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特許7451027液状シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴムスポンジ
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  • 特許-液状シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴムスポンジ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】液状シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴムスポンジ
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/32 20060101AFI20240311BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240311BHJP
   C08K 5/06 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20240311BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240311BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20240311BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
C08J9/32 CFH
C08K3/36
C08K5/06
C08L83/05
C08L83/06
C08L83/07
F16C13/00 A
G03G15/00 551
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019196595
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070725
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2021-10-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南川 知哉
(72)【発明者】
【氏名】平林 佐太央
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-245445(JP,A)
【文献】特開平09-012764(JP,A)
【文献】特開平10-036544(JP,A)
【文献】特開平10-067875(JP,A)
【文献】特開2001-220510(JP,A)
【文献】特開2018-053020(JP,A)
【文献】特開2019-196420(JP,A)
【文献】特開2018-168297(JP,A)
【文献】特開2003-282501(JP,A)
【文献】特開2003-194229(JP,A)
【文献】特開2002-187971(JP,A)
【文献】特開2000-186210(JP,A)
【文献】特開2001-131415(JP,A)
【文献】特開平11-269388(JP,A)
【文献】特開平04-013738(JP,A)
【文献】特開平05-301987(JP,A)
【文献】特開平05-209080(JP,A)
【文献】特開平08-012888(JP,A)
【文献】特開平09-310025(JP,A)
【文献】特開平07-196832(JP,A)
【文献】特開平08-337670(JP,A)
【文献】特開平11-130963(JP,A)
【文献】特開平06-200066(JP,A)
【文献】特開平11-315211(JP,A)
【文献】特開昭63-278942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C08J 9/00- 9/42
F16C 13/00- 13/06
G03G 15/00- 15/36
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(I)
1 aSiO(4-a)/2 (I)
[式中、R1は同一又は異種の1価炭化水素基を示し、aは1.95~2.04の正数を示す。]
で表される、1分子中にアルケニル基を2個以上有し、数平均重合度100~600の25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~50質量部、
(C)補強性シリカ:0.5~30質量部、
(D)付加反応触媒:触媒量
(E)真比重が0.01~0.3であり、平均粒子径が10~200μmである有機樹脂殻を有する既膨張の樹脂微粒子:0.2~30質量部、
(F)トリエチレングリコール:0.5~20質量部、及び
(G)ケイ素原子に結合した水酸基を一分子中に1個以上有し、25℃における粘度が0.02~500Pa・sであるジオルガノポリシロキサン:0.001~5質量部、
を含み、
(A)成分、(B)成分及び(G)成分の総質量に対する、(G)成分中のケイ素原子に結合した水酸基(水酸基の質量換算)が8~100ppmであることを特徴とする液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
前記(E)成分の既膨張の樹脂微粒子の有機樹脂殻が、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの群から選ばれるモノマーの重合体又は該モノマーの2種以上の共重合体からなるものである、請求項1に記載の液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液状シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムスポンジであって、その硬さばらつきが、JIS S 6050:2008記載のアスカーC硬度計で測定した値のうち、最大値と最小値の測定値差が2ポイント以下であることを特徴とするシリコーンゴムスポンジ。
【請求項4】
請求項に記載のシリコーンゴムスポンジからなる層を少なくとも1層有する電子写真式画像形成部材に用いられるロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既膨張の樹脂微粒子含有の液状シリコーンゴム組成物及びその硬化物であるシリコーンゴムスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムスポンジは、シリコーンゴム特有の耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、難燃性等に優れ、圧縮永久歪みが小さいといった、優れた物理特性をもったスポンジである。このような特性を有するシリコーンゴムスポンジは、OA機器や自動車、建築材料などにおいて低熱伝導化及び軽量化を進めるために使用されている。
【0003】
シリコーンゴムスポンジは、その用途に応じて、シリコーンゴムの成形方法と、発泡方法とを組み合わせて、様々な方法で製造される。
そのうちの一つとして、未硬化の液状シリコーンゴムスポンジ組成物に、既膨張の合成樹脂中空体(樹脂微粒子)を配合し、加熱硬化させてスポンジに利用する方法が開示されている(特許文献1)。上記方法ではスポンジセルが独立泡になり、セル間の空気の移動に時間がかかるため圧縮永久歪みが悪くなる。また、上記の既膨張の樹脂微粒子を多量に配合することにより、シリコーンゴムスポンジの低比重化が可能であるが、得られたシリコーンゴムスポンジは、既膨張の樹脂微粒子の樹脂成分がゴム内に残るため、得られるスポンジの硬度が非常に高くなり、ゴム弾性が低下し、圧縮永久歪みが悪くなる。
【0004】
また、ガラス、セラミックス等の無機物の中空粉体をシリコーンゴム組成物中に含有したものが知られているが、粉体比重が大きいため軽量化できず、また無機物であるために熱伝導率の悪化やクッション性なども不十分であった(特許文献2)。
【0005】
スポンジの圧縮永久歪みを低減する方法としてスポンジを連泡化させる方法がある。
既膨張の樹脂微粒子を添加した液状シリコーンゴムスポンジを連泡化する技術としては、多価アルコール(グリコール類)を連泡化剤として配合する方法が提案されている(特許文献3~5)。これらの方法は、シリコーンゴムを加熱、硬化する温度領域よりも多価アルコール類の揮発温度を高い温度に設定し、ゴム硬化後に多価アルコール類を揮発、除去させることによりスポンジを連泡化させるものである。しかし、上記方法では、既膨張の樹脂微粒子が加熱により均一に収縮しなかったり、液状シリコーンゴム組成物のゴム強度が高い場合、スポンジセルを破壊することができずに連泡にならなかったり、連泡化したセル部と独泡のセル部が海島のように斑になってしまう欠点があった。
【0006】
さらに、既膨張の樹脂微粒子を含むシリコーンゴム組成物に多孔質の酸化ケイ素、アルミナ等を添加して連泡化する方法も提案されている(特許文献6)。しかしながら、低比重のスポンジ材料に多孔質フィラーを添加するとゴム硬度の上昇、圧縮永久歪みの悪化を引き起こすため、この方法もシリコーンゴムスポンジの物性悪化に繋がるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-137063号公報
【文献】特開2004-026875号公報
【文献】特開2001-220510号公報
【文献】特開2002-070838号公報
【文献】特開2001-295830号公報
【文献】特開2014-112172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、取り扱いが容易で、外観が均一、かつ硬度ばらつきが少なく、ゴム特性に優れた高連泡化シリコーンゴムスポンジを与える、液状のシリコーンゴム組成物及びその硬化物であるシリコーンゴムスポンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、既膨張の樹脂微粒子と、多価アルコール又はその誘導体等を含む液状シリコーンゴム組成物において、一定粘度以上の液状オルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合する水酸基量を所定の範囲内にすることにより、該組成物を加熱硬化させて得られるシリコーンゴムスポンジが、表面斑や硬度ばらつきがなく、圧縮永久歪みが改善されたものであることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明は、下記の液状シリコーンゴム組成物及びシリコーンゴムスポンジを提供するものである。
[1]
(A)下記平均組成式(I)
1 aSiO(4-a)/2 (I)
[式中、R1は同一又は異種の1価炭化水素基を示し、aは1.95~2.04の正数を示す。]
で表される、1分子中にアルケニル基を2個以上有し、数平均重合度100~600の25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~50質量部、
(C)補強性シリカ:0.5~30質量部、
(D)付加反応触媒:触媒量
(E)真比重が0.01~0.3であり、平均粒子径が10~200μmである有機樹脂殻を有する既膨張の樹脂微粒子:0.2~30質量部、
(F)一分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する炭素数2~10の多価アルコール、又はこれらの部分エーテル化合物、部分エステル化合物及び部分シリル化合物から選ばれる一分子中に1個以上の残存アルコール性水酸基を有するモノマー、又はこれらモノマーの1種若しくは2種以上のオリゴマー:0.5~20質量部、及び
(G)ケイ素原子に結合した水酸基を一分子中に1個以上有し、25℃における粘度が0.02~500Pa・sであるジオルガノポリシロキサン:0.0002~5質量部、
を含み、
(A)成分、(B)成分及び(G)成分の総質量に対する、(G)成分中のケイ素原子に結合した水酸基(水酸基の質量換算)が8~500ppmであることを特徴とする液状シリコーンゴム組成物。
[2]
前記(F)成分が、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール及びトリエチレングリコールの群から選ばれる少なくとも1種である[1]に記載の液状シリコーンゴム組成物。
[3]
前記(E)成分の既膨張の樹脂微粒子の有機樹脂殻が、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの群から選ばれるモノマーの重合体又は該モノマーの2種以上の共重合体からなるものである、[1]又は[2]に記載の液状シリコーンゴム組成物。
[4]
[1]~[3]のいずれか1項に記載の液状シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴムスポンジであって、その硬さばらつきが、JIS S 6050:2008記載のアスカーC硬度計で測定した値のうち、最大値と最小値の測定値差が2ポイント以下であることを特徴とするシリコーンゴムスポンジ。
[5]
[4]に記載のシリコーンゴムスポンジからなる層を少なくとも1層有する電子写真式画像形成部材に用いられるロール。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液状シリコーンゴム組成物は、一定粘度以上の液状のオルガノポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水酸基量を所定の範囲内にすることにより、硬化後に微細な連泡を有するスポンジとすることができる。また成形後の加熱により、配合された既膨張の樹脂微粒子が破壊し、連泡化剤として作用する多価アルコール又はその誘導体がスポンジセルを連泡化することで、成形品のスポンジの外観が良好で、特に斑模様と、硬度ばらつきとがなく、圧縮永久歪みが低いゴムスポンジロール、ゴムスポンジシート等のシリコーンゴムスポンジを提供できる。
【0012】
また、本発明の液状シリコーンゴム組成物を用いて製造されたロールは、特にロールの長さ方向の硬さばらつきが小さいため、電子写真式画像形成部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(A)は、実施例1のスポンジセルの断面の写真(倍率55倍)であり、(B)は、しきい値を用いて(A)の写真の白色/黒色を強調した画像である。
図2】(A)は、比較例2のスポンジセルの断面の写真(倍率55倍)であり、(B)は、しきい値を用いて(A)の写真の白色/黒色を強調した画像である。
図3】(A)は、比較例3のスポンジセルの断面の写真(倍率55倍)であり、(B)は、しきい値を用いて(A)の写真の白色/黒色を強調した画像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の液状シリコーンゴム組成物は、
(A)下記平均組成式(I)
1 aSiO(4-a)/2 (I)
[式中、R1は同一又は異種の1価炭化水素基を示し、aは1.95~2.04の正数を示す。]
で表される、1分子中にアルケニル基を2個以上有し、数平均重合度100~600の25℃で液状のオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B)1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1~50質量部、
(C)補強性シリカ:0.5~30質量部、
(D)付加反応触媒:触媒量
(E)真比重が0.01~0.3であり、平均粒子径が10~200μmである有機樹脂殻を有する既膨張の樹脂微粒子:0.2~30質量部、
(F)一分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する炭素数2~10の多価アルコール、又はこれらの部分エーテル化合物、部分エステル化合物及び部分シリル化合物から選ばれる一分子中に1個以上の残存アルコール性水酸基を有するモノマー、又はこれらモノマーの1種若しくは2種以上のオリゴマー:0.5~20質量部、及び
(G)ケイ素原子に結合した水酸基を一分子中に1個以上有し、25℃における粘度が0.02~500Pa・sであるジオルガノポリシロキサン:0.0002~5質量部、
を含み、(A)成分、(B)成分及び(G)成分の総質量に対してケイ素原子に結合した水酸基(水酸基の質量換算)が8~500ppmであることを特徴とする液状シリコーンゴム組成物である。
【0015】
本発明において重合度(又は分子量)とは、下記測定条件で測定したトルエンを展開溶媒としたゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)として求めた値である。
【0016】
[測定条件]
展開溶媒:トルエン
流量:0.350mL/min
検出器:示差屈折率検出器(RI)
カラム:TSKgel Super MultiporeHZ-H
(いずれもTOSOH社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:10μL(濃度0.1質量%のトルエン溶液)
【0017】
本発明における粘度は、25℃でJIS K 7117-1:1999記載のB型回転粘度計によって測定した粘度を示す。
【0018】
-(A)液状オルガノポリシロキサン-
(A)成分の液状オルガノポリシロキサンは、下記平均組成式(I)
1 aSiO(4-a)/2 (I)
[式中、R1は同一又は異種の1価炭化水素基を示し、aは1.95~2.04の正数を示す。]
で表される、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0019】
上記式(I)において、R1は同一又は異種の1価炭化水素基を示し、好ましくは炭素原子数1~12、より好ましくは炭素原子数1~8の1価炭化水素基が挙げられる。
1価の炭化水素基としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。なお、これらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子で置換してもよく、例えばクロロメチル基、トリフルオロプロピル基などが挙げられる。中でも、R1としては、メチル基、ビニル基、フェニル基及びトリフルオロプロピル基が好ましく、特に1分子中の全てのR1のうちメチル基が80%以上、更に95%以上であることが好ましい。
【0020】
上記式(I)において、aは1.95~2.04の正数であり、好ましくは1.98~2.02の正数である。
【0021】
上記のオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖状であるが、硬化後のシリコーンゴムスポンジのゴム弾性が損なわれない範囲で分岐していてもよい。このオルガノポリシロキサンは分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されたものとすることができる。本発明において、このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが必要で、具体的には、アルケニル基、特にビニル基の含有量は0.000001~0.0005mol/g、特に0.00001~0.0002mol/gであることが好ましい。
【0022】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、オルガノハロシランの1種又は2種以上を加水分解縮合することによって、或いは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体或いは4量体など)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができるもので、このものは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。また、このオルガノポリシロキサンの数平均重合度は50~1500であり、好ましくは50~800であり、更に好ましくは150~600である。
【0023】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、25℃で液状であり、特にJIS K 7117-1:1999記載のB型回転粘度計によって測定した粘度が0.05~30Pa・sであることが好ましく、0.3~10Pa・sであることがより好ましい。
【0024】
-(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン-
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記平均組成式(II)
2 bcSiO(4-b-c)/2 (II)
で示され、1分子中に少なくとも2個(通常2~300個)、好ましくは3個以上、より好ましくは3~150個程度のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を有するものである。
【0025】
上記式(II)中、R2は炭素数1~10の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、このR2としては、上記式(I)中のR1と同様の基を挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有さないことが好ましい。
【0026】
また、上記式(II)中、bは0.7~2.1の正数であり、cは0.001~1.0の正数で、かつ、b+cは0.8~3.0を満足する正数である。好ましくは、bは1.0~2.0の正数、cは0.01~1.0の正数、b+cは1.5~2.5の正数である。
【0027】
上記式(II)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンにおいて、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよく、(B)成分としては、1分子中のケイ素原子の数(又は重合度)が通常2~300個、好ましくは4~150個程度の、室温(25℃)で液状のものが望ましい。
【0028】
上記式(II)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に、例えば、1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0029】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1~50質量部、特に0.3~20質量部とすることが好ましい。また、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モルに対して、(B)成分中のケイ素原子に結合した水素原子(SiH基)の量が0.5~5モル、特に0.8~2.5モル程度となる量で配合することもできる。
【0030】
-(C)補強性シリカ-
(C)成分の補強性シリカは、シリコーンゴムスポンジの加工性、機械的強度等を良好にするために必要な充填材である。この補強性シリカの比表面積は50m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは100~400m2/gである。この補強性シリカとしては、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示され、このうち煙霧質シリカ(乾式シリカ)が好ましい。また、これら補強性シリカの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン、水等で疎水化処理してもよい。これらのシリカは1種単独で使用しても2種以上併用してもよい。
なお、この補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.5~30質量部であり、好ましくは1~20質量部、特に好ましくは1.5~10質量部である。この補強性シリカの配合量が、0.5質量部未満では少なすぎて十分な補強効果が得られず、30質量部を超えると未架橋シリコーンゴムスポンジの粘度が非常に高くなり、加工性が悪くなる場合がある。また、得られるシリコーンゴムスポンジの連泡率が低下したり、スポンジ密度が高くなるおそれがある。
【0031】
-(D)付加反応触媒-
(D)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、(A)成分と(B)成分との合計量(シロキサン結合を持つポリマー総量)に対して、白金族金属として0.5~1,000ppm、特に1~500ppmとすればよい。
【0032】
-(E)成分-
(E)成分として、有機樹脂殻を有する既膨張の樹脂微粒子を配合する。この微粒子(フィラー)は、硬化ゴム内にスポンジセルを付与することで、シリコーンゴムスポンジの比重を低下させるものである。
【0033】
既膨張の樹脂微粒子の有機樹脂殻としては、特に制限はないが、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの群から選ばれるモノマーの重合体又は上記モノマーの2種以上の共重合体が好ましい。本発明で用いる既膨張の樹脂微粒子については、この有機樹脂殻に揮発性物質又は低沸点物質を内包した未膨張の樹脂微粒子を予め単独で粉体状態で加熱膨張させて既膨張の樹脂微粒子としたものである。なお、既膨張の樹脂微粒子を配合する場合、既膨張の樹脂微粒子の強度を向上させる等のために、その表面に炭酸カルシウムやタルク等の無機質フィラー等を付着させたものを配合することもできる。
【0034】
上記の既膨張の樹脂微粒子は、シリコーンゴムスポンジの比重を低下させたり、熱伝導率を低下させたりするために、真比重が0.01~0.3であり、好ましくは0.01~0.25であるものがよい。真比重が0.01より小さいと配合・取り扱いが難しいばかりか、既膨張の樹脂微粒子の耐圧強度が不十分で、配合や成形時に破壊してしまい、シリコーンゴムスポンジの軽量化ができなくなってしまうおそれがある。また、真比重が0.3より大きいと、シリコーンゴムスポンジの比重が十分に低下しないおそれがある。
【0035】
また、既膨張の樹脂微粒子の平均粒子径は、10~200μmであり、好ましくは50~150μmである。この平均粒子径が10μmより小さいと、シリコーンゴムスポンジの比重を低下させるために多量に配合することが必要とされ、組成物の流動性が悪化する場合がある。平均粒子径が200μmより大きいと、成形時の圧力により既膨張の樹脂微粒子が破壊されて、シリコーンゴムスポンジの比重が高くなってしまったり、耐久性が低下してしまったりするおそれがある。なお、本発明において、平均粒子径とは、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて、メジアン径として測定した値を指すものとする。
【0036】
既膨張の樹脂微粒子の配合量は、(A)液状のオルガノポリシロキサン100質量部に対し、0.2~30質量部であり、好ましくは1.5~20質量部である。また、(A)~(D)成分の合計に対して体積比で20~80%となるように配合することが好ましい。体積比が上記範囲内であると、シリコーンゴムスポンジの比重や、熱伝導率が十分低下し、容易にスポンジを連泡化できる。更に、本発明の組成物の成形や配合が容易となり、十分なゴム弾性のある成形物が得られる。
【0037】
-(F)成分-
本発明において(F)成分の多価アルコール又はその誘導体は連泡化剤として作用する。この多価アルコールとしては、一分子中に少なくとも2個のアルコール性水酸基を有する炭素数2~10、好ましくは2~8の多価アルコールが好ましい。また、多価アルコールの誘導体としては、多価アルコールの部分エーテル化合物、部分エステル化合物及び部分シリル化合物から選ばれる、一分子中に少なくとも1個、好ましくは1~5個の残存アルコール性水酸基を有するモノマー、又はこれらのモノマーの1種もしくは2種以上のオリゴマーが挙げられる。
【0038】
上記の多価アルコール又はその誘導体としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジオール(トリエチレングリコール)などのグリコール類;グリセリン、ペンタエリスリトール、グリセリン-α-モノクロロヒドリン等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルなどの部分エーテル化合物グリセリンモノアセテート;グリセリンジアセテート、エチレングリコールモノアセテートなどの部分エステル化合物;エチレングリコールモノ(トリメチルシリル)エーテル、ジエチレングリコールモノ(トリメチルシリル)エーテルなどの部分シリル化化合物;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体などのポリアルキレングリコールなどが挙げられる。
好ましくはグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセリン-α-モノクロロヒドリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0039】
これらの(F)多価アルコール又はその誘導体は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよく、(F)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対し、0.5~20質量部であり、1~18質量部であることが好ましい。この配合量が0.5質量部より少ないと殆ど連泡化の効果がなく、逆に、20質量部より多いとゴム強度等のゴム物性への悪影響が大きくなってしまうおそれがある。
【0040】
-(G)シラノール基含有液状ジオルガノポリシロキサン-
(G)成分は、ケイ素原子に結合した水酸基(即ち、シラノール基)を一分子中に1個以上有するジオルガノポリシロキサンである。該ジオルガノポリシロキサンの分子構造は特に制限されるものでなく、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよいが、好ましくは、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰返しからなり、分子鎖末端の少なくとも一方がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。該直鎖状ジオルガノポリシロキサンは、分岐構造を有していてもよい。これらの(G)成分は1種単独でも用いても2種以上を併用してもよい。
【0041】
該(G)成分の主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位の繰り返し数(又は重合度)は5以上の整数、好ましくは15~2,000の整数、より好ましくは30~1,200の整数、更に好ましくは50~1,200の整数であり、この繰り返し数の範囲は、通常、該ジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が0.02~500Pa・s、好ましくは0.06~100Pa・s、より好ましくは0.5~100Pa・s程度に対応するものである。ジオルガノポリシロキサンの粘度が上記下限値(0.02Pa・s)未満であると、沸点が低く物性が安定し難いため、好ましくない。また、連泡化したセル部と独泡のセル部が海島模様のように斑が発生し硬度ばらつきが大きくなる悪影響を及ぼすおそれがある。また、ジオルガノポリシロキサンの粘度が上記上限値(500Pa・s)超では、作業性が低下するので、好ましくない。
【0042】
(G)成分のジオルガノポリシロキサンにおいてケイ素原子に結合する置換基のうち、水酸基以外の置換基としては水素原子(即ち、SiH基)及び有機基としては、置換又は非置換の、炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基が挙げられる。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基が好ましい。
【0043】
なお、上記(G)成分の配合量は(A)成分100質量部に対して0.0002~10質量部であり、より好ましくは0.001~5質量部である。0.0002質量部より少なく配合すると後述する所定の水酸基量に調整することが困難になり、10質量部より多く配合すると未架橋成分として存在することから、物性を悪化させるだけでなくOA機器等のゴムスポンジロールに使用した際の印刷品質の悪化を招くおそれがある。
【0044】
また、(A)成分、(B)成分及び(G)成分の総質量に対する、(G)成分中のケイ素原子に結合した水酸基(水酸基の質量換算)が8~500ppm、好ましくは8~100ppmとなることが好ましい。上記水酸基量が8ppm未満だと、連泡化したセル部と独泡のセル部とで海島模様のような斑が発生し、硬度ばらつきが大きくなるおそれがある。上記水酸基量が500ppmを超えると、スポンジの硬度が低下したり、所望のゴム物性が得られないおそれがある。
【0045】
-その他の成分-
本発明のシリコーンゴムスポンジ組成物には、上述した必須成分の他に、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記(C)成分の補強性シリカ以外の半補強性又は非補強性の充填材を配合することができる。この半補強性又は非補強性の充填材としては、例えば、粉砕シリカ、ケイソウ土、金属炭酸塩、クレー、タルク、マイカ、酸化チタンなどを挙げることができる。また、シリコーンゴム組成物に従来から用いられている耐熱添加剤、難燃剤(白金錯体を含む)、酸化防止剤、加工助剤なども配合することができる。更に、導電性カーボンや導電性金属酸化物微粒子(導電性亜鉛華、酸化チタン、スズアンチモン系微粒子)等を添加することにより導電スポンジとすることもでき、フェライト粉末などを配合し、高周波誘電加熱による成形も可能である。
【0046】
本発明のシリコーンゴムスポンジ組成物には、必要に応じて更に熱伝導性物質を配合することにより、熱伝導性を付与することも可能である。熱伝導性物質としては、例えば、粉砕石英、酸化亜鉛、アルミナ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、金属珪素粉末や炭化珪素、繊維状カーボンファイバー等のシリコーンへの添加実績のある粉体を挙げることができる。また、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール封鎖低分子シロキサン等の分散剤、アセチレンアルコール化合物等の反応制御剤などを本発明のシリコーンゴムスポンジ組成物に添加してもよい。
【0047】
本発明のシリコーンゴム組成物を製造する方法については、特に限定されないが、全ての成分を一度に混合しても、各成分を順次混合してもよい。例えば、(A)液状オルガノポリシロキサン及び(C)補強性シリカを、プラネタリーミキサー、ニーダー、バンバリーミキサー等で混合しておき、その後残りの成分を添加してもよい。また、必要により(A)成分と、(C)成分とを熱処理(加熱下での混練り)してもよい。更に具体的には、(A)成分と(C)成分と、(C)成分の疎水化処理剤(オルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン、水等)とを混練、熱処理し、次いで冷却後に(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応制御剤を添加し、(D)付加反応触媒を添加して、25℃で液状の付加架橋型シリコーンゴム組成物を調製し、最後に(E)既膨張の樹脂微粒子、(F)連泡化剤、及び(G)水酸基含有ジオルガノポリシロキサンを添加混合する方法、(A)成分と(C)成分を混練し、(D)成分を添加混合した後に、反応制御剤と(B)成分、(E)成分、及び(F)成分と(G)成分とを順次添加混合する方法、(A)成分と(C)成分、その他添加剤を混練、熱処理し、次いで冷却後に(E)成分、(F)成分、及び(G)成分を添加し、最後に(B)成分と、(D)成分とを添加する方法等が挙げられる。また、(F)成分は、(B)成分及び(D)成分を添加混合した後に、最後に添加してもよい。上記熱処理の温度及び時間については、特に限定されないが、100~250℃、30分~5時間熱処理を行ってもよい。
なお、(A)成分~(E)成分の混合物の、JIS K 7117-1:1999記載の方法で測定したB型(HAT型)回転粘度計による25℃での粘度は、1~3,000Pa・sであることが好ましく、5~1,000Pa・sであることが更に好ましい。
【0048】
下記に本発明のシリコーンゴム組成物の硬化物であるスポンジの製造方法について記述する。本発明のシリコーンゴムスポンジの製造方法は、シリコーンゴム組成物を架橋する架橋工程及び連泡化する連泡化工程を有する。
【0049】
架橋工程ではシリコーンゴム組成物をプレス成形、注型成形、射出又はインジェクションにて金型内に充填し、金型の実温が80~150℃となる条件で数秒~180分の架橋(一次キュア)を実施することが望ましい。加熱源としては、電熱線ヒーター、セラミックヒーター、熱風乾燥器、加熱水や加熱されたガラスビーズ等を用いることができる。
【0050】
連泡化工程は、一般にポストキュアと呼ばれる工程であり、通常は架橋を完全に反応させたり、ゴム内の揮発性残渣や低分子シロキサンを揮発させたりするための工程である。本発明では(F)成分を揮発させることが目的であり、ゴム内の連泡化を進める工程である。そのため、バッチ式或いは連続式の熱風乾燥器によって、200~250℃の温度で0.5~20時間程度の熱処理が望ましい。
【0051】
また、本発明のスポンジの発泡倍率は110~1,000%であることが好ましく、120~500%であることが特に好ましい。発泡倍率は、((E)既膨張の樹脂微粒子未添加の混合物の比重/スポンジ比重)×100(%)により計算した値であり、比重はJIS K 6268:1998記載の方法によって測定した値である。
【0052】
このようなシリコーンゴムスポンジは、該スポンジからなる層を少なくとも1層有する電子写真式画像形成部材に用いられるロール、特に定着部材、駆動ロール、給排紙ロールなどに有用である。定着部材の例としては、連泡スポンジからなる単層を有する定着ロール、定着ベルト支持ロール、該スポンジからなる2層以上の層をPFAチューブ等の表層離形材を接着させた2層以上の複層定着ロール、ソリッドゴムとスポンジゴム層及びトナー離形層を複合した多層構造定着ロール構造をもつトナー溶融定着用途の定着ロールなどが挙げられる。
【0053】
本発明の液状シリコーンゴム組成物を用いて、ロール部材を製造すると、特にロールの長さ方向の硬さばらつきが小さいため、上記の電子写真式画像形成部材として好適なロール部材を製造することができる。
【0054】
本発明におけるスポンジの硬さばらつきの評価方法としては、硬化したシリコーンゴムスポンジの硬さをJIS S 6050:2008記載のアスカーC硬度計によって、最低3カ所以上測定し、その最大値と最小値の測定値差により評価できる。本発明では、この測定値差が2ポイント以下であればよく、硬さのばらつきが少ないスポンジであると判断できる。なお、硬さ測定サンプルとして、ロール状のゴムスポンジを用いる場合は、アスカーC硬度計をロール曲面の法線方向(表面から中心に向かう方向)に押し当てて測定できる。また、測定箇所が多い場合には、標準偏差をばらつきの指標として利用することも可能であり、この場合は標準偏差σが0.70以下であることが望ましい。
【実施例
【0055】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、以下の記載で「部」とは「質量部」を指すものとする。
【0056】
実施例及び比較例において使用した各成分を以下に示す。

(A1)両末端がジメチルビニルシリル基で封鎖された数平均重合度300で25℃での粘度が3Pa・sでビニル量0.00008mol/gであるオルガノポリシロキサン
(B1)両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、SiH量0.006mol/g)
(C1)比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、アエロジルR-972)
(D1)白金触媒(塩化白金酸とオレフィン類(1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン)との錯体、Pt濃度1質量%)
(E1)既膨張の樹脂微粒子920DE80d30(AkzoNobel(株)製、平均粒子径80μm、真比重0.030、有機樹脂殻アクリロニトリル系共重合体)
(F1)トリエチレングリコール(和光化学社製、一級グレード、純度95%以上)
(G1)両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が3Pa・s(重合度330)であるジメチルポリシロキサン
(G2)両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が1.5Pa・s(重合度310)であるジメチルポリシロキサン
(G3)両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が0.5Pa・s(重合度220)であるジメチルポリシロキサン
(G4)両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が0.06Pa・s(重合度35)であるジメチルポリシロキサン
(G5)両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が0.03Pa・s(重合度17)であるジメチルポリシロキサン
(G6)両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が100Pa・s(重合度1,200)であるジメチルポリシロキサン
(G7)<比較例用>両末端が水酸基で封鎖された、25℃での粘度が0.012Pa・s(重合度4)であるジメチルポリシロキサン
【0057】
(A1)100部及び(C1)3部を室温で30分混合した後、(D1)0.1部を添加し室温で30分混合し、さらに、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部を添加し、次いで架橋剤として(B1)を1.6部添加し、15分撹拌を続けて、「オルガノポリシロキサン組成物1」とした。
【0058】
各実施例及び各比較例の評価方法を以下に示す。
・スポンジ硬さ:JIS S 6050:2008規定のアスカーC硬度を測定した。
・発泡倍率:(E)既膨張の樹脂微粒子未添加の混合物の比重及び発泡後のスポンジ比重をJIS K 6268:1998記載の方法によって測定した。得られた値から下記計算方法によって、発泡倍率を計算した。
[計算方法:((E)既膨張の樹脂微粒子未添加の混合物の比重/スポンジ比重)×100(%)]
・スポンジセルの状態:異常発泡、割れ、斑模様の状態を目視にて観察した。
・スポンジの平均セル径:スポンジ切断面にあるセル径の平均値であり、セル径は光学顕微鏡で測定した値である。
・斑模様の面積:スポンジ断面の20倍拡大写真を撮影し、写真の黒斑部をハサミで切り取り、通常部との写真切り抜き重量比から面積比率を計算した。
・圧縮永久歪み:JIS K 6249:2003に準じて、180℃、25%圧縮、22時間後の圧縮永久歪みを測定した。
【0059】
[実施例1]
「オルガノポリシロキサン組成物1」を100質量部に、(E1)3.9質量部((A)、(B)、(C)及び(D)成分との体積比56%)を添加して15分撹拌を続けた組成物を「オルガノポリシロキサン組成物2」とした。このオルガノポリシロキサン組成物2は、25℃でJIS K 7117-1:1999記載のB型回転粘度計により粘度測定したところ、粘度が100Pa・sであり、液状であった。
「オルガノポリシロキサン組成物2」を103.9質量部に、(F1)6.5質量部、及び(G1)1.4質量部((A)成分、(B)成分、と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が19ppm)をプラネタリーミキサーに入れて30分撹拌しシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物を直径29mmφ、12.5mm厚の金型にヘラで金型容積と同量を充填し、120℃/15分の一次キュアを行い円筒形状のシリコーン成形体を得た。
【0060】
次に、この円筒形状の12.5mm厚シリコーン成形体を220℃の熱風乾燥器で4時間常圧熱気加熱してシリコーンスポンジを得た。得られたスポンジの硬さ、発泡倍率、セルの状態、平均セル径、斑模様の有無、黒斑模様の面積、圧縮永久歪みを上記のようにして調べた。その評価結果を表1に示す。
また、図1(A)には、実施例1で得られた円筒形状のスポンジの円周面を直径で2等分した断面の写真(写真横幅は29mmである)を示す。また、斑模様を判別可能とするために、白色/黒色のしきい値を用いて強調した写真を図1(B)に示す。
【0061】
[実施例2]
(G1)1.4質量部を(G2)2.5質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が38ppm)へ変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表1に示す。
【0062】
[実施例3]
(G1)1.4質量部を(G2)0.85質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が13ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表1に示す。
【0063】
[実施例4]
(G1)1.4質量部を(G2)0.59質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が9ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表1に示す。
【0064】
[実施例5]
(G1)1.4質量部を(G3)2.1質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が43ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表1に示す。
【0065】
[実施例6]
(G1)1.4質量部を(G3)1.8質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が37ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表1に示す。
【0066】
[実施例7]
(G1)1.4質量部を(G3)1.1質量部((A)成分、(B)成分、と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が24ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表1に示す。
【0067】
[実施例8]
(G1)1.4質量部を(G4)0.19質量部((A)成分、(B)成分、と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が24ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
【0068】
[実施例9]
(G1)1.4質量部を、(G5)0.064質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が18ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
【0069】
[実施例10]
(G1)1.4質量部を、(G6)2.9質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が14ppm)、に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
【0070】
[比較例1]
(G1)成分を配合しなかった((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基0ppm)以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
【0071】
[比較例2]
(G1)1.4質量部を、(G1)0.42質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が6ppm)に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
また、図2(A)には、比較例2で得られた円筒形状のスポンジの円周面を直径で2等分した断面の写真(写真横幅は29mmである)を示す。また、斑模様を判別可能とするために、白色/黒色のしきい値を用いて強調した写真を図2(B)に示す。
【0072】
[比較例3]
(G1)1.4質量部を、(G7)0.11質量部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が132ppm)に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
【0073】
また、図3(A)には、比較例3で得られた円筒形状のスポンジの円周面を直径で2等分した断面の写真(写真横幅は29mmである)を示す。また、斑模様を判別可能とするために、白色/黒色のしきい値を用いて強調した写真を図3(B)に示す。
【0074】
[比較例4]
(G1)1.4質量部を(G7)0.020部((A)成分、(B)成分と(G)成分の総量に対してケイ素原子に結合した水酸基が24ppm)に変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジを作製し、スポンジの特性を評価した。スポンジの評価結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
[定着ロールの作製]
焼成フッ素処理を内面に施した外径26mm×長さ250mm、肉厚3mmのアルミニウム製の円筒状金型を垂直に配置し、直径6mm×長さ300mmのSUS304製芯金(シャフトには信越化学工業(株)製のPRIMER-No31A/Bを塗布済である)を金型中心部に垂直に固定し、実施例1又は比較例3で作製したシリコーンゴム組成物を、金型下部に設けた4つの直径2mmの穴より0.05MPaの圧力で常温注型し、金型上部より材料がオーバーフローするまで供給した。次いで、この金型を150℃のバッチ式熱風乾燥器に入れて1時間架橋を行った。
【0078】
次に、常温まで金型を冷却後、金型からスポンジによって被覆されたシャフトを抜き出し、得られた単層シリコーンゴムスポンジロールを更に220℃熱風乾燥器にて4時間熱処理を行った。
【0079】
このシリコーンゴムスポンジロールを、付加架橋型一液型シリコーンゴム接着材KE-1884(信越化学工業(株)製)にて内面処理した膜厚50μmのフッ素PFAチューブで被覆し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアし、外径26mm×長さ250mmのPFA樹脂被覆シリコーンゴムスポンジ定着ロールを作製した。
【0080】
[定着ロールの評価]
このようにして得られた定着ロールを軸方向に、10mm間隔で12点アスカーC硬度を測定し、その結果を表3に記載した。アスカーC硬度計はロールの頂上部(円弧の頂点)にて測定を行った。実施例1の組成物を使用した定着ロールでは、アスカーC硬度の実測値が、「最小値」-「最大値」で「16」-「18」であり、硬さばらつきは2ポイントであったが、比較例3のアスカーC硬度の実測値は「33」-「37」であり、硬さばらつきが4ポイントとかなり大きかった。このため、比較例3の組成物を使用した定着ロールは、使用する場合に文字かすれ、文字流れ等の定着不良が発生するおそれがある程の硬度ばらつきであった。
【0081】
【表3】
【0082】
上記表1~3の各実施例及び各比較例から分かるように、本実施例(本発明品)液状シリコーンゴム組成物によれば、圧縮永久歪みが小さく、外観が均一で硬度ばらつきが少ないシリコーンゴムスポンジを得ることが可能である。
図1
図2
図3