(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】摘果作業支援プログラム及び摘果作業支援装置
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240311BHJP
G06Q 50/02 20240101ALI20240311BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2022036275
(22)【出願日】2022-03-09
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】西川 芙美恵
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-187259(JP,A)
【文献】特開2016-194564(JP,A)
【文献】特開2010-231733(JP,A)
【文献】特開2020-074141(JP,A)
【文献】特許第6994212(JP,B1)
【文献】Yijiu Yang et al.,Immature Yuzu Citrus Detection Based on DSSD Network with Image Tiling approach,SICE,2021年10月08日,p.1128-1133,インターネット<URL:https://ieeexplore.ieee.org/stamp/stamp.jsp?tp=&arnumber=9555273>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
G06Q 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
果樹類又は果菜類の摘果作業を支援する情報を提示する摘果作業支援プログラムであって、
対象の樹木又は株を撮影した画像を取得し、
前記画像から抽出した葉の領域と果実の領域とに基づいて、葉数と果実数を算出するとともに、前記葉数と前記果実数の比率を算出し、
前記比率を第1基準値以下とするために摘果する必要のある果実の割合を示す摘果率を算出し、
前記果実の領域それぞれの大きさと、前記摘果率と、に基づいて、摘果すべき果実の大きさの範囲を特定し、
特定した前記範囲及び/又は前記範囲に基づく情報を出力する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする摘果作業支援プログラム。
【請求項2】
前記特定する処理では、前記画像から抽出された所定数の前記果実の領域の中から、大きさが第2基準値から遠い順に前記摘果率に対応する数だけ、前記果実の領域を抽出し、抽出した前記果実の領域の大きさに基づいて、前記摘果すべき果実の大きさの範囲を特定する、ことを特徴とする請求項1に記載の摘果作業支援プログラム。
【請求項3】
前記葉数は、前記抽出する処理で抽出した前記葉の領域の面積を、予め定められている葉1枚の面積で割ることにより算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の摘果作業支援プログラム。
【請求項4】
前記出力する処理では、前記特定する処理で特定した範囲に対応する前記果実の領域を指し示す表示を前記画像に記載した表示用画像を出力することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の摘果作業支援プログラム。
【請求項5】
前記取得する処理では、前記対象の樹木又は株を異なる方向から撮影した複数の画像を取得することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の摘果作業支援プログラム。
【請求項6】
果樹類又は果菜類の摘果作業を支援する情報を提示する摘果作業支援装置であって、
対象の樹木又は株を撮影した画像を取得する取得部と、
前記画像から抽出した葉の領域と果実の領域とに基づいて、葉数と果実数を算出するとともに、前記葉数と前記果実数の比率を算出する第1算出部と、
前記比率を第1基準値以下とするために摘果する必要のある果実の割合を示す摘果率を算出する第2算出部と、
前記果実の領域それぞれの大きさと、前記摘果率と、に基づいて、摘果すべき果実の大きさの範囲を特定する特定部と、
特定した前記範囲及び/又は前記範囲に基づく情報を出力する出力部と、
を備える摘果作業支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摘果作業支援プログラム及び摘果作業支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミカンなどのカンキツ類を栽培する生産者は、様々な目的で、未成熟の果実を適宜摘果する。例えば、適切に摘果を行わなかった場合、1年おきにしか実がならない「隔年結果」が起こる可能性がある。
【0003】
生産者は、どの程度の大きさの果実をどの程度の数だけ摘果すればよいかを、勘や経験に基づいて判断している。このため、経験が浅く、知見の少ない生産者ほど、摘果すべき果実か否かの判断を誤りやすく、適切な摘果作業ができていない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-156431号公報
【文献】特開2019-187259号公報
【文献】特開2018-161058号公報
【文献】特開2019-033672号公報
【文献】特開2012-181633号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】源野広和,小林一樹,「大量高精細画像からの果実生育情報の抽出」,農業情報研究,Vol26,No.4
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近では、画像等を用いて果実の生育状態を把握する技術が知られている(例えば特許文献1~5、非特許文献1等参照)。しかしながら、摘果すべき果実の情報を生産者に提供するような技術はないため、依然として生産者の勘や経験に頼らざるを得ない状況にある。なお、カンキツ類に限らず、摘果が必要な果菜類や果樹類などにおいても、同様の課題がある。
【0007】
本発明は、摘果作業を支援する情報を提供することが可能な摘果作業支援プログラム及び摘果作業支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の摘果作業支援プログラムは、果樹類又は果菜類の摘果作業を支援する情報を提示する摘果作業支援プログラムであって、対象の樹木又は株を撮影した画像を取得し、前記画像から抽出した葉の領域と果実の領域とに基づいて、葉数と果実数を算出するとともに、前記葉数と前記果実数の比率を算出し、前記比率を第1基準値以下とするために摘果する必要のある果実の割合を示す摘果率を算出し、前記果実の領域それぞれの大きさと、前記摘果率と、に基づいて、摘果すべき果実の大きさの範囲を特定し、特定した前記範囲及び/又は前記範囲に基づく情報を出力する、処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
【0009】
本発明の摘果作業支援装置は、果樹類又は果菜類の摘果作業を支援する情報を提示する摘果作業支援装置であって、対象の樹木又は株を撮影した画像を取得する取得部と、前記画像から抽出した葉の領域と果実の領域とに基づいて、葉数と果実数を算出するとともに、前記葉数と前記果実数の比率を算出する第1算出部と、前記比率を第1基準値以下とするために摘果する必要のある果実の割合を示す摘果率を算出する第2算出部と、前記果実の領域それぞれの大きさと、前記摘果率と、に基づいて、摘果すべき果実の大きさの範囲を特定する特定部と、特定した前記範囲及び/又は前記範囲に基づく情報を出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の摘果作業支援プログラム及び摘果作業支援装置は、摘果作業を支援する情報を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る摘果作業支援システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2(a)は、利用者端末のハードウェア構成の一例を示す図であり、
図2(b)は、サーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】ミカンの木を撮影した画像の一例を示す図である。
【
図8】
図8(a)は画像から抽出された葉の領域を示す図であり、
図8(b)は画像から抽出された果実の領域を示す図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)は、摘果範囲特定部の処理を説明するための図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、摘果範囲特定部及び出力部の処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態について、
図1~
図10(c)に基づいて詳細に説明する。
図1には、一実施形態に係る摘果作業支援システム100の構成が概略的に示されている。本実施形態の摘果作業支援システム100は、カンキツ類のように摘果作業が必要な果樹類、トマトやパプリカなどのように摘果作業が必要な果菜類を栽培する生産者が利用可能なシステムである。なお、以下においては、摘果作業支援システム100が、ミカンの生産者に対し、摘果作業を支援する情報を提供する例について説明する。
【0013】
図1に示すように、摘果作業支援システム100は、生産者が利用可能な利用者端末70と、摘果作業支援装置としてのサーバ10と、を備える。利用者端末70とサーバ10は、インターネットなどのネットワーク80に接続されており、各装置間において情報のやり取りが可能となっている。
【0014】
利用者端末70は、生産者がミカンの木(樹木)を撮影するときに用いる端末である。利用者端末70は、スマートフォンや、ノートPCなどであるものとする。生産者は、摘果のタイミングが到来すると、ミカンの木全体が画角に入るようにして撮影を行う。利用者端末70は、撮影された画像をサーバ10に送信する。
【0015】
図2(a)には、利用者端末70のハードウェア構成の一例が示されている。
図2(a)に示すように、利用者端末70は、CPU(Central Processing Unit)190、ROM(Read Only Memory)192、RAM(Random Access Memory)194、ストレージ(HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive))196、ネットワークインタフェース197、表示部193、入力部195、カメラ189を備えている。また、利用者端末70は、可搬型記憶媒体191に記憶されたデータやプログラムを読み取り可能な可搬型記憶媒体用ドライブ199を備えている。これら利用者端末70の構成各部は、バス198に接続されている。表示部193は液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等であり、入力部195は、タッチパネル等である。
【0016】
図1に戻り、サーバ10は、利用者端末70からミカンの木を撮影した画像を取得し、取得した画像を解析することで、摘果すべきミカンの大きさの範囲を特定し、利用者端末70に対して出力する装置である。
図2(b)には、サーバ10のハードウェア構成の一例が示されている。
図2(b)に示すように、サーバ10は、CPU90、ROM92、RAM94、ストレージ96、ネットワークインタフェース97、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。これらサーバ10の構成各部は、バス98に接続されている。サーバ10では、ROM92あるいはストレージ96に格納されているプログラム(摘果作業支援を含む)、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラムをCPU90が実行することにより、
図3に示す各部の機能が実現される。なお、
図3の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0017】
図3には、サーバ10の機能ブロック図が示されている。サーバ10においては、CPU90がプログラムを実行することにより、
図3に示すように、取得部としての画像取得部20、画像解析部22、葉果比算出部24、第2算出部としての摘果率算出部26、特定部としての摘果範囲特定部28、出力部30としての機能が実現されている。なお、
図3には、ストレージ96等に格納されている果実大きさDB40とパラメータテーブル42についても図示されている。
【0018】
画像取得部20は、利用者端末70において撮影されたミカンの木の画像(
図4参照)が利用者端末70から送信されてきた場合に、当該画像を受信し、画像解析部22に受け渡す。なお、画像には、撮影時の焦点距離や、カメラ189の画像センサの大きさの情報を含むメタデータ(EXIF(Exchangeable Image File Format)情報)が付帯しているので、画像取得部20は、当該EXIF情報も画像解析部22に受け渡す。
【0019】
画像解析部22は、ミカンの木の画像を解析する。具体的には、画像解析部22は、例えばパターンマッチングや機械学習、あるいは色に基づく画像解析等の技術を用いることで、画像内の葉の領域と、果実の領域とを抽出する。また、画像解析部22は、葉の領域全体のピクセル数を特定し、特定したピクセル数、EXIF情報に含まれるカメラ189の画像センサの大きさ、焦点距離などから、所定の式に基づいて、葉の領域の実際の面積(おおよその実寸値)を算出する。
【0020】
ここで、パラメータテーブル42には、
図5に示すようなパラメータが格納されている。具体的には、
図5に示すように、パラメータテーブル42には、品種ごとに、「設定葉果比」、「果実大きさの基準値」、「葉の面積」の値が格納されている。これらのうち、「葉の面積」は、品種ごとに計測された葉1枚の面積(おおよその実寸値)であるものとする。
【0021】
画像解析部22は、算出した葉の領域の実際の面積を、パラメータテーブル42に格納されている「葉の面積」で割ることにより、画像内に写っている葉の枚数(葉数)Lを算出する。
【0022】
また、画像解析部22は、画像から抽出した果実の領域の数を果実数Mとする。更に、画像解析部22は、各果実の領域の寸法を示すピクセル数(ミカンの果実の横径に対応する寸法のピクセル数)を特定し、特定したピクセル数、EXIF情報に含まれるカメラ189の画像センサの大きさ、焦点距離などから、所定の式に基づいて、各果実の横径の実寸値(以下「果実の大きさ」と呼ぶ)を算出する。画像解析部22は、各果実の大きさの値を、
図6に示す果実大きさDB40に格納する。
【0023】
画像解析部22は、算出した葉数Lと、果実数Mと、を葉果比算出部24に受け渡す。なお、生産者は、ミカンの木の画像を撮影する際に、ミカンの木の近傍にスケールや寸法の基準となる物体(基準物)を置いて撮影することもできる。この場合、画像解析部22は、スケールや基準物の寸法に基づいて、葉の領域の面積の実寸値や各果実の大きさを算出することとしてもよい。
【0024】
葉果比算出部24は、画像解析部22から受け取った葉数と果実数を用いて、葉果比(=葉数/果実数)を算出する。葉果比算出部24は、算出した葉果比を摘果率算出部26に受け渡す。
【0025】
摘果率算出部26は、受け取った葉果比と、パラメータテーブル42に格納されている設定葉果比を比較する。ここで、「設定葉果比」は、生産者が摘果作業を行った後の葉果比の理想値(第1基準値)を意味する。設定葉果比は、品種ごとに予め定められている。摘果率算出部26は、比較した結果、葉果比算出部24から受け取った葉果比の方が設定葉果比よりも大きければ、摘果は不要と判断する。一方、摘果率算出部26は、葉果比算出部24から受け取った葉果比の方が設定葉果比よりも小さければ、果実数が多すぎるため、摘果が必要と判断する。そして、摘果率算出部26は、葉果比=設定葉果比となる摘果率K(%)を求める。摘果率Kは、ミカンの木に着果しているミカンのうち、どの程度の割合のミカンを摘果すればよいかを示す値である。摘果率算出部26は、求めた摘果率K(%)を摘果範囲特定部28に受け渡す。
【0026】
摘果範囲特定部28は、果実大きさDB40を参照して、摘果率K(%)に基づき、摘果すべき果実の大きさ範囲を特定する。なお、摘果範囲特定部28の詳細処理については、後述する。
【0027】
出力部30は、摘果範囲特定部28が特定した摘果すべき果実の大きさ範囲の情報を利用者端末70に送信する。利用者端末70では、表示部193上に、摘果すべき果実の大きさ範囲を表示する。これにより、生産者は、表示された大きさ範囲の果実のみを摘果することで、摘果作業を適切に行うことが可能となる。
【0028】
(サーバ10の処理について)
次に、サーバ10の処理について、
図7のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。
【0029】
図7の処理が開始されると、まず、ステップS10において、画像取得部20が、利用者端末70からミカンの木を撮影した画像が送信されてくるまで待機する。画像が送信されてくると、画像取得部20は、ステップS12に移行し、送信されてきた画像を取得する。
【0030】
次いで、ステップS14では、画像解析部22が、ミカンの木の画像を解析する。例えば、画像解析部22は、
図4の画像の解析の結果、葉の領域として、
図8(a)において黒塗りで示す領域を抽出でき、果実の領域として、
図8(b)において黒塗りで示す領域を抽出できる。また、画像解析部22は、前述したようにEXIF情報を用いることで、
図8(a)の領域の面積から、葉の面積の実寸値を算出し、パラメータテーブル42に格納されている「葉の面積」で割ることにより、画像内の葉の枚数(葉数)Lを算出する。
【0031】
また、画像解析部22は、
図8(b)の果実の領域(略楕円形の領域)の数を果実数Mとする。更に、画像解析部22は、前述したようにEXIF情報を用いることで、各果実の領域の寸法(楕円の長径をピクセル数で表した値)から、各果実の実際の横径(各果実の大きさ)を算出し、果実大きさDB40に格納する。
【0032】
図7に戻り、次のステップS16では、葉果比算出部24が、葉数Lと果実数Mを用いて、葉果比(=L/M)を算出する。
【0033】
次いで、ステップS18では、摘果率算出部26が、葉果比とパラメータテーブル42に格納されている設定葉果比とを比較し、葉果比が設定葉果比よりも小さいか否かを判断する。このステップS18の判断が否定された場合には、果実数が摘果するほど多くない。このため、摘果率算出部26は、ステップS20において、摘果不要と判定し、出力部30を介して、その旨を利用者端末70に送信(出力)する。
【0034】
一方、ステップS18の判断が肯定された場合には、ステップS22に移行し、摘果率算出部26は、摘果が必要と判定する。そして、摘果率算出部26は、ステップS24に移行し、葉果比が設定葉果比と一致するような摘果率K(%)を算出する。例えば、葉果比算出部24が算出した葉果比が11.7であったとする。また、設定葉果比が、
図5に示すように38であったとする。この場合、1つの果実に対する葉数が、38/11.7=3.24倍になるように摘果を行えばよいため、現在の着果数のうちの30.9%(=(1/3.24)×100)が残るように摘果を行えばよいことになる。すなわち、摘果率Kは、100-30.9=69.1(%)と算出される。
【0035】
次いで、ステップS26では、摘果範囲特定部28が、果実大きさDB40から所定数の果実を任意に抽出する。なお、摘果範囲特定部28は、果実大きさDB40に格納されている全ての果実を抽出してもよい。ここでは、
図9(a)に示すような10個の果実(果実1~果実10)が抽出されたものとする。
【0036】
次いで、ステップS28では、摘果範囲特定部28が、抽出した果実を、大きさ(横径)がパラメータテーブル42に格納されている「果実大きさの基準値」(第2基準値)に近い順に順位付けする。「果実大きさの基準値」が
図5に示すように59mmである場合、
図9(b)に示すように順位付けされる。
【0037】
次いで、ステップS30では、摘果範囲特定部28が、順位付け結果に基づいて、摘果すべき範囲を決定する。この場合、
図10(a)に示すように、抽出した果実のうち、4位~10位までの果実を摘果すれば、着果率を30.9%以下にでき、基準値に近い果実を残すことができる。したがって、摘果範囲特定部28は、4位~10位までが摘果されるように摘果すべき範囲を決定する。具体的には、摘果範囲特定部28は、
図10(b)に示すように、4位~10位までの果実の大きさ(横径)のうち、「果実大きさの基準値」よりも小さい値で「果実大きさの基準値」に最も近い値(第1の値)と、「果実大きさの基準値」よりも大きい値で「果実大きさの基準値」に最も近い値(第2の値)とを特定する。そして、摘果範囲特定部28は、摘果すべき範囲を、果実の大きさ(横径)が第1の値以下の範囲と、果実の大きさ(横径)が第2の値以上の範囲と決定する。
図10(b)の例の場合、横径が56.3mm以下の果実が摘果対象となるとともに、横径が62.1mm以上の果実が摘果対象となる。
【0038】
次いで、ステップS32では、出力部30が、摘果範囲特定部28が決定した摘果すべき範囲の情報を利用者端末70に対して出力する。例えば、
図10(b)の例の場合、出力部30は、
図10(c)に示すような画面を作成し、利用者端末70に対して送信する。これにより、利用者端末70の表示部193上には、
図10(c)の画面が表示されることになる。
【0039】
なお、本実施形態では、画像解析部22と葉果比算出部24とにより、画像から抽出した葉の領域と果実の領域とに基づいて、葉数と果実数を算出するとともに、葉数と果実数の比率(葉果比)を算出する第1算出部としての機能が実現されている。
【0040】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、画像取得部20は、ミカンの木を撮影した画像を取得し、画像解析部22は、画像から抽出した葉の領域(
図8(a))と果実の領域(
図8(b))とに基づいて、葉数Lと果実数Mを算出し、葉果比算出部24は、葉数と果実数の比率(葉果比)を算出する。また、摘果率算出部26は、葉果比を設定葉果比以下とするために摘果する必要のある果実の割合を示す摘果率Kを算出し、摘果範囲特定部28は、摘果率Kに基づいて、摘果すべき果実の大きさの範囲を特定する。そして、出力部30は、特定した摘果すべき果実の大きさの範囲を出力する。これにより、本実施形態では、画像から葉果比を算出し、算出した葉果比が設定葉果比以下になるように、摘果すべき果実の大きさの範囲を特定するため、摘果すべき果実の大きさの範囲として適切な範囲を特定することができる。したがって、生産者は、出力される範囲に基づいて摘果を行うことで、摘果作業を適切に行うことが可能である。このように、本実施形態では、生産者に対して摘果作業を支援する情報を提示することができる。
【0041】
また、本実施形態では、摘果範囲特定部28は、
図9(a)に示すように、所定数の果実を抽出し、
図9(b)、
図10(a)に示すように、大きさが「果実大きさの基準値」から遠い順に摘果率に対応する数だけ摘果すると決定し、
図10(b)、
図10(c)に示すように、摘果すると決定した果実の大きさから摘果すべき果実の大きさの範囲を特定する。これにより、簡易な処理により、摘果すべき果実の大きさの範囲として適切な範囲を特定することができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、出力部30が、
図10(c)に示すような情報(摘果すべき果実の大きさの範囲)を利用者端末70に対して出力する場合について説明したが、これに代えて又はこれとともに、
図11(a)に示すような画面を利用者端末70に出力することとしてもよい。すなわち、出力部30は、
図11(a)に示すように、画像取得部20が取得した画像に対し、摘果範囲特定部28が特定した範囲に含まれる果実を指し示す表示を行って表示用画像を生成し、当該表示用画像を利用者端末70に対して出力することとしてもよい。これにより、生産者は、果実の大きさを測りながら摘果する必要がなくなるため、摘果作業を容易にすることができる。なお、
図11(a)に示すような表示用画像を生成する場合、果実大きさDB40には、
図11(b)に示すように果実の位置(画像内における果実の領域それぞれの中心座標)を格納しておくのがよい。
【0043】
なお、上記実施形態では、利用者端末70から1つの木を撮影した画像として、1枚の画像がサーバ10に送信されてくる場合について説明したが、これに限られるものではない。生産者は、利用者端末70から、1つの木を異なる方向から撮影した複数の画像をサーバ10に対して送信することとしてもよい。サーバ10では、複数の画像を用いて、上述した処理を行うことで、より精度よく摘果すべき果実の大きさの範囲を特定することができる。また、出力部30が、複数の画像それぞれから
図11(a)のような表示用画像を生成して出力すれば、生産者は摘果作業をより正確に行うことができるようになる。
【0044】
なお、上記実施形態では、
図3の機能をサーバ10が有する場合について説明したが、これに限らず、
図3の機能を利用者端末70が有していてもよい。この場合、利用者端末70とサーバ10との間の通信が不要になるため、利用者端末70が通信できないような僻地で作業を行う場合にも、摘果を支援する情報を生産者に提供することができるようになる。
【0045】
なお、上記実施形態では、ミカンを例に説明したが、その他のカンキツ類やリンゴ、カキなど、摘果作業が必要な果樹類であってもよい。また、トマトやパプリカなどのように摘果作業が必要な果菜類であってもよい。この場合、パラメータテーブル42に、対象となる品種、品目の情報を格納しておけばよい。また、果樹類の場合には、木全体が含まれるように画像を撮影し、果菜類の場合、株全体が含まれるように画像を撮影すればよい。
【0046】
なお、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、処理装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体(ただし、搬送波は除く)に記録しておくことができる。
【0047】
プログラムを流通させる場合には、例えば、そのプログラムが記録されたDVD(Digital Versatile Disc)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)などの可搬型記憶媒体の形態で販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0048】
プログラムを実行するコンピュータは、例えば、可搬型記憶媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記憶媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送されるごとに、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0049】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 サーバ(摘果作業支援装置)
20 画像取得部(取得部)
22 画像解析部(第1算出部の一部)
24 葉果比算出部(第1算出部の一部)
26 摘果率算出部(第2算出部)
28 摘果範囲特定部(特定部)
30 出力部
40 果実大きさDB
42 パラメータテーブル
70 利用者端末
100 摘果作業支援システム