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特許7450749自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-07
(45)【発行日】2024-03-15
(54)【発明の名称】自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20240308BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 83/10 20060101ALI20240308BHJP
   C08G 64/18 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20240308BHJP
   C08K 5/12 20060101ALI20240308BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20240308BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/02
C08L83/10
C08G64/18
C08L33/06
C08K5/12
C08L33/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022557872
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 KR2022002754
(87)【国際公開番号】W WO2022225164
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0052721
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0024263
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】コ、コン
(72)【発明者】
【氏名】イ、チェ-ホン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ソン-モ
(72)【発明者】
【氏名】コン、ソンホ
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-195923(JP,A)
【文献】特開平08-176427(JP,A)
【文献】特開平11-152398(JP,A)
【文献】国際公開第2020/203436(WO,A1)
【文献】特開2014-001374(JP,A)
【文献】特開2002-105300(JP,A)
【文献】特開2000-103953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 63/00-64/42
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂20~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と、
ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部とを含み、
前記ポリカーボネート樹脂は、流動指数(300℃、1.2kgの荷重)が5~12g/10minであり、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きく、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリエチレンテレフタレートコポリマーである
複合樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶化速度低減剤を、結晶化速度低減剤を含むポリエチレンテレフタレート樹脂の総重量に対して1~5重量%含む、請求項1に記載の複合樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶化速度低減剤は、イソフタル酸、シクロヘキシレンジメタノール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールからなる群から1種以上選択される、請求項2に記載の複合樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.9dl/g以上であり、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.6~0.9dl/gである、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂は、ジオルガノシロキサン由来のブロックを前記ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂の5~30重量%(但し、ジオルガノシロキサン化合物の重量で計算)含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、共役ジエン化合物40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及び(メタ)アクリレート化合物1~20重量%を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項7】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の粒子サイズは0.2~0.4μmの範囲内である、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項8】
前記ジアルキルフタレート化合物は、炭素数5~8のアルキル基を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項9】
前記カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、エチレン-n-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-ジメタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー及びエチレン-ビニルアセテート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された1種以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項10】
前記カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、グリシジルメタクリレート由来の単位体を1~15重量%含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点(Melting point)は252℃以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項12】
前記複合樹脂組成物は、ISO 75に準拠して1.82MPa下で測定した高荷重耐熱特性が92℃以上である、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【請求項13】
前記複合樹脂組成物は、下記数式1で示した耐加水分解維持率が79%以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物。
【数4】
(前記式において、熟成は、85℃及び85%の条件のチャンバで168時間行うものであり、アイゾット衝撃強度は、ISO 180/1Aに準拠して23℃で測定したノッチ衝撃強度である。)
【請求項14】
ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂20~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を押出機に投入して、溶融混練及び押出するステップを含む、複合樹脂組成物の製造方法であって
前記ポリカーボネート樹脂は、流動指数(300℃、1.2kgの荷重)が5~12g/10minであり、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きく、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、ポリエチレンテレフタレートコポリマーである製造方法
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の複合樹脂組成物を含んで製造される、自動車内装材。
【請求項16】
前記自動車内装材は、フロアコンソールフロントトレイ、カップホルダー、インナーガーニッシュ、スイッチベゼル、カップホルダーハウジングまたはインジケータパネルである、請求項15に記載の自動車内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年04月23日付の韓国特許出願第10-2021-0052721号及びこれに基づいて2022年02月24日付で再出願された韓国特許出願第10-2022-0024263号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材に関し、より詳細には、使用する原料の変化により、耐熱特性及び耐加水分解安定特性を改善して、機械的物性、流動性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することができる自動車内装材用複合樹脂組成物及びそれを用いた自動車内装材に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、自動車内装材に使用される素材としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)を混合した複合樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)とアクリレート-スチレン-アクリロニトリル樹脂(ASA)を混合した複合樹脂、またはポリカーボネート樹脂(PC)とポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を混合した複合樹脂などがあり、これらは、優れた物性を有し、自動車内装材の様々な部品に活用されている。
【0004】
しかし、前記使用される素材は、高温多湿な環境で加水分解を起こして物性を低下させることがあり、特に、ポリカーボネート樹脂(PC)とポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を混合する場合には、エステル交換反応によって物性が低下するため、適切な反応の調節を必要とする。
【0005】
そのため、乾燥した環境だけでなく、特に高温多湿な環境下で加水分解を起こさないと共に、機械的物性、耐熱特性などの物性を満たすことができる自動車用内装材の素材に対する開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0078908号(公開日:2018.07.10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、使用する素材を変えることで、原価が節減されるだけでなく、無塗装品として使用され得るので経済性に優れながらも、耐熱特性及び耐加水分解安定特性を改善して、機械的物性、流動性などを含めて物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することができる自動車内装材用複合樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の目的は、前記の自動車内装材用複合樹脂組成物を用いた自動車内装材を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、
ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂20~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;
ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を含む自動車内装材用複合樹脂組成物を提供する。
【0011】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶化速度低減剤を、結晶化速度低減剤を含むポリエチレンテレフタレート樹脂の総重量に対して1~5重量%含むことができる。
【0012】
前記結晶化速度低減剤は、イソフタル酸、シクロヘキシレンジメタノール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールからなる群から選択されてもよい。
【0013】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.9dl/g以上であってもよく、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.6~0.9dl/gであってもよい。
【0014】
前記ポリカーボネート樹脂は、流動指数(300℃、1.2kgの荷重)が5~12g/10minであってもよい。
【0015】
前記ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂は、ジオルガノシロキサン由来のブロックをポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂の5~30重量%(但し、ジオルガノシロキサン化合物の重量で計算)含むことができる。
【0016】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、共役ジエン化合物40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及び(メタ)アクリレート化合物1~20重量%を含んでなるグラフト共重合体を含むことができる。
【0017】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の粒子サイズは0.2~0.4μmであってもよい。
【0018】
前記ジアルキルフタレート化合物のアルキルは、独立して、炭素数5~8のアルキル基であってもよい。
【0019】
前記カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、エチレン-n-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-ジメタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー及びエチレン-ビニルアセテート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された1種以上であってもよい。
【0020】
前記カルボキシ反応性エポキシ樹脂は、グリシジルメタクリレート由来の単位体を1~15重量%含んでなってもよい。
【0021】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きくてもよい。
【0022】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点(Melting point)は252℃以下であってもよい。
【0023】
前記複合樹脂組成物は、ISO 75に準拠して1.82MPa下で測定した高荷重耐熱特性が92℃以上であってもよい。
【0024】
前記複合樹脂組成物は、下記数式1で示した耐加水分解維持率が79%以上であってもよい。
【0025】
【数1】
【0026】
また、本発明は、
ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂20~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;
ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きく、
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点(Melting point)は252℃以下であることを特徴とする自動車内装材用複合樹脂組成物を提供する。
【0027】
また、本発明は、
ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂10~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を含んで押出機に投入して溶融混練及び押出するステップを含む複合樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0028】
前記複合樹脂組成物を溶融混練及び押出するステップは、温度250~300℃、F/R(Flow ratio)55~95kg/hr、スクリュー回転数150~600rpm下で行うことができる。
【0029】
前記複合樹脂組成物を押出した後、射出温度260~280℃及び金型温度40~80℃下で射出するステップを含むことができる。
【0030】
また、本発明は、
ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂10~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を含んで押出機に投入して溶融混練及び押出するステップを含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)が前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きく、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の融点(Melting point)が252℃以下であることを特徴とする複合樹脂組成物の製造方法を提供する。
【0031】
また、本発明は、
前述した複合樹脂組成物を含んで製造される自動車内装材を提供する。
【0032】
前記自動車内装材は、フロアコンソールフロントトレイ、カップホルダー、インナーガーニッシュ、スイッチベゼル、カップホルダーハウジングまたはインジケータパネルであってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る自動車内装材用複合樹脂組成物は、特定の重量%のポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む複合樹脂と、特定の重量%のポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、ジアルキルフタレート化合物及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された加水分解安定化剤とを含み、自動車内装材として成形され得る。
【0034】
また、前記組成物から製造された自動車内装材は、耐熱特性及び耐加水分解安定特性を改善して、機械的物性、流動性などとの物性バランスを満たすと同時に、成形性に優れるので、外観品質が向上する効果がある。
【0035】
したがって、本発明に係る前記自動車内装材用複合樹脂組成物及び成形品は、これを必要とするフロアコンソールフロントトレイ、カップホルダー、インナーガーニッシュ、スイッチベゼル、カップホルダーハウジング、インジケータパネルをはじめとする自動車内装材分野に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明をより詳細に説明する。
【0037】
本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義できるという点を勘案して、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。
【0038】
本記載において、「含んでなる」の意味は、別途の定義がない限り、「含んで重合製造された」、「含んで重合された」、または「由来の単位として含む」として定義され得る。
【0039】
他に特定されない限り、本記載で使用された成分、反応条件、ポリマー組成物及び配合物の量を表現する全ての数字、値及び/又は表現は、このような数字が本質的に他のものの中でこのような値を得るのに発生する測定の様々な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合に“約”という用語により修飾されるものと理解されなければならない。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、他に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指す場合、他に特定されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0040】
本記載において、範囲が変数に対して記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む、記載された範囲内の全ての値を含むものと理解される。例えば、“5~10”の範囲は、5、6、7、8、9及び10の値だけでなく、6~10、7~10、6~9、7~9などの任意の下位範囲を含み、5.5~8.5、及び6.5~9などのような記載された範囲の範疇に妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。また、10~30%の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と30%までを含む全ての整数だけでなく、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解される。
【0041】
本記載で使用する用語「加水分解安定化剤」は、他に特定しない限り、耐加水分解安定特性を改善させるように投入される物質を指す。
【0042】
本発明者らは、特定の重量%のポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む複合樹脂と、特定の重量%のポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、ジアルキルフタレート化合物及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された加水分解安定化剤とを含む複合樹脂組成物を使用して製造した自動車用内装材において、耐熱特性及び耐加水分解安定特性が改善されて、機械的物性、流動性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供することを確認し、本発明のような機械的物性、流動性などの物性バランスを満たしながらも、成形性及び外観品質に優れた無塗装品として自動車用内装材の素材を完成した。
【0043】
複合樹脂組成物
本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂20~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を含む。
【0044】
本発明の一具現例に係るポリカーボネート樹脂は、これを含む複合樹脂組成物に耐加水分解安定特性及び耐熱特性を付与し、これを使用して製造した自動車内装材に機械的物性、流動性、射出外観の改善を提供する。
【0045】
前記ポリカーボネート樹脂は、流動指数(300℃、1.2kgの荷重)が5~12g/10min以上、8~12g/10min、または9~11g/10minであってもよい。前記範囲を外れて流動指数が過度に低いと、射出成形が難しいという欠点があり、流動指数が過度に高いと、成形性、機械的物性及び耐化学性が低下し、部品の外観に問題が発生し得るという欠点がある。
【0046】
本記載において、流動指数は、他に特定しない限り、ISO 1133に準拠して250℃下で5kgの荷重で測定した溶融流れ指数(Melt Flow Index)であり得る。
【0047】
前記ポリカーボネート樹脂は、特に限定されず、当業界で公知となっている方法を通じて製造して使用するか、または市販の物質を使用してもよい。
【0048】
例えば、前記ポリカーボネート樹脂を製造して使用する場合には、分子量調節剤及び触媒の存在下で、ジフェノール類化合物と、ホスゲン化合物、ハロゲン酸エステル化合物、炭酸エステル化合物またはこれらの組み合わせとを反応させて製造することができる。
【0049】
前記ジフェノール類化合物は、特に限定されるものではないが、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,4-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルブタン、1,1-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、2,2-ビス-(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパン、2,2-ビス-(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-プロパンなどであってもよく、好ましくは、ビスフェノールAである2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)-プロパンであってもよい。
【0050】
前記ポリカーボネート樹脂は、単一重合体、2種類以上のジフェノール類化合物を使用した共重合体、またはこれらの混合物であってもよく、線状ポリカーボネート樹脂、分岐状ポリカーボネート樹脂、またはポリエステルカーボネート共重合体の形態であってもよいが、好ましくは線状ポリカーボネート樹脂であってもよい。前記線状ポリカーボネート樹脂は、他に特定しない限り、架橋剤を含まない樹脂を指し、具体例として、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0051】
前記ポリカーボネート樹脂の含量は、複合樹脂全体(ポリカーボネート樹脂+ポリブチレンテレフタレート樹脂+ポリエチレンテレフタレート樹脂)100重量%を基準として60~79重量%、具体例として70~80重量%、好ましくは70~75重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材にクラックが発生するという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性及び耐熱特性が低下するという欠点がある。
【0052】
すなわち、本発明の一実施例に係るポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネート樹脂を含め、複合樹脂全体100重量%を基準として、60~79重量%などの含量を満たすことによって、複合樹脂組成物に成形性を付与し、これを使用して製造した自動車内装材に流動性、機械的強度、耐熱特性、及び外観品質を実現することができる。
【0053】
本発明の一具現例に係るポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂は結晶性素材であって、これを含む複合樹脂組成物に成形性を付与し、これを使用して製造した自動車内装材に耐化学性を付与する。
【0054】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂は結晶性樹脂であって、外部から流入する化学薬品の浸透を防止しながらも、結晶化された構造として射出成形時に、これを含む複合樹脂組成物の流れ性を向上させ、外観品質を優れたものとする。
【0055】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、0.9dl/g以上、または1.0~1.3dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が過度に低いと、物性補強効果が低下するため、耐化学性の改善効果が僅かであるという欠点があり、固有粘度が過度に高いと、成形性が低下して部品の外観に問題が発生し得るという欠点がある。
【0056】
本記載において、前記固有粘度は、特に断りがない限り、測定しようとする試料を0.05g/mlの濃度でメチレンクロライド溶媒に完全に溶解させた後、フィルターを使用して濾過させた濾液を、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて20℃で測定した値である。
【0057】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の含量は、複合樹脂全体(ポリカーボネート樹脂+ポリブチレンテレフタレート樹脂+ポリエチレンテレフタレート樹脂)100重量%を基準として、20~30重量%、具体例として21~29重量%、好ましくは21~28重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材にクラックが発生するという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性及び耐熱特性が低下するという欠点がある。
【0058】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度(Intrinsic viscosity)は、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度よりも大きくてもよい。
【0059】
本記載において、ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.6~0.9dl/g、または0.7~0.9dl/gであってもよい。前記範囲を外れて固有粘度が過度に低いと、物性補強効果が低下するため、耐化学性の改善効果が僅かであるという欠点があり、固有粘度が過度に高いと、成形性が低下して部品の外観に問題が発生し得るという欠点がある。
【0060】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は結晶化速度低減剤を含むことができる。
【0061】
前記結晶化速度低減剤は、イソフタル酸、シクロヘキシレンジメタノール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールからなる群から1種以上選択されてもよく、反応効率を考慮して、好ましくは、イソフタル酸またはシクロヘキシレンジメタノールを使用することができる。
【0062】
前記結晶化速度低減剤は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の製造ステップにおいてテレフタル酸とエチレングリコールをはじめとする原料と共に投入されるか、あるいはテレフタル酸とエチレングリコールを一次反応させた後に投入されてもよい。
【0063】
このとき、前記結晶化速度低減剤の使用量は、結晶化速度低減剤を含むポリエチレンテレフタレート樹脂の総重量に対して20重量%未満、具体例として1~5重量%含むことができる。
【0064】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、特に限定されず、当業界で公知となっている方法を通じて製造して使用するか、または市販の物質を使用してもよい。
【0065】
例えば、前記ポリエチレンテレフタレート樹脂を製造して使用する場合には、テレフタル酸化合物とエチレングリコールをはじめとするグリコール系化合物(ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールは除く)を、イソフタル酸、シクロヘキシレンジメタノール、ジエチレングリコール及びネオペンチルグリコールからなる群から選択された1種以上の結晶化速度低減剤下で反応させて製造することができる。
【0066】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂は、融点(Melting point)が252℃以下、具体例として244~248℃であってもよく、この場合、複合樹脂組成物の溶融流れ指数を改善させることができるので、成形性を向上させるのに好ましい。
【0067】
本記載において、融点は、当該分野で公知された方法を用いて測定することができ、一例として、熱示差走査熱量計(DSC)を用いて熱吸収ピークを測定することができる。
【0068】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂の含量は、複合樹脂全体(ポリカーボネート樹脂+ポリブチレンテレフタレート樹脂+ポリエチレンテレフタレート樹脂)100重量%を基準として、1~10重量%、具体例として3~8重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材にクラックが発生するという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性及び耐熱特性が低下するという欠点がある。
【0069】
本記載において、加水分解安定剤は、他に特定しない限り、ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、ジアルキルフタレート化合物及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された4元系で構成されてもよい。
【0070】
本発明の一具現例に係るポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂は、ブロック共重合体であって、後述する(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体と共に、これを含む複合樹脂組成物の耐加水分解安定特性を大きく左右し、これを使用して製造した自動車内装材に耐加水分解安定化効果を提供する。
【0071】
前記ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂は、前記特性を確保できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは、ポリシロキサン-ポリカーボネートコポリマー、ポリカーボネート-ポリシロキサンポリマー、またはポリシロキサン-ポリカーボネートポリマーとも称され、好ましくは、下記化学式1の構造単位を含むジオルガノシロキサンブロックを含む。
【0072】
【化1】
【0073】
前記化学式1において、ポリジオルガノシロキサンブロックの長さ(E)は20~60であり、各R基は、同一でも異なっていてもよく、C1-C13アルキル、C1-C13アルコキシ、C2-C13アルケニル、C2-C13アルケニルオキシ、C3-C13シクロアルキル、C3-C13シクロアルコキシ、C6-C13アリール、C6-C13アリールオキシ、C7-C13アラルキル、C7-C13アラルキルオキシ、C7-C13アルキルアリールまたはC7-C13アルキルアリールオキシから独立して選択され、各Mは、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1-C8アルキルチオ、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ、C2-C8アルケニル、C2-C8アルケニルオキシ、C3-C8シクロアルキル、C1-C8シクロアルコキシ、C6-C10アリール、C6-C10アリールオキシ、C7-C12アラルキル、C7-C12アラルキルオキシ、C7-C12アルキルアリールまたはC7-C12アルキルアリールオキシから選択され;各nは、独立して、0~4の整数である。
【0074】
本記載において、ポリカーボネート-ジオルガノシロキサンブロックコポリマーは、下記化学式2のジオルガノジオルガノシロキサンブロックを含むことができる。
【0075】
【化2】
【0076】
前記化学式2において、xは、20~60の整数を示し、Siに直接連結された短鎖は、末端基がCH3を示す。
【0077】
本記載において、ポリカーボネートブロックは、ビスフェノールAモノマーに由来することができ、前記化学式2のジオルガノジオルガノシロキサンブロックは、ジヒドロキシアリーレンと、一例としてα,ω-ビスアセトキシポリジオルガノシロキサンとを相転移条件で反応させて収得したジヒドロキシポリシロキサン化合物に由来することができる。
【0078】
このようなジヒドロキシポリシロキサン化合物は、シロキサンヒドリド間に白金触媒化された添加反応で製造されてもよい。
【0079】
前記ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂は、ジオルガノシロキサン由来のブロックを5~30重量%、具体例として10~25重量%(但し、ジオルガノシロキサン化合物の重量で計算)含むことができる。前記範囲を外れて少量存在すると、物性補強効果が低下するため、耐加水分解安定特性の提供効果が僅かであるという欠点があり、過量存在すると、成形性が低下して、部品の外観に問題を起こすことがある。
【0080】
本記載において、重合体中の単位、単位体、ブロックなどの重量%は、由来する単量体の重量%を意味することができる。
【0081】
また、本記載において、重合体中の単位、単位体、ブロックなどの重量%は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、他の方法としては、全ての単量体が重合されることを前提として投入された単量体の含量を、製造された重合体中の単位などの含量として定義することができる。
【0082】
このようなポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂は、流動指数(Melt Flow Index)が1~5g/10min、1~4g/10min、または1~3g/10minであってもよい。前記範囲を外れて流動指数が過度に低いと、射出成形が難しいという欠点があり、流動指数が過度に高いと、成形性、機械的物性及び耐化学性が低下し、部品の外観に問題が発生することがある。
【0083】
前記ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂の含量は、加水分解安定化剤全体(ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂+(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+ジアルキルフタレート化合物+カルボキシ反応性エポキシ樹脂)100重量%を基準として、20~50重量%、具体例として30~50重量%、好ましくは35~45重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材にクラックが発生するという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性及び耐熱特性が低下するという欠点がある。
【0084】
本発明の一具現例に係る(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ポリカーボネート樹脂及びポリエステル樹脂により減少する物理的な特性を補完し、これを含む複合樹脂組成物で製造される自動車内装材の衝撃性をはじめとする機械的物性を向上させ、耐加水分解安定特性を提供することができる。
【0085】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、共役ジエン化合物40~80重量%、芳香族ビニル化合物10~40重量%及びビニルシアン化合物1~20重量%を含んでなるグラフト共重合体であってもよい。好ましくは、共役ジエン化合物50~70重量%、芳香族ビニル化合物20~35重量%及びビニルシアン化合物1~15重量%を含んでなるグラフト共重合体であってもよく、より好ましくは、共役ジエン化合物55~65重量%、芳香族ビニル化合物25~35重量%及びビニルシアン化合物5~15重量%を含んでなるグラフト共重合体であってもよい。前記範囲を外れて共役ジエン化合物の含量が過度に少ないと、耐衝撃性が低下するという欠点があり、共役ジエン化合物の含量が過度に多いと、剛性(弾性率)が低下するという欠点がある。また、ビニルシアン化合物の含量が過度に少ないと、剛性補強の効果が僅かであるという欠点があり、ビニルシアン化合物の含量が過度に多いと、耐衝撃性が低下するという欠点がある。
【0086】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる(メタ)アクリレート化合物は、本発明で使用できる通常の(メタ)アクリレート化合物、例えば、メタクリレートまたはアクリレートを含むことができ、特定の(メタ)アクリレート化合物のみを含むものに制限されない。一例として、メタクリレート及びアクリレートから選択される1種以上であってもよく、メタクリレートが好ましい。また、前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる共役ジエン化合物は、例えば、ブタジエンを含むことができ、特定の共役ジエン化合物のみを含むものに制限されない。また、前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる前記芳香族ビニル化合物は、一例として、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン及びp-メチルスチレンから選択される1種以上であってもよく、スチレンが好ましい。
【0087】
これによって、前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記特定の含量範囲の成分から重合されたことを特徴とする樹脂であって、好ましくは、(メタ)アクリレート成分が適切に含まれているので、耐熱特性を良好に向上させることができる樹脂を含むことができ、必要であれば、前記(メタ)アクリレート成分とは別途に、アルキルアクリレート成分をさらに含むことができる。
【0088】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、粒子サイズ0.2~0.4μm、具体例として0.25~0.35μm内である粉体を使用することができ、この場合に、衝撃強度の向上及び射出性の向上を提供するという効果がある。
【0089】
本記載において、粒子サイズは、粒子の大きさを測定する公知の方法によって測定することができ、詳細には、窒素ガス吸着法を用いて、BET分析装備(Micromeritics社のSurface Area and Porosity Analyzer ASAP 2020装備)を用いて測定することができる。より具体的には、チューブに0.3g~0.5gの試料を添加し、100℃で8時間前処理した後、常温でASAP 2020分析装備を用いて測定することができる。同じサンプルに対して3回測定して平均値を得ることができる。
【0090】
前記(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量は、加水分解安定化剤全体(ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂+(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+ジアルキルフタレート化合物+カルボキシ反応性エポキシ樹脂)100重量%を基準として、48.5~65重量%、具体例として50~65重量%であってもよい。上述した範囲未満であると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の衝撃性が弱くなるという欠点があり、上述した範囲を超えると、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の剛性が悪化するという欠点がある。
【0091】
本発明の一具現例に係るジアルキルフタレート化合物は、前述したポリカーボネート樹脂とポリブチレンテレフタレート樹脂との間の様々な経路のエステル交換反応を抑制する役割を果たす。
【0092】
参考に、ポリカーボネート樹脂(PC)とポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)を混合する場合には、以下に示したような3種のエステル交換反応によって物性が低下するため、適切な反応の抑制を必要とする。
【0093】
【化3】
【0094】
前記ジアルキルフタレート化合物は、エステル交換反応抑制特性を確保できる種類を使用することができ、好ましくは、炭素数5~8のアルキル基を有するフタレート化合物であってもよく、具体例として、ジ-n-ペンチルフタレート、ジ-n-オクチルフタレートまたはこれらの結合を使用することができる。
【0095】
前記ジアルキルフタレート化合物の含量は、加水分解安定化剤全体(ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂+(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+ジアルキルフタレート化合物+カルボキシ反応性エポキシ樹脂)100重量%を基準として、0.1~10重量%、具体例として1~10重量%、好ましくは3~10重量%であってもよい。前記範囲を外れてジアルキルフタレート化合物の含量が過渡に多いと、射出時に成形品にガスとして発生し、外観品質に影響を及ぼすことがある。
【0096】
本発明の一具現例に係るカルボキシ反応性エポキシ樹脂は、本記載の複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の耐加水分解安定特性を提供すると同時に、耐化学性も改善する種類を使用することができる。
【0097】
本記載で使用する用語「カルボキシ反応性エポキシ樹脂」は、他に特定しない限り、エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーとアルキレンから生成されるエポキシ官能性アルキレン(メタ)アクリルコポリマーを指す。
【0098】
本記載で使用する用語「(メタ)アクリル」とは、他に特定しない限り、アクリル及びメタクリルモノマーの両方を含み、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートモノマーの両方を含む。
【0099】
前記エポキシ官能性(メタ)アクリルモノマーの具体的な例は、グリシジルアクリレートとグリシジルメタクリレートのような1,2-エポキシ基を含有する種類を含むことができる。
【0100】
本記載で使用するカルボキシ反応性エポキシ樹脂は、具体的な例として、エチレン-n-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-メチルアクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-ジメタクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、エチレン-アクリレート-グリシジルメタクリレートコポリマー、及びエチレン-ビニルアセテート-グリシジルメタクリレートコポリマーから選択された1種以上であってもよい。
【0101】
本記載のカルボキシ反応性エポキシ樹脂は、一例として、グリシジルメタクリレート単位体1~15重量%または3~10重量%、エチレン単位体60~74重量%または63~74重量%、及びn-ブチルアクリレート20~30重量%または25~30重量%を含んで重合された共重合体であってもよい。このとき、グリシジルメタクリレート単位体の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された射出品が、組成物の流動低下を起こして外観品質を阻害するという欠点がある。
【0102】
前記カルボキシ反応性エポキシ樹脂の含量は、加水分解安定化剤全体(ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂+(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+ジアルキルフタレート化合物+カルボキシ反応性エポキシ樹脂)100重量%を基準として、0.1~10重量%、具体例として0.1~5重量%、好ましくは1~3重量%であってもよい。前記範囲を外れてカルボキシ反応性エポキシ樹脂の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の表面に射出品のガス発生の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0103】
特に、前記加水分解安定化剤(ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂+(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体+ジアルキルフタレート化合物+カルボキシ反応性エポキシ樹脂)は、前述したポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む複合樹脂100重量部に対して、10~40重量部、具体例として10~30重量部、好ましい例として10~20重量部含まれてもよい。前記範囲を外れて前記加水分解安定化剤の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の表面に射出品の外観品質を阻害するという欠点があり、過度に少ないと、十分な耐加水分解安定特性、さらに、エステル交換反応抑制効果を提供することができず、前述した範囲内で、衝撃強度、特に低温衝撃強度、耐熱特性及び加工性もまた改善することができる。
【0104】
本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、その流れ性の向上などのために、適切な添加剤をさらに含むことができる。
【0105】
具体的には、滑剤、熱安定剤及び紫外線吸収剤から選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0106】
前記滑剤は、これを含む複合樹脂組成物から自動車内装材を製造するために使用される射出スクリューの取り出しの容易性及び流れ性を確保できるものであれば、特に制限されない。
【0107】
前記滑剤は、本発明で使用可能であり、前記特性を確保できるものであれば、特に制限されないが、好ましくは、エチレンビスステアロアミド、ポリエチレンワックス(polyethylene wax)またはこれらの結合を含むことができる。
【0108】
前記滑剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~5重量部、具体例として0.1~3重量部含まれてもよい。前記範囲を外れて前記滑剤の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0109】
前記熱安定剤は、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の高温による変性を防止できるものであれば、特に制限されない。
【0110】
前記熱安定剤は、前記特性を確保できる限り、特に制限されないが、好ましくは、フェノール系酸化防止剤(High phenolic antioxidant)を使用することができる。
【0111】
前記フェノール系酸化防止剤は、結晶化温度(Tm)が110~130℃であるヒンダードフェノール系安定剤を含むことができ、具体例として、テトラキス[エチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、またはこれらの結合を含むことができる。
【0112】
前記熱安定剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~5重量部、具体例として0.1~3重量部含まれてもよい。前記熱安定剤の含量が過度に多いと、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の表面にムラなどの外観の問題が発生し、外観品質を阻害するという欠点がある。
【0113】
前記紫外線吸収剤は、これを含む複合樹脂組成物を使用して製造された自動車内装材の光による変性を防止できるものであれば、特に制限されない。
【0114】
前記紫外線吸収剤は、前記特性を確保できる限り、特に制限されず、好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などを使用することができる。
【0115】
前記トリアジン系化合物は、一例として、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,6-ジフェニル-4-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ブトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-メトキシカルボニルプロピルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシエトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-3-メチル-4-エトキシカルボニルエチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-N-オクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-(2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ)フェノールからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0116】
前記ベンゾトリアゾール系化合物は、一例として、2,4-ジ-t-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-オキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシメチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2-N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシル-フェノール、及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノールから選択された1種以上であってもよい。
【0117】
前記紫外線吸収剤の含量は、前述した複合樹脂100重量部に対して0.01~5重量部、具体例として0.1~3重量部含まれてもよく、この範囲内で、物性バランスに優れると共に、耐光特性がさらに改善されるという効果がある。
【0118】
前記複合樹脂組成物は、後述する試験片を作製し、ISO 75に準拠して1.82MPa下で測定した高荷重の熱変形温度が92℃以上、具体例として92~95℃であってもよい。
【0119】
本記載において、高荷重の熱変形温度は、ISO 75に準拠して1.82MPaの高荷重下で測定することができる。
【0120】
前記複合樹脂組成物は、一例として、下記数式1で示した耐加水分解維持率が79%以上、具体例として80~92%であってもよく、この場合に、耐熱特性と耐加水分解維持性に最適のバランスを維持することができる。
【0121】
【数2】
(前記式において、熟成は、85℃及び85%の条件のチャンバで168時間行うものであり、アイゾット衝撃強度は、ISO 180/1Aに準拠して23℃で測定したノッチ衝撃強度である。)
【0122】
複合樹脂組成物の製造方法
以下では、本発明の複合樹脂組成物の製造方法に関して説明する。本発明の複合樹脂組成物の製造方法を説明するにおいて、上述した複合樹脂組成物の内容を全て含む。
【0123】
本記載の複合樹脂組成物の製造方法は、一例として、ポリカーボネート樹脂60~79重量%、ポリブチレンテレフタレート樹脂10~30重量%及びポリエチレンテレフタレート樹脂1~10重量%を含む複合樹脂100重量部と;ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂20~50重量%、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体48.5~65重量%、ジアルキルフタレート化合物0.1~10重量%及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂0.1~10重量%が混合された加水分解安定化剤10~40重量部と;を含んで押出機に投入して溶融混練及び押出するステップを含む。
【0124】
前記溶融混練ステップは、一例として、上述したその他の添加剤を含むことができる。
【0125】
前記溶融混練及び押出するステップは、一例として、一軸押出機、二軸押出機及びバンバリーミキサからなる群から選択された1種以上を用いて行われてもよく、好ましくは二軸押出機であり、これを用いて組成物を均一に混合した後、押出して、一例としてペレット状の複合樹脂組成物を収得することができ、この場合に、機械的物性の低下及び熱的特性の低下が防止され、めっき密着力及び外観品質に優れるという効果がある。
【0126】
前記押出混練機を用いてペレットを製造するステップは、一例として、押出温度250~300℃、供給速度(Flow ratio、F/R)50~90kg/hr、スクリュー回転数280~490rpm下で行うことができ、好ましくは、押出温度260~300℃、F/R60~90kg/hr、スクリュー回転数300~390rpm下で行うことができる。
【0127】
前記複合樹脂組成物を押出した後、射出温度240~280℃、具体例として250~270℃、金型温度40~80℃、具体例として50~70℃下で、射出速度10~50mm/sec、具体例として20~40mm/sec下で射出するステップを含むことができる。
【0128】
さらに、本発明の複合樹脂組成物を含む自動車内装材に関して説明する。本発明の複合樹脂組成物を含む自動車内装材を説明するにおいて、上述した複合樹脂組成物の内容を全て含む。
【0129】
自動車内装材
本発明の複合樹脂組成物は、成分間の十分な補完を通じて、成形性、機械的物性、高荷重耐熱特性及び耐化学性を必要とする自動車内装材に有用に使用することができる。
【0130】
前記自動車内装材の製造方法は、当業界で通常用いる方法により製造することができる。一例として、本発明に係る複合樹脂組成物の溶融混練物、ペレットまたはこれから成形されたシート(板材)を原料として、射出成形法(インジェクションモールディング)、射出圧縮成形法、押出成形法(シートキャスティング)、プレス成形法、圧空成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法、または回転成形法などの成形法を適用することができる。
【0131】
本記載の複合樹脂組成物は、一例として、280℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、SM Platek装備)を使用して、375rpm下で、主投入口にポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、ジアルキルフタレート化合物、カルボキシ反応性エポキシ樹脂及び添加剤を供給速度75kg/hで投入し、溶融混練及び押出してペレットを製造することができる。
【0132】
前記ペレットを射出成形機に投入して自動車内装材を製造することができる。
【0133】
製造された自動車内装材の物性を間接的に確認するために、前記ペレットを射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて、射出温度260℃、金型温度60℃、射出速度30mm/secで射出し、ISO規格の試験片を製造することができる。
【0134】
製造された試験片は、一例として、ISO 1133に準拠して250℃下で5kgの荷重で測定した流動指数(Melt Flow Rate)が12g/10min以上、具体例として12~13g/10minであってもよい。
【0135】
また、前記試験片は、一例として、ISO 1133に準拠して23℃下で測定したアイゾットノッチ衝撃強度が55.7kJ/m2以上、具体例として61~64kJ/m2であってもよい。
【0136】
また、前記試験片は、一例として、ISO 527に準拠して5mm/minの速度で測定した引張強度が49MPa以上、具体例として53~66MPaであってもよい。
【0137】
また、1/8inchの試験片を、一例として、ISO 178に準拠してSPAN64を使用して2mm/minの速度で測定した曲げ強度が77MPa以上、具体例として81~85MPaであってもよく、曲げ弾性率が1950MPa以上、具体例として1963~2123MPaであってもよい。
【0138】
また、前記試験片は、ISO 1183に準拠して測定した密度が1.19~1.22g/cm3、具体例として1.19~1.20g/cm3であってもよい。
【0139】
前記自動車内装材は、具体的に、フロアコンソールフロントトレイ、カップホルダー、インナーガーニッシュ、スイッチベゼル、カップホルダーハウジングまたはインジケータパネルであってもよいが、特定の種類に限定されない。
【0140】
すなわち、本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、特定の重量%のポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む複合樹脂と、特定の重量%のポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、ジアルキルフタレート化合物及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された加水分解安定化剤とを含むことを特徴とし、前記組成物から製造された自動車内装材は、使用される素材が従来の素材から変更されることで、耐熱特性及び耐加水分解安定特性を改善して、機械的物性、流動性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供するという利点がある。
【0141】
本発明の複合樹脂組成物、その製造方法及び自動車内装材を説明するにおいて、明示的に記載していない他の条件や装備などは、当業界において通常行われる範囲内で適宜選択することができ、特に制限されないことを明示する。
【0142】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施例に限定するものではない。
【0143】
[実施例]
実施例1~3、比較例1~10、参考例1~2:複合樹脂組成物の製造
実施例で用いた原料は、次の通りである。
A-1)ポリカーボネート樹脂:流動指数3(MI、300℃、1.2kg)
A-2)ポリカーボネート樹脂:流動指数10(MI、300℃、1.2kg)
A-3)ポリカーボネート樹脂:流動指数15(MI、300℃、1.2kg)
B)ポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート(オルガノシロキサンブロック5~15wt%):流動指数2(MI、300℃、1.2kg)
C-1)ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度(IV)0.8
C-2)ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度(IV)1.0
C-3)ポリブチレンテレフタレート樹脂:固有粘度(IV)1.2
D-1)ポリエチレンテレフタレートHOMO樹脂:固有粘度(IV)0.8、融点(melting point)253~255℃
D-2)ポリエチレンテレフタレートCO樹脂:固有粘度(IV)0.8、融点(melting point)246℃、結晶化速度低減剤(イソフタル酸)5wt%
E)メタクリレート-ブタジエン-スチレン(粒子サイズ0.3μm、メチルメタクリレート15wt%、ブタジエン80wt%、スチレン5wt%、重量平均分子量103,000g/mol)
F)エチレン/n-ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(エチレン67wt%,n-ブチルアクリレート28wt%、グリシジルメタクリレート5wt%)
G)ジ-n-ペンチルフタレート
H)ポリエチレンワックス系滑剤
I)熱安定剤(High Phenolic Antioxidant)
【0144】
下記表1に記載された複合樹脂組成物の原材料を混合した後、押出を通じて、均一な分散度の複合樹脂組成物をペレット状に製造した後、前記ペレットに熱を加えて金型枠に注入した後、冷却させて部品を生産する射出工程を通じて、自動車内装材として利用可能な試験片を作製した。
【0145】
具体的には、下記表1に示した各成分を含めてミキサーで混合した後、280℃に設定された二軸押出機(φ40、L/D:42、SM Platek装備)を用いて375rpm下で、主投入口に供給速度75kg/hで投入し、1~3分間押出加工して複合樹脂組成物ペレットを製造することができる。
【0146】
製造されたペレットを対流オーブンで80℃で4時間以上乾燥させた後、射出成形機(ENGEL社、80トン)を用いて射出温度260℃、金型温度60℃、射出速度30mm/secで射出して、ISO試験片を作製した。
【0147】
【表1】
【0148】
参考に、前記表1で用いた原料は、A-1~Iまで全て合わせた重量%が総100重量%となる。
【0149】
実験例1:自動車内装材試験片の物性の評価
前記実施例1~3、比較例1~10、参考例1~2で製造された自動車内装材試験片の物性を評価した。評価の基準は、次の通りである。
【0150】
-流動性(Melt Flow Rate):ISO 1133に準拠して行う(250℃、5kg)
【0151】
-衝撃強度(IZOD):ISO 180/1Aに準拠して行う(Notched、23℃)
【0152】
-引張強度:ISO 527に準拠して行う(50mm/min)
【0153】
-曲げ強度、曲げ弾性率:ISO 178に準拠して行う(1/8inch、SPAN64、速度2mm/min)
【0154】
-熱変形温度:ISO 75に準拠して行う(高荷重1.82MPa)
【0155】
-密度:ISO 1183に準拠して測定
【0156】
-耐加水分解維持率:ISO 180/1Aに準拠したアイゾット衝撃強度の測定試験によって23℃で測定したノッチ衝撃強度(熟成前のアイゾット衝撃強度に該当)、及び85℃/85%のチャンバで168時間熟成させた後、23℃で測定したノッチ衝撃強度(熟成後のアイゾット衝撃強度に該当)から、下記数式1によって耐加水分解維持率を計算した。計算値が75%未満であると、耐加水分解維持率が不良であると判断する。
【0157】
【数3】
【0158】
前記評価基準で測定した結果は、下記表2の通りである。
【0159】
【表2】
【0160】
前記表2を参照すると、本発明に係る実施例1~3の複合樹脂組成物は、適切な範囲内の密度を実現すると共に、衝撃強度及び曲げ弾性率、高荷重の熱変形温度、耐加水分解維持率がいずれも高いので、これを用いて製造された自動車内装材が、衝撃強度及び引張強度、曲げ強度などの物理的物性を基本的に満たしながらも、耐化学性及び高荷重耐熱特性に優れ、射出時にガス発生の程度が低減されて、製品の信頼性及び外観品質を共に提供することを確認できる。
【0161】
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂を、融点が適正な範囲内であるものを使用しても、過量使用した比較例1は、実施例1~3と比較したとき、曲げ弾性率及び耐加水分解維持率が悪化したことが分かる。
【0162】
また、加水分解安定化剤として、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の含量が適正範囲を超える比較例2は、実施例1~3と比較したとき、耐加水分解維持率はほぼ同一であったが、曲げ弾性率及び高荷重の熱変形温度が不良であることが分かる。
【0163】
また、加水分解安定化剤中のポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂を使用しなかった比較例3は、実施例1~3と比較したとき、機械的物性及び耐熱特性はほぼ同一であったが、耐加水分解維持率が著しく不良であることが確認できた。
【0164】
また、加水分解安定化剤を適切な配合を外れて使用する比較例4~10は、実施例1~3と比較したとき、耐加水分解維持率が著しく悪化すると同時に、射出品の外観品質も悪化したことを確認した。
【0165】
さらに、ポリエチレンテレフタレート樹脂を融点が適切でない種類を使用した参考例1は、実施例1~3と比較したとき、流動指数が著しく不良であることが分かる。
【0166】
また、ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度が適切でない参考例2は、実施例1~3と比較したとき、流動指数及び高荷重の熱変形温度がそれぞれ不良であることが分かる。
【0167】
比較例11~15:複合樹脂組成物の製造
下記表3に記載された複合樹脂組成物の原材料を混合して使用した以外は、前述した実施例1と同一の工程を繰り返してISO試験片を作製した。
【0168】
【表3】
【0169】
実験例2:自動車内装材試験片の物性の評価
前記比較例11~15で製造された自動車内装材試験片の物性を先に提示したものと同一に評価し、評価基準で測定した結果は、下記表4の通りである。
【0170】
【表4】
【0171】
前記表2及び表4を共に参照すると、低流動ポリカーボネート樹脂を使用した比較例11及び比較例12は、実施例1~3と比較したとき、流動性、高荷重の熱変形温度がそれぞれ著しく不良であることが分かる。
【0172】
また、流動指数が適正範囲から外れたポリカーボネート樹脂を使用した比較例13は、実施例1~3と比較したとき、曲げ弾性率などの機械的物性が悪化することが分かる。
【0173】
また、加水分解安定化剤の含量が適正範囲に満たない比較例14は、実施例1~3と比較したとき、衝撃強度が非常に悪化したことを確認した。
【0174】
また、加水分解安定化剤の含量が適正範囲を超えた比較例15は、実施例1~3と比較したとき、流動性が著しく悪化し、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、熱変形温度及び密度などが全般的に不良であることを確認した。
【0175】
すなわち、本発明の一具現例に係る複合樹脂組成物は、特定の重量%のポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂及びポリエチレンテレフタレート樹脂を含む複合樹脂と、特定の重量%のポリオルガノシロキサン-ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート化合物-共役ジエン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体、ジアルキルフタレート化合物及びカルボキシ反応性エポキシ樹脂が混合された加水分解安定化剤とを含むことによって、前記組成物から製造された自動車内装材が、耐熱特性及び耐加水分解安定特性を改善して、機械的物性、流動性などの物性バランスを満たし、優れた製品信頼性及び外観品質を提供するという利点がある。