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特許7450849ウルトラファインバブル含有溶液を含む殺菌剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル含有溶液を含む殺菌剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 59/00 20060101AFI20240311BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A01N59/00 Z
A01P3/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021552395
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038631
(87)【国際公開番号】W WO2021075425
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-14
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/041060
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598105123
【氏名又は名称】錦町農産加工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521089409
【氏名又は名称】ベルテクノサービス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100120145
【弁理士】
【氏名又は名称】田坂 一朗
(72)【発明者】
【氏名】藤田 豊久
(72)【発明者】
【氏名】張 蘭因
(72)【発明者】
【氏名】ドドビバ ジョルジ
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕史
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宏美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 税
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-090547(JP,A)
【文献】特開2018-090514(JP,A)
【文献】特開2019-048793(JP,A)
【文献】特開2019-042732(JP,A)
【文献】特開2012-096216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N,A01P
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する、有機溶媒と水との混合溶液の殺菌剤であって、
前記水素ウルトラファインバブルの50%平均粒径が10nm~500nmの範囲であり、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの50%平均粒径が50nm~300nmの範囲である、殺菌剤。
【請求項2】
前記有機溶媒がアルコール系有機溶媒である、請求項に記載の殺菌剤。
【請求項3】
前記アルコール系有機溶媒が、エタノール、エチレングリコール、及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくともいずれか1つである、請求項に記載の殺菌剤。
【請求項4】
前記アルコール系有機溶媒がエチレングリコールである、請求項3に記載の殺菌剤。
【請求項5】
前記エチレングリコールの含量が25%~55%である、請求項に記載の殺菌剤。
【請求項6】
前記有機溶媒が複数の有機溶媒からなる、請求項1に記載の殺菌剤。
【請求項7】
前記複数の有機溶媒がイソプロパノールとケロセンである、請求項に記載の殺菌剤。
【請求項8】
前記イソプロパノールの含量が25%~35%である、請求項に記載の殺菌剤。
【請求項9】
水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する、有機溶媒と水との混合溶液の殺菌剤の製造方法であって、
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有溶液に、さらに水素を吹き込んで、水素ウルトラファインバブルを生成して前記殺菌剤を製造し、
前記水素ウルトラファインバブルの50%平均粒径が10nm~500nmの範囲であり、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの50%平均粒径が50nm~300nmの範囲である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウルトラファインバブル含有溶液を含む殺菌剤に関し、特に、二酸化炭素および水素を含むウルトラファインバブル含有溶液を含む殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
活性酸素(以下、「ROS」ともいう。)は、多くの疾患の原因物質であるが、一方活性酸素は高い反応活性を持つため、外部から入り込んできた異物(微生物)を排除する防衛機能をもつこともわかってきた。
【0003】
白血球などの好中球やマクロファージが体内の異物や毒物を認識し取り込み分解する時に細菌などを分解するのに活性酸素が働いている。白血球(好中球)は、体内に細菌が侵入してくるとこれを貪食し、白血球はNAD(P)Hオキシダーゼを使ってNADH(NADPH)とH+と酸素を反応させて、過酸化水素を生成し、貪食されてもまだ増殖しようとする細菌を殺菌し感染から守る生体防御メカニズムを有するといわれる。
【0004】
ただ、ヒドロキシラジカル(OH・)及びスーパーオキシドアニオンラジカル(・O )などの活性酸素は、反応性が高く安定性が低いため、上記殺菌作用などについて持続的な作用を期待することは困難である。
【0005】
一方、ウルトラファインバブル(以下、「UFB(Ultrafine Bubble)」ともいう。)は、中性溶液中で高い負のゼータ電位を有し、抗酸化能を有する。UFBは、時間経過とともにサイズが減少し、1か月経過後も存在可能とされる。
【0006】
ウルトラファインバブルの持続的な抗酸化作用や殺菌作用について十分な検討は未だ行われていない。例えば、水素は高い還元力を有するが、ナノファインバブ水素水(水素を含むウルトラファインバブル水溶液)について、その抗酸化能は未だ十分に検討されていない。
【0007】
従来、ウルトラファインバブルと殺菌作用との関連性のある報告は極めて少ない。弱アルカリ性の安定型次亜塩素酸ナトリウム溶液からなり、かつ、ウルトラファインバブルを含有する除菌剤が開示されている(下記特許文献1)。しかし、これは次亜塩素酸ナトリウムの殺菌作用に基づくものであり、ウルトラファインバブル自体の殺菌作用に関するものではない。
【0008】
ウルトラファインバブルの作成に関し、Ahmedらは、流体力学、音響、粒子、光キャビテーションによる従来の生成方法ではなく、円筒状セラミックナノ濾過膜を用いる空気、窒素、及び酸素のウルトラファインバブル含有水溶液を検討し、空気バブルのサイズをナノレベルにできることを報告している(下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2018-090547号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Ahmed A.K.B., Shi X., Likun Hua L., Leidy Manzueta L., Weihua Qing W., Marhaba T., Wen Zhang, W., J. of Agricultural and Food Chemistry(ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー), 2018, 66(20), 5117-5124.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のとおり、ウルトラファインバブルは長期間の存在が可能なため、抗酸化作用などのウルトラファインバブルの特有な作用も長期に持続する可能性がある。しかしながら、各種気体のウルトラファインバブルが活性酸素に及ぼす影響は未知であり、その検討が課題とされていた。
【0012】
本発明者らは、種々の気体のナノファインバブルについて、その抗酸化能、各種疾患への効果を検討する中で、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体を含むウルトラファインバブルの含有溶液が持続的なROS消去能、癌細胞への細胞障害効果、担癌マウスへの抗腫瘍効果を有することを見出し、活性酸素消去能を有し、癌細胞への細胞障害効果、担癌マウスへの抗腫瘍効果を有する、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体を含むウルトラファインバブルの含有溶液、およびこれを含む飲料、及び医薬を提供することができることを、PCT/JP2019/041060において開示した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、種々の気体のナノファインバブルについて、その抗酸化能、各種用途への適用を検討する中で、驚くべきことに、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブル含有溶液、特に、当該ウルトラファインバブルを含む有機溶媒/水の混合溶液がROS増強作用、これに基づく殺菌作用を有することを見出した。
【0014】
したがって、本発明の目的は、活性酸素増強作用、殺菌作用を有する、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有殺菌剤を提供することにある。
【0015】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒系溶液の殺菌剤。
[2]
前記有機溶媒系溶液が有機溶媒と水との混合溶液である、[1]に記載の殺菌剤。
[3]
前記有機溶媒がアルコール系有機溶媒である、[2]に記載の殺菌剤。
[4]
前記アルコール系有機溶媒が、エタノール、エチレングリコール、及びイソプロパノールからなる群から選択される少なくともいずれか1つである、[3]に記載の殺菌剤。
[5]
前記アルコール系有機溶媒がエチレングリコールである、[3]又は[4]に記載の殺菌剤。
[6]
前記エチレングリコールの含量が25%~55%である、[5]に記載の殺菌剤。
[7]
前記有機溶媒系溶液が1又は複数の有機溶媒からなる、[1]に記載の殺菌剤。
[8]
前記複数の有機溶媒がイソプロパノールとケロセンである、[7]に記載の殺菌剤。
[9]
前記イソプロパノールの含量が25%~35%である、[8]に記載の殺菌剤。
[10]
二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有水溶液に、さらに水素を吹き込んで水素ウルトラファインバブルを生成して調製される、[1]~[9]のいずれかに1つに記載の殺菌剤。
[11]
水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒系溶液の殺菌剤の製造方法であって、二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有溶液に、さらに水素を吹き込んで、水素ウルトラファインバブルを生成して前記殺菌剤を製造する、方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、活性酸素増強作用、殺菌作用を有する、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有殺菌剤を提供することすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】二酸化炭素ウルトラファインバブルの作成装置を示す図である。
図2】水素ウルトラファインバブルの作成装置を示す図である。
図3】本発明にかかるウルトラファインバブルのIFA測定装置の主要部を示す図である。
図4】水素ウルトラファインバブルの安定性を示す図である。
図5】本発明における活性酸素の検出方法(スピントラップ法/ESR法)において、G-CYPMPOと活性酸素の付加物を示す図である。
図6】エタノール(EtOH)水溶液中の水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図7】エタノール(EtOH)水溶液中の水素及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図8】エタノール(EtOH)水溶液中の水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図9】エタノール(EtOH)水溶液中の水素及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図10】エチレングリコール(EG)水溶液中の水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図11】エチレングリコール(EG)水溶液中の水素及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのヒドロキシラジカル消去作用を示す図である。
図12】エチレングリコール(EG)水溶液中の水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図13】エチレングリコール(EG)水溶液中の水素及び二酸化炭素ウルトラファインバブルのスーパーオキシドアニオン消去作用を示す図である。
図14】本発明にかかるウルトラファインバブル含有殺菌剤の殺菌作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
(ウルトラファインバブル含有する有機溶媒系溶液)
本発明にかかるウルトラファインバブル含有殺菌剤は、ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒溶液である。当該ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒溶液は、ウルトラファインバブルの内部に二酸化炭素及び水素の両方の気体を含むウルトラファインバブルを含有する有機溶媒溶液であることを特徴とする。
【0020】
前記ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒溶液においては、当該溶液に含まれる個々のウルトラファインバブルの内部に、二酸化炭素及び水素の少なくともいずれか一方の気体が含まれ得る。
【0021】
前記有機溶媒溶液とは、有機溶媒を含む溶液であり、有機溶媒と水との混合溶液でも、1又は複数の有機溶媒からなる溶液でもよい。
【0022】
気泡は、気体以外により囲まれた気体からなる閉じた空間であり、液体に完全に囲まれている気泡は浮遊性気体である。この浮遊性気体のうち、直径が1マイクロメーター以下の気泡は、ウルトラファインバブルと呼ばれる(ファインバブル学会連合)。
【0023】
ウルトラファインバブルは極めて小さな気泡であるため、気泡がゼータ電位という負の電位を帯び、気泡が極めて長時間液中に存在できる等の特徴が知られている。
【0024】
以下、ウルトラファインバブルの内部に、二酸化炭素、水素、及び二酸化炭素と水素の両方を含有するウルトラファインバブル含有溶液を、それぞれ、二酸化炭素ウルトラファインバブル、水素ウルトラファインバブル、及び二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルという。
【0025】
前記ウルトラファインバブルは、特定の50%平均粒径をも有することが好ましい。ウルトラファインバブルの内部に含まれる気体が特定の50%平均粒径よりも小さな粒径を有することにより、ウルトラファインバブルの安定性が向上し、長時間ウルトラファインバブルとして存在することができる。本発明における50%平均粒径は、通常、ウルトラファインバブルの個数についての50%平均粒径をいう。
【0026】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの50%平均粒径は、水中において50nm~300nmの範囲である。この範囲の50%平均粒径により、数日間ウルトラファインバブルとして存在することが可能になる。50nm未満の50%平均粒径のウルトラファインバブル二酸化炭素を調製することは困難である。
【0027】
前記水素ウルトラファインバブルの50%平均粒径は、水中において10nm~500nmの範囲である。この範囲の50%平均粒径により、数日間ウルトラファインバブルとして存在することが可能になる。10nm未満の50%平均粒径のウルトラファインバブルを調製することは困難である。
【0028】
水、エタノール(EtOH)水溶液、エチレングリコール(EG)水溶液中の二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルの粒径の一例を表1に示した。水中に比較して、有機溶媒と水との混合溶液(以下、「有機溶媒水溶液」ともいう。)においては、いずれのウルトラファインバブルも粒径が大きくなる傾向がある。
【0029】
【表1】
【0030】
前記ウルトラファインバブルは、特定のウルトラファインバブルの含有量を有する。前記ウルトラファインバブル含有溶液の抗酸化能が発揮されるためには、一定量の気体がウルトラファインバブルに含有されることが必要である。
【0031】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有量は、1億個/mL~100億個/mLの範囲であることが好ましく、10億個/mL~100億個/mLの範囲であることが更に好ましい。
【0032】
前記水素ウルトラファインバブルの含有量は、0.1億個/mL~1000億個/mLの範囲であるあることが好ましく、1億個/mL~500億個/mLの範囲であることが更に好ましい。
【0033】
(ウルトラファインバブル含有溶液の調製)
前記ウルトラファインバブル含有溶液の調製法としては、スパイラル流システム法(Spiral Flow System Method)、加圧溶解システム法(Pressurized Dissolution System)、超音波法(Ultrasonic Wave Method)、多孔質セラミクス通過、多孔質プラスチック膜通過、ダブルボトル水素発生装置など様々な方法が知られている。
【0034】
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルは、様々な方法により調製することができる。なかでも、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルは、加圧タンクからの二酸化炭素を多孔質セラミクス通過(前記多孔質セラミクス通過法)させ、または多孔質プラスチック膜を通過させ、次に液体に吹き込むことにより調製することが好ましい(図1参照)。前記多孔質プラスチック膜としては、通常の微粒子を除去する膜もナノバブル調製に用いることができる。
【0035】
前記水素ウルトラファインバブルは、様々な方法により調製することができる。なかでも、前記水素ウルトラファインバブルは、ダブルボトル水素発生装置(Woo社製、Gas & Water Double Hydrogen Bottle(登録商標))を使用して電解(前記ファインバブル製造用電解法)により調製した水素ウルトラファインバブルが好ましい。前記ダブルボトル水素発生装置により、水素ウルトラファインバブルの含有溶液を調製することができる(図2参照)。
【0036】
前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル溶液は、二酸化炭素を多孔質セラミクス通過(前記多孔質セラミクス通過法)させ、または多孔質プラスチック膜を通過させ、次に前記水素ウルトラファインバブルの含有溶液に吹き込むことにより、又は前記二酸化炭素ウルトラファインバブルにダブルボトル水素発生装置により水素ウルトラファインバブルを生成させることにより、調製することができる。
【0037】
また、前記二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有溶液は、前記加圧溶解システム及びスパイラル流システムからなる群から選択される少なくともいずれかの1つの方法により調製することができる。これらの方法によれば、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有溶液を多量に調製することができる。
【0038】
(ウルトラファインバブル含有溶液の特性測定法)
ウルトラファインバブルの特性測定法としては、共振質量法(Resonant Mass Method)、粒子軌道法(Particle Trajectory Method)、レーザー回折法(Laser Diffraction Method)、動的光散乱法(Dynamic Light Scattering Method: DLS Method)、相互作用力装置法(Interactive Force Apparatus Method: IFA Method)などが知られている。
【0039】
本発明におけるウルトラファインバブルは、その特性を様々な方法で測定することができる。なかでも、本発明のウルトラファインバブルの測定には、動的光散乱法(DLS)法と同等の粒径の小さなウルトラファインバブルの測定が可能であり、高い精度を有するため、以下の相互作用力装置(IFA)測定法を用いることが好ましい。
【0040】
本発明におけるウルトラファインバブルは、溶液中で、図3のIFA測定装置を用いて、その粒径サイズ分布を測定した(図4参照)。本測定装置によれば、「数nm~数100μmまでのファインバブルの粒度分布を高精度に測定することができ、また、粒子濃度、液の光透過性、屈折率に影響されることなく、測定可能」(特許第6502657号公報、3頁段落[0009])である。本測定装置の1例を図3に示した。測定値は、動的光散乱(DLS)法による測定値とよく一致した。
【0041】
前記相互作用力装置測定法は、特開2016-109453(発明の名称「ファインバブルの粒度分布測定法及び測定装置」、特許第6502657号)に開示されている。
【0042】
(ウルトラファインバブル含有溶液の特性)
ウルトラファインバブルの粒径
前記ウルトラファインバブルの粒径を上記相互作用力装置法により測定した。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの粒径(バブルサイズの50%平均直径)は、水中において115nmと測定され、記水素ウルトラファインバブルの粒径(バブルサイズの50%平均直径)は、水中において130nmと測定された(表1参照)。
【0043】
ウルトラファインバブルの安定性
前記ウルトラファインバブルの経時的な粒径変化を上記相互作用力装置法により測定し、その安定性(持続性)を評価した。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルは、蒸留水中で数日存在し、4日後には消失した。前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの蒸留水中での安定性は、数日となりウルトラファインバブルによる安定性が認められた。前記水素ウルトラファインバブルは、40日の経過後における粒径は25nmであり、時間経過とともに粒径が小さくなることがわかった。前記水素ウルトラファインバブルは、40日後においても安定に存在することがわかった(図4参照)。
【0044】
前記ウルトラファインバブル含有溶液における二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルの水中における含有量は、粒子径と密度測定によれば、それぞれ、1億個/mL~100億個/mL及び0.1億個/mL~1000億個/mLの範囲であった。
【0045】
本発明にかかるウルトラファインバブルは、十分に小さなサイズの粒径及びその内部の含有量を有し、長時間安定に存在し得る。
【0046】
ヒドロキシラジカル(OH・)及びスーパーオキシドアニオンラジカル(・O2 )の測定は、スピントラップ剤としてG-CYPMPO(登録商標):2-(5,5-dimethyl-2-oxo-2-l5- [1,3,2]dioxaphosphinan-2-yl)-2-methyl-3,4-dihydro-2H-pyrro- line N-oxide {2-(5,5-dimethyl-2-oxo-1,3,2-dioxaphosphinan-2-yl)-3,4-dihydro-2-methyl-2H-pyrrole N-oxide(下記化学式1)を用いて、ESR分光器(JEOL製JES-TE25X)を用いて、スピン・トラッピング付加物のESRスペクトルを記録にすることにより行った。
【0047】
【化1】
【0048】
UV照射下における過酸化水素溶液(0.1w/v%)における、すなわちヒドロキシラジカル(OH・)とG-CYPMPO(登録商標)との付加物、及びヒポキサンチン/キサンチンオキシダーゼ系における、すなわちスーパーオキシドアニオンラジカル(・O2 )とG-CYPMPO(登録商標)との付加物のESRスペクトルを図5に示した。図中、ダイヤモンド印(◆)はスーパーオキシドアニオンラジカル(・O2 )付加物のピークを、逆三角印(▼)はヒドロキシラジカル(OH・)付加物のピークを示している。この両ピークのピークtoピーク強度を活性酸素量の測定に用いる。
【0049】
データ分析には代表的方法であるKohri‘s ESRスピントラップ法を用いた。前記フリーラジカル付加物の選択されたESRラインのピークtoピーク強度を抗酸化剤の存在下及び非存在下で追跡した。
【0050】
スピントラップ剤(SP)及び抗酸化剤(AO)の存在下、以下のフリーラジカル(R)とラッピング反応が起こることが考えられる。
R+SP→R付加物の速度定数:tksp(1)
R+AO→生成物の速度定数:kAO(2)
及びIが、それぞれSTのみ及びST+AOの存在下のESRピーク高である場合、式(2)における生成物の量はI-Iである。したがって、I/I-1がフリーラジカル補足能力を定量するために算出される。
【0051】
フリーラジカル補足能力を定量するために、ESR測定の数時間前に酸化剤種をフリーラジカル生成系と混合する。I及びIが、それぞれSTのみ及びST+酸化剤の存在下のESRピーク高である場合、酸化剤種に酸化されるフリーラジカル生成系の量はI-Iである。したがって、I/I-1がフリーラジカル補足能力を定量するために算出される。
【0052】
(エタノール水溶液中におけるウルトラファインバブルの特性)
前記有機溶媒と水との混合溶媒の一形態であるエタノール水溶液(50%、20%、10%)における水素ウルトラファインバブル、二酸化炭素ウルトラファインバブル、水素及び二酸化炭素ウルトラファインバブル(水素吹込みの次に二酸化炭素吹込み:H2 ⇒ CO2、及び二酸化炭素吹込みの次に水素吹込み:CO2 ⇒ H2)の活性酸素(ROS)消去作用を検討し、結果を表2に示した。
【0053】
水中と同様に、エタノール水溶液においても、二酸化炭素ウルトラファインバブルは強いヒドロキシラジカル消去作用を示し(表2の3、8、13)、水素ウルトラファインバブルのヒドロキシラジカル(HO・)消去作用は二酸化炭素ウルトラファインバブルよりも弱いものであった(表2の2、7、12)。一方、スーパーオキシドアニオン消去作用については、いずれのウルトラファインバブルもエタノール低濃度(20%、10%)において弱い消去作用を示した(表2の22、23、27、28)。
【0054】
エタノール水溶液において、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルのヒドロキシラジカル消去作用は、水中とは異なり、水素吹込みの次に二酸化炭素吹込み(H2 ⇒ CO2)の方が二酸化炭素吹込みの次に水素吹込み(CO2 ⇒ H2)より強かった(表2の4、9、14)。
【0055】
二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの水素吹込みの次に二酸化炭素吹込み(H2 ⇒ CO2)においては、水素吹込み後の二酸化炭素吹込みでヒドロキシラジカル消去作用が増強される(表2の4、9、14)。一方、二酸化炭素吹込み後の水素吹込み(CO2 ⇒ H2)においは二酸化炭素吹込みでヒドロキシラジカルが消去されるが、水素吹込みでヒドロキシラジカルが再生成し、ヒドロキシラジカル消去作用が低減した(表2の5、10、15)。
【0056】
すなわち、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル(CO2 ⇒ H2)では、ヒドロキシラジカルの再上昇によりヒドロキシラジカル活性の増強及び持続が認められた。
【0057】
二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルのスーパーオキシドアニオン再上昇も同様に認められたが、その作用は低濃度エタノール水溶液(10%、20%)においてのみ、弱く認められた(表2の25、30)。
【0058】
以上より、エタノール水溶液において、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル(CO2 ⇒ H2)は、ヒドロキシラジカルの増強作用を示し(表2の実験5、10、15)、弱いながらスーパーオキシドアニオンの増強作用も認められた(表2の25、30)。この点から、ウルトラファインバブルを含有するエタノール水溶液は、本発明にかかる殺菌剤の1つとして挙げることができる。
【0059】
【表2】
【0060】
(他の有機溶媒系におけるウルトラファインバブルの特性)
本発明にかかる有機溶媒系の殺菌剤は、当該殺菌剤が有機溶媒と水との混合溶媒であることが好ましい。さらに、当該有機溶媒はアルコール系有機溶媒であることが好ましい。エタノール水溶液は前記アルコール系有機溶媒と水との混合溶液の一形態である。前記アルコール系有機溶媒としては、溶液中のROSが増強される点から、エタノールの他に、エチレングリコール、イソプロパノールなどを挙げることができる。
【0061】
本発明における有機溶媒系は、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルが存在可能であり、溶液中のROSが増強されるものであれば、特に限定されない。
【0062】
前記アルコール系有機溶媒と水との混合溶液としても、同様に、当該溶液において、二酸化炭素ウルトラファインバブル及び水素ウルトラファインバブルが存在可能であり、溶液中のROSが増強されるものであれば、特に限定されない。前記アルコール系有機溶媒においては、ROSにより更にヒドロキシラジカル(HO・)が生成されることが考えられる。
【0063】
前記アルコール系有機溶媒としては、エチレングリコールが好ましい。この場合、活性酸素、特にヒドロキシラジカルの再生成の点から、エチレングリコールと水との混合溶媒におけるエチレングリコール含量は25%~55%であることが好ましい。
【0064】
本発明における前記有機溶媒系溶液としては、イソプロパノールとケロセンとの混合溶媒を挙げることができる。本溶液は水を含有しないが、ウルトラファインバブルが存在可能である。当該混合溶媒においては、活性酸素、特にヒドロキシラジカルの再生成の点から、イソプロパノール含量は25%~55%であることが好ましい。
【0065】
前記有機溶媒系における活性酸素、特にヒドロキシラジカルの再生成は、下記の化2のメカニズムを想定することができる。
【0066】
エタノール、エチレングリコールのようなアルコール系有機溶媒において、過酸化水素H2O2が存在すると光によりヒドロキシラジカルが生成する。二酸化炭素の溶液への吹込みにより、化2の(2)、(3)、(4)の反応により過酸化水素H2O2を減少させる。更に、水素を溶液に吹き込むことにより、(1)の反応により光で生成したヒドロキシラジカルと残存する過酸化水素H2O2とが、(7)、(8)の反応によりスーパーオキシドアニオンを生成させる。ここで、エタノール、エチレングリコールのようなアルコール系有機溶媒とスーパーオキシドアニオンが共存すると、水素の吹込みにより(12)、(13)の反応により、更に多くの過酸化水素が生成する、とのメカニズムが考えられる。
【0067】
【化2】
【0068】
(ウルトラファインバブル含有殺菌剤)
本発明にかかる殺菌剤は、水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する、上述の有機溶媒系溶液としての殺菌剤であることを特徴とする。前記水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒系で再生成される活性酸素、特にヒドロキシラジカルの細菌、微生物などに対する抗菌作用、除菌作用、殺菌作用などが期待される。
【0069】
さらに、次亜塩素酸のような殺菌性化学物質などの含有が必要ではないため、本発明にかかる殺菌剤は、高い安全性、少ない環境への負荷の点から好ましい。
【0070】
本発明にかかる殺菌剤は、水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒系の殺菌剤であり、さらに、二酸化炭素吹込みの次に水素吹込み(CO2 ⇒ H2)で調製することに特徴がある。
【0071】
(本発明にかかる殺菌剤の製造方法)
本発明にかかる殺菌剤の製造方法は、水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含む、ウルトラファインバブル含有殺菌剤の製造方法であって、二酸化炭素ウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル含有有機溶媒に、さらに水素を吹き込んで、水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブル含有有機溶媒を製造する、方法である。
【0072】
本発明にかかる殺菌剤においては、前記水素ウルトラファインバブル及び二酸化炭素ウルトラファインバブルを含有する有機溶媒系で再生成される活性酸素、特にヒドロキシラジカルの細菌、微生物などに対する抗菌作用、除菌作用、殺菌作用などが期待される。この殺菌作用は、以下の実施例において大腸菌に対する殺菌作用で確認された(図14)。
【実施例
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0074】
(1)ウルトラファインバブル含有水溶液の調製
実験例1:ウルトラファインバブル二酸化炭素の含有溶液の調製
前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有溶液(水溶液)を、図1のように、磁性撹拌機を用いて撹拌しながら、0.4L/分の速度で30分間、加圧タンクからのアルゴンガス中の二酸化炭素(CO,99.5%)を200mLの水を入れたビーカー中の多孔質セラミクスを通過(前記多孔質セラミクス通過法)させて調製した(以下、「含有溶液CO」ともいう)。含有溶液中のウルトラファインバブル二酸化炭素は、以下、「UFB/CO」ともいう
【0075】
実験例2:水素ウルトラファインバブルの含有溶液の調製
前記水素ウルトラファインバブルの含有溶液(水溶液)を、図2のように、ダブルボトル水素発生装置(Woo社製、Gas & Water Double Hydrogen Bottle(登録商標))を使用した電解(前記ファインバブル製造用電解法)により生成した(以下、「UFB/EH」ともいう)。水素ウルトラファインバブルの含有溶液(水溶液)は、200mLの水に30分間で調製した(以下、「含有溶液EH」ともいう)。電解によるウルトラファインバブル水素の濃度は0.15容量%で、比重瓶を用いて定量した。
【0076】
実験例3:本発明にかかる二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブルの調製
前記ウルトラファインバブル二酸化炭素及び水素混合溶液は、前記ウルトラファインバブル水素の含有溶液(前項(2)で作成)に、前項(1)の方法のとおり、磁性撹拌機を用いて撹拌しながら、0.4L/分の速度で30分間、加圧タンクからのアルゴンガス中の二酸化炭素(CO,99.5%)を吹き込むことにより作成した(以下、「混合溶液CO/EH」ともいう)。又は、前記ウルトラファインバブル二酸化炭素及び水素混合溶液は、前記二酸化炭素ウルトラファインバブルの含有溶液(前項(1)で作成)に、前項(2)の方法のとおり、30分間の電気分解を行うことにより調製した(以下、「混合溶液EH/CO」ともいう)。
【0077】
(2)ウルトラファインバブルのIFA測定装置による測定
前記ウルトラファインバブルは、水中で、図3のIFA測定装置を用いて、特開2016-109453公報「ファインバブルの粒度分布測定方法及び測定装置」に示されるIFA法により、その粒径サイズ分布を測定した(図4参照)。
【0078】
(2)ウルトラファインバブル含有水溶液のROS消去作用
実験例4:活性酸素(ROS)の生成
ヒドロキシラジカル(OH・)は、UV放射器(UV LIGHTSOURCE製、SUPERCURE-203S)の5s紫外放射下、0.1w/t%過酸化水素(H)の分解により生成させた。0.2w/t%の過酸化水素90μL及び100mMのG-CYPMPO20μLの混合液をディスポーザブル硼珪酸ESRセルに移し、ヒドロキシラジカルとG-CYPMPOとの付加物のESRスペクトルを分析した。
【0079】
スーパーオキシドアニオンラジカル(・O )は、ヒポキサンチン/キサンチン(HX/XO)系において生成させた。10.970単位/mLのXO、20mMのHX20μL、及び100mMのG-CYPMPO20μLの混合液をディスポーザブル硼珪酸ESRセルに移し、ヒドロキシラジカルとG-CYPMPOとの付加物のESRスペクトルを分析した。
【0080】
実験例5:活性酸素のESRによる測定
新規のラジカル・トラッパーである2-(5,5-dimethyl-2-oxo-2-l5-[1,3,2] dioxaphosphinan-2-yl)-2-methyl-3,4-dihydro-2H-pyrro-line N-oxide {2-(5,5-dimethyl-2-oxo-1,3,2-dioxaphosphinan-2-yl)-3,4-dihydro-2-methyl-2H-pyrrole N-oxide, G-CYPMPO(登録商標)を活性酸素のフリーラジカルを補足するために用いた。25mgのG-CYPMPO(登録商標)(100mL)を2mLの超純水に溶解した。
【0081】
ESR分光器(JEOL製JES-TE25X)を用いて、スピン・トラッピング付加物のESRスペクトルを記録した。代表的なESR測定条件は以下のとおりであった。
マイクロ波電力:4mW、マイクロ波周波数:9.2GHz、磁場:328.0mT、フィールド掃引(field sweep with):±7.5mT、フィールド変調:0.16mT、掃引時間:1分、0.003663mT/ポイント、全4096ポイント、ESR測定は室温で実施した。
【0082】
代表的方法であるKohri‘s ESRスピントラップ法をデータ分析に用いた。前記フリーラジカル付加物の選択されたESRラインのピークtoピーク強度を抗酸化剤の存在下及び非存在下で追跡した。
【0083】
スピントラップ剤(SP)及び抗酸化剤(AO)の存在下、以下のフリーラジカル(R)とラッピング反応が起こる。
R+SP→R付加物の速度定数:tksp(1)
R+AO→生成物の速度定数:kAO(2)
及びIが、それぞれSTのみ及びST+AOの存在下のESRピーク高である場合、式(2)における生成物の量はI-Iである。したがって、I/I-1をフリーラジカル補足能力を定量するために算出した。
【0084】
フリーラジカル捕捉能力を定量するために、ESR測定の数時間前に酸化剤種がフリーラジカル生成系と混合される。I及びIが、それぞれSTのみ及びST+酸化剤の存在下のESRピーク高である場合、酸化剤種に酸化されるフリーラジカル生成系の量はI-Iである。したがって、I/I-1をフリーラジカル補足能力を定量するために算出した。
【0085】
実施例等1~5:本発明にかかるウルトラファインバブル含有エチレングリコール(EG)溶液(50%)のヒドロキシラジカル(OH・)の強度
対照例1:ウルトラファインバブル非含有、参考例2:水素ウルトラファインバブル含有、参考例3:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例4:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例5:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの50%エチレングリコール溶液のヒドロキシラジカル(OH・)強度をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図10及び11に示した。
【0086】
図10及び11に基づき、表3にはヒドロキシラジカルの強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及びほとんどないか認められない×で示した。実施例5:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)では、参考例4:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)に比べて、より強度のヒドロキシラジカル(実施例5:○、参考例4:×)が認められた。
【0087】
実施例等6~10:本発明にかかるウルトラファインバブル含有エチレングリコール水溶液(30%)のヒドロキシラジカル(OH・)の強度
対照例6:ウルトラファインバブル非含有、参考例7:水素ウルトラファインバブル含有、参考例8:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例9:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例10:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの30%エチレングリコール水溶液のヒドロキシラジカル(OH・)強度をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図10及び11に示した。
【0088】
図10及び11に基づき、表3にはヒドロキシラジカルの強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及びほとんどないか認められない×で示した。実施例10:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)では、参考例9:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)に比べて、より強度のヒドロキシラジカル(実施例10:◎、参考例9:×)が認められた。
【0089】
実施例等11~15:本発明にかかるウルトラファインバブル含有エチレングリコール水溶液(50%)のスーパーオキシドアニオン(O2・-)の強度
対照例11:ウルトラファインバブル非含有、参考例12:水素ウルトラファインバブル含有、参考例13:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例14:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例15:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの50%エチレングリコール水溶液のスーパーオキシドアニオン(O2・-)消去作用をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図12及び13に示した。
【0090】
図12及び13に基づき、表3にはスーパーオキシドアニオンの強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及びほとんどないか認められない×で示した。実施例15:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)では、参考例14:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)と比べると、スーパーオキシドアニオン(実施例15:○、参考例14:◎)は若干後者が強かった。
【0091】
実施例等16~20:本発明にかかるウルトラファインバブル含有エチレングリコール水溶液(30%)のスーパーオキシドアニオン(O2・-)の強度
対照例16:ウルトラファインバブル非含有、参考例17:水素ウルトラファインバブル含有、参考例18:二酸化炭素ウルトラファインバブル含有、参考例19:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例20:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの30%エチレングリコール水溶液のスーパーオキシドアニオン(O2・-)の強度をESR測定により検討した。ウルトラファインバブル含有溶液のG-CYPMPO(登録商標)付加物のESRスペクトルより得られたI/I-1について図12及び13に示した。
【0092】
図12及び13に基づき、表3にはスーパーオキシドアニオンの強度を、強い◎、中程度○、弱い△、及び消去作用がほとんどないか認められない×で示した。参考例20:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)と、参考例19:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)と比べると、スーパーオキシドアニオン(実施例20:○、参考例19:◎)は若干後者が強かった。
【0093】
【表3】
【0094】
図10~13及び表3に示されるように、本発明にかかるウルトラファインバブル含有エチレングリコール水溶液のヒドロキシラジカル強度については、二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)を用いることが好ましいことがわかった。
【0095】
実施例等1~5:本発明にかかるウルトラファインバブル含有エチレングリコール(EG)溶液(50%)の殺菌効果
対照例1:添加物なし、対照例2:ウルトラファインバブル非含有、参考例4:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(水素から二酸化炭素の順に吹込み調製)、及び実施例5:二酸化炭素及び水素ウルトラファインバブル含有(二酸化炭素から水素の順に吹込み調製)のそれぞれの50%エチレングリコール溶液の殺菌効果を、大腸菌を用いて48時間インキュベーション後の生存を観察して評価した(図14)。
【0096】
実施例5(図14ウ)では、対照例2(図14ア)と同様に、対照例1(図14エ)と比較して大腸菌の生存が大きく抑制された。また、参考例4(図14イ)と比較しても大腸菌の生存がより抑制された(表3:実施例5)。以上より、本発明にかかるウルトラファインバブル含有殺菌剤の再生成されたヒドロキシラジカルによる殺菌効果が確認された。
【0097】
以上、実施形態及び実施例を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0098】
310 電気天秤
320 プラチナ
330 試料溶液
340 粒子挙動部
341 半球
342 平板
343 ピエゾステージ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14