(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-08
(45)【発行日】2024-03-18
(54)【発明の名称】巻きパンの製造方法
(51)【国際特許分類】
A21D 2/16 20060101AFI20240311BHJP
A23D 9/00 20060101ALI20240311BHJP
【FI】
A21D2/16
A23D9/00 502
(21)【出願番号】P 2020112698
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼染 芳宗
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】野口 修
(72)【発明者】
【氏名】塩田 野依
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直人
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080523(JP,A)
【文献】特開2009-017845(JP,A)
【文献】特開平03-247230(JP,A)
【文献】特開2015-142569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
A23D 7/00- 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂組成物が生地で巻かれた状態にある巻きパン生地であって、
前記油脂組成物に含まれる油脂の固体脂含有量(SFC)が、20℃で19~25%、35℃で3~7%、40℃で2%以下である、巻きパン生地。
【請求項2】
前記油脂組成物の形状が、略直方体状または略円柱状である、請求項1に記載の巻きパン生地。
【請求項3】
前記油脂組成物が生地で巻かれた状態にある巻きパン生地の、生地100質量部に対する油脂組成物の割合が、4~30質量部である、請求項1または2に記載の巻きパン生地。
【請求項4】
前記油脂組成物に含まれる油脂が、
20~60質量%のラウリン系エステル交換油脂、
10~40質量%のパーム系油脂、
10~40質量%の液体油、
を含有する、請求項1~3の何れか1項に記載の巻きパン生地。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の巻きパン生地を、ホイロ後焼成する、巻きパンの製造方法。
【請求項6】
巻きパンのセンター材に適した油脂組成物であって、
前記油脂組成物に含まれる油脂が、
20~60質量%のラウリン系エステル交換油脂、
10~40質量%のパーム系油脂、
10~40質量%の液体油、
を含有し、
前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、20℃で19~25%、35℃で3~7%、40℃で2%以下である、
油脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻きパン、特に中空を有する巻きパンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
巻きパン(ロールパン)は、平たく延ばした生地を、くるくると巻いて成型し、焼成したパンである。巻きパンは比較的簡単に作れるので、ホームベーカリーのアイテムとしても人気がある。マーガリンやクリームなどが焼成後充填された巻きパンも人気があり、充填適性の向上、口どけや塩味の調製など、巻きパンに適した充填材が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、巻きパンには、バターなどのセンター材を巻き込んだ生地を焼成したタイプもある。このタイプの巻きパンとしては、いわゆる塩パンが知られている。上手に焼かれた塩パンは、バターがあった生地のセンター部分が、焼成後にバターが溶けて中空の状態になる。そして、外側はこんがり、中はしっとりとした、食感が楽しめる。しかしながら、綺麗な中空を有する塩パンを作るには、作業環境に応じて条件をこまめに調整するなど、少なからぬ経験が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、焼成後の食感がよい巻きパン、特に中空を有する巻きパンを簡単に製造できる方法が求められている。
【0006】
本発明の課題は、焼成後の食感がよい巻きパン、特に中空を有する巻きパンを簡単に製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、センター材として使用する油脂組成物に含まれる油脂のSFCを特定値とすることにより、焼成後に中空を有する巻きパンが安定して製造できることを見出した。これにより、本発明は完成された。すなわち、本発明は以下の態様をとり得る。
【0008】
油脂組成物が生地で巻かれた状態にある巻きパン生地であって、
前記油脂組成物に含まれる油脂の固体脂含有量(SFC)が、20℃で19~25%、35℃で3~7%、40℃で2%以下である、巻きパン生地。
[2]前記油脂組成物の形状が、略直方体状または略円柱状である、[1]の巻きパン生地。
[3]前記油脂組成物が生地で巻かれた状態にある巻きパン生地の、生地100質量部に対する油脂組成物の割合が、4~30質量部である、[1]または[2]の巻きパン生地。
[4]前記油脂組成物に含まれる油脂が、
20~60質量%のラウリン系エステル交換油脂、
10~40質量%のパーム系油脂、
10~40質量%の液体油、
を含有する、[1]~[3]の何れか1つの巻きパン生地。
[5][1]~[4]の何れか1つの巻きパン生地を、ホイロ後焼成する、巻きパンの製造方法。
[6]巻きパンのセンター材に適した油脂組成物であって、
前記油脂組成物に含まれる油脂が、
20~60質量%のラウリン系エステル交換油脂、
10~40質量%のパーム系油脂、
10~40質量%の液体油、
を含有し、
前記油脂の固体脂含有量(SFC)が、20℃で19~25%、35℃で3~7%、40℃で2%以下である、
油脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、焼成後の食感がよい巻きパン、特に中空を有する巻きパンを簡単に製造できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】略楕円の中空が形成され、ボリュームがあり、見た目が非常によい巻きパン(例3)の断面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の巻きパン生地は、センター材として油脂組成物を有する。油脂組成物に含まれる油脂の含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは70~100質量%であり、さらに好ましくは75~95質量%であり、ことさらに好ましくは80~90質量%である。油脂組成物は、水に溶ける呈味成分を含み得るので、好ましくは油中水型の乳化物である。
【0012】
上記油脂組成物は、巻きパン生地のセンター材として適した形状をとり得る。油脂組成物の形状としては、例えば、不定形塊状、略立方体状、略直方体状、略円柱状、などの形状が挙げられる。また、賽の目状などの小片を複数集めた形状でもよい。油脂組成物の形状は、好ましくは略直方体状または略円柱状である。油脂組成物が略直方体状である場合、最長の辺を高さとして、好ましくは、縦10~21mm程度、横10~21mm程度、高さ20~50mm程度であり、より好ましくは、縦12~18mm程度、横12~18mm程度、高さ25~45mm程度である。油脂組成物が略円柱状である場合、好ましくは、半径5~12mm程度、高さ20~50mm程度であり、より好ましくは、半径7~10mm程度、高さ25~45mm程度である。巻きパン生地1個分のセンター材として適切な形状に成型された油脂組成物の重さは、好ましくは2~15gであり、より好ましくは3~13gであり、さらに好ましくは4~12gである。また、本発明の巻きパン生地において、油脂組成物を巻く(包む)生地100質量部に対する油脂組成物の割合は、好ましくは4~30質量部であり、より好ましくは8~27質量部であり、さらに好ましくは12~24質量部である。
【0013】
上記油脂組成物に含まれる油脂は、20℃で19~25%、35℃で3~7%、40℃で2%以下、の固体脂含有量(SFC)を有する。油脂組成物に含まれる油脂のSFCは、好ましくは、20℃で20~24%、35℃で4~6%、40℃で1%以下である。油脂組成物に含まれる油脂のSFCが上記範囲程度であると、油脂組成物は、良好な口どけを有するとともに、巻きパン生地をホイロする間に生地に溶け込むことが少ないので、焼成後の巻きパンに中空の構造が形成されやすい。なお、油脂のSFCは、例えば、日本油化学会制定の基準油脂分析試験法「2.2.9-2013、固体脂含量(NMR法)」に基づいて測定できる。
【0014】
上記油脂組成物の製造方法は特に限定されない。しかし、通常のマーガリン・ショートニングなどの可塑性油脂組成物と同様の製造方法が好適に適用できる。例えば、油溶成分を混合融解して油相を調製する。必要により水溶成分を混合溶解して水相を調製する。そして、可塑性油脂組成物は、融解した油相を単独で、または、油相に水相を混合乳化した乳化物を、冷却し、結晶化(固化)させることで製造できる。冷却および結晶化は、好ましくは冷却可塑化を含む。冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、より好ましくは-5℃/分以上である。この際、徐冷却より急冷却の方が好ましい。また、油相の調製後または混合乳化後は、殺菌処理することが望ましい。殺菌方法としては、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機、掻き取り式熱交換機を用いた連続式が挙げられる。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクターなどのマーガリン製造機やプレート型熱交換機などが挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。油脂組成物は、冷却固化と連続して略直方体状や略円柱状に押し出し成形されてもよいし、冷却固化後、必要に応じて適宜調温して、不定形塊状、略立方体状、略直方体状、略円柱状、などの形状に成形されてもよい。
【0015】
上記油脂組成物に含まれる油脂は、上記SFCを満たせば、特に限定されない。必要に応じて精製された食用に適した油脂(食用油脂)が使用できる。食用油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、胡麻油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、乳脂など、および、これらの油脂の混合油、これらの油脂または混合油の加工油脂(エステル交換油、分別油、水素添加油など)などが挙げられる。食用油脂は、1種または2種以上を適宜選択して使用してもよい。
【0016】
上記油脂組成物に含まれる油脂は、好ましくはパーム系油脂を含有する。ここで、パーム系油脂は、パーム油、パーム油に由来する分別油を意味する。パーム系油脂としては、具体的には、パーム油の1段分別油であるパームオレインおよびパームステアリン、パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)およびパームミッドフラクション、パームステアリンの2段分別油であるパームオレイン(ソフトパーム)およびパームステアリン(ハードステアリン)などが例示できる。パーム系油脂は、1種または2種以上が使用されてもよい。パーム系油脂は、好ましくはパーム油である。油脂組成物に含まれる油脂に占めるパーム系油脂の含有量は、好ましくは10~40質量%であり、より好ましくは15~35質量%であり、さらに好ましくは20~30質量%である。
【0017】
上記油脂組成物に含まれる油脂は、好ましくは液体油を含有する。ここで、液体油は、10℃で流動性があり、構成脂肪酸全量に占める、炭素数16以上の脂肪酸の含有量が90質量%を超え、かつ、不飽和脂肪酸の含有量が70質量%以上である。液体油としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、胡麻油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、などが挙げられる。液体油は、1種または2種以上が使用されてもよい。油脂組成物に含まれる油脂に占める液体油の含有量は、好ましくは10~40質量%であり、より好ましくは15~35質量%であり、さらに好ましくは20~30質量%である。
【0018】
上記油脂組成物に含まれる油脂は、好ましくはラウリン系エステル交換油脂を含有する。ここで、ラウリン系エステル交換油脂は、構成脂肪酸全量に占めるラウリン酸の含有量が10質量%以上であるエステル交換油脂である。ラウリン系エステル交換油脂の構成脂肪酸全量に占めるラウリン酸の含有量は、好ましくは12~32質量%であり、より好ましくは14~28質量%であり、さらに好ましくは16~25質量%である。ラウリン系エステル交換油脂は、好ましくは、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とをエステル交換の原料油脂に含む。ここで、ラウリン系油脂は、構成脂肪酸全量に占めるラウリン酸の含有量が35質量%以上の油脂である。ラウリン系油脂としては、例として、ヤシ油、パーム核油、これらを分別して得られるパーム核オレイン、パーム核ステアリンなどの分別油、これらのエステル交換油脂、これらの硬化油脂、などが挙げられる。ラウリン系油脂は、1種または2種以上が使用されてもよい。また、非ラウリン系油脂は、構成脂肪酸全量に占める炭素数16以上の脂肪酸の含有量が90質量%を超える油脂である。非ラウリン系油脂としては、上記の、パーム系油脂、液体油、などが挙げられる。非ラウリン系油脂は、エステル交換油脂や硬化油脂であってもよい。非ラウリン系油脂は、1種または2種以上が使用されてもよい。ラウリン系エステル交換油脂のエステル交換前の原料油脂は、ラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とを質量比で、好ましくは20:80~80:20で含み、より好ましくは25:85~70:30で含み、さらに好ましくは30:70~60:40で含み、ことさらに好ましくは35:65~55:45で含む。ラウリン系エステル交換油脂は、1種または2種以上が使用されてもよい。ラウリン系エステル交換油脂のヨウ素価は、好ましくは13~23であり、より好ましくは15~21であり、さらに好ましくは16~20である。ラウリン系エステル交換油脂が2種以上使用される場合、ヨウ素価は加重平均で求められる。油脂組成物に含まれる油脂に占めるラウリン系エステル交換油脂の含有量は、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは25~55質量%であり、さらに好ましくは30~50質量%である。
【0019】
上記油脂組成物に含まれる油脂は、その他適宜、ラウリン系油脂、乳脂肪、非ラウリン系エステル交換油脂などを含んでもよい。油脂組成物に含まれる油脂に占めるラウリン系油脂の含有量は、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。油脂組成物に含まれる油脂に占める乳脂肪の含有量は、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。乳脂肪は分別油であってもよい。油脂組成物に含まれる油脂に占める非ラウリン系エステル交換油脂の含有量は、好ましくは0~20質量%であり、より好ましくは5~15質量%である。非ラウリン系エステル交換油脂は、非ラウリン系油脂のエステル交換油脂であり、その分別油であってもよい。
【0020】
上記油脂組成物にエステル交換油脂が含まれる場合、エステル交換油脂を調製するエステル交換反応の方法は、特に限定されない。位置選択性の低いエステル交換反応である非選択的エステル交換(ランダムエステル交換)、位置選択性の高いエステル交換反応である選択的エステル交換(位置特異的エステル交換)のどちらの方法を適用してもよい。しかし、非選択的エステル交換が好ましい。また、エステル交換の方法は、ナトリウムメトキシドなどを触媒とする化学的エステル交換またはリパーゼ製剤などを触媒とする酵素的エステル交換のどちらの方法を適用してもよい。
【0021】
上記油脂組成物は、油脂組成物に含まれる油脂以外のその他の成分として、パン・菓子などのベーカリー食品に用いる油脂組成物に一般的に使用される成分を含んでもよい。その他の成分としては、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩、塩化カリウムなどの塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸などの酸味料、糖類、糖アルコール類、ステビア、アスパルテームなどの甘味料、β-カロテン、カラメル、紅麹色素などの着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン)、ルチンなどの酸化防止剤、小麦蛋白、大豆蛋白などの植物蛋白、卵、卵加工品、香料、全脂粉乳、脱脂粉乳、乳清蛋白などの乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料などの食品添加物、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類などの食品素材、が挙げられる。
【0022】
本発明の巻きパン生地において、上記油脂組成物をセンター材として巻き込む生地は、特に限定されない。通常のロールパンに用いられる生地を適用できる。生地に使用される素材(原材料)としては、例えば、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉)、米粉などの穀物粉や、活性グルテン、でんぷん、セルロース粉末などの粉類、イースト、イーストフード、酵母、食塩、砂糖(グラニュー糖、上白糖)などの糖類・糖アルコール類、卵(全卵、液卵)、各種卵加工品、脱脂粉乳、牛乳などの乳製品、練り込み用油脂(バター、マーガリンなど)、水、豆乳などの水性成分、などが使用できる。生地は、原材料を混合し、必要に応じて、捏ね上げ、発酵(一次発酵)、などの工程を経て調製され得る。しかし、油脂組成物をセンター材として巻き込む生地は、好ましくはホイロ(最終発酵)前の生地である。例えば、一次発酵後の生地を適当な大きさに分割し、厚さ3mm程度で略三角形状の包み込みに適した形状に成型することで、油脂組成物をセンター材として巻き込む生地が得られる。
【0023】
本発明の巻きパン生地は、例えば、上記油脂組成物をセンター材として巻き込む生地で、油脂組成物を巻き込むことにより調製できる。調製された巻きパン生地は、そのまま、または、ホイロ後に、冷凍され、使用するまで冷凍生地として保存されてもよい。
【0024】
本発明の巻きパン生地において、上記油脂組成物をセンター材として巻き込む生地の練り込みに使用される油脂(組成物)は、上記油脂組成物と同一でもよいし、異なっていてもよい。上記油脂組成物をセンター材として巻き込む生地の練り込みに使用される油脂(組成物)の量は、生地に含まれる穀物粉100質量部に対して4~12質量部程度である。
【0025】
本発明の巻きパンは、好ましくは、巻きパン生地をホイロ後焼成することにより得られる。ホイロの条件は、好ましくは28~38℃程度、より好ましくは30~36℃程度で、70~90%程度の湿度下、40~90分間程度、である。ホイロ後の巻きパン生地は、オーブンを使用する場合、下火180~200℃程度、上火200~230℃程度で、9~18分間程度、焼成され得る。焼成前後の生地には、艶出し材などが塗布されてもよい。
【0026】
本発明の巻きパンは、口どけが良好であり、中空の構造が形成されやすく、食感がよいので、焼成後そのまま提供されてもよいし、岩塩やチョコレートなどを、トッピングやコーティングなどして提供されてもよい。
【実施例】
【0027】
次に、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例になんら限定されない。
【0028】
<分析方法>
油脂のSFCは、日本油化学会制定、「基準油脂分析試験法」の「2.2.9-2013 固体脂含量(NMR法)」に準じて測定した。
油脂のヨウ素価は、日本油化学会制定、「基準油脂分析試験法」の「2.3.4.1-2013 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
油脂の構成脂肪酸全量に占める特定脂肪酸の含有量は、日本油化学会制定、「基準油脂分析試験法」の「2.4.2.2-2013 脂肪酸組成(FID昇温ガスクロマトグラフ法)」に準じて測定した。
【0029】
<原料油脂>
油脂組成物に使用する原料油脂として以下の食用油脂を使用した。
・ラウリン系エステル交換油脂1
50質量部のパーム核油と50質量部のパーム油との混合油を化学的エステル交換した後、ヨウ素価1まで硬化したものをラウリン系エステル交換油脂1(略号:LIE1、ラウリン酸含有量23質量%)とした。
・ラウリン系エステル交換油脂2
50質量部の硬化パーム核油、15質量部のパームステアリンおよび35質量部のパーム油中融点画分の混合油を化学的エステル交換したものをラウリン系エステル交換油脂2(略号:LIE2、ラウリン酸含有量23質量%、ヨウ素価18)とした。
・ラウリン系エステル交換油脂3
40質量部のパーム核油と60質量部のパーム油との混合油を化学的エステル交換したものをラウリン系エステル交換油脂3(略号:LIE3、ラウリン酸含有量18.2、ヨウ素価39)とした。
・パーム系油脂1
パーム油をパーム系油脂1(略号:PMO)とした。
・液体油1
大豆油を液体油1(略号:SBO)とした。
・ラウリン系油脂1
硬化ヤシ油をラウリン系油脂1(略号:HCNO)とした。
・非ラウリン系エステル交換油脂1
パームオレイン(ヨウ素価56)を化学的エステル交換したものを非ラウリン系エステル交換油脂1(略号:PLIE)とした。
・乳脂肪1
発酵バターより分離した発酵バターオイルを乳脂肪1(略号:FBO)とした。
【0030】
<油脂組成物の調製>
表1の配合に基づいて、例1~5の油脂組成物に用いる油脂1~5を調製し、SFCを測定した。表2の配合に基づいて、例1~5の油脂組成物(マーガリン)を常法にしたがって調製した。すなわち、水に水相成分を溶解して水相としたものを、油脂に油相成分を溶かした油相と混合して予備乳化を行った。その後、コンビネーターを用いて急冷混捏を行い、例1~5の油脂組成物(マーガリン)を得た。得られた油脂組成物は、厚さ約17mmに延ばし、冷蔵庫で固めた後、17mm×17mm×35mmの略直方体状(10g/個)に切り出し成型した。
【0031】
【0032】
【0033】
<巻きパンの調製および評価1>
強力粉1000g、生イースト40g、発酵液種50g、生地改良剤5g、全卵60g、上白糖120g、食塩12g、脱脂粉乳20g、水490g、をミキサーボウルに投入し、低速で1分間混合した。さらに、ショートニング100gを投入し、低速で3分間、中速で10分間、混捏して、捏上げ温度22℃の生地を得た。得られた生地を、28℃、湿度80%で、45分間、一次発酵させた。発酵後、-2℃で3時間程度生地を休ませた。その後、生地を3mm厚のシート状に展延し、重量約60gの、底辺12cm程度、高さ13cm程度の略二等辺三角形状にカットし、10gの例1~例5の各油脂組成物を巻き込んで、巻きパン生地を成形した。その後、36℃、湿度80%で、50分間、ホイロ(最終発酵)をとり、ホイロ後の巻きパン生地を、上火200℃、下火190℃のオーブンで11分間焼成して、例1~例5の各油脂組成物を巻き込んだ巻きパンを得た。
【0034】
上記で得られた巻きパンについて、短軸方向に切った断面の様子、食感および口どけが、パン職人歴10年以上の職人3人により、以下の基準にしたがって、総合的に判断された。結果を表1に示した。
巻きパンの内部構造(断面の形状)の評価
略楕円の中空が形成され、ボリュームがあり、見た目が非常によい ◎(優)
略楕円の中空が形成され、ボリュームがあり、見た目がよい 〇(良)
中空は形成されるが、形が歪であるか、ややバラつきがある △(可)
中空が無いか、ほとんど形成されず、ボリュームが出ない ×(不可)
巻きパンの食感
外側のさっくり感と中空付近のしっとり感の差がよく分かり非常によい ◎(優)
外側のさっくり感と中空付近のしっとり感の差がよく分かりよい 〇(良)
外側のさっくり感と中空付近のしっとり感の違いは分かる △(可)
外側のさっくり感と中空付近のしっとり感の違いがあまりない ×(不可)
巻きパンの口どけ
経験上、非常に口どけがよいと ◎(優)
経験上、口どけがよい 〇(良)
経験上、可も不可もない口どけである △(可)
経験上、口どけが良いとは言えない ×(不可)