはない。
【0067】
エポキシ化合物(E)は、化合物中にエポキシ基を2~10個、好ましくは2~5個有すものがよく、以下のものが例示できるが、これらに限定されない。1種類単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0068】
【化20】
【0069】
【化21】
【0070】
【化22】
【0071】
【化23】
【0072】
[(F)成分]
本発明の樹脂組成物は、ウエハ保護性を与え、更に、耐熱性、耐湿性、強度等を向上させ、硬化物の信頼性を上げるために、(F)成分として無機充填剤を含んでもよい。無機充填剤としては、例えば、酸化チタン、アルミナ、溶融シリカ(溶融球状シリカ、溶融破砕シリカ)、結晶シリカ粉末等の酸化物、タルク、ガラス、焼成クレー等のケイ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素等の窒化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩又は亜硫酸塩等が挙げられる。これらの無機充填剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
無機充填剤の平均粒径は、特に限定されないが、0.01~30μmが好ましく、0.03~14μmがより好ましい。無機充填剤の平均粒子径が0.01μm以上であれば、フィラーを充填しやすくなり、さらに硬化物の強度が高くなりやすくなり、30μm以下であれば、チップ間への充填性が良好になる。
【0074】
これらの中でも、溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末が好ましい。(F)成分の含有量は、樹脂組成物の固形分中、14~96質量%が好ましく、20~96質量%がより好ましく、50~95質量%がより一層好ましく、60~93質量%が特に好ましい。無機充填材の含有量が96質量%以下であれば、無機充填剤の充填性や組成物の加工性がより良好となり、14質量%以上、好ましくは20質量%以上であれば、無機充填剤の効果が十分に奏する。なお、固形分とは、有機溶剤以外の成分のことをいう。
【0075】
[その他成分]
また、本発明の樹脂組成物は、更に、前述したもの以外の成分を含んでもよい。例えば、有機溶剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0076】
(有機溶剤)
本発明の樹脂組成物は、これら成分を均一に混ぜるため、有機溶剤に溶かして使用してもよい。有機溶剤としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、N,N-ジメチルホルムアミド、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン等が挙げられ、特にメチルエチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましいが、これらに限定されない。これらの有機溶剤は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤の使用量は、樹脂組成物中の固形分濃度が40~90質量%になる量が好ましい。
【0077】
(難燃剤)
本発明の樹脂組成物は、難燃性の向上を目的として、難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、リン系難燃剤が挙げられ、ハロゲン原子を含有せずに難燃性を付与するものであるが、その例としてはホスファゼン化合物、リン酸エステル化合物、リン酸エステルアミド化合物等が挙げられる。ホスファゼン化合物やリン酸エステルアミド化合物は、分子内にリン原子と窒素原子を含有しているため、特に高い難燃性が得られる。難燃剤の含有量は、(A)成分100質量部に対し、3~40質量部が好ましい。
【0078】
その他、各成分の相溶性向上や樹脂組成物の貯蔵安定性又は作業性等の各種特性を向上させるために、各種添加剤を適宜添加してもよい。例えば、脂肪酸エステル、グリセリン酸エステル、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の内部離型剤、フェノール系、リン系又は硫黄系酸化防止剤等を添加することができる。また、カーボンブラック等の顔料を用いて、組成物を着色することもできる。
【0079】
上記本発明の組成物であれば、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)することができ、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性を有し、同時に、基板との剥離が起きづらい高接着性・低反り性を有し、モールド工程を良好に行うことができ、ウエハレベルパッケージに好適に用いることができる。
【0080】
[樹脂フィルム]
更に本発明では、上記本発明の樹脂組成物がフィルム化されたものであることを特徴とする樹脂フィルムを提供する。本発明の樹脂フィルムは、前記樹脂組成物を用いて、フィルム状に加工して得られるものである。フィルム状に形成されることで、大口径、薄膜ウエハに対して良好なモールド性能を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がないため、ウエハ表面への充填不良等の問題を生じさせることがない。また、前記樹脂組成物を用いて形成された樹脂フィルムであれば、反りが出づらく、接着力が高いため、各種エラーの起きづらいウエハモールド材となる。
【0081】
本発明の樹脂フィルムは、前記樹脂組成物から得られる樹脂フィルムに保護フィルムが積層されたものであってもよい。この場合の本発明の樹脂フィルムの製造方法の一例について説明する。
【0082】
前記(A),(B),(C),(D)成分、並びに必要に応じて(F)成分、(A)成分以外のエポキシ化合物(E)及びその他の成分を混合して樹脂組成物溶液を作製し、該樹脂組成物溶液をリバースロールコータ、コンマコータ等を用いて、所望の厚さになるように保護フィルムに塗布する。前記樹脂組成物溶液が塗布された保護フィルムをインラインドライヤに通し、80~160℃で2~20分間かけて有機溶剤を除去することにより乾燥させ、次いでロールラミネーターを用いて別の保護フィルムと圧着し、積層することにより、樹脂フィルムが形成された積層体フィルムを得ることができる。この積層体フィルムをウエハモールド材として用いた場合、良好なモールド性を与える。
【0083】
本発明の樹脂組成物をフィルム状に形成する場合、厚みに制限はないが、好ましくは2mm以下、より好ましくは50μm以上1,200μm以下、更に好ましくは80~850μmである。このような厚みであれば、半導体封止材として、保護性に優れるため好ましい。
【0084】
前記保護フィルムは、本発明の樹脂組成物からなる樹脂フィルムの形態を損なうことなく剥離できるものであれば特に限定されないが、ウエハ用の保護フィルム及び剥離フィルムとして機能するものであり、通常、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、離型処理を施したポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。また、剥離力は、50~300mN/minが好ましい。保護フィルムの厚さは、25~150μmが好ましく、38~125μmがより好ましい。
【0085】
[半導体積層体及びその製造方法]
本発明の半導体積層体は、半導体ウエハ上に上記本発明の樹脂フィルムの硬化物を有するものである。本発明の半導体積層体の製造方法は、前記樹脂フィルムを半導体ウエハに貼り付け、該半導体ウエハをモールドする工程と、前記樹脂フィルムを加熱硬化する工程を有する方法である。
【0086】
前記半導体ウエハとしては、表面に半導体素子(チップ)が積載されたウエハであっても、表面に半導体素子が作製された半導体ウエハであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、モールド前にはこのようなウエハ表面に対する充填性が良好であり、また、モールド後には高強度・高接着性を有し、このようなウエハの保護性に優れる。また、本発明の樹脂フィルムは、直径8インチ以上、例えば、直径8インチ(200mm)、12インチ(300mm)又はそれ以上といった大口径のウエハや薄膜ウエハをモールドするのに好適に用いることができる。前記薄型ウエハとしては、厚さ5~400μmに薄型加工されたウエハが好ましい。
【0087】
なお、本発明の樹脂フィルムを用いて、角型基板上に上記本発明の樹脂フィルムの硬化物を有する半導体積層体とすることもできる。
前記角型基板としては、表面に半導体素子(チップ)が積載されていても、表面に半導体素子が作製されたものであってもよい。本発明の樹脂フィルムは、基板サイズが10cm角や50cm角、さらに大きな基板、長方形や台形など形に依らず、基板の厚さにもよらず、モールド材料として好適に用いることができる。
【0088】
本発明の樹脂フィルムを用いたウエハのモールド方法については、特に限定されないが、例えば、樹脂フィルム上に貼られた一方の保護層を剥がし、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM-300)を用いて、真空チャンバー内を真空度50~1,000Pa、好ましくは50~500Pa、例えば100Paに設定し、80~200℃、好ましくは80~130℃、例えば100℃で他方の保護層が貼られた樹脂フィルムを前記ウエハに一括して密着させ、常圧に戻した後、前記ウエハを室温まで冷却して前記真空ラミネーターから取り出し、他方の保護層を剥離することで行うことができる。
【0089】
また、半導体チップが積層されたウエハに対しては、コンプレッションモールド装置や真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置等を好適に使用することができる。例えば、コンプレッションモールド装置としては、アピックヤマダ(株)製の装置(製品名:MZ-824-01)を使用することができ、半導体チップが積層された300mmシリコンウエハをモールドする際は、100~180℃、成型圧力100~300kN、クランプタイム30~90秒、成型時間5~20分で成型が可能である。
【0090】
また、真空ダイヤフラムラミネーターと平坦化のための金属板プレスを備えた装置としては、ニチゴー・モートン(株)製の装置(製品名:CVP-300)を使用することができ、ラミネーション温度100~180℃、真空度50~500Pa、圧力0.1~0.9MPa、ラミネーション時間30~300秒でラミネートした後、上下熱板温度100~180℃、圧力0.1~3.0MPa、加圧時間30~300秒で樹脂成型面を平坦化することが可能である。
【0091】
モールド後、120~220℃、15~360分間の条件で樹脂フィルムを加熱することにより、樹脂フィルムを硬化することができる。これにより、半導体積層体が得られる。
【0092】
このような半導体積層体であれば、樹脂フィルムの強度と接着力が高いため、樹脂フィルムにより半導体ウエハが十分に保護されたものとなる。
【0093】
また、上記のような半導体積層体の製造方法であれば、樹脂フィルムにより半導体ウエハが十分に保護された半導体積層体を製造することができる。
【0094】
[半導体装置及びその製造方法]
本発明の半導体装置は、上記本発明の半導体積層体が個片化されたものである。本発明の半導体装置の製造方法は、上記本発明の半導体積層体の製造方法によって製造した半導体積層体を個片化する工程を有する方法である。このように、樹脂フィルムでモールドされた半導体ウエハを個片化することで、加熱硬化皮膜を有する半導体装置が得られる。モールドされたウエハは、ダイシングテープ等の半導体加工用保護テープにモールド樹脂面あるいはウエハ面が接するように貼られ、ダイサーの吸着テーブル上に設置され、このモールドされたウエハは、ダイシングブレードを備えるダイシングソー(例えば、(株)DISCO製DFD6361)を使用して切断される。ダイシング時のスピンドル回転数及び切断速度は、適宜選択すればよいが、通常、スピンドル回転数25,000~45,000rpm、切断速度10~50mm/secである。また、個片化されるサイズは半導体パッケージの設計によるが、概ね2mm×2mm~30mm×30mm程度である。
【0095】
このように、前記樹脂フィルムでモールドされた半導体ウエハは、樹脂フィルムの強度と接着力が高いため、半導体ウエハが十分に保護されたものとなるので、これを個片化することで歩留まりよく高品質な半導体装置を製造することができる。
【実施例
【0096】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0097】
使用した化合物S-1~S-6は、以下のとおりである。
【0098】
【化24】
【0099】
【化25】
【0100】
【化26】
【0101】
【化27】
【0102】
【化28】
【0103】
【化29】
【0104】
[エポキシ化合物(S-7)合成例]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に、化合物S-1の617g(2.0モル)、メタノール256g(8.0モル)、エピクロロヒドリンの852g(8.0モル)を加え、水酸化ナトリウム768g(19.2モル)を2時間かけて添加し、その後、60℃まで温度を上げて3時間反応させた。反応後、トルエン500mL加え、水層が中性になるまで純水で洗浄した後、有機層中の溶媒を減圧下で除去し、757g(1.8モル)のエポキシ化合物(S-7)を得た。
【化30】
【0105】
[1]樹脂の合成
(A)成分の樹脂(エポキシ樹脂)を以下のようにして合成した。
合成例において、重量平均分子量(Mw)は、GPCカラム TSKgel Super HZM-H(東ソー(株)製)を用い、流量0.6mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
【0106】
[樹脂合成例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S-7の420.5g(1.000モル)を加えた後、トルエン1,400gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、S-3の194.4g(1.000モル)を各々1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=1.000/1.000=1.00)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、エポキシ樹脂1の570gを得た。エポキシ樹脂1のMwは、53,200であった。エポキシ当量は307g/eqである。(エポキシ当量測定;JIS K 7236)
【化31】
【0107】
[樹脂合成例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S-2の133.5g(0.227モル)を加えた後、トルエン1,500gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物S-4の525.6g(0.182モル)、及び化合物S-3の8.8g(0.045モル)を各々1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=0.500/0.500=1)。滴下終了後、100℃まで加温し、6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、下記式で表されるエポキシ樹脂2の605gを得た。エポキシ樹脂2のMwは、51,100であった。エポキシ当量は1471g/eqである。
【化32】
【0108】
[樹脂合成例3]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した3Lフラスコ内に、化合物S-2の104.9g(0.179モル)、及び化合物S-5の61.5g(0.143モル)、及び化合物S-6の6.6g(0.036モル)を加えた後、トルエン1,600gを加え、70℃に加温した。その後、塩化白金酸トルエン溶液(白金濃度0.5質量%)1.0gを投入し、化合物S-4の516.3g(0.179モル)、及び化合物S-3の34.7g(0.179モル)を各々1時間かけて滴下した(ヒドロシリル基の合計モル数/アルケニル基の合計モル数=0.500/0.500=1.00)。滴下終了後、100℃まで加温し6時間熟成した後、反応溶液からトルエンを減圧留去し、エポキシ樹脂3の680gを得た。エポキシ樹脂3のMwは、46,800であった。エポキシ当量は2022g/eqである。
【化33】
【0109】
[2]樹脂フィルムの作製
[実施例1~21及び比較例1~7]
下記表1~2に記載した実施例1~21及び比較例1~7の組成で、(A)エポキシ樹脂、(B)フェノール性硬化剤、(C)硬化促進剤、(D)接着助剤、(E)エポキシ化合物、(F)無機充填剤をそれぞれ配合した。更に、固形成分濃度が80質量%となる量のシクロペンタノンを添加し、スターラーを使用して撹拌し、混合及び分散して、樹脂組成物の分散液を調製した。エポキシ基とフェノール当量が合うように、フェノール性硬化剤を加えた。
フィルムコーターとしてダイコーターを用い、基材フィルムとしてE7304(商品名、東洋紡(株)製ポリエステル、厚さ75μm、剥離力200mN/50mm)を用いて、各樹脂組成物を基材フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定されたオーブンに20分間入れることで溶剤を完全に蒸発させ、膜厚100μmの樹脂フィルムを前記基材フィルム上に形成した。
【0110】
上記以外に樹脂組成物の調製に用いた各成分を下記に示す。
[(A)成分:エポキシ樹脂]
・YL983U(エポキシ当量 172g/eq;三菱ケミカル株式会社製)
【0111】
[(B)成分:フェノール性硬化剤]
【化34】
【化35】
【0112】
[(C)成分:硬化促進剤]
・キュアゾール2P4MHZ(四国化成工業(株)製、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール)
【0113】
[(D)成分:接着助剤]
【化36】
【0114】
[(E)成分:エポキシ化合物]
【化37】
【化38】
【0115】
[(F)成分:無機充填剤]
・シリカ1(株式会社アドマテックス製、平均粒径5.0μm)
・シリカ2(株式会社アドマテックス製、平均粒径10.0μm)
【0116】
[3]樹脂フィルムの評価
得られた樹脂フィルムについて、以下の方法で評価を行った。結果を表1~2に示す。
<接着試験方法>
作製したフィルムを20mm角シリコンウエハに貼り付け、その上から2mm角に切ったシリコンチップを押し当てて、それらを加熱硬化(180℃×4時間)し、その後、接着力測定装置(ノードソン・アドバンスト・テクノロジー社製万能型ボンドテスター シリーズ4000(DS-100))を用いて、チップの横からはじいた際の接着力を測定した(ダイシェアテスト)。
【0117】
<反り応力測定試験方法>
作製したフィルムをフィルムラミネータ―(TAKATORI TEAM-100)にて、シリコンウエハ上にラミネートし、加熱硬化(180℃×4時間)し、それらを東朋テクノロジー社製薄膜応力測定装置(FLX-2320-S)で反り応力を測定した。
【0118】
<信頼性試験方法>
シリコンウエハ上にエポキシ系接着材(SINR-DF3770;信越化学工業株式会社製)を用いて10mm角の400um厚シリコンチップをマウントし、接着剤を加熱硬化させた(190℃×2hr)。その後、作製したフィルムをフィルムラミネータ―(TAKATORI TEAM-100)にて、シリコンウエハ上にラミネートし、加熱硬化(180℃×4時間)後、チップを中心として、1辺3cmの正方形にダイシングした。それをエスペック社製 冷熱衝撃試験器に入れ、-55℃~125℃ 1000回の冷熱衝撃試験を実施し、チップとモールドの界面の状態を断面観察により確認した。剥離やクラックがあれば×、問題がなければ〇とした。
【0119】
表1に実施例を、表2に比較例を示す。
【表1】
【表2】
【0120】
以上の結果、本発明の樹脂組成物(実施例1~21)から得られた樹脂フィルムは、(D)成分を含まない組成物(比較例1~7)から得られた樹脂フィルムと比べて、接着力が向上し、パッケージの信頼性に大きく寄与していることが示された。この特徴から、本発明の樹脂組成物を半導体封止用フィルムに用いた場合、剥離が起こりづらいといえる。
これにより、例えば、フィルム状モールド用途に本発明の樹脂組成物を使用した場合、チップ搭載ウエハに対して、良好な低反り性、難剥離性を示すことが可能である。
【0121】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。